[…]誰もが口を揃えて言う。「ここまでのめり込むとは思っていなかった」と。境遇も年齢も「推し」の対象も異なるのに、まるで示し合わせたかのように、同じ言葉を使う。
普通の人がふとしたきっかけでのめり込み、気づけばたいへんな事態に陥っている。(加山竜司『「推し」という病』)
VIPチケットが従来のJPY100,000からJPY120,000に値上げされたのは恥ずべきことだと私は思う。前回の大箱公演だった2025年8月18日(火)からの約半年。この期間は何だったのだろう。あれだけ目まぐるしい頻度で開催してきた公演、出演してきた対バン。あれは何のためだったのだろう。ただでさえ正気の沙汰ではない価格設定だった高額チケットの更なる値上げ。それは値段がいくらであっても買ってくれる特定少数のコア層から搾れるだけ搾り取るという意思の表明である。それはすなわちこの約6ヶ月で私たち(LiVS)はファンの数を増やすことが出来ませんでした(なんなら減っています)と宣言しているのと同じである。値上げ前のJPY100,000の時点でLiVSに近しい集団(FinallyやBLUEGOATS)と比較して高すぎる。JPY100,000だったときのLiVSのVIPチケットと比べても特典が劣っているという声を購入者から聞いた。私が買ったのはJPY31,500の超最高チケット。“たいへんな事態に陥っている”自覚はある。それでもJPY120,000のチケットに手を出すまでには狂うことが出来ていない。そもそも私にはこの金額は払えない。LiVSに行くのが年に1-2回だけ行くなら買えるかもしれない。しかしこれはそういう競技ではない。下手すると月に10回行くような競技である。JPY120,000のチケットで一度の公演に入るよりもJPY3,000のチケットで40公演に入ることに百倍の価値がある。
VIPチケットにこそ手を出さなかったものの、代官山UNITの大一番に向けて私は私なりに限界までLiVSにコミットしてきた。それでだいぶ疲弊してしまった。昨夏のLIQUIDROOM公演に向けては、ひとりでも多くの人に観に来てほしいという気持ちがあった。今回に関しては醒めていた。正直なところLIQUIDROOMのときと比べてメンバーさんからも運営さんからも何が何でも会場を埋めてやるんだという気概を前ほどには感じなかった。ひたすら畳みかけるように公演を打つだけでそれ以上の策があるように思えなかった。最後に降って湧いたように開催された、あの計画性に欠けるチケット販売会。いや、あれはJPY3,000で参加できるイヴェントとしては素晴らしかった。最高の思い出にはなった。ただ、動員を増やすための作戦としては遅きに失したし、お粗末だったと思う。その販売会の最終回時点で売れたチケットの番号が190番前後だった。そっくりそのままその人数が来るわけではない。何枚も買っている人たちがいるので。代官山UNITの収容人数は550-600人とされている。190番の前に超最高チケットと最高チケットの分があるとはいえ、動員はかなり厳しいのではないだろうか。
私の中でここ最近のLiVSには閉塞感があった。このまま同じように続けても未来がないんじゃないだろうか。いくら数多くの対バンに出演して他の集団の支持者たちの目に触れる機会を作ったとて彼らがLiVSの固定客になる確率は非常に低い。結局のところこの集団は特定少数のコア層が支えることで商業的に成り立っている。今日だけではない。普段から万チケ(公演によって最高額がJPY31,500だったりJPY10,000だったりする。万チケがない公演もある)を購入する。冷静に考えればJPY3,000程度の通常チケットとそこまでの差はない。あったとして1-2列目か3-4列目かくらいの違いである。もちろん特典券も積む。通販で売り出される、選んだメンバーのサインと自分の宛名が書いてあるだけで送料込みJPY2,700(JPY2,200+送料JPY500)のチェキを買う。各人がそれぞれの経済状況が許す範囲内で精一杯の狂い方をしている。金銭面だけではない。土日はもちろん平日にも当たり前にライブハウス(和製英語)に足を運ぶ。短ければ25分や30分で終わるLiVSの出番を見届けるために。それによってLiVSに関わる全員が日を追うごとに消耗していって、いつか限界が訪れるのではないか。この閉塞感は、私自身の閉塞感でもあったと思う。自分のキャパを超えて通いすぎて精神的に疲弊してしまった。それによる認知の歪みはあったかもしれない。それは差し引く必要がある。代官山UNITでLiVSはどんな現実に直面し、その先に待っているのが何なのだろうか? 2026年2月5日(木)は、LiVSが厳しい現実を見せられる日になるのではないだろうか。純粋に応援する気持ち、楽しみにする気持ちだけではいられなかった。この日を迎える私の心境には懐疑とシニシズムが混じっていた。
そういった負の感情を、ここまで鮮やかにぶち破られるとは思っていなかった。フロアはどういうわけか、かなり埋まっていた。具体的に何人だったかは分からないが景色としては明らかに十分な客入りだった。観に来ていたBLUEGOATSのプロデューサー、三川さんが「LiVS満員!!」とトゥイートしていた。ケチャでグルグル人が入れ替われないくらいの混雑だった(あれはフロアが空いているからこそ成り立つスタイルである)。身動きが取れないなりに熱狂的な雰囲気があった。
今日お披露目された、あの新衣装。これだよ、これ。3-4代目衣装の煮え切らない感じ(個人の感想です)がまったくない。振り切れている。世界観がある。統一感がある。そして何より紛れもなくアイドルの衣装である。アイドルにしか着ることが出来ない衣装である。特にミニ・マルコchan。彼女の少女性と可愛さを、この衣装がとことん強調し、引き立てている。私はこのコを一年と数ヶ月観てきたけど、こんなに少女的な可愛さを持ち合わせているのかという新鮮な驚きがあった。LiVSを初めて見た人の大半はマルコchanに釘付けになるのではないか。何も知らない人が初めてこの衣装でパフォームするLiVSを見たら、マルコchanのためのグループだと思うのではないか。いわゆるセンターとして認識するのではないか。普通に観たらそうなる。それくらいこの衣装が群を抜いてはまっている。マルコchanを輝かせるための衣装なのではないか。彼女をLiVSのスターにするための衣装なのではないか。本当に可愛くて、惚れ直した。こんなことをされたらもう抜け出せなっちゃうヨ……。
ついに来た、新メンバー募集の報せ。報せそのものだけではなく、それを我々に伝えるメンバーさんの表情、言葉、態度からLiVSを続けていくこと、前に進めていくことに対する彼女たちの強い意志を感じた。今の四人になってからの彼女たちの成長には目を見張るものがある。しかしながら、彼女たちのクオリティと練度が高まっていくことの良さはあるものの、集団として発展する道を選ぶのであれば、現実的には増員は必要である。
2026年9月7日(月)の渋谷クラブ・クアトロ公演の開催発表。私はホッとした。とりあえずそこまでは安心してLiVSを観ることが出来る。この発表だけなら「またかよ」とうんざりしていたかもしれない。新衣装と未来の新メンバーがいるからこそ、楽しみにすることが出来る。私が抱いていた閉塞感は、ただでさえ兵力が削がれる(メンバーが脱退する)中、その補充も、十分な補給もないまま先行きの見えない消耗戦を続けることに対するそれだったのかもしれない。今日はバッチ・グーな新衣装と、近未来の新メンバー追加という二つの補給があった。それらを武器に次の大箱に向けて歩みを進めていく。未来に希望を持つには、希望を持つための材料がないといけない。
コンサートの最後、「楽しかった人~?!」とフロアにミニ・マルコchanの姿に、私はモーニング娘。のガキさんこと新垣里沙さんを重ね合わせた。