2026年4月26日日曜日

PRETTY WOMAN The Musical (2026-01-31)

社会のことを何も知らないで、おじさんのオタクと握手ばっかりしていると、すっごいストレスが溜まると思うんですよね。小・中学生からずっと……、キモいおじさん漬けじゃないですか。本当に狂っちゃうと思うんですよ。(加山竜司、『「推し」という病』)

『「推し」という病』が面白い。男女地上・地下アイドル、ホスト、二次元キャラ、2.5次元、声優、AV女優、バンドなどを対象にした「推し活」の現状を、どっぷりはまった当事者たちへの取材で解き明かす。生々しく具体的。「推し活」=「神なき時代の宗教」という筆者の分析は芯を食っている。この本にはアンジュルムのメンバーだった佐々木莉佳子さんを支持する女性を追った章がある。同じ集団に田村芽実さんもいた。在籍時期も重なっていた。“キモいおじさん漬け”の世界に、彼女も生きていた。今の彼女はもはや元アンジュルム、元アイドル、元Hello! Projectではない。一流ミュージカル女優としての地位を確立している。誰もが名前を聞いたことのあるような作品で主要な役を射止めている。今回もPRETTY WOMANにおけるいわばプリティ・ウーマンの役。主演である。“キモいおじさん漬け”の世界ことHello! Projectから遠くまで来たものである。

渋谷。東急シアター・オーブ。主演女優のファンクラブ先行だけあってかなりいい席をあてがってくれた。7列のど真ん中。何を求めるかにもよる(あと会場や作品にもよる)がミュージカルの席は前であればあるほど良席という単純なものではない。演者に近ければ近いほどたしかに臨場感と迫力はあるだろうけど、作品を味わうという観点だと(自分が左右に頭を動かさなくても)ステージを見渡せる距離はあったほうがいい。映画館の最前列だと映画は観やすくないのに少し似ている。

今回のミュージカルはめいめいに何度もキスシーンがあった。娼婦役なだけあってキスだけじゃなくしょっちゅう男性と腕を組んだり抱き合ったり社交ダンスをしたり。ちょっと私にはカルチャー・ショックだったのが仲が良くもない男が女(めいめい)に腕を組むように促し、女がすぐに腕を組む。どういう了見なんだ。男女が腕を組むことの文化的な意味。西洋におけるスキンシップが私はよく理解できていない。日本で生活している感覚だとちょっと面食らう距離感。とにかくスキンシップが多かったので、私もミニ・マルコchanとチューくらいしていいんじゃないかと思ってしまった。

舞台女優、ミュージカル女優はアイドルさんが次に目指す道としてひとつの定番である。めいめいのように一流のミュージカル女優になれれば超絶的イケ・メンとのキス・シーン、同じ舞台の仕事でも階層がいくつか落ちる世界に行くと二流、三流男優や訳のわからない老紳士との過剰スキンシップが待っている。これは女優に転身するアイドルさんにとってもその支持者にとっても茨の道である。アイドルさんにとってはめいめい級の成功を収めるのはほとんど不可能と言っていいくらい狭き門だし、支持者側にとっても自分たちがあれだけたくさんのお金を払って限られた時間(Hello! ProjectはJPY1,300で7秒とされる)で、厳格に監視・管理されながらやっとお話が出来ていた相手が、異性と(仕事や作品上とはいえ)ベタベタと抱き合ったりキスしたりしているのを、これまた高いお金を払って見せられることになる。めいめいのように一流の共演者、一流のスタッフ陣に囲まれて一流の作品で主演を張る正真正銘のミュージカル女優になれればそれでも支持者は十分に報われるだろうが、そうでなければお金を払って色々なものを犠牲にして応援する対象としては収支が合わないだろう。自傷行為にも程がある。

私は子どもの頃にPRETTY WOMANの映画を観たことがある。ただうっすらと記憶している程度。それに当時の私では話の内容を理解できていなかったと思う。予習もしていなかったので無の状態から物語を楽しむことが出来た。これが日本で観られるミュージカルの最高峰なんだろうなと思いながら、めいめいの歌、演技、作品そのものに浸っていた。素晴らしいものを観させてもらった。めいめいが本当にカッコ良かった。

劇中に「草間彌生みたいじゃない?」とか「バカおもろそう」といったローカライズや今風の言葉遣いが見られた。原作に100%忠実に翻訳するよりはこういうのがあった方が笑いは起きる。雰囲気が和む。作品や出演者に親しみがわく。もちろんやり過ぎてはいけないけど。

私にとっていいリフレッシュになった。また新たな気持ちでLiVSに臨めそう。こうやって違う興行を観ることで、その中でも意外と共通点だったりとか、気づく点があったりする。

時間が遅かったので手早く済ませようと会場すぐ近くの町中華に入店。非常に微妙だった。半皿の単品料理も(半皿とはいえ)量がかなり少なかった。フライドポテトを頼もうとしが他の客に出そうとしていたやつを見てあまりにしょぼくてオーダーするのをやめた。F君によるとこの店は唐揚げだけ量が多くてがおいしいらしい。この街はドープそうなヴァイブスを出しながら蓋を開けると拍子抜けするクオリティの飲食店が多い。賑わっているエリアはどこも無駄に混んでいる。メシを食うのに適していない。見掛け倒しの老舗店、学生が大勢で入るような安居酒屋、インバウンド向けの変な店。そんなのばっか。私は出来ることなら来たくないのだがとにかく会場という会場がこの街に密集していてイヤでも頻繁に来ざるを得ない。