2017年6月24日土曜日

Thank you team ℃-ute (2017-06-12)

toconomaの“NEWTOWN”を聴きながらさいたまスーパーアリーナに向かった。私にとっては初めての会場だったが、北与野駅を降りると前方にいかにも「それっぽい」三人組の中年紳士たちがいて、彼らについて行けば会場にたどり着けると直感的に分かった。実際には迷う余地などなかった。駅のすぐ近くだったし、そこら中にオタクさんがうじゃうじゃいた。服装を全身赤とか全身ピンクとかで固めている人たちがちらほらいた。中には髪の色まで推しのメンバー・カラーにしている人たちまでいた。「教訓一はずばりファック世間の目」(宇多丸)と言わんばかりに奇抜な格好をした人たちが楽しげにしているこの感じ、コム・デ・ギャルソンの立ち上がりのようだ。露店の割高な飲食物を買って経済を廻すオタクたち。お祭りのようだった。「チケットゆずってください」という紙を持って立っている紳士を見たが、こうなる前にもう少し手を打てなかったのか? そりゃ普通の公演だったらさ、誰もチケットを売ってくれなかったら残念でしたで諦められるだろうけど、今日はさすがにそうはいかないでしょう。オークション・サイトをあたってみるとか、原宿の娯楽道にないか探してみるとか、この日までに出来ることは色々とあったはず。あんな一か八かの手段に出なくてもチケットを手に入れる術はあったと思うんだけどな。(前に一度「チケット譲ってくださいおじさんは何で娯楽道で買わないの」とTwitterに投稿したところ娯楽道の公式アカウントから「うちの知名度が低いのです」というお返事をいただいたことがある。)

16時7分、入場列に並ぶ。16時44分、入場。思っていたよりも早く中に入れた。今日は開演が18時。当初の予定では17時だった開場時間を「最大で30分程早める予定」であることが当日になって通知された。17時20分頃に始まるオープニング・アクトは見逃したくなかった。もちろん今日の主目的は℃-uteの最終公演を見届けることだが、Juice=Juiceとつばきファクトリーが前座とはいえ初めてさいたまスーパーアリーナのステージでパフォームする姿を目に焼き付けるのも重要だった。オープニング・アクトはつばきファクトリー→こぶしファクトリー→カントリー・ガールズ→Juice=Juice→アンジュルム→モーニング娘。という順番で一曲ずつだった。この順番が、事務所にとっての序列なんだろう。実のところ、オープニング・アクトは全体的に迫力に欠け、間の抜けた印象を受けた。本編のように照明の演出があるわけじゃないし、音もそんなに大きくはなかった。あとは客席には℃-ute以外にはそこまで興味がなさそうな人も結構いた。出てきたときの歓声ではカントリー・ガールズが一番大きかったが、これはつい三日前に同グループの活動縮小とメンバー移籍に関する発表がなされたばかりだったので彼女たちを激励する観客の集合意志が込められていたんだと思う。純粋にステージでのパフォーマンスでいうとJuice=Juiceとモーニング娘。はしっかり我々をロックしていた。各グループを連続して観ると、Juice=Juiceは歌唱表現力が頭一つ抜けている。モーニング娘。に関しては『愛の軍団』のイントロが流れた時点で会場全体がパッと華やいだ。この選曲ですべてを持って行った感がある。Juice=Juiceの『Goal~明日はあっちだよ~』もつばきファクトリーの『初恋サンライズ』も℃-uteのファイナル・コンサート前に会場をしっかり温めるんだという意志が感じられた。対照的にアンジュルムとこぶしファクトリーは、自分たちが歌いたい曲を選んだように見えた。アンジュルムの新曲『愛さえあればなんにもいらない』は『君さえ居れば何も要らない』(モーニング娘。)の焼き直し劣化版。何回も聴けば変わっていくかもしれないがそれが現時点での私の印象だ。

私の席はアリーナE5ブロック。アリーナでは一番メイン・ステージから遠いブロックの、最後列だった。3-4列前にももちの旦那さんでお馴染みの某紳士がいて記念撮影に応じていた。どうやら我々の後ろの上の階にハロプロ・メンバーがいるらしく、周りの人たちが何人も双眼鏡で覗いていた。私も双眼鏡を構えて皆さんが見ている方角を向いてみたところ、小野瑞歩さんを見つけた。小野さんを中心に、私から見て左に小野田紗栞さん、右に岸本ゆめのさんが座っていた。

双眼鏡といえば、2万人を収容するというさいたまスーパーアリーナにおける席とステージとの距離は、私がかつて体験したことのないものだった。双眼鏡は必須だった。それどころか私の愛機では倍率が不十分だった。何もなしで観るとメイン・ステージにいる一人一人の顔が識別できない。シルエットや髪型や動きで判別する感じ。6倍のレンズを通して観ると各人の顔が認識できるようになる。でも細部までは見えない。インターネット上に“I wanna”から題名が始まる無料ゲーム(通称アイワナ)がある(色んなバージョンがあって作者もたくさんいる)。理不尽なまでに難易度が高いので他人が苦しみながらプレイする動画を観るのが楽しい。私は実況動画を一時期よく観ていたけど、それを思い出した。主人公が米粒のようにちっちゃいの。これはきついなあと。私は普段のコンサートだとあんまりスクリーンは観ない。ステージのどこに注目するかは自分で決めたいからだ。撮影者と画面を切り替える担当者の感性に引っ張られたくないんだ。しかし今日に関しては双眼鏡で得られる映像では物足りない距離だったのでどうしてもスクリーンを観る時間が長くなった。昨日、私は歌って踊るつばきファクトリーを数メートルの距離から鑑賞していた。その翌日にさいたまスーパーアリーナ。差が大きすぎて、なおさら遠く感じられた。

箱がでかすぎて、私はコンサートが始まってしばらくは乗り切れなかったというのが正直なところだ。私はそれなりに気合いは入れてきたし、体調もよかった。ちゃんと声を出した。岡井千聖が20歳になったときに販売されたTシャツを着て、「℃-ute推し お前推し」と印字された緑のタオルを首にかけた。そうやって形から入っても、気持ちが完全にはついてこなかった。メイン・ステージからサブ・ステージに人力のトロッコで℃-uteが移動する場面が何度かあったけど、そのときには各メンバーが近くまで来て笑顔を振りまいて手を振ってくれた。その距離で観ると本当に全員が美しく、目の覚めるような思いだった。あれがなかったら『しょっぱいね』だった。6月10日に『ファラオの墓』で牧野真莉愛さんが5メートルくらい先に来たときにも思ったけど、近いと伝わってくるものが違う。わずか数秒であったとしても、近さを味わえるかどうかでそのコンサートなり舞台なりが自分にとってまったく異なってくるんだ。

いや、でも箱の大きさは副次的な理由かもしれない。仮にもっとステージに近い席だったら何倍も熱くなって、Juice=Juiceの武道館公演のときのように入り込めたかというと、そんなことはなかったと思う。℃-ute最後のコンサートを、私は割と淡白な気持ちで観ていた。実を言うと、悲しいという気持ちも、残念だという気持ちも、ほとんど湧いてこなかった。もっと観ておけばよかったという後悔もない。なぜなら観たいときにこれでもかというくらいに観てきたからだ。コンサートが進んでいくにつれ、ああ℃-uteの終わりが刻々と近づいているんだな、いいコンサートになってよかったな、このまま無事に成功して終わるといいな、という達観したようなよく分からない思いを抱いていた。去年の8月20日に中野サンプラザで解散を発表した時点で、私の中で℃-uteは終わっていた。前にも書いたが、発表してから実際に解散するまでが長すぎたと思う。約10ヶ月という期間は、彼女たちの解散を私の脳内で既成事実とするのに十分すぎた。彼女たちは正月のハロコンにも出なくて、ハロー!プロジェクトからはフェイド・アウトしつつあった。もしこの期に及んで℃-uteの解散を受け入れられず立ち直れない人がいたとしたらそれはちょっとまずい。依存のしすぎでしょう。

さいたまスーパーアリーナという大会場でも℃-uteはコンサートの終盤になるとすっかり平常運転のように場を飲み込んでいた。その頃になると私も会場が大きすぎるとは感じなくなっていた。これくらいの会場を定期的に当たり前に埋めるグループに℃-uteはなれたはず。実力と人気は既にその域に達しているはず。本人たちがそれを望まなかったということなのだろうが。私が最も引き込まれたのが『涙の色』だった。これまでは特段に好きな曲というわけではなかったが、今日聴いた『涙の色』には圧倒された。最近もJuice=Juiceのコンサートで『愛のダイビング』が急に大好きになるということがあった。たまにこういうことがある。℃-uteの曲でも最後にしてそういう発見があった。

ステージに現れた道重さゆみが℃-uteを評して放った「アイドルを超えた、とてつもない凄い者たち」という言葉が、℃-uteの到達点を表すこれ以上ない賛辞であると私は思った。道重さゆみの価値観では「完璧なアイドル」というのが最上級の褒め言葉のはずである。その道重さんをして「アイドルを超えた」存在と言わしめた℃-ute。その辺のアイドル雑誌の記者が書くと陳腐だが、道重さゆみが言うとずっしり来る。「言葉のウェイトに差がありすぎる」(呂布カルマ)。

私の真後ろが車椅子の人たちの席だった。その中に岡井千聖ファンの女性がいた(厳密に言うと彼女は車椅子には乗ってはいなかった)。℃-uteがトロッコで移動しながらメンバー・カラーのボールを客席に投げるときがあった(おそらくサインでも書いてあったのだろう)。岡井千聖は近くに来たとき、その女性をめがけて、目で合図をしてから取りやすいように下からふんわりとボールを投げていた。ボールを受け取った女性は、泣き崩れていた。何曲か経過した後に振り返ってみてもまだ泣いていた。このコンサートにおけるどの曲よりも、メンバーによるどの発言よりも、私はその光景が印象に残った。私が℃-uteに興味を持ったきっかけは岡井千聖の「踊ってみた」YouTube動画である。しばらくの間、岡井千聖は私の中で一推しに近い位置を占めてきた。今では岡井さんの位置は一推しからはだいぶ離れてしまっているけど、私が推してきたのがこんなに優しい心を持った子でよかったと思った。

2017年6月20日火曜日

つばきファクトリー 2ndシングル発売記念ミニライブ&握手会イベント (2017-06-11)

運転手に名前を伝えると「モバイルは?」と言ってきた。何だよモバイルって。メールを見せろってこと? 「モバイルって携帯のことですか?」と言ってiPhoneでメールを開いて見せようとするとそれには目もくれずに「次からはモバイルを見せてください」と今回は見逃してやるが的な口調で言ってきた。私が不正でも働いているかのような口ぶりだった。カチンと来たが、これから数時間にかけて私の生命を預ける相手の機嫌を損ねたくなかったので言い返すのはやめておいた。私は彼から目をそらし、何も答えずに指定された一番前の席に乗り込んだ。そもそもモバイルなんて言葉、普段の生活で使わない。携帯かスマート・フォンだろ。それに高速バスって、予約して名前を言えば乗れるのが普通だ。こっちが名乗ってるのに「モバイルは?」じゃないんだよ。こうやって対面して○○ですって名乗れば一言で済むのを何でわざわざ携帯を見せなきゃいけないんだよ。メール画面を提示しろって、ハロー!プロジェクトのFCイベントではあるまいし。一気に気分が悪くなったが、ムカムカしている暇はないのでマインドフルネス瞑想を行い、アイ・マスクを付けて何も考えないようにした。24時35分に川越駅発、5時29分に新潟駅着の予定。限られた時間と、高速バスとしてはマシな方(3列シート)だが恵まれているとは言えない睡眠環境で、可能なかぎりの休息を取らなければならない。

新潟駅に着くまでほとんどまともに眠ることは出来なかったが、アイ・マスクを着けていたのは一定の効果があったようだ。『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(樺沢紫苑)によると、脳はキャパシティの90%を視覚情報の処理に使っている。効果的に休息を取るには視覚を休ませるのが肝要で、目をつむるだけでも効果はある。川越から新潟までの5時間弱、まさに目をつむっているだけに等しい時間も長かったがその割には疲れが取れたような気がした。運転手にありがとうございますと言ってバスを降り、新潟の地に足を付けた。半袖Tシャツでは肌寒かった。薄手のナイロン・ジャケット(Engineered Garments)をカバンに入れてきた。シャワーを浴びたかった。事前にインターネットで調べていたのだがこの時間に新潟駅前でシャワーを浴びられるのは「エアーズ・カフェ」というインターネット・カフェしかなさそうだった。駅から徒歩圏内に銭湯が2軒あるがいずれも午後からの営業。「エアーズ・カフェ」に入ってシャワーを浴びたい旨を伝えるとこれから2名が使うから順番待ち、制限時間が30分だからお前が入れるのは最大で60分後だと言われた。個室に入ってTwitterやYouTubeを開いたが、画面を観るのがきつかった。ちゃんと休めていないんだなと実感した。近くで本当にひどいイビキをかいている人がいた。動物園かと言いたくなるような。静けさが求められる場所で盛大なイビキをかく人にたまに遭遇する。本人に悪意はないだろうし気が付いてもいないだろうから気の毒だが、仕方ないで済まされる域を超えている。シャワーの順番は40分くらいで来たかな。シャワーを浴びて、髪を整えてヒゲを剃って、着替えて、会計を済ませた。

新潟駅のみどりの窓口で帰りの切符を買った。帰りは新幹線にする。20時20分発。今日はイベントの最後が17時半開始。それに参加して、駅の近くで軽く一杯やるのを考えてこの時間にした。今日の会場は、万代シティ・パーク。駅から15分くらい歩いたところにある。CD(コンパクト・ディスク)の予約販売は10時から。まだ3時間近くある。初めて訪れる会場だったので、場所を把握するために下見した。7時24分頃に着いたが、既に同業者とおぼしき紳士が二人ほどベンチに佇んでいた。彼らはこの日差しが強い中、たぶん10時までずっとここで待つんだろうな。部類のモーニング好きで知られる私は近隣でモーニングをいただける喫茶店を探した。UCCの喫茶店が開いていたがモーニングはやっていなさそうだった。サンマルク・カフェがあった。会場のすぐ近くだったし、あんまりこれ以上あるく気力がなかったのでそこにした。チョコ・クロワッサンをトレイに乗せ、アイス・コーヒーを注文した。店内は広々としていて、空いていて、いい感じである。“Hillbilly Elegy” (J. D. Vance) を読もうとしたが油断するとすぐに居眠りをしてしまい、数ページしか読み進められなかった。ふと我に帰った。ここは新潟だ。俺は何をやっているんだ? アイドルを観るために夜行バスでこんなところまで来るなんて、いい大人がこんなことをやっていていいのか?

その疑問に対しては間もなく「いいんです」(川平滋英)という答えが出た。9時すぎに会場に顔を出すと、この間(5月21日)に新三郷のイベントで観たつばきファクトリーの現場ではお馴染みの面々が当たり前のようにたむろしていた。彼らの大多数が関東から来ているはずである。たまに顔を出す程度の私とは違い、彼らはおそらくほとんどすべてのイベントに足を運んでいる。今日は浅倉樹々さんの欠場が事前に発表されていたのだが、恐るべきことに「浅倉」と印字されたTシャツを着ている紳士たちまで新潟まで来ている。仮に小野瑞歩さんが不参加だったとして、私だったらさすがに新潟までは来ないよ。パイセンのマイメンに比べると私なんて大したことがないのである。心配することはないのである。

販売開始予定時刻の10時になっても動きがなかった。10時14分になっていつもつばきファクトリーの現場を切り盛りしているアップ・フロントの紳士、通称「前説のお兄さん」が、まだ準備が出来ていません、10時20分を目安にお声をかけさせていただきますとその場にいたヘッズに呼びかけた。その通りになった。たまたま列の前方になったので、10時35分くらいには買い終えた。1,080円のCD(コンパクト・ディスク)を3枚と郵送料600円で、3,840円。私の何人か前の人の会計が2万9千円を超えていた。今日は、一回目が12時半から。二回目が15時から。三回目が17時半から。それぞれ開始の20分前に番号を呼び出すといういつものやつだ。整理番号は順番に122、265、26だった。二回目の番号の悪さが少し気になるが、そもそもCD(コンパクト・ディスク)の購入列に並んでいるのがこの番号分はいない(ざっくり150人とかそんなもんんか?)し、中には何十枚も買っている人がいるので、265番という番号の割には悪くない位置につけるだろうと踏んだ。それにしても、最高の天気だ。快晴。暑すぎず、過ごしやすい。公開リハーサルが11時40分頃から始まった。これは予想通りだった。新三郷ではイベントの一回目が11時半からで、公開リハーサルが10時40分頃から始まった。となるとイベントが12時半開始の今日は11時40分頃から公開リハーサルをやるに違いなかったのだ。幸いにもリハーサルは最前で鑑賞することが出来た。岸本ゆめのさんのパンツ(下着じゃない方)のジッパーが分かる近さ。『初恋サンライズ』、『就活センセーション』。私は『就活センセーション』をこのリハーサルで初めて聴いた。途中でオケがぶつ切れになった。メンバーもはじめは動じずそのまま歌って踊っていたがそれも限界になって曲が打ち切られた。おみずこと小野瑞歩さんは髪を下ろしていた。『キャメリア ファイッ!』のプレゼン企画のときと同じ髪型。いい。マイク・テストでは各メンバーが名前の後に「本当は私のすべてを見せたいの」と言うという素晴らしいことをやってくれた。12時に公開リハーサル終了。体調が万全ではないのか、何人か咳き込んでいた。たしか谷本安美さん、岸本ゆめのさん、小片リサさん。

昼飯。「立喰い 富寿し 新潟万代店」のまんぷく握り、980円。

1回目。背中にKYODO HOKURIKUと印字された上着を羽織った青年が、整理番号を10ずつで区切って、我々を並ばせていく。私は122番だったので13列目だったわけだが、前を見ると最初の5-6列目まではほぼ10人いるがそれ以降は人数がまばらになって3人前後になっていた。これには二つの理由がある。まず、多めに用意された参加券をランダムに渡しているから誰の手元にも渡っていない整理番号がある。第二に、何十枚も参加券を持っている人たちは手持ちの中で一番いい番号で並ぶので使用されていない番号がある。だから全部の番号が埋まっているわけではなく、実際には虫食い状態なんだ。荷物検査なし。ゴミ袋あり。四列目、右寄り。今日ははるばる新潟まで来たんだし「小野(瑞)」と印字されたTシャツを着用して参加する。前方のすぐ近くに同じくエメラルド・グリーンの「小野(瑞)」Tシャツを身にまとっている紳士が二人いた。開演は遅れて12時36分の時点でも前説すら始まらなかった。

前説のお兄さんが登場。今日の前説は気合いが入っていた。
・我々が新潟まで足を伸ばしたことへの謝辞。
・今日のステージは140cm。なかなかない。幕張メッセで作るステージの高さ。
・なぜ新潟でイベントをやるのか。前回のシングルを新潟のラジオ局がパワー・プレイしてくれた。パワー・プレイをしてくれたらイベントとメディア出演を行うのが通例なのだが出来なかった。だから今回はやりたかった。日程を確認したら6月11日が空いていた。本来は今日イベントをやって明日(6月12日)メディア出演の予定だったが、6月12日に℃-uteのファイナル公演が決まった。だから12日は午前中だけ新潟にいて午後に移動しようとしたが、後日オープニング・アクトの出演が決まってそれも出来なくなった。だから今回はイベントのみ。
・私(前説のお兄さん)は新潟には縁がある。食べ物のご紹介。バス停のカレーは有名だがその隣にあるおにぎり屋さんのすじこおにぎりがおいしい。新潟名物のイタリアンはそちら(客から見て右側)にお店がある。個人的なおすすめのラーメン店をまとめて印刷した。ある程度の枚数を用意した。会社に許可を取っていないのでSNSに投稿するのはやめてほしい。(ラーメンという単語が出るとステージの下手で待機していた先頭の小片リサさんが『ラーメン大好き小泉さん』の振りをやっていた。)
・建物が古いのでジャンプは禁止されている。だけどサンライズ・ジャンプは控えめにやってほしい。いきなり禁止ではつまらないので。

つばきファクトリー登場。髪型だけでなく衣装も『キャメリア ファイッ!vol.3』のときのだった。
・セットリストは『就活センセーション』、『気高く咲き誇れ』、『ジリリキテル』(Berryz工房)、『初恋サンライズ』、『キャンパスライフ~生まれてきてよかった~』(℃-ute)。
・今日は小野瑞歩さんが司会を務めるとのこと。私、喜ぶ。小野さん曰く、私(小野さん)は最近いつも笑ってるねと言われる。さいきん爆笑したことと共に自己紹介を、そして、おとといがロックの日だったので最後にロックな一言を添えて、とメンバーに振る。爆笑したことを言うまでは事前に知っていたようだがロックな一言は小野さんのアドリブ(というか無茶ぶり)だったようで、何だよそれという感じでメンバーたちは戸惑っていた。「今日は新幹線で来た。電車を乗り過ごして集合時間ギリギリになったけど何とか間に合った」(小片リサさん)。「寝ながらスマホをいじっていたらベッドから落ちてカーテンを引きちぎった」(新沼希空さん)。「ライ…(とまで言って手で口を塞ぐ)通話アプリで小野田紗栞ちゃんが変換ミスで『小野です』と送ってきた」(小野瑞歩さん)。
・13時14分頃に本編終了。握手の順番は小片リサさん→岸本ゆめのさん→秋山眞緒さん→小野瑞歩さん→山岸理子さん→新沼希空さん→小野田紗栞→谷本安美さん。思ったよりもゆっくりで、小野さん以外は「お疲れさまでした」的な感じで流すつもりだった(というか私の能力ではそれで精一杯)のにメンバーさんによっては思った以上に時間があって困った。メガネ凄いですね、どうなってるんだろと岸本さんが言ってくださって、次の秋山さんもあ、本当だと言ってくださった。小野さんに「司会よかった」と申し上げたら「本当? ありがとう」と返してくださった。新沼さんに最近やせた?と伺ったところ滅相もないという感じで首と手を横にお振りになった。13時27分に私の握手は終わった。
・聞こえてきた会話によると一番たくさん買った青年は40枚ずつ、計120枚のCD(コンパクト・ディスク)を予約購入したらしい。最後に一人だけループしていた。あまりに枚数を持ちすぎていたため最後の方は先頭からやり直すのではなく左右の振り子方式になった。メンバーがすげー笑っていた。いったい何を話しているんだ…。気が付いたら秋山さんがいなくなっていた。握手が終わってから小野さんが、秋山さんが体調不良で途中離脱した旨を我々に告げた。その際に秋山「マヨ」と言ってしまいメンバーや観客から突っ込みを受け、笑いが起きた。捌けるときに小片さんが何度も足を滑らせこけそうになっていた。
・13時53分に前説のお兄さんから、イベントの進行が押している。15分押し。二回目は14時45分に整理番号を呼び出して、15時15分から開始する。という通知。
・イベント中、あんまり野次馬が集まってこない。この施設、そこまで集客していなさそう。

2回目。開始前に前説のお兄さんがKYODO HOKURIKUの助けを借りながらハシゴに上って「つばきファクトリー」と書かれた青い巨大な旗をステージの後ろに設置していた。近くの紳士がお連れさんに「何で(一回目にはなくて)今なんだ。さっき届いたのか」というごもっともな疑問を発していた。ローカルの女子学生二人組が興味を示していた。彼女たちはイベントが開始した時点で優先エリアのすぐ外の右側で観ていた。そこからどこかに移動した。去ったのか、もっと見やすい位置に行ったのかは分からない。265番という番号にも関わらず、右端とはいえ二列目に立つことが出来た。

・前説のお兄さんの演説。万代エリアのご紹介。買い物をするのに便利。だいたい揃う。服にしてもアメカジもあるし、ラグジュアリーが欲しければBEAMS(※BEAMSで「ラグジュアリー」?という疑問は置いておこう)がある。THE NORTH FACEの店なんかもあって、そこには私(お兄さん)もよく行く。この近辺にNGT48のビデオクリップのロケ地がある。(あっちにあれがあって、という感じで場所を紹介するたびに観客はへえという感じでみんな頷いていた。)NGT48は今日は公演をやっていないが店があって物販はやっている。普段はハロプロを見ている人でもたまにはNGTのお店を見るだけ見てはいかがでしょう?
・セットリスト。一回目との違いは、二曲目が『独り占め』、三曲目が『カッチョエエ!』(Berryz工房)、最後が『大きな愛でもてなして』。Berryz工房と℃-uteの曲が始まると観客はそう来るかって感じで盛り上がる。℃-uteを観ていた私のように、元々Berryz工房や℃-uteを応援していた人が多いのだろう。当然のように即座に対応する。かつてはBerryz工房と℃-uteのメンバー名を呼んでいた箇所をつばきファクトリーのメンバー名に入れ替えてチャントを入れる。
・イベントの後半に、℃-uteが解散して嗣永桃子もハロー!プロジェクトを抜ける、そんな中でつばきファクトリーは先輩たちのスピリットを受け継いで頑張っていきたいというようなことを小野瑞歩さんが言う場面がある。小野さんは、嗣永桃子さんに言及する際に一回目では「嗣永さん」と言っていたのが、二回目では「ももちこと嗣永桃子さん」という言い方に変えていた。たしかに「嗣永さん」だと我々は分かるがたまたま足を止めて観ている人には伝わらない可能性もある。それに本人が気付いたか裏方に指摘されたかして、直したのだろう。こういう細かい変化に気付くことは同じイベントを何回も観覧することの醍醐味の一つである。
・15時45分に本編が終了。握手の順番は、岸本ゆめのさん→小野瑞歩さん→新沼希空さん→小野田紗栞さん→谷本安美さん→山岸理子さん→秋山眞緒さん→小片リサさん。小野瑞歩さんに「髪型似合う」と申し上げたところニコッと笑って「ありがとう」と返してくださった。一回目の握手を体調不良で抜けた秋山眞緒さんに「体調大丈夫?」と伺ったら「大丈夫です!」と大丈夫そうな声で答えてくださった。15時53分に私は握手列を抜けた。
・何かこう、イベントを通してとてもふわっとした雰囲気である。過ごしやすい天気と気温で、あまりごみごみしていない地方の商業施設で、客もそんなに多くなくて、平和な感じ。
・16時4分、三部の優先券は残りあと20-30枚だと前説のお兄さん。つばきファクトリーたちが帰りの時間に遅れないように枚数を少なめにしてあるのかな?
・16時17分に二回目がすべて終了。三回目は予定通り17時半から行うとのこと。

会場すぐ近くの「世界で2番目においしい 焼きたてメロンパンアイス 万代シティ店」。貼りだされている求人。職種:メロンパン・メロンパンアイスの簡単な調理補助と販売。時給:760円。検索したら新潟県の最低賃金は時給753円だった。ギリギリの線を突いてくる。かろうじて違法ではない金銭しか出さないくせにいちいち履歴書を要求しやがるのか。ラスクが200円→120円に値下げられていて、これだけを買うのもケチでシケたジジイだなと思い躊躇したものの、売っている人たちの時給が760円なんだからこれだけを買ってもおかしくないなと思い直して買った。メロンパンにアイスを挟んだものも気になったが、ジジイなのでこれを食べてしまうと夕飯が食べられなくなると思いやめておいた。

3回目。中央やや右寄りの二列目を獲得。周囲はおまいつの方々で占められている。最後なのでしっかり声を出していく所存である。前にいた紳士が、私の荷物を前に置きましょうかと申し出てくれた。お言葉に甘えて置かせてもらった。

・前説のお兄さんから、一連の2ndシングル発売記念ミニライブ&握手会イベントに関する裏話。イベントを静岡でやってほしいという声を前から受けていて、実現すべく調整していた。二つの会場(イオンと、あと一箇所。お兄さんは施設名を言っていたが私が忘れた)と話を進めていたが、けっきょく会場が押さえられなかった。だから残念ながら今回は静岡でのイベントはなし。常滑でやる日(6月24日)が本来は静岡でやろうとしていた日だった。
・3回目の握手券付きイベント参加券は完売したとの発表に、我々は拍手。
・曲の回替わりは、二曲目が『青春まんまんなか!』、三曲目が『一丁目ロック!』(Berryz工房)、最後はメジャー・デビューの日に℃-uteさんと一緒に歌った曲ですという前振りを入れて『都会の一人暮らし』(℃-ute)。
・お昼に寿司を食べたので、自分をお寿司のネタにたとえたら何かを言って自己紹介をしていきます、と小野瑞歩さん。そこまではメンバーは分かっていたようだが、セクシーに言うようにというアドリブの指示を付け加える小野さん。困惑するメンバーたち。喜ぶ我々。「ホタテ。貝柱に似ているとよく言われるので」(山岸理子さん)。「サーモン。私のメンバーカラーであるライト・オレンジにいちばん近いのと、あとサーモンは子供から大人までみんなに好かれているので、私もそんな人になりたいから」(小片リサさん)。「マグロ。目つきが怖いと言われるから」(新沼希空さん)。 「とびっこ。元気があるから」(谷本安美)。「オクラ納豆。粘り強いと思うので」(小野瑞歩さん)。「たまご。メンバーから子供だと言われるので」(秋山眞緒)。秋山さんはトリだったので何か特別なことをしてくれるんだよな的な空気になった。期待に応えて腰を回すような動きをしながら言っていて、メンバーも観客も受けていた。新沼さんの「マグロ」にはドキッとしましたね…。
・握手は1回目、2回目に比べて明らかに早かった。順序は小片リサさん→山岸理子さん→新沼希空さん→小野瑞歩さん→小野田紗栞さん→秋山眞緒さん→岸本ゆめのさん→谷本安美さん。小片リサさんにBis morgen(また明日)と申し上げてみたが通じなかった。小野瑞歩さんが「今日いちにちありがとう!」と言ってくださった。18時16分頃に自分の握手が終了。18時47分にメンバーからの挨拶があって本日のイベントがすべて終了。
・1回目、2回目、3回目と握手会はすべて同じ青年がループをしていた。彼は本当に凄い。つばきファクトリーのメンバーたちを何度も笑わせている。彼女たちが本当に楽しげである。何という高度な技能を有する青年なんだ。私が羨望のまなざしで眺めていると、背後から彼の知り合いとおぼしき人々の会話が聞こえてきた。彼らも私と同じようにつばきファクトリーをエンターテインする彼の技量に敬服していたが、片方がぼそっとつぶやいた。
「あいつ何でリアルで駄目なんだろうな」
「リアル?」
「いや、彼女いないじゃん」

帰りに新潟駅近くの「赤たぬき 弁天店」に入った。たまたま隣にHello! Projectを愛好する地元民がいて、話し込んでしまった。その紳士もさっきまでつばきファクトリーのイベントを観ていたらしい。麒麟山という日本酒2合を冷で飲んでのっぺ(新潟っぽいものはないですかと聞いたらお店の人がこれを薦めてくれた)とハムカツとおでん盛り合わせを食って梅酒をロックで飲んだ。これだけ飲んで食って2,480円。60分980円という飲み放題を頼んだ。120分だとたしか1,680円。選べる酒は限定されるがコス・パ抜群。つまみも500円を切るものが大半。20時10分頃に店を出た。
「すみませんね、急に話しかけちゃって」
「いえいえ、楽しかったです。それじゃ、また現場で」
「はい、また現場で」
連絡先やTwitterのアカウント等は教え合わなかった。非常にクールな別れだった。いい感じに酒が回ってきた。新幹線でぐったりして、埼玉のストリートに戻ってきた。 夜行バスでまともに眠れなかったにも関わらず、しんどくならずにちゃんと丸一日かけてイベントに参加した私はよくやったと思う。

2017年6月17日土曜日

ファラオの墓 (2017-06-10)

ちょっと複雑な気持ちだった。『ファラオの墓』は一週間前にいちど観させてもらって非常にいい印象を持っていた。このミュージカルは回によって「砂漠の月編」と「太陽の神殿編」に分かれている。話の内容は一緒だが、一部の配役が異なる。工藤遥さん、小田さくらさん、石田亜佑美さんの三人がシャッフルする。このお三方のうち、前回入った「砂漠の月編」では工藤さんと小田さんが主演を務めていた。サリオキス役が小田さん、スネフェル役が工藤さん。今回観させてもらう「太陽の神殿編」ではサリオキス役が工藤さん、スネフェル役が石田さん。「砂漠の月編」では工藤さんと小田さんがそれぞれの個性を生かした好演を見せていた。演者が変わることでサリオキスとスネフェルがどう変わるのか、楽しみだった。前回は21列だったが、今回は17列と席が少し前になるのも私のモチベーションを高める要素だった。ただ誤算があってね。『Hello Project 研修生発表会 2017 6月~June Tripper!~』東京公演の日程が、丸かぶりだったんだよ。そっちの開演時間が14時半と17時半で、私が入る『ファラオの墓』は15時から。物理的に不可能だったんだ。掛け持ちが。『ファラオの墓』のFC先行申し込みの時点では研修生発表会の日程が出ていなかった。アップフロントはいつもこうやって日程を小出しにするんだ…。そっちの事情もあんねやろけど、出来れば一定期間の興業予定をまとめて教えてくれや。分かっていればこの日に『ファラオの墓』は観に来なかった。研修生発表会の方が優先度は高い。つばきファクトリーが出るからね。そりゃやろうと思えば『ファラオの墓』のチケットを誰かに譲渡して研修生に行くとか、そういう道も選べたわけだけど、お金の問題もあるし、そういうことはしなかった。

正直、つばきファクトリーに後ろ髪を引かれる思いがあった。ところが、いざ『ファラオの墓』を観るとそんなモヤモヤは見事に打ち消された。サンシャイン劇場に来ることを選んでよかったと、終演直後の私は思っていた。研修生発表会とつばきファクトリーを観られなかったことの悔しさはなかった。いくつか理由はある。まず基本的なこととして複数回入るに値する、いいミュージカルだった。会場中から客がすすり泣く音が聞こえてきた。「太陽の神殿編」のサリオキスとスネフェルには、「砂漠の月編」の同役とはまた違った魅力があった。工藤さんはサリオキスとスネフェルの両方を演じていたのだが、敵対し合ういわば正反対の役をよくこなしたなと思った。それも同じ日にサリオキスをやってスネフェルをやって…というのは頭が混乱しそうなものである。第二に、牧野真莉愛さんを近くで観ることが出来た。数名の出演者たちが通路に降りてくる場面があったんだけど、そのときに牧野真莉愛さんが近くにいらっしゃった。といっても間に4列を隔てていたが。わずか数十秒だったけど旗を振りながら歌う彼女を数メートルの距離で観ることが出来た。間近で見ると、改めて凄いな、と。何というか単純にきれいとか可愛いとかスタイルがいいとか、もちろんそれもあるんだけど、彼女が醸し出すアイドルのヴァイブスがもう半端じゃなかった。ドキッとしてしまった。4列を隔ててこれなんだから、接触なんか行っちゃったらどうなってしまうんだろう。私は行かないけどね。三つ目の理由は、終演後のトーク。回替わりで誰かがちょこっと話すんだけど、今日は牧野真莉愛さんと横山玲奈さんだった。これがとても天真爛漫で会場の雰囲気ががほっこりしたし、私を含めて観客は何度も笑っていた。「どうもーアリパビです」と言って(牧野さんの役名がアリ、横山さんの役名がパビ)漫才コンビ的なノリで始まった。観客が拍手するとお二人が動きでパンパンパンと三回揃えて締めるのを要求して、我々もそれに応じた。そのときの動きをとちったらしく牧野さんが「間違えちゃった」と笑っていた。牧野さんは男役をやってみたが結構イケてるんじゃないか的なことを言って工藤さんから「何を言っているんだ」的な突っ込みを受けていた。牧野さんはアリのことがとても好きで、毎日、寝言で台詞を言っていたそうだ。極めつけに、彼女はくるっと回って顔を傾けてほっぺに両手の人差し指を当てて「アリLOVEりんです」という技を炸裂させた。言うまでもないがいつもの「まりあんLOVEりんです」を文字っている。横山さんは、パビはこういう性格で…というようなことを説明した後に観客に向けて「帰れ!帰れ!」(劇中の横山さんの台詞からの引用)と言って、牧野さんと一緒に手拍子を付けながら脇に捌けようとしたが左端にいた方(汐月しゅうさんか扇けいさんのいずれか)に首根っこをつかまれて元の位置に戻された。一連の流れを受けて工藤さんが「ご覧の通り和気藹々とやっております」と言って締めた。おそらく二度と披露されることはないであろう「アリLOVEりんです」をこの目で観られたのは感無量であった。『ファラオの墓』のチケットを手放さずに観に来るという選択は正しかったんだと確信した。ただ、家に帰ってつばきファクトリーのブログを見ていたところ新沼希空さんが今日の衣装を着た写真を載せていた。それを見たら現場で目に焼き付けられなかったことの悔しさが抑えられなかった。(以前にモーニング娘。がツアーで使用した衣装である。“EVOLUTION”のときの衣装だな、エヴォリューションとエロ衣装で韻を踏めるなと思ったが、違った。その一つ前の“CHANCE”の衣装だった。)『ファラオの墓』には満足した。でも、つばきファクトリーも観たかった。この無念さは明日、新潟で晴らすんだ。

2017年6月6日火曜日

ファラオの墓 (2017-06-03)

古風なオジサンは自分の息子(そっちの息子じゃない)のことを指して「うちのチビが…」と言ったり、チビ助という妙な愛称を付けたりする傾向がある。チビって、まあ言うたら蔑称だよね。普通であれば分別のある大人が使う言葉ではない。なぜ彼らが当たり前のようにご子息をチビと称するのか。それには主に三つの前提があるように私には思える。第一に、子供の身長が低いのは一時的でいずれ成長する。チビと呼ぶのは身体的特徴をあげつらっているのではなくむしろ成長の過程を愛でているのである。第二に、子供は半人前の存在。大人が相手の場合と同じ配慮は必要ない。第三に、自分の子供は親の所有物。だから何と呼ぼうと勝手で、他人にどうこう言われる筋合いはない。もし誰かが自分の子供をチビと称することに正義があるとすれば、その根底にある理論はこんなところではないだろうか。しかし、私はずっと前から疑問に思っている。小さな子供は背が低いだけではなく、まだ髪の毛も髪が生え揃っていないことが多い。子供の身長が低いからチビと呼ぶのであれば、髪の毛が少ないからハゲと呼んでも不思議ではない。しかし彼らは子供の髪の薄さについては目をつむる。決してハゲとは言わない。チビはよくて、ハゲはよくない。その基準は何なんだ。そこを明らかにしろ。自分の子供をチビと呼ぶのであればハゲとも呼べ。息子さんをハゲと呼ぶガッツのあるお父さんは出てこないのか?

ハゲ、ガッツ。ハーゲン・ダッツ。ハーゲンダッツといえばサーティ・ワン。サーティ・ワンをはるかに超えた年齢の紳士たちが参集したサンシャイン劇場。客層は彼らと、若いナオンに二極化しているように見えた。モーニング娘。主演のミュージカル『ファラオの墓』。18時半開演。本日おこなわれる3公演の最後である。私はハロコンを除けばモーニング娘。の現場に来るのは昨年の四月以来だ。行き慣れている現場に比べて客の雰囲気が違う。Juice=Juiceとつばきファクトリーの現場には若い女性がここまで(というかほとんど)いないし、男性客もここまでクラシカルではない。クラシカルというのは要はさ、ふくよかで、頭髪が薄くて、チェック柄のシャツを着ているような、そういう感じよ。男性客の大半が、本当にそんな感じ。特にそれなりにいる若いナオンの存在とのコントラストが男性客の特徴を引き立たせる。

開演前、近くの紳士がパンフレットをパラパラめくりながら、羽賀(朱音)ちゃんの衣装がエロくない?いろいろ見えちゃいそうで気になる。こう思うのは俺だけ?と隣のご友人に問いかけていた。ご友人は曖昧に相づちを打っていた。紳士が開いていたページの羽賀さんを見ても、何かが見えちゃいそうな衣装には見えなかった。残念ながら。でもそういう視点は嫌いじゃないよ、私は。もっと聞きたい。ここで隣のお連れさんに話すだけじゃもったいない。掘り下げてさ、ブログに書こうよ。そしたらあなたが次の『アイドル見るのが呼吸』になれるかもしれない。ただ、いただけなかったのは物語のここが矛盾しているなぞと、内容の核心に触れていそうなことを大声で得意げにまくし立て始めたことだ。ご友人はあまり興味なさげな感じで頷いていた。うるせえな、ここでベラベラしゃべらねえでブログに書いとけよ…と私は思ったが、ちょうどそのタイミングで小田さくらさんと工藤遥さんの影アナが流れたので、何とか中身を聞かずにやり過ごすことができた。

原作があるらしいが例によって私は何も予習をしないで行った。そして今のモーニング娘。にはそこまで強く興味があるわけではない。もちろんまりあんLOVEりんこと牧野真莉愛さんはいらっしゃるが、どうしても彼女をミュージカルで観たいという感じではなかった。『ファラオの墓』にはハロプロ研修生から高瀬くるみさん、川村文乃さん、清野桃々姫さん、一岡怜奈さんが出演している。この四名は同時期に開催されているハロプロ研修生発表会は欠席している。現役の研修生では私は高瀬くるみさんがいちばん好きだ。『ネガポジポジ』で観てミュージカル映えする子だと思っていたので、彼女を観るのが楽しみだった。ただ、上記の研修生(+演劇女子部から小野田暖優さんと石井杏奈さん)は脇役なので、あまり前面には出てこないことが予想された。というわけで、具体的で分かりやすい、これを目当てに観に行ったという何かがなかった。何でファンクラブ先行で申し込んだかというと、演劇女子部が好きだから。ハロー!プロジェクトのミュージカル、舞台が好きだから。

Twitterのモーニング娘。ファンたちを見ていると、オタクだけあって事前に原作を読み込んでいる気合いの入った奴らが結構いる。今回のミュージカルを観た上で、原作との違いや共通点を考察している。誰々の演じたキャラクターは原作にはいないとか、そういうことを論じているわけ。一方の私はといえば、サンシャイン劇場の席に座るまで何も考えていなくて。舞台のセットがエジプトっぽかったのを見て、ああそういえばファラオってエジプトかってそのときに初めて思うような、そんなひどいありさまだった。あらすじすら読んでいなかった。そんなので劇に入り込んで楽しめるのかという疑念は少しあったが、それは劇が始まると数分で晴れた。シリアスなんだけど適度に笑いが挟まれて、緊張と弛緩のバランスがよかった。場面の切り替えのテンポがよく、飽きさせない。ずっと集中したまま観られる。心地よい余韻を味わいながら、うんうんと頷きながら席を立って退出できる、そういうミュージカルだった。

『ファラオの墓』ではモーニング娘。の個性と魅力がよく伝わってきた。もちろん彼女たちが努力で役に寄せている部分もあるだろうけど、演じている人間の特徴と噛み合った役柄が与えられることで、一段と彼女たちが生き生きとしているように見えた。あえて一人だけに絞ると生田衣梨奈さんが個人的に驚きだった。舞台上のたたずまい。独特の風格があった。歌声もしっかりしていた。運動能力を生かして殺陣でも目を引いた。小田さくらさんの歌がうまいことや工藤遥さんの演技が優れていることは知っていたから意外ではなかった。私は生田さんに関しては出来る子という印象を持っていなかった。ご本人もネタにするようにモーニング娘。の曲では歌割が少ない方だし、この人の歌唱が凄いとかダンスが凄いとかいう話題で名前が挙がるタイプではないように私は認識している。おそらく普段からモーニング娘。を観ている人からすると今の生田さんがここまで出来るのは当然なのだろうが、あまり観ていない私からすると発見だった。一方で、佐藤優樹さんは役が本人の個性と合っていないように思えた。話の節目でナレーター的なことをやっていたけど、これは佐藤さんの特徴を出すにはちょっと厳しい役柄だったと思う。佐藤さんは歌では光っていたのでもっと強みを生かせる役が与えられていればと思ってしまった。

私は2013年の9月に同じサンシャイン劇場で『我らジャンヌ』というミュージカルを観ていた。もう4年近くも前なので詳しい記憶は残っていないが、そのときに比べて『ファラオの墓』出演陣による演技や歌唱の平均的な水準は高かったように思う。一方で、周囲を圧倒する個人もいなかったように感じた。『我らジャンヌ』には、菅谷梨沙子さんがいた。田村芽実さんがいた。『ファラオの墓』にそういう存在はいなかった。私は高瀬くるみさんに注目しているのでたまに双眼鏡で彼女だけを観ることもあったが、いかんせん脇役なので出てきたと思ったら数秒でいなくなることが多かった。彼女をもっとじっくり観たい。もしかすると高瀬さんなら、私が今日いないと感じた、飛び抜けた個人になれるのではないか。高瀬くるみさんが演劇女子部(もしくはそれに準ずるミュージカル)で主役を張って躍動し、ソウルフルな歌声を会場に響かせる。そんな姿を私は観たい。

2017年6月3日土曜日

NEXT ONE SPECIAL (2017-05-27)

胸焼け、腹痛、不十分な睡眠。乳酸菌とサイリウム・ハスクのカプセルを毎日服用するようになってから胃腸が不調をきたすことはだいぶ減った。今日は久しぶりに本格的にお腹に来た。理由は分からない。寝る前に焼酎を注いだ炭酸水を飲んだのがまずかったのか? でも炭酸水は普段からよく飲むしな。まあいいや。気にせず朝食は摂った。茶碗にご飯をよそってですね、真ん中にくぼみを作ります。そこに生卵を落として、丸尾醸造所の「マルオ うま味しょうゆ 濃口」というのをね、適量かけましてね、かき混ぜて、いただくんですよ。要は卵かけご飯なんですけどね。これがうまい。この「マルオ うま味しょうゆ 濃口」というのがね、合うんですよ。皆さんもお試しください。昼になってもお腹は本調子じゃなかったけど、負けずにメシ屋に入った。池袋のピッツェリアでね、ランチを800円くらいで食えるところがあって。日替わりのピッツァを頼んだんだ。たしかマリナーラだったかな。自分、生のチーズは嫌いだけどピッツァは大好物なもんで、楽しみに待っていたわけ。そしたらね、運ばれてきたブツを見て、言葉を失った。まあ一人なんで、ブツブツ言う方が異常なんだけど。何とチーズが乗ってなかったんだ。平静を装ったが、内心ではやってしまったと思った。人生で最も失敗したと感じる瞬間の一つ、それは頼んだピッツァがチーズのないタイプだと実物を見て気が付いたとき。でもそれを写真付きでTwitterに投稿したらパソ・コンさんがリツイートしてくだすったので、報われた。最終的には16RT、68favまでいった。

江戸川総合文化センターに来るのは二度目。前回が2015年10月10日。Juice=Juiceの日。あのときはマチネだけだった。ソワレは落選した。今日はマチネもソワレも当選した。今日はNEXT ONE SPECIALと題したツアーの追加公演。最終日。だから今日のソワレが最終公演。え、知らないの? マチネが昼公演、ソワレが夜公演の意味だ。私はこの間の『minako-太陽になった歌姫-』で買ったボッタクリ写真(500円)にこれらの言葉が書いてあって、検索して意味を知った。新しく知った言葉は積極的に使っていきたい。今日は家を出る前に“Juice=Juice LIVE MISSION FINAL at 日本武道館[Blu-ray]”を観ていた。それが朝公演みたいなもんで、実質的にJuice=Juiceのコンサートを3回、観ることになる。今日はマチネが13時開場、14時開演。ソワレが16時30分開場、17時30分開演。13時10分にチケットをもぎられて、中のグッズ列に並んだ。5分後には宮崎由加さんと高木紗友希さんの日替わり写真を手にしていた。いつものルーティンだと宮崎由加さんと宮本佳林さんのを購入するんだけど、今日は高木紗友希さんが写真に描いている絵が興味深かった。あと宮本さんの写真の書き込みは代わり映えがしなさすぎてね。他の会場のときのとほとんど変わらへん。このツアーの宮本さんの日替わりは三郷、中野、名古屋のを持ってるから、今日はいいかなと。彼女の書き込みにはもっと変化があればな。

私の席はマチネもソワレも18列で、まったく同じ列という偶然。同じ列でもね、例えば両方とも5列だったらスゴいけど、いちばん後ろが24列なもんで、18列というのは、あんまりヴァイブスが高まる数字ではなかった。でも席に関しては名古屋でいい思いをさせてもらったし、最終日に二回とも入らせてもらえるだけでありがたいという気持ちがあった。とはいえ、もう5回も観させてもらっているこのコンサートをあと二回、観させてもらうにあたって気持ちの持って行き方が難しかったのは認めざるを得ない。まともに眠れていないので夜まで元気が持つんだろうかという不安もあった。実際にチケットに印字された席に来てみると、想像していた18列よりは近かった。双眼鏡を使えば迫力のある映像を目の当たりに出来る、そういう距離だった。それで少し気持ちが上向いた。江戸川総合文化センターは、規模的に三郷市文化会館、日本特殊陶業市民会館ビレッジ・ホールに近かった。前にも書いたけどこれくらいの大きさが私は好きだ。そういやPAっていうの? でかい機械が置いてある区画。そこにたいせい氏がいた。

最終日にして、Juice=Juiceはちょっとした変化を付けてきた。『アレコレしたい!』の途中で彼女たちは客席に降りてくるわけだけど、そのタイミングとルートがこれまでと異なっていた。私は石川と大阪の公演は観ていないけど、三郷、中野、名古屋ではバース2の「自分のお小遣いで…」のところからJuice=Juiceが通路を歩き始めていた。今日はその前のフックからステージの階段を降りて来られた。三郷、中野、名古屋では1階の真ん中を横切る通路で止まって、そこに設置されているお立ち台に乗っていたけど、今日はそうする前に1階の一番うしろまで突っ切っていた。これまでと違うから、どのメンバーがどこを歩いているのか誰も分からない。観客は私を含めてみんなキョロキョロしていた。金澤朋子さんが通路を通ると、私の近くの通路席にいた女性が口元を押さえて感激していた。最後にこういうちょっとした驚きを入れてくるのは粋だ。

その後のトーク・セグメントで、客席を歩いたときに外国人が多かったという話になった。どこから来たのという問いかけに、前方の左にいた紳士がドイツだと答えると、高木さんはダンケシェンと言った。ドイツと聞いて宮崎由加さんが、ぶんぶんぶんハチが飛ぶの歌のドイツ語版を知っていると興奮ぎみに言った。歌ってみてとメンバーが振ると「ズンズンズン…」から始まる歌を早口でまくしたてるように歌った。私には何となくドイツ語っぽく聞こえたが、ドイツ人の紳士は首を大きく横に振った。会場にドッと笑いが起きた。宮崎さん曰く、小学生の頃に教えられてノートに書いて覚えたのだが誰にも伝わらないのだという。植村あかりさんが「全然わからない感じですか?」と聞くとドイツ人の紳士は「え?」だか「はい?」と聞き返して、植村さんは笑った。外国人というだけでコンサート中にメンバーに注目されて会話をしてもらえるのは『羨んじゃう』と思う人が結構いるとは思う。Juice=Juiceの典型的なファン(40代の日本人男性)が何十回と現場に足を運んでもこんなことはあり得ないから。ただ、実際のところどうなんだろう。もしかするとだけど、あのドイツ人の紳士が抱いた感情は単に嬉しさだけではなかったかもしれない。私は何年か前にチケットをいただいてペクポセント(100%)という韓流の男アイドル集団のイベントに行ったことがあるんだけど、観客はほぼ全員が若い女性で、ほぼ私しか男がいなかった。イベント中、男性の方はいますか?という感じで司会が問いかけてきた。私は仕方なく手を挙げたんだけど、おー男性ファンもいますね!という感じになって周りの観客もすげー見てきた。あのとき私は嬉しいというよりは気まずかったし居心地はよくなかった。あのドイツ人の紳士だって、普通に無名の観客の一人として埋もれたかったかもしれない。いや、分からないよ。メンバーから認知されておいしすぎるとほくそ笑んでるかもしれないし。たださ、例えば毎回のようにああやっていじられたらおそらくしんどいよね。それはともかく、こうやって日本人以外の観客と積極的に交流を図ろうとするJuice=Juiceから、彼女たちが海外ツアーという次の目標を見据えているのが強く伝わってきた。

宮本佳林さん曰く、私(宮本)は面白いときに「おなか痛い」というのが口癖。昨日、新潟でイベントがあった。司会の金澤朋子は先に楽屋を出ていた。楽屋で書き物をしながら「おなか痛い」と言ったが誰も突っ込んでくれない。いつもだったらそこで朋子が「痛くないでしょ」と言ってくれる。タイミング遅れて由加ちゃんが「痛くないでしょ」と言ってくれたけど、朋子がいないのが寂しかった。一人いないだけで足りないって思う。五人いてこそJuice=Juiceだという感じで話を結んで、他のメンバーも同調していた。今日は「この五人でJuice=Juice」というのをメンバーたちが何度も言っていた。何かあったのかと勘ぐりたくなるほどに。例えば事務所がグループに新メンバーを加えようとしていて、それを牽制しているとか。後に宮崎由加さんが「Juice=Juiceファミリーの皆さんがいてくれなければJuice=Juiceは成立しない。だから五人でJuice=Juiceというのも違う」というようなことをおっしゃっていた。メンバー同士の絆の確認で終わるのではなく、ファンに目線を向けるのはさすがリーダー。

金澤朋子さんが「今年で22歳になるので『アレコレしたい!』とか言っている場合じゃないのではと思った。この年齢でキャピキャピしていて気持ち悪くないかと不安になることもある。でも客席で40代、50代やもっと上の方々がピョンピョン跳ねているのを見て自分もまだまだ頑張ろうと思った」的なことをおっしゃっていた。つまりオタクは高齢であればあるほどいいのである。それを受けて宮崎由加さんは「たしかに私も(『アレコレしたい!』の)『母が嫁いだ年齢』という歌詞の通りに追い越しちゃうんじゃないかなと思うときがある。でも皆さんとこうやって楽しい時間を過ごしたいという思いもある」としみじみ語っていた。

マチネはどういうわけか、高木紗友希さんがいつもよりも強く私の目を引いた。もちろん彼女の圧倒的な歌唱力にはいつも耳を奪われているんだけど、この公演では彼女の動きが大きいダンスと笑顔が輝いていた。高木さんの魅力を再発見した。このツアーは全部で12公演で、私が観させてもらったのは7公演。多いのか少ないのか、判断がつかない。7回も同じコンサートに入ったというと多いような気がするし、12公演のうちの7公演というと約半分だから少ないような気がする。一つのコンサート・ツアーに何回も入るのは極めて理にかなった、真っ当な行為である。なぜなら同じ演目のコンサートはあっても同じコンサート体験は二度とないからである。自分の体調と精神状態は毎回、異なる。演者たちもいくら人並みはずれているとはいえ人間であることに変わりはないから、そのときによって心身の状態は違う。我々の心身状態は天気、会場、土地、食事、そのほか数え切れない要素によって変わる。観客の視点でいえば、位置(席)によって見え方は変わる。遠征をして馴染みの薄い土地で観ると特別な経験になる。回数を重ねることでそれまで見えなかったところが見えることもある。私が今日のマチネで高木紗友希さんのダンスに引き付けられたように、同じ演目を何度も観ていくうちにそれまであまり目に入っていなかった部分に気が付くことがあるのだ。

体調といえば、マチネではどうしても睡眠不足の影響からは免れなかった。ソワレはツアーの締めくくりなので完全燃焼したい。開演前に会場内のソファに腰掛けて、10分間のマインドフルネス瞑想を行った。それが功を奏した。頭がシャキッとして、ソワレはマチネよりも良好な状態で挑むことが出来た。左隣が空席だった。とはいえその左の人が完全にはみ出てきて、その空席をほぼ占拠していた。彼の左隣の紳士がふくよかでチェック柄のシャツをお召しになっているという、いまどきたくさんは見ないクラシカルなオタクさんだったので、仕方ない。許す。はみ出てきた青年は激しめにフリコピをする宮崎オタクだった。私もスタイルは違えど、彼に負けじと声を出し、身体を動かし、熱くなった。

このツアーから高木紗友希さんはピアスを開けている。宮崎由加さん曰く、穴から向こう側が見えるのがそわそわする。金澤朋子さんと植村あかりさんは最初に会ったときからピアスを開けていたからそういう感覚にならないが、高木紗友希に関しては孫がピアスを開けたような心境。高木さんによると、重いピアスを付けて踊ると耳がちぎれることがあるとダンスの先生が言っていたらしい。

ソワレはアンコールがいつもと違った。いつもの「ジュース! もう一杯!」ではなく、何やらメンバーの名前のチャントだった。Juice=Juiceの現場でこんなアンコールは聞いたことがなかったのではじめは要領がつかめなかったが、何度か聞いたら分かった。メンバーの名前を年齢順に二回ずつ叫んでいるんだ。「ゆかにゃ! ゆかにゃ! ともこ! ともこ! さゆき! さゆき! かりん! かりん! あーりー! あーりー!」だった。私のように最初は分からなかった人が多数派だったと推測するが、短時間のうちに観客が認識し、当たり前のように会場全体がそのチャントで染まった。この適応能力。最後の方には裏方までもが、メンバーの名前に合わせてステージの光を切り替えていくという機転を見せた。

最後のコメントで高木紗友希さんが、握手会で「いま就活中なんです」って子がいて…と言ったあたりから感極まって泣きじゃくっていた。泣きながら何とか言葉を絞り出していたが、声援でかき消されて何を言っているのか私は聞き取れなかった。泣いている高木さんを母のように優しい笑顔で見守る植村さん。肩を揺らして笑う宮崎さん。

宮本佳林さんは、コンサート中に客席を通ることができるのは皆さんが温かいからだ。ニュースを見ると世の中では大変なことが起きている。いや笑い事じゃなくて。と言って我々への感謝を表していた。

宮崎由加さんが、客席でevelynの洋服を着ている女の子を探すのがこのツアーの密かな楽しみだったと明かした。そこにもいる!そこにもいる!と数名を指さしていた。私の何列か前にいた女性二人組もおそらくevelynの服を着ていたのだろう、宮崎さんのその発言のときには嬉し恥ずかしそうに顔を見合わせて笑っていた。ここで発表がありますと宮崎さんが切り出したときには、グループの今後に関する重大な発表があるのではないかと私は思った。マチネから五人じゃないとJuice=Juiceじゃない的なことをメンバーたちが言っていたし、金澤朋子さんは「ハロー!プロジェクトは色々な変化を経て今に至る。Juice=Juiceも何があるか分からないですよ」という思わせぶりなことを言っていた(「いや違います違います。次のホール・ツアーが決まるかもしれませんし、前向きな意味を込めて言いました」と金澤さんは付け加えた)。いつになくJuice=Juiceの皆さんがそわそわしているように見えた(ソワレだけに)。ところが宮崎さんの口から出た発表とは、9月8日かのメキシコ公演を皮切りに海外ツアーが始まりますという内容だった。海外ツアーをやること自体は前から周知の事実だったので拍子抜けはしたが、一方で変な発表がなくてよかったという安堵もあった。

宮崎由加さんの表情図鑑を作ってほしいと私は思った。写真集もいいが、ひたすら彼女の表情に特化して、大量の写真を感情別に分類して解説を加えた本があったら面白くないですか。時期毎の比較をしたりとか。装丁も本当に図鑑のようにしてさ。私は見たい。

最後の公演が終わった。私は観客の一人に過ぎないが四つの会場で7回の公演に参加したので、一杯やってうまいもんでも食って、自分なりに区切りを付けたくなった。店を探して池袋のストリートをさまよった。ガールズ・バー(和製英語)の客引きに遭遇した。誰がJuice=Juiceを見た後にブース=ブースを見たいねん。私が女性のことをブスなぞと書いたり口に出したりすることはまずないのだが、朝から6.5時間(Blu-rayで2.5時間、コンサートで計4時間)もJuice=Juiceをじっくりと鑑賞した後にガールズ・バー(和製英語)の従業員を見せられるとさすがに冗談じゃないよ、目が腐るよという気持ちになる。ブスという言葉を使うのにためらいがなくなる。ごめんなさいね(カントリー・ガールズ風)。しばらく西口近辺をうろつき回った結果、知音食堂に入ることができた。イカゲソの炒め物、四川冷麺、瓶ビール(アサヒ・スーパー・ドライ)。2,410円。四川ン料理は、最高なンだよ。