2023年12月17日日曜日

上原ひろみ Hiromi’s Sonicwonder JAPAN TOUR 2023 “Sonicwonderland” (2023-12-07)

Catarrh Nisinと書いてカタル・ナイシン(語る内心)と読ませるアーティスト名からしてイカしてる。宇宙忍者バファリンさん経由で知り、アルバムを聴き、ハマった。私が一番好きなタイプのラッパーと言っていい。ラップを通して業界に属する同業者たちを一網打尽。メタ的な歌詞。素直な表現。たしかな技量。群れない姿勢。時代に受けるものではなく自分が作りたいものを作る職人気質。本来であれば“Sonicwonderland”を聴いて気持ちを高めるべきだが、カタル・ナイシンさんを聴きたい衝動が抑えられない。
フォロー数ゼロとか一桁にしてイケてるアーティスト感出そうとする
注目され出した途端連絡返さなくなったりとかゾッとする
虚栄心モリモリのオードブル
寒すぎエマージェンシー高度ぶる
断捨離判定 損得の有無
切り捨てられるロートルとクズ
(Catarr Nisin, “No Mercy”)

17時半開場、18時半開演。有楽町。『孤独のグルメ』の井之頭五郎さんよろしくどの店に入ろうかなぞとのんびり迷っている時間はない。駅の近くで目に入った看板。ふくてい。ステーキ・カレー。JPY800。ココにする。昔、一度入ったのを覚えている。約何年経ったろう(OZROSAURUS, “AREA AREA”)と思い自分のツイログを遡ると2014年12月6日(土)だった。ちょうど9年前のこの時期。そのときも上原ひろみさんのコンサートだった。アルバム“ALIVE”のツアーね。9年経って同じ場所で同じものを食ってから同じ人のコンサートを観に行くのが可笑しくなった。当時の味なんて覚えちゃいないから比較は出来ないが、9年ぶりに食べたステーキ・カレーはシンプルで何の変哲もなく、量が多いわけでもなく、こんなもんかって感じだった。9年前はJPY600だった。JPY800となると高くも安くもない。コロッケをつけてJPY950。

ソフト・ドリンクでもいいから何かしらを一杯飲んでチルしたかったが時間的に断念。東京国際フォーラム、ホールAへ。この間の渋谷で買ったTシャツを実際に着てみて気に入ったのでオートミール色を追加購入。JPY3,500。今日の席は1F19列。比較的前方の右側ブロック。とはいえ約5,000人を収容する巨大会場。旧SHIBUYA ON AIR EASTのときに比べるとステージは遙か遠く。(その代わり左右に超巨大ヴィジョンがあって、演者さんたちの細かい表情や動きを見ることが出来た。)私の席に先客が。尋ねると席を間違えていたとのことで、何度も謝ってきた。いえいえ、とんでもないです。礼儀正しい方だった。その方はご家族連れのようだった。私の左も男女カップルだった。客席は全体的に上品で分別のありそうな雰囲気が充満していた。いいトコに勤めてそれなりの地位を得ていいお給料をもらっている感じの。私たちは余裕があるんですよという感じの。渋谷とだいぶ客層が違うように感じた。なんだかむずがゆい。何となく居心地の悪さがあった。左の男女は公演中の手拍子をほとんどせず。地蔵。そういう奴ばっかなの。しかも立ち見のライブハウス(和製英語)と違って全席指定の着座だと、ヴァイブスが違う人たちから逃げられないからさ。

良いプレイがあったら何かしら反応してほしい、と上原ひろみさんはいつもの嫌みのないにこやかでおっとりした調子で我々に話しかけた。曰く日本に来る前にこのツアーでアメリカやヨーロッパを回っていた。向こうのお客さんはスゴい。空気を読まない。皆さんも空気を読まないでほしい。そう言われても、ははは……(愛想笑い+拍手)というぎこちない反応しか出来ないのが我々ジャップの実情である。その土俵でアメリカやヨーロッパのヘッズと比較されると厳しい。ジャップには勝ち目がない。どうしても他人の視線や空気を気にすることから逃れられない。誰かに導いてもらわないと自分がどうしたらいいのかも分からない。コヴィッド騒ぎが世界一長く続いた国ですよ。それを受け入れ続けた国民ですよ。マスクひとつでさえ国からの号令があってようやく恐る恐る外し始めた国民ですよ。この会場にいる人たちも当事者ですよ。2023年12月になっても感染対策がどうのとか、検査して陽性だったとか陰性だったとか言っている人たちがいるんですよ。
東南アジアでさんざん遊びまわってもっとおっかないエイズに罹ったやつが、「私、コレラ菌は持っていませんよ」といってるんだから大笑いさ。本当ははるかにスゴい病気が蔓延しているのに、みんな衛生局員みたいになってコレラ菌の消毒に精出している(ビートたけし、『だから私は嫌われる』)

先々週の旧SHIBUYA ON AIR EASTが恋しい。あのときの熱狂がココにはない。羊のような客たち。渋谷はスタンディングだから盛り上がったという面もあるかもしれないが、かといって仮に今日の客たちがあの場に行ってもあんなに熱い空間を作り上げたとは思えない。棒立ちの傍観者にしかなれない人たちが大半だろう。歯がゆい。自分も羊の一員なのが何よりも悔しい。雰囲気を打破することが出来ない。何となく合わせてしまう。このツアーは渋谷だけ行けばよかったのではないかという思いが頭の隅にちらつく。ビートたけしさんが前掲書で書いていたように、このジャップの行動倫理は人口密度が異様に高い島国でお互いがストレスを溜めないようにというところから来ている。それを海外と単純に比べて一概によくないとは言えない。これが日本のよさとも繋がっている。それを踏まえた上でも私は、高尚で素晴らしいアートを受け身で鑑賞しに来ているようなこの客席の雰囲気があまり好きではない。なぜなら、それはこの音楽を本当に理解しているとは言えないからだ。礼儀正しく静かに聴いて曲が終わったら拍手をしていればいい、そういう音楽ではない。上原ひろみさんの音楽を本当に好きで聴いていれば、ただ黙って聴いているのが決して礼儀正しくはない、むしろ無礼だと分かるはずだ。良いプレイがあれば即時に惜しみない歓声と拍手を浴びせる。フットボールでもMCバトルでもそうであるように、ライヴ・エンターテインメントでは観客の反応も一部なんだ。映画を観るのとは違うんだ。

そのためには前提として、何が良いプレイなのかを私たちが理解しなければならない。みんなが拍手しているから何となく合わせて拍手しておく、ではない。よそ行きの場ではお行儀よく、かしこまっておとなしくしていれば間違いはないという行動規範を身につけた日本的な優等生。渋谷のラヴ・ホテル街のど真ん中にあるライブハウス(和製英語)と違って、こういうちょっとハイ・ソな場所だとそういう観客が多くなるのだろう。でもそれは必ずしも良き観客ではない。もちろん、それがたまたまハマる場合もある。たとえばクラシック音楽を聴く場合とか、ミュージカルを観る場合はそれでいいのだろう。でもジャズ、特に上原ひろみさんの音楽とその態度の相性はよくない。ジャンルに応じた立ち振る舞い。その前提となるジャンルに対する造詣の深さ、理解。明治安田生命J1リーグを観ていても思う。ゴール裏の人々と地蔵(後方彼氏面)の中間層が薄い。自分の意思で、周りに関係なく、個人として、観ているものに心からの反応をしている人が少ないのだ。ゴール裏の人たちが必ずしもそれをやっているわけではない。彼らは彼らで、リーダーに統率されて決められた歌やチャントを歌っている。DAZNで試合を観ていると、すぐ目の前で自分たちのチームが失点していたり、相手チームの選手が危険なタックルをしたりしているのに、関係なく飛び跳ねて歌い続けているゴール裏の人たちが映ることがある。正直、滑稽である。

Hello! Projectを観ていたときにも思ったけど、会場の規模によって来る人の濃さが変わってくるんだよね。大きくなればなるほど客の強度が低い。大きな会場だと、端的に言うと見物客が一定数出てくる。それは仕方のないこと。旧SHIBUYA ON AIR EASTのときに感じたヘッズの熱量をそのまま東京国際フォーラム ホールAで実現するには無理がある。会場が大きくなればなるほど、普通の人々も来るってこと。おそらく上原ひろみさんの音楽を聴いていない人(誰かに連れられて来た人)もそれなりにいたのだろう。スキモノが集まった異常な空間ではなくなる。異常者濃度が薄まり、全体のヴァイブスが言うなれば平均的なジャップのそれに近くなる。

コンサートの後半になると客席に蔓延るぎこちなさとシャイさはある程度、緩和されてきた。何人かの勇者が度々、大きな声を会場に響かせて盛り上がりを演出していた。私も序盤から何度かフー!と好プレイや曲終わりに声を出したが、周囲に声を出している人がマジで一人もおらず、最後までやりづらかった。振り返ると、2014年の私はおとなしく聴いている側だった。本当はもっと歓声を送りたいのに…本当はもっと会場が熱くなるべき音楽なのに…というむずむずする気持ちもそこまでなかった。この9年の間に、それだけジャズと上原ひろみさんの音楽を聴き込んできたということでしょう。

渋谷のときと違って途中で20分の休憩があった。X(旧Twitter)を開くと、母乳を冷凍販売する27歳女性の愚痴垢(Hello! Projectメンバーさんの悪口を言うアカウント)という新たなスターが登場していた。搾乳動画はJPY10,000で提供するらしい。スタア誕生 無感情な商売繁盛…(キングギドラ、『スタア誕生』)。よくもまあ、次から次へと輩出される逸材。Hello! Project支持者の層の厚さ。私にとってHello! Projectはアイドルさんを鑑賞する趣味から異常オタクを鑑賞する趣味へと変わった。

2023年12月9日土曜日

上原ひろみ Hiromi’s Sonicwonder JAPAN TOUR 2023 “Sonicwonderland” (2023-11-22)

ユートピア的な想像力は、この所与の現実を相対化し、変革するための支点として作用しうる。この閉塞した現実の彼方に措定された非在の未来像が、現実変革の実践のための不可欠の契機となる。ところが、「歴史の終焉」に伴うユートピア的な想像力の退化は、もはや現にあるものの乗り越えを意志せず、規定の現実の単なる惰性的な延長の追認に堕する。(木澤佐登志、『闇の精神史』)

 

「世界を変革せよ」という思想は忘れ去られ、代わりに「意識を変革せよ、人生を変革せよ」という思想が主流となった。仮に制度的な変化が期待できないのであれば、私たちにできることは資本主義とテクノロジーを最大限に利用することだけだ。(木澤、前掲書)

「この景色をずっと夢見ていて……壮観です」。感慨深げに上原ひろみさんはフロアのヘッズに語りかけた。何のことを言っているのだろう。もしかしてアレか、コヴィッド騒ぎのくびきから自由になった日本のヘッズを前に演奏するのはコレが初めてだったか。いや、違うか。ついこの間コットン・クラブでやっていたもんな。公演後の上原さんによるInstagram投稿に答えが書いてあった。彼女が夢見ていたのは、スタンディングの会場でこの音楽を奏でること。たしかに今日の旧SHIBUYA ON AIR EAST(新Spotify O-EAST)は特別だった。立ち見の会場ってのは当たり前だけど2時間、3時間と立ちっぱなしになる。クッションのある椅子に腰掛けるのに比べりゃ疲れるし、ストレスがかかる。それを知った上で、わざわざチケットを買って、平日の18時開場、19時開演に間に合わせて来る人々。決して分かりやすい音楽ではない。ここに集まった時点でスキモノなわけ。収容人数1,300人をフロアをほぼ隙間なく埋め尽くす人々。この音楽の価値が分かる人々がそれだけいる。東京の文化資本の底力を感じた。今日のヘッズは最初から最後まで熱狂的だった。みんなアルバムを聴き込んでいる。ファッションで来ているのではない。そういう人たちが集結した場だからこそ生まれる濃さがあった。この音楽ジャンルやアルバム“Sonicwonderland”を聴いていなければこんなにワーッてなれないし、そもそもなぜここでワーッてなっているかが理解できないだろう。分かる人だけに許される快楽。私も気持ちよく声を出し、手を叩き、身体を揺らすことが出来た。まだこの日本ツアー全18公演中の2公演目だけど、今日の渋谷が一番の一体感だったんじゃないか? この先の16公演でコレを超えることはないんじゃないか? 私はこのツアーは今日と東京国際フォーラムでの二公演の計三公演に入るが、この渋谷の熱狂を体感できただけでも十分と思えるほどだった。上原ひろみさん率いるSonicwonderlandバンドと今日フロアにいた我々は、単に演奏者たちと聞き手たちという関係ではなく、同じ音楽空間を共同で作り上げていた。石丸元章さんが『覚醒剤と妄想 ASKAの見た悪夢』で書いていたが、音楽によって我々は同じ妄想世界を共有することが出来る。音楽がもたらす一体感はプリミティブな感覚であり言語と意味を超越している。その領域に一歩は近づけた感がある。上原さんもsuper energetic audience!とInstagramで褒めてくださった。“Sonicwonderland”のサイケデリックな音。“Trial and Error”の上原さんによるアヴァンギャルドな即興演奏。“Up”における約13分にも及ぶドラム・ソロ。即興からの脱線。時に何の曲を聴いているのか分からなくなるほど。二度と同じ音はない。極上の音楽世界。宇宙に連れて行かれた感覚だった。木澤佐登志さんの『闇の精神史』で読んだサン・ラーさんに関する解説を思い出した。
サン・ラーと彼のアーケストラは、コズミックな演奏とパフォーマンスを通して、抑圧と絶望に満ちた地球、この狭量な世界からのイグジット(exit)を高らかに唱えた[…]彼らが目指した先は、地球の外部に遍在する広大な銀河系、宇宙という無限の空間に他ならない。宇宙、それは未知の領野であるのと同時に、そこにいつか帰らなければならない黒人にとっての真の「故郷=ルーツ」でもあるのだ。(木澤、前掲書)
資本主義とテクノロジーに支配され、逃避できるユートピアが社会から失われた現代。我々はその現実に対し、現実的に対応する必要に迫られている。一方で、合法的にトリップ出来る場は必要だ。それが私にとってはフットボールであったり、ジャズであったり、ミュージカルであったり、小説であったりするわけだ。

私は学生時代には渋谷の街をよく歩いていたが、最近はめっきり足が遠ざかっている。飲食店事情には明るくない。てきぱき動かないと18時の開場に間に合わなくなる。整理番号がカス(727番)なので多少遅れても問題はないだろうが、池袋でサッと食べていくことにした。最近KFCへの内なる欲求があったので久々(8月21日以来)に入ってみた。フィレ・サンド・セット。冷めたフライド・ポテト。ちっちぇーバーガー。クオリティ低い。これでJPY850は決して安くない。同じ鶏肉だったらキッチンABCで若鶏のソテー トマトソース(通称トマト)JPY950が格段に上。KFCがアレでJPY850を基準とするとキッチンABCのトマトは値段が倍以上してもおかしくはない。結果としては、渋谷で食ってもよかった。旧SHIBUYA ON AIR EAST(新Spotify O-EAST)に行くまでに上る道玄坂にちょっとした飲食店はいくらでもあった。開場時間の少し前に旧SHIBUYA ON AIR EAST(新Spotify O-EAST)に到着。定刻の18時で既に130番まで呼び出されている。入場時に周りのヘッズが着ているのを見て本ツアーのTシャツが売られているのを知る。黒とオートミールの二色展開。黒のサイズL。JPY3,500。買います。おそらく後日の公演で買い増す。JPY600と引き換えに渡されたドリンク・チケットを缶入りのハイネケンと交換。奥にもバー・カウンターがあるのを知ったときには引き返せないタイミングだった。本当はジン・ライムなりラム・コークなりを飲みたかった。さすがに727番となると既にめぼしい位置は埋まっている。ピアノの置かれた左側に人が集中している。右端付近ならまだ前方が空いているが、スピーカーに近い。それにアイドルさんを見るのと違ってレスがどうとかメンバーさんの身体を見たいとかではないから中途半端に前に行くこともない。段差のあるところでまだ前に一人しかいない場所を確保。正解だった。ステージ上が見やすかったし、周囲のヘッズも十分に熱があった。声を出しても好きに身体を揺らしても浮かない。人は密集していたけどそれが気にならないくらい自由な雰囲気があって心地よかった。

2023年11月26日日曜日

AI KUWABARA THE PROJECT Making Us Alive Again Tour (2023-11-08)

2019年11月9日(土)。明治安田生命J1リーグ第31節。ニッパツ三ツ沢球技場。横浜F・マリノス対北海道コンサドーレ札幌。コンサドーレの右サイド。広大なスペースに送られるパス。走り込むコンサドーレの選手(アンデルソン・ロペスさんだったかな)。コンサドーレにとって絶好のチャンスが目前。なにせ極端なハイ・ラインを敷くマリノス。本来いるはずの左サイド・バックはそこにいない。誰もいない。中にはまだセンター・バックもいない。クロス一本ですぐにシュートまで持っていける。そこに猛然とスプリントするマリノスのセンター・バック、チアゴ・マルチンスさん。普通は先に追いつかないはずの距離をあっという前に詰める。ラインの外にボールを掻き出す。沸き上がるスタンド。私は拳を握り締め、立ち上がって叫んだ。カヴァーリングで観客を熱狂させる稀有なセンター・バック、チアゴ・マルチンスさん。圧倒的なスピード。幾度となくチームの窮地を救ってくれた。アンジェ・ポステコグルー監督が貫いた極端なハイ・ライン戦術は彼なしでは成立し得なかった。お金を払って観に行く価値のある選手だった。

あのときの感覚を思い出した。“ALL LIFE WILL END SOMEDAY,ONLY THE SEA WILL REMAIN”の桑原あいさんの即興プレイ。格闘ゲームでいうところのコンボ技が完璧に決まっての完全勝利みたいな。そこからのFATALITY、BRUATILITY(MORTAL KOMBAT)みたいな。見事に決まった。その場に居られることの幸せ。ブチギマッた。圧倒的な個人技。それをこの目で、この耳で、この臨場感溢れるブルーノート東京で体感できたという喜び。爽快感。拍手よりもガッツ・ポーズが先に来た。このために私は青山に来た。このために私は17時までの会議が終わったらすぐにコンピュータの電源を切って家を出た。このために私はこの公演を申し込んだ。このために私は東京に住んで東京で働いている。

想像していた以上に激しく、カッコよく、情熱的で、一秒の隙もなく徹底徹尾、超ドープだった。打ち震えるような強烈な名演に居合わせたと確信している。「帰るのめんどくさい(笑)」と、一度捌けてから戻ってくるアンコールの儀式を経ずに最後の“MONEY JUNGLE”を演奏したことにも表れているように、客にも演者にも一息つく暇がなく、常にハイ・プレス、ハイ・ライン、ハイ・インテンシティで集中が途切れない、濃密な公演だった。トークの時間でさえゆったりと落ち着くことはなかった。最初の3曲を終えた後に桑原さんが喋ろうとするも呼吸が整わず、何度もふーっと大きく息を吐いていた。ピアノを弾いているときは元気なんだけど、喋ると呼吸の仕方を忘れると言って笑っていた。存外にチャキチャキなノリで手早く喋りを切り上げ、次の曲に移る桑原さん。まるでピアノを弾いていないと溺れて死んでしまうかのようだった。ピアノを前にした彼女はまさに水を得た魚と形容するに相応しい。私の席はピアノの前の位置だったので、桑原さんの動きがよく見えた。左手でピアノにもたれかかり、ピアノに身体を預けながら、右手だけで鍵盤を叩く桑原さん。ピアノと一体化しているかのようだった。私が入ったのは20時半からの公演だったのだが、その直前にも公演をやっていたのが信じがたいほどに熱量に満ちていた。

さっき個人技と言ったけど、もちろん今日はトリオ編成なので、ベースの鳥越啓介さん、ドラムスの千住宗臣さんとの連携、鳥越さんと千住さんの個人技も見所たっぷりだった。ジャズという言葉にはセックスという意味があると聞いたことがある。その意味で、桑原さん、鳥越さん、千住さんん、観客も含めた箱全体が今日はジャズっていた。セックスにカウントしていいと思う。今日おもしろかったのは桑原さんがトリオの仲間だけでなく、後ろに控える音響機械を操作する婦人にも度々ジェスチャーを飛ばしていた点。こういうこともあるのかと、私にとっては発見だった。鳥越さんをフィーチャーした“EVERYTHING MUST CHANGE - PALE BLUE EYES”では、ベースでこういう音が出せるのか、と驚かされた。千住さんの表情と動作からは秘めたる暴力性、変態性を感じた。桑原さんが千住さんのビートに合わせて鍵盤で同じリズムを刻む場面が最高だった。開演時、鳥越さんと千住さんが後方からステージに向かって歩いてきたときは観客かと思うほどにパッ見、地味な紳士たちだった。フェイド・カットではないし、おでこも出していないし、服装も目立たないし。その後ろに金髪で真っ赤なスカートの桑原あいさんが歩かれていたので、となるとあの二人の紳士たちは出演者なのかと気付いた。

“LORO”はアルバム“Opera”の荘厳なソロ・ピアノ版しか聴いたことがなかったので、トリオでのハイ・テンポ版を聴けたのは嬉しかった。私は桑原あいさんのアルバムを以前から聴いていたけど、今日に向けてSpotifyで聴けるものはなるべく聴いてきた。それはこの公演を楽しむ上でとても効いていた。ジャズ現場に慣れていない私でも躊躇ゼロでスタンディング・オヴェイション。会場を出た後も、しばらくは頭と身体の火照りが収まらない感覚があった。

二つ、訂正しておきたいことがある。一つ目。このブログで私は何度かブルーノート東京と対比する形でコットン・クラブの席間隔の狭さをディスってきたが、今日のブルーノートもコットン・クラブと変わらず窮屈だった。ただ、私が以前にブルーノート東京を利用した際には席の間隔がもっと広かったのは事実だ。おそらくコヴィッド騒ぎの期間だけ、客同士が対面しないようにし、距離を取っていたということなのだろう。つまり私はコヴィッド制限時だけのブルーノート東京の席と、平時のコットン・クラブの席を比較していたのだ。二つ目。ブルーノート東京とコットン・クラブで飲み物の値段が変わらないと私は書いていたが、今日のメニューを見るにどうもブルーノート東京の方が高そうである(値上げした?)。コーヒー・ハイボールJPY1,700がとてもおいしかった。

2023年10月28日土曜日

私のもとへ還っておいで (2023-10-21)

先にめいめいのコンサート日程が決まっていて、マリノスの試合日程が後から発表された。10月21日(土)14時から日産スタジアムで横浜F・マリノス対北海道コンサドーレ札幌。18時半から大手町三井ホールで田村芽実さんの一人芝居コンサート。運よくハシゴ可能な日程。7月8日(土)に愛知県の豊田スタジアムで名古屋グランパス対横浜F・マリノスを一緒に観た際、日産スタジアムでも試合が観てみたいと享平君が言っていた。社交辞令かと思ったが、誘ってみたところ本当に来てくれることになった。マリノスとめいめいの両方を一日で堪能できる贅沢。遠征して観に来てもらう価値がある。今でも忘れない。享平君には2019年9月8日(日)に一緒に入るはずだっためいめいのワタシノアカシツアーをドタキャンされている。(あれからもう4年が経つのか!)チケットは私が彼の分も買っていた。享平君からお金は貰っていない。急遽、現地にいた中島さん(仮名)に無償で譲渡した。(流石に家賃未納で借金数百万の中島さんにこちらの都合でコンサートを観に来させてお金を請求することは出来なかった。)享平君のドタキャンで私は無駄にチケット代を払わされたことになる。いや、それは別にいい。もう4年前の話やんか。蒸し返さんでもええやん。水に流そうや。問題はお金ではない。めいめいを観る貴重な機会を享平君が逃してしまったこと。それが何よりも私は残念で、彼にとって大きな損失。人生の汚点。彼にとって4年越しに訪れた名誉挽回、汚名返上のまたとない機会。それが2023年10月21日(土)。彼の異常な労働生活を考えると最後の最後まで安心は出来なかったが、遂に対面を果たした。午前11時過ぎ。横浜モアーズ8階。ハングリー・タイガー前。ダブル・ハンバーグ・セット(R)。よく行く店のよく食べる料理は出てきた瞬間にパッと見るだけで当たり外れが分かるものだが、今日のは焼き目が完璧だった。チケット代未払いでドタキャンという酷い仕打ちを4年前に受けながら、二日後に控える彼のお誕生日を祝い、食事をご馳走する私。俺は業界No. 1の巨大なケツの穴持った器デカい奴(デッ、デカい!)てんで次元がちゃいます(別世界!)(参照:ライムスター『ウワサの真相 feat. F.O.H.』)。420gのハンバーグと付け合わせと米を食べてレーコーを飲んでもなお食欲の落ちない享平君(昨夜は世界の山ちゃんで手羽先を40本食べたらしい)。日産スタジアムのスタ・グルにマジ興味あるらしい。であればすぐにココを出ないと。

店を出て地下鉄の横浜駅に歩く道すがら、私があげたベース・ブレッド・ミニ食パン・レーズンを頬張る享平君。私は同年代の友人たちと会食すると情けないほどお互いすぐにお腹がいっぱいになってしまう。享平君のような大食漢とご一緒できるのは新鮮な体験。何でも学生時代には5kgのステーキを制限時間内に完食すれば無料になるチャレンジに参加し成功していたらしい。彼の勤務先で昇進する社員はおしなべてたくさん食べ、たくさん飲み、短時間睡眠で長時間労働をするのだという。彼にぜひ賞味してほしかったベリーズ・ベリーのバブル・ワッフルには長蛇の列。試合開始に間に合いそうになかった。食いモンは諦め、スタジアムに入る。ビールを買うために席を離れる享平君。戻ってくると私の分も買ってきてくれていた。さて、マリノスだが負傷者の続出もあって不振が続いている。6日前にさいたまスタジアム2002で浦和レッドダイヤモンズに0-2で完敗し、ルヴァン杯を準決勝で敗退したばかり。リーグ戦は残り5試合で首位の神戸と勝ち点差4をつけられている。リーグ連覇に向け窮地に立たされている。試合が終わってみると4-1で勝っていた。しかし試合内容はまったく褒められたものではなかった。浦和レッドダイヤモンズ戦から何かが劇的によくなったかというとそんなことはない。前半は相手の方がチャンスが多く、1-0で折り返せたのは幸運だった。相手のシュート精度の低さに助けられた。もちろん一森さんのスーパー・セイヴィングと勇気ある飛び出し、喜田さん率いるDFラインの奮闘も欠かせなかった。1-0で後半の終盤まで膠着する中で、点差を2に広げられるチャンスをロペスさん、植中さん、ヤン・マテウスさんらが次々に逃す。決めろや。こういうのを決めないと追いつかれて勝ち点を落とすんだよ。募るイライラ。ただ84分、90+1分、90分+6分と最後に畳みかけるように決まるゴール。我々の席に近い方で豪快で爽快なゴール・ショーを見せてくれた。エンターテインメントとしては楽しかった。ただ、終わりよければすべてよしとは言えない。この調子で残り4試合も勝ち続けられるほど甘くはない。1試合に限れば論理的ではない結果は得られることがあるが、それが何度も続くわけではない。杉本さんが決勝点となった2点目を決めた後にゴール裏の皆さんがWe are Marinosを歌い始めたときはちょっとウルッと来そうになった。終盤、4バックが左から吉尾さん(本職右ウイングやトップ下)、喜田さん(本職ボランチ)、松原さん(本職右サイドバック)、榊原さん(本職トップ下)。本職ゼロ。DFの大半が負傷離脱している異常事態。通常であれば勝ったときは選手の周回やMVPの発表まで見届けてから帰るのだが、今日は次の予定があるのですぐにスタジアムを去る。

新横浜駅から東京駅。東京駅付近はオフィス街。無機質で同じようなビルヂングがひたすら林立。ない目印。分かりづらい。前進毎日ない道 前進毎日ない道(参照:OZROSAURUS, “AREA AREA”)。丸の内中央口地下道直結という大手町三井ホール公式サイトの雑すぎる説明。分かるわけがない。迷いながらも地上経由で会場を発見。まず地下のセブン・イレブン。享平君が毎日飲んでいるエナジー・ドリンク(モンスター)を所望。飲まないと寝てしまうのだという。会場はエスカレーターで3階。分類上はいわゆるライブハウス(和製英語)ということなのだろう、徴収されるドリンク代JPY600。水やお茶のペットボトルだけかと思いきや奥に缶のビールとレモンサワーがある。私はレモンサワー、享平君はビール。ここで酒を出しているのは劇の中身とリンクしていてよかったと思う。めいめいが演じるのが寂れたショー・パブのやさぐれた女シンガーなんだけど、どいつもこいつも酒ばっか飲んでて私の歌なんか聞いちゃいねえ的な台詞が冒頭にある。レコードJPY3,500とペンライト(緑+紫各1本)JPY700を購入。開演前に享平君の席に駄弁りに行く。RL列という後方席だが段差があって見やすそう。席も快適そう。私はE列の2番。A〜K列までは段差がない。その上、左から二番目だったので、前方とはいえRL列よりも良席だと断言は出来ない。席と言えばS席(サイン入りパンフレット付き)JPY13,000と指定席JPY8,500の二種類が売り出された。S席は前方(たとえばA〜K列)席だと思うじゃん。でもどうやら違いはパンフレットが付くか付かないかだけで、席のよさと席種はまったく関係がなかったようだ。というのが享平君のRL列は25列中の20列目だったけどS席だった。本公演が終わってS席じゃない人が先に退出したんだけど、最前付近の人々もちらほら立ち去っていった。そしてそのタイミングで去った人は少数派だったので、観客の大半がS席を買っていた模様。これはちょっと売り方に問題があると思う。S席と指定席の違いは席の良し悪しとは無関係だってちゃんと書くべきだった。とはいえ、S席を買ったことに後悔はない。公演後にめいめいと間近で対面し、パンフレットを手渡してもらいながら言葉を交わした時間が、ただでさえ素晴らしかった公演を締め括る甘美なデザートになったからだ。(無言の相手にはめいめいからありがとうございますと言ってパンフレットを渡していく流れなのだが、私が何か言おうとしているのを察して聞く態勢をとってくれるめいめい。)「めっちゃ楽しくて」(頷くめいめい)「時間が経つのが、もうあっという間でした」(目を細めてふわっと柔らかい表情になるめいめい)「あー、ありがとう。また来てね」。心から伝えたいことを伝え、反応もいただき、心が満たされた。パンフレットのお渡し会を終えて私が退出したのが21:05。享平君はその数分後。東京駅21:30発の最終新幹線で帰るらしい。公演後に一杯やりながら感想戦をと考えていたが、実現出来なかった。早足で東京駅に向かい、21:24に改札を通過する享平君を見送った。彼はこうやって常に計画にバッファーが不足しているからちょっと想定が崩れただけであたふたするギリギリの人生を送っているのだと思ってしまった。コンサートに話を戻すと、めいめいに伝えた通り、お世辞抜きに時間が過ぎるのが早かった。笑って、見入って、聞き入っているうちに、え、もう休憩なの? え、もう終わりなの? となっていった。名残惜しさがあった。すべての瞬間がハイライトと言えるくらいに見所、聞き所だらけだった。史上ベストめいめいだった。めいめい支持者として絶対に外せない公演だった。実は今日、休日出勤を出来るか確認され、断っていた。もし労働に屈して諦めていたらと想像するとゾッとする。Hello! Project時代のめいめいしか知らない知人友人たちにも観てほしかった。今日来ないでいつ来るの? という感じだった。来年はこの公演でツアーをやる構想があるらしいので、ぜひ観に来てほしい。劇中、楽屋でめいめいがファン・レターだと思って読み始めた手紙が殺害予告だった。10月21日の19:30にあなたを殺すと記されている。10月21日…今日? 19:30…20分後? 走る戦慄。直後にアナウンスされる、20分間の休憩。笑いとざわめき。劇中の設定なのか現実の休憩なのか、にわかに判別するのが難しい。「コレって本当に(トイレに)イッていいンだよね?」とお連れの方に確認する、近くの席にいた婦人。さっきの酒の話もそうだし、この20分後の殺害予告と20分の休憩もそうだし、めいめいはその他にも所々にメタなユーモアを散りばめることで、劇の世界と現実世界をうまく融合させるのに成功していた。再会した旧友たちとHello! Projectの話で盛り上がるくだりの、スマイレージがうちらの青春だったよね、私はめいめい推しだった、めいめいって今めっちゃミュージカルに出てるんだよ、朝ドラにも出てた。え〜、そんなに好評だったの? めいめいって売れてるんだね〜的な台詞の流れには会場のヘッズが沸いた。その流れで披露された『スキちゃん』。熱かった。往年のHello! Projectの熱狂を思い出して弾けることが出来た。コヴィッド騒ぎで封じられてきた我々の声援。その鬱憤を、コールだらけでいかにもアイドル、いかにもHello! Projectというこの曲で少しでも晴らすことが出来た。『スキちゃん』を歌って一旦ステージの奥に下がるめいめいに、どこかの紳士が発した「行かないで〜!」。アレは魂の叫びだった。それでさ、『スキちゃん』の次がまたホイットニー・ヒューストンさんの“I Have Nothing”で。めいめいがこう、しっとりと歌い上げるわけよ。唖然とさせられるこの落差。表現の幅。その他にはビヨンセさんの何か、椎名林檎さんの『本能』、美空ひばりさんの『お祭りマンボ』、マリリン・モンローさんのあの有名な曲、『ラムのラブソング』(『うる星やつら』の)、カントリー・ロード、“Over the Rainbow”、オリジナル曲だとアンコール明けに『舞台』。衣装はベースが黒のちょっとセクシーな部屋着(※譜久村聖さんのグラヴュアで言うところの)で、その上に羽織るものを曲ごとに細かく着脱していく。インスタグラムの配信でめいめいが語ったところによると衣装にはだいぶ予算的制約があったそうだけど、それでも存分に目でも楽しませてくれた。これまでのめいめいのアイドルとしての、ミュージカル女優としての、歌手としての、一人の表現者としての、すべての活動の集大成のような公演だった。アイドル時代とミュージカル女優時代が別々の二つの人生として独立するのではなく、アイドル時代を引きずるわけでもなく、かといって過去のものとして蓋をするわけでもなく、すべてが一つの線で繋がった感じ。その記念日。ひとつの記念碑。フォーマットにとらわれず、その人がやりたいこと、表現したいことを自由に詰め込んだ作品こそ至高。そう改めて感じた。樋口毅宏さんの『さらば雑司ヶ谷』『雑司ヶ谷R.I.P.』のように。ホントにねえ。今日来なかった人は死ぬべき。すみませんちょっと言い過ぎました。でもそう言いたくなるくらい最高の時間だった。

2023年10月24日火曜日

KissBee ONE MAN LIVE『BoooooM!!!』 (2023-10-16)

昼休みにモカ・ブレンド(S)を買うために入った会社近くのファミリー・マートで店員氏の名札に目をやるとえちぜんやと書いてあった。漢字ならともかくひらがなでえちぜんやと書かれるとえちの部分が際だって見える。えちであることが宿命づけられているかのようだ。そしてエチゼーニャと書くとスペイン人っぽい。コンヴィニエンス・ストアや飲食店で移民労働者たちの発声をよく聞くと、Nとその後の母音を繋げて言う傾向がある。たとえば千円はセン・エンよりセネンに近い。ということはえちぜんや氏も同僚からエチゼーニャと呼ばれていても不思議ではない。今日は本来、在宅勤務にして午後半休を取得するつもりだった。だが出社して参加しなければならない会議が発生し、15時過ぎまで会社にいざるを得なくなった。まあ間に合うので問題なし。無事に退勤。渋谷駅に移動。左ポケットにセネン札を3-4枚入れ、コイン・ロッカーにバックパックを預ける。JPY500。セブン・イレブン渋谷道玄坂店でホット・コーヒー(R)と甘栗。店の前で胃に入れる。学生の頃はよく渋谷の街を歩いていた。この汚らしさが懐かしい。「早朝に響くカラスの鳴き声 見たところ夢、希望 何もねえ なぜかここに来るとクソ足留め 生きてきたこの都会の端っこで」(ラッパ我リヤ、『大東京feat. K DUB SHINE』よりK DUB SHINE)。時間的にはちょうどよかった。早すぎず、遅すぎず。16時半開場、17時開演。duo MUSIC EXCHANGE。Club asiaとか、昔で言うON AIR EAST(現Spotify O-EAST)とか、あの一帯。ラブホ街。東電OL殺人事件。

想像を超えるカス会場。紛れもなくカス会場。誰かの大切な思い出が詰まった場所かもしれないが、それでもカス会場。何がどうなってこんなつくりの会場が生まれるに至ったんだ。ステージの範囲内に超巨大な柱が二本。柱の前にでもいないとステージの全景は見えない。柱の前はVIP席(JPY30,000)やらSS席(JPY10,000)やらで既に埋まっている。そして柱の左右の比較的前方は撮影エリアで、キャメラを構えて撮影に専念する人たちが集まっている。一般席(JPY3,500)はその後ろ。私は左寄りの段差のある一番前に立つことが出来たから、比較的見晴らしはよかった。視界が大幅に遮られているものの、メンバーさんが見える位置にいるときは見えた。ゆいちゃんは相変わらず可愛く、ダンスにはドリブル中のエウベルさん並のキレがあった。それでも、たとえば曲と曲の間にメンバーさん8人が横並びになるときは、左の3人と右の1-2人が見えるという具合で、3-4人は見えなかった。序盤にメンバーさんが順番にソロ・ダンスを見せるくだりはまったく見えなかった。公演中に流れる映像はメンバーさんのれなぱん(大江れなさん)が作った。こういう工夫をしたんですけど気付いてくれましたか? なんて問いかけられても、知らねえよ。こっちは。見えてねえよ。そこはちょっとシラケた。置いてけぼり感があってさ。救いはドリンク代JPY600を払って手にしたラム・コーク。奴がいなけりゃやっていけなかった。うまかった。バーカンの姉ちゃんがちゃんとラムを入れてくれた。アルコールがほどよく回ってきた。ステージをじっくり鑑賞するというよりはラム・コークでいい気分になりつつ、身体を揺らし、声を出し、みんなが盛り上がっている場の雰囲気を味わうのが主だった。いいコンサートだったと思う。ヴァイブスはすげー良かった。私が楽しんだのは間違いない。労務を調整して来た甲斐はあった。ただ、会場に関して言えば、出来ればもう二度と来たくねえ。こんなトコ。後ろがスカスカだったらもう割り切って酒を追加しつつチルする楽しみ方もあっただろうけど、メンバーさんが毎日のようにチケットの手売りを頑張った成果なのか、まあまあ混んでいた。私よりも後ろにいた紳士淑女はキツかったと思う。

前も書いたがKissBee現場に来てのカルチャー・ショックとして、アンコールが自然発生ではない。おそらく仲間内でこの公演はこいつと決められたおまいつの呼びかけがないと始まらない。(たぶん勝手に始めたら揉めて村八分にあうのだろう。)後日、享平君に聞いたところ地下ではそれが普通らしい。コルリ(コール・リーダーと呼ばれるゴール裏の統率者)の指揮で集団が動く明治安田生命Jリーグのゴール裏文化に似たものを感じる。ちなみにフットボールの応援は国によって文化が異なる。最近観た動画によると英国プレミア・リーグではいわゆるコールを統率する人物が存在せず、誰かが思いついて始めたのが周りに受ければ広まっていってくらしい。

コンサートはたっぷり約90分。ダラダラとメンバーさん全員が今日の感想を述べないのが好印象。特典会をガッツリやるからお話をするのはそっちでという棲み分けが出来ているから、コンサートはコンサートをしっかりやってくれるんだと思う。現に今日も18時半頃に終演し、22時まで特典会をやっていたらしい。私は特典会には目もくれず、終演即退出。新大久保に移動してソルマリで夕食。最近ラトバレの味がやや落ちている。数ヶ月前に加入した二人の新メンバーさん(吉田琴音さん、森元あやのさん)が、この公演で本デビュー。そしてもう一人。オーディション等の文脈なしで唐突に加入が予告された14歳。謎に包まれていた。このステージでお披露目。鈴木美優さん。ジェネリックまなかん風。吉田さんと森元さんが霞むほどのイルなヴァイブス。ついつい目が行ってしまう。どうやってこんな子をリクルートしてきたんだろう。KissBee、面白いことになった。あ、でも安心して。ボクはゆいちゃんに一途だヨ。

2023年10月8日日曜日

ゆいのの『Imperfect i!'?』リリイベファイナル☆ (2023-09-18)

朝8時にちょこざっぷに入るとトレッドミルが3台とも埋まっていた。祝日の早朝からご苦労なことだ。三人とも走ってすらいない。ただ歩いている。特にそのふくよかな淑女、無駄だからヤメろ! その場所を私に譲れ。そこでチンタラ歩いたくらいで痩せないから。それで痩せるならみんな普通に生活を送るだけでとっくに骨と皮になって死んでるから。トレッドミルを使わないと歩数すら満足に稼げない非活動的な生活様式に問題がある。家に帰ったらお菓子だのカップ・ラーメンだのを存分に召し上がっているんだろうし。いや、分かる。彼ら彼女らに罪はない。問題は設置してあるトレッドミルの少なさ。悪いのはちょこざっぷ側だ。それでもトレッドミルを占拠するお散歩マンたちには悪態をつきたくなる。なんで歩くために金を払うん? 外を歩けよ。陽を浴びろ。季節の空気を肌で感じろ。

上質な音楽を(ブルーノート東京の劣化版会場とはいえ)上質な空間で味わった翌日。アイドルさんを観に行く気分ではない。もう少し間を空けないと。どっちが上でどっちが下かというより、食べ合わせの問題。今日が無料のリリース・パーティだったら行くのをやめていたかもしれない。チケットを買ってある(JPY2,000)し、この夏のゆいののによる公演としては今日が最後らしいので干すわけにもいかない。なんだかんだ藤井優衣チャンを生で観たいし。まあサクッと観てサクッと帰ろうかと。渋谷近未来会館。初めて聞く。初めて行く。新しい会場のようだ。だいぶ前にG君と行ったカフェ(何の時だっけ)のところの坂を上ると右手にあった。既にヘッズが整理番号順に並んでいる様子。私はA49。お兄さんの番号だと中ですよ、と係員のお姉さんが教えてくれた。並んでいる紳士に番号を聞くとちょうどA50だったので彼の前に入る。8月6日(日)に買った特典券が1枚残っている。今日はそれで優衣チャンと写メでも撮れればいいやと思って、買い足さなかった。昨日のコットン・クラブでちょっとした風俗に行ける金額を消費したという負い目がある。ここで追加の散財はしたくない。

開場11:00、開演11:30。右寄りの3列目くらいの位置を確保。KissBeeNextという謎の集団が前座で登場。彼女たちはどういう位置づけなのだろう。KissBeeの下部組織で、将来の昇格を目指しているのか? その割に必ずしも年齢が低いわけではなさそう。よく分からないが、間近で何度もキックを見せつけられ、小生の愚息が刺激されなかったと言えば嘘になる。優衣チャンとの本番に向けていい準備運動になった。

正直言うと、8月に観に来たときのゆいのののステージ・パフォーマンスはあまり印象に残らなかった。なので今日に関してはそこまで期待していなかったのだが、どういうわけか心を掴まれたし、かなり楽しかった。周囲の先輩たちにリードされながら、ゆーいちゃん! ゆーいちゃん! と曲中に何度も叫んだ。ああそうか、アイドル現場ってこういう感じだったな。あの頃の感覚を思い出させてくれた。このはっちゃける感じ。馬鹿になる感じ。後半の曲では私の前にいた最前付近の紳士たちが二、三回持ち場を放棄して後ろの方にぐわーって集まって、藤井優衣チャンと篠原ののかチャンに目もくれず自分たちで盛り上がっていた。彼らが戻ってくるまでは一時的に私が実質的最前となり、ののかチャンと優衣チャンからレスをいただいた。訳が分からないが可笑しくて楽しかった。

チケットがわずかJPY2,000だし、コンサート部分は1時間程度。売上的にも時間的にも特典会ありきの商売。ところが今日に関しては思いの外(失礼)コンサートだけでも十分に楽しく、私は満足してしまった。上述したように写メだけ1枚撮るつもりではあったが、特典会に至るまでの進行がダラダラしていて時間がかかりそうだった。余韻を残したまま会場を去りたかったし、昼飯を食いたかったのでそのまま会場を出た。

2023年10月7日土曜日

西川大貴 LIVE 2023「Continue」 (2023-09-17)

めいめいのゲスト出演きたー。買います買います。というくらいのノリで昼と夜の両公演に申し込んだ。よくよく考えるとチケットはJPY7,500。(おひとり様が選べる席は一種しかなかった。)強制オーダーさせられるドリンクが最低でもJPY1,000前後。ドリンク代に加算されるサーヴィス料がたしか10%。1公演にかかるお金が実質JPY9,000近く。それを二回となると、ちょっとした風俗に行ける金額である。風俗に限らずJPY18,000あれば楽しめることは色々とある。もちろんコットン・クラブでめいめいを観られる機会を逃したくない。支持者として当然だ。いくら系列店のブルーノート東京と比較するとすべての面で質が劣る(でも料金だけは変わらない)会場とは言え、コットン・クラブが上質な空間であることに変わりはない。あの舞台にめいめいが立ち、生バンドの演奏で歌う。その場に居合わせたいのは当然である。しかしながら、めいめいの出番は二曲(デュエット+ソロ)と少しのトーク。時間にして十数分だった。そのためにJPY9,000を払うのは百歩譲って支持者の勤めだとして、一回でよかったのではないだろうか。その疑問は今でも拭えない。ただ私はめいめいを生で鑑賞する機会に飢えていた。最後が7月30日(日)の『秘密クラブ』(※私はあえてブログを書かなかった。秘密の集まりなので、話したこと、やったことは来た人だけの秘密という設定があった。それをどこまで額面通りに受け止めるかという問題がある。迷ったのだが、内容を書いて残すのは野暮だと判断した)。それで今日のコンサートがあって、その次が10月21日(土)の一人芝居コンサート。その次はもう年末のミュージカル『赤と黒』。私は12月24日(日)に観に行く。それで2023年は終わり。来年の予定は今のところ見えていない。だったらココで二公演入っちゃえ。そんな感じで決めた。めいめいはもう少し長く出演するものと、何となく思っていた。本当に何となく。根拠なく。希望的観測。もしはじめからめいめいの出演は二曲ですと案内に明記されていたら片方の公演で踏みとどまっていたかもしれない。思ったんだよね。昼公演の途中に。あー、コレは昼と夜のどっちかでよかったかもなって。で、まあたしかにめいめい支持者の視点だけで観ると片方で十分だった。そもそもマストな現場でもなかった。ただ視点を広げて音楽ファンの立場で見ると悔いはいっさい残らなかった。良質なコンサートだったからだ。良い音楽、良い会場、良い雰囲気。西川大貴さんの歌も小粋なトークも、バンドの皆さんの演奏もすべてが素晴らしかった。(蛇足1:ベース担当の紳士がマリノスの飯倉さんに似ていた。お名前が角田さんと知り可笑しかった。角田さんという選手もマリノスにいるからだ。蛇足2:西川さんはもう少しスカした野郎なのかと勝手に思っていた。日本のミュージカル業界の問題点を真面目に語るのを見て印象が変わった。またオリックス・バッファローズが好きで、オリックス・ブルーウェーブ時代のユニフォームを模したシャツをグッズで販売し、あまつさえアンコール後にはブルーウェーブの歌を歌うという変なところもあって面白かった。蛇足3:昼公演はウィスキーのブッシュミルズ・ブラック・ブッシュをロック。チェイサーもつけてもらった。夜公演は赤ワイン。ワインのおいしさが全然分からない。夜公演のめいめいが登場したあたりでちょうど尿意の波が訪れ、コンサートの後半は早く終わってくれと思いながら観ていた。)私にとって今節最大の収穫はピアニストの桑原あいさん。前からSpotifyで聴いていて、スッゲーいいジャズ・ピアニストさんだと思っていたんだよね。アルバムでいうと“Making Us Alive (Live)”とか“Live at Blue Note Tokyo”とか。きっかけは覚えていないけど、たまたまSpotifyでオススメに出てきたんだと思う。そうそう、コレを書いていて思い出したけど、ピアノ担当が桑原あいさんなのも二公演への申し込みを後押しする要因だった。めいめい目当て7割、桑原あいさん目当て3割みたいな。今回、桑原さんの演奏を生で体感することが出来てよかった。情報量が違う。周りのバンド・メンバーや西川さんと意志疎通を図りながら音楽を作っていく様子を視覚的にも見るのは、Spotifyでアルバムを音だけで聴くのと全然違う。今日のトークを聞くかきり桑原さんは西川大貴さんとは旧知の仲で前から一緒に音楽をやってきたらしく。めいめいがミュージカル界の繋がりで呼ばれた西川大貴さんのコンサートに、私がたまたま好きで聴いていたジャズ・ピアニストさんがいて、彼女の演奏でめいめいが歌うという。世界は狭いというか、なんか面白いなって。めいめいの出番が二曲と書いたけど、それは『俺の彼女』(宇多田ヒカルさん)。コチラは西川大貴さんとのデュエット。『グッバイ・マイ・ラブ』(アン・ルイスさん)。コチラはめいめいのソロ。『グッバイ・マイ・ラブ』は西川大貴さんのリクエスト。西川さんがめいめいの歌うこの曲が好きすぎて、彼女と知り合う前にこの曲ばかりをずっと聴いていた時期があるのだという。今日のめいめいを観ていると、9月15日(金)に三ツ沢に観に行ったサガン鳥栖戦でのヤン・マテウスさんを思い出した。64分に途中交代で入って。限られた時間で何度も相手DFを翻弄し、決定機を演出する。違いを見せつける。自分を表現する。観客を魅了する。わずか二曲の出演でもめいめいは遺憾なくドープさを発揮してくれた。惚れ惚れする。声自体の魅力。歌声のヴァイブス。めちゃめちゃイケてるラッパーがヴァースをスピットし始めた瞬間から何か分からないけど聴いていてゾクゾクくる感じ。それがめいめいにはある。話しているときの少女感とのギャップ。次はもっと長時間このステージに立ってほしい。めいめいのソロ公演をコットン・クラブで観たい! いつか、いや、すぐにでも! 桑原あいさんの現場にも行ってみたいなと思い出演予定を調べると、氏がリーダーを勤めるトリオが11月8日(水)にブルーノート東京で公演を打つことを知った。夜公演に入ることを決めた。