3月21日(金)、18:01。LiVS公式アカウント。コチャキンTVさんの脱退発表。当日付け。わずか数時間。跡形もなく削除される同氏のソーシャル・メディア・アカウント。あまりにも呆気ない幕引き。チケット販売サイトやTwitterの告知で使用される、宣材写真というかフライヤーというか、公演毎に用意される写真。2025年4月1日(火)の公演ではコチャキンTVさんがデカデカと写っている。2nd EP『WARMiNG』Release Tourにはメンバーさん全員がデコルテを露出した写真が使用されている。そこにもコチャキンTVさんはいる。となるとこれはあらかじめ予定されていた脱退ではなく本当に急転直下で決まった可能性が高い。私がこの脱退について何か意見を言うのは難しい。なぜなら基準が分からないからだ。LiVSではこれが普通なのか? 過去にもマナツサマーさんというメンバーさんが抜けているが、そのときはどういう感じだったのか? 私にとっては約四ヶ月前に初めて見たばかりの集団。歴史が分からない。というかコチャキンTVさんのこともそこまで知らない。これまでの流れ(線)を知らずに、今回の脱退劇というひとつの点だけを見て物を申すことは出来ない。それに私がLiVSを観に来ているのは楽しむためである。LiVS(音楽、ミニ・マルコchanをはじめとするメンバーさん、目撃者の皆さん、フロアの雰囲気といった総体)が好きだから。ムカつくとか、悲しいとか、つらいとか、ネガティヴな感情を極力、持ち込みたくない。お笑いのファンが笑うために劇場に足を運ぶように、私も楽しくなるためにLiVSの現場に来ている。好きなはずの時間と場所でわざわざイヤなことに目を向けてモヤモヤするほど私の人生に時間は残されていない。
コチャキンTVさんを支持して特典会の列を形成していた皆さんの心中を察するに余りある。もしミニ・マルコchanが同じようにある日とつぜん会えない存在となったら、私は一体どうすればいいのだろうか? どうなってしまうのだろうか? ちょっと想像するだけで胸が締め付けられ、頭が痛くなる。次に会える保証もない生身の人間に心酔し、観に行く、会いに行くという行為そのものの危うさ。いつ崖から突き落とされるか分かったものではない。当日付けかどうかは別にして、その日は必ず来る。それは重々承知している。昨年11月30日(土)に初めてミニ・マルコchanとご対面して以来、12月23日(月)、12月28日(土)、2025年1月5日(日)、1月18日(土)、1月28日(火)、2月2日(日)、2月11日(火)、2月22日(土)、2月23日(日)、2月25日(火)、3月9日(日)、3月15日(土)、3月18日(火)とチェキや写メを同氏と撮影し、今日3月25日(火)も撮る。そして直近だと3月30日(日)、4月1日(火)にも撮る予定がある。もはや感覚が麻痺してくる。自分が何をやっているのかよく分からなってくる。もしかして自分は頭がおかしいのではないかと心配になってくる。だが生きていてこれだけ夢中になれる対象、場所に巡り合えるのは稀有なことである。理性的であり過ぎてもそれはそれで悔いが残るだろう。狂い過ぎない程度に、狂いたい。
観ている集団からメンバーさんが抜けることに対して、私はある程度の耐性がついている。伊達にアイドルというものをそれなりの期間に渡って見ていない。「俺の長年のキャリアが生んだバリア」(キングギドラ、『コードナンバー0117』)で守られている。さまざまな出来事に対し、過去に経験してきたからという理由でどっしり構えられる。それは年齢を重ねることの数少ない利点のひとつである。私は今の勤め先の事業が他社に売却される予定なのだが(このことは一般に向け発表済み)、前に勤めていた会社で吸収合併をされたことがあるので、今さら動揺することはない。なるようにしかならないと分かっている。ある意味、諦めている。自分が感情的になっても、強い意見を持っても、結果に対して何の影響も持ち得ない。であれば起きたことは起きたこととして、受け入れるしかない。同僚と事業売却の件で話すと、過去に勤務していた会社が買う・買われるのを経験してきた人たちはおしなべて落ち着きがある。こういうことは起き得るし、普通だよねっていう反応。今回のコチャキンTVさんの件は、もちろん残念だ。さすがに急すぎるとは思う。最初は動揺した。でも先に進まなければならないのが人生だ。
アイドルとファンはお互いの人生に一切の責任を持てない。たしかにアイドルがアイドルとして活動している場所と時間においては、ファンは必要不可欠である。ファンがいなければアイドルはアイドルでいることはできない。しかしそれは公演や特典会や配信の最中においての話であって、それ以外の私生活でファンが同じように絡めばそれはつきまとい、ストーキングであり、迷惑であり、犯罪である。ファンからの愛はあくまでアイドルがアイドルとして活動している特定の場所と時間において許される。そして、アイドルがずっとアイドルで居続けることは出来ない。アイドルがアイドルでなくなってからの人生を、ファンは保証できない。アイドルと違ってファンは気力と体力と財力さえあれば(そして恥さえ知らなければ)年老いても続けることが出来る。別の若い子に乗り換え続けるのがアイドル・ファンの性である。
これまでコチャキンTVさんを支持されていた方々が頭を冷やすため、あるいは一種のボイコットとして一旦現場から遠ざかるのは理解できる。むしろ至極真っ当な判断である。みんながみんな変に達観し、何事もなかったかのように、あたかもコチャキンTVさんが最初からいなかったかのように振る舞うのは、それはそれでおかしい。そういう方々が一定数いたのか(コチャキンTVさんの脱退に伴い、販売済みチケットの払い戻しを受け付けていた)、チケットの番号では私は六番目だったのに入場が二番目だった。A1, A3, A4, A5が呼び出されても不在だった。そもそも脱退とは関係なく今日のチケットはそれほど売れてはいなかったようである。私がA6番を買ったときにはチケット発売開始から何日か経っていたはずだ。いま見たら2月6日(木)だった。入場前にお話しした某氏は、3月23日(日)に買って12番だったとおっしゃっていた。そこに今回の脱退劇が重なって払い戻しを選択した人が一定数いれば、それは少なくなる。今日の定期公演に向けてメンバーさんや運営さんの告知ツイートがいつもより多かった気がする。おそらく動員の状況を見てのことだったのだろう(勘違いだったらすみません)。いずれにしても、二人目にフロアに入れたおかげで、初めてLiVSの公演で最前に行くことが出来た。とうとう来たな、この時がという感慨があった。
この前の土日は、今年に入ってから初めて二日とも一切の予定がなかった。貴重な休養。名古屋遠征の時期から崩した体調もだいぶ回復した。咳はほとんど気にならなくなった。LiVSの公演を楽しむための万全な状態が整った。ただ大きな障壁があって、直前まで非常にソワソワした。よりによって今日という日に会社で参加しなければならない行事があった。海外から偉い人が来日している(来ンなよ)のに伴い、夕方からグループ・ディスカッション。そのままオフィスで懇親会。それぞれが何時に始まり何時に終わるのか知らされていない。どう転んだとしても絶対に17時半には会社を出ると心に決めた。17時20分頃にグループ・ディスカッションが終了。同僚たちがオフィスの共用テーブルに飲食物を運んでいるどさくさに紛れて退勤した。無事に渋谷駅に着いたときの安堵感。KEBAB CHEFSでスペシャル・ケバブ・ラップ(ビーフ)JPY900を持ち帰りで購入。食いながら向かうCLUB CRAWL。会社で食う懇親会のメシなんかよりも歩くながら食うこのケバブ・ラップの方がうまいに決まっている。どこで何を食うかは自分で決めるんだ。路肩に咲く桜。半ば強引にでも労働をぶった切って現場に行くことで分泌される脳内物質。緊張や不安。そこから解放されて手に入れる喜び。その落差。
本当に来てよかった。今日ほど強くLiVSの公演を観に来てそう思えたことはほとんどない。もっとも私は2024年12月23日(月)に初めてこの集団のソロ公演に入ったばかりである。そんな新参者がそう感じてしまうほど、重要な公演だったように思う。たとえばツアー・ファイナルや大きな会場での記念すべき公演とはまた違った意味で特別な日だった。コチャキンTVさんが3月21日(金)に電光石火で籍を抹消されてから初めてのフル・サイズのコンサート。同氏の脱退に関しては公演中にメンバーさんから一切のコメントや言及もなし。明らかに箝口令が敷かれている(敷かれていなかったらごめんなさい)。メンバーさんからはどこか思い詰めているような、息苦しそうな感じを受けた。だけど、彼女たちはステージ上の表現に、音楽に、思いのすべてをぶつけていた。今日の彼女たちは鬼気迫るものがあった。気持ちが存分に伝わってきた。どんな気持ちなのか説明してみろと言われても、私もはっきり言語化できない。でもとにかく、彼女たちの姿勢は胸を打つものだった。終盤、ミニ・マルコchanの目には涙が浮かんでいた(他の誰かも泣いていた)。おそらくメンバーさんもフロアの目撃者たちも、程度に差こそあれ誰しもが何かしらのモヤモヤを抱えて臨んだと思う。そのモヤモヤがこの一回の公演で晴れたとは言わない。ただ、この状況で実現し得る最良の公演、最高の空間だったのではないだろうか。少なくとも私はこれからもLiVSを追いたいと思った。そういったことを特典会でコンニチハクリニックさんとミニ・マルコchanに伝えようかと思ったが、ほとんど伝えられなかった。
蛇足だが、メンバーさんたちがフロアに下りてくる『RとC』の最中、誰かに後ろから頭をはたかれ、振り返るとコンニチハクリニックさんが笑っていた。