2015年7月25日土曜日

COVERMIND 360° SESSION (2015-07-12)

遅めの昼食と待ち合わせまでの時間潰しを兼ねて「らんぶる」に入った。新宿を訪れたら高確率で利用する喫茶店だ。ピザトーストのセットを頼んだ。セットという言葉を日本では定食のような意味で使うが英語圏ではこの用法は通じない。先日Twitterを見ていたら英語圏でハンバーガーのsetを頼んだらハンバーガーが二つ来たという話が回ってきた。日本語でいうセットのことはmealと言うらしい。それはともかく「らんぶる」のピザトーストは高く評価できる。具は少ないけどね。サラミでも乗っていたら完璧なんだけど。タバスコをこれでもかとかけて食べる。串カツがソースを味わうためにあるのと同様、ピザトーストはタバスコを味わうためにある。食後のコーヒーを飲みながら入り口の方に目をやると何人かが並んでいた。950円の会計を済ませて新宿ロフトに向かった。fox capture plan、日本語にするとキツネ捕獲計画という名前の集団のライブ演奏を聴きに行くのだ。今日は大学時代からの友人と一緒だ。

このブログにはほぼハロプロの現場に行った記録しか書いていないのでまるでアイドルオタクのように見えるかも知れない。それは大きな誤解で、私は音楽愛好家なのである。以前の記事にも書いた通りである。いつでもドープな音楽を探し続けているんだ。2014年の12月だった。私が信頼しているTwitterの某アカウントがbohemianvoodooという集団の新しいアルバムを勧めていたので買ってみた。気に入ったので過去作をディグっていったところ、同じPlaywrightというレーベルの仲間であるfox capture planと共同で出したcolor & monochromeというミニアルバムに出会った。それがきっかけでfox capture planの虜になった。彼らが出してきたアルバムをすべて揃えた。もっとも7月8日に発売したCOVERMINDは7月15日に発売するJuice=Juiceの“First Squeeze!”と一緒にタワレコから届くのでまだ持っていない。

普段、新宿は好きで来る場所ではない。むしろ苦手だ。新宿ロフトを探し当てるまでに歌舞伎町をうろうろしている間、サイレンを鳴らしたパトカーが私の横を通ってからラブホテルの前で止まったし、目の前に人が飛び出してきたと思ったらベロンベロンに酔っぱらった女だった。ホストクラブの従業員らしき男が介抱していた。普通に歩いているだけでそういう光景に出くわすので疲弊する。Google Mapの力を借りたにも関わらず新宿ロフトを見つけるのには難儀した。女性が客として来るタイプの水商売の店やガールズバーばかりが入居したビルヂングの地下2階だった。まさかここだとは思わなかった。凄い場所にあるなというのが率直な感想だ。おかしいな…この辺りのはずなんだけど、と思いながら付近を何周もしていた。新宿ロフトのすぐ側には「客引きは詐欺の手先です! 料金システムの何十倍も取られます」という新宿警察署による看板が立っていた。この周辺の空気を肌で感じたことによって、以前YouTubeで見たMCバトルで晋平太がGOLBYに向けた「そこどうだよ新宿ロフト お前はただの韻踏むホスト」というフレーズの味わいが理解できた気がする。歌舞伎町のど真ん中にあるホストクラブだらけの建物の地下に新宿ロフトがあるという事実を知らないとあれはただの韻のための韻に聞こえてしまう。

事前にメールでチケットを確保してある。当日に前売り料金(3,300円/1枚)で引き替えることになっていた。16時半頃に会場に行ったら引き替えは開演30分前からだとスタッフの男性に言われたので17時まで待った。コンビニに入ろうとしたらラッパーの輪入道のような風体の紳士が出てきて気が抜けなかった。店内にレッドブルが大量に陳列してあるのに土地柄を感じた。そろそろ17時かなというタイミングで、もうチケット引き替え出来ますよと先ほどのスタッフが声をかけてくれた。6,600円を払って二人のチケットを入手。整理番号58番と59番だった。17時半開場、18時半開演のはずだったが実際にはそれより前に入場が始まっていた。17時29分になってもまだ友人が来ないので電話をかけた。近くまで来ているが少し迷っているとのことだった。水商売の店ばかりが入ったビルだと言うと程なくして到着した。既に前売り券の所持者は全員が入れるようになっていた。当日券組の入場が始まる前に何とか滑り込むことが出来た。

こういう会場で必ず強制的に買わされる500円のドリンクチケットは大抵の場合は水と交換するか、使わないことが多い。大体、ギッチギチに客が入った立ち見会場でゆっくり何かを飲む余裕なんてない。でも今日は違った。会場がやたらと素晴らしいんだ。どう素晴らしいかっていうと、中心にフォックスキャプチャーたちの演奏場所が設置されていて、それを客が取り囲む。段差がないし柵もない。驚くほどに近い。最前列なら手を伸ばせば届く。警備員もいないのでナイフがあれば襲撃して刺すことも可能な距離だ。今回は“COVEREMIND 360°SESSION”といってfox capture planの周りを客が360°取り囲むというコンセプトだとは読んでいたが、どんなもんなのか想像がつかなかった。しかも客を無理に詰め込んでいなくて、ゆとりがある。私たちの整理番号58と59が前売りのほぼ最後で、当日券はそんなにたくさん出さなかったはずだからおそらく100人以下。少人数の観客で、物凄い近さで、最高の集団による演奏を楽しめる。開演前から既に最高の時間になることが保証されていた。話をドリンクに戻すと、私はジンライムを注文した。友人はビールを頼んだ。一番後ろ(と言っても十分に近い)でちびちびやりながら友人と色んな話をした。アルコールが少しずつ回ってきて気分がよくなってきた。

奴ら(fox capture plan)が12分遅れの18時42分に登場した頃にはジンライムで私の頭がいい感じに麻痺していた。ハロプロの現場では出演者たちのダンスと表情、ふともも等を脳裏に焼き付けるのが極めて重要だが、fox capture plan相手ではそこに神経を使う必要がないので、多くの時間帯で目をつぶってただ音に身を任せた。気持ちよすぎた。酒がちょっと入った状態で聴く音楽ってのがまた別格なんだよね。(別格と言えば、別格希少珈琲という220円もするKIRINの缶コーヒーは期待外れだった。)出来ればハロプロの現場でも少し酒を飲んで臨みたいと思った。最高すぎた。当たり前だがiPodで聴くのとは臨場感が違いすぎた。まだ聴いていない“COVERMIND”の曲群を先にライブ演奏で堪能するという贅沢。浸った。MCで主に喋っていたピアノ氏をはじめとして、MCで垣間見るfox capture planの人間性に好感を持った。彼らは私と同年代であることを知り親近感を覚えた。「これが最後の曲です」と言うと観客はお約束のエーイング。すると即座に「えーじゃねえよ!!」とピアノ氏がキレたのが面白かった。どうやら恒例のネタっぽい。今日はアットホームな会場のつくりだとfoxの構成員たちは何度か口にしていた。タイトで熱い演奏とほのぼのとした喋りの緊張と緩和が、心地よかった。客に取り囲まれているので出るに出られないということで、アンコールの拍手を受けると一度裏に引っ込んでからの再登場ではなく、その場で追加演奏をしていた。

新宿歌舞伎町で私が知る唯一のリアルな飲食店である四川料理屋「川香苑」で友人と夕食。もしかすると入れないかもと思ったが意外と空いていた。麻婆豆腐、豆腐と豚肉と野菜の炒め物、ワンタンを頼んだ。360° SESSIONの感想戦の他、音楽の話をたくさんした。これだけ詳しく音楽の話を出来る友人は彼しかいない。fox capture planが好きなら、ということでquasimodeとJazztronikを勧めてくれた。いずれ聴く。quasimodeというのは名前だけ印象に残っていた。というのがMadlibの変名であるQuasimotoのアルバム2枚は聴き込んだからだ(3枚目は数回しか聴いていない)。何か似た名前のグループがあるんだな程度には気になっていた。

fox capture planは非常にドープな人たちなので皆さんも是非チェックしてみてください。まず一枚聴くなら“BRIDGE”というアルバムを勧めます。