2022年8月28日日曜日

ENCORE PARADE/The ANGERME Encore (2022-08-20)

東京都民が名古屋に行く必要はない。本来。仕事で平日に行くなら分かるが、土日、それも自腹を切ってである。新幹線往復JPY20,000強。宿泊代JPY7,500(同じ宿にJPY4,500で泊まったことがある。お盆の時期だから値段が釣り上がっている)。コンサートのチケット代は言わずもがな。東京にとどまっていれば週末にそのお金を使って出来る楽しいことはたくさんあっただろう。敢えて名古屋に赴くということは、それを上回るだけの魅力を私がこの名古屋遠征に見出しているということ。普通に考えて相当な熱意である。日本特殊陶業市民会館フォレスト・ホール。つばきファクトリーとアンジュルムのコンサート。楽しみで仕方ないのだろう。じゃないと辻褄が合わない。だが実際のところ、凄く強い興味があるわけではない。興味がないわけではないが、どうしても観たいかって言われると……。でも一度は入っておきたいという微妙な線。だったら遠征を避けて近場の会場で入ればいいというのが普通の発想だが、関東だけに絞って申し込んだら当選ゼロもあり得る。それに名古屋には会いたい地元民たちがいる。仮にコンサートが中止になったとしても(※最近のアップフロントは、体調悪いんで今日は休みますと一労働者が会社に連絡を入れるような感覚でいきなり当日になってコンサートを中止にすることに躊躇がない)私にはこの土地に行く理由がある。

お金、時間、興味。一人の人間が割ける量は有限。私は横浜F・マリノスの年間チケット会員になりホーム(日産スタジアム、三ツ沢)で行われるほぼ全試合をスタジアムで観戦するようになった。田村芽実さんが出演するミュージカルにこれまで最低一回ずつは入ってきたが、これからは二回、三回と観るようにしていきたい。Hello! Projectはそれらの下にある。コヴィッド前と比べると明らかに序列が変わっている。コンサートを(数は少なくとも一応は)継続的に観に行くだけの意欲はギリギリで保っている。ただもう以前のようなライフ・ワークではない。風前の灯火と言ってもおかしくない私のHello! Projectへの興味がまだ消えていないのはファンクラブからの案内に従って申し込んでいくという前からの習慣を惰性で続けているというのがあるのは否めない。もちろんそれ以上に小野瑞歩さんが現役のうちは最後まで見届けたいというのが最大の理由だ。付け加えるなら、Hello! Projectを通して親交を持つようになった紳士たちとの付き合いを維持したいというのもある。この歳になって年代、職業、収入などなどを超えた(そういった事柄に深入りしない)人間関係を築けたのは本当に奇跡のようなことだと私は思っている。稲田豊史さんの『映画を早送りで観る人たち』によるとZ世代の若者たちは常に繋がっているLINEグループ内の話題についていくために大量のコンテンツを消費する必要がある。お金も時間もなく、コスパ、タイパ(タイム・パフォーマンス)を重視する彼らは映像作品の倍速再生、10秒飛ばし、シリーズものの話丸ごと飛ばしを活用している。私もいずれそれに近いことをするようになるかもしれない。Hello! Project関連のYouTube動画やヴィデオ・クリップだけざっとチェックして話を合わせるという。いずれにせよ小野瑞歩さんが退団するその日が来たら、私はHello! Projectのファンクラブを退会するつもりだ。アイドル・オタクとして生き恥を晒すのをやめ、ミュージカル女優の田村芽実さんを追いかける健全な生活を送るようになるだろう。

移動と宿泊のコストは極力切り詰めたいが、コンサートのスケジュールやそれ以外の過ごし方、夜行バスを利用した場合の疲労など総合的に考えて今回は往復を新幹線に頼ることにした。品川駅構内のJRが運営する売店でサンドウィッチを買うときにパスモでと言ったら、スイカですね!と無駄に大きな声で言ってくるレジ係。意味が分からない。いや、スイカじゃねえし。別の場所でも同じ目に遭ったことがあるので、おそらく彼らはそうするように教育されているんだと思う。気色が悪い。行きの新幹線で赤松利市さんの『女童』を読み終えた。名作『ボダ子』(未読? 強くお勧めする)の前日譚。冒頭からぞわぞわとイヤな気持ちにさせ最後まで読み手を離さない文章の巧みさ。登場人の小児性愛精神科医は創作だとあとがきに書いてあったが、それを疑うほどのリアリティがあった。

名古屋駅。家には過剰なほどTシャツがあるのに明日用の着替えを持ってくるのを忘れた。仕方なくエスカの古着屋でTMNT(tnmtではない。Teenage Mutant Ninja Turtlesのこと)のTシャツを購入。JPY3,000。まあ今後これを着ると名古屋を思い出すだろうし、旅のいい記念になったととらえる。一週間以上前からパラグアイ(腹具合)が悪かった。もたれに加え、何かを食べる度に腹痛に襲われる状態が続いていた。自然派で鳴らす私もさすがに薬物に頼った。池袋西口のセイムスで購入したパッケージに胃痛と大きく書かれた薬物(スクラート)を飲んだらよくなってきた。もう痛みは出ないが本調子ではない。あまり腹が減っていないし、夜は会食をする予定なので、昼は軽めに。名古屋サンロードのよもだそば。ほうれん草のおひたしそば(冷)とささみ天。

金山駅。改札を出る前に小便をしようと思いトイレに向かっていると後ろからトントン。振り返るとF君だった。偶然にも同じ電車に乗っていたようだ。駅前のサテンで合流。初対面のお二人もいた。その片方の紳士からオチャ・ノーマのコンパクト・ディスクを頂戴した。私は6月15日(水)に引っ越してから二ヶ月が経過したが未だにコンピュータを段ボールから出して部屋に設置できていない。つばきファクトリーと宮本佳林さんのシングルもまだ取り込めていない。いい加減やらないと。最低限の生活空間だけは確保したのだが、片づいていない段ボールがまだまだある。フォレスト・ホール。喫煙所にいた森川さんと合流。岸本ゆめのさんの写真集をいただく。「あのキャラクターを知らないで見れば、まあ、使えますね」。

つばきファクトリー。14時半開演。
  • 小野瑞歩さんの髪型が目を引いた。頭の後ろを編み込んでいた。サソリが張り付いているような。左の脚に肌と同系色の太いテープをぐるぐる巻きにしていた。Tokyo Idol Festivalの公演前に火傷をしたのは知っている。今日のテーピング範囲は割と広かった。それがそのまま傷の広さではなく、激しく動いてもずれないようにするためだといいのだが。一日も早く小野さんのふとももがテーピングから解放され我々の鑑賞が許される日が来ますように。
  • 前回ツアーをベースに調整を加えた内容。私が酷評した一着目の衣装は消えていた。このツアーでは最初が前回の二着目、次に武道館で最後に着ていたハワイアンおばさん衣装。メンバーさんが衣装を替えるコンサートのハーフタイムのような時間に流れる映像は変わらず。衣装的には前のツアーから改善されていた前半だったが、それでも私は眠かった。映像が流れているときがピークだった。私は目を瞑っていた。まあコンサートがどうというより、私自身に疲れが溜まっている。転職、引っ越し。環境変化。気の休まらない日々。疲労が蓄積している。単発のマッサージや入浴で癒せるようなものではなく。もっと根深い。
  • コヴィッドで岸本ゆめのさんと山岸理子さんが欠場。急なことでしっかりと準備する時間もなかったのだろう。二人の穴を埋める(※下ネタではない)ことが出来ていない。誰かがカヴァーすべき二人のラインを誰も歌わない場面が多発。一方で『マサユメ』における岸本ゆめのさんのソロ・ラインを代行する豫風瑠乃さんの威風堂々ぶり。付け焼き刃感なし。自分のものにしていた。『表面張力〜Surface Tension〜』で歌詞を飛ばした小野さんが「ダ、ダダダダ〜ダ、ダダダ、ダダダダ……」とダだけで乗り切ろうとした稀少な場面を見ることが出来たのは嬉しかった。小野さんは最後のコメントで、不在だった二人の偉大さを感じた、そして自分の小ささを感じた、という旨のことを言っていた。
  • 私は最後の挨拶から耳栓を外してみた。そこで改めて思ったのが、コンサートへの没入は音量と大きく関係しているのではないかということ。単純に感覚をどれだけ占有されるか。とはいえあまりの大音量は不快だし耳に悪い。そのバランスが難しい。
  • ミュージカルや舞台と違って、Hello! Projectのコンサートは座ってじっと黙って観てもあまり楽しいものではないというのが私の個人的感覚。それがコヴィッド仕様になってからこの団体に対する私の熱が冷めている要因のひとつだと思う。コヴィッド前にはワックな曲をいかに馬鹿になって楽しむかの勝負というところがあった。飛んで(途中から禁止になったけど)、声を出して、拳を振って。今ではワックな曲をワックなままで受け止めなくてはならない。Hello! Projectの音楽はあんまりこう、じっくり黙って鑑賞するタイプの音楽ではない。

カフェ・ド・クリエで森川さんと歓談。不慣れで要領を得ない店員、何を頼むか迷ったあげく使用期限切れのプリペイド・カードで払おうとしてはねられる前の客、抹茶を使った飲み物はないのか、コーヒー・ゼリーはないのかなぞと前にはみ出して確認しに来る老婆たち。上々軍団の仲間Tシャツを着用した白髪男性。「アンジュルムは、『戦闘集団』とか言っている支持者たちを見ると嫌悪感を抱きやすいですし、ヤリサー、飲みサーみたいな雰囲気はありますけど、観る分にはいいですよ。圧がありますね。Juice=Juiceもそうですけど、つばきと比べると超えられない壁がありますね」という森川さんによる推薦の言葉。

アンジュルム。18時開演。
  • これが私が観る生涯最後のアンジュルムのコンサートになる可能性が高い。この集団の支持層は若い男女のイメージが強かったが、会場内にはメンバーさんの名字がプリントされた研修生風Tシャツを纏ったキモ・ハゲ・ジジイもちゃんといる。
  • 開演前に謎の手拍子が始まってちょっとこわかった。声を出すのが禁止されているからみんなただ無言なのがなおさら。ここ愛知が地元の橋迫鈴さんに向けた手拍子だったらしい。
  • 今日のつばきファクトリーは10人。それでもステージを観て多すぎると私は感じていた。アンジュルムも同じ10人のはずだったが、どういうわけかつばきと異なり多すぎるとは感じなかった。衣装にしてもコンサートの構成にしても、集団としての完成度にしても、アンジュルムが上を行っていた。生粋のつばきストである私もそれは認めざるを得ない。まず衣装は噂に聞いていた通り肌面積が広く、上に羽織っているジャケットにしてもダンスの途中ではだけて中を見せることを前提にデザインされていた。なりんさんのアジアン・エステ感。コンサートの構成という点では、集団を数名ごとに分割してパフォームする時間があったのがよかった。ずっと全員が出ずっぱりよりもこちらの方が変化があって楽しい。
  • 開演して数分も経たないうちに私は川村文乃さんに目が釘付けになった。ダンスや表情の魅せ方、唯一無二の甘い歌声、トークで出る高知の方言。公演中、私はほぼ彼女だけを観ていた。彼女を目当てにこれからもたまにアンジュルムを観たいと思うほどだった。
  • 何かの曲で佐々木莉佳子さんが二度ほど右脚を時計回りに蹴り上げて股間を我々に見せつけていた。

終演後、森川さん、享平くんと合流。ゾス!と挨拶を交わす。森川さんの紹介でネパーリ・チュロというネパール料理店へ。今だから言うが、言うても本場(新大久保)には劣るんだろと高を括っていたのが正直なところ。ところがどっこい。本場(新大久保)でもやっていけるし、何なら本場(新大久保)でもそう巡り会えないくらいのクオリティだった。頼んだすべての料理がことごとくおいしくて。値段も安くて(三人でJPY10,790)。素晴らしかった。名古屋らしくスパイス手羽先というのもあったけど、味はジャップに迎合しているわけではなく。金山にコンサートを観た後の会食はココで決まりでしょ。何なら金山に用事がなくても名古屋から移動して(電車で数分だし)でも利用する価値がある。