2017年9月18日月曜日

つばきファクトリー『就活センセーション/笑って/ハナモヨウ』発売記念イベント (2017-09-16)

おい、舐めんなよクソが。おたくのSoftbank光ってのあるでしょ。インターネットのさ。あれを契約しちまったんだよ。前回iPhoneを新しくしたときにね。販売店の兄ちゃんの口車に乗せられちゃってよ、オレもよく分からないで頷いちゃったんだよ。オレ5月に引っ越したんだけどさ、Softbank光の移転手続きが必要になったわけ。でね、検索したらおたくの公式ページが出てきて、ソフトバンクショップで手続きができるって書いてあったんだよ。うん。最寄りのソフトバンクショップに行ったらさ、ショップでは手続きができないからここにかけろって、電話番号が書いた紙を渡してきたんだよ。お店の兄ちゃんが。腑に落ちないからさ、ソフトバンクの公式サイトにショップで手続きができると書いてあったんですけど、って言ったのよ。そしたらさ、表現の仕方が紛らわしくてすみませんだってよ。言い方は丁重だけど、要はオレの誤読だってことじゃん。それって。日本語が分からないかわいそうな人みたいな扱いをしてきやがってよ。後からページを見直してみても、ソフトバンクショップで手続きができるって明らかに書いてあるんだよ。

店に踵を返して、画面を見せて、ショップでできるってここに書いてあるじゃねーかよって突っかかってもよかったんだけどさ、オレも大人だからよ、Twitterに愚痴るだけで済ませたよ。それだけじゃねえよ。サポートセンターに電話をかけたらかけたで本当にしょうもねえことばっかりだ。まず一回電話するごとにあのいちいち神経に障る機械音声が流れるのがムカつく。一回で済むんならまだ我慢するけどさ、たかだか引っ越しの手続きを完了させるまでに何回かけ直したことか。さんざん待たされて、ようやくつながったと思ったら前と担当者が違うから一から事情を説明し直す羽目になるしよ。最初から最後まで同じ人が面倒を見てくれるんだったらまだ楽だったよ。ひどかったのがさ、相手が「次回お掛けいただく際に私の名前を言っていただければ私が対応します」と言ってくれたことがあったのね。で次にかけたときに○○さんはいらっしゃいますかと聞いたら「担当制ではないので個人におつなぎすることはできません」とか言ってきてよ。オレが異例の対応を要求するモンスター客みてえな空気を作りやがった。いちばん呆れたのがさー。そっちから留守電を入れてきてね、折り返せって言ってきたんだよ。オレがかけなおしたら担当部門が違うと転送されてよ。その転送先は用件を把握してなくて、しょうがねえからオレが経緯を一から説明したんだ。また担当窓口が違うと転送されて、最終的には窓口が混雑しているからそっちからかけ直すってことになったんだよ。この無駄以外の何でもない時間、何と19分。ふざけてんのか。

通信料が規定量を超えたときの低速モードってのも使いモンになんねえくらいおせえしよ。低速どころの騒ぎじゃねえだろアレは。おたくの社長、いつぞやインターネットへの接続を基本的人権とか言ってなかったっけ? だとするとお前らがやってんのは人権侵害だよな? 違うか、おい? 何とか言ってみろよ。まあ、いいよ。どうせお前らみたいな低賃金で使われているだけの下っ端にマニュアル外のモノを言う権限なんてねえんだからさ。オレが何を言いてえかっていうと、ソフトバンクとの契約なんてすぐにでも切りたいと思ってるってことなんだよ。不満と不信だらけだよ、おたくらには。知ってるだろうけどよ、そう思ってる奴らが世の中にはたくさんいるんだよ。オレの上司も最近ソフトバンクをやめたし、友人にも解約者がちらほら出始めている。今は格安SIMってのがあるだろ。あれを使ってよ、さらにiPhoneじゃなくしたら月々の料金は数分の一になるらしいな。まあどうしてもiPhoneじゃなきゃいけない理由はそれほどないし、ソフトバンクである必要なんてもっとないどころかゼロだからな。

実際、数ヶ月以内に乗り換えるつもりだったんだよ、格安SIMに。それが、ある事情があって当面は変えられなくなったんだよ。変えるとしてもdocomoかauにしか変えられなくなったんだ。その二社の料金はおたくらと大差ねえだろうしな。だからしばらくは思いとどまることにしたよ。感謝しとけよ。ん? 事情ってのは、シリアス・イベントだよ。うん、分かるだろ、ほら。つばきファクトリーの。って知らねえのかよ。おたくらってのはどこまでもしょうもねえ奴らだな(深い溜め息をつく)。ハロー!プロジェクトの、とびっきり可愛い9人組ユニットだよ。つばきファクトリーってのはよ。覚えとけ。7月26日に2ndシングル『就活センセーション/笑って/ハナモヨウ』を発売したんだけどね、その初回限定盤にイベントへの応募券が封入されてんの。券にはシリアルが印字されていて、それを入力して応募するからシリアル・イベントと呼ばれているんだ。リーダーの山岸理子さんが間違ってシリアス・イベントと覚えていてね、それが定着してつばきファクトリーの同イベントは通称シリアス・イベントになったんだよ。このイベントがな、ソフトバンクかdocomoかauのメール・アドレスからじゃないと応募できないんだよ。そう、困ったことに。数年前までは大体の人がいずれかのアドレスは持っていたけど、徐々にそうじゃなくなりつつあるだろ? だからいずれは応募の方式が変わるとは思うんだけど、現状ではまだそうなっていない。

シリアス・イベントってのはシングルをリリースする度にやっているんだけど、今のリリース頻度ではつばきファクトリーだけでいうと年に二回程度なんだ。仮におたくらとの契約を打ち切って格安SIMにしたら、うまくいけば出費は年に数万円減るかもしれないだろ? だから普通に考えたら年に二回程度のイベントなんてのはさ、我慢すべきなんだよ。お前もそう思うだろ、正直。うん。だよな。でもな、普通じゃなかったんだよ。体験がさ。東京、名古屋、大阪で行われるんだけどオレが応募したのは東京会場で、山野ホールというところだったんだよ。14時半から、16時半から、18時半からと3回あってね、運良くぜんぶ当選した。1回目は、オレの席は14列目だった。山野ホールってのは後方は段差があって見やすいんだけど、その前は平らでね。平場の後ろの方ってのが「埋もれ席」と言われるように見にくいんだ。14列ってのはまさに埋もれ席だったんだよ。距離的にはそこまで遠くなくて、双眼鏡を使ったらいい大きさにはなるんだけど、見晴らしはよくはなかったね。つばきファクトリーの皆さんは『就活センセーション』の衣装をお召しになっていた。セットリストは、『気高く咲き誇れ!』、『独り占め』、『うるわしのカメリア』、『就活センセーション』、『笑って』、『ハナモヨウ』。『就活センセーション』の前に、同曲をモチーフにした寸劇があった(3回とも、寸劇の後にモチーフの曲に入るという流れだった)。劇は出版社の最終面接という設定でね、岸本ゆめのさんが学生。新沼希空さんが面接官。小野田紗栞さんが岸本さんの幼なじみ。その三人がメインで、他には小野瑞歩さんが岸本さんの父、谷本安美さんが母、山岸理子さんが同級生。面接官の質問に答える形で、どんな人生を送ってきたかを岸本さんが回想するという内容だった。劇の後、新沼希空さんはご自身が高校受験のとき面接官が女性だったのでその人を思い出しながら演じたと言っていた。歌と劇をがっつり見せて終わりって感じで、トークは少なめだった。1回目はオレの席もよくなかったし、初回ということもあって客も演者もペースをつかめていないというか…緩さがあったと思う。オレはそれほど没入できなかった。いまいち楽しみきれない感じのイベントを回すルーティン作業的な一日になってしまうのかという不安が頭をよぎった。“Stumbling on Happiness”に書いてあるように、人間は現在の延長としてしか未来を想像できないからな。でもな、すべてが変わったんだよ。終演後の高速握手で。いや、今日は本当に高速でね。つばきファクトリーは握手がゆっくりなのが売りだけど、今日に関してはJuice=Juiceのコンサート後の握手よりも早かったかもしれない。どれくらいって、まあ一人あたりざっと2秒くらいじゃないかな? まあ山野ホールは収容1,000人くらいで、ほぼ満員だったからしょうがない。で、そんな速い握手にも関わらず、だよ。小野瑞歩さんがオレを見るなりめちゃくちゃ食いついてきてくれてね。「あ! ありがとうございます! 2ショット…ハロコンもけっこう見えました!」って畳み掛けるように言ってくれたんだ。8月19日に中野サンプラザでご一緒させていただいた2ショット撮影と、その日の夜公演のことだと思うんだけど、オレが通路席にいたときのことを覚えていてくれたんだよ。実は今日は小野(瑞)Tシャツは持参していなくてね、普通のファッショナブルな服装で臨んだんだ。しかも今朝、髪を切ったばかりだったから前回とは少し印象も違ったはず。それでもオレのことを認識してくれて、瞬時にあれだけのお言葉をかけてくださった。一人目が浅倉樹々さん、二人目が小野瑞歩さんだったんだけど、小野さんの反応が鮮烈すぎて、三人目以降については何も覚えていない。

二回目のチケットを見て26列という数字を見たときは、うわっ、ひどい席を引いてしまったと反射的に思った。後ろから4列目だったかな。でも実際、席についてみると1回目よりも見晴らしがよかった。山野ホールの15列前後のエリアがいかに外れかということだよ。開演前、近くの紳士が前の列にお知り合いを見つけ、話しかけていた。
「今日はアンジュルムかと思った」
「行くかよあんなクソライブ」
「ひどいらしいね」
「カネ払って観に行くもんじゃねえよ」
どうも彼らの話によると今回のアンジュルムのコンサートは旧スマイレージ時代の曲が封印されているらしいんだよね。しかも新メンバーが入ったことで、室田瑞希さんの歌割りが大幅に減らされたらしい。こういう話はさ、実際に生身の人間が話しているのを聞くのが面白いよね。Twitterで文字として流れたら必要以上に刺々しく映ってしまうかもしれない。上記の発言主はたいそうお怒りではあったけど笑っていたし、聞いていてイヤな感じはしなかった。これが文字だけだったら、本人としては愛のあるディスだったとしてもだよ、当人を知らない人にはニュアンスがなかなか伝わりにくいじゃん。発言者の人柄とか表情とか声とか何も分からないとさ。2回目は、つばきファクトリーの皆さんは『笑って』の衣装で登場した。セットリストは『Just Try!』、『青春まんまんなか!』、『初恋サンライズ』、『笑って』、『ハナモヨウ』、『就活センセーション』。寸劇は『笑って』モチーフ。主演が小野瑞歩さん、浅倉樹々さん、秋山眞緒さん。秋山さんが笑う度に豚のような音を鼻から発してしまうのだが、自覚がない。それをどうやって指摘しようかと悩む小野さんと浅倉さん。誤解が重なってなぜか文化祭で小野さんが豚の真似をするという話になる…話だった。分かりやすいコメディで、何度も笑いが起きた。2回目は冒頭に『Just Try!』、『初恋サンライズ』という分かりやすく手を上げたり飛んだりできる曲があったから盛り上がりやすかった。サンライズ・ジャンプは楽しい! つい笑顔になってしまう。『初恋サンライズ』のイントロが流れると観客がみんな飛ぶ準備をして足下を確認しているあの感じが面白い。ハロコンでも『初恋サンライズ』は披露されていたけど、ちょっと違う。つばきファクトリー単独の現場でやるサンライズ・ジャンプが格別なんだ。『ハナモヨウ』の終わりで小野瑞歩さんの位置がずれていて、秋山眞緒さんが手で押して正しい位置に動かしていた(本当は左端にいるべきところを小野さんは真ん中寄りの場所にいた)。2回目の高速握手がまた強烈でね。小野瑞歩さん。オレの時は前の人に比べて声のトーンが一つ高くなって、「あー! ありがとうー!」と言いながら、強弱をつけた何とも言えない握り方でオレの脳をトリップさせてきた。さっきも言ったけど今日は本当に速くてね、オレが何か言う間もなく次に流れつつあって、それでも「楽しかった?」と小野さんは聞いてくれて。頷くのが精一杯だったんだけど、そうしたら「よかった!」って言ってくれた。1回目同様、その後の記憶がない。何だこれは…まともに会話もできないオレに、何でこんなに小野瑞歩さんは優しいんだ、もしかしてお母さんなんじゃないか…。半ば茫然自失となりながら、会場を出て外の空気に身を晒した。近くにいた青年同士の会話が聞こえてきた。「27期研修生が載るかもしれないから一応ハロメン全員のブログを見ている。意外と大変なんだ。時間がかかる」。

3回目のチケットを受け取った次の瞬間、オレはGod's Son (Nas)になった。2列。左端ではあるが、今日の最後を締めくくるに相応しい、最高の席だ。埋もれ席のゲットーから見晴らしのよい後方席、そして最後は2列目。何というサクセス・ストーリーだ。席交換クソ野郎を避けるために開演の5分前まで席に着かなかった。至近距離で見るつばきファクトリーは、何かもう、そういうことわざを作っていいんじゃないかというくらいに麗しい。『ハナモヨウ』衣装で舞い踊る彼女たちのお姿はまさに眼福だった。リリース・パーティーで新三郷や新潟に行ったときのことを思い出した。そう、これだよこれっていう感覚。ヨシタツや段田(この二人は今日は見なかった。段田は元々つばき単独の現場には来ないが)たちの軍団が最前に粘着するのも分かる。いや、特定の人たちがいつも最前にいるのを肯定するということじゃないよ。そういう欲求の存在を肯定するという意味。だってもう後方とは景色が違いすぎるからさ。スピーカーが目の前にあった。その音で周囲の観客のシャウトがかき消されて、会場全体の盛り上がりが把握しづらかった。セットリストは、『私がオバさんになっても』、『うるわしのカメリア』、『気高く咲き誇れ!』、『ハナモヨウ』、『就活センセーション』、『笑って』。寸劇は『ハナモヨウ』モチーフ。小片リサさん、山岸理子さん、谷本安美さんが主演。ラジオDJの小片さんは、リスナーの恋愛相談に乗ることをADの山岸さんから依頼されるが、恋愛経験がないからといって難色を示す。谷本さんが提供した花を使って、花占いをしようという話になる。小片さんのひいひいおばあちゃんのツルが谷本さんと山岸さんに乗り移って、てんやわんやになる。感情の機微を表現した小片さんの演技が光っていた。中盤くらいから、小野瑞歩さんがオレがいるのに気付いた感じがした。それ以降は、オレの近くを通る度に視線と笑顔をくださった。たしか『ハナモヨウ』だったか、彼女がしゃがんで数秒間、静止するときがあって、ちょうどオレに相対する角度になったんだ。じーっとこっちを見てニコッとしてくださって…こんなことに慣れていなさすぎてオレは反応に困った。終演後の握手では、今日のスピードとオレの技量では「楽しかった」とお伝えするのが精一杯だったが、小野さんは「よく見えた!」とおっしゃってくださった。オレの前の紳士が岸本ゆめのさんをスルーして握手をしなかった(その人は次の山岸理子さんにがっついていた)んだけど、岸本さんが笑顔を絶やさなかったのが印象的だった。

そういや今日はおまいつがいつもに比べて少なかったな。しかも彼らが最前を独占していないのが新鮮だった。リリース・パーティーだったら大量に買って、いい番号を選り分けることが出来るけど、シリアス・イベントは一人一枚しか入場券をもらえないからね。交換してより良い席に移ることも可能は可能だけど、前方の人たちが仲間でもないのにそう簡単に応じるわけもないしな。だからいつもの最前常連組も、最初から応募券を転売して金にしたのかもしれない。いや、知らねえけどさ。そういやおまいつといえば、一つ訂正をしないといけない。以前に2ちゃんねるである有名オタクに関する「おまいつのゲス」という書き込みを「おまいつで下衆な奴」という意味かと思っていたんだけど、それは間違っていた。ゲスの極み乙女。というバンドのメンバーに似ているからゲスって呼ばれているんだと後から知った。この記事で「おまいつのゲス」とディスられていた、と書いたけどそれは間違っていた。ゲスというのはディスじゃなくて呼称だったんだ。

同じ内容を3回やるのかと思っていたけど、衣装も寸劇もセットリストも毎回、変化をつけていて、期待していた以上に楽しめた。そして何よりも小野瑞歩さんとの接触の余韻が心地よくて、家に帰ってからも幸福感に包まれたままだった。…わりいな、話が長くなって。というようなことがよ、もし格安SIMを使っていたら体験できていなかったんだよ。こういう経験のことをプライスレスっていうんだよ。分かるか? 勘違いすんなよ、おたくのサービスがいいわけじゃねえからな。何も満足してねえよ、オレは。長年利用してきたauから2010年にソフトバンクに乗り換えたのはよ、たまたま当時iPhoneを扱っているのがおたくらだけだったからだ。シリアス・イベントへの応募におたくのメール・アドレスが不要になったらすぐに乗り換えるからな。分かったか? って聞いてんのか? もしもし? っていつから切れてたんだ…。

2017年9月5日火曜日

Go NEXT! (2017-09-03)

この会話はフィクションであり、アイドルという存在もまたフィクションである。

1.

「岡村美波さん、犬派か猫派で言えば大型犬派なの、大型犬が怖くない=大型犬と接する機会が多かったとなり家庭が裕福でとても育ちが良さそうと推察出来るし、人さらいは犬派か猫派かで大型犬派かを質問したほうがいいぞ」
「プロの目から見て気になるのは岡村さんなの?」
「そうですね。あとは中山、土居、松永、江口の各氏が気になりました」
「その人選は、年齢の低い順のトップ5とほぼ同じだね(※1)」
「バイブスの至らなさ(※2)が露になってますね…」
「幸盛(※3)な時間になるといいね。日曜日だけど、席が後方(※4)だから双眼鏡があったら持ってきたほうがいいよ」
「わかりました、持参します。後方の席なら、だれの目に憚ることなく、視認出来るので良いですね」

※1 2017年9月現在、ハロプロ研修生を生年月日の遅い順に並べると上位7名は以下の通りである:

1.橋迫鈴:2005年10月6日
2.中山夏月姫:2005年7月20日
3.山田苺:2005年7月15日
4.松永里愛:2005年7月7日
5.清野桃々姫:2004年12月22日
6.岡村美波:2004年10月20日
7.土居麗菜:2004年9月1日
出典 http://www.helloproject.com/helloprokenshusei/profile/

※2 SuchmosのYONCEメンバーが自身のInstagramで「バイブスの至らない部分もあったり」という表現をした。
https://instagrammernews.com/detail/1591070891377587891

※3 以下のインタビューでSuchmosのYONCE氏が提案した年号である。
https://www.cinra.net/interview/201701-suchmos?page=4

※4 昼公演(15時開演)はこの会話における「プロ」が20列でそうでない方が7列、夜公演(18時開演)は23列で連番

2.

「Zepp Tokyoに行けばいいですか?」
「TOYOTAのショー・ルームがある建物の2階にカフェがあるので、そこに来てもらえるかな?」

「10時半頃から会場近くにいたんですか?」
「グッズの販売がね、10時半だったから。10時45分くらいから並んで、一時間くらいかかった」
「変な場所ですよね。初めて来ました」
「うん。飲食店もなさそう」
「横の建物は商業施設なんですか?」
「そう。さっきちょっと入ったけど、洋服屋さんがたくさんあった。あとはフードコードもあったんだけど、どれも千円くらいするし、まずそうだし、席も空いてなかった」

「○○さんは岡村美波さんが気になるんだよね」
「そうですね。歌やダンスを見ていないんで、顔での判断になりますけど」
「彼女はね、SunRisaって言ったかな? たしかそんな名前のローカル・アイドルをやっていて、そこからHello! Projectに移ってきたみたい」
「そうなんですね、聞いたことがない」

「今日は、誰に注目するんですか?」
「そりゃ、小野瑞歩でしょ」
「ああ、そっちですか。研修生じゃないんですね」
「そうだよ。つばきファクトリーが出ていなければたぶん来ていないよ。12歳や13歳の子には関心を示さないで高校生以上を推して自分はロリコンじゃないぞっていう感じで…(※5)。小野さんはもうすぐで17歳になるからね。研修生で挙げるなら、高瀬くるみさん。あとは金津美月さんがいいかな」

※5 高校生以上を推すのはロリコンではない。中学生以下を推すのはロリコンである。

3.

「20列って、段差のいちばん前か。めっちゃいいじゃん。」
「こっちで観ます?」
「自分の席に行ってみる。ちょっと来て」
「さすがに7列目の方がいいんじゃないですか?」
「あ、こっちの方がいいわ」
「ですよね」
「うん。端っこだけど、ステージが横に広いから悪くなさそう」

「研修生のTシャツはみんな黄色なんですか?」
「そう。研修生はメンバー・カラーがないからね。今は違うんだけど、以前は黄色いTシャツに苗字が印字されたものがレッスン着だった。ファンが着ているTシャツはそれをモチーフにしている」
「公式で売ればいいのに。Tシャツは儲かりそうですよね」
「一時期は売ってたよ。でもある時期にグッズのデザインが『クール』な路線に変更されて、そういう商品が一掃された。ファンは外部の業者に注文したり、自分で作るようになった」
「前も言ってましたよね」
「あそこに岸本って書かれた黄色いTシャツを着ている人がいるじゃん。デビュー済みのメンバーを応援する場合でも、あえて黄色いTシャツを着ることで、研修生の頃から見てるんだぞって感じを出すことができる(※6)」
「めんどくさいですね…」

「研修生発表会は、観やすいと思う。比較的おとなしく観ている人が多い。あと各メンバーを何て呼ぶかが定着していないから、チャントがうるさくならない。例えば清野桃々姫さんだったら、『ももひめ』だと長い。『清野』なのか『ももちゃん』なのか、他の呼び方なのか、どうするのかが決まっていないから掛け声が揃わないんだ(※7)」
「オフィシャルで決めないんですか?」
「オフィシャルでは決めない。でも開演前に名前を叫ぶ人はいるね。有名な一岡伶奈さんのファンがいて、開演前に『いっちゃん! いっちゃん! いっちゃん!』ってひたすら叫び続けるんだ。拍手が起きる。一般社会であれをやったらキチガイだと思うんだけど、ここでは暖かく受け入れられる」
「我々でさえね、普通の人から見たらおかしいと思うんで、僕たちから見ておかしいような人は医学的に見ても疾患があるでしょうね」
「あ! いま通った。あの人だ。あとで聞けるかもしれない(※8)」

※6 よく考えたら岸本ゆめのさんはデビュー後もメンバー・カラーが黄色だった。

※7 ハロコンではほとんど誰も名前を叫んでいなかったが今日の研修生発表会では「清野」というチャントがちらほら聞こえてきた。

※8 開演前に彼は例によって「いっちゃん!」を連呼し、観客からどよめきと拍手が起きた。他には「どいどい! どいどい! どいどい! どぅい…どぅい…」という感じのシャウトを放つ、土居麗菜さんを応援する新しいキチガイが登場した。

4.

「研修生発表会を初めて観て、どうだった?」
「想像通りでした」
「双眼鏡は使った?」
「ずっと使ってましたね。あんまり興味がないときは使いませんでしたけど。こぶしファクトリーのときとか」
「年齢が高い子たちはちゃんと見ずに、年齢が低い子たちだけを双眼鏡で凝視したと」
「まあ、ちょっと大きな声では言えないですけど」
「こぶしファクトリーは当時の強い研修生を選りすぐったグループだったんだ。○○さんもその頃に見ていたらはまっていたかもしれない。浜浦さんなんか特に。今は高校生だけど、当時はもうロリコンに大人気で。彼女の人気を示しているのが『彼女になりたいっ!!!』の最後に起きた「浜ちゃんちょうだい! 浜ちゃんちょうだい!」っていうチャント。浜浦さんがいないときにもあれが発生するんだよ。もうちょっと前だとJuice=Juice。彼女たちも研修生から出来たグループなんだ」
「Juice=Juiceの人たちが一番下だった頃のハロプロ研修生は、知ってます。宮本さんとか」
「うん、宮本さんは研修生の頃から大人気だったね」
「でも僕がいちばん好きなのは吉川友さんでしたね」
「その頃はまだロリコンじゃなかったの?」
「いや、当時の吉川さんは年齢が低かったです」
「ああ、そうか」
「××さんは、双眼鏡は?」
「使ったよ」
「あの近さでもですか?」
「前の方で使う双眼鏡ってのもね、また格別なものがある」

「どうでしたか、つばきファクトリーは?」
「うん、よかったと思うけど、場所的にこぶしファクトリーの方がよく見えた」
「最後なんかそうでしたもんね」
「そう。俺が右端だったから。つばきがずっと左側にいてさ。それもあって、こぶしファクトリーが凄く印象に残った。今回の面子だと、頭一つ抜けているなと」
「そうですね。ダンスは大したことないと思いましたが、歌はよかったです」
「こぶし以外だと、山﨑夢羽さんがよかった。あとは全体的に歌では高瀬くるみさんが引っ張っていた。『Memory 青春の光』のユニゾンは聴き応えがあった。岡村美波さんはどうだった?」
「いや、スキル不足が目立ちました。周りのレベルが高すぎて」
「歌やダンス以外に、表情も重要なスキルの一つだと思うんだけど、その点では岡村さんはよかったんじゃないかな?」
「岡村さんはハロプロっぽくないなと。松永さんはハロプロっぽいなと思いました。松永さん、よかったです。岡村さんは後ろにいる分にはいいんですがセンターにいるとスキル不足が目立ちます」
「岡村さんは目立つ位置によくいたよね。歌割りも多かったし。それだけ評価されているんでしょう」
「期待されているんでしょうね」
「彼女を含む年少組による『素肌ピチピチ』には、ついニヤついてしまった。あれはよかった」

「MCのコーナーで小野さんが出ていましたよね」
「謎の発言をしていたよね。流しそうめんでモッツァレラを流したいと。あとは切ったトマト。小野さんが言っていたモッツァレラの丸い形ってよく分からないんだけど、あのでっかいチーズの塊?」
「いや、色んなサイズがあるじゃないですかね。流せると思いますよ」

5.

「レジの前のあのテーブルにさ、すっげー派手な柄の服を着てる金髪がいるじゃん。あいつがヨシタツ。紫のTシャツ着てるのがね、段田」
「あのテーブルにオールスターが集結してるんですね」
「オールスターだね」
「何か作戦会議してましたよ」
「そうなの? さっきの公演が初演だからね。自分の好きなメンバーがあの位置にいることが多かったから夜公演ではそっちのチケットを俺にくれとか、そういう話をしてるんだと思うよ」
「あ、仲間の一人がチケットの取引をしていますね」
「大量に買って、よくない席をああやって売ってるんだろ、Twitterとかで」
「何口も申し込めるんですか?」
「公演によって違うんだけど、たしか研修生発表会は3枚くらいまでいけたと思う。例えば仲間のグループが10人いたとして、全員が毎回上限まで申し込む。で、30枚のうち、最前は仲間同士で融通しあって、そこそこの席とか微妙な席はああやって売りさばいてるんでしょ」
「やり方としてはだいぶ古典的なんですね」
「うん、たぶんだけどね」

6.

「昼と夜と、○○さんはだいたい同じくらいの席で観ていたわけだけど、周りの盛り上がりはどうだった?」
「夜の方が盛り上がっていましたね。昼はあんまり周りが声を出していなかったです」
「夜の方がどうしても盛り上がるよね」
「前の方に飛んでいる人がいましたね」
「あの浅倉Tシャツの奴ね。何で浅倉Tシャツで飛ぶんだ(※9)。あいつ邪魔だったね。昼もさ、最前中央で中年のデブが飛んでたね」
「ああ、いましたね。最前で飛んで何がしたいんですかね」
「まあでもね、最前以外ではどこかしら視界が塞がれるのは仕方のないことで。見えない部分に憤っても仕方ない。見えるところを見るしかないんだ。邪魔な奴がいる場合、俺は双眼鏡を使って見える場所だけを拡大して見るようにしている」

「スキルがどうとか誰がどうだったとか、小難しいことを抜きにして、公演としてとても楽しかった。それが何より大事なことだと思う」
「そうですね、色んな曲を、色んなメンバーでやって、よりどりみどりでしたからね。トークが少なく、パフォーマンスを見せて終わりという感じの構成がよかったです」

「今日はやっぱりこぶしファクトリーがよかった。広瀬さんと井上さんは元から歌が強くて、野村さんも伸びている。彼女たちはそれこそこぶしを効かせた歌い方が出来る」
「曲が、逆なんじゃないかなって思うですよね。こぶしファクトリーがつばきファクトリーの曲を歌って、つばきファクトリーがこぶしファクトリーの曲を歌った方が合うんじゃないかって」
「こぶしはちょっとコミカルな感じ、つばきは清楚な感じ、という風に棲み分けはされている。Berryz工房と℃-uteみたいな」
「あー、たしかに」
「『シャララ!やれるはずさ』は、はじめは好きじゃなかったけど、ハロコンで3回観て、今日も2回観て、すっかり好きになってしまった。フックに入る前のオイ!オイ!オイ!オイ!とか、フックで腕を回しながらメンバーの名前を叫ぶところとか、シャラララってみんなで歌うところとか、会場が一つになれるポイントがいくつもある曲だ」
「観客も含めて作り上げるという面はありますよね。この間、他のグループも出るイベントで武道館で観たときはぜんぜん盛り上がっていなかったです」

「山﨑夢羽さんは近いうちにデビューするんじゃないかな」
「そうですか」
「凛とした雰囲気と、スッキリした甘さがある。出番も歌割も多かったから内部でも評価されているんだろう。(公式サイトのプロフィールを見ながら)まだ14歳なのか! 17歳くらいかと思った」
「いや、17歳には見えないでしょう。山﨑さんはTwitterのフォロワーに似てるんですよね…顔が」
「そのフォロワーって男だよね? 中性的な顔立ちなの?」
「そうですね、目元がそっくりです」

※9 浅倉樹々さんはヘルニアの治療のためトークのみの出演だった。

2017年9月2日土曜日

Seven Horizon (2017-08-31)

“Much of what I feel and think I owe to my work as a book-keeper since the former exists as a negation of and flight from the latter.”
(私の思考と感情の大部分を決めているのは、私がやっている経理の仕事だ。前者は後者の否定、後者からの逃避として存在するからだ。)
- Fernando Pessoa, “The Book of Disquiet”

「今日も一日お疲れ様。明日も頑張ろうね」、宮本佳林さんは言った。8月30日(水)21時に公開されたハロ!ステの冒頭、いわゆるアイ・キャッチと呼ばれる数秒間の映像である(アイ・キャッチは和製英語だと思うが適切なモノホン英語フレーズが分からない)。9割の視聴者は「うん、頑張るね!」と思ったであろう。実際に画面の前で声を出した人たちもそのうち7割程度はいたであろう。俺は違った。たしかにニヤついた。画面いっぱいに宮本佳林さんが出てきたらね、誰でもそうなる。仕方ない。でもな、いくら宮本さんが言っても俺は頑張らないよ。頑張るって、あれだろ。端的に言うと理不尽に耐えながら私生活を犠牲にして長時間の労働に身と心を捧げることだろ。そうじゃないってあんたは言うかもしれないけどさ、日本の労働者が頑張るってのはそういうことだよ。まあ頑張って早く帰るという言い方もあるけどさ、基本的には時間と心身のリソース配分において労働を最優先する、ファックなジャップの労働観と人生観を前提にした言葉だよ。ともかく俺はその意味では絶対に頑張りたくない。いかに少ない労力で求められていることをこなして、評価と給料を得るか。それは考える。会社の労働に全身全霊を尽くす。それはあり得ない。大体、そんなことをやっていたらHello! Projectの現場に行けなくなるでしょう。特に平日なんて。でも労働を辞めたら現場以前に生活が出来なくなる。折り合いを付けて続けるしかない。収入を得る他のやり方を知らないんだ、俺は。たまにラッパーが俺にはこれ(ラップ)しかないと言うけど、俺も生活の糧を得る手段はこれ(賃金労働)しかねえんだ。そういう育ちなんだ。

機能性発声障害と診断され、声を出すお仕事をお休みになっていた宮本佳林さんが、今日のコンサートから復帰することが8月28日(月)に発表された。彼女が休養から復帰する大事な公演。横浜Bay Hall。18時15分開場、19時開演。俺は午後半休を取得していた。勤務場所である埼玉の奥地から横浜に移動するのはだるい。だから本当は丸一日の休みにするのが望ましかった。でも仕事とのバランスを取る必要があった。具体的な業務というよりは印象の問題だ。10月10日(火)にはJ=J Dayで午後休を取る予定だし、11月20日(月)はJuice=Juiceの武道館で休みを取る。やたらと休む奴として認知をされると周囲の信頼が落ち、結果として自由に休みづらくなる。あと単純に、有給休暇の数には上限があるからね。午後休で済むところをすべて一日休んでいたら使える休暇がなくなってしまう。フレックス勤務を活用して15時に会社を出てもギリギリで間に合っていただろうが、電車の遅延等、何かがあったときが恐い。色々と考えて午後半休にした。

会社なんてのは、よほどよく絡む同僚や直属の上司を除けば、みんなお前のことを「何をやっているんだあいつは」程度にしか思っていないし、長く在籍を続けている奴には「まだいたのか」と呆れている。いくら心血を注いで「御社に精一杯尽くし」ても会社を去れば「そういえばそんな奴いたな」とたまに懐かしがられることすらないかもしれない。もっと時間がたてば社員が入れ替わって誰もお前のことなんて知らなくなる。俺は同じ会社の従業員で、急に死んだ人が二人いる。取引先の人で重篤になって入院し、それ以来は顔を見ていない人もいる。重病にかかろうと亡くなろうと、仕事で関係する人たちなんて誰もお前のことを本気で心配したり気の毒に思ったりはしない。はじめの一週間にその演技をするだけだ。それは道端で車にひかれた猫を見た反応と大きくは変わらない。誰かが猫を片づけたらみんなの人生は元に戻る。俺がいなくなっても、お前がいなくなっても、誰がいなくなっても、会社は回っていく。社会をこう変えたいという使命に駆られて立ち上げた事業に命を懸けるのはまだ理解できなくもないが、たかが賃金労働に人生の価値や意味を見出そうとするのは生粋の馬鹿である。

会社に限らない。誰が欠けても、この世界は回り続ける。「この世に不可欠な人間などいない」―何年も前に観た伝記映画で、チェ・ゲバラが部下にそんなことを言っていたのを覚えている。俺は無職として暮らしていた30-31歳の時期に、その言葉を理解した(チェ・ゲバラによる発言の趣意と合致するかは分からないが)。それまでの俺には、焦りが渦巻いていた。俺は何者かになれるのではないか? 何者にならないといけないのではないか? 何かを成し遂げないといけないのではないか? 今のままじゃ駄目なんじゃないか? 俺はこんな会社にいちゃ駄目だと思い、転職した。失敗して無職になった。一年と二ヶ月くらいの間、俺は一切の労働を行わなかった。それで悟った。俺が仕事をしようがしまいが、この世にいようがいまいが、この世界には何の影響もない。当たり前のことなんだが、無職になるまで俺は気が付かなかった。

宮本佳林さんがステージを留守にしていたこの約一ヶ月、Juice=Juiceは予定通りの日程で単独コンサートを続けていた。どの公演も中止にはならなかった。宮本さんのパートは他の誰かが歌っていた。6人でもJuice=Juiceは回り続けた。このツアーで俺は、宮本さんがいないJuice=Juiceを4公演、観させてもらった。たしかに今は宮本さんの不在をもどかしく感じるかもしれないが、何度も何度も観ていくにつれ慣れてしまうのではないだろうか? 宮本佳林さんがいたJuice=Juiceがどうだったかを忘れてしまうのではないだろうか? 俺は告白する。宮本さんのご復帰を強く待ち望む気持ちと共に、そういうシニカルな考えが頭の片隅にはあった。俺が生きていようが死んでいようが、地球には朝が来て、昼が来て、夜が来る。宮本佳林さんがいなくてもJuice=Juiceはなくならないし、公演を重ねていく。時間がたてばそのうち普通になってしまうのではないか? 

12時すぎ、上司も気にかけている案件を集中して昼休み直前までに片づけて「午前だけでも勤務でもやることはしっかり出来る奴」というgood impressionを残してから職場を去った。気持ちよく電車に揺られ、横浜駅で降りる。西口。モアーズ。ハングリー・タイガー。Pride of Yokohama。昼食と夕食を兼ねてダブル・ハンバーグ。2,130円。15時まで注文できるランチに滑り込みで間に合った。横浜駅のコイン・ロッカーにメインのカバンと傘を預ける。必要最小限のブツを入れた小さなバックパックを背負って、元町・中華街駅へ。こっちの駅のコイン・ロッカーもたくさん空いている(後で気が付いたが会場に事前に預けられるクロークがあったので駅のロッカーに入れる必要はなかった。何度か来た会場なのに忘れていた)。今日の物販は16時半から。俺がグッズ列に並んだのが16時54分。日が差して、涼しくて、過ごしやすい。予報は雨だった。日替わり写真の宮崎由加さんと宮本佳林さんを手にして列を離れたのが17時27分。梁川・宮本が売り切れたというストリートの噂が聞こえてきたのが17時41分。「買うもんがねえよ」と待機場所の駐車場で嘆く紳士。ここに俺が来るのがあと10分遅かったら宮本さんの写真は買えていなかった。宮本さんは今日が復帰戦だから分かるけど梁川さんの日替わりが売り切れるのは何でだろう? と思ったが、ちょっと前に投稿された宮本さんのブログを読んで理解した。梁川さんは神奈川県出身だから凱旋公演なんだね。17時43分、「チケット譲ってください」という紙を掲げた紳士が現れる。平日のこの時間に都合をつけてここまで来る人が今になってチケットを手放す可能性はかなり低いと思うんだが。17時47分、三大迷惑マサイで有名な某氏が登場。柱の前(横浜Bay Hallには大きな柱がある)に行こうかなとお仲間にこぼしていた(そこだと後ろの邪魔にならないから好きに飛べるからだと思う)。「もったいない。ガン見した方がいいよ」とお仲間の一人。飛ぶなと暗に諭しているようにも聞こえたが、彼に婉曲的な表現は通じないでしょう。

開場時間は18時15分だが、番号の呼び出しは18時10分から始められた。毎度のことだが、こういうことを勝手にしやがるので書かれている開場時間の10分から15分前には現地にいた方がいい。20番という素晴らしい番号だった。二列目の左寄りの位置についた。あと二つか三つ若い番号だったら最前に行けていた。開演を待つ間、思い出した。そういえば小野瑞歩さんのバースデー・イベントの当落発表が今日の16時だった。ファンクラブのサイトで確認したところ、応募した19時45分の回に当選していた。ホッとした。思わずiPhoneを持っていない左手の拳を握りしめた。ありがとう、アップフロントさん。席は確保した。あとは「フェイクな奴らはお誕生日おめでとうございますとTwitterに書き込み、リアルな奴らはバースデーイベントに行く」という格言を守るだけだ。

人間の頭は過去を正確に覚えられないように出来ている。仮に宮本佳林さんが長期欠場をして、彼女のいないJuice=Juiceを俺が何十回と観たとする。宮本さんの不在はいずれ感じなくなってしまうかもしれない。彼女がいないのが俺の脳内では普通になってしまうのかもしれない。この世に不可欠な人間はいないのだとすると、宮本さんがいなくてもJuice=Juiceは続いていくのかもしれない。でも今日、分かった。宮本さんがいるJuice=Juiceと宮本さんがいないJuice=Juiceは、まったくの別物だ。もちろん宮本さんの偉大さは十分に分かっていたつもりだった。実際に短期間のうちに彼女がいる公演といない公演を観て、これほどまでに違うのかと思った。それは単に歌唱力とかダンス力とかの技量面の話ではない。むしろ精神的な話だ。Juice=Juiceの全員が宮本佳林さんを求めている。そして、ファンの全員が宮本佳林さんを求めている。宮本佳林がいないとJuice=Juiceではないと、みんなが思っている。

Juice=Juiceの一つ一つの立ち振る舞いが、大事な仲間が戻ってきたという喜びに満ちていた。全員が本当に嬉しそうだった。
・梁川菜々美さんは『夏の夜はデインジャー』で「どうしてだろう」という歌詞を歌っているときの宮本さんが可愛すぎてニヤニヤしてしまい曲の世界観をぶち壊してしまったと話した。その箇所は宮本さんの不在時は梁川さんが受け持っていた。その間は私たちはやなみんにニヤニヤしていたと宮崎さん。「私のときはニヤニヤしなかたっと。私よりやなみんが可愛いと」とすねる宮本さん。宮本さん可愛いですという梁川さんを、信じられるのはこの子だけだと宮本さんが抱きしめた。
・コンサートを通して、植村あかりさんの笑顔がこれまで見たことないくらいに弾けていた。曲の表現で笑顔を消すとき(たとえば“Summer Wind”)を除けば、ずっと笑顔だった。
・植村さんはこの公演前に横浜で買い物をしていたという。セルフレジの店で服を買った。後でさっそく着ようかなと思ったら商品がないことに気付いた。セルフレジに置き忘れた。店に電話をかけたが見つからないと言われた。自分が悪いのだが誰か同じ物を買ってくれないかなと思っていた。(evelyn?と客の誰かが聞く。evelynじゃないと答える植村さん。笑う宮崎さん。)でも今日は梁川さんの凱旋で、宮本さんの復帰公演。公演が楽しくて、そんなことはどうでもよくなった。自分は何てちっぽけだったんだと思った。
・高木紗友希さんは「佳林が戻ってくると燃える」と言ってから、「これからもよろしくね」とお立ち台から後ろを振り向いて宮本さんに言った。
・金澤朋子さんは、宮本さんがいなかった時期、寂しいから電話をかけようよとメンバーに言ってから彼女が声を出せないことに気付いたというエピソードを語った。
・宮崎由加さんは、コンサート中に宮本さんの声が聞こえると「そうこれこれ」となるんだと、愛おしそうな、泣き出しそうな、恍惚としたような表情で、言葉に詰まりながら話した。

宮本さんの休養によって、グループとしての団結が一気に深まったように俺は感じた。増員当初と比べてステージ・パフォーマンスにまとまりが出てきた。俺は7人のJuice=Juiceに違和感がまったくなくなった。ステージに全員がいても多すぎるという感覚がなくなった。これは単に俺の目が慣れたというだけではなく、Juice=Juiceが一つになっていたからだと思う。彼女たちが自信に溢れていたからだと思う。歌って踊る宮本佳林さんを観られる。そして宮本さんのご復帰によってさらに力強さを増したJuice=Juiceを観られる。それも間近で、細かい表情まで高画質で。その幸せを噛みしめた二時間弱だった。

「この間、千葉(宮本佳林さんと高木紗友希さんのご出身地)の公演に行ってきたんだけどさ。(宮本さんが)いないのに曲中に佳林コールが起きてんの。アンコールもさ、『かーりーん! さーゆーき!』って。いないのにするのかよって驚いたわ」。開場前に近くの紳士が話しているのが聞こえた。彼女がいつ戻ってくるかも分からないのに紫のTシャツを着てコンサートを観て、彼女が出演していない公演でも宮本さんの日替わり写真を買い、紫のペンライトを点灯させ続けた奴ら。宮本さんのご復帰を知り久しぶりに(といっても宮本さんがコンサートを休んでいたのはわずか一ヶ月だが)現場に顔を出した奴ら。宮本さん以外の誰かを推しながらも、彼女のご復帰を心待ちにし続けた奴ら。開演直前の「佳林!」チャントは、俺らの集合意志だった。

序盤、段原瑠々さんと梁川菜々美さんの自己紹介の後に、宮崎由加さんが宮本佳林さんにコメントを振った。宮本さんは、公演の感想はもっと後になってから言うので、パフォーマンスを観てくださいと言って、笑みを浮かべた。パフォーマンスで語るといういつもの宮本さんらしい言葉だった。最後のコメントで宮本さんは「皆さんがお休みのときに私たちは働かなくてはならない」と言っておどけてから、「暑くて、変な雨もたくさん降った。体調管理が難しかった」と、自身の欠場中に穴を埋めたメンバーたちを労う。休養中の生活について、誰かと一緒じゃないと外出もままらない等、声を出せない生活の恐さを語った。久しぶりにステージに戻ってきて思ったこととして“Magic of Love”における観客の「ここだよ朋子」の声の大きさが前と変わっていなかったことを挙げた。「そこ?」と他のメンバーたちは笑っていた。

入場時に5-6人の有志が青いペンライトと梁川さんの凱旋祝いへの協力願いを書いた紙を配っていた。彼らの取り組みは成功し、いつもは「ジュース! もう一杯!」なるところで「やなみん!」チャントが鳴り響いた。私は「やーなーみん!」と言い続けるにつれ、段々“You know what I mean?”に聞こえてきた。つまり梁川菜々美はヒップホップなのである。チャントを受けて出てくるときの梁川さんは本当に嬉しそうだった。その嬉しさから“Fiesta! Fiesta!”の最初のダンスでいつもより跳ねているように見えた。

終演後の高速握手会。最後の宮崎由加さんは私を見て「おー! 今日もありがとう!」と言って左手の親指を立てた。ほくほく顔で会場を出ると21時12分。これで俺のJuice=Juice LIVE AROUND 2017~Seven Horizon~が終わった(ツアー自体はまだ3公演ある)。宮本さんの復帰試合でなおかつ梁川さんの凱旋公演でもあるという特別感、高揚感はツアー・ファイナルにも見劣りしなかったはずだ。