2015年3月29日日曜日

Week End Survivor (2015-03-29)

Kendrick Lamarの新譜を聴きながら池袋のメガネドラッグで眼鏡を洗っていたら後から隣に来たじっちゃんが何やら話しかけてきた。嫌々イヤフォンを外した。少し会話になった。洗浄液が汚いと愚痴ってきた。たしかに彼が眼鏡を浸している液体はやや濁っている。色んな人が使うし、タダだからねと私が言うと、客に対する心配りがこういうところに出るんだとガラス越しの店内を眺めながら彼は言った。

こっちの方がきれいですよ、とさっきまで私が眼鏡を洗っていた機械を指し示すと、まあいいんだけどとそのまま最初の洗浄機を使い続けた。あとはさ、トイレが汚い店も客に対する気配りがなってないんだよとじっちゃん。私は眼鏡をティッシュで拭きながら笑って話を合わせ、あんたの身なりも汚いよと思いながら立ち去った。向かった先は池袋シアターグリーンBIG TREE THEATER。14時に開演するこぶしファクトリー主演のミュージカル『Week End Survivor』を観に来た。

昨日の同じ時間にも同じミュージカルを観に来ていた。こぶしファクトリーに特に強く推しているメンバーがいる訳でもないが、一番気になるのは浜浦彩乃だった。グッズ売場は空いていたが、明確に推している訳ではないし、写真を買うにはまだ浜浦さんの年齢が低すぎると思って買わなかった。ただ、楽曲派として曲は集めたいので先行販売していたDVDシングルを買った。曲が入ったCDと、ビデオクリップらしきものが収録されたDVDの2枚組。2000円。特典でハイタッチ券が付いてきた。

入場時に配布されたアンケート用紙の年齢区分が「~20代」「30代」「40代」「50代」「60代」「70代」「80代~」と、29歳以下は一括りにされていた。主催側が想定している年齢層が伺い知れて面白かった。舞台やミュージカルに来る客はコンサートに比べて年齢層が高い気はする。

公演が始まると初めは主に浜浦彩乃に注目していたが、途中から野村みな美に目を奪われた。野村みな美は凛としていて、一つ一つの表情や仕草に引き付けられた。特に睨みつけるときのキリッとした顔が決まっていた。2年前に℃-ute主演の舞台『さくらの花束』で見たときからの成長が凄い。これからのハロプロを引っ張っていく一人になるだろうと思った。役で着ていた帽子がとても似合っていた。

ステージに近い席だったし出演者が客席の通路を歩く場面もあったので、細かいところが見えた。A列の2番にはスタッフが座り、3番と4番は出演者が劇中に短時間だけ座った。通路を挟んで左前の席(A4)に藤井梨央が座った。藤井さんはグループの中では二枚目の部類に入るのだろうが、さすがに近くで見ると顔立ちが整っていた。分かり切っていることではあったが小川麗奈は完全に美形だった。途中で田口夏実の右足の靴紐がほどけて、ステージの左端で座って他の出演者同士がしゃべっている合間に紐を靴の中にしまっていた。

本編が終わってから客席の拍手に応えて再登場したこぶしファクトリーが『念には念』を実演した。この曲は初めて視聴したのだが、振り付けで連続パンチしたりのけぞったりする動きや曲中の「ねんねんねんねん・・・」というところが面白く、こぶしの効いた歌唱がグルーヴィーで、気に入った。DVDシングルのDVDは家に帰ってから二回観た。CDシングルの単価を上げるためにやっつけで映像特典を付けたのだろうという程度に思っていたが予想よりは面白かった。特にレッスン場で初めて『念には念』の音源を聴くときのメンバーたちの反応が興味深かった。誰にどの箇所の歌割が与えられるのかをとても気にしていた。

ハイタッチ会は左手で一瞬ずつ各メンバーにタッチするだけで、一言も交わす時間はなかった。メンバー全員がしっかり目を合わせて笑顔でありがとうございますと言ってくれて、プロだった。

今日(3月29日)のチケットも持っていたが、正直なところそこまで行きたいという気持ちにはなれなかった。というのも物語がつまらなさすぎたのだ。どこかで聞いたような筋書き、使い古された発想を、さらに陳腐にしたような感じだった。一回観た時点でもういいやって思えるくらいにつまらなかった。

今日もB列だった。右端だった。昨日抱いた感想は、特に刷新されなかった。思った以上に楽しめなかった。脚本があまりにも退屈だという考えが、確信に変わった。作っている人たちに伝えたかったので、アンケート用紙にも書いた。シリアスにしては浅くて風刺も毒も弱いし、笑いもないので、あまり弁護のしようがない。最後になって須藤茉麻がタネを明かすのだが、大したオチではない。その種明かしでそれほど伏線が回収される訳でもない。『念には念』の歌詞や振り付けと違ってこのミュージカルの脚本にはユーモアがなかった。

最後の挨拶で広瀬彩海が言い間違えてドッと笑いが起きたのだが、それが私が観た2公演を通しての唯一の笑いだった。みんなが笑うと会場の空気が緩和していい雰囲気だった。本編中にはそれが一切なかった。緩急がない。単調。わずか数メートルの距離でこぶしファクトリーのメンバーたちの歌、ダンス、演技を堪能出来たのは素晴らしい体験だった。ただ、今回自分が引いた席がよかったからいいものの、もし後ろの方の席だったら不満が強かったかもしれない。物語に魅力がない以上、大迫力の実物を観た後にわざわざDVDで観たいとも思えない。だからもしDVDが出ても買わない。

昨日も思ったが、広瀬彩海の男役が非常にはまっていた。女に戻ったときよりも男役のときの方が可愛かった。男役の髪型や服装がしっくり来すぎていて、女に戻ったとき興醒めするほどだった。最後に客席に頭を下げるときに緊張が解けて素の表情になったときの野村みな美の笑顔がとてもよかった。