2025年4月29日火曜日

LiVS ミニアルバムリリースイベント (2025-04-17)

遠いよ川崎。家からタワ・レコまで一時間くらいかかる。行かないつもりだった。平日。重要な公演ならまだしもrelease party。前の日に横浜F・マリノス対清水エスパルスを観に新横浜まで行っている。二日連続で神奈川県に行くンすか。だるいって。疲れるって。厳しいって。17時にコンパクト・ディスクの予約受付開始、18時半集合、19時開演。普通に定時まで働いていたら間に合わない。二日連続で早く上がる必要がある。そこまでして行くか? この日はいいっしょ。近場でおとなしく過ごして、ゆっくり銭湯に浸かって身体を休めるべきでしょ。うんうん、そうしよう。という常識的な考えを持っていたが、この日のために当然のように仙台や岐阜から遠征してくる紳士たちの存在を知るとそんなことは言っていられなくなった。彼らは私にとって目撃者(LiVS支持者の総称)かくあるべしという基準を示す存在である。たしか梶川裕嗣選手がインタビューで言っていたと思うのだが、数年前の強かった横浜F・マリノスには選手たちがお互いにもっと出来るだろと要求し合う(=「プッシュする」)文化があった。トレーニングで全力を出し切っていないと浮く雰囲気があったという。そうやって選手同士で高め合うサイクルが強いチームにはあるのだろう。長距離バスや新幹線を駆使して東京近郊の現場にほぼ毎回現れる紳士たちは、私にとって誰よりも率先してハイ・プレスをかけてチーム・メイトたちを鼓舞していたマルコス・ジュニオール選手のような存在である。

川崎には行ってみたいバングラデシュ料理店があった。なかなか来る機会のない街なので入ってみることにした。タンドリ・チキン・セットJPY1,750、シャミ・ケバブ 2ピースJPY950。足すとJPY2,700だが、請求額はJPY2,950だった。おそらく差額のJPY250はタンドリ・チキン・セットのビールに無料サーヴィスのような雰囲気で提供されてきたナッツの分なんだろうとは思うが、モヤモヤする。味はおいしかった。だがそれ以前の問題として、会計が明朗ではないと人として信用が出来ない。(前にも池袋のサンシャイン近くにある某中華料理店で晩酌セットを頼んだらお通し代を請求されて絶句した。もちろんその店には二度と入っていない。)メニュウをざっと見ても首を傾げる部分があった。複数料理の盛り合わせがお得になっていないように見える。むしろ個別に頼むよりも高くなっているようである。そして私が通っているバングラデシュ料理店に比べて明らかに値段が高い。もちろん値段設定は店主の自由。それに見合う価値や満足度を提供しているかについて、明言は避ける。一つ言えるのが、私は再訪しないということだ。これからLiVSのコンパクト・ディスクを買うってのに無駄に金を使ってしまった。私の中での川崎という街への評価も下がった。苦々しい気持ちで店を出る。

ちょっとイヤなことがあったときはいいことが起きる前触れだと考えるようにしている。そして実際にいいことがあった。LiVSのrelease partyの整理番号8番を引いた。一回目で79番。どうやら80番までしか番号がないらしい。良番にそこまでこだわらないとはいえさすがに限度がある。せっかく川崎とかいう僻地まで来たんだし。二回目のチャレンジ。8番。大逆転。先ほどのバングラデシュ料理店を完全に許した(再訪はしない)。コンパクト・ディスク一枚がJPY2,200だから夕食代がちょっと高かった分は余裕で取り返している。某紳士は5-6回引いて一番良くて40番台くらいしか出ていなかった。コンパクト・ディスクを予約する前、私がタワ・レコに着くとリハーサル中だった。メンバーさんたちが私服姿だった。ユニちゃんの服装の肌面積の広さに注意力の9割を持っていかれ、他のメンバーさんの記憶があまり残っていない。マルコちゃんは上下ダボ・ダボだった。バンジー・ジャンプのときもオーヴァー・サイズドな服をお召しになっていた。そういうのが好きなんだね。リハーサルが終わって、パー券を確保し、近くのトイレを利用し、出てくると通路にメンバーさんが溜まっている。スズカス・テラさんと目が合い、気まずくなる。慌ててトイレに引き返す。メンバーさんたちの気配が消えるまで(しばらく話し声が聞こえた)恐怖におののきながら待った。アイドルさんと不意に“人として”遭遇してしまうとパニックになってしまう。お金を払った上でアイドルと支持者という関係で会わないと精神が耐えられない。なぜならこの物語(アイドル)はフィクションだからだ。どんな形であれ“人として”アイドルと交じり合うことはあり得ない。フラットに“人と人”になって、フィクションが崩れ去った刹那、彼女たちから見れば私は単なるキモいオジサンなのである。

LiVSがステージにいて私がフロアにいる間は、そして特典会という形式でLiVSと接している間は、これがフィクションの世界であるということを忘れていられる。というよりフィクションをリアルと心から信じることが出来る。大好きな音楽で繋がるあの時間。フィクションではあるけど、そこに嘘はない。フィクションであるからといってそれが一概にフェイクで価値がないということではない。フィクションに本気になれるからこそ人間の文明は発達した。人間を他の動物と区別する最大の分岐点はそこだろう。(人類を戦争に駆り立ててきた一因も国民国家や人種といったフィクションへの信仰である。)フットボールとかいう玉蹴り合戦や、アイドルとかいう音楽と若い女を混ぜた麻薬に大の大人が熱中し、感情を揺さぶられる。人生を捧げてしまう。馬鹿馬鹿しいかもしれない。でもそれは美しい。人生にはそれ以上の意味が本当にあるのだろうか?

ところで、目撃者の皆さんはこのrelease partyで予約したコンパクト・ディスクを受け取るのだろうか? 私はHello! Projectのrelease partyに参加していた頃、予約したコンパクト・ディスクを受け取らないと売上枚数にカウントされないと聞いたことがある。それが本当だとすると、実際に我々が購入した枚数に比べて正式な売上枚数はかなり少なくなることが予想される。遠征組がこれだけ多いと店舗で受け取れというのも無理がある。かといって一会計(=実質的に一枚)毎に送料JPY900を払って宅配便で受け取れというのも殺生な話である。私は東京住まいなので予約したコンパクト・ディスクは極力、受け取るつもりである。

私にとって川崎といえばフロンターレだが、音楽だとA-THUGさんである。SCARS(A-THUGさんが属する集団) in the building。(※ロックに行こうぜ! なぞと公演中にLiVSのメンバーさんが煽ってくることがよくある。私はイエーイとその場のノリで返すが、実のところロックはよく分からない。私はヒップホップで育ってきた。)A-THUGさんのラップは言葉の選択が絶妙。並外れた言語感覚、文才、ユーモア。歌唱や作詞が技術的に凄いという感じではないのだが、他の人が練習して同じにはなれないであろうラップ。写メ/チェキで使えるポーズはないかと画像検索したら、A-THUGさんが親指と中指の先端をつなげて残りの指を立てるハンド・サインをよくしているのに気付く。Grokに聞いてみたところアメリカ手話(ASL)でI love youを表すらしい。俺が好きな川崎のラッパーがよくやるポーズで…。A-THUGっていうんだけど。BADHOPっているじゃん。BADHOPの先輩っていうか。ひとつ前の世代で…。という感じで雑に説明する。(マルコちゃんはBADHOPのことは何となく知っている様子だった。)アーティスト名を聞き返してくるマルコちゃん。エーサグね、聴いてみる。マルコちゃんの口からエーサグという言葉を聞けるとは。何だか可笑しかった。その余韻を噛み締めながら、帰りの電車でSCARSの“THE ALBUM”を聴く。改めて聴くと名盤である。あとSpotifyにあるやつだと“YEEEAH THUG”(Various Artists扱い)が非常にお勧めです。