二日前に発表されたユニちゃんの電撃脱退。当日中には跡形もなく消えていた彼女のソーシャル・メディア・アカウント。あまりにもあっけない幕引き。最後に彼女が残したひとつのトゥイート(それも当日中にはアカウントごと消失)を除けばお別れの言葉をご本人のお口から聞くこともないまま、ユニセックスさんはLiVSの構成員としてのキャリアを終えた。またか。コチャキンTVさんのときもそうだった。この唐突さ、スピード。横浜F・マリノスがスティーヴ・ホランド監督を解任したときも発表自体は突然だったが、十分に予想は出来ていた。成績が悪いから。選手交代が下手だから。このままでは辞めさせられるだろう。なんなら辞めてほしい。早く辞めろやとまで私は思っていた。それに対し、ユニセックスさんにLiVSを去ってほしいと思っていた目撃者(LiVS支持者の総称)はいなかったはずである。彼女はLiVSの楽曲になくてはならない、唯一無二の歌声の持ち主だった。あの気怠げでねっとりした、クセになる独特の声と歌唱。たとえば仮に歌のうまい誰かをLiVSに補充できたとしてもユニちゃんの個性を再現することは出来ない。いい悪いは別にしてユニちゃんが歌っていた頃のLiVSとはまた別物になってしまう。それはもちろん他のメンバーさんにも言えることではあるが、こと歌声に関してはユニちゃんは特別な存在だった。LiVSの音をLiVSの音たらしめる個性だった。それにつけてもこの発表から除籍までの短さよ。一般的にアイドルは辞める間際に特需が生まれる。二度と会えなくなる前に、最後に観ておきたい。最後にこれまでの感謝を伝えたい。支持者側からそういった欲求が生まれるのは自然なことだ。それに乗っかってひと儲けをしようともせず、スパッと切ってしまう。LiVSでは今後もこれが普通なのだろうか。もはや私は美学すら感じ始めている。もしアイドルが一般的な職業であるなら、いきなり今日で辞めます(辞めさせます)というのを正当化するのは難しい。だが、もしアイドルが流れ星であるならば、眩い輝きを放った次の瞬間に消えてなくなるのが当然である。
ユニちゃんご本人を含むLiVS(メンバー、運営)内では降って湧いたような話ではなかったはずである。発表時の文やメンバーさんたちの反応を見るに内部では前々から亀裂があってそれが埋められない段階まで来たからけじめをつける(つけさせる)ことにしたという雰囲気が感じられる。我々は経緯を知らないし、知らされることはないし、知る必要もない。であれば、中途半端にユニちゃんが悪いことをしたような書き方をしなくてもよかったのではないだろうか。一身上の都合によりじゃないけど、適当に濁した文言でもよかったんじゃないだろうか。その点が私には引っ掛かる。LiVSには困ったときにこいつを叩いておけばいいというスケープ・ゴートがいない。何か不満があったとき、Hello! Projectであればつんく、西口猛、橋本慎といった紳士たちを叩くことで溜飲を下げることが出来た。LiVSにはそういう分かりやすい、権力を持ったオジサンがいない。今LiVSの運営と言えるのは実質的にスズキさん一人。あとはフォトグラファーの伊藤さん(ナイス・ガイ)も運営チームの一員ではあるが株式会社ALL-INc.(LiVSを運営する会社)に所属はしていない。スズキさんは肩書上はプロデューサーのはずだが物販を捌き、チェキや写メの撮影まで行っている。いつも感じよく対応してくださる。我々が楽しめるように、LiVSが安心して活動できるように尽力しているのが伝わってくる。そんな彼女を“ユニちゃんを辞めさせたクソ運営”として叩くことは出来ない。かつてはササガワさんがいた。氏にはややヒールのヴァイブスがあった。目撃者の怒りや悲しみを受け止めるサンド・バッグとしての適性があったのかもしれない。でも彼はもういない。そもそもLiVSは運営やプロデューサーが独裁的に物事を決めてメンバーに押し付けているというわけでもなさそうだ。(たとえば前に特典会でミニ・マルコchanに髪形を変えるときに運営さんの許可っているの? と聞いたら要らないと言っていた。厳しい事務所だとその自由はないはずである。)大人が、運営が、事務所が、ではなく、メンバーたち自身を含めたLiVSとしての決断として受け止めないといけない。
ユニちゃんショックからたったの二日間。我々が状況を呑み込むことも、受け入れることも、感情の整理をつけることも出来ないまま迎えたツアー・ファイナル。開演前に会場付近で他の目撃者に聞いたところ、今日は超最高チケットが18人くらい。最高チケットが6人くらい。人間チケットは昨日の時点で36番、つい先ほど買った人が50番くらい。ユニちゃんの脱退を受けて、いてもたってもいられず、駆け込みでチケットを購入した人たちが一定数いたようである。理由はともかく結果としては下北沢SHELTERはいい感じに埋まっていた。脱退の特需がなければツアーの千穐楽としてはやや寂しい客入りだったかもしれない。ユニちゃんが体調不良を理由に欠場した8月5日(火)の #夢際無銭 。あのときはまさかその四人でそのまま正式な体制として続くとは思っていなかった。あのときは突発的な非常事態で、なおかつユニちゃんは近いうちに戻ってくるという前提(思い込み)があった。これはフットボールで言うと後半途中に左サイド・バックが負傷退場するもベンチに本職がおらず、本来はボランチの選手が左サイド・バックのポジションに回ることで残りの時間を凌ぐようなもの。一時的な応急処置。歌割やフォーメーションの急な変更に対応できるだけでもスゴい。ユニちゃんがいたときと同じクオリティを出せないのは当たり前。だから8月5日(火)の四人でのパフォーマンスを私は好意的に見ていた。ただユニちゃんはもうLiVSではない。残されたこの四人がフル・メンバーのLiVS。となるとまた話が違ってくる。ユニちゃんがいない“にもかかわらず”これだけ出来ているという見方をすることはもう出来ない。それは今の四人に失礼にあたるだろう。その視点、基準で今日のLiVSを見ると、集団としてのアウトプットのクオリティは落ちていると言わざるを得なかった。ユニちゃんの穴(※下ネタではないです)を感じざるを得なかった。物足りない場面が多々あった。それが正直な感想。同じ歌、同じリリック、同じメロディだからといって、その辺の会社員の定型業務のように簡単に誰かが代行できるわけではない。特に“He Meets”がセット・リストに含まれていなかったのが、今の四人ではまだ表に出せるクオリティにないという判断なんだろうな、と勝手に邪推した。“BACKLiGHT”は披露されたけど、これじゃない感。料理で重要なスパイスが欠けているような。
とはいえ翼の片方を失ったような手負いの状態のLiVSが、それでも今の四人で出せる最大限の力をステージで表現し、目撃者側もそれぞれがさまざまな感情を抱えつつ、一緒にライブを作り上げた。そこには一体感があった。途中からいい感じにグチャグチャになって、いいフロアだった。四人体制での新しい歌割でミニ・マルコchanにケチャするタイミングは、五日前の対バンで予習できていた部分もある。オフ・ザ・ボールの動き。今日の私はフロア後方にいたのだが何度か会心のタイミングで最前中央にケチャをキメることが出来た。メンバーのひとりひとりが、今回のメンバー脱退について、ステージで思いを話してくれた。彼女たちからは、LiVSという集団を続けていくこと、この場所を守っていくことへの強い意志が感じられた。信じてほしい、という言葉がランルウさんとミニ・マルコchanからは出てきた。技術、クオリティ、スキルは言うまでもなく重要で、私はそれらを非常に重視している。しかし人間が集まってやることだから、気持ちは大事。横浜F・マリノスにはこういうチャントがある。
ひとりひとりの気持ちを合わせて 辿り着こうぜ 最高の場所へ
戦おうみんなで 横浜F・マリノス 俺がやってやるって気持ちが大事さ
フットボールのチームのように戦力とかスカッドみたいな見方をするとユニちゃんが抜けるのは大きすぎる痛手。でもおそらくLiVSが気持ちをひとつにして今後も活動を続けていくために必要な判断だったのだろうと私は思っている。
私にとっては、LiVSとはミニ・マルコchanのことである。ミニ・マルコchanがいなければLiVSではない。ミニ・マルコchanがいればLiVSである。つまりミニ・マルコchanの存在がLiVSを成立させるための必要十分条件である。私にとってLiVSとは一にも二にもミニ・マルコらの集団なのである。(実際にはあり得ないだろうが)もしLiVSがミニ・マルコchanひとりになったとしても、私はLiVSを追いかけ続けるつもりだ。栗原勇蔵さんは「サッカーよりもマリノスが好き」と言っていたが、今の私はLiVSよりもミニ・マルコchanが好きだし、アイドルよりもミニ・マルコchanが好きだ。今回の脱退でユニちゃんを支持していた目撃者の気持ちが離れてしまうのは当然だと思う。むしろこれで前とまったく変わらぬ熱量で応援できる方がおかしい。私もミニ・マルコchanが同じような去り方をしたらしばらく(二度と?)現場には行けないと思う。曲を聴くのもつらくなると思う。でも、私にとってはLiVS=ミニ・マルコchanなので彼女がいるかぎり私はLiVSを観続ける。
ユニちゃんの特典会には数回だけ行ったことがある。ステージで見る印象だとツンとした人なのかなと思っていたけど、実際に対面してみるとスゴく優してお茶目な面もあることを知った。横浜F・マリノスのファンだというのを某紳士に教えてもらってから何度かマリノスの話をさせてもらった。ツイ・キャスの配信でカレー味のうんこかうんこ味のカレーのどちらがいいかのアンケートを取っていたのを見て印象が変わった。それで思い出したが、最後にユニちゃんに忠告しておきたい。私の友人のひとりが彼女のうんこを食べて病院送りになったことがある。ユニちゃんは気を付けてほしい。