2022年12月29日木曜日

M-line Special 2022 ~My Wish~ (2022-12-24)

午前中にトレーニングで背中を傷め、それで一日が実質的にほぼ終了した。トレーナーの青年曰く、おそらく菱形筋が肉離れの手前のようになっている。ぎっくり腰の背中版みたいな。同じ姿勢でずっと居続けないように気を付けて安静にしていれば数日で治るだろうとのことだった。幸いにも夜にはだいぶ軽減し、翌日の午後には治っていた。ただこの一日の大部分は痛みを引きずる結果となった。私は背中が弱点で、自分でも情けなくなるくらいあっけなく傷めてしまうことがある。

都立大学前駅から会場(めぐろパーシモン・ホール)までの間に、50代と60代くらいの紳士たちが道ばたと交差点の信号前でコンビニの揚げ物をムシャムシャ食って、普通ではない雰囲気を発していた。確証はないが、おそらくこれから同じ会場に向かう同志だろう。オタクはこうでなくっちゃ。

アップフロントが私に与えた席は、1Fの左上にせり出している小さなエリア。こういう席に座るのはたぶん初めて。見やすそうだなと思っていたが、実際に体験してみると手すりで視界が妨げられ、決して見やすくはなかった。

ゲスト出演したinbのヴァイブスが物凄かった。ショッキング・ピンクの衣装で氏がステイジに現れた途端、なんらかの魔術をかけられたように会場全体の雰囲気が変わった。昔モーニング娘。の生田衣梨奈さんがちちんぷいぷい魔法にかかれ!とかいう特に工夫もない決まり文句を、私を好きになる魔法とか言って芸人とかにやっていたけど、そういうまやかしじゃなく、本当に好きになってしまう魔法を使えそうな女、inb。性ホルモンの塊。超高級慰安婦。ずば抜けた繁殖能力の高さ。彼女と並ぶと他の出演者(小片リサさん、宮本佳林さん、小関舞さん、佐藤優樹さん)が全員、処女に思えた。というか、処女であることが確定した。inb曰くステイジに立つのが半年ぶりなのだという。おそらく現在の労働強度はそこまで高くないのだろう、十分な休養、強すぎないストレス、充実したエッチ生活を物語る余裕が身体から溢れていた。彼女の歌は私の心にいっさい響かないが、inbの場合は歌手としてどうこうではなく、ある種の特殊能力を持つ特異な存在である。今日のチケットに価値を見出すとすれば半年ぶりにステイジに立つinbを観るという稀少な機会を得られたこと。それ以外の点で私にとってはあまり価値がなかった。

前にランドマーク・ホールで観たコンサートはだいぶ楽しめた記憶があるのだが、今日はあまり楽しめなかった。没入感は皆無。なんでだろうな。12月3日(土)のミュージカル・コンサート、12月18日(日)の田村芽実さんソロ・ミュージカル・コンサートと、直近で本物の歌を聴きすぎたのかもしれない。今日の出演者さんたちの歌唱力は、退団者含むHello! Projectという枠の中では上澄みに属する。それでも上述のミュージカル・コンサートで聴いた歌が頭に残っている状態で聴くと、同じ歌という表現をしている感じがしなかった。もちろん表現としてのジャンルが違う。百も承知。でもそれだけでは言い逃れできない何かがある。ひとつ言えるのは、ミュージカルのプロたちによるコンサートなどとは違って、あんたらはマスクを着けて黙って座ってお行儀よく聴いていなさいというスタンスを観客に強いて成り立つクオリティではないということだ。元からそういう土俵で勝負していなかったはずだ。結局のところ、今でもHello! Projectのコンサートはあの悪夢のザ・バラッドの延長線上にある。私にとって、決して楽ではない労働で手に入れた賃金から安くない金額を払い、休日の(ときには平日の)貴重な自由時間を費やして得る体験として、見合わなくなってきている。もちろん現状のコンサートでも感動を得ている人々がいるのを私は知っている。だから、私のために元のようなコンサート体験に早く戻してくれと言うつもりはない。感染拡大防止ガイドライン(笑)的なやつは別にアップフロントが独自に作っているわけではない。勝手に破ることも出来ないだろう。早期に緩和するように働きかける政治力もアップフロントにはないだろう。この感じがだらだらとまだ何年も続いていくのだろう。この感じで十分に満足する人たちがいて商売として成り立っていくのなら続けていけばいいと思う。

よくも悪くも人間は色んなことに慣れていく。この状況に慣れきってもはや不満にも思っていない人が多数だと思うけど、私たちは相当バカにされている。「私たち」には客だけじゃなくてエンタメ界にかかわる人たち全般が含まれる。バカにされているし、実際バカ。政治力も足りないからいつまでもこんなことが続くんだ。今日も開演前の不快なアナウンスメントを聞きながら思ったけど、あいつらはコヴィッドの感染拡大を防止したくて色んな不便(とさえ感じなくなっている人が多いだろうが)を私たちにかけているんじゃなくて、「コヴィッド感染拡大防止のための業界ガイドラインに従っている私たち主催者」というアリバイのためにやっているんだよね。もうみんな忘れているかもしれないけど、コヴィッド感染拡大防止というお題目って医療体制を整えるまでの時間稼ぎのために一時的にみんなで我慢をしましょうという話だった。いつのまにかこの風邪にかかること自体が罪という話にすり替わった。もう3年経つのにいつまでも逼迫、逼迫とか言っている。バカの一つ覚えのようにマスクを着けろ。注射を打て。検査を受けろ。それで世界最多のコヴィッド大国。じゃあどうする? もっとマスクを着けろ。もっともっと注射を打て。旅行をするな。旅行をしろ。それでもすべてを簡単に忘れ雰囲気で判断し何でも従い続ける奴らは死ぬまでカモられ続け、なめられ続けることになる。この間も私から1メートルから1.5メートルの距離で芽実が熱唱したり喋ったりしていた。もちろんマスクなしで。観ている私たちはマスク着用必須。つばきファクトリーのrelease partyでは75%という収容制限を守るために座席は前半分の列が100%収容、後ろ半分の列が50%収容。意味なんかあるわけがない。ルールはルールとか言っていつまでもこんなことを正当化する人のことを私は心から軽蔑する。『ハマータウンの野郎ども』で「野郎ども(lads)」が蔑む対象であるところの「耳穴っ子(ear'oles)」が多すぎる。ただ労働社会や社会の多数派に順応して立ち回っているだけの奴ら。悲しいことに、私たちは反抗の仕方を知らなさすぎる。

2022年12月25日日曜日

Meimi Tamura Musical Concert (2022-12-18)

久し振りに目覚めがよい。この日に体調の照準を合わせられたのは喜ばしい。調整してきたというよりは偶然だが。生きていて何が自分の体調を左右しているのかがよく分からない。原因不明で何となく調子が悪いということはよくある。自分の身体が既に耐用年数を過ぎていると考えると納得がいく。数日単位での因果だけでなく、もっと長い期間での影響もあるのかもしれない。『養生訓』をパラパラ拾い読みしていたら、この季節にこういうことをしていると次の季節にこういう不調が訪れるというようなことがよく書いてあった。田村芽実さんのファンクラブ限定ミュージカル・コンサート。12月9日(金)の夕方に当選を知ったときは本当に嬉しくて嬉しくて。その日の夜は初めて入った中華料理店で晩酌セットJPY990にお通しを出されて代金にJPY300くらい足されていたにもかかわらず警察を呼ばずに済ませた。それくらい喜びに包まれていた。外れる可能性も十分にあると思っていた。なにせ収容人数が50人という小さな会場で。その中でも限られた特等席だけを申し込んでいたからだ。三公演あって、第一希望が第二部のVIP席、第二希望が第三部のVIP席。今回はチケットぴあ経由だった。理解しきれないまま申し込んだのだが、複数公演の当選はできない仕様だった模様。ハイ・リスク・ハイ・リターンの選択だった。落選者が多数いたようだ。めいめいがインスタグラムのストーリーで言及していた。私は幸運にも当選した側ではあるものの、さすがにもうちょっと大きな会場でやってよと思わざるを得ない規模だった。

自由が丘オペラ座。コンサート会場というよりはちょっと大きめの部屋だった。小さな会場だと事前に知った上でもなお、驚きがあった。中に入ったら一目で全体が視界に入る狭さ。椅子が隙間なく敷き詰められていて、席を空けてもいなかったので、人が入りきるとさしずめすし詰めという感じで。私の整理番号は3番だった。予想していたように最前だった。左から三番目。最前は8席。たぶん2列目も8席で、その16席がVIP席だったようだ。左側にピアノがあったので、めいめいが歌うと思われる場所はやや右寄りだった。でも距離がめっちゃめちゃ近くて。本当に1メートルとか1.5メートルとか、そういうレヴェルの近さ。ここにめいめいが来ると思うと緊張してくる。何か周りのヘッズたちも緊張している感じがした。狭い空間で密集しているから何かお互いの緊張が伝わって、心地よくも重苦しい空気になっていた。開演までの数分間、完全なる沈黙が続いた。ピアニストの淑女(Ryoko Kuriyamaさん)が現れた際、本来は拍手で迎えるべきだったのだろうが、我々は微動だにしなかった。緊張が解けず、どうしたらいいかも分からず、おろおろしていた。そういう集合意識があったように思う。めいめいが登場した際でさえ拍手が起きなかった。

何回も良席で見たことがあるはずなのに、喫茶店や飲食店でテーブルを挟んでいるくらいの距離で見る田村芽実さんには新鮮な感動を覚えた。顔ちっちゃ! 脚細くて長! スタイル良! キレイ! これまで私が見てきたのが田村さんあるいはめいめいだとすると、今日、眼前にその姿を現したのは芽実という生身の女性だった。近すぎて芽実が口を大きく開けたときの口内、前歯の歯並び、舌の湿りが見えた。最初に一曲を披露してから芽実が言ったところによると、第一部では皆さんが近くて緊張した。第二部は緊張せずに出来ている感覚がある。芽実ご本人も緊張するくらいの近さだったので、我々が緊張するのも当然である。『繭期の子守唄』(『グランギニョル』より)を歌った際、知らない人のために、とTRUMPシリーズがどういう物語なのかを説明。登場人物の8割、9割が死ぬんですというざっくりさに私は思わずフッと笑いの手前のような反応をした。そのとき芽実も話しながら、釣られるようにフッと息を吹いていた。私の反応が芽実に連鎖した感触があった。普通に対面して話すくらいの近さだと、発話内容とか分かりやすい笑いとか拍手とかだけじゃなく、ちょっとした息遣いで伝わることもあるんだなと思った。これは私にとって新しい感覚だった。

『繭期の子守唄』について、レコーディング当時、まだ若かったので理解しきれずにただメロディを歌っていた部分がある。今では理解した上で歌うことが出来る的なことを芽実は言っていた。“Amazing Grace”は転調してからのキーが高すぎて、18歳のときにはとてもじゃないけど歌えなかった。歌える日が来るとも思っていなかった。最近歌ってみたら歌えるようになっていた。理由は二つ。一つは変声。女性の声は30歳手前くらいで楽器として完成する。二つ目はこれまでのミュージカル経験による技能の向上。芽実は歌手としてはもちろん、人間としても日々成長して魅力を増していると私は思う。前はもっと尖った一匹狼的なヴァイブスがあったけど、今は人格的に丸みを帯びてきているというか。もちろん、たまに観客として観させてもらっているに過ぎない私の勝手な印象だが。私は先日、家でスマイレージのコンサートBlu-rayを観ていたらだいぶ幼い芽実が出てきて、いつのコンサートかとジャケットのツアー名を見たら2013年。9年前かと感慨深くなった。ただ、そのときはスゴく推してますって感じではなかった。私を好きになってくれたのはアイドル時代からか、ミュージカルからか、という芽実による挙手アンケートがあった(いつも気になっているらしい。ファンクラブにいつから入っているのかとか)。第二部ではアイドル時代からが6割、ミュージカルからが4割(ちなみに第一部ではアイドル時代からの割合がもっと高かったらしい)。私はそのニ択でいえばアイドル時代からになるわけだけど、ここまで支持するようになったのはソロになってからだ。最初はHello! Projectを観るついでの副業程度だったのが徐々にこちらが本業になりつつある。日に日に引き込まれていく。

グッズ紹介のとき、芽実は再三に渡ってA3カレンダーをプッシュしていた。ポスト・カード型だけを買っていく人が多い(カレンダーは二種類発売されている)。自分で言うのもなんだけど可愛い。カレンダーと言ったら水着かなと思って、8月は水着を着てみた。一応元アイドルだから。お尻まで見えている写真をちゃんと選んだ。みんなが喜ぶかなと思って。最初は下の方が白く塗りつぶされた上に日付が書いてあるデザインが上がってきた。それだとお尻が見えない。悲しむ人がいるからお尻が見えるようにしてほしいとデザインを修正してもらった。的なことを言っていて、このくだりが今日のトークでいちばん会場が盛り上がった。終演後にはほぼ全員がA3カレンダーを買うために列を作っていた。VIP席のヘッズには特典としてカレンダー二種類があらかじめ席に置いてあった。特典といえば、種の袋詰めからシール貼りまですべて芽実が行ったという朝顔の種が全員に配布された。芽実からのクリスマス・プレゼント。

芽実のお母様が最前の一番右の席のさらに右側にいらっしゃるなというのは途中で気付いた。観に来ているんだなと思っていたが、まさか芽実とのデュエットを聴けるとは思わなかった。本田美奈子.さんの『幸せ届きますように』。レアなものを聴かせてもらった。こんなこと二度とないのではないか? お母様は終演後、階段を降りると(会場は二階だった)下からありがとうございました! ありがとうございました! という声が聞こえてきた。何だと思ったら芽実のお母様が来場者の一人一人に頭を下げてお礼を言っていた。私はコンサートで胸がいっぱいだったのと何も準備できていなかったので気の利いたことを言えず、というか何も言えず(ありがとうございましたくらいは捻り出したかもしれない)、ただ頭を下げた。

全員と目を合わせるのは普段ミュージカルで出演している会場では不可能。50人という少ないキャパの会場だから、一人一人の目を見て歌っている。こんなことがしたかったんだなと思いながら歌っている。ということを芽実は言っていた。これ以上はない。このままスッと死ねたらいいかもしれないな、と私は帰途で考えた。私がこの感情になるのはごく稀である。横浜F・マリノスの明治安田生命J1リーグ優勝にスタジアムで立ち会うのと同じくらいの幸福感を味わった。私の2022年を振り返るときに間違いなく最良の思い出の一つとなる体験だった。これを明確に超越する幸せはどう生きたってそう味わうことは出来ないのではないだろうか。私にとって2022年は激動の年だった。苦しい思いもたくさんしてきたが、生きてきてよかったと思った。来年も、部屋に芽実のカレンダーを貼って生きる。

2022年12月24日土曜日

Musical de Night (2022-12-03)

DEV LARGEさんにビーフを仕掛けられたときのK DUB SHINEさんのように「え? 何だよいきなり」と言いたくなるLINEが来た。「コンサート『Musical de Night』に出演が決定致しました!」から始まるメッセージが田村芽実さんの公式LINEアカウントから来たのが11月12日(土)朝9時。1時間後にチケットが発売されるらしい。事前情報はなかった。考える時間を与えてくれない。会場のサントリーホール ブルーローズ(小ホール)を画像検索したら雰囲気がよさげだった。行きたくなった。ファンクラブ先行受付はないとのこと。「すべて先着順とさせていただきます」という文面も気になったので、念のため10時になった瞬間にロー・チケにアクセス。途中で繋がらなくなる。二、三回。変わんない。ロー・チケはカス。ついでにローソンのアイス・コーヒーもまずい。ロー・チケに見切りをつけてeplusに切り替える。遮られることなく購入成功。10時4分。ロー・チケはカス。その場で席が表示される。2列14番! 先着順というのはどうやら単純に申し込んだ順に前から割り当てているっぽい。(昔インドで乗ったダラムシャーラーからニュー・デリーの夜行バスと同じ方式だ。あのときは真ん中から後ろはスカスカだったので勝手に席を移動した。)

六本木一丁目駅。池袋とは違うキレイな東京。所得高めな人しか寄せ付けない高級な雰囲気。サントリーホール付近で開場を待つ人々もちゃんとした外套を纏った落ち着きのある紳士淑女が多く、スポーツなど一切しないのにスポーティな装いを好む肥満体や禿げ頭たちがたむろするアイドル現場とは一線を画していた。ドレス・コードは示されていなかったものの、半袖teeの上にクルー・ネックのシャツで場違いではないだろうかと少し不安になった。襟付きシャツを着てきたほうがよかっただろうか? あまり持ってはいないが……。最前だったのでなおさら。入場してから知ったが椅子に貼ってある席番号には1列が存在せず、一番前が2列だった。それもど真ん中。もしかしてロー・チケですぐに買えていたらもっと左になっていたのだろうか? だとするとロー・チケで失った数分が結果としていい結果を生んだことになる。

収容人数400人程度の比較的こじんまりした会場で、豪華なオーケストラの生演奏とともに熱唱する田村芽実さんを目と耳に焼き付ける。至極の体験だった。田村さんと何度も目が合った気がする。たぶん。田村さんの出番は前半にソロで4曲(『アナと雪の女王』から“Into the Unknown”、『ジェイミー』から“It Means Beautiful”、『ポカホンタス』から“Colors of the Wind”、『魔法使いと私』から“Wicked”。好きな曲を自身で選んだという)。休憩を挟んだ後半ではデュエットを1曲(『輝く未来-塔の上のラプンツェル』。後述する渡辺大輔さんと)。あと最後に出演歌手全員の合唱(『星に願いを』)。田村さんはステイジに出てきた瞬間からこの場に立てる喜びが全身から溢れていた。輝いていた。物理的にも照明に当たって輝いていた。この輝きはフットボールでいうと、宮市亮さん。キャリアを通じて常に怪我に苦しまされていたから、プレイ出来ることの喜びが人一倍、観る方にも伝わってくる。こうやってミュージカル・コンサートをするのがニ、三年ぶりで……と話す田村さんは喜びを噛みしめているように見えた。収入に関係なく、仕事に対してそういう姿勢を持てる人が人生の勝者だと思う。これは必ずしも花形の職業に就いていることとイコールではない。たとえばフットボーラーだったら仕事が楽しいかというと実はそう単純でもない。

司会は芸能人に疎い私でさえ見覚えがある鈴木杏樹さんという淑女だった(“MUSIC FAIR”の司会をされていた方)。田村さんが歌唱後の鈴木さんとのトークで言ったところによると、アイドルとミュージカルでは歌うときの呼吸法がまったく違う。Hello! Projectを退団してから一年間、稽古を通じて呼吸法をアイドルからミュージカルに切り替えた。声楽が専門の紳士も二人出演していて、鈴木さんはそのお二人にも似た質問を投げかけていた。声楽とミュージカルの違いや生かせる部分は何ですかという感じの質問だったけど、あまり生かせる部分はないと片方の紳士が答えているのが興味深かった。そういえば田村さんが何かの配信で、演歌を歌ってみてほしいというコメントに対し、一口に歌といってもジャンルによって歌い方が違うので、そう簡単に別ジャンルの歌を歌えるわけではない的なことを言っていた。たとえば同じピアノでもクラシックとジャズではまったく異なるのと似ているのかもしれない。あとトークの中で勉強になったのが、音楽劇とミュージカルの違い。バン・マス的な紳士が説明したとことによると、厳密な定義はないものの一般的には音楽は音楽、芝居は芝居で分けられているのが音楽劇、音楽によって話が展開していくのがミュージカルとされている。

渡辺大輔さんという、田村さんと同じ事務所(BMI)に所属する紳士を初めて拝見した。田村さんがソロ4曲なのに対し渡辺さんは5曲だったのが事務所内の序列を感じた。(それでいうと他の歌手はソロが二曲もしくは一曲だったので田村さんの扱いはよかった。)たまにBMIからのメールで名前を見ていたので存在だけは知っていた。私と同い歳だった。この歳になると体型や見た目の個人差が非常に大きくなる。かなり禿げている奴や、だらしない体型の奴がゴロゴロ出てくる年頃。そんな中で渡辺さんは顔立ちが端正なのはもちろんのこと、生え際が後退しておらず、スタイルも保っており、かといって変に若作りをした風でもなく、カッコよく歳を重ねている感じがした。まあこりゃ女性たちがファンになるのも分かるなと納得。最近ご結婚なさったそうなので田村さんに手を出さないであろうからその点においては安心できる。

18時開演で、1時間50分くらいで休憩。この調子だと22時くらいまであるのかと思ったが第二部は短く、21時15分くらいに終演した。通しての公演時間は思ったより長かった。(何となく長くて2時間くらいと思っていた。)尺だけじゃなく内容も盛り沢山で。次々に歌手が登場してプロの技を存分に見せつけてくれたのはもちろんのこと、オーケストラだけが演奏する時間もあった。平原誠之さんというピアニストによる『レ・ミゼラブル』と『オペラ座の怪人』メドレーもあった。平原さんのプレイ・スタイルは魂を込めた憑依系。ガッチリした体躯も相まって迫力があった。『民衆の歌』を演奏してくれたのには気分が高揚した。横浜F・マリノスの歌でもあるからだ(ホームの試合で選手入場の直前にスタジアムに流れる)。平原さんは趣味が高じて来年4月23日にボクサーとしてデビューするとのこと。その試合で手を傷めるリスクがあるにもかかわらず、三日後の4月26日にピアニストとしての公演を控えている。出演者の殆どを存じ上げなかったが初見で聴き惚れてしまうほどに歌と演奏がうまかった。それを最前中央で浴びることが出来たのは音楽のリスナーとして幸せだった。一方で田村さんの追っかけとしては物足りなさが残った。もっと彼女の歌を聴きたかった。

2022年12月17日土曜日

つばきファクトリーFCイベント ~キャメリア ファイッ!vol.14 キャメリアXmas2022~ (2022-12-02)

根が健康志向に出来てるので崩したくない生活のリズム。無理に早起きせず後からアーカイヴで試合を観ようと思っていたが、根がフットボール小僧に出来てるので勝手に目が覚めた。iPhoneの電源を入れる。4時19分。Fire HD10でAbema TVを開く。日本0-1スペイン。当然のようにスペインが一方的にボールを保持している。たまに奪い返してもすぐに失う日本。点を取れる気配がない。私は日本0-3スペインと日本1-2スペインにJPY400ずつ賭けているが、このままだと日本0-3スペインの方が的中する可能性が高そう。(このWINNERってやつはスコアまでピッタリ当てないといけないのに払い戻しがしょっぱすぎる。胴元がマージンを取りすぎなのでは。)何とか失点ひとつで45分(+AT)を堪え忍んだ日本代表だが攻め手があるようには思えない。後半にとどめを刺されてボコボコにされるに違いない。と前半が終わった時点では思っていたが、その後は皆さんもご存じのように信じられない展開が待っていた。2-1で日本が勝ってしまった。2点目に繋がったあの場面は本当に鮮烈だった。ペナルティ・エリア内に侵入した堂安さんが右から送ったクロス。スペインのDFとGKが見送るしかない絶妙なコース。ゴール・エリアの左側で滑り込むが間に合わない前田大然さん。その先に身体を投げ出していた三苫さんが左足で折り返す。あのときボールがゴール・ラインに残っていた長さは1.88mmとも言われている。ボールがあと2mm前に進んでいればあのゴールはなかった。日本は予選リーグで敗退していたかもしれない。森保さんと選手たちへの評価も大きく変わっていたかもしれない。紙一重で天国にも地獄にもなる世界。

このワールド・カップでの日本代表について解説してほしい、と後日ジムでトレーナーの青年(野球ファンでフットボールには疎い。ボディ・ビルダー)に頼まれた。ストレッチをしながら私は大体こういうことを話した:ドイツとスペインに勝ったのは凄いと思いますよ。でもこれで日本がドイツとスペインよりも強いということにはならないんです。サッカーは弱いチームでも強いチームに勝つことがあるんです。采配とか、運とか、色んな要素が重なって、一試合単位ではそういうことも起きる。特に短期の大会では。だから、目標をどこに置くかですね。ベスト16なりベスト8なりに進むことそれ自体なのか、決勝トーナメントの常連チームと伍して戦えるようになることなのか。その二者は似ているようで違うんですよ。私がJリーグで応援している横浜F・マリノスというチームが、ワールド・カップでいうところのドイツやスペインのようなチームなんですよ。たまに日本のようなチームが守備を固めて一回のチャンスを決めて勝ったりするんです。もちろん、負けは負けですよ。ただそれで相手の方がマリノスよりも強いとは思わないんです。ちょっと前に天皇杯でヴァンフォーレ甲府というJ2でも下位のチームが優勝したんですけど、J1の全クラブよりもヴァンフォーレ甲府が強いとは誰も思っていません。それと同じです。(李国秀さんがYouTubeの動画で、勝負とフットボールは別物という旨のことを言っているのが腑に落ちた。勝負に勝ったからといってフットボールで勝っているとは限らない。)

午前在宅勤務、午後休。大量の残務を週明けの月曜日に持ち越す。入社当初とは徐々に苦しさの種類が変わってきている。分かることが少なすぎてすべてが手探りのストレスよりは業務量が多いストレスの方が断然マシだ。楊2号店で汁なし担々麺。私が足繁く通っていた3号店は料理人と給仕係が替わり、味も変わってしまった。このあいだ久し振りに汁なし担々麺を食ってみたが、これじゃないんだ。調味料の配合だと思う。2号店は本来の味を維持している。日暮里駅前のエクセルシオールで赤松利市さんの『東京棄民』を読む。4時19分から起きているせいか、気怠くなってくる。居眠りしてしまう前に店を出る。青砥とかいう東京の癖に辺鄙で読み方もよく分からない駅へ。F君、首の皮一枚で明治安田生命J1リーグへの残留を決めたクラブのサポーターであられる紳士と合流。

最近Hello! ProjectでもようやくQRチケットが導入され始めた。この公演もその対象で、私にとってはHello! Projectの公演にQRコードで入場するのは初めてだった。「電波障害でQRコードが開けない場合に備えて、QRコードが表示できましたらスクリーンショットで予め保存をお願いいたします」と書いてある画面で「QRコードを表示」を押すと、次の画面では「スクリーンショットはご利用いただけません」と書いてある。どっちなんだよ。馬鹿が。これを見たら秋葉忠宏さんも「ディス・イズ・アップフロント!」と叫ぶに違いない。

前日にグッズ写真で確認した衣装で、見所は秋山さんの大腿部と当たりをつけていた。見立て通りだった。しかも実際に観ると中がボクサー・ブリーフのようなピタッとした赤い短パンで、その下に穿いている黒いアン・スコを何度も見せてくれた。特に逆さ言葉で出されたなぞなぞの原文を理解するために床に指で書くためクロッチを見せつけるようにしゃがみ込んでいるときが絶景だった。好きになってしまう。大腿部もまともに露出せずドイツ戦とスペイン戦の日本代表が敷いた守備ブロックのようにガードの堅いメンバーさんの多い中、一人だけアンジェ・ポステコグルー監督時代の横浜F・マリノスのような高いディフェンス・ラインで攻める衣装。観ないのが失礼。一部と二部の間の時間に秋山さんの衣装の話をしたところ、J2降格目前だったクラブの支持者であられる紳士も見逃していなかった。浅倉さん(彼女の衣装もクオリティが高かった。デコルテを丸出しにして見せてくれた)を見つつ間接視野で秋山さんも見ていたとのことだった。山岸さんや谷本さんの肌面積が狭いのは納得がいかない。自分の存在意義とは何なのか、顧客に提供できる価値は何なのか、他のメンバー(特にリト・キャメ勢)と比較したときの強みは何なのか、その辺をちゃんと理解できていればあの肌面積にはならないはずだ。Hello! Projectのコヴィッド対策(笑)下における質素な演出、声で一緒に作り上げることを許されない鑑賞方法の制限、大したことのない曲、生演奏ではない音楽、本業の歌手やダンサーには及ばないパフォーマンス・レヴェル、それで何が残るかというと女の身体。生イメビ。だから肌面積を広くしないと成り立たない。私にとっては。

おみずちゃんに関して言えば、一部で自己紹介のキャッチ・フレーズを他のメンバーさんが考案するくだりがあった。お水もしたたるいい女というのが最終的に採用されたと私は記憶している。新沼希空さんが言った、キャベツの大盛り無料が大好きです、というのが一番おもしろかったが、おみずちゃんがイヤがって不採用となった。各メンバーさんからのサンタさんにお願いしたいことを叶えるという体で色んなゲームをやっていた。もちろんメンバーさんたちがキャッキャ言いながら色々やっているのは可愛らしく微笑ましかった。Hello! Projectにしては面白かった。さわやか五郎の仕事ぶりも評価できる。だが誰が何をやったのか、一部が誰で二部が誰だったかとかをいちいち思い出して書き残したくなるほどの熱は私にない。今日という一日において日本対スペインに比べるとつばきファクトリーのFCイヴェントはおまけでしかなかった。終演後、三人で恵比寿のどんくという店に入った(移動に一時間以上かかり、青砥の遠さにイラつかされた)。名物のチキン・カツ定食は枚数を選べる。2-3枚がJPY900、4-5枚がJPY950。夜に定食が食える居酒屋は稀少。値段が手頃で味もよく、気に入った。近場にあったら間違いなく通う。