数年単位で見ると、アイドル全般に対する関心の低下。数ヶ月単位で見ると、雨季と夏の疲れ。活動意欲を削ぐ、異常な蒸し暑さ。さすがに常軌を逸している。休日の午前中に出かけると、昼には汗だく、たまらず帰宅、シャワーを浴び、着替え、空調を効かせた部屋でしばらく横になるのが通例となっている。この気候は何かをするのに向いていない。すべてに向いていない。飯倉大樹さんも先日の町田ゼルビアとの試合後にこう言っていた。「まず暑かったな。こんななかでサッカーやっちゃダメだよ。質落ちるだろ、どう見ても。日本の夏はサッカーしちゃいけない。夜やってんのにこんなにきついんだから、子どもたちとかやばいよな」。私には盆休みもなく、微塵も落ちない労働の強度。それどころか増やされていく負荷。去年のような酷い夏バテにはなっていない。それでも滅入っている。ストレスを感じやすい。気分的なしんどさがある。休日を活動的に過ごすのに必要な気力がない。月曜になると会社の同僚たちとクソを製造してお互いに投げ合いなすり付け合う日々が再開するかと思うとゲンナリする。月曜日にOutlookを開いてモリモリとメールが入ってくるあのおぞましい光景。クソの製造工場が土日で溜まっていたクソを一気に排出しているように私には見える。私は“Bullsh*t Jobs”を読み始めたばかりだが、自分の仕事がブルシット・ジョブである自信がある。
Hell is a collection of individuals who are spending the bulk of their time workig on a task they don't like and are especially not good at(地獄とは自分が好きではなく特にうまく出来るわけでもない任務に時間の大部分を費やしている個人の集まりである)(David Graeber, “Bullsh*t Jobs”)
明日、ヘッド・スパに行くことにした。新規開拓する気満々で1時間ほどお店を調べたが、結局は前に通っていた店に予約を入れた。(最後に行ったのがちょうど去年のこの時期だった。)なんだかんだでココよりも良さげなお店が見つからない。私が同じ飲食店に通い同じモノを食いがちなのもコレに似ている。過去に色々と試して比較した結果としてたどり着いた答えなんだ。また一から考え直しても同じ答えになる可能性は高い。であれば、過去の私が出した答えを再利用したほうが、店を選ぶ時間と手間が省ける。ハズレを引くリスクも回避できる。答えが分かっているんだからそれにすりゃいいじゃんという考え。飲食店をはじめ人生のさまざまな選択において安心安定のオキニをいくつか作って巡回するのは理にかなっている。ただ同じことをやり続けるのは効率がよい反面、精神衛生上はよくない。泉谷閑示さんの著作に書いてあったが、メンタル不調の人は同じことしかしない傾向があるらしい。それは私も実感として分かる。同じモノだけを食べ、同じ場所にだけ行き、同じことだけをする。自分で自分の視野を狭めている。物事において一つの選択肢しか見えなくなる。世界の広さや自分の可能性を認識できなくなる。それで目の前のことで必要以上に悩み、思い詰めてしまう。自分を苦しめているその人が、その状況が、その環境が、世界のすべてになってしまう。“それ”に過剰にとらわれてしまう。だから小さな選択から日々にちょっとした冒険を取り入れてみるのは大事だと私は思う。コンフォート・ゾーンから意図的に自分を少しずらすこと。
下北沢MOSAiC。BLUEGOATSのホーム・スタジアム。私にとっては二回目。ダイナマイト・マリンさんフル・マラソンを走ってからコンサートに合流する企画のとき以来。開場前、人がいっぱいだと驚くおまいつ。前回同様、新規客が無料。VIP→一般・招待→新規という順で入場。決めた。今日は音を直で浴びよう。私を苛むこのうっすらとした憂鬱感と苦しさを吹き飛ばすための、一種のセラピーとして。左ポケットの耳栓(THUNDERPLUGS)には手をつけず。開演直後からやっぱり音が過剰にデカい。習慣的にこの環境に身を置けば確実に耳を悪くする。今日は気にしないことにした。3列目の中央付近。前回が最高に楽しかったから今回はどうなるかと思ったけど、それをさらに超えてきた。フロアとステージの一体感、ノリが前回よりも増長し、確立してきている。初めて観た2月18日(日)の投げ銭公演からの変化が凄まじい。もはや別の集団にすら思える。この急速な変化と発展を目の当たりにすることが出来たという意味で、私はスゴくいいタイミングでBLUEGOATSを知ることが出来たんだと思う。この集団が目指すノリの中核を成す、みんなで一緒に歌うこと。私は前回まであまり乗り気ではなかった。今日、それが変わった。リリックうろ覚えで誤魔化しつつも声を出して歌ってみると、これまでとは違う感情になった。特に『君の唄で生きていたい』では日頃押さえつけている感情が身体から溢れ出て涙が出てきそうになった。自分を大事にしていいんだ、ムカつくことにムカつくって言っていいんだって思える。「非難すべき奴 後ろ指さして」(K DUB SHINE - キングギドラ、『真実の弾丸』)。BLUEGOATSのスタンスは、ここで日頃のストレスを解消してまた明日から仕事を頑張ってね、ではない。そのむかつく奴、一緒に殺そうぜ、なんだよね。癒しとはヴェクトルが異なる。(特にダイナマイト・マリンさんの歌詞や言動からそれを感じる。)自分も歌うことを前提にすると、曲の聴き方が変わる。ヴォーカルを音として聞き流すのでは不十分だ。自ずとリリックを意識するようになる。我々が共に歌うことが特別な意味を持つのも、そのリリックをメンバーさんが書いているからこそ。次に行くときまでにもっとリリックを覚えて、もっとBLUEGOATSの音楽と、BLUEGOATSのリリックと、一つになりたい。終演後、明日ヘッド・スパに行かなくてもいいかもしれないと思えるほど気分が楽になっていた。BLUEGOATSは今の私にとって、効果が一時的であったとしても、間違いなく救いである。
コンサートの後にトーク・ショー。(開始時間が延びた。メンバーが疲れてまだ汗がひかないので、と事務所の紳士が説明し、フロアに笑いが起きた。)豪華な構成。ゲストに中森明夫氏。おそらく大した事前打ち合わせも台本もなくポンとステージに席を設けられ、後はお願いしますという感じだったように見えた。それでも氏はBLUEGOATSのメンバーさんからうまく話を引き出しつつ(アイドルになったきっかけ、これまでの人生で一番怒りを感じたこと、炎上したことなど)、自身の知識や経験も披露し、トーク・ショーを見事に回していた。私は大学一年生か二年生の頃に受けていた授業のゲスト・スピーカーとして氏が登壇していた記憶がある。友人(Y君)が彼のファンで、最後のQ&Aで手を挙げて質問をしていた。もうあれから約20年経つ。BLUEGOATSのヘッズのほとんどは氏のことを知らなさそうだった。そんな彼らも思わず聞き入ってしまうほど聞き応えのあるトーク・ショー。プロの技。BLUEGOATSを一言のキャッチ・コピーで表すと何ですかという三川プロデューサーの不躾な質問に中森氏が鮮やかに返した「怒り萌え」という回答が、私はとても腑に落ちた。中森氏曰く、可愛い感じで笑顔を振りまき、パンチラチックな衣装で踊るという一般的なアイドルとは違って、怒りをぶつける。それによって生まれる可愛さを表現しているのがBLUEGOATS。(たしかに言われてみると怒っている女性が醸し出す色気は存在する。何年か前にハムロックさんという紳士が尾形春水さんを中傷する動画をYouTubeに上げたとき、怒った尾形さんが明らかに顔を上気させながらTwitterの動画で喋っていたのを見、私は彼女に性的魅力を感じた。)
「お金よりも大切なもの」に気づく手段、それは「怒り」でした。自分でも少々驚いたのですが、これ以外に答えがありません。[…]
「怒り」が「損得」を上回った時に、人は、損得を離れて、損得以上に大切なものに目を向けることができます。
(山崎元、『がんになってわかったお金と人生の本質』)
チャンチーさんとチェキ。撮る直前、私の左肩付近にちょこんと頭をくっつけてくださって、ちょっと好きになった。少し前に公開されたこの動画に関する話をした。前から彼女に話したいと思っていた。今日のライブが楽しくてイヤな気分が一掃された旨も伝えた。20時過ぎ、会場を出る。歩いて数分のTHE PIZZAでD氏と合流。閉店時間は21時のはずだが、既に店員の青年が漂わせるすぐにでも店を閉めたいVIBESは満タン。私、マッシュルーム、ペパロニ、ラム・コーク。D氏、マッシュルーム、コロナ。後からG君も合流。彼はマッシュルーム。(飲み物は忘れた。)THE PIZZAを出る。「あー、食った食ったー」とD氏。「食った食ったって一枚しか食べてないでしょ」と呆れる私。いやもう限界っすよ的なことを言っていたD氏が、次に入ったミスター・ドーナッツではドーナツを二つ購入している。「結構食うんすね」「別腹なんで」。下北沢駅前の喫煙所でしばらくチル。そして散る。