2016年5月26日木曜日

チック・コリア&小曽根真 ピアノ・デュオ プレイズ・アコースティック(2016-05-19)

―ハロプロのコンサートばかりに足を運んでいる印象だったが

ちょっと待ってくれよ、それじゃまるで俺がアイドルオタクみたいじゃないか(苦笑)。それはとんだ誤解だね。たしかにここ1-2ヶ月はハロプロの現場が立て込んでいる。4月は8回、5月に至っては10回だ。でもそれは俺にとって普通じゃないからね。2015年に参加したハロプロの現場は29回だった。それ以前の年もそんなもので、平均して月に2回くらいだよ。直近の状況はクレイジーさ。2日連続で2公演ずつを観るなんて、今までに経験したことはなかった。でも今回ジャズ・ピアニスト二人によるコンサートのチケットが一枚あまったときに俺に声をかけてくれたということは、その友人がそういう音楽に理解がある人間として俺を認知しているということだからね。チケットは12,000円もするから、俺なら喜んで来るだろうという確信がないと誘えないよ。彼は大学生のときからの付き合いだから、君よりも俺のことを知っている。

―小曽根真と、チック・コリアのピアノ・デュオ

ステイジにはピアノが2台だけ置いてあって、演者は二人のピアニストだけ。ドラムも、ベースも、ギターも、ヴォーカルもなし。チック・コリアに関しては“Now He Sings,Now He Sobs”というアルバムを聴いて、気に入っていた。後は上原ひろみとのデュエット・アルバムも聴いたよ。小曽根真のことは知らなかった。でもチック・コリアと対等に共演するくらいの大物だし、実際に演奏を聴いてみて凄いのが分かったから、アルバムを聴いてみるよ。一枚聴くならどれだと友人に聞いてみたら“Wizzard of Ozone”とのことだった。

―六本木には普段も来るのか

いや、まず来ないね。俺が行くのはだいたい池袋で、たまに新宿、原宿、青山といったあたりに足を伸ばすくらいかな。駅を出た瞬間から雰囲気が違った。洗練されている感じというか、お金を持っている人が集まった町という感じがする。ストリート感がない。同じ東京でも池袋とはだいぶ違う。まあでも六本木は治安が悪いと聞くから、ちょっと路地裏に入ると違うんだろうね。19時の開演より前に友人と会うことが出来たので、彼の案内で「FISH」というカレー屋さんに入った。大辛チキンカリーライス1,100円を食った。フォーマットは日本のカレーライスなんだけど、カレーの味付けはだいぶインド風に寄せていた。カルダモンの香りが効いていた。FISHという店名なのに魚のカレーがなかった。魚という意味ではなく、それぞれのアルファベットが何かの単語の略だったんだけど、こじつけっぽかったし、何でFISHと名付けたのかはちょっと気になるね。

―サントリー・ホールも初めてか

そうだね。変わった造りだった。ステイジを取り囲むように客席があった。俺らの席はステイジの後ろ側の2階だった。キャパは2,000人らしくて、中野サンプラザと同じくらいなんだけど、こっちの方がステイジと客席が近かった。こういう構造のコンサートホールがもっとたくさんあると面白い。ハロプロのコンサートもこういうホールで観てみたい。チック・コリアもステイジに立って全体を見渡して、何て素晴らしいホールなんだと言っていた。

―出演者たちの登場の仕方が変わっていた

あれには意表を突かれた。客席の後ろ側から通路を通って歩いてきたんだよ。いわゆる降臨というやつだね。俺らから見るとステイジを挟んで向こう側だったから、よく見えた。観客とのハイタッチに応じながら上機嫌に笑顔を振りまいていた。

―どういう雰囲気だったのか

小曽根さんとコリアさんがお客さんを楽しませようとしているのがよく分かった。観客は楽しんでいたし、小曽根さんとコリアさんも楽しんでいた。リラックスした雰囲気だった。以前キース・ジャレットのコンサートを観に行ったときは客には咳払いも許されていなくて異常な緊張感があったんだけど、それとは対照的だった。書かれた曲を演奏していたのに途中から乗ってきて即興に切り替わる場面が何度かあったんだけど、その度に小曽根さんは楽譜をわざとらしく下に置いて、コリアさんはもっと大げさに投げ捨てるようにしていた。その度に笑いが起きた。一番おもしろかったのはコリアさんが弾いた音を観客にハミングさせるコール・アンド・レスポンスをやったときだった。客ははじめ手拍子を求められているのかと思ったけどコリアさんのジェスチャーから意図をすぐに理解しハミングに切り替えていた。

―20分の休憩があった

直前に飯を食って水を飲んだからか、休憩に入るまでは少し眠かった。休憩があったおかげで目が覚ますことが出来た。ジャケットを脱いで銀色のシャツで登場した小曽根さんは「よかったですね、まだ(観客が)残ってくれていて。楽屋で『あんなに好き放題に弾いてお客さん残ってくれるのかな』って心配していたんですよ」と言って和ませていた。小曽根さんの振る舞いや一つ一つの発言はサービス精神に溢れていたし紳士的だった。裏でスタッフに暴力をふるうとか、変態的な性的嗜好でも持つとかしないとご本人の精神的なバランスが取れないんじゃないかと思ったくらいだよ(笑)。

―ご友人はどういうことを言っていたのか

ただのリスナーに過ぎない俺と違って、彼はピアノが演奏できるし、絶対音感の持ち主だし、専門的な知識がある。彼はホールの音響を絶賛していた。コンサート全般にも感激していたし、ダブルアンコールの曲が『スペイン』だったのはだいぶ嬉しかったみたいだ。俺は一部を除き演奏された元の曲を知らないから書かれた部分と即興の境目が分からなかったんだけど、彼によると大まかには一緒に弾いているところは書かれているが個別に弾いている箇所は即興だとのことだった。21時20分頃に終演した。その後にくそフェイクな焼鳥屋で飲んだんだけど、いちばん印象に残っているのが絶対音感があると音楽をヘルツで説明できるという話。たとえば今日の演奏を聴いて、○○ヘルツの音と○○ヘルツの音が組み合わさっているから気持ちいいんだと言えるらしいんだ。俺だとせいぜい、この感じがチック・コリア節だなというのを感覚的にふわっと理解できる程度で、客観的に言葉で説明することは出来ない。音楽の知識と才能があったら数字で説明できてしまうのかと恐れ入った。

2016年5月23日月曜日

九位一体 (2016-05-15)

本を持ってくるのを忘れた。コンビニで買った『実話ナックルズ』6月号を読みながら、武蔵野線で三郷駅に向かった。香川県の藤井学園寒川高等学校で男性教師が女子生徒のSM写真を大量に撮っていたのが明らかになったが学校側が隠蔽しているという驚くべき事件を知った。ネットで検索したが本件を告発した日本タイムズ(旧四国タイムズ)以外はほとんど扱っていなかった。意外なことにそれほど話題になっていないようだった。『実話ナックルズ』では教師がAと記載されていたが日本タイムズの記事には実名が載っていた。

13時半頃に会場前に着いた。紳士2人組が佐々木莉佳子さんの誕生日メッセージを募って練り歩いていた。応じている人はあんまりいなかった。私も佐々木さんがお誕生日を迎えられるからといって特に伝えたいことはないので下を向いて『実話ナックルズ』を読み続けた。検索したところ彼女の誕生日は5月28日だった。まだ少し先なので今日のコンサートでは特に注意すること(リカココールをするとか)もないだろうと踏んで、忘れることにした。「夏の復帰が囁かれている、元好感度タレント・ベッキー」「名前も顔も出自も、留学もMBAも年商30億円も、全部ウソだったことがバレた、ショーンKこと、ショーン・マクアドール・川上。本名・川上伸一郎」といった小気味のいいリズムの文章に酔いしれた。私もこういうリズムを習得したい。開場が13分遅れたが『実話ナックルズ』のおかげで待ち時間を有意義に過ごすことが出来た。

アンジュルムの現場は私の主戦場ではない。第一に、私が応援する集団はJuice=Juiceと℃-uteであってアンジュルムは担当範囲の外である。限りあるお金と時間の多くは、既にJuice=Juiceと℃-uteで予約されている。第二に、アンジュルムはライブハウス(和製英語)でのコンサートがほとんどで、座席が設置された会場での公演が滅多にない。私はライブハウス(和製英語)でのコンサートには積極的に足を運ばない。よほど番号がよくないかぎりは鑑賞環境が劣悪になりやすいからだ。前回アンジュルムのコンサートに来たのが2015年の11月29日だった。日本武道館。福田花音さんの最終公演。約半年ぶりに来た今日は、コンサートホールを回る「九位一体」というツアーの公演である。明らかに三位一体というキリスト教の用語から取った造語だが、おそらく決めた人たちは宗教的な意味合いを込めたつもりはないだろう。本来は宗教色の強い言葉を、宗教的な意味を持たせずに使えるのは日本ならではなのかもしれない。

彼女たちを応援するのは私の職務分掌ではないものの、アンジュルム(旧スマイレージ時代を含む)の楽曲はとても好きである。特に『大器晩成』以降は同時期の℃-uteの曲よりも断然好きだ。だからコンサートホールでの公演が開催される数少ない機会には足を運びたくなる。そして私はこの9人組全体にそこまで興味を持っている訳ではないが、田村芽実さんに対してはハロプロの中でも比較的つよい関心を寄せている。田村さんは5月30日の日本武道館での公演をもってアンジュルムを退団する。彼女を観られるうちに観ておきたいというのも、私を三郷市民文化会館に向かわせた大きな理由だ。

まだスマイレージという名称だった頃の「焼き肉事件」以降、この集団には事務所から冷たく扱われているという印象がつきまとう。どこまで本当なのかは別にして、どうもそういう雰囲気がある。ライブハウス(和製英語)を回らせるばかりでコンサートホールでの公演をなかなかやらせてくれないとか、ハロコンの打ち上げで出されたケーキに各グループの名前が書いてあったがスマイレージだけ忘れられて後から名前を付け足されたとか、そういう話に事欠かない。他の集団がホールでコンサートをやる際には開催されることが多い開演前のハロプロ研修生によるopening actが、今日の公演ではなかった。こういう細かいところから事務所による扱いがいい加減というかちょっと手抜きというか、そんな風に感じられて(実際はそんなことはないだろうし勘ぐり過ぎなんだろうけど)「スマイレージはいつもこうだ」というメンバーたちが自嘲して発していたフレーズが頭に浮かんだ。

今日の時間割は1回目が14時開場の15時開演。2回目が17時半開場の18時半開演。昨日のJuice=Juiceとまったく同じ時間だった。今日も両方を観させてもらう。1回目の席は19列目。後ろから2列目だったが、クソ席ではまったくなくて、十分に見やすかった。おそらくこの会場にクソ席はほとんど存在しない。双眼鏡を駆使して細部も楽しめた。飛びまくる青年たちいわゆるマサイは最前列に数名いるのみで全体としてはごく少数に見えた。和田リーダーはじめメンバーの方々がジャンピング行為に不快感を示しているとTwitterでよく目にしていたので、そういう教育の効果なのかな、と思った。

コンサートの一曲目がいきなり『次々続々』というとんでもなく格好いい新曲で、のっけから最高潮にぶち上げてくる。Introでアンジュルムの皆さんが隊列を組んだ軍隊のようにこちらに歩いてくる。そのときに最前の中央にいる上國料萌衣さんの威風堂々としたバイブスがハンパない。この曲に見られるようにアンジュルムのダンスは我々に圧をかけてくるというか、迫ってくる感じがする。なぜなんだろうと考えたが、第一に人数が9人と℃-uteやJuice=Juice(ともに5人)に比べて多いので迫力を出しやすい。第二にアンジュルムに改名してから『大器晩成』『乙女の逆襲』『出過すぎた杭は打たれない』『ドンデンガエシ』『次々続々』等々、上がらずにはいられねえだろ!(戦極MC BATTLE第5章、晋平太戦のDOTAMA)と誰もが思う曲に恵まれている。第三にリーダーの和田彩花さんを筆頭に、彼女たちの中に「スマイレージはいつもこうだ」精神というか、リメンバー・パール・ハーバー的なギラギラした復讐心があって、それがステイジ・パフォーマンスの力強さにつながっている気がする。

アンコール後に勝田さんは「曲が始まるごとにおーという反応があって、みんなちゃんとセットリストを見ないで来てるんだなと思った」と言った。和田さんは「ホール・ツアーはもう一度できる保証はない」と繰り返し、ここでコンサートが出来ているありがたみを噛みしめているようだった。℃-uteとJuice=Juiceは熊本地震の被災者のための募金箱を設置している旨をコンサートの冒頭で述べていたが、アンジュルムのコンサートではアンコール後の最後に話していた。

いい会場で、いいコンサートを観られたのは間違いないが、会場を出た私は淡々とした気分だった。何が悪かったという訳ではないのだが。Twitterを開いたら同じコンサートを観ていた方が(5月7日に行われた)名古屋での夜公演は感情的だったのに対し打って変わって普通のコンサートだったというようなことを書いていた。何となく分かる気がした。もしここで誰かが目の前に現れて、次の公演のチケットを買い取らせてくれと言ってきたら売ってしまうかもしれないという考えがふと頭をよぎった。しかしそんなことはあり得ない。5万円出すと申し出る人が現れても、私は首を縦に振らないだろう。なぜなら昨日のJuice=Juiceの18時半の回に続いて、私には4列という絶好の位置が割り振られているのだ。ハロプロのコンサートを良席で鑑賞できる喜びは、お金には換算できない。仮にチケットと引き替えに数万円を手にしたとして、コンサートを観る以上の喜びを与えてくれるお金の使い方は私にはない。

駅と会場の間にある中華料理店「旺仔(おうこ)」に入った。生ビールを飲んで、よだれ鶏と、枝豆と、台湾牛肉を食った。台湾牛肉が唐辛子入りで、でも辛すぎず、好みの味付けだった。1,630円。この店はリアルだ。もう1杯飲みたかったが、我慢した。2回目の公演に向かうため、会場に戻った。

『実話ナックルズ』6月号は「何考えてるか分からねえ奴ら 10代の正体」という特集を組んでいる。10代にガキというフリガナが振ってあるのが風流である。ガキと言えば、後ろの列で席交渉の声が聞こえてきた。お友達と連番したいから変わりたいだの、いい歳して子供のようなことを言っていた。これはピクニックじゃないんだよ。馴れ合いじゃないんだよ。コンサートくらい一人で観ろ。私の席は、4列のど真ん中だった。演者の皆さんがダンスの場位置を把握するために、ステイジの床にはいつも番号の書いた紙が貼ってあるのだが、私の真正面に0と書いてあるのが見えた。0番というのがまさに真ん中だ。これだけ前方でしかも中央付近となると、図々しい奴らがウジャウジャ沸いてくる。幸いにも私には声をかけてこなかった。

最初の挨拶で田村さんが「私事(わたくしごと)ですが、最後の埼玉でのコンサートなので最高級の田村芽実をお見せしたいと思います」と言った。最後のさい、埼玉のさい、最高級のさいで韻を踏んでいる、と私は思った。『ヒトラー演説 - 熱狂の真実』という本に、ヒトラーが用いた技巧の一つとして、強調したい言葉に子音を揃えて韻を踏むというのが書いてあった。田村さんは韻を踏むだけでなく、ステイジではセンターの位置を踏みまくっていた。真ん中で鑑賞させてもらったことで、田村さんと正対することの多さに気付き、こんなにも0番に来るメンバーになったことに驚いた。

恋ならとっくに始まってる』はアンジュルムに改名してから初めてのつんくによる曲である。歌謡曲風味のつんく節がたまらない。最初の「もう」から始まる台詞で一気に場の空気を支配する田村さん。「背中を押される」で意外な凛々しさを見せる勝田さん。「もう止めたり出来ないよ」「もう何も怖くないよ」の変則的なリズムを完璧に乗りこなす竹内さん、田村さん、和田さん。『次々続々』もそうだが、YouTubeや音源で視聴して最高だと思っていた曲が目の前で実演されるのは、感激もひとしおだった。天文学的な予算を費やして作られた映画を観ているようだった。やられっぱなしだった。ハロプロのコンサートをステイジの間近で鑑賞するのをバーチャル・リアリティで体験できる装置の開発が急務である。それが実現すれば人間はもっと幸福になり、世界から争い事が減る。

アンコール後のコメントで勝田さんは、昼と同じように曲が始まったときのおーという新鮮な反応があったと言った。もしかして昼とは全然違う人たちが観に来てくれているのかな?と観客に挙手を求めた。すると、過半数は夜公演だけの参加だった。それを見て、こんなにたくさんの人が観に来てくれるのが嬉しいと言っていた。実際、アンコールの掛け声が15時の回では「たけちゃん! お帰り!」、18時半の回では「たけちゃん! たけちゃん!」と異なっていた。観客が大幅に入れ替わっていたのだろう。勝田さんだけでなく、他のメンバーもお客さんがたくさん来てくれること、ホールでコンサートが出来ることの嬉しさを何度も強調していた。竹内さんも和田さんも、秋もホールでツアーがやりたいと言っていた。アンコール後の衣装では何人かのおへそが見えるのだが、歌い終わった後に整列した際、田村さんがパンツ(下着ではなくズボンのことです)をおへそが隠れる場所まで上げていて、恥ずかしいのかな、と思った。

唯一の不満は、最後の最後だ。今日は竹内さんの凱旋公演だったのだが、ダブルアンコール(「たけちゃん!たけちゃん!」)が始まるや否やすぐに公演終了の場内announcementが流れ、拡声器を持ったスーツ姿の青年がヤンキーゴーホーム的なことを連呼して客の追い出しに躍起になっていた。しばらくは我々も「たけちゃん!」と叫び続け抵抗したが完全に無視された。私はここ1ヶ月で今日を除いて凱旋コンサートに3回も参加したが(千葉での℃-ute鈴木さん、埼玉でのモーニング娘。工藤さん、同じく埼玉でのJuice=Juice金澤さん)いずれの回も夜公演ではダブルアンコールが起きて凱旋者が簡単な挨拶をしていた。てっきりお約束のようなものだと思っていた。それなのに我々のたけちゃん!コールは無慈悲にも封殺され、強引に終了させられた。しかしまあ、それはコンサート全体からすると些細なことに過ぎない。

アンジュルムの現場に、私はやや苦い思い出がある。2015年8月27日にHEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3というライブハウス(和製英語)で行われたコンサート。観客が割と静かでそれほど盛り上がらなかった。田村さんは我々のノリの悪さをチクチクと指摘し、次までに成長するように促してきた。中西さんは「埼玉県にはこの際たまには行く」という渾身の駄洒落への反応の悪さに(おどけながら)不満を表し埼玉の人は人見知りなのかと問うてきた。和田さんは「お知らせがあります」と言った後に観客が沸いたのを受けて、その声を公演中に出すようにと叱咤してきた。メンバーが埼玉県民に苦言を呈する場面が多く、後味が悪かった。コンサートは演者と観客が一緒に作り上げるものなので、演者が観客に要求するのは正当なことだ。観客はただ一方的にサービスを受け取るお客様ではない。ただ、その場にいて、おとなしかった人も含めてみんな楽しんでいたのを私は分かっていた。だから、ただ盛り上がっているかどうかだけを指標にして、悪いことでもしたかのように断罪してきたことには反感を覚えたというのが正直なところだ。この一件以来、アンジュルムには一種の苦手意識があった。しかし今日の公演を経て、その印象は完全に払拭された。

冒頭でご本人が宣言されていた通り、最後の埼玉で最高級の田村芽実を見せてもらった。田村芽実がいたアンジュルムがこれで見納めでも、私に悔いはない(実際には武道館での最終公演も観に行かせてもらう)。アンジュルムそして田村芽実の勇姿をこんなに近くで観させてもらうのはこれが最初で最後だ。絶好の位置から素晴らしいコンサートを観させていただいて、夢のような2日間だった。これ以上の幸せはない。私に素晴らしい席を割り当てていただいたアップフロントさんには本当に感謝している。

2016年5月21日土曜日

MISSION 220 (2016-05-14)

三郷のことは昨日の21時くらいまでさんごうだと思っていた。iPhoneで「さんごう」と入力したら「三郷市文化会館」と出てくるようshortcutを登録していた。昨晩、池袋のタイ料理店「ピラブカウ」にて友人と飲んでいて、明日はさんごうでJuice=Juiceのコンサートを観に行くと言ったところ、さんごうではなくみさとだという指摘を受けた。iPhoneのshortcutに入力していた「さんごう」を「みさと」に修正した。PF Flyersのスニーカー、Rebuild By Needlesのジーンズ、BattenwearのTシャツ、Engineered Garmentsのナイロンジャケット、MELOのバックパックという完璧な合わせで三郷市文化会館に向かった。花粉症が終わったと思ったらまた次の花粉症が来た。3-4月のに比べると軽いのだが、眼がかゆい。あいにく薬を持ってきていない。駅と会場の途中にある松本清さんが創業者のドラッグストアに入った。私の地元では1,500円で売っているアルガードの目薬が2,000円した。500円くらいのロートZ!を買って、差した。松本さんが薬を売ってくれたおかげで、コンサート鑑賞に支障がない程度にはかゆみが治まった。駅から会場までの間に興味深い飲食店がいくつかあったので、夕飯の場所には困らなさそうだ。

昼公演と夜公演という呼び方には違和感がある。15-17時は昼ではない。この時間に摂る食事は昼食ではないからだ。飲食店のランチ営業時間を考えると、昼というのは11-15時くらいだろう。もちろん中には17時までランチ営業をしている店もあるが、それは例外だ。大体の店は14時か15時だ。15時に店に入っても注文は受け付けてくれない。15時にいったん店を閉めるからそれまでには食い終えていないといけない。だから私は15時に始まって17時に終わるコンサートを昼公演と呼ぶのがしっくり来ない。同日に開催される2公演のうち時間が早い方と遅い方を区別するための便宜上の呼称としては昼公演と夜公演で十分だ。一種の専門用語としてあまり考えずに使えばいいのだが、文字にすると気になってしまう。では何と表せばいいのか? 今のところ私が考えつくのは開演時間を明記して、例えば15時の回、18時半の回とするやり方だが、昼公演と夜公演に比べて歯切れが悪い。最近ハロプロ構成員の誰かがブログで1部、2部という言い方をしていた(何のコンサートもしくはイベントだったのかは分からない)。昼ではない時間に行われる公演を昼公演と言うよりはその方が正確である。傾向としてはコンサートは昼公演、夜公演、イベントは1回目、2回目と言うことが多い。今日は、15時の回、昼公演、1部、1回目、どう呼べばいいのか分からないが、そのコンサートと、18時半の回、夜公演、2部、2回目、どう呼べばいいのか分からないが、そのコンサートの2回が開催される。私はその両方を観させてもらう。

15時の回、もしくは昼公演、もしくは1部、もしくは1回目:

私が会場に着いた時点で、開場前のグッズ販売は締め切っていた。ちょうど入り口を通りがかったときに紳士が係員にグッズ販売について聞いていたが、開場前の販売(「先行販売」と係員は言っていた)は13時半で終わったと係員は答えていた。入場列に並んだ。14時が予定されていた開場は10分遅れた。中のグッズ売場で、私がJuice=Juiceのコンサートを観に行かせてもらう際のルーティンである日替わりA5写真の宮崎さんと宮本さん各500円の購入を無事に済ませた。今日は金澤さんのも買うか迷った。なぜなら埼玉県は金澤さんの出身県であり、今日は彼女にとっていわゆる凱旋公演だからである。しかし、こういうところでいちいち財布の紐を緩めていると出費が際限なくなってしまうので(割れ窓理論)、日替わり写真は基本的に宮崎さんと宮本さんのだけを買うという自分に課したpolicyを守ることにした。

キングギドラの『トビスギ』に「ハイライフ なくちゃいらんなーい ハイライフ 震え止まんない 何回逮捕されても 何回解放されても ハーイラーイフ 止まんねえ」という歌詞がある。開演前に流れていた曲の一つが、その部分の引用元だった。アルバム『最終兵器』発売(2002年10月)から13年半越しに、あの箇所が何かの引用であるということを知った。秘密結社MMRがアルバム『リベラル~I'm Not DT~』収録の『餃子』で『トビスギ』の上記の箇所を引用しているのだが、『トビスギ』に元ネタがあったということは『餃子』のあれは孫引きということになるのか。だとするとこれが学術論文だったら指導教官から原典にあたるように厳しく指導されるだろう。というのは冗談として『リベラル~I'm Not DT~』は歌詞がユーモアに満ちていて、ラップは韻が固い正当派で安心して聴けるアルバム。お薦めする。秘密結社MMRは5月4日に2枚目のアルバム『スーパーヒップホッパーズ~幻の巨大魚編~』を出している。私は月末に受け取る予定。まだ聴いていない。

この会場には初めて入った。ステイジと客席が近くて、俄然ワクワクが高まってきた。私の席は14列なのだが、中野サンプラザの席に換算すると10列くらいの距離だろうか? ハロプロ研修生のopening actから自己紹介がなくなっていた。会場の空気は思ったよりも金澤さんの地元感が強く、赤いTシャツを着ている人が普段の現場よりも多い。開演直前にLunchMoney Lewisの“Bills”が流れている最中に「朋子!朋子!」のチャントが沸き起こった。それが曲のリズムと合っていて、LunchMoney Lewisとジューサー(Juice=Juiceファンの総称)たちのセッションのようで面白かった。こじんまりした会場だから観客の共通意志がまとまりやすいのかもしれない。コンサート中に金澤さんはこのチャントに言及し、こんなにたくさんの人に朋子って呼んでもらえることはないから…と言って喜んでいた。

開演前に暗雲が立ちこめた。前の人が、5本の棒を扇形につなげて一つにした、開演前の注意事項で明確に禁止されているタイプのケミカルライトを持っていた。あんなのを頭上に掲げられたら視界が大幅に塞がれるのは決定的だった。そうならない訳がなかった。規則を分かって(分からないはずがない)破るような輩が行儀よく振る舞う訳がない。後で言葉の限りを尽くしてこのブログでディスるつもりだった。ところが、思いがけないことに暗雲は去った。何とコンサート中、彼はケミカルライトを上げる高さを頭の高さくらいまでにとどめた上に、飛ぶ高さも回数も控え目だった。結果として、私のコンサート鑑賞の邪魔にはまったくならなかったのである。少なくとも迷惑オタクというラベルを貼ってディスる対象ではなかった。迷惑オタクの象徴である禁止物品を会場に持ち込む無法者ぶりと、その道具を他の観客の鑑賞を妨げないように配慮して使う紳士ぶりという、謎のバランス。拍子抜けするほどに行儀がよかったので、この紳士に感謝の念すら沸いてきた。不良の善行がそうでない人の善行よりも評価されるのと同じ原理である。

昨晩、植村あかりが宮崎由加を「もう嫌いです」「ばか姉め!タヌキ!」とディスるブログ記事を投稿し、DEV LARGEがK DUB SHINEをディスる曲のmp3がネット上に公開されたときと同じくらい唐突なビーフが勃発した。この公演で最初のしゃべりのセグメントはその二人が担当した。お互いが別の方向を向いて、なかなかしゃべり出さない。ざわつく客席。「何か(言うべきことが)あるんじゃない?」と口火を切る宮崎さん。ひたすらオウム返しをしてから「私は何もない」と一歩も譲らない植村さんは、ブログについて説明しろよという感じで宮崎さんに差し向けるが「ブログ書いたのあなたでしょ?」と反撃される。宮崎さんによると、今回のビーフの原因は宮崎さんがLINEのアイコンを変えたことだという。これまでは二人でお揃いのアイコンを使っていたが、宮崎さんが植村さんに断らずにアイコンを変えたことで植村さんが怒った。その後でアイコンを2人で写った写真に変えたにも関わらず許してくれないんだと観客に訴えかける宮崎さん。「さっきと言い訳が違う」と抗議する植村さんは「うさぎの変なやつ(最初に変えたアイコン)は2人の写真に変える間のつなぎだと言っていた。アイコンは1秒で変えられるのだからすぐに変えればよい」と怒りが収まらない様子。謝ってという野次が客席から飛んだが、謝るのは年に一度だけ、そうしないとタヌキの神様が怒ると言って宮崎さんは謝罪を拒否した。結局、2人は抱き締め合って和解した。一連のくだりが収束したところで残りの3人が合流したのだが宮本さんは「長いよ」と呆れ、高木さんは「どこからどう見ても難波のヤンキー」と植村さんの態度を表していた。「どこを見たの?」と植村さん。

宮本さんが高木さんとのビーフを打ち明けた。紗友希に言いたいことがあると切り出す宮本さんに「何それ? そんな打ち合わせしていない」と慌てる高木さん。宮本さんによると、耳チークをしているとブログに書いたところ、耳チークはけしからんという主旨のことを高木さんがブログに書いていて、私をディスってんのかと思った(ここで宮本さんはディスという言葉を使っていた)。これに対して高木さんは、あれはNAVERまとめを見て書いたことであって佳林のことではないと釈明した。謝ってという客席からの野次。高木さん、「許してウッキッキー」。

着替えを終えて戻ってきた宮崎さんが、先ほどステイジからはけてからあかりがチューしてきたと主張した。一方の植村さんは、キスしてきたのは由加だと主張した。「どんな嘘をつくの?」と宮崎さん。宮崎さんと植村さんのビーフについては、私は昨晩たまたまTwitterのTLに流れてきた植村さんのブログを見ていたから理解できたが、見ていなかったらキョトンとしていただろう。

今回のツアーは曲目にも演出にも緩急があって、時間が過ぎるのが驚くほど早いと私は感じる。通常のコンサートよりも実際に短いんじゃないかと疑ったほどだ。でも終演後に時計を見るときっかり2時間たっている。『続いていくSTORY』をじっくり聴いた後に温かい拍手が鳴り響くのが心地よい。“CHOICE & CHANCE”はJuice=Juiceの皆さんの歌と踊りの力強さが増し、ファンも乗り方を完全に心得ていて、会場が一つになる曲に育ってきていると感じた。“GIRLS BE AMBITIOUS”のはじめの煽りもJuice=Juiceの皆さんが毎回工夫をこらして観客を楽しく盛り上げようとしているのが伝わってくる。今日は金澤さんが担当した。会場を左半分と右半分に分けるという確実に半々になる方法で声を出させていた。

アンコールはいつもの「ジュース! もう一杯!」ではなく「朋子! 朋子!」だった。最後の挨拶では宮崎さんが、私は目が悪いがこの会場はステイジと客席が近いので後ろの人でも顔の造形…目、口等が認識できた。これは凄いことなんだと言っていた。コンタクト・レンズを入れても矯正しきれないくらい悪いということなのかな。だとすると矯正視力でどれくらいなんだろうと私は気になった。

次の公演までの空き時間を利用し、「三流亭」という入りやすい名前のステーキ屋さんでサーロインステーキ定食1,380円と瓶ビール550円をいただいた。コンサートの前に飲んで気分を高揚させるための飲酒としては、自分にとってはビール500mlくらいがちょうどいい。もう少し多くてもいいけど、これより少ないと効果を感じづらい。18時に店を出た。

18時半の回、もしくは夜公演、もしくは2部、もしくは2回目:

夢心地だった。2週間前にチケットを受け取ったときからこの公演を心待ちにしていた。なぜなら私の席が4列という絶好の位置だったからだ。1列はカメラが通るために潰してあったので、実質的に3列目だった。通路席で右隣に人がいなくて、さらに左が空席だったので場所を広く使えた。これ以上はほぼ望めない最高の席だった。最前列の植村さんオタクが頻繁にジャンプするタイプの青年だったが、飛び方にある程度は節度があったので、途中からそれほど気にならなくなった。双眼鏡を通して拡大されたJuice=Juiceを観るのと、わずか数メートル先のステイジでJuice=Juiceが歌って踊っている姿を観るのとでは、まったく異なる体験だ。双眼鏡じゃあり得ねえ。迫力と臨場感に差があり過ぎる(呂布カルマが戦極MC BATTLE第12章で放った「ボクシングじゃあり得ねえ。言葉のウェイトに差があり過ぎる」風に)。どれくらい差があり過ぎるかというと映画を家のテレビで観るのと映画館で観るのとくらいの差がある。近さの恩恵によって『生まれたてのBaby Love』で宮崎さんが(私の真正面3メートルくらいの距離にいた)「あなたに届いた」「あなたと二人で」という歌詞を私に向けて歌っているように感じられて、ドキッとした。つまり宮崎由加さんが一番なのである。

ハロプロのファンにはメンバー同士が付き合っているとか誰が誰のことを好きだとかいう妄想を膨らませる(カップリングと呼ぶらしい)のが好きな人たちがいる。Twitterで見るかぎり主に女性だ。そういう人たちにはたまらないであろう場面があった。しゃべりのセグメントで宮本さんが金澤さんに対して、コンサート中の再三にわたる私からの求愛行為に振り向いてくれないと苦情を申し立てた。客席を向いて、左耳付近の髪をよけて、左ほっぺを差し出して、目をつむって、キスをねだった。戸惑う金澤さん。沸き起こる朋子コール。勢いに押されてキスをする金澤さん。はしゃぐ宮本さん。そのときに左上から登場した残りの3人はその場面を見て膝から崩れ落ちるような仕草を見せた。「落ちるかと思った」と植村さん。「そういうグループだと思われたらどうする?」「 イヤだイヤだ」。

「楽屋で携帯でおばあちゃんと話していた。朋子が代わりたいと言ったので代わってあげた。するとあかりが部屋に入ってきて『誰と話してるの? ババア?』と聞いてきた。この難波のヤンキー」という高木さんによる暴露の最中、植村さんは衣装に付いている羽根で顔を覆い恥ずかしがっていた。「私、ババアなんて言う性格じゃないんだけど」と植村さんが弁解すると客席からエーイングが起きた。植村さんは真顔になって客席をにらみ「何がえーだよ」と凄んだ。「さすがにババアは言わないよね」と金澤さん。

“GIRLS BE AMBITIOUS”が始まる前のcall and responseは前の公演に続き金澤さんが担当した。中野サンプラザでは昼と夜で担当者を変えていたが、今日は地元だから2回とも金澤さんにしたのだろう。今回は埼玉県民以外と埼玉県民に分けていた。埼玉県以外から来た人が多数派だった。私の周りに埼玉県民がほとんどいなくて、声を出すときに少しやりづらさを感じた。宮本さんが埼玉県民の声が小さいと言って、埼玉県民だけやり直しになった。いや、それは声が小さいのではなくて数が少ないのではないかと思いつつも、宮本さんにダメ出しされてやり直しを命じられるのは一種の興奮が伴うプレイだったので、喜んで服従した。このJuice=Juiceと観客との掛け合いを含めた“GIRLS BE AMBITIOUS”の楽しさはこのコンサートのハイライトの一つだ。曲中には毎回アドリブの動きが入るのでステイジから目が離せない。

私が公演の前に身体に入れたアルコールは瓶ビール1本だったが、アンコールは2回起きた。埼玉県民以外が多数を占める観客が金澤さんに対しておかえり的なスタンスを取るのは何かおかしくないですかという疑問は残るものの、金澤さんの帰還を祝う公演として大成功だった。開演前、アンコール、ダブルアンコールでの朋子チャントに金澤さんが気をよくしてくれているのが伝わってきた。

この公演が15時の回よりも楽しくなるのは、はじめから分かっていた。1日に公演が2回あるときには、1回目はwarming upで、2回目が本番だ。普通に考えると同じコンサートを2回やっているのだが、休憩を挟んだ一つの長い公演という見方も出来る。少なくともステイジに立つ彼女たちから見ればその方が実感に近いはずだ。したがって、曲目が同じであったとしても、両方を観て初めてその日の公演を見届けたと言える。もちろん色んな理由で片方にしか入れない・入らない場合はあるだろうが、最大限に楽しむためには可能なかぎり両方に入るべきなのだ。そうすると一日がほぼ潰れる。立つ時間が長く、身体も動かすので、決して楽ではない。だから日頃から少しでも運動をして体力を付けておく。睡眠と食事に気を付けて体調を整えておく。公演の前に肉とアルコールを摂取する。そうやって自分が楽しめる条件を整えていく。

2016年5月7日土曜日

MISSION 220 (2016-05-04)

昨日は1公演のみ(2公演のうち片方に参加したのではなく、開催されたのが1公演)だったが、今日はみっちり2公演を観させてもらう。5月2日にマッサージを受けジムで汗を流し休養を取っていたので体調がすこぶるよく、身体の疲れは感じていない。昨日のコンサートが純粋に楽しいと思えたので、気の重さがまったくない。これが終わればこの連休中の連戦は終了だ。コンサートの後には「GW(ジーダブリュー)に自慰ばかりしてないで一杯やらないか?」という私からの韻を踏んだ誘いから決まった、友人と肉を食う約束が控えている。心身ともに充実していて、楽しみが重なってバイブスが高まっている。

私だけでなく会場全体のバイブスも高まっていた。開演前に昨日はなかった「ジュース!ジュース!」というシュプレヒコールが起きた。全員が一致団結してやっているというよりはあちらこちらでちらほらとやっている感じだった。Juice=Juiceのコンサートに来たときの私のルーティンである日替わりA5写真の宮崎さんと宮本さんの購入を済ませて(コレクション生写真も買おうとしたが、売り切れていた)23列の一番右の位置(いちで韻を踏んでいる)に着いた。後方の端っこでステイジからの距離があったので、14時の公演では双眼鏡を多めに使ってじっくり観ることに決めていた。昨日の鑑賞でコンサートの流れや演出は何となく頭に入っていたので、全体に目を配るべき場面と個人を見るべき場面、じっくり見ていい場面とケミカルライトを掲げたり身体を動かしたりするべき場面の見極めは出来ていた。

昨日も気になっていたのだが、高木紗友希の声がいつもの調子ではないように聞こえた。裏方による音の調整がうまく行っていないのか、本人が喉に不調を抱えているのか、あえて歌い方を変えたのか、それとも私が会場の隅にいるから音の聞こえ方に偏りがあるのか、判断が付かなかった。高木さんはグループで上位の歌唱力を持っているが、昨日と今日に関しては煮え切らない感じがした。植村さんの歌声もこもっている感じがしてあまりはっきりと聞こえなかった。宮本さん、金澤さん、宮崎さんの歌声は比較的よく通って聞こえた。

Juice=Juiceメンバーはことあるごとに1年ぶりに中野サンプラザでコンサートが出来ることの喜びを強調していた。宮崎さん、高木さん、金澤さんの三人がステイジで話すセグメントでは、去年の中野サンプラザ公演のDVDを観たかと宮崎さんが二人に問いかけた。ご自身が今よりもやせていて、細くて黒くて「シャー芯みたいだった」と言っていた。たしかに由加はやせていたねと話を受けた高木さんは、他のメンバーは今よりも少しずつ太っていたと言った。みんな今が一番いい体型なのかな、という話になったところ金澤さんは「私はもうちょっとやせなきゃ」と言った。そして「太った?とよく握手会で聞かれるがそう言ってくるファンの方が太っている」的なディスをぶっ込み会場を笑いで包んだ。着替えを終えた植村あかりが「今キー(高木)が言ったの?」と笑いながら話に合流してきたが、「私そんなこと言わないから」と高木さんは憮然としていた。あまりに素直な金澤さんの言葉にJuice=Juiceも観客も笑いが止まらなかったが、宮本さんが「皆さん、このコンサートでやせましょう!」と観客に投げかけてうまく締めていた。

降臨タイムでは14列の中央付近で宮本佳林を間近で目撃!ドキュンできた昨日と違って金澤さんと宮本さんのご尊顔が辛うじて双眼鏡で拝見できる程度だった。左の方にいた宮崎さんは昨日でさえあまり見えなかったので、もっと遠い位置にいる今日はほとんど認識できなかった。いくらメンバーが台に乗ることで通常の降臨よりも見えやすくなっているとは言え、運のいい限られた人だけが味わえる悦楽であって、大多数は指をくわえて見る他ない。2階席から観ていた人のTwitterを見たら降臨時のメンバーは姿が見えなかったと書いていた。

高木さんが、通路に降臨したとき(降臨というファン目線の言葉をメンバー自らが使っているのが興味深い)に観客の誰かからいい匂いがしたと言った。「えー?」と驚く金澤さんに高木さんが「えー?って…」と「ファンがいい匂いがすると言ってそんなに驚くのは、つまりファンが臭いと思っているのか?」という問いかけを言外に含ませるような突っ込みを入れて「いやいや、そういう意味じゃなくて…」と金澤さんが慌てていたのには笑った。ファンが自分より太っているという金澤さんの発言への「私そんなこと言わないから」にも見られるように、高木さんはおちゃらけているように見えて実は発する言葉は非常にまともで真面目である。他のメンバーの奔放な言動と高木さんの良識的な反応が組み合わさったときに何とも言えない面白さが生まれる。金澤さんが「フレグランス付けてる人?」と投げかけるとそこら中の紳士がはーいと手を挙げたので「本当?」と笑っていた。高木さんは「Juice=Juice familyの皆さんはいい匂いがするんですね」と不自然なまでに媚び媚びな持ち上げ方をしてから「DVD収録だから言ってみた」と落とし、嘘だったのか!と他のメンバーから突っ込まれていた。しかしいい匂いがしたのは本当だったと言っていた。

このコンサートでは“GIRLS BE AMBITIOUS”の冒頭にJuice=Juiceと観客とでかけ声のやり取りがある。昨日は金澤さんが「ヤーヤー!(Yeah! Yeah!と言っていたのかもしれないがヤーヤーに聞こえた)」「ジュース!」を男の子(その後におじさんでもいいよと補足)、女の子に分けて叫ばせていたが、こちらが気の毒になるほどに女の子のときの反応が小さかった。Juice=Juiceは当初、女性受けのするお洒落なグループにするというのが事務所側の目論見だった(そのコンセプトに合わせるため宮本佳林は「がんばりん!」というドープな決め文句を禁止されていた)。しかし昨日の「女の子」からの反応を見るかぎり、一時期は女性限定イベントをやっていたこともある集団とは思えなかった。今日の14時公演では“GIRLS BE AMBITIOUS”の会場とのcall and responseを宮崎由加が担当した。昨日の結果を踏まえて作戦を練り直したのだろう、今度は男女の区別をなくし、30歳以下と30歳以上に分けて声を出させていた。すると30歳以上からのアンサーが大部分を占めた。私を含む30歳以上の観客(ほとんどは紳士)がかけ声を返すと「おー、こっちの方がずっと元気ですねー」と宮崎さん。我々が小僧どもを蹴散らす勢いで大きな声を返している最中、植村さんは笑い、高木さんは大げさに驚くような反応を見せていた。「30歳か40歳かで迷ったんです。30歳がちょうど境目かと思ったんですが、私の考えが甘かったですね」と宮崎さん。

コンサートの開演前に流れている曲がドープで、自然と身体が乗ってしまうゴキゲンなチューンだった。誰の何という曲なのか気になっていた。私の卓越した英語の技能を生かして聞き取った歌詞を検索して調べたところLunchmoney Lewisの“Bills”という曲であることが分かった。

18時からの公演は21列の中央寄りの通路席だった。後方ではあったものの2回連続で通路席だったのは嬉しかった。始まる前の観客席では、前の公演で自然発生したジュース!ジュース!のかけ声が前よりも大きくなっていた。コンサート中のしゃべりのセグメントで高木さんがジュース!コールに触れた。始まる前にみんなで裏で聞いて「ありがとう」と本当に言っている、あれを聞くとテンションが違うと(テンションをこの意味で使うのは和製英語)嬉しそうに言っていた。

金澤さんと宮崎さんが二人でしゃべるセグメントがあった。金澤さんが「気になっていること」として宮崎さんがコンサート中に付けている髪飾りについて話を振った。コンサートを鑑賞した金澤さんのお母様が可愛いと褒めていたという。宮崎さんは、髪の長さがうえむーと一緒だから遠くから見ても分かるように髪飾りを付けていると説明した。(これを聞いて私は以前サッカー選手の誰かが金髪にした理由とし遠くから見ても目立つように、と同じ理由を挙げていたのを思い出した。)目が悪い人でも分かるようにしている、私も目が悪いから目が悪い人の気持ちが分かると言って観客の喝采を浴びていた。宮崎さんの目が悪いというのは初めて知った。今「宮崎由加 視力」で検索すると、2013年10月26日の宮崎さんのブログが出てきた。その記事には中学生の頃からコンタクトをしていると書いてあった。

私の二列前で、運動をしていなさそうな身体に金澤朋子のTシャツをまとった中年男性が、頭頂部の露出した亀頭のような頭でモグラ叩きのモグラのようにコンサート中ずっとピョンピョン跳ねていた。でも私の心は不思議と穏やかだった。色気付いた二十歳そこそこで髪を染めた青年が過剰なジャンピング行為に励んでいるとなるべく早期に無惨な死に方をしてくれと祈るが、だらしない身体で頭の禿げ上がった中年の紳士が類似の行為をしていると、この人はきっと人生がつらいんだろう、こうやってコンサートで飛んでいるのはせめてもの発散なんだと思い、許してしまう。

アンコールの「ジュース!もう一杯!」にはいつものように「もう一杯」側で参加した。アンコールを受けていつもように曲が始まるのかと思っていたら、Juice=Juiceからのお知らせだかご報告だかと題した動画が流れ観客は意表を突かれた。動画の中では10月29日の沖縄公演をもってMISSION 220で目指していた220公演を達成できる運びとなった旨を宮崎さんが発表した。その後に各メンバーのコメントがあって、動画が終わるかと思いきやそこにメンバーにも知らされていなかった発表が追加された。11月9日(月)に日本武道館での公演が決まった。動画の中でJuice=Juiceは涙を流して喜んでいた。私も目が潤んだ。会場は大歓声に包まれた。この動画は当日21時にYouTubeの『ハロステ』に公開された。多くの観客が声を合わせて手を上下させながらバンザーイ!バンザーイ!と叫んだ。私は躊躇した。

2006年9月に始まったアメリカのTV番組“HEROES”で名を馳せた俳優Masi Okaは、用意された台本にあったバンザイ(正確にはbonsai)という台詞を見て、バンザイでは戦争を想起させるのでヤッター!に変えたいと申し出た。本人がインタビューでそう言っているのを聞いたことがある。番組のヒットと共にヤッター!は多くの人が知る有名な決め台詞になった。バンザイという言葉を避けた彼の考えは神経質に過ぎるのではないかと当時の私は思い、素直に受け入れられなかった。しかしそれ以降、このMasi Okaの発言は頭の片隅に残り続け、バンザイというのは私にとって使うのが後ろめたい言葉になった(もっとも使う機会は滅多にないが)。だから客席からバンザーイという声が上がったとき、私は叫ぶことが出来なかった。

動画の後にステイジに出てきたJuice=Juiceは、しみじみと喜びを噛みしめているような、何とも言えない表情をしていた。“Wonderful World”の冒頭で高木さんは涙で歌詞が詰まっていた。他のメンバーも涙ぐんでいた。宮崎さんは、(ステイジに出てくる前に)皆さんがバンザイと言っているのが聞こえたと言った。するとまたその場でバンザーイ!バンザーイ!の合唱が起きた。私はMasi Okaの呪縛を一時的に捨て、一緒に参加した。宮崎さんはジーンと来たような表情を見せた。さすがに宮崎由加さんが喜ぶとなるとやらないわけにはいかない。植村さんは「私たちの幸せを自分のことのように喜んでくれる人たちがこんなにたくさんいる」とゆっくり言葉を紡ぐように話していた。高木さんは「こんな詰め詰めのスケジュールじゃJuice=Juiceが壊れちゃうと心配してくれる人もいた」とファンへの感謝を口にした。金澤さんは「これまで色々あった。私の病気の発表もあった。220公演のすべてに参加できていない私が武道館に立っていいのか」と泣きながら吐露した。立っていいに決まっている。宮本さんは「武道館という目標に向かって、ファンの皆さんも含めてここまで一つになれているグループはJuice=Juiceだけ」と誇らしげに笑顔で語った。℃-uteが辿ってきた道だ、と私は思った。グループが継続して輝いていくためには、武道館公演を成功させた後の方向性や目標をうまく定めないといけない。でもそんな心配はもう少し後になってからでいい。Juice=Juiceもファンも、今は勝利の美酒に酔うべきだ。

私にとっての勝利の美酒は、終演後まっすぐに向かった「李苑」で頼んだ黒ホッピーだった。ホッピーはうまいし糖質が少ないから注文したと言うと、先に店に入ってビールを飲んでいた友人は「Juice=Juiceを観てきたのに糖質を抑えたいのか?」と聞いてきた。私は「糖質はジュースでたっぷり摂ったから控えたいんだよ」という完璧なアンサーを返した。キムチ、ホルモン5点盛り(コプチャン、ギャラ、ハツ、豚ガツ、ドーナツ)、トッポギ、スペシャルチヂミ、豚トロ、ツラミ、レバー。味噌ダレにまみれたホルモンとホッピーの相性がこれ以上ないほどによかった。

2016年5月6日金曜日

MISSION 220 (2016-05-03)

グッズの販売が始まる14時までまだ20分くらいあったが、既に列が出来ていたのでそこに並んだ。風でページがめくれるのを手で押さえながら『ヒトラー演説 - 熱狂の真実』を読んでいたが、近くに並んだ女性二人組の会話が耳に入ってきて、興味をそちらに持って行かれた。どうも芸能活動をしている方々らしく、もっと言うといわゆるアイドルと呼ばれる職種に従事されているようだ。ここではっきりとアイドルと言わずに「いわゆる」と言ったのは、私にとってアイドルというのは軽い言葉ではないからだ。私の中でアイドルとは、最狭義ではハロプロのメンバーのことである。ハロプロのメンバー以外にアイドルという言葉を簡単に使いたくない。ただ若くて可愛くて人前で歌う仕事をしている女というだけでハロプロと同じ分類の中に入れたくないし、やっている側も簡単に自称して欲しくないのである。

私には他人の会話を盗み聞きする趣味はないのだが、本当は前髪を切りたくなかったのに指示で切らされた、○○さん(マネージャーかプロデューサーのようだ)は誰でも前髪をパッツンにさせる、オタクはパッツンが好きらしいとか、高校を出てからこの世界に入ってよかった、なぜならみんなチヤホヤしてくれるし世の中を知らないうちにこの世界に入ると勘違いしてまうからとか、そんな面白すぎる話をされると嫌でも聞き入ってしまう。本には書いていないストリートの真実だ。非は聞いてしまった私ではなく、公共の場で周りに聞こえる声でそういう話をした向こうにある。顔もよく見ていないし、お二人の名前も所属グループも分からない(仮に分かったとしてここで特定できるような形で書くつもりはない)が、誰に聞かれるか分からない場所でそういう話をしてしまう時点で失礼ながら一流ではないんだろうなと思った。おそらくハロプロのメンバーはこんな不用意なことはしないであろう。

日替わりA5写真の宮崎由加さんと宮本佳林さん(各500円)とコレクション生写真(一枚500円)を5枚買った。コレクション生写真を開けると宮本さんが2枚、宮崎さんが1枚、金澤さんが2枚だった。宮崎さんが出てきた瞬間、可愛すぎてのけぞりそうになった。自分の中でのJuice=Juiceのトップ3しか出てこなかったので当たりと言ってよかったが、問題は金澤さんの2枚が同じ写真だった点だ。これを何かと交換したい。あわよくば宮崎さんのと。中野サンプラザはいつも駐輪場や飲み物の自販機があるあたりにコレクション生写真等の交換をしてくれる紳士たちがたむろしている(あと普段は交換と着替え用のテントがあるが、今日は強風のためテントはなし)。交換を請け負っている紳士たちは、物欲しそうな目をして付近をウロウロしていると「何かお探しですか?」と麻薬の売人のように向こうから声をかけてくれるから助かる。白髪の売人に相談した結果、私が持っている2種の宮本さんの写真を、私が持っていない2種の宮崎さんの写真と交換するということでどうかというご提案をいただき、ありがたく受諾した(私がダブった金澤さんの写真は彼も在庫がだぶついているということで交換してくれなかった)。これで宮崎さんの全3種を揃えることに成功した。代償として2枚の宮本さんを失ったが、5枚分の投資でこれだけの成果が得られれば十分でしょう。喜びを噛みしめながら近くのベローチェでブレンドコーヒーを飲んでブログを書いた。付近を散策して気になった中華料理店に入って、黒ホッピーを焼酎で割ったのか、焼酎を黒ホッピーで割ったのか分からないが、ともかく円卓で黒ホッピーと焼酎を混ぜて飲んだ。ラー油をかけた蒸し鶏と、クラゲの冷菜と、ニンニクの入っていないもちもちした餃子を食った。いい気分に仕上がった。

開演が18時半からなので、18時ちょい前に会場に戻ったが、会場の前にはまだ長い入場列が出来ていた。3日前の℃-uteに続いてまた開場が遅れているのと思ったが、案外そこからの進みは早く、予定通りの時間にコンサートは始まった。ペットボトル入りのお茶を飲んだせいなのか、開演の直前に尿を放出したにも関わらず序盤から尿意との戦いだった。ケミカルライトの電池残量が少なくなって、宮崎さんの色(ピンク)が出なくなった。これは予想していたので電池はポケットに入れていた。なるべく視線はステイジに送りつつ手元で単4電池を三つ入れ替えた。少し手こずった。これがOutlastであれば電池交換にこれだけ時間をかけていたら敵に襲われて死んでいただろう。

千葉(4月16日)と大阪(4月23日)の公演を観に行った先人たちが演出を褒めているのをTwitterでちらっと目にしていたが、実際に新鮮な驚きを与えてくれる演出だった。はじめにステイジ全体を覆う半透明の幕。各メンバーに順番にスポットライトが当たっていき、その方が踊りを披露する中、名前と写真が幕に大きく表示される。冒頭のメンバー紹介の映像はあった方が気持ちが盛り上がる。ハロプロのコンサートの中で最も格好いい部分の一つだ。その後にコンサート・ツアーMISSION 220のロゴが幕いっぱいに表示されるのが、特別なコンサートが始まることを予感させた。上から数多くの電球が下りてきて色が変わったり一つの形を作ったりするという演出もあった。この電球の演出自体は安っぽかったが最後に「J=J」の形になるのは驚いたし周りの観客も感心していた。植村さん+高木さん、金澤さん+宮崎さん、宮本さんという順番でダンスをしていく箇所では宮本さんが下から上に飛ばされる形でステイジに登場し、おーという歓声が上がった。

「ZEEBRAとのあの曲のときも『ヒデなら言いかねない』って担がれたもんな」
2004年に繰り広げられたビーフでDev LargeがK DUB SHINEに贈ったディス曲に上記の歌詞がある。ヒデとはZEEBRAのことだ。私が正しく理解できているか自信がないが(もし正解を知っている人がいたら教えてください)、昔ZEEBRAがDev Largeをディスったのではないかという疑念が生まれたときにK DUB SHINEがDev Largeに「ヒデなら言いかねない(つまりZEEBRAならDev Largeをディスりかねない)」と言ってZEEBRAとの対立を煽った(ところがZEEBRAがDev Largeをディスったというのは誤解だった)という話のようだ。

「Juice=Juiceならやりかねない」、私はそう思っていた。彼女たちがコンサートの途中で通路に降臨したのは完全に想定の範囲内だった。そこに驚きはなかった。しかし、予想できなかったのはただの降臨ではなかった点だ。13列目のすぐ前に台を置いてそこに各メンバーが乗って歌ったのだ。私は14列目に立っていた。宮本佳林がすぐ近くにひょこっと姿を現したときには本当にびっくりして「うわ!」という声が出てしまった。どれくらい近いかというともしあなたが13列にいて目の前にメンバーが来たら、普通に手を伸ばすだけで触れることが出来る。人生を終わらせる準備が出来ていれば抱きつくことも可能だ。実際に抱きついたら退場させられるとか逮捕されるとかの前に周囲の観客にリンチされる可能性があるが、そのリスクを取る人は現れなかった。ファンとJuice=Juice側の信頼関係が素晴らしい。後のしゃべりでもJuice=Juiceは口々に、ファンが簡単に触れる状況にありながらそうしてこないことに触れ、Juice=Juice familyはマナーがいいと褒めていた。「だって頑張って近づけばキスできるわけじゃないですか。いや、近づかないでもらいたいですけど」と金澤朋子。高木紗友希が、予想と違うことが起きると人は感動する、そういう仕掛けを用意しているというようなことをブログに書いていた。私はまんまと術中にはめられた。14列は特等席だった。13列だったら完璧だった。

私は2日前と3日前に℃-uteのコンサートを観ていたばかりだった。℃-uteを観たすぐ後に観ると、Juice=Juiceの粗が目立った。歌唱にしてもダンスにしても全般的な安定感にしても、℃-uteがはるかに上だった。今日のJuice=Juiceは歌詞を飛ばす場面が何度か見られた。“Girls be Ambitious”で金澤さんは「ってなわけで色気担当にyes!立候補!」という見せ場を飛ばしていた。私が勝手にそう思っただけかもしれないが、金澤さんは少し体調が悪そうに見えた。あとメンバーではなく裏方に関することだが、やたらと重低音が強いときがあったり、メンバーの歌声が小さいときがあったりと、疑問に思うときがあった。ショーとしての完成度は明らかに℃-uteの方が上だった。でも、今日のJuice=Juiceのコンサートの方が単純に楽しかった。

歌詞を飛ばした金澤さんだったが、元祖爆笑王というラッパー並に自信に満ちた芸名の構成作家と二人で毎週ラジオ番組をホストしているだけあってしゃべりでは笑いを取っていた。ここにいる皆さんは何をきっかけにJuice=Juiceを好きになってくれたのだろうと金澤さんが話題を振ると高木さんが、コレクション生写真で3回当たったから自身のファンになった人がいると言った。その人が全身を(高木さんのメンバー色である)黄色で固めたファンだということに触れた金澤さんは「暑苦しいですよ」と毒を吐き笑いを取って「いやいや、暑苦しいくらいがいいと思ってるから」とわざとらしく弁解していた。キス発言といい、観客の心をつかむ一言を心得ているようだった。

Juice=Juiceからは、中野サンプラザでコンサートが出来ていることの幸福感が存分に伝わってきた。宮本さんはいつもニヤニヤしていた。今ここでコンサートが出来ていることが本当に嬉しくて楽しくて、その気持ちがあふれ出てきて押さえられないという表情だった。皆さんの活力になるコンサートを提供したいというようなことをおっしゃっていたが、宮本さんを見ているだけで活力になりまくる。他のメンバーも、Juice=Juiceだけをみるために多くの人たちが集まってくれたということに感激を隠さなかった。難点を挙げるとすれば、本コンサートの中におへそを出す衣装が一つもない点である。つんくが『おへその国からこんにちは』という曲を作ったように、ハロプロはおへその国であるという理念を忘れて欲しくない。コンサート衣装の一つはへそ出しにして欲しい。本編の最後に上下が分かれた衣装があるにはあったが、へそは出ていなかった。宮崎さんのお腹が筋肉質だった。一日何回くらい腹筋をしているのか気になる。それはともかく、驚きを与えてくれる演出に、生き生きと楽しむメンバーたちの姿、そして彼女たちの感情が客席に伝播した幸せな空間であった。終演後、℃-uteのコンサートで終演後に観客が叫ぶ「℃-ute最高!」とまったく同じイントネイションで「Juice最高!」がわき起こった。尿意はいつの間にか忘れていた。

2016年5月5日木曜日

°CONCERTO (2016-05-01)

5月1日は昼公演(開演14時半)の席が6列目だというのが私にとって発奮材料でした。4月30日の席あたりのチケットが娯楽道で2,500円くらいで売っていたと言いましたが、6列となるとさすがにそうはいきません。この席で定価以下はあり得ません。実際に確認はしていませんが、1万5千円くらいしていたでしょうね。まだ6月20日の武道館のチケットは受け取っていませんが、私がこのツアーに入る7回の中で一番いい席であるのに疑いはありませんでした。夜公演(18時)は27列という冴えない位置なので、ステイジから至近距離で℃-uteさんのお姿を目に焼き付けられる最後の機会でした。

その機会を楽しみにしていましたが、開演前から雲行きが怪しくなりました。私の2列前に、髪を赤く染めて耳にピアスを開けた鈴木愛理さんファンの青年と、茶髪の岡井千聖さんファンの青年がお越しになりました。ある程度の現場経験を重ねてくると、見ただけで分かるんです。こいつは迷惑オタクだなというのが。自分が応援するメンバーさんが歌っている最中、常に飛びまくる。推しジャンと呼ばれるこの行為には賛否がありますが、後ろの人からすると視界を塞がれるのは事実です。もちろん、ジャンプすることが即迷惑ということではありません。曲や場面によってはジャンプした方がいい場面もあります。でも迷惑オタクというのは自分が推しているメンバーさんが歌っている最中はのべつ幕なしに飛びまくるんです。要はやり過ぎなんです。もう一つの特徴として、所持するケミカルライトの数が多くサイズが大きい点が挙げられます。片手に三つも四つも光る棒を持っている人をよく見ます。そういう人々や行為をストリートファイターIIのキャラクターの名前を取って「バルログ」と呼ぶことがあるようです。実際に経験してみるとよく分かりますが、バルログのすぐ後ろの席になると視界の塞がれ方が尋常ではないですよ。特に段差がなく人が密集したライブハウス(和製英語)で前がバルログだと地獄です。私はBuono!さんのコンサートをライブハウス(和製英語)で観させてもらったとき、汗っかきなバルログが目の前にいたことがありました。飛ぶ度に汗が飛んできた上に、着地のときに足を踏んできて謝罪もないし、異臭を放っていました。こういった迷惑オタクは自分自身が目立ちたい、自分のことをステイジのメンバーさんに見てもらいたいといった欲望を満たすことで頭がいっぱいで、それさえ出来れば他人のことなんてどうでもいい人たちです。おそらく日頃の生活からそうだから、生き様が顔に出るんでしょうね。迷惑オタクというのは、顔からして迷惑オタクなんです。何かそういう顔なんですよ。だから二列前の赤毛と茶髪の姿を後ろから見た途端、すぐにピンと来ました。

私の勘は当たりました。コンサートが始まった直後からお客様自身による過度のパフォーマンスが始まりました。赤毛のオタはどこで調達したんだという通常の1.5倍くらい長いケミカルライトを3-4本片手で持って、もう片手にはまた違うケミカルライトを3-4本持っていました。茶髪のオタも似たような感じでした。その状態で、赤毛は鈴木愛理さん、茶髪は岡井千聖さんが歌っているときに両手を高く挙げて延々と飛び跳ねるのです。鈴木さんも岡井さんも歌唱力が高く歌割りが多い方ですので、ほぼ常に赤毛と茶髪のどちらかが飛び跳ねていると言っていいくらいです。私とステイジの間に挟み込まれたその光景は、汚く、下品で、利己的でした。運営の職員が3回くらいやってきて注意していました。二人はその場では聞いて従う素振りを見せたものの、しばらくすると元通りの過剰なスタイルに戻していました。言うことを聞かない彼らを見て、もっと暴力的に制圧してほしいと思ってしまいました。アメリカが世界の警察官としてならず者国家(rogue states)に戦争を仕掛けるべきだというネオコンのような考えになりました。

2013年の8月にTwitterのダチからチケットを譲り受けて100%(ペクポセント)という韓流男性アイドル・グループのイベントに足を運んだことがあります。ファンの皆さんはケミカルライトを頭の横に添える程度で高く掲げていなかったですし、推しジャンという風習がないらしく誰も飛んでいませんでした。視界が良かったです。もちろん観客が女性ばかりで自分より背が低い人が多かったのもありますが、それを差し引いても飛びまくる認知厨やピンチケ的な人がいなくて、みんなで平和的にステイジを楽しむ配慮が根付いていると感じました。ハロプロもそうあるべきだと言っているわけではありません。何が正解なのかはその現場によって違うでしょう。同じ現場でも状況によって違うでしょう。あんまりお行儀がよくなりすぎても、アイドル現場としては熱が失われてしまいますしね。クラシックのコンサートではないわけですから。ただ私が一人のファンとして思うのは、場面や程度をわきまえない連続ジャンプ、コンサート前にannounceされる禁止事項の趣旨を無視したケミカルライトの使い方は、応援のスタイルとして醜いということです。私に出来ること、それはあの二人がなるべく早く無惨な死に方をしてくれと祈ること、そしてこうやって後からブログでディスること。その二点です。

ディスはこれくらいにして、℃-uteさんの話をしましょう。今回おもったのが、ダンスは腰が大事だということです。℃-uteさんのダンスを観させていただいて特に私の目を引いたのが鈴木さんと中島さんでした。他のメンバーさんとの違いは何なんだろうと考えたところ、それは腰だろうという結論に至りました。『情熱エクスタシー』の「始まりの音(ダダ)鳴り響いた(ダダ)」のダダの部分で℃-uteさんがこちらに背中を向けて腰をクイクイ動かす振りがあるのですが、上述のお二人はその動きにメリハリがあります。腰がしっかり入っているというか。ふにゃっとしていないんですね。中島さんは元からハロプロで一位、二位を争うダンスの巧みさで有名でした(最近はダンスと言えば鞘師里保さん、石田亜佑美さん、稲場愛香さんという感じになってきて、中島さんがもてはやされることが少なくなりましたけど)。鈴木さんは現役のハロプロ構成員さんの中でおそらく歌が一番お上手ですが、ダンスの技巧も上位に属することに今さらながら気が付きました。

『情熱エクスタシー』の中島さんが本当に格好よかったです。曲調に合わせてダンスも勇ましい感じなんです。会場が一体となる曲で、盛り上がる曲の新たな定番が生まれたと言っていいでしょう。拳を下から突き上げてオイオイと声を出したり、手を挙げたり、飛んだり、会場全体で「シー!ユー!ティー!イー!」と叫んだり。ノリとしては『ザ トレジャーボックス』に近いかもしれません。中島さんは以前に比べて肉が付いて(太ってはいません)、頼りない感じがなくなって、力強い曲が板に付くようになりました。

アンコール後に萩原さんが、曲に合わせて会場の皆さんも悲しそうな顔、いかつい顔、笑顔になっていくのが分かって、同じ空間にいるんだなと実感したというようなことをおっしゃっていました。5月1日の昼公演でメンバーさんたちが残した言葉で書き残せるのはこれだけです。他にどういう言葉があったのか、覚えていません。これ以外はiPhoneのNotesにも残っていません。妙に疲れていて終演後に書いて残しておく気力がありませんでした。その上、同じコンサートを二日で4回観ると、回ごとの記憶がごっちゃになってきて、分からなくなるんです。4月30日の分はiPhoneのNotesに詳しく残っていたので一つ前の投稿に記しました。5月1日の分は昼も夜も断片的にしか残っておらず、お手上げです。現場に行った人のTwitterを見れば事細かに把握できますが、それを元ネタにしてここに書くのは自分的に違うんですよね。自分の記録にも記憶にも残っていないことは、基本的にこのブログに書きません。私は客観的な取材をしているわけではなく、一人のファンとして現場で見えたもの、聞こえたこと、考えたことを書いているだけですから。例えばお腹が痛くてコンサートどころでなかった、だから内容はまったく覚えていないということが仮に起きたとすると、私はそう書きます。

18時からの公演は席が27列目でしたし、これまでの連戦で足腰が疲れていましたし、同じコンサートを立て続けに何回も観てやや飽きていました。適当にやり過ごそうという不遜な態度が、開演の間際まで続きました。ところが、気が抜けない事態が発生しました。私のいたブロックの左(機材の後ろの席)に、つばきファクトリーさんご一行が観に来られていたのです。つばきファクトリーさんは2列に分かれてお座りになっていて、後ろに浅倉樹々さんと岸本ゆめのさんのお二人、前にお二人以外の四名がいらっしゃいました。前の列の一番右に新沼希空さんがいらっしゃいました。新沼さんはマスクをされていました。私は特につばきファクトリーさんのファンというわけではありませんが、ハロプロの将来を背負って立つ彼女たちに最高のコンサートを見せなくてはなりません。自分たちもこういう会場でこういうコンサートが出来るようになりたいと思ってもらわないといけません。夢と希望を与えなくてはなりません。そう思い、老体に鞭打ってコンサートを盛り上げました。

印象に残っているのは、鈴木愛理さんが作ったという「中野サンプラザの歌」です。ひょうきんな動きで移動しながら「なっかの、のなっかの、なかのさんぷらっざ!」と繰り返していました(後に鈴木さんがブログで説明されたところによると中野の中にある中野サンプラザという意味らしいです)。鈴木さんが他のメンバーさんにも一緒に歌うように促すと、皆さんが初めはいやがる素振りを見せながらも結局は加わっていき、最後は全員がやっていくというバラエティ番組のお約束のような流れでした。その上に観客まで巻き込んでいて、会場は笑いに包まれました。終わってから岡井さんが「真面目な人は(こういうのに巻き込まれたら)本当に嫌だと思う」とおっしゃっていました。鈴木さんはアンコール後に「皆さん、生きていると嫌なこともあるでしょう。握手会でよくお悩み相談を受けます。コンサートがないときにコンサートのことを思い出して乗り切ってほしい」的なことをおっしゃっていました。私が観させていただいた6公演のMVPは文句なしで鈴木さんです。次点が中島さん。

一つ前の記事で、冒頭に上原ひろみさんの“ALIVE”を20-30回聴いて初めてよさが理解でき始めたと書きました。なぜ書いたかというと、同じことが℃-uteさんのコンサートツアー“℃ONCERTO”で起きたからです。6回目にしてなぜか急に見え方、感じ方が変わったのです。これまでの5回とは比べものにならないくらいに楽しむことが出来ました。1998年から2002年にかけてサッカー日本代表の監督を勤めたフィリップ・トルシエさんは、チームにおけるオートマティズムの重要性を説きました。簡単に言うとチームの置かれた状況とやるべきことを全員が理解し、連動して動くというくらいの意味だと私は認識しています。6回目にして私と℃-uteさんの間にこのコンサートにおけるオートマティズムが生まれました。私がセットリストの緩急を身体で覚え、その時々に取るべき正しい行動が分かるようになりました。迷いがまったくなくなりました。周りの観客を先導するくらいの気持ちを持つことが出来ました。6回目にして、それまでの5回とはまったく違う景色が見えた感覚でした。本当に不思議です。つばきファクトリーさんはアンコール後の最後の曲が終わるまで席に残られていました。観客が立っているときは椅子を下ろさない状態で座って、観客が座っているときは椅子を下ろして座っていました。アンコールの℃-uteコールに合わせて新沼さんは頭でリズムを取られていました。私がつばきファクトリーさんの立場だったら、℃-uteさんと今の自分たちとの圧倒的な差に愕然とし、同時に私たちもこんな素晴らしいコンサートを出来るようになるかもしれないんだという希望を持ち、泣いていたかもしれません。

2016年5月3日火曜日

°CONCERTO (2016-04-30)

世界的なジャズ・ピアニストの上原ひろみさんは、アンソニー・ジャクソンさん、サイモン・フィリップスさんと組んだトリオ・プロジェクトで今までに4枚のアルバムを出してきました(それ以外にもアルバムはたくさん出されています)。最新作の“SPARK”は今年の2月に出たばかりです。私はまだ聴き込むというところまでは行っていません。今はその過程で、まさにこれを書きながらも聴いているところです。それ以前の3枚とはそれなりにじっくり向き合ってきました。いちばん多く聴いてきたのは“ALIVE”です。私のiTunesの再生回数を見たところ曲によって少なくて79回、多くて97回でした。そんなものかと思うかもしれませんが、私は年に何十枚ものアルバムと接します。中には1-2回聴いてそれっきりというアルバムもあります(それらの作品が決して悪いわけではない)ので、“ALIVE”を再生した回数は飛び抜けて多いです。上原ひろみさんの一番好きなアルバムを選ぶとなると“VOICE”と“Place to Be”と“ALIVE”の3枚で迷いますが、断腸の思いで一枚に絞るとなると“ALIVE”です。聴いてきた数もさることながら、このアルバムの曲が多く披露された上原ひろみさんトリオのコンサート(2014年12月の東京国際フォーラム)を2回も観る機会に恵まれたことで、私にとって特別なアルバムとなりました。

最高のアルバムだと初めから思っていたわけではありません。それどころか20回か30回くらい聴くまではよく理解が出来なかったのです。といっても私には残念ながら音楽の専門知識はないので(ピアノは子供の頃に習っていましたが今では音符も読めません)、そもそも音楽に詳しい方々がするような形で理解することは出来ません。プロではないトーシローの音楽ファンなりに、どういうアルバムなのかが分かってきたというか、表現されているものの輪郭が見えてきたというか、描かれている景色が見えてきたというか、そういう風に実感できるようになり始めたのが、20回か30回ほど聴いた頃だったのです。上原ひろみさんのいわゆる超絶技巧と言われる常人離れした手さばきや、感情を表に出して激しく鍵盤を叩く姿には、彼女の音楽をよく知らない人の心でさえ打つ力があります。しかしながら上原さんの音楽は決して分かりやすくはありません。複雑で、難しい。何かをやりながら聞き流して理解できる音楽ではありません。

4月9日に千葉県文化会館で開催された2公演に入った私は、℃-uteさんのコンサートツアー“℃ONCERTO”に対してやや否定的な印象を持っていました。℃-uteさんの美しさにはより一層の磨きがかかっていましたが、どうも曲目にしても演出にしてもぐっと来るものがなく、何か好きになれなかったのです。ですので、4月30日と5月1日に2公演ずつ、計4公演を観に行く前の私は、純粋に楽しみなだけというよりは、正直きついなというのが入り交じった気持ちでした。その気持ちに拍車をかけたのが(現在の競馬では拍車は禁止されているそうです)Twitterで目にした、チケットが娯楽道で叩き売りされているという情報でした。4月30日の私の席は25列と19列でした。娯楽道のサイトを見たところ、その辺のチケットは安いもので2,500円で売っていたのです。私が購入したファンクラブ価格は6,800円+手数料ですので、約三分の一でした。事前に予測が出来なかったことですが、結果だけを見ると初めからファンクラブで申し込まず娯楽道で買えばよかったという考えが頭をよぎってしまいます。

14時25分頃に中野サンプラザに着いたところ、開演まであと30分と少ししかないのに会場の前は入場を待つ人々の列でぎっしり埋まっていました。普通だとこの時間には入場列は落ち着いてスイスイ入れるのです。聞こえてきた係員の説明によるとどうやら準備に時間がかかって遅れているようでした。少し焦ったのですが、開場してからの列の進みは思ったよりも早くて、14時40分すぎには席に着くことが出来ました。開演は15時15分からになるというannouncementが流れました。普段ハロプロのコンサートは時間に非常に正確に執り行われます。私が行ってきた中だとJuice=Juiceのライブハウス(和製英語)公演で入場に時間がかかって開演が5-10分くらい遅れたことはありましたが、正式にannouncementを流して開演時間を延期するというのには初めて出くわしたかもしれません。

ハロプロ研修生の方々によるopening actが終わると、千葉県文化会館にいた「いっちゃん!いっちゃん!いっちゃん!(以下、繰り返し)」と曲の後にとてつもない声量で叫び続ける紳士がまた同じように叫んでいました。周囲の観客はこの異常な光景に明らかに引いていましたが、紳士が叫び終わるとパラパラと拍手が起きました。これは千葉では起きなかったことです。叫びの一生懸命さと、長年に渡りハロプロ研修生であり続けてきてデビュー出来るかが疑わしい一岡さんを推し続ける彼への敬意に、拍手を贈らざるを得なかったというところでしょう。あの紳士は一岡さんがハロプロの構成員としてどういう結果になると考えているのか、気になります。デビュー出来ると心から信じているのでしょうか? それともデビューの可否は彼の中では大きなことではないのでしょうか? いずれにしても立派です(皮肉ではなく)。ちなみに今のハロプロ研修生の中では私は小野瑞歩さんがいいと思います。YouTubeに公開されている自己紹介の動画によると杏仁豆腐とねじりきな粉がお好きだそうです。

15時の回を観ても、私が千葉県文化会館で抱いた本ツアーへの印象は刷新されませんでした。℃-uteが魅力的な集団なのはよく分かるのですが、目の前のコンサートにあまり入り込めないというか…違和感があるまま、時間が過ぎていく感じでした。何が具体的に気に入らないのか、どういうコンサートであればもっと楽しめるのか、自分でもよく分からないのです。

萩原舞さんが岡井千聖さんと一緒の部屋に泊まるときの話をされました:ホテルで岡井さんと一緒に寝ることが多い。岡井さんは寝顔がひどい。隣で寝ていて、目が覚めて目の前に岡井さんの寝顔があるとびっくりする。しかも目覚めが悪い。いつも二人は集合時間の10分前に起きて、5分前に布団から出る。ある日、集合のギリギリになっても岡井さんが起きないので起きるように催促したら機嫌が悪かった。後で謝ってきたので(起こしたときに感じが悪かったのを)分かってるんだ、と思った。

その話を受けて鈴木愛理さんがご自身の寝顔の話をされました:寝ている間、開くところがぜんぶ開いてしまう。鼻と耳は最初から開いているが、目と口も開いてしまう。恐竜みたい。母からもあなたの寝顔はダメだと言われる。移動中の車でマネージャーに寝顔の写真を撮られたことがあるが、フラッシュを焚いたこともあって物凄い写真になっていた。
移動で乗る新幹線がファンと同じになることがある。ファンが通路を歩く際に寝顔を見られたくないので、可愛い寝顔を作るというまとめサイトを見て、そこに掲載されていたtrainingを行っている。顔の筋肉を鍛えて、締めるための運動。だが、それを新幹線の中でやってファンに見られるのもまずい。「すれ違っちゃう問題ね」と話を拾った中島早貴さん。寝顔を見てファンをやめようと思ったとしても自己責任だよ、と客席に戒める。そこも含めて愛して欲しい、と鈴木さん。

アンコール後の中島さんのコメントが素敵でした:ゴールデンウィークはイベントやコンサートが盛りだくさん。ぜんぶ行くよと握手会で言ってくれた人もいて、ありがたい。そこまで行かなくとも、一日を℃-ute dayにしてくれるのもありがたい。コンサート中に歌った『ルルルルル』という曲に「大きな宇宙の星の中で 私と君とがキスをする 不思議」という歌詞があるが、たくさんの人がいる中で皆さんがここにこうやって集まっているのは凄い。そういうことをしみじみと語られていました。(鈴木さんが「なっきぃ、ポエマー?」と茶々を入れていましたが、ポエマーという英単語はなく、正しくはpoetです。)

岡井さんも中島さんと同じように来場者たちへの感謝を述べられていました:ここにいる人たちは嫌で来ているわけではないはず。楽しみにしてくれている人がほとんどだと信じている。そう思うと凄い。私たち5人が作るものをこれだけ多くの人たちが楽しみにしてくれている。(「岡ポエム?」とメンバーさんに冷やかされて「岡ポエムって言うほどでもないんだけど…」と照れていました。)

萩原さんは、外はポカポカなのに「やない?」を選んでくれてありがとう、と言って「おくない(屋内)」だとメンバーさんから指摘を受けて、会場がざわついていました。萩原さんは二十歳です。

15時15分からの公演は17時10分頃に終わりました。楽しいか楽しくないかで言えば、楽しいんです。でも私がハロプロのコンサートでたまに感じる、この世の喜びと楽しさをすべて凝縮させたような感情になれないんですよね。℃-uteさんのコンサートでそういう気持ちになっていた頃は、最初に℃-uteさんが登場した瞬間に何とも言えない高揚感があったんです。今回のツアーではそれがないんですね。5人のメンバーさんたちが℃-uteの一文字ずつ(ハイフン含む)の位置でポーズを決めてアルバム“℃Maj9”のイントロのアカペラ曲を歌う静かな始まりから一気に照明が明るくなって『男と女とForever』という始まり方なんですけど、「うわ、始まった! やべえ!」というよりは「アルバムのイントロのあれね」という感じで冷静に見てしまいました。もしかすると、コンサート用の耳栓をするようになったことで聞こえる音量が小さくなったのが原因かもしれませんが、もしそうだとすると、これまではただ単に大音量に興奮していただけなんでしょうかね? いや、でもそれはないな。正月のハロコンは耳栓を付けましたが心から楽しみましたから。

18時半から始まる次の公演までに晩ご飯を済ませておこうと思って中野サンプラザの付近を歩いて、PIZZERIA BAR NAPOLIに入りました。入ってから知ったのですが、15時から18時はハッピーアワーでいくつかの飲み物が500円から300円に値下げされていて、何とすべてのピザ(普段は1,000-1,500円)が500円になっていました。素晴らしい。カプリチョーザというピザにアンチョビを追加して、カンパリビアを飲んで1,020円。コンサートの合間にさくっと食べて飲むのに向いています。ハッピーアワーの制度を続けてくれるかぎり、今後もちょくちょく使うことにします。

18時半の回が始まる前に「演出の都合上、場内の非常灯は消灯させていただきます」というannouncementを聞いて「韻が固い」と思いました。Opening actで登場されたハロプロ研修生の皆さんが、行ってみたい国とその理由を添えて自己紹介をされていました。堀江葵月(きづき)さんがベトナムに行きたい、なぜならフォーを食べたいからと言うと即座に客席の皆さんは「フォー!」という歓声を上げていました。ハロプロのファンたちの瞬発力がよく発揮された場面だなと思いました。ファンのアドリブによるフォー!のくだらなさに心なしか研修生さんたちの表情が緩んだように見え、客席も平和な空気になって、とてもいい雰囲気でした。曲の後には例のいっちゃん紳士がまたもシャウトを披露されていて、温かい拍手を受けていました。

握手会で愛理の血管が好きだと言ってくれる人がいるという話を鈴木さんがされていました。あごの下にある血管らしく、本人も見たことがないし、一緒に話していた矢島さんも「長い付き合いだけど分からない」と感心されていました。該当の部位がステイジの画面に映るように鈴木さんが上を向いたのですが、そのときに鼻の穴が露わになったのを本人が気にしないので矢島さんが画面を確認しながら鈴木さんの鼻を手で隠していたのが面白かったです。鈴木さんがご自身の腕の血管は認識しづらくて、注射をする度に3回くらいやり直されるとおっしゃいました。対照的に矢島さんは血管が分かりやすいという話になりました。矢島さんがカメラに腕を向けると、たしかに2本の血管がはっきり見えていました。「絶対ここかここじゃん」と鈴木さんが興奮気味に指さすと「あ、本当だ。早貴でも打てそう」と中島さんが割り込んできましたが、矢島さんは笑いながらそれはやめてと拒否していました。

岡井さんは、人の身体の角張ったところが好きで、鈴木さんの肩の骨が出っ張っているところが好きでよく噛みつくという話をされていました。骨を見て噛みつきたくなるのであれば犬と一緒だ、うちの犬がそうだと矢島さんがニコニコしながらおっしゃると、岡井さんは苦笑いをされていました。

アンコール明けの曲が新曲の『何故 人は争うんだろう?』なのですが、この曲の鈴木さんが圧巻でした。冒頭で鈴木さんが歌い始めたときのバイブスがやばいです。ビートを完全に乗りこなされていますし、フローがあります。曲を完全に手懐けています。聴き惚れてしまいます。ドープなフローで歌詞のワックさを打ち消しています。岡井さんもいい感じです。この曲は歌詞がどうのというよりは鈴木さんと岡井さんのフローを味わう曲なんだなと思いました。

最後のしゃべりで岡井さんは、女の子にキャーと言われる存在に自分たちがなるとは思わなかったと述べられていました。私からすると憧れの存在は長澤まさみさんや広瀬すずちゃんだけど、皆さんとってそういう存在になれているなら嬉しい、まあジャンルは違うけど…ということをおっしゃってから「(女性ファンがキャーと言うのは)ほとんどは愛理と舞美ちゃんだけど…あ、2人ごめんね」と中島さんと萩原さんをオチに使って笑いを取ったのはさすがでした。中島さんの「分かってたけどさあ」という返しも笑いを増長させました。

矢島さんは「まだ昼のような感覚で、あと一公演できる気分だ」というようなことをおっしゃっていました。2公演を観るだけでも決して楽ではないのに、やる側でそんなことを言えるなんてどんな体力なんだ…と唖然としました。1日に2回の公演を観るというのは今までに何回も経験してきたのですが、この日はなぜかいつもよりも疲れました。ただ、翌日も2公演が待っていたので、気は休まりませんでした。繰り返しますが、楽しかったんです。でも、このツアーに関してはもうお腹いっぱいな気がしてきました。ただ明日の1公演目はいい席が当たったし、この連戦を乗り切ろう(乗り切るというのも変な話ですが)という気持ちでした。