2020年10月31日土曜日

秒速5センチメートル (2020-10-22)

駅に着いてから気付いたけど前にも田村芽実さんの何かで来たことのある土地だ(※1)。キッチン・カルネでハンバーグと少量のステーキが鉄板に乗ったやつを食った。少しとはいえバター、あとハンバーグのつなぎでおそらく卵も摂ってしまった。カゼインと卵白に強いアレルギーがあることが検査で判明し、それらを避けるよう先生から言われている身としては後味が悪い。食いモンだけに。あれを食えとかこれは食うなとかの助言は世の中に掃いて捨てるほどあるけどさ、体質は人種や個人によって違う訳で。遅延型フード・アレルギー検査を受けないと始まらないんだと最近になって私は知った。牛乳を毎日飲めとか、卵を毎日食べなさいとか書いてある本もあるけど、私のようにアレルギーがある人が従うと逆効果。

クリーピー・ナッツ(※2)を地で行く四人組中年男性(※3)が仲良く談笑しながら目前の建物に吸い込まれていくのを見て、今日の会場、東京ヒューリック・ホールがココで間違いなかったんだと安心した。田村芽実さんのファンクラブ会員はクリーピー・ナッツと総称して差し支えない。いや、女性のファンもたくさんいる。実際に去年のソロ・コンサートでは観客の半分くらいが女性だった。でもやっぱこう、平日で、田村芽実さんのソロ現場ではなく、チケットも手数料抜きで7,800円となるとね、濃い層しか来ないんだろうね。席に着いて同じ列の左右を見るとキモい男性ばっかなのよ。他の列と年齢や男女比の分布が違うんだ。観客の入れ方のガイドラインが緩和されたらしく、席の間隔を空けなくなっている。すぐ隣にキモい男性がいる感覚を久しぶりに味わった。田村芽実さん関係の現場は、観客の大半が女性を占めるような催しでも私の周囲はクリーピーな紳士で固められている(オセロの原則で私もキモくなる)ので、彼女のファンクラブで抑えられたエリアだというのがすぐに分かる。でも別に両隣の人と一緒に何かをするわけではないし、始まっちゃえば関係ない。田村芽実ファンクラブ事務局さんはいつも良席をくださるので感謝している(※4)。

朗読劇って何やねん。しかも原作が新海誠さんって。正直、だるい。パスしていい? 最初にこの公演について知ったとき私はそう思った。もしコロナ・バカ騒ぎがなくさまざまな興行が正常に行われていたなら、ファンクラブ先行受付の案内を黙殺していたかもしれない。田村芽実さんがご出演なさるという点を除くと興味を惹かれる要素が何もない。いや、食わず嫌いやねんで。朗読劇なんて観たことがない。もしかしてポエトリー・リーディング的な、演者さんが椅子にでも座って小説をただ読み上げる劇なのだろうか? だとすると面白さはそのテキストに強く依存するが、作者が新海誠さんと来た。アニメ映画『君の名は。』の大ヒットで大金と名声を獲得した原作者として名前くらいは知っていたが、私は一冊も読んだことはない。読む気にならない。私や当ブログの読者にとって甘酸っぱい青春恋愛物語なんざギャングスタ・ラップのリリックよりも生活実感からかけ離れている。リアルじゃねえ。ヒューバート・セルビー・ジュニアさんを読め。チャールズ・ブコウスキーさんを読め。ハンター・トンプソンさんを読め。西村賢太さんを読め。樋口毅宏さんを読め。根本敬さんを読め。ドナルド・ゴインズさんを読め。ミシェル・ウエルベックさんを読め。

ただ背に腹は代えられないというか、田村芽実さんのことは長らく生で観ていなかったんでね。最後は2月15日の『ウエスト・サイド・ストーリー』。五月だったか六月だったかの『ヘア・スプレー』は公演そのものが全部飛んだ(これは本当に残念)。だからもう約8ヶ月。この『秒速5センチメートル』を逃したら次はいつめいめいさんの舞台やコンサートを観られるのか目処が立っていない(公表されている範囲では)。贅沢を言っていられない。いわば新海誠さんに金玉を握られている状態。今日の19時半の部に申し込んだ(田村さんがご出演されるのはこの部と、昨日の昼の二公演)。公式ウェブ・ページを見ると公演毎の出演者さんは五人しかいないので、それなりに田村さんの見せ場はあるだろう。

と思っていたんだけど劇が始まっても田村さんがなかなか出てこない。この劇は、公演によって出演者さんの組み合わせが何通りかに分かれている。もしかして申し込む公演を間違えたんじゃないか? 田村さんがご出演なさらない公演に間違えて申し込んだのではないか? 顔には出さないが(※5)少し焦った。しかしファンクラブに案内されたURL経由では田村さんが出る二公演しか申し込めなかったはず。

構成として、いくつかの話に分かれているんだけど、それぞれで完結しているのではなく、つながっていた。最初の話では田村さんの出場機会がなかった。二話目でようやくステージに姿を現した。行動経済学の本に書いてあるように人間には確証バイアスがある。あらかじめ抱いている考えが正しいと再確認する形で物事を認識してしまう癖のことである。私の場合、田村芽実さんは最高に魅力的な女優であるというのがそれにあたる。なので客観性には欠けるのだが、彼女が登場した途端、場がパッと華やいだ。同じ劇で十代前半(たしか13歳)からアラサー(たしか28歳)まで感情移入して演じる役者さんたちの実力は確かなものだった。それは認めた上で、田村さんには一味(唐辛子ではない)ちがう輝きがあった。今日の田村さんはいつにも増して本当に生き生きしていたんだ。天真爛漫な高校生のお嬢さんという役柄も関係していたとは思うけど、それだけじゃなかった気がする。ステージで自分を表現できる喜びが、彼女の全身からにじみ出ていた。それを観るだけで私も楽しい気持ちになった。しばらく期間を置いた(置かざるを得なかった)ことで、Spotifyや毎週(※6)のインスタ・ラジオで聴いているあの人が近くにいる!という素朴な喜びも感じた。

朗読劇というのは、懸念していたポエトリー・リーディングとは異なっていた。通常の舞台ほどのアクションはないが、ずっと一箇所で座っている訳でもなく。その中間くらい。演者さんたちは常に台本を開いて両手で持っている。台詞はそこから読み上げる。この朗読劇という形態にコヴィッド・ナインティーンがどこまで関係しているのか、私には知る由がない。もしかすると、演者さん同士の接触を最低限にする方策として選ばれたのかもしれない(※7)。役者さんとしては台詞を正確に再現する重圧からは解放されるから、純粋に演技に入り込みやすいのかも。往年の名俳優でも台詞をまったく覚えずカンペを読んでいた人がいると『太田上田』(※8)で太田光さんが言っていた。

題名の『秒速5センチメートル』は、桜の花びらが地面に落ちる速度なんだって。だから春の、別れを伴う甘酸っぱい恋愛を描いた話。私が好む小説のように麻薬中毒者は出てこないが、恋愛で頭がいっぱいになっている状態も麻薬中毒みたいなもんだ。aikoさんも『恋愛ジャンキー』という曲を残したしね。この機会がなければ私は一生、触れることはなかった作品。原作を読もうとは思わないが、田村芽実さんを通して作品世界を感じることが出来たのはよかったと思う。


※1 2019年10月26日(土)。バースデーライブ。

※2 日本語にすると気味の悪い変な奴らくらいの意味。キモオタと訳しても差し支えないんじゃないかな。知ってた?

※3 全員ふくよか。二人は禿げている上に洗っていないのか脂気の強い髪がベッタリと張り付いている。

※4 今日は四列目の右寄り通路席。C列が最前だった。

※5 男性は戦いで相手に考えていることを悟られると不利になる名残りで女性に比べ感情が表情に出ないようになっている。たしか昔読んだ『話を聞かない男、地図が読めない女』にそう書いてあった気がする。

※6 実のところ三、四回に一回は聴くのを忘れている。

※7 いや分かんないけどさ、台本に向かって台詞を言っていたから飛沫感染の可能性は減るだろうし、稽古回数も少なくて済むのかもしれないし。

※8 『太田上田』と『三宅裕司のふるさと探訪』を観るために私はHuluにお金を払っている。

2020年10月25日日曜日

アラビヨーンズナイト (2020-10-09)

陰茎から開演前にメロウ・イエロウ(ビタミン剤を飲むと実際そういう色になる)を放出すべく2階の男性便所に向かうと、入り口にこんな貼り紙があった:

ただいま、男性用トイレの小便器を一つおきでの使用とさせていただいております。ご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。 こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

もちろん例のアレの感染拡大防止というのが理由だろうが、尿の飛沫で伝染するとは初耳だ(どうやって?)。それとも、放尿中に利用者が何分間も隣同士で話し込むと思っているのだろうか? もちろん私はスペース・ゼロの小便器を一つおきにしか使えないことで何か困るわけではない。それ自体はどうでもいい。だが、こういう「お願い」を見る度に、これは本当に意味があるのだろうか? 仮に効果があるとして、手間に見合っているのだろうか? いつまで続けるのだろうか? といった疑問が頭を駆けめぐる。どうせ、決める方も従う方も殆ど何も考えちゃいない。一連のコロナ・バカ騒ぎで私は、物事の原理や理由をすっ飛ばして分かりやすい解決策に飛びつく(そしてそれに従わない人々を非難する)という大衆の習性をイヤというほどに見せつけられている。もちろん私も、無知蒙昧な大衆の一員として自己嫌悪に襲われている。

ご理解とご協力をお願いしますという言葉は往々にして、ええから黙って言う通りにしてくれやという意味だ。ルールには従うべき、なぜならルールだから。ルールは正しい、なぜならルールだから。それは戦争中の軍隊ならまだしも、自由な社会に生きる自由な人々の行動倫理とは言いがたい。ルールには確たる根拠があるべきで、根拠に何かの綻びが判明した時点でルールは変更もしくは撤廃しなくてはならない。(フットボールでルールが細かく変更されているように。)

私は昔、立ち読みしていたある歴史書(岡田英弘さんの本だったと思う)にこういうことが書いてあってハッとしたことがある-人々は横暴な支配者と民衆という構図で歴史を描きたがるが、それは間違っている。なぜなら人間には支配されたいという願望があるからだ。これを見落とすと歴史を正しく理解することは出来ない-分かりやすいルールに支配され、行動規範を誰かに決めてもらう。その方が生きるのが楽なんだ。

一連のコロナ・バカ騒ぎで私が痛いほどに感じたのが、学力の重要性だ。最低限の算数や歴史の知識が身に付いていないと、身の回りで起きていることを大局的に理解できない(だから数ヶ月前に購入した『増補改訂版 語りかける中学算数』に手を付けないとね)。ご多分に漏れず私も子供の頃は学校の勉強なんて社会で役に立たないと言って親を困らせたことがある。今なら確信を持って言えるが、勉強をしなかった先に待っているのはテレヴィジョンに踊らされるだけの人生だ。コロナ・バカ騒ぎが恰好の教材だ。

もちろんステージ上のBEYOOOOONDSさんは誰一人としてマスクをせず、飛沫を飛ばし合っていた。というか、人と人が対面して言葉を交わすというのは人類が誕生して今日に至るまでずっとやってきたことであって、飛沫がどうのとかをいちいち意識するのが異常だ。それを新しい日常だとか何とかスタイルだとか言って定着させようとする奴は本物のサイコパス。キチガイ。舞台というのは本来はステージ上がフィクションの非日常だが、このコロナ・バカ騒ぎ下においてはむしろステージ上が正常な世界に見えた。こっち側の、男性便所の小便器は一つおきに使えとかマスクを着けろとかソーシャル・ディスタンスだとか言っている世界がよほど異常。

当初は4月9日(金)が初日で、私が観る予定だったのがその日の公演だった。説明するまでもない理由によって延期された。私は普段、初演にこだわらない。むしろ良席を期待して申し込みが少なそうな平場に申し込む。けど、たまには初演観てみようと思って申し込んでいた。チケットの払い戻しはせず、その日が来るのをひたすら待った。部類の演劇女子部好きなので。10月9日(金)まで約半年待たされたが、中止にならずに開催された。本当に喜ばしいことだ。

演劇女子部の舞台では出演者さんが通路を歩く場面が何度かあるのが通例だが、今回の『アラビヨーンズナイト』ではそれがなかった。すべてがステージ上だけで繰り広げられた。出演者さんが我々と物理的に接近するのを避けるために、そうしたのだろうと思う。正常な世界(ステージ)と異常な世界(客席)の間には壁がある。どれくらいの確率なのか分からないけど(文字通り万一とか、それ以下?)、もし通路で台詞を言うBEYOOOOONDSさんのメンバーさんの飛沫からコヴィッド・ナインティーンをいただければ、そんな光栄なことはないのではないだろうか? BEYOOOOONDSさんのメンバーさんの唾を浴びさせろ。

7月に再開された明治安田生命Jリーグを、私はこれまでに(10月9日時点で)12試合スタジアムで観戦した。バラード形式のハロー・プロジェクトのコンサートは4公演に入った。それで分かったのだが、鑑賞方法が制限されるのはまあ我慢できる。フットボールは大きな声を出せなくても(実際にはゴールのときにみんな出しているが)意外と没頭できる。だが、観るエンターテインメントそのものが変容してしまうと楽しさが大きく減る。ジェイ・ポップ・バラードのハロー・プロジェクト・コンサートは私には苦痛だった。

その点、『アラビヨーンズナイト』は通路にメンバーさんが現れないのを除けばいつも通りのショーで、純粋に面白かった。そもそも声を出して観るものではないから、観客側にもそんなに制約はない。BEYOOOOONDSさんがつくづく恵まれているなと思うのは、一人一人を活かすためにしっかりと大人がプロデュースしている点だ。前提としてメンバーさんの魅力と努力がある。つまり彼女たちがはっきりした特技や個性を持ち、それを日頃から発信している。集団の採用や編成も含めて大人がちゃんと働いている。里吉うたのさんと平井美葉さんが二人でダンスを披露する場面があったり、清野桃々姫さんにラップ調の台詞があったりと、それぞれのメンバーさんが特徴を発揮しやすい内容になっている。

話の内容としては、現代に生きていた西田汐里さんと山﨑夢羽さんが別時代に飛ばされる。王様を満足させる物語を作れば元の世界に戻れる、失敗すると石にされてしまう。西田汐里さんが物語の生成に苦心する過程で、大事なことを学ぶ。物語はお客さんへのラヴ・レター。感動させるには受け手自身について書く。自分を重ねられる話を。

里吉うたのさんが劇を通して二の腕を露出した衣装でワキをたくさん見せてくださったので、好きになった。小林萌花さんがおへそを見せてくださるのも見所だった。あとは、島倉りかさんのお顔。単純に造形的に眼福であったのと、コメディックな場面での顔芸が面白かった。

私がいただいた席は、6列目の右端だった。一度、高瀬くるみさんがステージで横になる場面があった。角度的に私の席からちょうど長いスカートの中が見える位置だった。私の前にいたTKタケオ・キクチ的な柄の入ったデニム・パンツと長袖Tシャツを着用した紳士がおもむろに双眼鏡を取り出し、その部分を観察していた。瞬間を逃さないその姿勢は、正しい。圧倒的に正しい。(ちなみに、何かが見えたわけではない。)

視界が偏っていたのでもう一度、真ん中付近で観たいなと思った。けど、また観たいと思えるくらいでやめておくのがちょうどよいのだろう。7,800円するんだぞチケットは。軽い気持ちで買い足せる身分じゃねえんだお前は。収入が減ってるんだろ? 身の程をわきまえろ。

2020年10月18日日曜日

つばきファクトリー 小野瑞歩バースデーイベント2020 (2020-09-29)

男の子のファッションかぁ…。あまり考えたことなかったけど、シンプルが一番いいんじゃないかと思います。モノトーンでシャツを着てる感じとかがいいかな(※ファイン・ボーイズ誌の、男の子のファッションはどんな格好が好みですか? という質問に対する小野瑞歩さんの答え

どの半袖Tシャツにするかくらいしか服装について迷う余地のない、根がファッショニスタに出来ている私にはつまらない時期がようやく終わった。着用可能になった長袖。日光の吸収という点では(肌を覆う面積が増えるため)効率が悪いが、服の選択という点では喜ばしい季節。小野瑞歩さんの二十歳をお祝いする特別な場に着ていく服を選ぶにあたって頭をよぎったのは二点。一つが、ファイン・ボーイズに掲載された彼女の言葉。もう一つが、個別握手会で褒められたときの服装。2018年2月12日(月・祝)に「私服めっちゃ好き!」と小野さんが言ってくれたときに私が着ていたのが、エンジニアド・ガーメンツのワーク・シャツ。デニム生地。それを着用して家を出た。

いや、お前はまず男の子という年齢じゃねえし、仮に男性という言葉が使われていたとしても自分のことだと思うなよ。気持ちわりいな。お前みたいなのはさ、アイドルさんにとって男という分類に属していないから。お客さん。ファン。だから握手会で服を褒められたのも真に受けるなよ。向こうは好きになってもらうのが商売なんだから。たしかにそうなんだが、あまりそういうことを言われると『泣いちゃうかも』(モーニング娘。さん)。嬉しいモンは嬉しい。アイドルさんの言葉に『素直に甘えて』(Juice=Juiceさん)いたい。小野さんの制服衣装目当てで(男の子はみんなそういうの好きだから)チェキを撮りに行った2019年3月16日(土)には、エンジニアド・ガーメンツのアトランティック・パーカ(カラシ色)に、ニードルズのトラック・パンツ(ターコイズ)を合わせた。そのときは、可愛いと小野さんは言ってくれた。

また横浜に行くのか、と電車の中で思った。この数ヶ月で何回行っているんだ。7月12日(日)、7月22日(水)、8月8日(土)、8月23日(日)、8月26日(水)、9月5日(土)、9月13日(日)、9月16日(水)、9月23日(水)と新横浜。日産スタジアムでフットボール観戦。今日の会場はランドマーク・ホール。で、明日も横浜(今度は三ツ沢)にフットボールを観に行く。石井遊佳、『百年泥』読了。横浜駅。ハングリー・タイガーでダブル・ハンバーグ(ソースに乳製品が使われているので本当は避けないといけないが、たまにはいいでしょう)。食後のホット・コーヒーを飲み、財布を出そうとしたところで気付いた。ない。財布が。この店の支払いはパスモで出来る。チャージしたばかりだから残高はあるはず。問題はバースデー・イベント。身分証とファンクラブ会員証がないと入ることが出来ない。取りに帰るしかない。まあ、仕方ない。公演には間に合うのが不幸中の幸い。

振り出しに戻る。やっていることがスゴロク。スゴく耄碌。やっていることが子供、まるで小6。本日は有給休暇。夕方の公演まで優雅に過ごすはずが、自由時間をほぼ移動に奪われた。埼玉と横浜の二往復。交通費の重複。まるで財布を忘れておらず最初からパスモで払うつもりだったかのようなヴァイブスで食事代を払い、駅の改札へ。家に戻って財布を回収し、再出発。元町・中華街駅。仙台青森への遠征による疲れが少し残っている。

公演番号:01 開場/開演 16:15/17:15

会場はランドマーク・プラザの5階。見るからに独身異常という風体の紳士たちが散見される。自分もそう見られているのだろう。人を分散させるために入場時間が席によって何段階かに区切られている。自分の席はまだ入れない。無意味に近くをうろうろして少し時間を潰す。同じ階に飲食店がいくつかあったが、しょうもない店ばかり。こういう施設の店はショバ代が高いだろうし、どうしても割高になるよね。

入場。マスク着用、間隔を空けて並ばされるだけでなく、工場のように床に敷かれたマットまで踏まされる。手にスプレイを吹きかけられる。数あるコロナ対策儀式、感染拡大防止しぐさの中でも、他人にアルコールを噴射されるのは飛び抜けて気分が悪い。この不快感の源流は映画版『新世紀エヴァンゲリオン』のあの有名な場面に違いない。我々の世代は掌で液体を受け止めている描写に集団的なトラウマがある。

コロナ・バカ騒ぎ以降に再開したハロー・プロジェクトのファンクラブ・イベントでは、なぜかマスクだけでなくフェイス・シールドも着けさせられる。マスクに効果がない(もしくは不十分)と言っているのと同じ。もしそうだとするとフェイス・シールドだけでいいだろう。フェイス・シールド(全員に配布される)の装着方法を記した紙には、咳エチケットにご協力をお願いしますと書いてある。訳が分からない。マスクとフェイス・シールドを装着した状態での咳エチケットって何? くしゃみや咳がマスクとフェイス・シールドを貫通するの? だったらマスクもフェイス・シールドも無意味。咳エチケットだけでいいじゃん。全部やっときゃいいってもんじゃないだろ。ラザニア食ってチーズ・フォンデュ食ってグラタン食ってみたいなもんだよ! ―くりぃむしちゅーの上田晋也さんならそう呆れるに違いない。もちろん発声も立ち上がるのも禁止。縛りが多い。SMか! 刑務所の慰問コンサートを鑑賞する囚人のような気分。

口が悪すぎるだろ。アップフロントさんがこうやってイベントを開催してくれていること、今日の二公演にお前を当選させてくれたことに感謝しなさい。もちろん感謝しているよ。文を書くときってさ、文句の方が筆が進むんだよね。それでついつい。言い過ぎた。全体的にさほど不満はなく、ストレスなく観覧できたよ。客入れが一席おきなので視界がよく見やすかった。フェイス・シールドは自分で購入したものを使った。仙台のハロ・コンでご一緒した紳士から、配布されるフェイス・シールドは粗悪品だと聞いていた。彼にリコメンドしていただいたのがYAMAMOTO(山本工学)超軽量フェイスシールドグラスYF-800L サイズ:L(仙台の夜公演前に注文し、今朝7:47に置き配完了。すぐに発送されずやきもきした)。快適に鑑賞できた。開演前に大スクリーンで流れていたつばきファクトリーFCイベント(2019年のクリスマスのやつと、アロハっぽい衣装のやつ)の映像が眼福だった。そうそうコレよ、アイドルさんってのは。露出の多い衣装を纏い、笑顔で元気に歌って踊る。この映像がいいウォーミング・アップになった。日頃からこうやって大画面の高画質でアイドルさんを観たい。FCイベントの映像はせめてBlu-rayでドロップしてほしい。もういい加減DVDはやめてくれ…。

司会はここ最近ヘッズからのプロップスの下がり方が笑い事では済まない域に達している鈴木啓太。リアルなハロー・プロジェクト支持者で彼をディスっていない人はいない。キモいポエム。ハロー・プロジェクトさんを漫画『ワン・ピース』になぞらえたキモいブログ(私はページを開いたが読んでいない)。アイドルさんとイベントの司会で競演する度に、キメえ決めポーズで手前に陣取り、アイドルさんが奥で小さく写った写真を撮影し、嬉々としてインターネットにアップロードする図太い神経。軽く殺す鋭い韻で(K DUB SHINE)。肥大したエゴ。自分を裏方ではなくアイドルさんと同格の存在と勘違いした痛すぎる奴。

ステージに現れてすぐに、こんなに人いるんですね、といつもの笑みを浮かべつつ驚いている様子の小野さん。距離を空けないといけないからこんなに人が来るとは思わなかったそう。

二十歳になった瞬間は? 新沼希空ちゃんと関係ない連絡をLINEでしていた。9月28日23時59分に希空ちゃんからおめでとうというメッセージが来た。まだだよと送ったらそのメッセージを送った時間が0時00分だった。秋山眞緒ちゃんが2分くらいの動画を送ってきた。冒頭が歌詞の一部を瑞歩と眞緒にした替え歌で、その後に音楽に乗せて私のいいところを話してくれた。瑞歩ちゃんは可愛くて~みたいな感じで。

写真集のお気に入りの衣装は? 部屋着。黄色と紫。

4年前のキャメリア・ファイッ!でやった自己紹介ソングのアップデイテッド・ヴァージョンを披露。これを覚えれば私を攻略できると小野さんが言って、私はドキッとした。攻略って、何かそういうエー・ヴイのシリーズなかったっけ? 完全攻略だっけ? いま検索したら完全攻略だった。みずほchanを完全攻略、してみたいナ…。ナンチャッテ。来世に期待。まず当時の映像をスクリーンで鑑賞。幼い! 別人のよう(私は彼女がこんな頃から応援していてのか? まるでロリ・コンじゃないか?)だけど、今の面影もある。可愛い。映像に続いてステージの小野さんがリリックを更新した2020年版をキックする。始まってからすぐに止めて、手拍子を要求してやり直す。変更点は、嫌いな食べ物がなかったのがパクチーが嫌いになった。うどんより最近は蕎麦派になった。その二点。歌の最後の方で小野さんが吹き出してテンポがずれたが、我々の手拍子もそれに合わせて変調。その点を鈴木啓太に指摘された小野さんは、みなさん適応力がスゴいのでと言っていた。

蛇足だが、これから自己紹介ソングを歌いますと小野さんが言ったとき、俺らのネタで自己紹介ソングってのがあるからドキッとしたわと鈴木啓太が言った。まだ自己イメージはお笑い芸人のようだ。

佐藤優樹さんからのヴィデオ・メッセージ。おみずの可愛さを見習った方がいいよ、ツンツンしないで、と鈴木啓太から言われたことがある。何でそんなこと言われなきゃいけないのと思ったけど、でもたしかにみずほちゃんは(何か忘れたが三つくらいの擬態語)で可愛い。マサ歌うのイヤだ! となぜかハッピー・バースデーを歌うのを嫌がる佐藤さん。司会の上々軍団に一緒に歌うよう要求。鈴木啓太、それを部分的にハミングで歌う。

ミニ・コンサートは8曲。フルートで始まる『会えない長い日曜日』(藤本美貴さん)はどこかで聴いたことがあるなと思ったらソロ・フェスだ。実のところ私はソロ・フェスの映像をまだちゃんと観ていないので(リーガル、イリーガル、手段を問わずに観ろよ)生で聴けたのは嬉しかった。小野さん曰く、ソロ・フェスは無観客で、会社の人しかいなかった。みなさんがいるからあのときより楽しく出来た。あとは『私の心』(スマイレージさん)とか『消失点 - Vanishing Point -』(Buono!さん)とか『さぼり』(Berryz工房さん)とか。

オイオイとかみーずほ!とかやってもらいたかったけど、それは来年、再来年に取っておいて、今年は聴かせる曲でセット・リストを組んだという小野さん。(来年、再来年、という言葉が心強かった。)二十歳という節目なので、前にやって、(今日のが)完成形じゃないけどもっとうまく出来たんじゃないかなと思う曲を選んだ。『私のすごい方法』(松浦亜弥さん)では横に岸本ゆめのちゃんがいると思って歌った。締めが『帰ろう レッツゴー!』。帰るまでがバースデー・イベントですからね、と小野さん。しかし私はまだ帰らない。二公演目にも入る。

二十歳になってドレスを着てバースデー・イベントをやっているなんて想像出来なかった。ハロー・プロジェクトでデビューすることも想像出来なかった。こんなにたくさんの人に来てもらえている。今ここに立っていられることがどれだけ幸せなことか。これも応援してくださる皆さんのおかげ。これからも応援してほしい。という感じの結びの言葉。

終演後、出口付近で立ち止まる紳士たち。ココで溜まるな、他の場所に行ってくれとエスタシオンの青年たちが追い出す。仮に談笑するとしてココでやろうが別の階でやろうが野毛の飲み屋でやろうが同じ。とにかくココで万一何かが起きたら責任を問われる可能性があるから、どこかに行けと。自分(自社)がババを引きたくないだけ。そんなくだらない保身はやめて、世界全体を大きなコヴィッド・ナインティーンのクラスターにしよう。

…我々は、「感染者が出たときに組織に迷惑をかけないようにするための対策」をやっているんですね。感染症はもうほとんど関係なくなっている(藤井聡さん)(『コロナ「以後」の大暴落時代』『別冊クライテリオン「コロナ」から日常を取り戻す』)

公演番号:02 開場/開演 18:45/19:45

外をぶらぶら歩いて時間を潰す。次々に電光の色が変わっていく観覧車を、9月7日(月)に機種変更したiPhone SE (2nd generation)で撮る。光が潰れずクッキリ見える。iPhone 8と比べて画質の向上を実感する。

私は夜公演ではフェイス・シールドを着けなかった。エスタシオン係員さんの言うことをよく聞くと、2列目までは必ず着けてください、それ以外の方はご協力をお願いしますと言っていたんだよね。だから実は3列目以降は任意なんだよ。昼は7列だったんだけど、私より前でも着けていない人はいた。でもまあせっかく買ったわけだし、初めてだからと思って大人しく従って様子を見た。夜は16列。ほぼいちばん後ろ。ステージから何メートル離れてると思うんだ。さすがに(よく聞くと)任意のフェイス・シールドをこの位置で着ける理由なんかない。

写真集の話。撮影がすぐに始まった。メイクして衣装を着たらすぐにカメラ・マンさんが撮り始めて戸惑った。そうしたらぜんぶ教えてくれた。こっちを見てとか。勉強になった。目線の外し方とか。やりすぎると白目になる。カメラ・マンさんと自分の間に岩があった。カメラ・マンさんが撮影に夢中になって岩につまずいて一回転した。カメラは守ったのが流石。カッコいい。そのまま痛いのを見せずに平静を装って撮影を続けているのが面白くて笑いそうだった。写真集は前から密かに出したかった。

自己紹介ソング。4年前のオリジナルでは間奏でフルートのアレンジが変則的になる箇所があった。昼公演ではそこを小野さん自身が把握しておらず(ステージで映像を観てびっくりしていた)再現しきれていなかったが、夜公演ではしっかりと再現していた。ネギをそんなに食べなくなったし、うどんもアレだから食べなくなったと言っていた。アレって太るからってことかな? 小麦は穀物の中でも特に血糖値を上げやすいからね。小野さんは写真集撮影に向けてお菓子を断ったり、三日間のファスティングをしたりと、相当に気を使っていたから、その過程でうどんを食べなくなっていても不思議ではない。

『会えない長い日曜日』(藤本美貴さん)では最初のフルートがうまくいかず、初めて間違えた~! と歌い出す前にマイクに乗せて残念がる小野さん。

『さぼり』(Berryz工房)をまだ歌っていないのに間違えて曲名を言ってしまう。後で歌うとは言ってないじゃないですか~。自らを落ち着けるためにデコルテのあたりをポンポンと叩く音がマイクに乗って聞こえた。

公演を通して、ヘッズの反応は昼よりもよかった。昼に入って要領が分かっている人が一定数いるからだろう。たとえば自己紹介ソングでは初めから手拍子が起きた。爆笑問題の太田光さんも、お笑いのショーは昼公演は受けないのが常と言っていたが、同じ理由なんだろうか。

鈴木啓太は本当に二流だなと私が思ったのが、小野さんとずっと向き合って話をしていたこと。相手を向いて話すのは礼儀としては正しいのだが、もっと客席に向いてほしい。いや、別に鈴木啓太はどうでもいいんだが小野さんをもっとこっちに向かせてほしい。鈴木啓太と小野さんの個別お話し会のような場面も多々あった。ただ彼が小野さんとイチャイチャ話しているだけの時間が長く、イライラした。もちろん、百パーセント彼が悪いとは言わないが、一応は小野さんより年上で芸歴も長いのだから、彼がもっと導いてあげないといけない。アマチュア。ただの気のいいお兄さん。これではメンバーさんも伸びない。

夜公演のハイライトは何と言っても本人にサプライズで女性スタッフが代読した、お母様からの手紙。小野さんが締めのコメントを言っている途中だった。バースデー・イベントで歌いたい曲リストは作っている。それは来年以降に回して、しっとりと?聴いてもらうセットリストにした。4回やってきて、声が出せないバーステー・イベントをやるのが私は初めて。退屈じゃないかな、みんな寝ちゃわないかな、と思っていたけど、皆さんがペンライトや拍手で応援してくれて気持ちが伝わった。皆さん、優しい眼差しをお持ちで…。皆さんは優しいですよね…と言ったところで鈴木啓太が右から出てきて、手紙のサプライズを発表した。

私が記憶しているかぎりでは、大体こういう内容だった:小学生の頃、持久走で体調が悪くてうまくいかず泣きながらゴールした。ハロプロ研修生に入ると決まったときは喜びよりも不安が大きかった。それまでやらせていた習い事と違い、夢が叶う可能性がある場所だったので。小野家の次女としてお姫様のように育てられてきた瑞歩で大丈夫だろうかと心配だった。でもステージで瑞歩が見せる、家では見せたことのない笑顔を見て、ずっと見ていたいと思った。ハロ・コンで失敗して朝まで練習したことや、研修生発表会で失敗して毎日何十回も歌って、眠っているのに曲の動きをしていたことがあった。スタッフさん、メンバー、そして何より応援してくださる皆様に感謝。ファミリー席から見るエメ・グリは家族の誇り。

最初の宛名がみーたんだった。手紙の代読が終わると小野さんは、何でみーたんって書くの? 後で怒ろう、と口を尖らせていた。ハロ・コンで失敗して朝まで練習したのは覚えていない。覚えていないのは今こうやって楽しく活動出来ているからだと思う。つらいことばかりだったら根に持って覚えていると思う。今を全盛期にしたくない。21、22と今を超えていきたい的なことを言って、終わり。しばらく手を振ってから、あ、と思い出して、おやすみずほ! とシャウトして小野さんは捌けた。お見送り会はなし。今年も無事に小野瑞歩さんと同じ空間でお誕生日をお祝いすることが出来てよかったが、欲を言えばご本人に直接おめでとうと伝えたかった。せめて文字にしておこう。小野瑞歩さん、二十歳おめでとう。

2020年10月11日日曜日

The Ballad (2020-09-27)

エア・ウィーヴは最高(ヤクブーツはやめろのフロウで)。家に欲しい。毎日エア・ウィーヴで寝たい。とぽすのプレミアム・ルームに採用されているエア・ウィーヴ四季布団。家の布団で寝たときよりもスッキリした目覚めを得られる。泊まる度にそう実感するから偶然や思い込みではない。検索してみたら約十万円。間違いなく値段分の価値はあるが、在籍する会社による素晴らしいコスト(人件費)削減の影響を真正面から食らっている今、おいそれと買うわけにはいかない。

朝の大浴場を堪能。チェック・アウト。仙台駅。新幹線。改札内のコンヴィニエンス・ストアでレーコーを購入。近くのソファで飲む。BOOK EXPRESSで石井遊佳さんの『百年泥』を購入。移動中に読む。仙台9時5分発、新青森10時52分着。人生で最初で(十中八九)最後の青森県。事前にジョルダンで検索したかぎり、新青森駅から宿とコンサート会場がある青森駅までは在来線で5分で行けるはずだった。が、本数が異常に少ないらしく、今の時間だと千何百円もする特急しかない。バスに乗る。バスもそれを乗り過ごすと当分なさそうだった。ふるかわという停留所で降りるまでほぼ老人と病院しか目にしなかった。たまたまバス停のすぐ近くに今日の宿があった。まちなか温泉 青森センター・ホテル。荷物を預ける。

11時半頃、今日の会場、リンクモア平安閣市民ホールの場所を把握。さて、昼食。のっけ丼というのが名物らしい。好きに具を乗っけられる海鮮丼。株式会社青森魚菜センター本店というのがのっけ丼の拠点のようだ。一度は並んだ。観光客的な人がこぞって来店している雰囲気があったのと、中を覗くと具を乗っけるときに毎回色んな紳士と対面して頼まないといけないっぽい(実際のところは分からない)のとで、億劫になってやめた。朝市寿司という店に入りかけたが、Googleのレヴューで評価が異常に低い。いくつか読んでゾッとした。ふらっと入らなくてよかった。最終的に居酒屋弁慶に入った。弁慶海鮮丼1,480円とサッポロ黒ラベル(瓶)480円。税込み2,156円。高すぎず、味も悪くはなかった(※1)。

私は青森県を訪れることに少し不安があった。お隣の秋田県では他県からのお客様お断りという貼り紙を出している飲食店が多いらしい(※2)。政府がGO TOキャンペインで全国的に旅行を促進しているにも関わらず。呪術信仰に頼って生きているような人々が、2020年の日本にもまだ一定数はいるのだろう。そうでなければそのような貼り紙を掲示するという発想には至らない。Twitterを見るかぎり、田舎ほどコロナ・バカ騒ぎとの親和性が高く、神経質になっている人が多そうな印象。仮に秋田県ほどではないにしても、よそ者が行ったら白い目で見られるのではないか。コンヴィニエンス・ストアで支払いの際にPASMOでと口を滑らせようものならその場で地元民に取り囲まれ、殴る蹴るの暴行を加えられるのではないか。

それは杞憂だった。他県民を排除する飲食店は見当たらなかった。通行人のほぼ全員がマスクを着けてはいるものの、ストリートには刺々しい雰囲気はなかった。青森駅前のパサージュ広場ではバンドの生演奏を無料で観覧できる催しが開かれていた。コンヴィニエンス・ストアでPASMOを使っても殺されなさそうだ。秋田は知らん。

開場:13時 開演:13時45分

青森公演に出演するメンバーさんは

  • 石田亜佑美さん
  • 森戸知沙希さん
  • 小野瑞歩さん
  • 西田汐里さん

これまでのバラード・ハロ・コンは8人が標準だった。4人となると、単純に考えて一人あたり倍の出番が期待できる。人数が減ったからといってコンサートの尺が半分になることはないだろう(※3)。コンサートにおける小野瑞歩さんの密度が12.5%(8人のうちの1人)から25%(4人のうちの1人)になるということだから、マジ興味ある。さすがに埼玉から青森までこのために移動するのは躊躇するが、前日に仙台に行ってそこから移動すれば効率がいいのではないか。ついでという感じで(※4)。そう考えて仙台と青森の公演に申し込んだ。

昨日の仙台公演を鑑賞して痛感したのは、とにかく単純に歌が上手なメンバーさんが何人かいないと成立しないということ。曲はバラード。歌うのは一人。演出は最小限。生演奏ではなくカラオケ。歌一本の勝負。昨日は井上玲音さんの歌声には何度か唸らされた。彼女がいなければどうなっていたことか…。その意味で、今日は西田汐里さんがいるのが楽しみだった。私は彼女を2017年の演劇女子部『僕たち可憐な少年合唱団』で初めて知り、その声と歌に魅了された。そのときに私はこう書いた

彼女が一人で歌うとそこは西田汐里ワールドになる感じがした。

そこなんだと思う。歌が上手なとさっき書いたけど、より正確に言うと、歌で自分ワールドを作れる人。それがソロ歌唱のコンサートで輝けるメンバーさんの条件。音程とかリズムとか声量とかはもちろん大事だけど、もっと大事なのは、歌を通して自分のヴァイブスを表現し、会場中を包み込むこと。文章でもさ、誰々節ってのがあるわけじゃない。同じ内容や題材を書いたとしても。歌にも近いことがあると思う。

今日の出演者では、西田汐里さんが自分のワールドで会場を満たせる唯一のメンバーさんだった。声ひとつで、歌ひとつで観衆を引き込む強さは井上玲音さん以上かもしれない。ハロー・プロジェクトのメンバーさんが皆それぞれ魅力的なのは言うまでもない。しかし殆どのメンバーさんにとって、歌一本のショー・ケースというのはその魅力を存分に発揮できるフォーマットではない。かなりのハンディキャップを課せられた状態。ハロー・プロジェクトはみんな歌が上手いと言っても普段は集団で踊りながら細切れに歌っている。それぞれがプロのソロ歌手として訓練されてきたわけではない。

西田汐里さんは冒頭のコメントで、今日の四人では私以外の三人が昨日の仙台公演に出演していた。私だけ仲間外れ。ずるい的なことを言って笑いを誘っていた。が、すぐに歌だけでなくトークでも機転の効いたコメントを連発し、存在感を示した。ステキだったのは他のメンバーさんの歌唱を褒めていたこと。森戸さんの裏声が好きで、私も出来るようになりたいだとか(出来てます、と森戸さんは恐縮していた)、小野さんは歌うときに表情を作っているから私も見習って顔を動かしたいとか。

昨日は石田亜佑美さんが務めた司会進行役が今日は森戸知沙希さん。いい味を出していた。何度も噛みまくって、あわあわしている感じの仕草。和む。青森のことを調べてきたという森戸知沙希さん。地元の人に挙手を呼びかける。少数…。と笑う。ピラミッドがある。工藤さんが多い。イギリス・トーストが有名。それを作っているのも工藤さん。200種類以上。他にも調べたがブログに書く。

一人四曲になって私が嬉しかったのは、小野瑞歩さんの『カブトムシ』を聴けたこと。私はそこまでジェイ・ポップを知らない(それも私がこのコンサートをさほど楽しめない一因かもしれない)が、aikoさん、椎名林檎さん、宇多田ヒカルさん、Dragon Ashさんが世を席巻していた頃は追っていた。コンパクト・ディスクをよく買ったり借りたりしていたし、やまだひさしさんの『ラジアン・リミテッド』(TOKYO FM)を聴いている時期もあった。その後はヒット・チャートの世界から離れ、日米のヒップホップをディグった。aikoさんのことはデビューから『暁のラブレター』くらいまでは追っていた。オールナイト・ニッポンは初回から毎週聴いていた。『カブトムシ』は私がリアル・タイムでよく聴いた数少ないジェイ・ポップ曲なので、2020年になって小野瑞歩さんに歌ってもらえるのは感慨深かった。…って、書いて気付いたけどそれがまさに私が揶揄していた接待カラオケやんけ。

トーク・セグメントでは昨日の二公演に続いて今日も秋の味覚の話だった(※5)。飽きた。聞くのがきつかったので、メンバーさんには出来れば口を滑らせておちんちんと言ってほしかった。今日のメンバーさんだったら誰が言っても嬉しかったな。西田汐里さんはそういうの得意そうだよね。コラー、それは違うでしょ。たしかに口に入れるものではあるけど(※6)…と誰かが突っ込むまでの流れを定番にすればいい。そういうお笑い芸人さんでいう営業ネタを仕込んでもいいんじゃないか。そうでもしないとさ、寝ちゃうよこのコンサートは(※7)。見方によっちゃ、アイドルさんの子守唄で眠れる稀有で贅沢な場ではあるけど。

小野瑞歩さんがこういうことを言っていた:このツアーを通して、自分の想像力のなさを発見した。割り当てられているのが恋愛の曲ばかり。同じ好きという言葉でも色々な意味がある。普段は、歌詞を解釈するときはつばきのメンバーと話して(メンバーが言うことに)そうだよねと言っている。いざ自分で考えるとなると難しい。もっとたくさんドラマや映画を観た方がいいのかなと思った。

ーこのコメントはちょっと可笑しかった。なぜなら他のメンバーさんは恋愛を経験済みだけど自分(小野さん)は未経験だから分からない的な含意が感じられたからである(おそらくご本人にそういう意図はなかっただろうが)。

ファミリー・マート青森駅前店でアイス・コーヒーを買い、駅前の広場に腰掛けて飲んだ。夜公演まで時間があったので商店街を散策していると、ふとパサージュ広場から流れてくる音楽が気になった。広場に入ってしばらく聴いていると、どんどん引き込まれていった。50代、60代とおぼしき紳士たちの4ピース・バンド。V-projectさん。木訥な津軽弁の曲紹介。淡々と繰り広げられるドープな演奏。思わず身体を揺らす私。さっきまでのバラード・コンサートになかったグルーヴ。ハロー・プロジェクトよりもドープなプロジェクトをまさかココで見つけるとは。おかげで目が覚めた。夜公演を堪えるだけの活力を補給することが出来た。楽器が弾けるジイさんはカッコいいよなあ。

開場:16時半 開演:17時15分

係員の若者によるアルコールのスプレイ噴射が雑で、服にかけられてイラッと来た。服にかけんじゃねえよと声に出そうになったが、みっともないので抑えた。我々は常に、いい歳をして遠方まで少女を観に来ているという弱みを握られている。

森戸知沙希さんが喋りで醸し出す独特の空気は夜公演でも健在。みなさんびっくりしましたか? 私こんなんなんですと彼女が言うと、ヘッズはさらにドッと笑った。彼女が笑いを堪えながら披露した石田亜佑美さんに関するちょっとしたエピソードが面白かった。曰く:(おそらく昼公演と夜公演の間に)今日の四人で買い物に行った。青果市場のりんごが東京で買うよりも安い。まあ私は東京の人間じゃなくて栃木の人間なんですけど。私は三つくらい買ったんですけど、石田さんは五個も買った。五個で420円。石田さんは煎餅のみみも買っていたけど、煎餅は買っていなかった(※8)。

西田汐里さんはつばきファクトリーさんのYouTubeチャネルにドロップされた小野瑞歩さんの『I LOVE YOU』を寝る前に聞くことがあるので、生で聴けてよかったと言っていた。小野さんはそれを聞いてとても喜んでいた。

9月29日(火)に二十歳になる小野瑞歩さんにとって、十代最後のコンサートだった。小野さんがそう言うのを聞いて、そういえばそうだなと私は気付いた。彼女の十代の終わりをこうやって見届けることが出来たという点において、青森まで来た意味はあった。というか、そう自分に言い聞かせる。当然、お誕生日当日のバースデー・イベントも観覧する。

私の前にいた五十代前半くらいの紳士がペン・ライト二本を持ってコンサート中ずっと妙な手首のスナップを利かせた指揮者的なキモい動き(なおリズム感ゼロ)をやり続けていて気が散った。こいつもそうだけど、中には両手で計8本のペン・ライトを掲げているキチガイもいた。メンバーさんの色に光らせたペン・ライトを振る以外の音楽の聴き方を知らないんだろ。だからバラードだろうが何だろうが常にペン・ライトを振るし、ペン・ライトの数は多ければ多いほどいいという単純な思考しか出来ない。手に負えない紳士たち。短髪、ペン・ライト複数本所持、小太り、フィーチャー・フォン利用者。というかさ。メンバーさんはこのコンサートでヘッズが自分の色のペン・ライトを光らせてくれるのは表向きには嬉しいと言うじゃん。別にその言葉に嘘もないだろうとは思う。けど、リズムを取る上で邪魔じゃないのかな? 田村芽実さんのコンサートだと、ペン・ライトは禁止なんだよね(※9)。歌を聴かせるというコンセプトとは相性が悪いんじゃないだろうか。

夜公演後の夕食は、この遠征を締めくくる意味でもいいモンを食おうと思って南大門という焼肉店に入った。食いながらiPhoneでDAZNを開き、19時キックオフの柏レイソルさん対横浜F・マリノスを観た。


※1 後から海鮮丼の写真を見返して、私がアレルギーのある鯛が入っているのに気付いた。普通に食べてしまった。

※2 もちろん、統計データとしてではなく、個別の例としてそういう報告を見ただけなので、全体としてどうなのかは分からない。

※3 公演の数日前には各メンバーさんが4曲ずつ(8人のときの2倍)ソロで歌うことが明らかにされたが、ファンクラブ先行受付時点では発表されていなかった。

※4 日本地図を見れば分かるが、ついでに移動する距離ではない。

※5 石田亜佑美さんはサツマイモが好きで、味噌汁に入れるのが好き。サツマイモや里芋が入ったサツマ汁が好き。西田汐里さんは炊き込みご飯。おこげが好き。全部おこげになってほしい。小野瑞歩さんは梨が好き。夏から食べていたけど秋が旬なので秋の梨をたくさん食べたい。

※6 昔のくりぃむしちゅーさんのオールナイト・ニッポンで、ニコチンとポコチンの違いは何ですか? というリスナーからの質問に上田晋也さんが答えようとして、ニコチンは口に入れる…いや、ポコチンも口に入れるな。ニコチンは中毒性がある…いや、ポコチンも…となったのが面白かった。

※7 昼にビールを飲んだせいもあるのか、昼公演はちょっとだけ寝た。

※8 可笑しさを理解するには、石田亜佑美さんが倹約家として有名である点と、森戸さんにとって石田さんは先輩であるという文脈を知っておく必要がある

※9 田村芽実さんは以前Instagramのストーリーで、申し訳ないけど私のコンサートでペン・ライトはやめてほしい的なことを書いていた。で、その効果もあるのか実際に彼女のコンサートでペン・ライトを振る人はいない。

2020年10月10日土曜日

The Ballad (2020-09-26)

百五十万円。これは2020年にコロナ・バカ騒ぎ(※1)による業績悪化を理由に勤め先が実行した休業、賞与の削減、残業禁止によって私がこれまでに失った収入である(※2)。年末には二百万円を超えるのが確実だ。仮にまったく同じ消費活動をしていれば銀行の預金残高が今よりも百五十万円多かった。そう考えると少しつらくなる。もちろん皆さんご存じのように根が浪費家に出来ている私にそんな堅実な貯金が出来ていた可能性は限りなくゼロに近い。理論的にはあり得たというだけの話である。しかし、好きな商品や娯楽に自分のお金を使うのと、そのお金がそもそも収入として存在しないのとでは大きな違いがある。コロナ・ヴァイラス自体には私も、親も、同僚も、知人の誰もが罹患していない。明らかな不摂生、不養生をしている者も含めてである。もういい加減、理解しないといけない。日本国民の殆どにとって問題はコロナ・ヴァイラスではなくコロナ・バカ騒ぎだ(※3)。ステイ・ホーム(笑)、自粛(笑)といった茶番に付き合わされている間に、多くの人々が職を失った。収入が減った程度で(今のところ)済んでいる私はまだ恵まれている。

悪いことばかりではない。コロナ・バカ騒ぎの副産物として、在宅勤務を今後も続けられることになった。これは大きな勝利である。通勤時間がなくなった。片道一時間半なので、一日三時間のゆとりが生まれた。朝は心ゆくまで寝られるようになった(もちろん一定の時間までには起きないといけないが、夜更かしをしなければ目覚まし時計は不要)。労働後のジムも格段に行きやすくなった。終業時点で会社にいるという物理的制約がなくなったからだ。

仙台と青森でのハロ・コン(後述する理由により今回のコンサートをそう呼んでいいのか分からないが)に申し込んだ。仙台はともかく、青森は日曜日。翌日は労働。日曜日のうちにお家に帰ってくるのは難しい(調べてみたら不可能ではなさそうだったが、ギリギリだった)。でもインターネットにつないでラップトップをいじれる環境があれば業務が成り立つ今の状況なら何とかなる。日曜は青森に一泊して、月曜の午前は新幹線で労働に従事することにした。新幹線は、通常であれば選択肢ではない。高すぎる。トク50とかいうキャンペインで半額になっていたから新幹線にした。宿はGO TOキャンペインで35%引きになった(※4)。ありがたいが、ここで得をした金額を遙かに上回る額の収入が減っていることを忘れてはいけない。

9月26日(土)
やまびこ(全席禁煙)125号
大宮(埼玉)(8:06)~仙台(9:38)
5,170円
駅前人工温泉 とぽす 仙台駅西口
[男性専用]プレミアムルーム
2,860円

9月27日(日)
はやぶさ(全席禁煙)5号
仙台(9:05)~新青森(10:52)
5,610円
まちなか温泉 青森センターホテル
[禁煙]シングル(ベッド幅110cm)天然温泉付ホテル
3,055円

9月28日(月)
新青森(8:29)~大宮(埼玉)(11:18)
8,360円

仙台には労働の出張でたまに来ることがあったが、ここ半年以上は足を踏み入れていなかった。コロナ・バカ騒ぎを受けて会社で出張が原則禁止になった。好きで出張をしていたわけではないので、それは別にいい。だが、仙台の街は少し恋しかった。何があるというわけではないが、駅前の商店街が好きなんだ。お気に入りのカプセル・ホテル、とぽす。お気に入りの飲食店、福光。前者はこの旅で泊まることが出来るが、後者は未だにコロナ・バカ騒ぎの余波で休業を続けている。この時期になってまだ開いていないのは心配になる。どうか廃業だけはしないでくれ。お宅の大冒険ハイボール、枝豆、ハラミをまた思う存分味わいたいんだ。

夏場はダニ(という確証はないが、たぶんそう)に苦しまされる。彼らに睡眠を妨げられることなくこの季節を乗り切ることが出来ない。毛布やシーツを定期的に洗濯し、ダニトリーゼを配備し、ナチューヴォを噴射してもなお、腕や脚に出処不明の赤みを帯びた跡が発生する。新幹線の切符は勢いで購入したため、時間の検討が不十分だった。5時半に起きないと間に合わないとジョルダンの乗り換えアプリで検索して知ったのが昨夜。しかも最近、寝付きが悪い。一抹(イチモツではない)の不安。眠れないまま布団で目を瞑る→もう朝かと思い起きると24時→また寝る→5時20分に正式な起床。酷い睡眠だったが、寝坊はせずに済んだ。

早めの時間に仙台入りした私は、とぽすに荷物を預け、タリーズ・コーヒー仙台中央通り店でアイス・コーヒーを飲み1時間半ほどダラダラした。(何だそれは。このために私は5時20分に起きたのか?)BIKINI TAPA+でモーニング(ここのホットドッグとお代わり自由のコーヒーが仙台で一番のモーニングだと思う)をと思ったが、同店舗が入居するエスパル仙台が短縮営業のため閉まっていた。10時からの営業。いくら仙台とはいえ、地方都市はまだ東京ほどには元に戻ってはいないのだろう(※5)。

昼食を摂る店を物色し商店街のいちばん奥まで歩いたあたりで、石田亜佑美さんのケツを追いかけて(※6)東京から駆けつけた紳士(金澤朋子さんのケツを最も熱心に追いかけてらっしゃる)が仙台に到着したとTwitterに投稿なさっていた。落ち合うことに。今野珈琲。色んな豆のコーヒーを出すこだわりの店。タバコ吸いながらコーヒーの香りが分かるんですか? 分かります。でもタバコと混じり合っていると思います。昼食はあゆみ書店の近くにあるハロー・ヴェトナム。私は牛肉の乗ったフォーを食い、ネプ・モイ(※7)を飲んだ。

開場:13時半 開演:14時半

いつものハロ・コンとは何もかもが違う。モーニング娘。さん、Juice=Juiceさん、つばきファクトリーさん、アンジュルムさん、BEYOOOONDSさんといった集団は登場しない。それらの集団に所属するメンバーさんが個人としてステージに立ち、ソロで歌を披露する。彼女たちが歌うのはハロー・プロジェクトではなくジェイ・ポップの名曲。ハロー・プロジェクトさんのメンバーさんが一堂に会するのではなく、8人もしくは4人ごとに分かれ、全国各地に散る。同じ日に複数の地方で公演が行われているので、すべての公演に入るのは物理的に不可能。今日、仙台に帯同しているメンバーさんは8人。

  • 石田亜佑美さん
  • 森戸知沙希さん
  • 佐々木莉佳子さん
  • 井上玲音さん
  • 浅倉樹々さん
  • 小野瑞歩さん
  • 高瀬くるみさん
  • 里吉うたのさん

私が仙台サンプラザ・ホールに来た理由である小野瑞歩さんは言うまでもなく、それ以外に『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)メンバーさんが一人もいない。もしハロプロ・ソートをやったら比較的上位に来るメンバーさんばかり。明日の秋田公演に関しては出演者が四人だけなので小野瑞歩さんを長い間観ることが出来そうだ。中高年のオジサンが主流を占める観客に対する接待カラオケと揶揄したくなるコンサートのコンセプトを私はあまりよく思っていなかった。ただ、ここまで本腰を入れてツアーを続けられると、最低でも一度は観ておかねばという考えが生まれた。一度も観ていないのに何かと理由をつけて避け続けるのはワックである。

私にとって仙台サンプラザ・ホールに入るのは初めてだった。何となく先入観として、中野サンプラザと同じようなつくりなのかと思っていた。名前が同じなので。そんなことはなかった。収容人数は中野サンプラザと同等らしいが、その割にこじんまりとしていて、後ろでも上の二階でも観やすそう。ステージとの距離感とか、何となく雰囲気として三郷市民文化会館に近い。

来場者数を絞るために一席おきにしかチケットが販売されておらず、人の密集を避けるためにグッズの販売もされていない。いつものハロ・コンらしい活況やお祭り感はなかった。この会場は三階まである。一階は(一席おきに)埋まっていたけど、二階にはやや空席があり、三階はせいぜい一ダースくらいしか観客がいなさそうだった。最大でも収容人数の半分しか観客を入れないように制限しているにも関わらず、その定員すら埋まらない。地元出身の石田亜佑美さんと佐々木莉佳子さんがご出演なさる公演の割に、少し寂しい客入りに思えた。

コンサートを実際に鑑賞すると、チケットが完売しないのも納得できた。二、三曲目くらいで、この感じがずっと続くのか…きついな、と思った。別に誰が悪かったとか、そういうことじゃない。メンバーさんそれぞれが、割り振られた曲を自分なりに一生懸命、表現しようとしているのは伝わってきた。それはよく分かった。よかったはよかった。でも、日頃いくら誰々の歌唱力がスゴいなんてファン同士で言っていても、実際にこうやって個人の歌唱を切り出して見せられると厳しいなというのが正直な感想。アイドルさんという下駄なしで一人の歌手として辛うじて聴けたのは井上玲音さんだけ。全体的に、右の耳から入って左の耳から抜けるような歌の連続だった。身体の中に入ってこない。心に届かない。(非常食としてなら拍手を送れる。何か事が起きたら大袈裟に報道されスケープ・ゴートにされかねない困難な状況でも何とかして公演を遂行するアップフロントさんの姿勢は賞賛に値する。)

森戸知沙希さんの二の腕と、高瀬くるみさんのいわゆる絶対領域(スカートの裾と靴下のてっぺんの間にある脚)を鑑賞できたのは数少ない収穫。衣装はご本人たちが選んだそうだ。この二人は理解(わか)っている。それ以外は…。基本的にどれもステージに映えない。その辺の仙台ストリートを歩く服としてはちょうどよさそうだが、一人でステージに立つ晴れ着としては冴えない。値段もお手頃そう。先述のお二人以外はほぼ肌の露出が皆無。かといって曲のコンセプトに合わせたわけでもなく。ファッション好きで知られる佐々木莉佳子さんがドレープのあるシャツとぶっとい半端丈パンツで雰囲気のあるシルエットを作っていたが、そういうのが好きなんだねという以上の感想がない。

数ヶ月前ならまだしも、世の中がだいぶ普通に回るようになりつつある今でもこのソロ歌手ごっこ巡業をありがたがっている人々は、ハロー・プロジェクトだったら何でもいいのかと思ってしまう。ごめん、ちょっと言い過ぎた。非難をしたいわけではない。純粋にどこがいいと思っているのか興味がある。おそらくこのツアーを心から楽しんでいる人たちは、ハロー・プロジェクトの見方が私とはだいぶ違うのだと思う。繰り返すが、何をいいと思うかはみんなちがって、みんないい。だが、今後ずっとこればかりをやられたら私は静かにハロー・プロジェクトさんから離れる。

小野瑞歩さんが歌った後にステージに残らないといけないのに間違えて左から捌けようとして、出てきた石田さんに止められ、さらに立ち位置を間違えて修正し、恥ずかしそうに笑っていた。間違えてやんのという感じで佐々木莉佳子さんが笑うという、普段はなかなか見られない心温まる交流があった。緊張せずに歌えましたと言おうと思っていたんですけど、緊張しました、と小野さんが言うと、それが曲と相まってよかったよと石田さんがパイセンらしく優しい言葉をかけていた。

最後の曲(本コンサート唯一のハロー・プロジェクト曲『ふるさと』)では私の席からだと高瀬くるみさんに隠れて小野瑞歩さんが見えなかった。その腹いせに私は高瀬さんの絶対領域を双眼鏡でひたすら凝視した。やられたらやり返す、倍返しだ。

終演後、石田亜佑美さんのケツを追いかけて来た紳士と合流。彼は序盤の数曲で寝てしまったという(※8)。これに何度も入る俺の異常性が分かったでしょう、と彼はどこか誇らしげに微笑んだ。私は頷くしかなかった。メンバーさんがまんこを見せてくれるわけでもないのにこんなつまらないコンサートに足繁く通うのは本物の好事家しかいない。タピオラというサテンでレーコー。先ほどの今野珈琲といい、石田亜佑美さんのケツを追いかける紳士の案内。よくまあ生活圏でもないのにタバコの吸えるサテンをいくつも知っているなと感心する。私が飲食店を探すとき卵や乳製品に神経を尖らせる(※9)ように喫煙者はタバコの吸える店や空間を血眼になって探すようだ。

開場:17時15分 開演:18時15分

せっかく二の腕を出している森戸知沙希さんだが、ワキを見せてくださらないのがさっきの公演では不満だった。しかしよく見たら最初の全員曲(『365日の紙飛行機』)で腕を何度か上げて見せてくださっていた。他には高瀬くるみさんが絶対領域だけではなくデコルテもふんだんに見せてくださっているのに今さら気が付いた。昼公演では見落としていた。

トーク・セグメントでは、昼もそうだったんだけど(※10)、秋の食べ物は何が好きかというお題だった。里吉うたのさんがサツマイモのことをおいもさんと言って、メンバーさんたちがざわめいた。その後に森戸知沙希さんと石田亜佑美さんもおいもさんが…と被せていた。石田亜佑美さんが、私は芋羊羹が好きだけど、変に砂糖で甘くしたのではなくサツマイモ自体の味が楽しめるのが好きだと言った。すると私の前に座っていた肥満男性がうんうんと頷いていた。私は思わず頭の中で突っ込んだ。いやいや、あんたは砂糖を控えとらんやろ。これは私にとってこの夜公演のハイライトである。

コンサートが半分を折り返したところで、まだ半分あるのか? と私は絶望混じりに驚いた。もうお腹いっぱい。終わりでいい。だんだん苦痛になってきた。ただ時間をやり過ごす。消化試合。評価しない。超場違い。わざわざ新幹線で赴いた仙台。交通費、チケット代、宿泊費を支払い。

メンバーさんは口々に、普段は一人で一曲を丸ごと歌うことがバースデー・イヴェントくらいしかなく、それは集団の一員として歌割りをもらい部分的に歌うのとは異なると言っていた。里吉うたのさんは、このツアーを通して歌うのが楽しくなったと言っていた。そういった感想を聞いて私がしみじみ思ったのが、彼女たちが日頃やっているのは歌手ではないんだな、ということ。田村芽実さんも8月1日(土)のインスタ・ラジオで言っていた。ハロー・プロジェクト時代に身に付けたワン・フレーズに命を込める歌い方では、最初から最後まで歌うとぶつ切れに聞こえてしまうと。どちらがいい悪いではなく、アイドル集団で歌い踊るのと、一人の歌手として歌うのは、別モン。違うことにチャレンジしているのだから、質が伴わないのは当たり前。今日に関しては井上玲音さんだけは声の乗り方からして違った。他のメンバーさんは、全然悪くはないんだけど、心まで掴まれなかった。

長いスカートの下で膝がガガガガッて震えていた、と里吉うたのさんは明かした。一人でステージに立ち、一人で歌と向き合い、最初から最後まで歌い切る。緊張と試行錯誤。それは今後の彼女たちの活動に生きるだろう。でもそれはこの期間に習得した個人の技能をモーニング娘。さん、Juice=Juiceさん、つばきファクトリーさん、アンジュルムさん、BEYOOOOONDSさんで生かしてほしいという意味であって、ソロ歌手になりたいという色気を出さないでほしい(セクシャルな意味での色気はどんどん出してほしい)。むしろ、それは自分の進むべき道ではないということに気付いてほしい。このツアーをアーティスト病の予防薬にしてほしい。アップフロントさんもこのジェイ・ポップ・バラード・コンサートがイケていると勘違いしないでほしい。イケていないから。

―お酒を飲んだくらいで観るのがちょうどいいですね。途中ちょっと寝るくらいで。

―そうですね。素面で真面目に観るのはきついですね。

仙台駅内の郷土料理みやぎ乃で、石田亜佑美さんのケツを追いかけて来た紳士と夕食。石田亜佑美さんは明日、青森での公演に出演するが、彼はそこまでは彼女のケツを追いかけず、東京に帰った。私はとぽすにチェック・インし、大浴場でゆっくりしてからエア・ウィーヴのマットレス(※11)で横になった。


※1 副島隆彦さんが『日本は戦争に連れてゆかれる』で付けた、この一連の騒動の呼び名。コロナ騒ぎ、あるいはコロナ・バカ騒ぎ。

※2 コロナ・バカ騒ぎがなくても賞与は水物なので正確な影響額を算出するのは難しい。対昨年比。

※3 小林よしのりさんの『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』を読みましょう。全員。

※4 楽天トラベルで予約したんだけど、執筆時点(10月9日)ではクーポン発行数が上限に達したとかでもう同サイトでのGO TO割引は終わったらしい。

※5 東京でもまだ一部の店舗が短縮営業中だけど、大型施設はおおかた平時の営業時間に戻っている印象。

※6 ケツを追いかけてはいるが、私の知る限り特に尻フェチではないと思う。(という注を公開した後に、ケツは結構好きだというご連絡をご本人からいただいた。)

※7 甘いナッツのような香りがするヴェトナムの焼酎。私は2018年2月11日(日)に郡山駅前のヴェトナム料理店で出会い、はまった。

※8 これを公開した後に、完全に寝たのは二公演とも4曲目と5曲目のみ、というご連絡をご本人からいただいた。夜も寝とったんかい。(追記:後から気づいたけど、「序盤の数曲で寝てしまった」という書き方が、序盤の数曲以外はすべて寝てしまったという意味に伝わってしまったようだ。たしかに紛らわしい。「序盤の数曲では寝てしまった」にするべきだった。)

※9 7月に受けた遅延型フード・アレルギー検査の結果、私は卵白、カゼインに強いアレルギーがあることが判明し、医者から摂取を禁じられている。他には鯛、エンドウ豆等。

※10 殆ど印象に残らなかったから書かなかったけど、里吉うたのさんがマスカットが好きだと言っていた。シャイン?と石田さんが聞き、それはたまにしか食べられないと里吉さんが答えていた。

※11 標準のカプセルよりも少し値段の高いプレミアム・ルームでエア・ウィーヴが採用されている。