大宮、東京、名古屋。申し込んだ3公演、すべて当選。ひとつ外れて2公演、あるいは最悪、名古屋だけ当たって残りは落選を想定していた。全当選はベスト・ケース・シナリオでありベスト・ケース・シナリオではなかった。大宮、東京、名古屋の順で12月12日(木)、12月19日(木)、12月21日(土)。自分から申し込んでおいて変な話だがこの短期間に3公演は多い。もしあらかじめ埼玉と東京の当選を確約してくれるなら名古屋は申し込まなかったかもしれない。だって往復の移動費だけで2万円以上かかる。とはいえ目先の費用をケチることで上原ひろみさんの音楽を生で体験する機会を逃すことは避けたい。氏の音楽にはそれだけの価値がある。もともと12月はほとんど予定がなく、予定が入る予定もなかった。後になってその名古屋公演の日にBLUEGOATSのrelease party(それもチャンチーさん作詞曲の)開催が発表された。その日に被せてくるとは。痛恨だった。結局それ以外にも12月23日(月)にLiVS、12月27日(金)に #KTちゃん 、12月28日(土)にLiVS、12月29日(日)にBLUEGOATSと、立て続けに年末の現場スケジュールが決まっていった。現場に不足することがない。むしろ消化しきれない。最初に分かっていれば申し込むのは埼玉と東京だけにしていたと思う。LiVSとの出会いは想定外だった。11月30日(土)の対バンチケットを買うまでこの集団の存在すら知らなかった。
在宅業務を早く切り上げ17時頃に大宮駅に到着。せっかく普段来ない場所に来たのだから何か食べよう。18時開演まで1時間半。たっぷり時間はあるはずが、思っていたより余裕がなかった。18時半より前には会場に入らないといけないし、そもそも店選びや徒歩の時間も加味すると食事というのは意外に時間を要する。考えてみると普段も飲食店への往復と店内の待ち時間、飲み食いする時間で昼休みの1時間は簡単に過ぎてしまう。駅の付近を軽く歩くが目ぼしい店がなく。飲み屋に入るほどの時間はなく。とはいえ軽く一杯は入れておきたい。なんてやってるうちに時間を使いすぎた。立ち飲み日高に入店。黒ホッピー、枝豆、イワシ・フライ、カシラ(塩)、レバー(タレ)。20分以上経っても来ないコロッケ。かといってもういい時間になってきた。今からコロッケが来たところで食っていたら開演時間ギリギリになってしまう。コロッケひとつのためにとるべきリスクではない。レジへ。会計のときにコロッケが来なかったですと言うとその分を金額から引いてくれた。店を出るのが18時15分すぎになった。会場の場所を調べたときに駅から直結していると書いてあったはず。なので安心していたのだが直結はしていなかった。開演まで15分を切っている中、会場の正確な場所がまだ分かっていない。足早にGoogle mapの示す方向に向かう。変な汗が出てくる。
見つけた。入館。お手洗いで陰茎から尿を放出。入場。急ぐ。Teeシャツ購入。欲しかったサファリ色のLは完売。じゃあ黒でいいや。凄く感じのいい売り場の婦人。JPY3,500。席に着いたのが開演5分前くらいだったと思う。真冬。バッチリ決まったコーディネート。古着フーディの上に大きめのネル・シャツ(SEDAN ALL-PURPOSE)、ダウン・ヴェスト(SEDAN ALL-PURPOSE)。クロークやロッカーがあるわけではない(もしあったとしても預ける時間的・精神的余裕はなかった)。左右の席に客がいる中、立ち上がってヴェストとシャツを脱ぐ。大事な服。雑には扱えない。狭い空間。なんとか足元に収める。軽く汗ばむ。左右の人たちからするとなんだこいつ落着きねえなという感じだったに違いない。呼吸を整える。
なんだか間延びした雰囲気。だったように感じる。ちょっと眠たい感じというか。私が眠かったという意味ではなく。大宮ソニック・シティ大ホール。特別、物理的に広いわけではないが、だだっ広く感じた。平日の18時半に、JPY8,500するチケットを購入して駆けつける。それだけの熱意がある人たちが集まったはず。なのに、なんかこう…ピリッとしない。よく理解が出来ない。上原ひろみさんを日本で観られる稀少な機会。ましてや埼玉でなんて年に一度あればいい方なのに。盛り上がりがいまいち。(いや、そんなことねえよ。十分、盛り上がってたよっていう人もいるかもしれない。そうだったのかもしれない。単に私の気持ちが高揚しなかっただけで、それを勝手に周りに投影し、周りのせいにしているだけなのかもしれない。分からない。)私の中ではふがいなさ、歯がゆさよりも諦めが強かった。まあこんなもんか。埼玉だし。埼玉に何を期待するってんだよ。元を辿ると儒教が諸悪の根源。予定調和を崩す、輪を乱す、流れを断つ、水を差す、周りに合わせない、お行儀よく静かにしない、そういう人をとことん白眼視して迫害する。ほかの人に迷惑をかけないこと、歯向かわないこと、従うこと、順番を守ること、そういった規範への過剰な適応。電車が人身事故で止まったら、電車を止めて世の中に迷惑をかけたかどで自殺者がソーシャル・メディアでなじられる。それが正論として通る社会。子どもの頃からずっとそうやって育てられてきて、そういう価値観で生きてきて、このコンサート中に限っては自由に、周りを気にせず、空気を読まず、それぞれが好きに声を出して、演奏に熱狂的に反応する、なんてのは難しいよね。とはいえ、それが実現したこともある。去年の渋谷がそうだった。あの公演が恋しい。アレをもっとやってくれよ。ライブハウス(和製英語)でさ。スタンディングでさ。着席のホールばっかじゃなくてさ。やっている音楽と、鑑賞形式(ホールでの着席)とのミスマッチ。やっている音楽と、客層(高い年齢層。音楽の一部になるのではなく、受け身で鑑賞しに来る人たち)とのミスマッチ。それが気になって楽しみきれない自分も周りに影響を受けすぎるジャップの一員。情けない。まあ、こういう日もある。私に関して言えば、11月30日(土)の対バン以来ずっとLiVSばかり聴いている。今日の公演は、自分の頭をジャズ、上原ひろみさんのモードに切り替えるためのウォーミング・アップのようになってしまった。東京と名古屋。残り2公演はもっと楽しめるだろうか? やや先が思いやられる。