最低限のことをやってただ生き延びるだけでも楽ではない、この猛暑。今月のLiVSがやることになる公演の数、実に20。このツアーでは千穐楽の東京を除き、昼は対バン、夜は単独公演の二本立て。LiVSのパフォーマンスは生ぬるいものではない。毎回、すべてを出し尽くすような懸命さ、必死さを伴う。それをこの頻度でやるというのはさすがに若いから何とかなるという領域を超えている。この過密日程を誰一人として欠けることなく駆け抜けているLiVSのメンバーさんたち。細かい体調不良くらいはあるのかもしれないが、決して表には出さない。弱音を吐かない。プロフェッショナル。すべてをLiVSに捧げているのが伝わってくる。生半可なことではない。尊敬する。社長だったはずのササガワさんが謎に消えた運営チームにおいて、明らかな人員不足下で物販からチェキ係から何から何までをこなしメンバーを支えてくれるSuzukiさんらにも頭が下がる。私などお金を払って観に行っているだけの気楽な立場である。とはいえフル・タイムで働きながら月に十何回もLiVSに通うというのはそれなりにギリギリの戦いだ。他のことをする時間がなくなる。LiVSにはまってからというもの、ほとんど本を読めなくなっている。ポルノを観る暇もなくなった。意図せずしてポルノ断ちに近いことを実現できている(ちょっとは観ている)。
人は人生を愛しているときには読書はしない。それに、映画館にだってほとんど行かない。何と言われようとも、芸術の世界への入り口は多かれ少なかれ、人生に少しばかりうんざりしている人たちのために用意されているのである。どっちなのか、分からない。私がLiVSにはまっているのが「人生を愛している」状態なのか、それとも人生にうんざりしているからLiVSという「芸術」に没頭しているのか。いずれにせよ、このような引用をするためにも本は読まないといけない。
(ミシェル・ウエルベック、『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』)
今日の会場、F.A.D YOKOHAMA。最寄り駅は石川町。中華街の辺り。横浜出身のシティ・ボーイでお馴染みの私。実際のところこの区域にはほとんど足を踏み入れたことがない。狭義の横浜である横浜駅周辺ばかりをウロウロしていた。LiVSが私が生まれ育った横浜に来てくれるのは嬉しいが、地元と言えるほど会場付近の土地勘はない。Google mapの助けを借りながら移動した。ここに来るまでは #KTCHAN とオジロザウルスを聴いて横浜気分を作り上げた。F.A.D YOKOHAMAは入口前に溜まれる広い空間があって、タバコも吸えて(私の場合は電子シーシャ)、近くにはコンヴィニエンス・ストアもあって、入場までの時間をストレスなく過ごすことが出来た。開演は対バンが12時、単独公演が17時半。夜はまあ終わってから食えばいいとして、昼飯を食うのが難しい。インディーズ・アイドルを観るようになってから11時半とか12時に開演時間が設定されることが多くなった。今では受け入れているけど、数年前の自分なら絶対に避けていた。私は休日の昼飯を非常に重視しているからだ。朝に食べたのはスイカとどら焼きだけ。対バンの途中から腹が減って、意識が薄れてきた。その上、近くにあったスピーカーが発する重低音が身体に響き、ちょっと朦朧としてきた。そんな私の目を覚ましてくれたのがLEIWAN。トリを務めたLiVSのひとつ前に出てきた集団。迫真のパフォーマンス。初見の客をも引き込む力。斜に構えた傍観者ではいさせてくれないだけの圧。ステージとフロアの間にある柵に脚をかけ、精力的にふとももを見せていくメンバーさんたちの意識の高さ。肌の露出は視聴者を増やす。身も蓋もない事実。だからアイドル集団にはグラビア担当が一人はいることが多い。そこで集めた注目や知名度を単なるエロ目線で終わらせるか、自分たちの音楽や表現を好きにさせるフックとして活用できるか。それは当人たちのクオリティ次第。LEIWANは、私が最近観たLiVSの対バン相手の中では一番面白かった。『〇〇アイドル撲滅運動』の攻撃的なリリックにはゾクゾクした。彼女たちの素晴らしいパフォーマンスのおかげで、仕上がった状態でLiVSに向き合うことが出来た。登場してすぐのユニちゃんの煽りが最高にカッコ良かった。それで一気にLiVSの空気が出来上がった。最初の掴み。あれは大事。(今となってはユニちゃんの煽りをもう聞くことが出来ないのが残念でならない。)LEIWAN新規特典の無料チェキ(実際には写メ)で澪・モンスターさんの列に並んでいるとき(澪・モンスターさんだけで二列、他のメンバーさん全員合わせて一列。極端に人気が偏っていた。澪・モンスターさんだけ抜きでもあるのかと思うくらい列の進みが遅かった。あとあれだ。メンバー・カラーが緑で身長が一番低い淑女がちょっと嗣永桃子さんに似ていた)、髪を緑に染めた運営の男性が私の知人のLiVS支持者に馴れ馴れしくタメ口を聞いていて、ちょっとここに通うのはきついかもなと思った。どうやらこの業界には大学を出て大企業に就職するような人生ではなかなか巡り合えないタイプの人たちがちょくちょくいるらしい。(敬語を使えなくてもチェキ撮影が上手かったら全然許すよ!)それで思い出したけど入場時にドリンク代を払う際、白髪交じりの長髪を後ろに束ねた中年男性の係員がボソッと何かを言ってきていたようなのだが聞き取れなかった。すると向こうが勝手に軽くいらつきながらお目当ては? と言い直してきた。聞こえねえよ、馬鹿野郎。腹から声出せよ。男だろ? 仕事だろ? と言いたかったところだが、そこで悪態をついたところで何もいいことはない。「楯突いたってロクに得なし まあ慣れるんだここ独自の暮らし」(ライムスター、『プリズナー No. 1, 2, 3』)。LEIWAN以外だと千葉の対バンにも出ていたLucyも良かった。前に見たときにもカワイイなと思っていた淑女が今日はツイン・テールにしていて、スタイルのよさとお顔も相まってまりあんLOVEりんこと牧野真莉愛さんに似ていた。ただ、音楽は良くも悪くも正統派というか、普通というか、飛び抜けた面白さみたいなのはないように感じる。いや、いいんだけどね。月刊PAM(二人組だが片方が体調不良で今日は一人の出演)はパフォーマンスの強度は低かったが(いつもはもっと盛り上がる曲をやるらしい)トークが面白かった。ただ後で聞いて知ったのだが特典会ではオタク側にマスクを強制しているらしい(なお月刊PAM側は当然のように着用しない)。どういう神経で、どういう理屈なんだ。これ以上は書かない。分かっている。分別のある大人はこの段落に書いてあるような悪口っぽいことをインターネットには書かず、知り合いのオタクに口頭で愚痴ってそこで発散するものだ。私は何年も前にTalib Kweliのリリックを読んでいたら(詳細の記憶はおぼろげだが)、ゲスト出演で呼ばれたクラブに入ろうとしたら入り口でセキュリティに止められてムカついたとか、テレビを観ていたらまた黒人の少女が警官に暴力を振るわれてムカついたとか書いてあって、これがヒップホップなのかと感銘を受けたことがある。卑近な怒りや不満を押し殺すのではなく、堂々と表明する。そこから生まれる表現がヒップホップなんじゃないか。私はヒップホップに影響を受け、助けられてきた。自分なりにヒップホップでありたいと思っている。あとあれだ、Chalcaという集団もいた。前に池袋harevutaiの対バンで観た。ただ、申し訳ないが彼女たちに関しては前述の弱った意識状態で観たため、あまり印象に残らなかった。とはいえ二回観てピンと来ないということは私がはまる要素はなさそう。LiVSを含め5組もいて、各組が30分。少し押したが概ね時間通りの進行。5組が同時に特典会を開催し、ごった返しでchaos状態のフロア。LiVSの特典会はマルコ以外にユニちゃんとランルウさんに行った。ユニちゃんにはマリノスはきっとJ1に残れるという話をした。彼女が2022年からマリノスを観始めたこと、それまでは清水エスパルスを応援していたことなどを話してくれた。それが私が彼女と交わした最後の会話となった。内容がポジティヴだったのは救い。マリノスのJ1残留はもう無理だという話をしたこともあるので。ランルウさんは私が入場するときに(マルコと二人でチラシを配っていた)マリノスですか~? と私が着ていたシャツ(2020年のスペシャル・ユニフォーム。27 KEN)を見て声をかけてくれていた。いつもマリノスでストレスを受けてLiVSに癒してもらっているんだよ。逆はないの? 今年はマリノスが調子悪いからと答えた。マルコは私が持って行ったマリノスのマフラー(2022年シーズン優勝記念)の手の込みように関心し、LiVSでもこういうの作ってほしいと言っていた。特典会を終えて私が会場を出たのが16時過ぎになった。夜公演が17時開場。時間がない。ファミ・マでサラダ・チキン(ゆず胡椒味)とゆで卵二つ。モカ・ブレンド(S)。何だか気分が落ち気味。はっきりとした要因が分からない。まあそもそも疲れ気味だったし、空腹だったし、時間が長かった。約30gのたんぱく質を摂ったおかげなのか、夜の単独公演では幾分か盛り返した。後半からギアが上がってきた。一、二回は本気で気持ちの入ったケチャをすることが出来た。昼の対バンでチェキ券と写メ券をJPY8,000分買っていたので夜は公演が終わったらすぐに帰るつもりだったが、自分のメンタル・ケアのためにどうしてもマルコと話したくなってチェキを二枚買った。夜の私は #KTCHAN のグッズteeに着替えていた。 #KTCHAN は横浜出身なんだよねと言うと、そっかー! とマルコは目を丸くしていた。 #KTCHAN 地元が戸塚駅で、俺は保土ヶ谷駅で、という話をした。彼女は戸塚にも保土ヶ谷にも行ったことあるという。保土ヶ谷駅前にマックがあるのを知っていた。俺の実家が保土ヶ谷だっていう話を #KTCHAN にしたことがあるんだよね。そしたら「ちっか!」って。そのときの #KTCHAN の顔が思い浮かぶと言ってマルコは笑っていた。今の私の髪形、 #KTCHAN みたいじゃない? 左右を触覚のようにしていて可愛かった。ライブ中、ずっとその触覚をつたって汗が垂れ落ちていた。そういえば今日驚いたこととして昼も夜も“He Meets”をやらなかった。夜飯は中華街を完全無視し、横浜駅前の磯丸水産でほっけ焼の定食とホッピー(黒)を頼んだ。