2019年7月24日水曜日

ワタシノアカシ (2019-06-30)

オタクさんには自分の好きなものを外の世界の人々から肯定されたい、趣味を認められたいという願望がある。違う畑の人が少しでも褒めると過剰に反応する。外部からの称賛に飢えている。Charles Taylorが“The Politics of Recognition”で述べたように、個人や集団のアイデンティティや自尊心は、他者からどう認識されるかによって部分的に形成される。オタクさんのように構造的に虐げられがちな少数派集団には承認の有無とその内容が特に重要になってくる。オタクさんがやたらと自分の好きな作品や人物を広めたがるのは、それらのよさを他人に理解してもらうことを通じて、自分を肯定したいからではないか。それがすべてではないにしても、大いに関係しているだろう。私もかつてはその気持ちが強かった。Hello! Projectのファンではない友人たちを、何度かコンサートに連れて行ったことがある。モーニング娘。、Buono!、℃-ute、Juice-Juice。メンバーさんの歌唱力、体力、可愛さ、コンサートの楽しさといったHello! Projectの凄さを、初見の人に理解してもらえるのが心地よかった。Hello! Projectを褒めてもらうことで、それを応援している自分も褒めてもらった気になっていたのだろう。

今でもそういう気持ちや願望がないわけではない(人間の根源的な欲求がそう簡単に消え去るわけがない)が、前よりも弱くなった気はする。私は何がリアルで何がフェイクか、何がドープで何がワックかを見抜く眼に自信がある。他者からの評価で自分の好きなものの魅力が変わることはない。これを知らない人は人生を損している! もっと多くの人に知られるべき! なんて主張する気はさらさらない。知らないんだったら無理に知らなくていいよ、というのが今のスタンスだ。その人の感性と関心範囲に合えば勝手に興味を持つのであって、無理強いするものではない。もちろん、理解者が増えるに越したことはない。その興行と産業に落ちるお金が増えることで、活動を継続できる可能性が高まるからだ。それに、同じ対象について意見を交わせる話し相手がいた方が、一人で観て終わるよりは楽しい。ただ、ファンは増えれば増えるほどいいというものでもない。私は、好きな音楽家、アイドルさん、フットボール・ティームには長続きはしてほしいし報われてほしいが、過剰に流行らなくていいと思っている。チケットが取りづらくなるし、大きな会場ばかりでやるようになったら近くで観ることが出来なくなるからだ。

今でも何かの現場に誰かを誘うことはあるが、単に布教したいというよりは(それも多少はある)、その相手と会う機会を作りたいというのが理由として大きい。歳を重ねるにつれ、誰かと無意味につるむとか、無意味に会うということがほとんどなくなってきた。結婚する奴、子供が出来る奴がちらほら出てきたのが最大の理由だ。あとはインターネット(Twitter)で日頃から他人の動向を把握しつながりを感じられているのも理由かもしれない。私には大学時代、よく四人でつるむ友人がいた。就職してからもはじめの頃は年に数回は集まっていたような気がする。一人は二、三年前に我々からの忘年会の誘いを拒絶しLINEグループを一方的に脱退し音信不通になった(幾度かココに書いているが、私が最後に彼を見たのが2014年11月にJuice=Juiceのコンサートを一緒に観た後に新潟駅の新幹線プラットフォームで別れたときである)。残りの三人は今でもかろうじて忘年会で集結する。一人はYahoo!コンシェルジェ(サービス終了済み)経由で結婚したので、独身者のように好きに行動することは出来なくなった。

残された二人(結婚、子育てといった人生のステージに進まず、いつまでも学生生活の延長で人生を送っている)で、田村芽実さんのコンサートを観に行った。彼は田村さんにやや興味がありそうな気配があったので誘ったら受けてくれた。14時頃、渋谷のヒカリエ前で彼と合流した。会場の渋谷WWW Xまで歩いて場所を確認する。15時半、PRONTOで歓談してから外に出ると強い雨が降っていた。外を歩きたくない雨量だったので行動が制限され、時間を持て余した。サテンをハシゴするのもアレなので西武百貨店と同じ建物にある書店内をひたすらぶらぶらした。ネットワーク・ビジネスの雑誌が目に留まる。パラパラめくる。営業リーダーの成功談。16時10分に書店を出て会場に向かう。今日は17時開場、18時開演。会場前に貼り出されていた案内によると16時40分から番号の塊ごとに入場するのだという。タピる? と友人が提案してくる。こういう機会でもないと飲むことはないからやや気持ちが傾いたが、やめておいた。糖質の塊なのでなるべく摂取したくない。それに、どうせ行くなら有名店に行きたい。その辺の適当なタピオカには手を出したくない。これだけ店が乱立すればフェイクもたくさんあるはずだ。それを味わってタピオカ・ブームを知った気になりたくない。タピるかわりに会場すぐ近くのデイリー・ヤマザキで宝焼酎のやわらかお茶割り 335ml缶を飲む。いっさい効かない。水だよこんなの。

CONCERT STAFF ONE TO ONEの入場誘導が不親切すぎてイラつかされた。番号の塊ごと(A001-A250、A251-、B001-B150、B151-という四段階)に呼んで階段を上らせるのはいいんだけど、この時点で番号順に並ぶのか、それとも上に着いてから細かく番号を呼び出すのか、説明がない。列の中には前者の認識の人と後者の認識の人が混在していて、でも誰も正解が分からず、混乱していた。大手の業者なのにノウハウの蓄積が感じられない。雨が降っていたのもあって、ストレス指数は高めだった。(ちなみにONE TO ONEには知人が昔アルバイトをしていたことがあるが、リーダーから暴力を振るわれることが日常茶飯事だったらしい。)イカンイカン、せっかく田村芽実さんのコンサートを楽しむために来たのに余計なことで気分を害しちゃダメだ。と思ったが、心配は要らなかった。フロアで待機中のコンサートへの期待感、そして何より開演してからの田村芽実さんとバンドが奏でる音楽に引き込まれて、ネガティヴな感情はキレイさっぱり消え去った。

eplus先行で(この公演はファンクラブ先行も兼ねたeplus先行受付だった)私が獲得した整理番号は、A184とA185。そんなに期待はしていなかったが、思ったよりはいい位置につくことが出来た。左寄りの、7列目くらいだったかな、たしか。

キーボード担当者件バンドマスターの淑女に近い位置だったので、三曲目の『1, 2, 3, Go!!』のイントロで歌唱(チュチュ、チュールルーチュー)と演奏のタイミングが微妙にずれたときに田村さんがちょっとバンド・マスター(キーボード担当者)を睨んだ(睨んだつもりはないだろうが、はっきりとバンド・マスターに顔を向けておいあんた間違ってるぞ的なヴァイブスを出していた)のがよく分かった。曲を止めてやり直すのではないかと私は思ったが、持ち直して事なきを得ていた。

オリジナル曲とカヴァー曲から成るセットリストだった。カヴァー曲はYouTubeで公開している曲を多くやっていたので、それらが披露される度、進研ゼミでやったやつだと私は思った。Hello! Project時代の曲はやらなかった。

『エイリアンズ』(キリンジ)という曲が印象に残った。田村さんの歌い方がすごくブルージーでジャジーで。雰囲気が出ていた。

トークの前に水を飲んでハーって息を吐きだすのをマイクに乗せる田村さん。

新曲発売の発表。そして初披露。私の大好きな人に作ってもらった、誰だと思いますかという田村さん。まろ、と観客。まろは…好きじゃないかなと田村さん。(正直なところ、福田花音さんではなくて私はホッとした。作詞家としての福田さんの才能に懐疑的なので。)沸く観客。フーフーじゃないよ、大好きだよと強調してから、吉澤嘉代子さんであることを明かす。主にTRUMPシリーズのミュージカルDVDを観ていただいた上で、田村さん用に曲を書き下ろしていただいたという。吉澤さんの歌の世界の住人になれるのが嬉しいということを田村さんは言っていた。(私は吉澤嘉代子さんのことを存じ上げなかったが、そこまで言われると気になるので、後日Spotifyにあったアルバム『女優姉妹』をダウンロードして聴いた。)

新曲は8月21日(水)発売。後で詳細を見たら、初回限定盤Bに今日のコンサートの模様が収録されるらしい。コレはマスト・チェック。

中島みゆきさんの『化粧』という歌。ドロドロした歌詞だったが、まったく無理なく、自分の曲であるかのように入り込んで歌っていた田村さん。二十歳とは思えない。三十歳を超えているくらいの円熟味がある。おそらく田村さんは三十歳や四十歳になっても今と大きくスタイルを変えず、同じようにステージに立って歌っていることだろう。彼女は若いけど、若さを販売していない。アイドルさんからミュージカル女優と歌手への完全なる転身に成功しつつある。

東京ブギウギ的な曲(いまセットリストを検索したら『買い物ブギ』という曲だった)、そして次の『お祭りマンボ』。ここがコンサート一番の盛り上がりどころだった。観客は全体を通して静かに聴くスタイルだった観客(私含む)も『お祭りマンボ』ではワッショイ、ワッショイと声を上げていた。思わず声を出してしまう、それくらいのグルーヴがあった。『お祭りマンボ』は田村さんの淀みのない早口フローが非常に心地よい。難しいビートを完全に乗りこなしている。彼女は練習すればラップもできそう。習得が早そう。Migosのような今風の、歌みたいなラップを難なくこなせそう。新境地を開拓できそう。

セットリストに『無形有形』が二回入っていた(二曲目とアンコール前の最後)。現時点での田村さんの代表曲なんだな、と。改めて実感した。一回目では台詞なしだったので、二回目に完全版を聴けてよかった。

コレが最後の曲です、という演者さんの通達に私がこんなに心からのエーイングをしたのは久し振りだ。というのが、Hello! Projectのコンサートではアンコールありきのセットリストになっているからだ。あらかじめアンコール後の曲が決まっているのはもちろん、衣装まで変えてくる。パターンが出来上がっていないから、純粋な気持ちでエーイングとアンコール(めいめい、めいめい)が出来た。再登場した田村さんは、嬉しそうだった。このツアーではお決まりアンコールはやらないとマネージャーさんと?決めていた。アンコールがなかったらシクシク帰るつもりだった、と明かす田村さん。しかし、仮にアンコールがなかったとしても満ち足りた気持ちで帰れるコンサートだった。田村さんのヘッズはおとなしいので誰かが率先しないとアンコールが始まらない雰囲気があった。最初にめいめいと叫び始めた人たちは偉い。

田村さん曰く、
・Twitterのretweetとかは気にしないで生きていくっていうスタンスなんだけど、舞台関係のretweetよりも自分のコンサートのretweet数が多いと歌手としての自分が喜ぶ。舞台関係のtweetは他の出演者の相乗効果で伸びるけど、自分のコンサートにはそれがないので。でも舞台のリツイートが多いと女優としての自分が喜ぶ。自分の中に二人がいる。
・先日ミュージカルのコンサートに出演した。観に来ていた両親から、あの子は口パクよねと近くの観客が言っていたと知らされた。私は生まれてこのかた口パクを一度もやったことがない。
・大勢は苦手。一人一人とは話すことが出来るけど、たくさんの人が私のことを見ていると緊張する。すごく早口になる。
・織姫と彦星は一年に一回しか会えない。しかも雨が降ったら会えないから、会える回数は一年に一回よりも少ない。それなのにあれだけ愛し合っている。私たち(田村さんとファン)は織姫と彦星よりもたくさん会っている。次はいつ会えるのかなと思うけど、シングルが出るということはその分リリース・イベントがあるし、名阪ツアーもある。

呼吸するのを忘れる感覚だった。(もちろん、実際には呼吸をしていたが。)私は田村さんの歌声とバンドの演奏にじっくりと聴き入り、曲が終わる度にふーっと息を吐き出していた。私はHello! Project現場での経験から、夢中になるとはすなわち声を出して身体を動かして場合によっては連続跳躍している状態だと思っていたが、こうやって声をほとんど出さずに全神経を音楽に集中させているのもまた夢中になっている状態なんだなと思う。

今日のコンサートはとても楽しかったが、近くの紳士のオイニーとの戦いでもあった。イルめな臭気を放つ汗。私は慣れているので平常心を保つことが出来たが、隣で観ていた友人は、コンサート会場で臭いオジサンは都市伝説かと思ったら本当にいるんだと後でびっくりしていた。彼によるとこれまで何度かHello! Projectの現場に連れてきたことがあるが、今日まで気になったことはなかったという。ただ、それでもなお終演後の我々は笑顔で感想を交わしていた。田村芽実さんの歌声が、近くの紳士の臭いに打ち勝ったのだ。ちなみに私はささやかな臭い対策(とB地区ポチ対策)としてTHE NORTH FACEのハンドレッドドライタンクNU61702を着用していた。最近はコレかショートスリーブドライクルーNU65113のいずれかを毎日、着用するようにしている。

今日の東京公演があまりに素晴らしかったので、私は大阪公演と名古屋公演のファンクラブ先行に申し込まなかったことを悔やんだ。終演後に新大久保ソルマリで友人にそれを伝えたら、今からでもチケットは買えるだろうということを言ってきた。その場で検索してみたら、何とeplusの先行受付中ではないか。しかも期限が明日まで。いちにち考えようと思ったが、今のうちに申し込んだ方がいいという悪魔の囁きを友人から受け、即決して申し込んだ。遠征費用がかかろうとも、間違いなくそのお金を出すだけの価値がある。(両公演ともに当選した。)

自分の有限なお金と時間を費やす対象。田村芽実さんの比重を高めなければならない。最近はHello! Projectの現場をそこまで心から楽しいとは思えないことがよくある。田村さんのコンサートではHello! Projectの公演では得られない感動を得られる。没頭できる。没入できる。

今日で2019年が半分、終わった。

2019年7月11日木曜日

JuiceFull (2019-06-17)

いちど自分の中でJuice=Juiceの優先順位を下げようと思っている。Juice=Juiceの現場にいても以前のように没入できないことが続いている。自分の体調が悪かったのだろうと思っていた。もしくはテストステロンが不足しているのかもしれない。しかしそれだけでは説明がつかない。つばきファクトリー、田村芽実さん、横浜F・マリノスを観るときは、熱中できるんだ。明らかに感覚が違う。原因が何なのか、明確に分からない。メンバーさんの脱退加入と、好みではない楽曲のリリースが続き、私が無意識で抱いていたJuice=Juice像が崩れてきたのかもしれない(楽曲はともかく、私はメンバーさんの追加に対する不満は一切ない)。いずれにしても、この集団から少し距離を置いてみる。次のツアーは、10月10日(木)のJ=J Dayだけを申し込んだ。10月10日に、私は2015年から四年連続でJuice=Juiceの公演を観ている。まだそれを途切れさせるまでには踏ん切りがつかない。(もちろんファンクラブ先行で落選し結果として途切れる可能性はある。)

Hello! Projectはつばきファクトリー中心で。それ以外の集団については今よりも厳選する。9月7日(土)と8日(日)には田村芽実さんのコンサートを観るために大阪と名古屋に行く。横浜F・マリノスの試合も、ニッパツ三ツ沢球技場で開催される試合はなるべくスタジアムで観たい。11月、12月には上原ひろみさんの日本ツアーがある。出来れば二、三回入りたい(eplus先行で三公演に申し込んだ)。アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領がアメリカ・ファーストを掲げるのと同じように、ここ数年は私の生活もHello! Projectファーストだった。それを変えつつある。今年の夏ハロコンはAパターンとBパターンの一回ずつだけにしておいた。それでも二回は入るのだが、以前は三、四回、いちばん多いときは五、六回入っていた。こぶしファクトリーとBEYOOOOONDSの演劇女子部も二公演だけにしておいた(まだ当落は発表されていない)。もっと観たとしても満足できる可能性が高い。でも、そうやってHello! Projectばかりで予定を埋めていくのは避けたい。今の自分が本当に観たいのは何なのか、Hello! Projectという枠に限定せずに考えて、そこにお金と時間を使いたい。せっかくの休みに(もしくは平日に労働を調整して)、貴重なお金と時間を使うのだから、心の底から楽しみに出来るようにしたい。Hello! Projectだけを観ていると却ってHello! Projectの優れている点やありがたみが分からなくなる。かといって別に他のアイドルさん(スタダとか、AKBとか)には『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)。そういえばfox capture planのコンサートにまた行きたい。最後に行ってからだいぶ時間がたつ。

今日は宮崎由加さんの、Juice=Juiceとしての最終出勤日だった。明日からも彼女はショウビズの世界には残るので、永遠の別れではない。ただ、Hello! Projectからの退団というのは大きな節目であるのは間違いない。当ブログの熱心な読者はご存知の通り、私はしばらくの間Juice=Juiceファーストだった。宮崎由加さんファーストだった。それらが崩れるには二つの契機があった。まず小野瑞歩さんの登場。彼女を追いかけるためにつばきファクトリーを観に行く機会が増え、いつしか同集団をJuice=Juiceよりも重んじるようになった。次に、Juice=Juiceへの稲場愛香さんの加入。2018年11月23日に甲府で彼女のダンスを最前で観てしまい、目と心を奪われた。宮崎由加さんから稲場愛香さんへの支持変更を決意した。そのわずか4週間後、宮崎由加さんの退団が発表された。このタイミングはバツが悪かった。まるで私が宮崎さんの退団を見越して稲場さんに乗り換えたようにすら見える。何て冷たいんだ。(もちろんそんなのは私が勝手に考えていることで、誰も気にはしないのだが。)もし宮崎さんの退団が11月23日の時点で分かっていれば、その時点で稲場さんに鞍替えはしていなかった。宮崎さんのJuice=Juiceでの最後を見届けるまでは支持変更を我慢していただろう。

もし小野さんがHello! Project研修生からつばきファクトリーに昇格していなければ、もしあの日に甲府でJuice=Juiceのコンサートを観ていなければ、私は宮崎さんの最終公演にもっと感情を移入できていたかもしれない。しかし、今の私とそれらの出来事が起きる前の私は違う。あの頃と同じ熱量で宮崎さんに思いを寄せることは出来ない。というか、これは宮崎さんに限らずなんだけど、過去に誰か・何かに心酔していたときの感情を思い出すのが難しい。たとえば五年前の私が℃-uteや岡井千聖さんをどういう気持ちで応援していたのか、鮮明には分からない。今、語ったとしても後知恵の捏造が多分に入り込むだろう。興味関心が次に移ったら、前に自分が抱いていた気持ちはだいぶ忘れてしまう。自分の記憶力が弱いというよりは、人間の脳がそう出来ているのだろう。Daniel Gilbertの“Stumbling on Happiness”を読めば分かる(『明日の幸せを科学する』という題名で日本語の文庫版が出ている。一読をおすすめする)。その場その場で娯楽を消費して、時間がたつと忘れてしまうだけでは悲しい。私が現場ごとに感じたことや考えたことをブログに書き続けるのは、そうなることへのせめてもの抵抗なのだ。

宮崎由加さんはHello! Projectに在籍してきた中で最も偉大な功績を残したメンバーさんの一人だ。松永里愛さんと工藤由愛さんがJuice=Juice加入を知らされたときの様子を思い出してほしい(まだの人はこの動画を観よう)。この集団に心から憧れていなければあの反応にはならないはずだ。宮崎さんをはじめとするJuice=Juice初期メンバーさん五人は、名声が確立した集団を引き継いだわけではない。ゼロから始めて、Hello! Projectを代表する集団を作り上げたのだ。たしかに一般的な認知度ではモーニング娘。には歯が立たないが、少なくともステージでの立ち振る舞いや歌唱、ダンスの習熟度に関してはモーニング娘。に引けを取らない。むしろ凌駕している。MISSION 220という後にも先にもないクレイジーなライブハウス(和製英語)行脚。あり得ない数の公演。疲労、ストレス、不満で集団が空中分解してもおかしくなかったはずだ。そして、日本武道館での単独公演という夢を叶えた後、集団のタガが緩んでも不思議ではなかったはず。そうならなかった。彼女たちはその後も継続的に地方ライブハウス(和製英語)から日本武道館まで大小さまざまな規模の会場での公演を成功させ続けた。集団を去る初めての初期人員になったという事実が、宮崎さんがリーダーとしていかに優れていたかを物語っている。誰もリーダー宮崎由加さんに愛想を尽かさなかった、ついていったということだからだ。(別に集団を抜けることがリーダーへの不信任を意味すると言っているわけではない。仮にそういう気持ちがあったとすると2013年から2019年まで全員が残り続けるのは難しかっただろう、というのが主旨だ。)

Juice=Juiceを選んだのを皆さんが正解にしてくれました、という旨のことを宮崎さんはおっしゃった。正解にするというのは、彼女が好きな言い回しだ。人生の選択はあらかじめ正解かどうかが決まっているのではなく自分次第で正解にしていくものなんだというのを誰かから聞いて感銘を受けたんだと、以前にどこかで彼女がおっしゃっていた。ご存知のように宮崎さんはJuice=Juiceでの活動に専念するために大学を中退している。アイドルさんというのは若さを売っている(我々側もそれを求めている)面があり、年齢に関係なくいつまでも出来るわけではない。将来カタギの職業に就く可能性を考えると、高卒よりも大卒であった方が選択の幅が広がるし、待遇面でも有利なはずだ。私もJuice=Juiceを応援して正解だった、宮崎由加さんを応援してよかったと書いて締めれば文章としてはキレイにまとまる。はじめはそう書こうとしたが、躊躇する。なぜなら、さまざまな試練を乗り越えてJuice=Juiceを拡大した宮崎さんと違い、私はお金を払ってそれを見ているだけだからだ。宮崎さんはJuice=Juiceをやり遂げて次の道に進んでいるが、私は他の集団や個人に目移りしながら観客としての生活を続けているだけだ。Juice=Juiceが発展したからといって、私の人生は発展していない。彼女たちの努力は、私の努力ではない。むしろ自分の人生ですべき努力から逃げているからこそ、私はいつまでも少女たちを追いかけ続けることが出来るのだ。人生の選択が正しかったかどうかは、後にならないと判断できない。たとえば私は一年と二ヶ月ばかり無職だったことがあるが、その後に再就職して安定した生活を手に入れたからこそ無職だった時間に意義を見出すことが出来た。あの期間があったから今の自分があるんだと思える。もし今でも無職を続けていれば、無職を選んだのは失敗だったとしか思えなかったはずだ。これまでに自分が歩んできた道は正解だったと胸を張れる人生を送れれば、宮崎さんに顔向けが出来る。それが出来る自信は、私にはない。

2019年7月3日水曜日

遙かなる時空の中で6 外伝 ~黄昏ノ仮面~ (2019-06-14)

三國さらんさんという着エロ女優さん(引退済み)が、少し段原瑠々さんに似ていませんか? 分からない? ちょっと今、検索して画像や動画を見てみてください。どうですか? え、似ていない? それは失礼しました。今の発言は取り消します。Juice=Juice関係の記事で書こうと思っていたのですが忘れていました。ですのでここに記した次第です。三國さらんさんは『純粋少女~milky pop~』、『欲望のスイッチ』、『全力黒髪少女』、『清純クロニクル』、『胸ポチは神対応』、『さよならの前に~引退作~』という五枚のDVDをドロップしています。それらを再録した総集編Blu-ray『キミはボクのすべて』が彼女の集大成です。実に5時間50分にも及ぶ収録時間、DVDよりも優れた画質。もし画像や動画を観て気になったのであれば『キミはボクのすべて』を買っておけば間違いはありません。

それとはまったく関係ないのですが、つばきファクトリーさん主演の演劇『遙かなる時空の中で6 外伝~黄昏ノ仮面~』を観てきました。金曜日だったのですが、会社は休みでした。正確にはフレックス勤務の人は休みで、そうではない人は出勤日でした。私はフレックス側の人間なので、この日の公演に申し込みました。土日の公演よりも応募が少ないだろうから、いい席が来やすいのではないかという下心もありました。先週の土曜が4列と11列で、今日は再び4列でした。平日の部だったのがどれだけ寄与しているのかは分かりませんが(土曜にも同じ列をもらっていたので)、期待に違わぬ結果を得ることが出来ました。

休みのはずだったのですが、実際には労働をすることになりました。フレックスではない人たちに合わせる必要のある業務があったので。出社はせず、家や外の喫茶店で対応しました。労働に屈したようで不本意な部分もありましたが、休出代をもらえる喜びの方が大きかったです。事実、今日のチケット代や食事代はそれで十分にまかなえましたから。19時からの劇を観る以外の用事はなかったので、特に問題はありませんでした。ラップするための生活 生活するためのラップというカルデラビスタさんのライン(曲名を克明に覚えていませんが1stアルバムのどれかの曲です)が今の私にも通ずる部分があります。Hello! Projectを観るために賃金を得る。労働のたえの活力をHello! Projectからもらう。

今日の観劇は三回目で最後でした。もっと入るという手もありました。それだけの価値を私は先週の土曜に感じていました。ただ、今からチケットを買い足してもどうせ後ろの席になるだろうと思い、お代わりは踏みとどまりました。4列、11列、4列で終えた方が、その後に10何列とかを何回か付け加えるよりもよき思い出になると考えたのです。たとえば5列以内が保証されていれば迷わずに買っていたでしょうね。まあオークションや個人間の取引ではないかぎりそんなことはないのですが。あと、土曜日の公演後にチケットを買わなかったのは、購入特典として開催されるお渡し会でメンバーさんと対面するのを想像しただけで緊張したというのもあります。特に小野瑞歩さんには有馬一さんがカッコよかったと直接お伝えしたかったですが、実際に目の前に小野さんがいるのを想像すると何も言えないで終わるような気がしました。それに、そもそもお渡し会に小野さんが登場なさるかは分からないし(誰が出るかはどこかに書いてあったかもしれません)。そういうピュアなハートを持ったファンなんです、私は。

一回目(6月8日の昼公演)が4列の中央ブロック左端付近、二回目(同日の夜公演)が11列の中央ブロック真ん中付近。そして今回が4列の中央ブロック右寄り。理想的にはすべての座席から観たいなと思いました。というのが、同じ場面でも位置によって見え方が異なるからです。たとえば演者さんが客席から見て右に顔を向けたときは、右側の席からだと表情がよく分かります。左側だと、席によっては顔が見えないかもしれません。また、前方の席だと演者さん個人個人の細かい表情や動きが見えますが、後ろの席だとステージ全体を一望できるので、より集合的な表現として鑑賞することが出来ます。ですので、なるべく多くの位置から観た方が、文字通りさまざまな角度から舞台を楽しむことが出来るのです。とは言っても、選べるのであれば前の方で観たいですけどね。もちろん、何度も観たいと思える演劇であるのが前提です。『遙かなる時空の中で6 外伝~黄昏ノ仮面~』は繰り返しの鑑賞に耐える、良質な舞台でした。私はHello! Projectの演劇女子部を、下手をするとコンサートよりも好きかもしれないくらいですが、何度も観る程の出来ではないなと思うときもあります。たとえば『アタックNo.1』はそうでした。

今日この公演を観に来てよかった、三回入ってよかったと心から思える出来事が、劇中に起きました。主な登場人物が勢揃いして仲良く花火を鑑賞する場面があります。本来の筋書きだと小野瑞歩さんがジャケットの中に隠し持っていたコロッケを他の人たちに奪われます。俺の分も残しとけよと小野さんが言うと、これが最後の一つですと言って金光留々さんに食べられてしまいます。ところが今日はその最後のコロッケを、金光さんが落としてしまったのです。ステージから転がって最前の観客の前に落ちました。ここからのアドリブと連携が見事でした。俺の分も残しとけよまでは台本通りだったのですが、あれが最後でした、と金光さんは下を見て言ったのです。何で俺の大事なコロッケを落とすんだ、という小野さんの切り返しに、観客からは歓声と拍手が起きました。そこに須藤茉麻さんが畳みかけます。ステージから下りてコロッケを回収すると、(金光さんに向けて)お前、後で食えよと言ったのです。地面に落ちたのを食わせるのか? と小野さん。食えるものは無駄にしちゃいけないからよ、と須藤さん。大喝采。これぞ生の醍醐味。私にとっては複数公演に入ったことへのご褒美でした。初見だったら台本にない出来事だと知り得なかったので。この日、この公演だけで起きた奇跡。この場面に居合わせることが出来ただけで、今日の回に入った意味がありました。

何回か観たからこそ気付けた変化の一つとして、岸本ゆめのさん率いる鬼たちに小片リサさんを奪われた後に小野瑞歩さんが恨めしそうに発する、鬼め! という台詞が、6月8日では叫びだったのが、今日は低く、唸るような言い方でした。おそらくですが、叫んだときには小野さんの元の女性らしい声の成分が出ていたので、役の男性らしさを維持するために抑えたのだと思います。小野瑞歩さん扮する有馬一隊長がいる『遙かなる時空の中で6 外伝~黄昏ノ仮面~』の世界に浸る喜びは、三回目でもまったく色褪せませんでした。笑わせる場面でなくとも、自ずと頬は緩み続けました。大半の時間を私はニコニコしながら観ていたはずです。今回の演劇女子部のように、思わずニンマリしてしまう、心から楽しめる公演だけを私は観たいです。Hello! Project以外も含めて、自分が本当に今一番観ていて幸せを感じられる場所に足を運びたいです。惰性で、何となくファンクラブ先行に申し込むのではなくて。私の人生 エンジョイ! ですよ。最大限に。

今日のゲスト出演者はこぶしファクトリーの和田桜子さん(男役)と野村みな美さん(女役)でした。別の時代に行けるならどの時代に行ってみたいかという、ゲストへの定型の質問に、安土桃山時代と答えた和田さん。なぜかと小野さんに聞かれ、ラップで回答していました。安土桃山と大穴で踏んだことは覚えていますが、詳しい内容は忘れました。何だそのしゃべり方は? あとで教えてくれないか的なことを小野さんが言うと、あー全然、いいですよ、教えます的な感じでした。これで本当に後で和田さんが小野さんにラップを教えていたら面白いですね。野村みな美さんは、戦争(争いだったか)のない平和な時代に行きたいと言っていました。それを聞いた小野さんは、それはたしかに素敵だな、俺たちは戦ってばかりで大切なことを忘れていたのかもしれないというようなことをしみじみと言っていました。こういう箸休めのセグメントでも小野さんは役柄を崩さず、クソ真面目な反応をしているのが可笑しかったです。和田さんと野村さんが去る前の告知中も、出てくる単語に対して、こぶしファクトリー…? シースタジオ…? 等といちいち大袈裟に訝しがって隣の秋山眞緒さんに確認していました。