2015年11月30日月曜日

百花繚乱 (2015-11-29)

会社を辞めるというのを、私は二回やったことがある。最初の会社は8年間勤めた。部長から「何か一言」とマイクを渡され、部全体に何か話すように仕向けられたときは困った。何も言うことは準備していなかったし、言いたいことはなかったからだ。「特にないんですが…」と言ってから数秒間の沈黙を挟み、さすがに本当に何も言わないで済ますことは出来ないと気付き「今までありがとうございました」というような言葉を手短に発したのを覚えている。次の会社は、在籍期間が一ヶ月だった。自分から辞めたが、半分クビにされたようなものだった。ゴールデンウィーク中に退職を決断した私は、連休明けの朝9時過ぎに出社し、10時半には手続きを終えて建物から出た。手続き上、人事と上司とは話さざるを得なかったが、それ以外の同僚には誰にも辞めることを知らせず、エレベーターで地上階に降りた。

福田花音さんが今日でアンジュルムを脱退し、アイドルを辞める。その公演を観るために、日本武道館に行った。アイドルがアイドルではなくなる現場を観に行くのは、初めてだ。高橋愛さんがモーニング娘。から引退する二日連続の公演のうち、初日を観たことはある。でも、この公演が最後だというのは映画館やDVD、Blu-rayでしか観たことがない。

私が今まで生きてきて最も好きでいたアイドルは、道重さゆみさんだった。彼女がモーニング娘。での活動を辞めたのはちょうど去年の今頃だった。パシフィコ横浜で行われた最後の公演。ファンクラブの先行受付では落選し、追加された席の受付でも落選した。数万円を出せば、娯楽道であったりTwitter経由で個人からチケットを入手することは可能だった。席を問わなければ現場に潜り込むことは可能だった。普通に考えれば、何万か積んででも行くべきだった。道重さゆみさんがモーニング娘。として放つ最後の輝きを見届けるのは、私にとってそれほど重要なはずだった。でも、私はそうしなかった。映画館での上映を観に行くことでお茶を濁した。それでよかったんだと今では思っている。その場にいたとしたら、耐えきれなかっただろうと思う。チケットが当たらなかったのは残念ではあったが、ホッとした部分もあった。

何かが終わるのに向き合うのが、私は苦手だ。最後に対して、終わりに対して、成熟した態度で臨むことが出来ない。避けてしまう。見ないようにしてしまう。

道重さんのラジオ番組『モーニング娘。道重さゆみの今夜もうさちゃんピース!』の最終回は、未だに聴いていない。彼女がモーニング娘。を引退する記念に発売されたDVDは、まだ開封していない。パシフィコ横浜で行われた最後の公演を収めたBlu-rayは、一度しか再生していない。道重さん以外でも、アマゾンで12,725円もした(定価17,280円)Berryz工房のBlu-rayは3月に買ってから開封していない。Berryz工房のことは特段、応援していたという訳でもないし思い入れも特になかった。そんなBerryz工房でも、なるべくなら終わるのをこの目で見たくない。(とは言ってもこのまま放置するのは無意味なので近いうちに観ようとは思っている。)

今日の物販は、ネットで公開された小さな画像を見る限り田村さんの日替わり写真がよさそうだった。通常は1枚なのだが、今日は全員2枚組で、1枚はいつも通り一人、もう1枚は福田花音と二人で映っている。あと今日から発売されたDVD MAGAZINEも欲しかった。14時すぎにグッズ列の混み具合を見に行ったところ、2時間くらいは待ちそうだったので諦めた。日替わり写真はこの場でしか買えない。DVDは後でe-lineupで買う。九段下駅の近くにあるPRONTOに入って、ホットコーヒー240円とキットカット50円を買った。ここに来る前にタワレコで買った和田彩花さんが表紙の『IDOL AND READ』を袋から出した。和田彩花さん、岡田ロビン翔子さん、佐藤綾乃さんのインタビューを50分くらいかけて読んだ。アンジュルムのTシャツを着た若い女性二人組が隣に座ってきた。福田花音のfinal公演への期待を楽しく語るのかと思っていたら、会社の部長の加齢臭が嫌だとか○ちゃんは△ちゃんを嫌いだとかそんな話ばかりだった。聞き耳を立てていたという訳ではないのだが、席が近くて、私が音楽を聴いていなかったので自ずと耳に入ってきた。iPhoneにearphoneをつないで、好きな実況主であるP(ピー)さんの新しい動画「友人が作った奇想天外でユーモラスなPRG【はがね】を実況プレイ!part7」を観た。

席は、南スタンドW列25番。後ろから二列目の中央付近。サッカー観戦であれば私が最も好きな位置だ。アイドルを観る席としてはステージが遠い。決して良席ではないが、不満はない。なぜなら;
・ハロプロで私が主に好きなのは℃-uteさんとJuice=Juiceさんであって、福田花音さんやアンジュルムさんの熱心なファンという訳ではない
・武道館は傾斜が強く、基本的にどこにいても見やすい。よっぽど端っこの席でない限り大外れということはない
・南スタンドはステージと対面する位置なので全体が見渡せる。死角がない
私の左は空席だった。最後まで来なかった。おかげで広く使えてよかった。右は静観派の紳士。常に双眼鏡もしくは腕組み。公演を通じて2回くらいしか声を出していなかった。

ステージには百花繚乱の漢字が一文字ずつ書かれた板が4枚置かれていたのだが、順番が「花繚乱百」になっていた。後で直すのかなと思っていたが、開演(10分くらい押した)してもそのままだった。コンサートが始まると、4人のハロプロ研修生がそれぞれの板を後ろから持って、前後左右に動いたりひらひらと回転したりしながら最後に「百花繚乱」に並び替わるという仕掛けだった。遊び心があって、心躍る演出だった。春っぽかった。冬だけど。入場列に並んでいるときから今日の公演は楽しくなるという予感がしていたが、その期待を裏切らない出だしの演出だった。大きな会場では演出の出来が観ている側の気持ちの盛り上がり方に大きく影響する。

私はアンジュルムでは田村芽実さんを推しているはずだったが、最近では自分が田村さんを推しているのかどうか分からなくなっていた。来週にTOKYO FM HALLで行われる氏の誕生日イベントには2公演ともに申し込んで片方に当選はしたももの、参加するにあたって気持ちの持って行き方が難しかった。前述のように私はグループとしてはJuice=Juiceさんと℃-uteさんが好きである。その2グループには宮崎由加さんを筆頭に、岡井千聖さん、宮本佳林さんといった素晴らしい面々がいて、彼女らを前にして自分の中で田村さんの存在が霞んでしまっていたような気がする。でも今日の公演が始まると、私は田村さんばかりを見ていた。ハロプロの中で一番見た目が好みかというとそういう訳ではないが、彼女の魅力を一言で表すのであれば、格好いい。ステージで自分を表現するために生まれてきたような輝きを感じる。才能の塊である彼女を見ていたい。私の田村さんに対する姿勢はそういうことなんだと、今日、認識した。

田村さんの衣装で一番好きだったのは、ダメージ加工の入ったデニム生地のオーバーオールに、虎が描かれたスカジャン(開けて着ていた)、黄色いハイカットのスニーカー。スカジャンの背中には23と書いてあった。マイケル・ジョーダン? あと、全身白のジャケット、長パンツ、帽子が様になっていた。田村さんはmannishな格好が似合う。

序盤の挨拶で室田瑞希さんが「今日は最後まで一人も欠けることなくやり遂げたい」という趣旨のことを言って、客席がざわついた。他のメンバーさんが福田花音さんが今日でいなくなるということを指摘する。「福田さんは欠けちゃいますけど…」と室田さん。客席は笑いに包まれた。その後に(客席の)皆さんが一人も欠けることがないようにやっていきたい」と言い直したが、こちら側に負傷退場や死の可能性がある物騒な現場なのか?という疑問が残り、面白かった。こうやってメンバーさんが言い間違えたりボケたりすることで緊張がほぐれて、暖かい空気が醸成されていった。

福田さんがアンジュルムを辞めるにあたって、サブリーダーに中西さんと竹内さんが就任することが発表された。このサブリーダーという役職にどれほどの意味があるのか不明である。指名された本人たちへの意識づけややる気の向上といったところだろうが、有名無実化するような気もする。ただ例えばマネージャーが中西さんと竹内さんにもっとしっかりしろとか、もっとこういう風に振る舞えとか言うときに「お前はサブリーダーなんだから」というのはいい枕詞になりそうである。

終盤の喋るセグメントでは、田村さんが今後の福田さんとの関係について「羨み合える関係になりたい」と言うべきところを「恨み合える」と言ってしまい客席がざわつき勝田さんが「こわーい」と言っていた。「私は何も恨みはないよ」と福田さん。

中西さんは、福田さんがいかに優しくしてくれたかを泣きながら話してから「私の半分は福田さんで出来ている」としっかり笑いを取っていた。

和田さんは8年前に貸したお気に入りの赤いボールペンを福田さんがまだ返してくれないことを興奮ぎみに暴露し(Twitterの誰かの投稿によるとこの話自体は既出らしい)、一生恨み続けると述べた。
福田「マネージャーさんにも赤いボールペンを返していない」
中西「私もTシャツを返してもらっていない」
福田「Tシャツだけじゃなくてスパッツもね。履き古して捨てたけど」

「いじってくれる人が一人減ってしまうのは残念」という竹内さんに「客席から野次を飛ばすね」と福田さんが返した。

途中、ドッキリで℃-uteとハロプロのリーダーである矢島舞美さんが登場した。福田花音さんの『わたし』に移る気が満々のメンバーさんたちは驚きを隠さず、和田さんに至っては「次の曲があるんですけど!」と矢島さんに訴えていた。矢島さんが登場する前の、次の曲がなかなか始まらない10秒くらい、前屈みになった体勢を維持していた田村芽実さんの胸元を遠くから双眼鏡越しに凝視していたことは秘密である。矢島さんは福田さんに向けた手紙を読み上げた。コンサートの流れを邪魔しすぎない程良い長さで、手紙を読むと矢島さんはコンサートを見させてもらうと言って捌けていった。

この矢島さんのセグメントに限らず、セレモニー的な時間が必要最小限に抑えられていた。よくモーニング娘。のコンサートである、メンバーさんが一人ずつ辞めていく人にお別れをして涙を流して抱きついていくというくだりがなかった。私はこの判断を支持する。いくら特別な公演とは言え、長々と本編とは関係のない時間を取ってしまうと、流れをぶった切ってしまい、コンサートとしての完成度を下げるからだ。辞める本人からの挨拶はファンに向けたものなので、コンサートの一部である必要がある。だがメンバー同士でのお別れというのは内輪の話であって、ファンに見せる必要はない。少なくともコンサートの中に組み込む必要はない。今日の公演は、私のようなそれほど福田花音さんに思い入れのない来場者にとっても過剰に映らない、カラッとした、ちょうどよいセレモニーであった。ダブルアンコールで出てきた福田さんが今日は人生で一番特別な日だと言っていて、そんな場に居合わせてもらえるのはありがたいなと思った。

セットリストには緩急があって、新旧の曲をバランスよく織りまぜていた。曲のメッセージがコンサートの流れともうまくつながっていていた。直近のsinglesはもちろん、『地球は今日も愛を育む』、『私、ちょいとカワイイ裏番長』(中西さんが振り付けを間違えていた。終盤で蹴らないところで一人だけ蹴っていて、すぐに気付いて恥ずかしそうだった)、『ヤッタルチャン』、『大器晩成』、『夢見る15歳』、『新・日本のすすめ!』、『同じ時給で働く友達の美人ママ』(順番はめちゃくちゃ)…。傾向として、やっぱり古い曲の方が、乗りやコールが我々の側に染み付いているから盛り上がる。メンバーが変わっていってもそこはスマイレージ時代からの積み重ねがある。

終演後の私に残った感覚は、胸一杯の感激というよりは、納得だった。これからすぐに粛々と元の生活に戻れるような、地に足が付いた感覚だった。何かが終わってしまったという喪失感はそこにはなかった。これは福田花音さんの最後の公演であって、福田花音さんの終わりではなかった。「○○関係のお仕事をしたい」とか「留学したい」といったふわっとした目標ではなく、作詞家という明確なvisionが決まっている。単なる雲をつかむような話ではなく、具体的な展望がある。既に『わたし』の詞を手がけたし、アンジュルムが将来出すヒット曲を作詞したいと言っていた。これからハロプロを去っていくメンバーの方々の出来るだけ多くが、福田さんのように希望のある辞め方をしてほしい。

2015年11月23日月曜日

℃an't STOP! (2015-11-21)

Hungry Tigerのハンバーグが、私は子供の頃からずっと好きだ。横浜を中心に九つの店舗を構えるハンバーグレストラン。そのうちの一つが実家の近くにある。誕生日のような特別な日には親に頼んで連れて行ってもらっていた。大人になって韓国料理にはまりインド料理にはまり四川料理にはまった。香辛料の刺激に耐えきれずお腹を壊し体調を崩したのは一度や二度ではない。ひどい時には通勤中に少しだけ漏らしてしまうという悲劇も経験してきた。(その教訓を生かし、会社では机の引き出しにトランクスを常備するようにした。)そうやって自らの身体で本物を知ることで、世の中の「○○料理」の多くが日本人の味覚に広く浅く訴える子供騙しであることに気付き、そういった店は利用しなくなった。そういった訓練を経てもHungry Tigerは陳腐化せず、自分の中でリアルであり続けている。横浜に用事がある際には極力Hungry Tigerで食事を摂る。今日はパシフィコ横浜で℃-uteさんを観る。今回のコンサートツアー『℃an't STOP!』を観るのはこれで5回目であり、私はこれで見納めだ。来週に中野サンプラザで千秋楽があるが、それには行かない。開店時間の11時ぴったりに横浜モアーズ9FのHungry Tigerに到着(その時点で整理番号が10番だった)。ほどなくして店内に案内された。オリジナルハンバーグと野菜のブロシェットのレギュラーセット2,240円をいただいた。いつ食べても最高である。食後のコーヒーを飲み干して、会計を済ませて、店を出た。次は年末年始かな。

14時半開場、15時半開演で時間に余裕があった。Twitterで知り合ったある面白い人物(I)と終演後に飲む約束をしていた。彼とは過去に二度、会っていた。彼の投稿を見る限りまともな物を食っていなさそうだったので何か食べる物を渡すことにした。ポンパドールでチーズバタールとロンドの二分の一サイズを買って、みかん10個を買って、鶏肉の惣菜を買った。あげるために買ったものの自分の好物でもあるので我慢できずチーズバタールを一切れ失敬して、食べた。みかんもさっき試食したらおいしかったので二つもらってカバンに入れた。根本敬の『人生解毒波止場』と一緒に後で渡す。LUMINEのFREAK'S STOREを見て、みなとみらい駅に移動して、BEAMSを見た。ネットで見て気になっていたBEAMS別注のorSlowのジーンズが二種類とも置いてあって、いいな、欲しいな…と思ったが、あんまり時間がなかったので試着する等の深入りはやめておいた。Levi's VINTAGE CLOTHINGのジーンズもよかった。もしもっと時間があれば買ってしまっていたかもしれない。危なかった。

私に与えられた席は2Fの後ろから二番目(2F15列)という、いわゆるクソ席であった。席に関係なく生で℃-uteさんを観られることに感激するような純粋さはもう持ち合わせていない。しかもこのツアーに入るのが5回目だ。℃-uteさんは過去に行ったパリ、台湾、メキシコでの公演についてテレビやラジオの番組で聞かれると、来場者の熱狂ぶりをよく口にする。それに比べると日本人は恥ずかしがり屋だと言っているメンバーさんもいた。もちろん日本人が世界的に見てシャイなのは間違いないだろうが、行こうと思えば一回のツアーに何回も行ける日本のファンと、℃-uteのコンサートに居合わせるのが人生で最初で最後かもしれない海外のファンとを単純に比較するべきではない。いくらパリ、台湾、メキシコが熱かったとはいえ、年に何十回もやれば彼らも同じ熱は維持できないはずだ。私が℃-uteさんのコンサートに足を運ぶのは彼女たちを観るためであって、コンサート空間を盛り上げるための駒になりたい訳ではない。という訳で今日は盛り上がるのはそこそこに、先月に手に入れて以来すっかり手放せなくなった双眼鏡を活用し、まったり観させてもらうつもりだった。

ところがまったりしていられなくなった。開演前にiPhoneをなくした。カバンの中も椅子の隙間も探したが見つからない。もし置き忘れたとしたら1Fの客席の後ろにあるベンチだった。なかった。ここではなかったか、もしくは誰かが係員に届けてくれたのか。近くにいた係員の男に、緑のiPhoneの落とし物はないかと聞いたところ、落とし物は1Fのインフォメーションに行ってくれと言ってきた。インフォメーションと言われたって分かんねえよinformationって訳すと情報だぞ「情報に行け」って意味が通じてねえぞという雰囲気を出しながら「インフォメーション?」と聞き返すと行き方を教えてくれた。若い女性が親切に対応してくれたが、iPhoneは届いていないとのことだった。終演後に掃除をして落とし物を収集するのでそのときにまた来てくれと言われた。礼を言って2Fの席に戻った。ちょうどハロプロ研修生のopening actが終わってこれから℃-uteさんのコンサートが始まるところだった。冷静に考えると席に着いた直後、「2Fの後ろから二番目は(stageが)遠い」という趣旨のことをTwitterに投稿していたので、この席の付近で落としているはずだということに気付いた。だが、どうしても見つからない。

なくしたiPhoneそのものに対する執着はなかった。今のiPhone 5cに切り替えてからちょうど2年がたつので、機種の代金はほぼ払い終えている頃だ。データも数日前にバックアップを取ったばかりだ。気がかりなのが、終演後にどうやってIと連絡を取るか。あと、可能性は低いとは思うが誰かが拾って悪用する可能性。もし見つからなかったら何らかの方法でiCloudにログインして紛失モードに切り替えないといけない。事情を話せば後でこの会場のコンピュータを使わせてくれないかな。それが駄目ならインターネット喫茶を見つけて入るしかないな。この近くにあるだろうか? いや、でもこの辺に落としたはずなんだよな。公演中にも二度ほど探し直したが、見つけることが出来なかった。せっかくコンサートに来ているのだからコンサートに集中しようと思ったが、それは無理だった。ただでさえ自分の気持ちが盛り上がっていなかったので、頭の中からiPhone問題を消し去ることが出来なかった。気もそぞろになってしまった。

追い打ちをかけたのが、周囲の観客だった。1Fはいつも通りに盛り上がっていたようだが、私がいた2F後方は温度が低かった。女性が多かった。声を出す人は少数だった。別に白けている訳ではなく、めいめい(田村芽実さんのことではなく各々という意味)が楽しんではいたが、あんまり盛り上がっているという感じではなかった。ライブハウス(和製英語)でアンジュルムさんにディスられるタイプの鑑賞態度であった。もし私が事前に酒でも入れていれば率先して声を出すことが出来たかもしれないが、まったく飲んでいない上にiPhone紛失で精神的に削られていたのでそれが出来なかった。アンコールのときにも周りの人たちはほとんど誰も声を出していなかった。でも彼ら・彼女らの気持ちはよく分かる。慣れないうちは恥ずかしくて声を出せないものなんだ。パシフィコ横浜くらいの大きさの会場でこの席となると、こんなもんなのかも知れない。実際、1Fの良い席にいる奴らと同じくらい盛り上がれというのは無理な話だ。

・Stageから遠くて見づらい席であった
・開演の直前にiPhoneをなくした
・5回目だったので新鮮味がなかった
・周りの温度が低かった

今日の公演は以上の理由により、2015年で私が最も楽しめなかった現場の一つとなった。℃-uteさんやコンサートが悪いのではなく、完全に私の問題である。十分に集中できていなかった。喋りのセグメントで何箇所か笑わせてもらったのは覚えている。でも誰が何を言ったかをあまり正確に覚えていない。

・コンサートの前に岡井が『鶏ガラスープを食べたい人?』と呼びかけたところ他メンバーズが乗ったので岡井がスープを作って振る舞った。卵入りだった。

・昨日はナルチカだった。会場にwi-fiがあったので萩原がつないだところアプリが一斉に自動的にupdateされ始めた(そういう設定にしているらしい)。LINEが使えなくなった。受信していることは分かるが中身が見られない。10回くらい電源を切って10回くらい機内モードにしたが直らなかった。翌朝になっても直らなかった。LINEが直る夢まで見た。26通メッセージが来ているのは分かっていたがそれを伝えると「そのうちの5通は千聖だよ」と岡井が言ったという。

・バス移動の際、こぶしファクトリーの藤井が矢島が食べた後のパンだかお菓子だかの袋を拾おうとしたので岡井が「それはやめときな」と制した。「犯罪だよ犯罪。ファンの人の方がまだ常識あると思う」と萩原。

・12月に発売するalbumの題名が発表された。『℃maj9』。シーメジャーナインスと読むらしい。何か音の響きが○ックスナインみたいだな…と私は不謹慎ながら思ってしまった。

・女性の皆さん?と客席に呼びかけてキャーと返ってきた声援を受けて「ほとんど女性なんじゃないですか?」とおどける岡井。

終演後、iPhoneはすぐに見つかった。右隣の人の席の隙間に挟まっていた。Twitterを開くとIから@が入っていた。18時まで待ってほしいとのことだった。開演前に買ったコレクション生写真が2枚とも矢島さんだった。会場の外で交換をしている紳士に岡井さんと交換したいと持ちかけたが、岡井ちゃんは切らしているとのことだった。Iと合流し、野毛まで歩いて「小料理屋トモ」に入った。ちょうど奥の座敷が空いていた。鯨の竜田揚げを頼んだらマグロも入れてくれて、おまけにアンキモが付いてきた。鶏の唐揚げを頼んだら切らしているとのことでなぜかピリ辛に味付けた豚足が出てきた。アボカドのフライを頼んだらフライの粉がないとのことで天ぷらになった上にぶり大根がおまけで付いてきた。鮨の盛り合わせを頼んだらシャリに白子やホタテ(貝柱の部分だけじゃなく丸ごと)やかに味噌のような謎のペーストを乗せた奇想天外な料理が出てきたしおからのグラタンがおまけで付いてきた。おまかせピザを頼んだら山芋を使ったような生地にポテトサラダとチーズを乗せて焼いた物が出てきた。頼んでいないウコンのジュースを出してくれた。木の香りがした。会計は8,000円超を覚悟していたが5,700円だった。帰り際に裸の状態でウコンを渡された。「どうすればいいんですか?」と聞くと、入り口にいた上機嫌な客が「そのままかじればいいよ」と話しかけてきた。トモさん(店主のおばちゃん)によると「摺り下ろしてもいい」とのことだった。Iとは以前に会ったときよりも打ち解けてきて(少なくとも私はそう思っている)、前よりも話題が広がってきた。『フリースタイルダンジョン』、アイドルの握手会、虹のコンキスタドール、℃-ute、サッカーの日本代表や海外リーグ、インターネットに長文を書くことについて、等々。「今のサッカー日本代表は(『フリースタイルダンジョン』の)モンスタールームの皆さんのようになっている」というのが二日後に思い返しても味わい深い言葉だった。SKE48さんの『前のめり』というsingleをもらった。「同じのが7枚あるから」とIは笑った。21時半くらいに店を出た。振り返ってみると、とても楽しい一日だった。

2015年11月13日金曜日

℃an't STOP! (2015-11-08)

チケットの先行受付に申し込んだときは近場のような感覚だったが、伊勢原は遠かった。東京寄りとはいえ埼玉から神奈川の奥深くまで移動しているのだから、ふらっと出かけるという距離ではない。昨日の夜から体調がやや優れなくて、ジムで一走りするつもりだったが断念していた。明日からアメリカに出張するが荷作りをほとんどしていない。今日は18時から新宿タワレコでfox capture planさんの無銭現場がある。ゆっくり休んで体調を回復させながら、出張の準備をして、夕方にふらっと新宿に足を運んでfox capture planさんでも見物するという過ごし方が出来ればよかったが、14時からと17時半からの℃-uteさんのコンサート2公演のチケットが手元にあり開催場所が伊勢原である以上それは許されなかった。大体、明日からのアメリカ出張というのも今日の℃-uteさんのコンサートを観られるように日程を調整したのだ。

昼公演。12列。近い。双眼鏡がいらないくらいだ。いっそのことカバンにしまっておこうかと思ったほど。一番前から何列かが座り席だったのと、一つ前の11列の11番が途中まで空席だったので、はじめは視界が良好だった。『涙の色』の途中から短髪の岡井オタが来てからは視界が2-3割遮られた。彼はちょうど段差分くらい私よりも身長が高かったので、同じ身長の人が段差のない状態で前に立ちはだかっているのと同じだった。私の二つ右の人は優に180cmを超えていた。その後ろの人は災難だっただろう。身長の高い本人は何も悪くないが。前に背の高い人が来る度に、一般的に男性に比べて背が低い女性はこういう思いをするのが普通なのか…と思う。とはいえ伊勢原市民文化会館は当たりの部類に属する会場だった。

今日は雨が降っていた。この時期にしては気温が高めだった。
中島「雨が降っているとステージでも湿気を感じる。髪の毛がすぐに崩れる」
萩原「舞美ちゃんって汗が鼻の下に溜まったときにどうしてるの?」
顔を振って汗を落としていると矢島。
萩原「汗って一直線に落ちてくるから鼻まで流れてくると困る」
岡井「二十歳を前にしてよく汗をかくようになった舞ちゃん」
萩原「トシをとって代謝が悪くなったら嫌だ」
岡井「二十歳でトシとったって言っちゃダメだよ。ね、舞美ちゃん?」
矢島「ね、舞美ちゃんって言わないでよ」

このツアーで恒例となった『Danceでバコーン!』のintroにおける中島メンバーから客席への振りは「ダンスでダンスでダンスでダンスで?」と言って「バコーン!」と言わせるという、こちらにとって対応が容易なものだった。我々の「バコーン!」は気持ちよく揃った。

中島と矢島が二人で喋って、後の三人は着替えが終わり次第、合流する。
中島「℃-uteは最近みんな画像を加工するのにはまっている。最近℃-uteのLINEに千聖が変顔を送ってきた。これは加工しろってことだなと思ってみんなで加工した。リーダーだけ時間がかかっていた。店にいたが閉店間際になって、店の人がお茶を出したりして早く出るよう圧力をかけてきた。店を出てホテルに着いたらリーダーからメールが来た。ああ頑張ったんだな、という画像だった」
矢島「千聖からは使えないよと公開を拒否されていた。画像を削って、これならいいよという許可をもらった」
その画像がscreenに映し出される。岡井の口元。万歳の格好をしている萩原が、岡井の2本の前歯の間に挟まっている。萩原を丹念に削っていく作業に時間がかかったらしい。
2枚目はおそらく水族館で撮った写真。魚の頭に中島の顔をはめ込んである。よく見ると後ろの小さな魚にも中島の顔。矢島曰くなっきぃの子供とのこと。
後から合流して2枚目の写真を見た岡井、「なっきぃの子供」に気付いて「気持ち悪い」。
矢島「なっきぃは魚にしやすい。おでこを出している方が魚にしやすい」
中島「じゃあ一生おでこ出さない」と言いながら捌ける。
萩原「千聖は変顔の公開を嫌がるけどバラエティ番組で変顔よりもきわどいことを言っている。この間も『これから何の仕事?』と聞いたら『ニノさん』。中身を聞いたら前から拭くか後ろから拭くかとか…」
鈴木もえーと驚く。
岡井「変顔は画像だから残るけど言うことは一瞬だから」
萩原「でも残るよ」
鈴木「地上波だから」
岡井「あと下着はボクサーパンツ派か、あと何て言うんだっけ?(客席の声を聞いて)トランクス?んー、そういうやつ。シャカシャカのやつ」
会場にいる人たちにどっち派か客席に聞いてみたら?と岡井に振る萩原。「私は興味ないけど。(客、エーイング)え、みんながどういう下着を穿いてるかなんて興味ないよ?」
客、エーイング。「え、聞いてほしいの?」
最初はその話題をやめてコンサートを進めようという空気だったが客席がそれを許さない空気だったのでどっち派かのアンケートが始まった。ボクサーパンツ派の人? シャカシャカ派の人? と呼びかける℃-uteさん。シャカシャカ派のときに声を挙げる客に、岡井が「同志よ」という感じで喜んでいた。
萩原「千聖、グッズで下着を出せばいいじゃん。緑の」
岡井「何で千聖が好きなパンツをグッズにするの」
矢島「以前グッズで℃-uteの下着を売っていた」
えー?と驚くメンバーズ。
岡井「売ってないって! リーダー勝手に売らないでよ!」
腕で丸を作って売っていたと伝える客。
え! 売ってたの!と驚く矢島以外のメンバーズ。ほら売ってたじゃんと言う矢島。
大盛り上がり。
矢島「これだけ声を出してもらってから聞くのも何ですが…」
通常であれば「女の人? 男の人?」「後ろの方の人? 前の方の人?」というような聞き方で会場の声を拾っていくのだが、この公演では先ほどまでの話題に乗っかって「ボクサーパンツの人ー?」と矢島が聞く。
矢島の後に客席に問いかける役割である鈴木が「え、私がシャカシャカの人って聞くの?」と恥じらう。フーと冷やかす客。少し間を置いてから「シャカシャカが好きな人ー?」
半々に分かれたことに驚く中島。
ピッタリのやつ嫌だ!と本当に嫌そうな岡井。
岡井「でもねピッタリの方がいいんだって。理由はね…オンエアを観てください」

アンコール明け。

岡井「女性の皆さん?(男がふざけてキャーと叫ぶ。それをやめさせる岡井)心配してくれなくても最近は女性が来てくれるようになった。前は本当に男性だけだった。女性の皆さん?(それなりの数のリアル女「キャー」)可愛いですね。男性の皆さん?(ウオーという野太い声)頼もしいですね。女性の皆さん?と呼びかけると男性の方がキャーって…(男がまたふざけてキャーと叫ぶ)女性の皆さん、こういう感じだったんですよ」

矢島「アンコール出る前に鼻血が出てきた。気付いたのが直前だったので、いいやって出て来た」
岡井「ボクサーパンツとシャカシャカパンツの話をしたからだよ」

萩原、アンコール明けの一曲目『嵐を起こすんだ Exciting Fight!』を終えると捌けて、他のメンバーが喋っている間はしばらくいなかった。右肘をマイクにぶつけて出血したとのこと。その手当をしていた。キズバンドを貼っていた。

夜公演。15列。昼よりも双眼鏡を多く使った。私の五つくらい左に、金髪で若くて(たぶん二十歳そこそこ)日焼けしたチャラそうな見た目の奴がいた。いかにもオタクっぽい中年の紳士を現場で見るとさもありなんと思うが、パッと見ギャル男やんという青年を見ると、こいつはどう間違ってこうなってしまったんだ…というやばさを感じる。

萩原「昨日ホテルのシャワーに知らない人の髪の毛が3本くらい落ちていて。ちゃんと掃除しろよ!と思った。舞、髪の毛だいきらいだから」

鈴木と岡井が喋り、残りの3人が着替え次第、合流する。
鈴木「昼公演でとあるものに関してどっち派かというのをやった。昼公演が終わってから℃-uteで色々と話して、アンケートをやりたいとなった。皆さん、青春時代を思い出してください。女の子の制服でセーラー服とブレザー、どっちが好きですか?」
結果、半々に割れた。
岡井「学校の制服がセーラー服だった人がブレザーに憧れ、制服がブレザーだった人がセーラー服に憧れているのでは?」
岡井が聞きたがっていたということで、唐揚げにレモンをかける人、かけない人というアンケート。3:2くらいでかけないが優勢だったか?
岡井「レモンかけないでほしい」
他のメンバーも、液体をかけるとせっかくサクッとした唐揚げがしなっとしてしまう等、レモンをかけることに否定的な意見。こういうところで℃-uteはみんな意見が一緒だということで話がまとまりつつあったが、「私レモンかけるんだけど」と中島が水を差す。客席から歓声。そこから話の風向きが変わり、なっきぃが℃-ute内でことあるごとに仲間はずれになりがちだという流れになった。
みんながボーダーの服を着ていたがなっきぃだけ違ったことがあると萩原。ボーダーの服をあまり持っていないと中島。
中島「メキシコで山田大使とお会いしたとき、清楚な感じでと言われていたのでシャツにデニムのスカートを着て行った。他の四人は全員、灰色で揃えていて…」
たまたまだという他メンバーズ。
萩原「なっきぃをボツにしようとか、そういうのじゃない」
中島「次からは打ち合わせしよう」
岡井「でもなっきぃのそういうところが可愛い」

岡井千聖がアンコール明けに「握手会で(下着を)見せてくるのは絶対にやめてください」と客に釘を刺したときは、最後の締めの挨拶がそれかよと思った。面白かった。

今日の中島のダンバコのイントロでの振りは鈴木が考えたらしい。夜公演のは何を言っているのか分からなかった。

職安のような名前の紳士が提供した『Iron Heart』、このツアーで初披露にも関わらず、既に客の乗り方が完成しつつある。ウォッオー。オイオイオイオイ。コンサートで盛り上がりやすい、分かりやすい仕掛け。そういう曲を作るのは、発注者の要望を満たしたプロの仕事なのだろう。

夜公演の後には客席で恒例の「℃-ute最高!」と「おつカレーライス!」からの「ばんざーい!」合唱が起きた。
萩原舞さんご本人が恥ずかしくなって使わなくなってから1年半以上は経っている「おつカレーライス」が今でも℃-uteコンサート終演後の客席にこだまする定番phraseであり続けているのがとてもいい。

2015年11月1日日曜日

MISSION 220 (2015-10-31)

当選したのは昼公演だと思っていた。手帳にも14-16時に「J=J西川口」と書き込んでいた。今朝カバンに入れる前にチケットを確認したら17時開演と書いてあってびっくりした。危なかった。というのも今日は友人に18時からの食事会に誘われていて、承諾していたのだ。二日前に料金を知らされ、高いからという理由で直前に断っていた。だってそりゃ、軽い誘いのつもりで受けた食事会に1万円を超える金額はポンと出せねえよ。船に乗って飯を食う豪華な会らしいから(昔『ハロモニ』でモーニング娘。がそういうのやっていた)、ぼったくりじゃないのは理解できる。それくらいするだろうよ。でも事前まで知らされていなかったんだから、この値段はキャンセルの理由として正当でしょ。結果的にはよかった。断っていなかったらRobert GlasperばりにDouble Bookedになっていた。そうなっていても当然Juice=Juiceを選んでいたけどね。

西川口Heartsという焼き鳥のような名前の会場だ。西川口駅の間近になってから気付いたが、ここって先週℃-uteさんのコンサートを観に行った川口駅の隣だ。駅から徒歩で数分。一度行けば覚えられる分かりやすい場所だった。15時半頃に会場に着いて外にいた係員の紳士に「グッズって買えますか?」と聞いたら「確認します」と言って中に聞いてから「どうぞ」って入らせてくれた。日替わり写真の宮崎さんと宮本さん各500円。コレクション生写真500円も2枚。計2,000円。日替わり写真は衣装が前回に江戸川で買ったときのと一緒だった。同じ日に撮ったのだろう。DVD MAGAZINE VOL. 4のときの。それぞれが自分で選んで買ったっていうやつね。私が聞いてグッズ販売が再稼働したくらいだから、あっけないほどに早く買えたわけ。開場時間の16時半までまだ1時間あるから駅前に引き返して、BOOKOFFを物色(韻を踏んでいる)。モーニング娘。のDVD MAGAZINEが結構たくさん置いてあった。松浦亜弥のファンクラブツアーを収めたDVDなんてのもあった。しかも別々の年のが二回分。東武ストアに行って銀河高原ビールを買って店のすぐ外でつまみなしで飲み干した。短時間で流し込んだのでちょっと苦しかった。ゲップが出た。

16時15分ごろに再び西川口Heartsに着くと人だかりが出来ていた。中でクローク料金の500円を払ってゴミ袋を受け取った。150番以降のチケットを持っている方は左側のデッキにいてくれと係員が案内していたので従った。喫煙所だった。係員は二人いて片方は中川淳一郎のような見た目だった。宮本佳林を崇め奉る文言を刺繍した特効服を着た人がいた。ハロウィンということで特殊な格好をしている紳士がちらほらいた。相撲取りの仮装をした紳士、デーモン小暮のようなメイクアップを施した紳士、顔に傷を書いた紳士。白髪で痩せ身の、誰が見てもおじいちゃんとしか形容しようがない紳士が「金澤朋子激推し」と背中に印字された一般に販売されていないTシャツをお召しになっていた。自転車で会場前を通りがかった競馬と風俗が好きそうな地元の紳士が、興味津々で何だと聞いている相手がそのじっちゃんだった。「何やるの? え、ライブ? 何のライブ?」と徐々に核心に迫っていく自転車紳士の声から、回答をぼかしながらやり過ごそうとしているじっちゃんの様子がひしひしと伝わってきた。

16時40分の時点で50番までしか呼ばれていなくて、17時の開演までに全員の入場が間に合うのか不安になった。案の定、ハロプロには珍しく開演時間は少し遅れた。正確な遅延時間は見ていないが5分遅れているまではiPhoneの時計で確認した。私の整理番号は154番だったのだが、予想以上に後方、というかほぼ一番後ろだった。右に女性エリアがあったので(大体左なので珍しい)せめてその後方であれば前方に男性がいるよりは見えやすいのではないかという一縷の望みに懸けて右に位置を取りかけたが、以前にも言及した驚異的な身体能力でjumpする長身の金澤オタクがいたのでギョッとして左にずれた。無理のない程度に少しずつ前に詰めてくれという中川淳一郎の呼びかけで一歩は前に行けたが大勢は変わらず。これじゃ殆どJuice=Juiceさんが見えそうにない。

実際、見えなかった。今までに見てきたすべてのハロプロのコンサートやシリアルイベント、リリース記念イベント、そういったすべての現場の中で、最も出演者が見えなかった。これはきつい。感情を高ぶらせるのが難しかった。前の方の奴ら、このコンサートを盛り上げるのはお前らに託したっていう、そういう気分だった。顔ですらたまに見える程度。人と人の間を縫って出来た少しの空間に、ちょこっとご尊顔がチラ見する。全身どころか腰より下が見えたことは一度もなかった。信じがたいことにJuice=Juiceさんがお立ち台に乗ったときでさえ、視界が人に塞がれてあまり見えなかった。断片的に見える彼女たちの表情から輝きを感じ、お姿がすべて見えたらどれだけ神々しいのだろうか、どれだけ楽しいのだろうか、と想像し、悔しかった。だからもう、ゲームのルールを変えるしかなかった。途中から自分の中でこの公演は、歌声だけでどれだけ早く誰かを当てるというtrainingに変わっていた。今まで以上に各memberの声の特徴や歌い方の癖に注意を払うことが出来た。そのおかげで、この人はこういう息の抜き方をするんだな、というような着目の仕方が出来るようになった。だから悪いなりに収穫も得たけど、もうイヤだよ、見えないってのは。定価を出して得る体験じゃないよ。2,000円ならまだ分かる。結局さ、ライブハウス(和製英語)がいくら近いからといって、見えなきゃ意味がないのさ。こういう人を救済するために毎回、公演後に握手会があるのか?って思った。公演中には見えない、握手会もない、では救いがない。

客の中に顔にパックをしていた人がいたらしく「パックしてるよねあなた」と植村さんがいじった。すると宮本さんが「パックって付けすぎると逆にお肌の水分が失われちゃうんだよ! 15分くらいにした方がいい。15分したら外して」と身を乗り出して力説していたのが面白かった。顔に凄いメイクアップをしている人がいるけどそれは元は何ですか?とメンバーの誰かが聞くと、KISSだとその人は答えた。あーバンドの、とJuice=Juiceさんは納得していた。もしかして私がデーモン小暮だと思っていたあの人のことか?と思った。KISSをよく知らなかったので後から画像検索してみたが多分そうだ。

終演後、近くにいた来場者が「こんなのはライブハウスではない。掘っ建て小屋でライブをやっているだけだ」というようなことを仲間に言っていた。私は会場に詳しくないのでここがどれくらいの水準にあるのかあんまり分からないのだが、ステージを見せるために設計された場所ではないのはよく分かった。人を詰め込んで音を聞かせるだけ。耳が悪くなるような爆音ではなかったので、その点は中の人が周南チキータよりはマシだったと思う。しかし、私が今までに訪れた中でも上位の劣悪会場であることに疑いはない。今日に関してはひどい経験だったというのに尽きる。コンサートの中身について書くことはない。いや、おそらく素晴らしいコンサートだったのだろうし、Juice=Juiceさんが至高の存在であるのはたまに見える彼女たちの表情から見て取れた。しかし、今回は環境が悪すぎた。こういう日もある。

そう言えば金澤さんは肩を傷めて最近の公演を休んでいたが今日は(わずかに見えるお姿から判断するに)元気そうだったので安心した。だが終演後の高速握手会で一人目の金澤さんに「肩、治った?」と聞いたら「んー……なおっ…た…かな?」と迷いながら歯切れが悪かったので治っていなさそうだった。高木さん無言。植村さんに「写真集、買ったよ」と言ったら「あ! ありがとう」。宮崎さん、宮本さんは無言。もう少し各memberに言葉をかけるつもりだったが、思った以上に流れが速く、つべこべ言わずにさっさと次に行けやという係員たちによる無言の圧力に屈した。しかしJuice=Juiceさんは最後の握手会まで抜かりなく笑顔を見せてくれて、本当にprofessionalだ。