2020年12月31日木曜日

fox capture plan - request night - (2020-12-27)

お皿、ナイフ、フォークの衝突が生んでいるとおぼしき音が聞こえてくるライヴ盤は聴いたことがあった。たとえばKenny BarronさんとCharlie Hadenさんの“Night and the City”。私がジャズを聴き始めて間もない2011年に出会い、虜になったアルバムの一つ(ストリーミングにあるから聴いてみて)。要所で聴衆の拍手があるのは当然として、カチャという小さな音も断続的に入っているのがイヤフォンで聴くと分かる。ピアノとベースだけのしっとりした作風だから、音の隙間にそういう会場の音が入る。食器の音が聞こえるということは食事が提供される場所なんだろうけど、具体的にどういう会場なのかは分からなかった。コンサートと食事というのが自分の中で結びつかなくてね。類似する経験も不足しているものだから、空想するしかなかった。

それから約9年が経過し、実際にそういう場所に足を踏み入れる機会を得た。ブルーノート東京。この会場の存在は知っていたが、敷居の高さを感じていた。名だたる有名アーティストさんたちが演奏してきた名門ジャズ・クラブ。ホームページの興行スケジュールを見れば分かるが本当にジャズだけ。アイドルさんのイヴェントをやるような場所ではない。私にとっては気後れしてしまいそうなアウェイ環境。憧れはあったが、どう振る舞えばいいのか、そもそも一人で行くような場所なのか、何も分からなかった。「週の半分以上、一日のすべての食事を一人で食べている」のを孤食というらしいが、その条件を余裕で満たし、食事以外でもほぼ一人で行動する私でさえ、いきなりジャズ・クラブに飛び込むのには若干の躊躇があった。その殻を破るきっかけとなったのがfox capture planさん。彼らのコンサートは何度か観たことがあるので、まあ勝手は分かる。現地で分からないことが多少あったとしても何とかなるだろう。

事前にブルーノート東京について少し予習した。ドレス・コードはない。最低1ドリンク注文必須。メニューを見たらまあまあいいお値段。いちばん安いのでも千円くらい。料理は単品でも色々あるし、コースも頼める。洋食系。検索で引っかかった潜入記も読んだ。

立地からして青山だし、これまでの歴史がそうさせるのか、外観に何か凄みがあった。入る前からヴァイブスがある。ここにたどり着く時点である程度、選別されている感がある。ドレス・コードがないとは言ってもイトーヨーカドー的な施設で購めた安いスポーティーな服やアイドルさんの缶バッヂを所狭しとつけたバックパックを身に付けブヒブヒ言っているオタクが近寄っていい場所ではない。私の場合は、青山のアラン・ミクリ路面店で購めたメガネを掛けているし、過去には青山のヨウジ・ヤマモト、コム・デ・ギャルソンの路面店に通っていたハイ・ソサエティな一面がある。門番に至近距離で銃を撃たれ頭の半分を吹き飛ばされることも、別室に連行されカミソリで喉元を掻っ切られ一生分の血を流すことも、後ろから不意打ちで首に柔道パンチを入れられ即死することもなく(参照:Donald Goines, "Death List")、入場させてもらうことが出来た。

ライブハウス(和製英語)って必ずドリンク代として500円もしくは600円を徴収されるじゃんか。よく知らんけど建前上、飲食店という体でやっているから、飲食物を買わないといけないとかで。その割にゆっくり飲める空間があるわけでもなく、ただコンサート鑑賞の邪魔になるだけのペット・ボトルを掴まされて。ただ数十円で仕入れた飲料を来場者に500-600円で売りつけてテーブルもないフロアに密集させてどこが飲食店やねんという話なんだけど。ブルーノート東京は全然違った。本当に着座して飲食が出来る空間。スーツを着た紳士淑女による、まともに訓練された接客。ライブハウス(和製英語)が飲食店だというのは本来こういうことを指しているのかと、初めて身を持って理解した。たしかに、事前に調べていた通りお安くはない。ただ雰囲気も接客も出てくるモノも高級感があった。私が注文したのはビール(SESSION。ブルーノート東京オリジナル。JPY1,400)とビーフ・ジャーキー(JPY750)。奉仕料10%がしっかり加算されてJPY2,601也。絶賛収入削減され中の私がポンと出していい金額ではない。

いくらブルーノート東京の特別な雰囲気を加味したとしてもビール1杯とビーフ・ジャーキー少々にJPY2,601出したと考えると苦い(ビールだけに)気持ちになる。ただ、この出費にはまた別の価値があった。このコンサートは飲み食いをしながら楽しむことが許されていた。つまり、マスクを着けずに生の音楽を聴くことが出来たのだ(実際には大半の観客が自主的に着けていた)! 発声についても会場側の要望としては控えめにしてくださいという程度で、禁止されてはいなかった。中には歓声を上げる人もいた。何ヶ月も前から永江一石さんが予測していたように季節的な理由(気温低下と乾燥)でコロナ陽性者数が増加している。大規模音楽フェスが中止になっている。その状況下で日和らず、コロナ・バカ騒ぎ前とほぼ変わらないやり方でコンサートを開催してくれたブルーノート東京さんには敬意と感謝を表したい。来場者も民度が高かった。楽しみつつも変に羽目を外す人がおらず、一線を超えない節度があった。公演の内容よりもまずブルーノート東京という一流の会場を体験できたこと。それが今日の収穫だった。ジャズ好きとして、音楽好きとして、経験値が増えた。

コンサートそのものについては、鮮烈な印象は受けなかったというのが正直なところだ。最大の理由として、単純に短すぎた。アンコールの後も含めて約72分(ブルーノート東京の公公演は基本この尺なのだろうか?)。数字だけでなく体感的にも、もう終わるのかという物足りなさが残った。この公演も終盤ですが…とメルテンさんが言ったとき、私はその言葉をすぐに飲み込めなかった。まだまだ聴いていたかったのに、あっけなく終わってしまった。次の理由として、12日前に観たあのPOLYPLUSさんのコンサートの衝撃がまだ身体から抜けきっていなかった。今日、何を観ていたとしてもあの生涯最良級のコンサートの記憶を上書きするのは不可能だった。とはいえ、来てよかったと思ったのには違いない。

本日の公演はrequest nightの名の通り、事前にインターネットで受け付けられた投票を元にセット・リストが組まれた。私がリクエストしたのは一位から順番に“3rd Down (Alternate Take)”、“Attack on Fox”、“Real, Fake”。その中からは“Attack on Fox”のみがプレイされた。まあこの曲は言わずもがなの人気曲なので、選ばれるのは当然。私としてはそれ以外の二曲のどちらかに滑り込んで欲しかった。今日は叶わなかったが、いつか生で聴いてみたい! とはいえ、ファン投票だけあって間違いのないセット・リストだった。不満はない。(最新アルバムからは一曲も上位に入らなかったというのが示唆的である。)コンサートを通して最も盛り上がったのが“Attack on Fox”。会場全体が一つになる感覚があった。一曲目が“capture the initial "F"”だったのは熱かった。(うーん、最近は減ってしまったけどfox capture planさんはこういう攻撃的な曲がいいよなあ。)他にも『疾走する閃光』とか、“Butterfly Effect”とか。極めつけは最後の『エイジアン・ダンサー』。定番どころを押さえた、順当なセット・リスト。this is fox capture planというプレイ・リストをもし作るならこういう感じになるだろう。今回はファン投票をメルテンさんが自ら集計したとのこと。3位は2点、2位は3点、1位は4点。(集計はエクセルでやったのか、原始的に手で数えたのか、ちょっと気になる。)投票結果はいずれどこかに公開するとメルテンさんは言っていた。これを執筆している時点(12月31日)ではまだ公開されていない。

私の席はサイド・エリアL。ピアノが左側に来るので左側を選んだ。目論見通り、メルテンさんの手と鍵盤がよく見える位置だった。私はピアノ好きで、ジャズはピアニストを中心に観たいので、この席が取れたのは幸運だった。

終演後、中島さん(サイド・エリアRで観ていた)と合流し、サイゼリヤ渋谷東急ハンズ前店で夕食。公演が思ったより短かったから(今日は二回公演で、私が観たのは17時開演の一回目)ゆっくり歓談することが出来た。二人でデカンタ二本を飲み色々と食った合計額が、私がブルーノート東京でいただいたビールとビーフ・ジャーキーとほぼ同額だった。

家に着く間際。目の前に若いナオンがワーと大きな出しながら飛び出てきて立ち塞がってきた。満面の笑みを浮かべている。狂っているのか? 恐くなった。私は戸惑い、反応に窮した。彼女はハッとして、すみませんと謝ってきた。どうやら人違いだったらしい。私が家のドアに到着するあたりで、シン君かと思って脅かそうとしたら違った…とスマ・フォに向けて彼女が話しているのが聞こえてきた。シン君、幸せそうだな。

2020年12月19日土曜日

POLYPLUS Live at Zepp Tokyo (2020-12-15)

終わりよければすべてよしという言葉はウィリアム・シェイクスピアさんの戯曲“All's Well That Ends Well”から来ているらしい。Google検索で一番上に出てきた。シェイクスピアさんといえば西洋人が教養を見せびらかすために引用する作家の代表格だが、見るからに英語が古めかしく、私には理解が出来ない。買っても読む可能性が0%だから積ん読の対象にさえならない。日本でいう古文のようなもの。令和に生きるナウなヤングである私にはお手上げである。そんな私が終わりよければすべてよしという言葉を気軽に使っていいものか、若干の逡巡はある。元の“All's Well That Ends Well”を読んだ教養人と私とでは言葉のウェイトに差がありすぎる(©呂布カルマさん)。それでも便宜上、この言葉を使わせてもらいたい。コロナ・バカ騒ぎに犯され続けクソまみれだった2020年の記憶を大きく塗り替えるほどの体験を、私は得たからである。2020年12月15日(火)、Zepp Tokyo。間違いなく2020年で一番楽しい約2時間だった。これまでの人生でも最高のコンサートの一つだった。

クラブ名にFがついていない頃から、私は横浜F・マリノスを応援している。横浜駅西口の交番付近で横浜フリューゲルスさんの解散反対署名に協力したのを覚えている。正直に言うと、フリューゲルスさんの消滅よりもマリノスのクラブ名にFが入るのがイヤだった。敵であるフリューゲルスさんを吸収してクラブ名に組み込むというのがどうしても飲み込めなかった。それくらい横浜マリノスに入れ込んでいた。中学生の頃はファン・クラブに入っていた。まだJリーグが地上波で放送されていたからテレビで観るのが主だったが、稀にスタジアムに観に行くこともあった。働き始めてからは労働や新しい趣味(洋服、Hello! Project等々)に関心が移り、マリノスを気にかけることが減った。サッカー番組やYouTubeのダイジェストを観る程度になっていった。

十年以上も遠ざかっていたスタジアムに再び足を運んだのが2018年シーズン。そこから見る見るのめり込んでいった。2019年にはリーグ優勝という美酒を味わわせてもらった。2020年シーズンはファンクラブに再加入。シーズン・チケットを購入し(コロナ騒ぎによるリーグ戦の中断で払い戻されたが)、どうしても労働で行けなかったACLのシドニーFC戦を除くすべてのホーム試合を生で観戦した。私をスタジアムに引き戻したのが、2018年に就任したアンジェ・ポステコグルー監督。彼が面白いフットボールをやっているという評判をTwitterで目にし、2018年3月10日(土)のサガン鳥栖さんとの試合を観に行った。噂のフットボールは、鮮烈だった。とにかく短いパスをつないでいく。どんな場面でも大きく蹴り出さない。ゴール・キックから全部つないでいく。観たことのないフットボールだった。当然、相手はそこを突いてくる。何度も最終ラインのパスを奪われ、失点待ったなしの場面を連発した。負けた。もっと普通にやれば勝てたのではないか? そう思った。が、よく分からないがまた観に来たいと思った。うまくいってないのは明らかだったが、何か凄いことをやろうとしているのは伝わってきたからだ。

『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディ with 片野道郎)という本を読んで、その凄いことの正体が少しつかめた。ポジショナル・プレー。相手に合わせず主導権を握る戦い方。数的優位、位置的優位、質的優位。この本を読んでいると、三ツ沢球技場で目にした場面が何度も頭に浮かんできた。マリノスが本来やりたいのはこういうことなのかと。あのとき試合には負けたのに観客席からの野次やブーイングは皆無で、スタジアムが温かい拍手と声援に包まれた。新しいフットボール・スタイルへの転換というマリノスのビジョンに賛同し、そこに向かっていくクラブをみんなで応援しているのだ。

戦術がどうこうの以前に、哲学。それをクラブぐるみで信じ抜く。アタッキング・フットボール。勇猛果敢。ひたすら攻め続け、シュートをたくさん撃ち、点をたくさん決める。相手がどのクラブであろうと自分たちのフットボール(our football)を表現する。選手たちがフットボールを楽しんで、お客さんを楽しませる。負けることもあるが、自分たちのフットボールを実現した結果なら仕方がない。普通なら相手があってのフットボールと考える。敵の長所を消し弱点を突くのが勝つための定石。大事なのは結果。勝ったら成功。負けたら失敗。やりたいフットボールだなんて本末転倒。私は2018年になるまでそう思っていた。アンジェ・ポステコグルー監督が私のフットボール観を大きく変えるまでは。

Zepp Tokyoでの公演を控えたPOLYPLUSさんのTwitterには度々、攻めという言葉が使われていた。攻めの姿勢。攻めの美学。何を大袈裟な、と私は思っていた。たしかにコロナ・バカ騒ぎ以降、ライブハウス(和製英語)が槍玉に上げられたこともあった。しかし、現在では生の公演を行うこと自体はそこまで珍しいことではなくなっている。さすがにキチガイの地元住民が嫌がらせの怪文書を貼ってくることはもうないだろう。東京では。業界で制定したコロナ感染拡大防止ガイドラインに沿った形であれば、問題なく遂行できるはずだ。半年前なら分かるが、12月にもなってコンサートをやるだけで攻めというのは言い過ぎなんじゃないか。

住民税の滞納で、納付期限が昨日(12月14日)の最終催告書を市役所から受け取っていた多重債務ボーイの中島さん(仮名)と、サイゼリヤ台場フロンティアビル店さんで赤ワインのデカンタを二本開けた。辛味チキン、イタリア風もつ煮込み、アロスティチーニ、熟成ミラノ・サラミ×2、シーフード・パエリア。二人で約3,700円。サイゼリヤさんに来たのはたぶん学生のとき以来だけど、今後もたまに利用したい。この値段でこの食事が出来るんならね、ありだと思う。サイゼリヤさんと日高屋さんは食のユニクロ。中途半端なクオリティと値段でやっている店の存在意義を問う存在。住民税の件について中島さんに聞いてみたところ、彼は市役所と交渉し、とりあえず払える分だけ払うということで手打ちになったようだ。それにしてもデカンタ一つという酒量がちょうどよかった。ほどよく上機嫌な感じに仕上がった。

アレを着けろ。コレも着けろ。アレはやるな。コレもやるな。コロナ・バカ騒ぎ以降のコンサートや舞台はそんなのばっかり。おっかなびっくり。どこか物々しい雰囲気。今の世の中で求められているのは、一にも二にもコロナ対策。その興行を通して感染を広げないこと。それを重視するあまり、エンターテインメントよりもコロナ対策が上に来ている感すらある。コロナ感染を広げる原因にならないことが成功の証。その考えを突き詰めると、生の興行なんてやらない方がいい。やっていたとしても我々は観に行かない方がいい。だってそれが最大のコロナ対策じゃないか。

たしかにこの状況ではどんな形であれコンサートを開催してくれることがありがたい。でも“この状況”ってのも煎じ詰めるとフィクションなんだけどね。別に新型コロナ・ヴァイラスは存在しないと言っているわけではない。国民国家が『想像の共同体』であるのと同じ意味で、コロナ・バカ騒ぎもフィクションなんだ。“この状況”が早く終わらないかな、と思っている我々もマスクを着けて三密を避けようとか他人と距離を取らなくちゃとかとにかく感染拡大は悪だと思っている時点で“この状況”を作り上げている一員なんだ。

コンサートが始まると、目前に信じられないような光景が広がった。前の列にいるヘッズが一斉に立ち上がったんだ。そう、この公演は立って観ることが許されている。この数ヶ月というもの、じっと座って黙って観とけやというスタンスの興行ばかり観ていた私にとって、立っていいというだけで衝撃的だった。え、いいのか? みんな立っているだけではない。思い思いに頭を振り、身体を揺らしている。音に合わせて手を振っている。あまつさえ小刻みにジャンプまでしているではないか! みんなが自由に音楽を楽しんでいる。我々の姿を見ながら、呼応するように演奏のギアを上げていくPOLYPLUSのメンバーさんたち。私が忘れかけていた光景が、そこにはあった。マスク着用と発声禁止という制約があってなお、ここまで自由に音楽を楽しめる場が“この状況”において存在するのが奇跡のようだった。四曲目の“we gotta luv”で抑圧されてきた感情が溢れ、涙が出てきて、次の曲が終わるくらいまで止まらなかった。

当然だけど生で聴くのはSpotifyをイヤフォンで聴くのと迫力が段違いで、特にサクソフォンの音色には圧倒された。POLYPLUSさんの音楽で明らかにサクソフォンが中心で、実際サクソフォン担当者がリーダーを務めている。辻本美博さん。この紳士はヤバい。私は元々fox capture planさんのピアノ担当者メルテンさん(岸本亮さん)が好きで同氏目当てでPOLYPLUSを聴いていた。POLYPLUSさんにおけるメルテンさんはリーダーではない分、却って生き生きしているように見えた。POLYPLUSは自分がやっているバンドの中でいちばん制約が少なく、自分を解放できる。この感覚をfox capture planとJABBERLOOPに持ち帰れると思う。という旨のことを彼は言っていた。POLYPLUSさんの場合、五人構成でサクソフォン担当者とギター担当者もいるのでピアノが多少遊んでも曲を壊さないということなのかもしれない。

激しすぎてジャズなのかロックなのかヘヴィ・メタルなのか何なのか分からなくなるが笑ってしまうほどにイカした音楽だった。辻本美博さんが最後の“wake me up (cover of Avicii)”を始める前に、僕らの音楽にはEDMの要素も取り入れていると言っていた。メンバーさんの感情が音楽に乗って会場が一つになる感覚がたまらなかった。私の席は前に通路がある9列目ど真ん中だった。ステージが偏りなく見えたし、観客の盛り上がりもよく分かる絶好の位置だった。もしかすると一番いい席だったかもしれない。アイドルさんと違って必ずしも最前が最良の席とは限らない。音響的にはむしろ真ん中くらいの方がいいはず。

POLYPLUSさんのTwitterに書いてあった攻めの姿勢、攻めの美学といった言葉はこういうことだったのか、と氷解した。世の中の空気を読みながら安パイを選ぶのではなく、業界のガイドラインを守った上で、それに過剰に寄り添わず、可能な限り最高のエンターテインメントを届ける。いや、届けるのではなく、観客と一緒に作り上げる。自分たちの音楽、自分たちのコンサートがまずあって、“この状況”下でいかにして実現させるか。決してガイドラインに合わせてエンターテインメントの内容を決めるのではなく! Zepp Tokyoという大きめの箱を選んだのもそれが理由だと辻本美博さんは説明していた。自分たちが音楽を楽しむ。観客を楽しませる。観客とプレイヤーが一体となってライヴ・エンターテインメントを作り上げる。そのPOLYPLUSさんの姿勢が、私の中で横浜F・マリノスと重なったんだ。

POLYPLUS at ZEPP TOKYO 20201215 - playlist by diskunion | Spotify

2020年12月13日日曜日

キャメリア ファイッ! Vol.11 キャメリアXmas2020 (2020-12-12)

目の部分だけを覆うフェイス・ガードという何のために開発されたのか皆目検討もつかない奇怪な物体が入場者全員に配布され、装着しないと入場させてもらえない。マジで何が目的なんだ? 目からコロナ光線でも出るのか? アップフロントさんよ、変な業者に騙されていないか? 開演前の前方スクリーンにデカデカと映し出される「必ずマスクとフェイスガードのご着用をお願いします」という文字。上々軍団の野郎どもによる前座。出さなくてもいいのに曲を出して、歌わなくていいのに歌っている。なぜかサンタ衣装。今日のつばきファクトリーさんは我々の大好物である布の少ないサンタ衣装を纏ってくれないことが事前のグッズ写真で分かっている。多くのヘッズが脳内で悪態をついたに違いない。お前らじゃねえよって。マスクとフェイスガードを「か・な・ら・ず」着けろと何度も高圧的に念を押してくるアップフロントさん職員とおぼしき中年男性のキモい陰気な声。ワクワクを殺すワックネス。最後だけちょっと声を上擦らせて、拍手で盛り上げてくれ的なことを言っていた。取って付けたように。同じことを伝えるにしてももう少し聞き手をポジティヴな気持ちにさせるやり方があるはずだ。アルビ兄さんから学べ。意味不明で邪魔なプラスチックの着用強要、しょうもない前座、観客を犯罪者予備軍かのように扱う場内アナウンスメント。とてもじゃないがこれから楽しい時間が始まるというヴァイブスではない。

上原ひろみさんのコンサートとのハシゴを諦めてブッチした去年に続き、席が全然よくない。27列。ほぼ最後列。関係者がお忍びで観に来るような席。アップフロントさん、何でやねん。ザ・バラッドに4公演しか入らなかったことに対する制裁か? 久しぶりのファンクラブ・イヴェントなのに、とうとう来たなこの時が的な感情の高ぶりはなく、気持ちはニュートラル、いやそれ以下。今日に関してはエッチなOJTしてくださいさん(仮名)と久々に再会することの方が楽しみでね。最後にお会いしたのが去年の9月。田村芽実さんのコンサート。大阪。(最近の氏はブログを文章からトークに切り替えているのだが、これがまた面白い。20分くらいあるのに飽きない。そのまま文字に起こしても読める水準。よくチェックしとけ。)コロナ・バカ騒ぎは現場を通じてイルな同士たちとお会い出来る機会を激減させた。おかげで私は未だにモーニング娘。さんの『KOKORO & KARADA/LOVEペディア/人間関係No wayway』、Juice=Juiceさんの『ポップ・ミュージック/好きって言ってよ』、アンジュルムさんの『限りあるMoment/ミラー・ミラー』を入手できていない。平時ならとっくに誰かから貰えていたはずだ。現代の奴隷船(夜行バス)で新宿に降り立ったエッチなOJTしてくださいさんと東池袋中央公園で合流し、サンシャイン内のタリーズさんで歓談し、エー・ラージさんでノンベジタリアン・ミールスをいただき、代々木に移動してきた。

エッチなOJTしてくださいさんとの再会が本丸で、つばきファクトリーさんのキャメリア ファイッ! Vol.11 キャメリアXmas2020はついでくらいの位置づけだったのね。開演するまでは。正直。でもさ、実際につばきファクトリーさんが笑顔満点でステージに出てきてキャピキャピしてるのを観ていると、口角が上がりっぱなしになっちゃってね。もう、さっきまでのネガティヴィティーはものの数分で吹き飛んでしまった。一時的であってもイヤなことを忘れて無心になれる空間。そう、これが私が好きだったアイドルさんの現場。ホームに帰ってきた感じがある。

各メンバーさんが考えたお題をシャッフルしての自己紹介。たとえば谷本安美さんはラッパー風にというお題(誰が出したお題か失念したが、内容的に岸本ゆめのさんかな?)を引き、韻踏んで!というさわやか五郎の要求に対応できず困った挙げ句、新沼希空さんの助け船をもらい、安美、神~、イェー!とか言って笑っていた。小野田紗栞さんはヴィジュアル・ロック・バンドのヴォーカル担当者風に(浅倉樹々さん考案)。浅倉樹々さんはショップ店員さん風に、のはずがどんな髪型にしますか?なぞと美容師さんに変わっていた。

メンバーさんが二人組になって、与えられた計算式を、袋に入っている道具を使って解くというゲーム。制限時間1分。二個だけ電卓が入っていたのだが、残りはトランプとか、サイコロとか、おはじき(拳銃ではない)とか、ピンポン球といった役に立たないものが入っている。メンバーさんの反応が可笑しかった。すげー面白かったのが、新沼希空さんのときね。袋に紙と鉛筆が入っていたんだけど鉛筆が削られていなくて、一緒に入っていた鉛筆削りで削らないといけなかった場面。「削るところから?」とメンバーさんの誰かが言ったタイミングが絶妙で。新沼さんが急いで削り始める絵も滑稽で。あれには本当に笑った。他にもトランプを引き当てた小野瑞歩さんが、上から5枚の数字が正解です、とマジック風に答えを出そうとするけどキングとかの二桁のカードが連続して出てきて破綻したのも可笑しかった。秋山眞緒さんと浅倉樹々さんが、正確な数字は忘れたけどA+BxCという式を割り当てられたんだけど、先にBxCを計算せずにA+Bを計算していた。たぶん小学校で習うよね、計算の順番は…。しかも答えを出せず、3万という適当な回答をしていたのが可愛かった。

メンバーさんが各々で考えた文化祭で憧れの先輩に言うキュンキュン台詞をシャッフルして言うセグメント。ベタなんだけど、メンバーさんが恥じらいながら演じる姿がベタに可愛らしく、私はニヤニヤしっぱなしだった。特に秋山眞緒さんが顔を赤らめんばかりに恥ずかしがっていて。心を洗われた。小野瑞歩さんは、たこ焼き屋の設定で、先輩のだけタコを二つ入れときました、的な台詞を実演していた。二つと言うときに小野さんはニッコリしながら緩めのピース・サイン。

前座は別として、本編における上々軍団は上々だったと言っても過言ではない。彼らに苛つかされる要素がなかった。今日の彼らは右サイド(上手)大外のレーンで幅を取りつばきファクトリーさんのスペースを作り出すポジショナル・プレイに徹していた。横浜F・マリノスだと通常は右ウイングが担う役割。(公演後のInstagram写真でも簡単にトリミングできる両端にポジションを取っていたのは評価できる。)メンバーさんのいるエリアに紛れ込んで来ることはなかった。しかもさわやか五郎と鈴木啓太が同時には出てこなかった。おそらくコロナ対策ということでそうしていたんだろうけど、コロナに関係なく彼らには一生そうしてほしい。特に鈴木啓太には、自分が裏方なんだということに早く気付いてほしい。

ミニ・コンサート中の私は、小野瑞歩さんの熱心な支持者としてぶれることなく彼女の一挙一動を追いかけた…と見せかけて、主に浅倉樹々さんを鑑賞した。もっと正確に言うと、最初は秋山眞緒さん。デコルテとワキを惜しみなく見せてくださっていたし、立ち位置上、小野さんを視界に入れながら観ることが出来たからだ。でも徐々に浅倉樹々さんに目が移っていった。小片リサさんがいなくなった8人のつばきファクトリーさんにおいて彼女が有無を言わせないセンターでありエースなんだと思わせる存在感があった。中田英寿さんがいくら活躍しようともフランチェスコ・トッティさんからASローマさんでポジションを奪えなかったのと同じように、小片リサさんがいくらInstagramの鍵アカウントで浅倉樹々さんの暗部を暴露しようとも彼女に勝つのは無理。そういう存在。浅倉さんは。単に会社のお偉いさんに気に入られているとか贔屓されているとかじゃなく、そういう星の下に生まれてきたお方なんだ。

岸本ゆめのさんと秋山眞緒さん、浅倉樹々さんのお三方がダンスで大きく腕を上下させた後にチラッと目線を下ろして衣装の左パイオツ部分をずり上げていた。最後の『断捨ISM』で岸本ゆめのさんが前に屈むときに胸の谷間というか陰を見せてくださった。こういう映像作品には残らないであろう自分なりの発見、それこそが現場に来る意味であり、醍醐味なんだと私は実感した。この曲で終盤のフック中に誰かが歌詞を飛ばし、誰も代わりに歌わず、メンバーさんが一斉に「え?」「お前だろ?」「いや、お前だろ?」的な表情で周りを見ていたのが可笑しかった。まだ小片リサさんがいた頃の歌割りが身体に滲みついているのだろう。

今日はショック・アイさんの最新シットを聴いてもイヤな気持ちにはならなかった。こうやって平時に近い形のイベントをやってくれるありがたさを前にして、曲が気に入らんなんていう贅沢は言っていられない。それに、長袖・長ズボンのような何も理解(わか)っていない衣装で直立不動、神妙な面持ちでバラードを歌われるよりも、脚、デコルテ、ワキを見せてくれながら笑顔でショック・アイさんのクソ曲を歌って踊ってくれた方が百倍はマシなのである。

最後のコメントで、Saoriの偉大さを改めて感じた的なことを岸本ゆめのさんが言っていた(エッチなOJTしてくださいさんによると、このとき「Saori好きってなった♪」とメンバーさんの誰かがボソッと言ったらしい。本当だとしたら最高だが、私は迂闊にも聞き逃した)。一人のメンバーさんの名前をわざわざ挙げておべっかにも聞こえるようなことを言うのはやや不可解だった。もしかして、岸本さんはSaoriに弱みでも握られているのだろうか? 岸本ゆめのさんに限らず、第二、第三の小片リサさんを生み出し得るネタをSaoriは持っているのだろうか?

2020年11月29日日曜日

Discovery Release Live (2020-11-19)

アイドルさんと面会できる機会が劇的に減少し、握手会が禁じられた遊びとなってから、爪を切る契機がなくなった。とはいえ、伸び放題だな、六月のつくしんぼうか(Ⓒ上田晋也さん)というほどではない。こまめにパチパチやっている。ただ、この日にはキッチリ短くしないとあかんという自分の中のデッドラインがなくなった。アイドルさんの尊いおててを万が一にでも傷つけてはいけない。爪が当たってイヤな思いをさせてはいけない。そういった配慮をする場面がなくなった。触らせてもらえないので。爪の長さに神経を尖らせる理由がほとんどなくなった(強いて言えばiPhoneでマリオ・カートをやるとき右手親指の爪でタッチがずれることがある)。

爪だけでなく、身だしなみ全般に気を遣う必然性がどんどん薄れている。在宅勤務が主になったので、平日の生活は家から徒歩20分圏内で完結する。ヒゲを剃らなかったとしても支障はない(習慣で毎朝欠かさず剃っているが)。飲食店、ジム、スーパー・マーケットの店員さん、宅急便の配達員さん以外と顔を合わせることはまずない。熱烈中華食堂に行くのに全身のコーディネートを考えてどうする。部屋に転がっている適当な服で十分。もちろん根がファッショニスタに出来てる私は洋服を買い続けている。クローゼットはイケてる服で充実していく一方だが、どこに着て行くのかという問題がある。

私は髪にパーマネントをかけているのだが、誰に見せるわけでもないんだし、一旦やめてもいいんじゃないかという考えが頭によぎり始めていた(パーマネントといえば、戦時中に日本でパーマネントが奢侈、アメリカ的と非難・弾圧され、「不要不急」だからと「自粛」を求められる様を描いた飯田未希さんの『非国民な女たち』がとても面白かった。オススメ)。収入も減っていることだし、無駄な出費は見直したい。でも今朝、美容院でパーマネントをかけてもらった。2月から延期されていたつばきファクトリーさんの特典会の開催日が迫っているからだ。11月21日(土)と23日(月・祝)。小野瑞歩chanと間近で対面できる貴重な機会を控えてパーマネント代の数千円をケチりたくない。フットボールにおける戦術的ピリオダイゼーション(試合から逆算してトレーニング内容や休息を計画する)のように、私は小野瑞歩chanと会う日に最高の自分になれるように調整するのである。

ヴェルナー・ゾンバルトさんの『恋愛と贅沢と資本主義』によると、恋愛の自由化や娼婦の存在が資本主義を発展させたらしい。らしいと書いたのは、私は同書を読んでおらず、少なくとも十五年以上は積ん読し熟成させているからだ。その代わりに『まんが講談社学術文庫 恋愛と贅沢と資本主義』を読んだ。

中世の恋愛観では宗教が重要視され結婚を髪が望み髪が祝福する制度とし制度上結ばれていない恋愛は罪とされていましたからね

十一世紀以降のドイツの吟遊詩人らによるミンネザンク……つまり叙情詩と恋愛歌曲……これらが人々に広まることで恋愛が世俗化していった(ゾンバルト原作、『まんが講談社学術文庫 恋愛と贅沢と資本主義』)

女をゲトるために男が贅沢品を買い与え、それが関連産業を潤わせ、経済を豊かにしていったという(まんがをざっと読んでの粗雑な理解。そのうちちゃんと『恋愛と贅沢と資本主義』を読む)。私にとってアイドルさんの存在もこれに通ずるところがある。もちろん私はアイドルさんを一生ゲトることは出来ない。物理的に接触すらさせてもらえない。それでも、たとえ収入が減っていてもパーマネントをかけお洒落をして会いに行きたいと思わせ、そのための消費を喚起する力がアイドルさんにはある。『闘争領域の拡大』(ミシェル・ウエルベックさん)で恋愛市場から取り残された我々は、恋人や妻子の代わりにアイドルさんに金銭を落とすのだ。

パーマネントをかけた私がその足で会いに行ったのはアイドルさんではなく、読者諸兄もお馴染みであろう多重債務者の競馬ライター、中島さん(仮名)。久々に会う。『ルポ新大久保』(室橋裕和)でネパール人いち押しの店として紹介されていたラト・バレで昼食。ダル・バト(Aセット)550円。最近は専らココ。ダル・バトに関してはソル・マリよりも上。派手さはないんだけど、飽きの来ない味。この近辺に住んでみたい。毎日ダル・バトを食って、新宿の紀ノ国屋書店に本を見に行く。やろうと思えば引っ越せないことはない。でも今の家も周辺環境を含め非常に気に入っている。それにこのエリアは家賃が高い(その理由で、日本に来る留学生たちにとって新大久保は遊びに来るもしくは働く町で、住む町ではないんだとか。『ルポ新大久保』参照)。

西大久保公園で数時間、中島さんと駄弁った。サテンに入ってもよかったが、気持ちのよい天候。外の空気を吸いたかった。年間を通してもそうたくさんはない、ちょうどよい気温。若い女はたくさんいますけど、男は若いのがいなくて中高年のやばそうなのしかいませんね、と中島さんは言った。まあ平日の昼間だから若い男は働いているんだろうなあ、と私はさほど考えずに答えた。コレを書きながら思い出した。私は労働の研修でフィリピンに一ヶ月滞在したことがあるが、日中のストリートにはたくさんの男がウロウロしていた。女はあまり見なかった。何でもかの国では女性が働いて男がプー太郎なのが普通だそうだ。十五年くらい前の話だし、本当かどうかも分からないけどね。その後モンゴモロで夕食。私はこのジャワ料理店を数ヶ月に一度は利用するのだが、来る度にそれ以上の頻度では利用しない理由を再認識する。思いのほか主菜の可食部が少ない。私が選んだヤギの煮込みはほぼ骨だった。物足りない。

山手線、有楽町駅。18時開場、19時開演で、18時33分に東京国際フォーラム、ホールCの入り口に到着。ココに至るまでfox capture planのフォの字も出していなかったけど(フォの字って何だ?)、前置きが長い(というか前置きと本題の境目があるようでない)のが当ブログの持ち味である。今日はfox capture planさんの新アルバム“Discovery”のリリースを記念して行われるコンサート。アルバムを引っ提げて、というHello! Projectでは死滅して久しい様式。古きよき。こうあるべき。アルバムを定期的に発表して、それを軸に活動していく。それが本物の音楽集団。ストリーミングに最適化された単発の曲や短いEPをドロップし、まとまった形で聴きたいならお前さんで勝手にプレイ・リストでも作ってくれやという最近の流れに私は賛同できない。音楽家はアルバムを出してナンボ。物語、コンセプト、世界観を一時間前後で表現してナンボ。

11月4日(水)にドロップされた“Discovery”を、私はもちろんSpotifyで聴いた。いいアルバムなのに異論はないけど、数年前までの作品のような衝撃はもう受けない。何というか、想定内の音しかないというか…。こう来るかッ!ってのがないんだよね。夢中になれない。私のfox capture planさんの音楽への慣れによるものなのか、fox capture planさんの音楽の変容(もしくは変容のなさ)によるものなのか、その両方なのか、現時点でも分からない。いつからこうなったんだろう。ディスコグラフィを見ても、明確にココからと線を引くのは難しい。2015年の“COVERMIND”まではマジで疑う余地ゼロ、もう一生ついていきますくらいの感じで、疑念が浮かび始めたのはその後だけど、かといって“Butterfly”以降のアルバムが駄作というわけでもない。ただ、色んなドラマのサウンド・トラックを手がけるようになってから角が取れていったような気がする。あいつらは売れてポップになった的な見方はあまりに短絡的で失礼なのは承知している(ピアノ担当のメルテンさんも以前そういう声があるのをネタにしていた。たしか2017年4月15日)。ただ多少の真実を含んでいると言わざるを得ない。

それでもfox capture planさんが唯一無二の存在であることに変わりがない。彼らのような音楽は、他にあるようでない。類似する集団がいそうでいない。オリジナル。私が最も好きなバンドの一つ。だから今日の公演情報をTwitterで見て、迷わず申し込んだ。

開演前の気持ちは、良い席(10列左寄り通路席)で久しぶりにfox capture planさんのコンサートを観るのが本当に楽しみだな、が8割。とはいってもこの集団にかつてほどのドープさはないんだよな、が2割。2割の方は、コンサートが始まってものの数分で雲散霧消。すぐさまステージ上の三人組の演奏に圧倒された。前もそうだったけど、生で聴くと聴こえ方が全然違う。Spotifyをイヤフォンで聴くのとは比較にならない。当たり前なんだけど、こんなに違うのかというくらい違う。もう別モンよ。阿藤快と加藤あいくらい違うよ(Ⓒ上田晋也さん)。上等な炊飯器で炊いた米は一粒一粒が立っているとか言うじゃない。それと同じで、一つ一つの音が、鮮明に飛び込んでくる。普段は聞き流しているような音も、何一つ聞き流させてくれない。音響だけじゃなく、メンバーさんが実際にステージにいるというのも大きい。こういう表情で、こういう動きを伴ってこの音を出しているんだというのが分かる臨場感。シェフが目の前で焼いてくれる鉄板焼き(メリケンが好きなやつ)と同じ原理。

セット・リストは前半が主に旧作から、後半が主に新譜“DISCOVERY”からという感じだった(間に15分の休憩があった)。終演後に配布された冊子にセットリストが記載されていた。こういう心遣いはありがたい。

[1st Set]
CROSS VIEW
衝動の粒子
Butterfly Effect
Discovery the New World
Sprinter
夜間航路
エイジアン・ダンサー

[2nd Set]
Into the Spiral
PRDR
Spread Out
Narrow Edge
NEW ERA
Paradigm Shift
Capturism
Supersonic

冊子には書いていなかったが、アンコール明けの最後の曲は“RISING”だった。私は“Butterfly Effect”、『エイジアン・ダンサー』、そして“RISING”が印象に残った。『エイジアン・ダンサー』は私が最も好きなfox capture planさんの曲の一つ。今日のセットリストではダントツに好き。“RISING”もまた好きな曲なので、それらが前半の最後そしてコンサートの最後という要所に配置されたのには気分が高揚した。そうそう、分かってるねっていう。

SpotifyやYouTubeでは逆立ちしたって得られない体験が出来た。こうやって会場に足を運んでよかったと思った。唯一ケチをつけるするならば、ストリングスが生ではなかったこと。もちろんfox capture planさんはピアノ、ベース、ドラムからなるトリオ。3人がいれば成り立つ。でもお三方が呼吸を合わせて演奏する中、ストリングスがオケで聞こえてくるとほんの少しだけ興醒めしてしまう部分があった。ほんの少しね。メンバーさんが呼吸を合わせて作り上げる、この場限りの、二度とまったく同じにはならない音楽空間、という前提がちょっとだけ崩れてしまう。特にジャズは即興の部分がコンサートの醍醐味だから。繰り返すけどほんのちょびっとだけそう思ったという程度だからね。随所に差し込まれるメンバーさんの即興は素晴らしかった。

2020年10月31日土曜日

秒速5センチメートル (2020-10-22)

駅に着いてから気付いたけど前にも田村芽実さんの何かで来たことのある土地だ(※1)。キッチン・カルネでハンバーグと少量のステーキが鉄板に乗ったやつを食った。少しとはいえバター、あとハンバーグのつなぎでおそらく卵も摂ってしまった。カゼインと卵白に強いアレルギーがあることが検査で判明し、それらを避けるよう先生から言われている身としては後味が悪い。食いモンだけに。あれを食えとかこれは食うなとかの助言は世の中に掃いて捨てるほどあるけどさ、体質は人種や個人によって違う訳で。遅延型フード・アレルギー検査を受けないと始まらないんだと最近になって私は知った。牛乳を毎日飲めとか、卵を毎日食べなさいとか書いてある本もあるけど、私のようにアレルギーがある人が従うと逆効果。

クリーピー・ナッツ(※2)を地で行く四人組中年男性(※3)が仲良く談笑しながら目前の建物に吸い込まれていくのを見て、今日の会場、東京ヒューリック・ホールがココで間違いなかったんだと安心した。田村芽実さんのファンクラブ会員はクリーピー・ナッツと総称して差し支えない。いや、女性のファンもたくさんいる。実際に去年のソロ・コンサートでは観客の半分くらいが女性だった。でもやっぱこう、平日で、田村芽実さんのソロ現場ではなく、チケットも手数料抜きで7,800円となるとね、濃い層しか来ないんだろうね。席に着いて同じ列の左右を見るとキモい男性ばっかなのよ。他の列と年齢や男女比の分布が違うんだ。観客の入れ方のガイドラインが緩和されたらしく、席の間隔を空けなくなっている。すぐ隣にキモい男性がいる感覚を久しぶりに味わった。田村芽実さん関係の現場は、観客の大半が女性を占めるような催しでも私の周囲はクリーピーな紳士で固められている(オセロの原則で私もキモくなる)ので、彼女のファンクラブで抑えられたエリアだというのがすぐに分かる。でも別に両隣の人と一緒に何かをするわけではないし、始まっちゃえば関係ない。田村芽実ファンクラブ事務局さんはいつも良席をくださるので感謝している(※4)。

朗読劇って何やねん。しかも原作が新海誠さんって。正直、だるい。パスしていい? 最初にこの公演について知ったとき私はそう思った。もしコロナ・バカ騒ぎがなくさまざまな興行が正常に行われていたなら、ファンクラブ先行受付の案内を黙殺していたかもしれない。田村芽実さんがご出演なさるという点を除くと興味を惹かれる要素が何もない。いや、食わず嫌いやねんで。朗読劇なんて観たことがない。もしかしてポエトリー・リーディング的な、演者さんが椅子にでも座って小説をただ読み上げる劇なのだろうか? だとすると面白さはそのテキストに強く依存するが、作者が新海誠さんと来た。アニメ映画『君の名は。』の大ヒットで大金と名声を獲得した原作者として名前くらいは知っていたが、私は一冊も読んだことはない。読む気にならない。私や当ブログの読者にとって甘酸っぱい青春恋愛物語なんざギャングスタ・ラップのリリックよりも生活実感からかけ離れている。リアルじゃねえ。ヒューバート・セルビー・ジュニアさんを読め。チャールズ・ブコウスキーさんを読め。ハンター・トンプソンさんを読め。西村賢太さんを読め。樋口毅宏さんを読め。根本敬さんを読め。ドナルド・ゴインズさんを読め。ミシェル・ウエルベックさんを読め。

ただ背に腹は代えられないというか、田村芽実さんのことは長らく生で観ていなかったんでね。最後は2月15日の『ウエスト・サイド・ストーリー』。五月だったか六月だったかの『ヘア・スプレー』は公演そのものが全部飛んだ(これは本当に残念)。だからもう約8ヶ月。この『秒速5センチメートル』を逃したら次はいつめいめいさんの舞台やコンサートを観られるのか目処が立っていない(公表されている範囲では)。贅沢を言っていられない。いわば新海誠さんに金玉を握られている状態。今日の19時半の部に申し込んだ(田村さんがご出演されるのはこの部と、昨日の昼の二公演)。公式ウェブ・ページを見ると公演毎の出演者さんは五人しかいないので、それなりに田村さんの見せ場はあるだろう。

と思っていたんだけど劇が始まっても田村さんがなかなか出てこない。この劇は、公演によって出演者さんの組み合わせが何通りかに分かれている。もしかして申し込む公演を間違えたんじゃないか? 田村さんがご出演なさらない公演に間違えて申し込んだのではないか? 顔には出さないが(※5)少し焦った。しかしファンクラブに案内されたURL経由では田村さんが出る二公演しか申し込めなかったはず。

構成として、いくつかの話に分かれているんだけど、それぞれで完結しているのではなく、つながっていた。最初の話では田村さんの出場機会がなかった。二話目でようやくステージに姿を現した。行動経済学の本に書いてあるように人間には確証バイアスがある。あらかじめ抱いている考えが正しいと再確認する形で物事を認識してしまう癖のことである。私の場合、田村芽実さんは最高に魅力的な女優であるというのがそれにあたる。なので客観性には欠けるのだが、彼女が登場した途端、場がパッと華やいだ。同じ劇で十代前半(たしか13歳)からアラサー(たしか28歳)まで感情移入して演じる役者さんたちの実力は確かなものだった。それは認めた上で、田村さんには一味(唐辛子ではない)ちがう輝きがあった。今日の田村さんはいつにも増して本当に生き生きしていたんだ。天真爛漫な高校生のお嬢さんという役柄も関係していたとは思うけど、それだけじゃなかった気がする。ステージで自分を表現できる喜びが、彼女の全身からにじみ出ていた。それを観るだけで私も楽しい気持ちになった。しばらく期間を置いた(置かざるを得なかった)ことで、Spotifyや毎週(※6)のインスタ・ラジオで聴いているあの人が近くにいる!という素朴な喜びも感じた。

朗読劇というのは、懸念していたポエトリー・リーディングとは異なっていた。通常の舞台ほどのアクションはないが、ずっと一箇所で座っている訳でもなく。その中間くらい。演者さんたちは常に台本を開いて両手で持っている。台詞はそこから読み上げる。この朗読劇という形態にコヴィッド・ナインティーンがどこまで関係しているのか、私には知る由がない。もしかすると、演者さん同士の接触を最低限にする方策として選ばれたのかもしれない(※7)。役者さんとしては台詞を正確に再現する重圧からは解放されるから、純粋に演技に入り込みやすいのかも。往年の名俳優でも台詞をまったく覚えずカンペを読んでいた人がいると『太田上田』(※8)で太田光さんが言っていた。

題名の『秒速5センチメートル』は、桜の花びらが地面に落ちる速度なんだって。だから春の、別れを伴う甘酸っぱい恋愛を描いた話。私が好む小説のように麻薬中毒者は出てこないが、恋愛で頭がいっぱいになっている状態も麻薬中毒みたいなもんだ。aikoさんも『恋愛ジャンキー』という曲を残したしね。この機会がなければ私は一生、触れることはなかった作品。原作を読もうとは思わないが、田村芽実さんを通して作品世界を感じることが出来たのはよかったと思う。


※1 2019年10月26日(土)。バースデーライブ。

※2 日本語にすると気味の悪い変な奴らくらいの意味。キモオタと訳しても差し支えないんじゃないかな。知ってた?

※3 全員ふくよか。二人は禿げている上に洗っていないのか脂気の強い髪がベッタリと張り付いている。

※4 今日は四列目の右寄り通路席。C列が最前だった。

※5 男性は戦いで相手に考えていることを悟られると不利になる名残りで女性に比べ感情が表情に出ないようになっている。たしか昔読んだ『話を聞かない男、地図が読めない女』にそう書いてあった気がする。

※6 実のところ三、四回に一回は聴くのを忘れている。

※7 いや分かんないけどさ、台本に向かって台詞を言っていたから飛沫感染の可能性は減るだろうし、稽古回数も少なくて済むのかもしれないし。

※8 『太田上田』と『三宅裕司のふるさと探訪』を観るために私はHuluにお金を払っている。

2020年10月25日日曜日

アラビヨーンズナイト (2020-10-09)

陰茎から開演前にメロウ・イエロウ(ビタミン剤を飲むと実際そういう色になる)を放出すべく2階の男性便所に向かうと、入り口にこんな貼り紙があった:

ただいま、男性用トイレの小便器を一つおきでの使用とさせていただいております。ご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。 こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

もちろん例のアレの感染拡大防止というのが理由だろうが、尿の飛沫で伝染するとは初耳だ(どうやって?)。それとも、放尿中に利用者が何分間も隣同士で話し込むと思っているのだろうか? もちろん私はスペース・ゼロの小便器を一つおきにしか使えないことで何か困るわけではない。それ自体はどうでもいい。だが、こういう「お願い」を見る度に、これは本当に意味があるのだろうか? 仮に効果があるとして、手間に見合っているのだろうか? いつまで続けるのだろうか? といった疑問が頭を駆けめぐる。どうせ、決める方も従う方も殆ど何も考えちゃいない。一連のコロナ・バカ騒ぎで私は、物事の原理や理由をすっ飛ばして分かりやすい解決策に飛びつく(そしてそれに従わない人々を非難する)という大衆の習性をイヤというほどに見せつけられている。もちろん私も、無知蒙昧な大衆の一員として自己嫌悪に襲われている。

ご理解とご協力をお願いしますという言葉は往々にして、ええから黙って言う通りにしてくれやという意味だ。ルールには従うべき、なぜならルールだから。ルールは正しい、なぜならルールだから。それは戦争中の軍隊ならまだしも、自由な社会に生きる自由な人々の行動倫理とは言いがたい。ルールには確たる根拠があるべきで、根拠に何かの綻びが判明した時点でルールは変更もしくは撤廃しなくてはならない。(フットボールでルールが細かく変更されているように。)

私は昔、立ち読みしていたある歴史書(岡田英弘さんの本だったと思う)にこういうことが書いてあってハッとしたことがある-人々は横暴な支配者と民衆という構図で歴史を描きたがるが、それは間違っている。なぜなら人間には支配されたいという願望があるからだ。これを見落とすと歴史を正しく理解することは出来ない-分かりやすいルールに支配され、行動規範を誰かに決めてもらう。その方が生きるのが楽なんだ。

一連のコロナ・バカ騒ぎで私が痛いほどに感じたのが、学力の重要性だ。最低限の算数や歴史の知識が身に付いていないと、身の回りで起きていることを大局的に理解できない(だから数ヶ月前に購入した『増補改訂版 語りかける中学算数』に手を付けないとね)。ご多分に漏れず私も子供の頃は学校の勉強なんて社会で役に立たないと言って親を困らせたことがある。今なら確信を持って言えるが、勉強をしなかった先に待っているのはテレヴィジョンに踊らされるだけの人生だ。コロナ・バカ騒ぎが恰好の教材だ。

もちろんステージ上のBEYOOOOONDSさんは誰一人としてマスクをせず、飛沫を飛ばし合っていた。というか、人と人が対面して言葉を交わすというのは人類が誕生して今日に至るまでずっとやってきたことであって、飛沫がどうのとかをいちいち意識するのが異常だ。それを新しい日常だとか何とかスタイルだとか言って定着させようとする奴は本物のサイコパス。キチガイ。舞台というのは本来はステージ上がフィクションの非日常だが、このコロナ・バカ騒ぎ下においてはむしろステージ上が正常な世界に見えた。こっち側の、男性便所の小便器は一つおきに使えとかマスクを着けろとかソーシャル・ディスタンスだとか言っている世界がよほど異常。

当初は4月9日(金)が初日で、私が観る予定だったのがその日の公演だった。説明するまでもない理由によって延期された。私は普段、初演にこだわらない。むしろ良席を期待して申し込みが少なそうな平場に申し込む。けど、たまには初演観てみようと思って申し込んでいた。チケットの払い戻しはせず、その日が来るのをひたすら待った。部類の演劇女子部好きなので。10月9日(金)まで約半年待たされたが、中止にならずに開催された。本当に喜ばしいことだ。

演劇女子部の舞台では出演者さんが通路を歩く場面が何度かあるのが通例だが、今回の『アラビヨーンズナイト』ではそれがなかった。すべてがステージ上だけで繰り広げられた。出演者さんが我々と物理的に接近するのを避けるために、そうしたのだろうと思う。正常な世界(ステージ)と異常な世界(客席)の間には壁がある。どれくらいの確率なのか分からないけど(文字通り万一とか、それ以下?)、もし通路で台詞を言うBEYOOOOONDSさんのメンバーさんの飛沫からコヴィッド・ナインティーンをいただければ、そんな光栄なことはないのではないだろうか? BEYOOOOONDSさんのメンバーさんの唾を浴びさせろ。

7月に再開された明治安田生命Jリーグを、私はこれまでに(10月9日時点で)12試合スタジアムで観戦した。バラード形式のハロー・プロジェクトのコンサートは4公演に入った。それで分かったのだが、鑑賞方法が制限されるのはまあ我慢できる。フットボールは大きな声を出せなくても(実際にはゴールのときにみんな出しているが)意外と没頭できる。だが、観るエンターテインメントそのものが変容してしまうと楽しさが大きく減る。ジェイ・ポップ・バラードのハロー・プロジェクト・コンサートは私には苦痛だった。

その点、『アラビヨーンズナイト』は通路にメンバーさんが現れないのを除けばいつも通りのショーで、純粋に面白かった。そもそも声を出して観るものではないから、観客側にもそんなに制約はない。BEYOOOOONDSさんがつくづく恵まれているなと思うのは、一人一人を活かすためにしっかりと大人がプロデュースしている点だ。前提としてメンバーさんの魅力と努力がある。つまり彼女たちがはっきりした特技や個性を持ち、それを日頃から発信している。集団の採用や編成も含めて大人がちゃんと働いている。里吉うたのさんと平井美葉さんが二人でダンスを披露する場面があったり、清野桃々姫さんにラップ調の台詞があったりと、それぞれのメンバーさんが特徴を発揮しやすい内容になっている。

話の内容としては、現代に生きていた西田汐里さんと山﨑夢羽さんが別時代に飛ばされる。王様を満足させる物語を作れば元の世界に戻れる、失敗すると石にされてしまう。西田汐里さんが物語の生成に苦心する過程で、大事なことを学ぶ。物語はお客さんへのラヴ・レター。感動させるには受け手自身について書く。自分を重ねられる話を。

里吉うたのさんが劇を通して二の腕を露出した衣装でワキをたくさん見せてくださったので、好きになった。小林萌花さんがおへそを見せてくださるのも見所だった。あとは、島倉りかさんのお顔。単純に造形的に眼福であったのと、コメディックな場面での顔芸が面白かった。

私がいただいた席は、6列目の右端だった。一度、高瀬くるみさんがステージで横になる場面があった。角度的に私の席からちょうど長いスカートの中が見える位置だった。私の前にいたTKタケオ・キクチ的な柄の入ったデニム・パンツと長袖Tシャツを着用した紳士がおもむろに双眼鏡を取り出し、その部分を観察していた。瞬間を逃さないその姿勢は、正しい。圧倒的に正しい。(ちなみに、何かが見えたわけではない。)

視界が偏っていたのでもう一度、真ん中付近で観たいなと思った。けど、また観たいと思えるくらいでやめておくのがちょうどよいのだろう。7,800円するんだぞチケットは。軽い気持ちで買い足せる身分じゃねえんだお前は。収入が減ってるんだろ? 身の程をわきまえろ。

2020年10月18日日曜日

つばきファクトリー 小野瑞歩バースデーイベント2020 (2020-09-29)

男の子のファッションかぁ…。あまり考えたことなかったけど、シンプルが一番いいんじゃないかと思います。モノトーンでシャツを着てる感じとかがいいかな(※ファイン・ボーイズ誌の、男の子のファッションはどんな格好が好みですか? という質問に対する小野瑞歩さんの答え

どの半袖Tシャツにするかくらいしか服装について迷う余地のない、根がファッショニスタに出来ている私にはつまらない時期がようやく終わった。着用可能になった長袖。日光の吸収という点では(肌を覆う面積が増えるため)効率が悪いが、服の選択という点では喜ばしい季節。小野瑞歩さんの二十歳をお祝いする特別な場に着ていく服を選ぶにあたって頭をよぎったのは二点。一つが、ファイン・ボーイズに掲載された彼女の言葉。もう一つが、個別握手会で褒められたときの服装。2018年2月12日(月・祝)に「私服めっちゃ好き!」と小野さんが言ってくれたときに私が着ていたのが、エンジニアド・ガーメンツのワーク・シャツ。デニム生地。それを着用して家を出た。

いや、お前はまず男の子という年齢じゃねえし、仮に男性という言葉が使われていたとしても自分のことだと思うなよ。気持ちわりいな。お前みたいなのはさ、アイドルさんにとって男という分類に属していないから。お客さん。ファン。だから握手会で服を褒められたのも真に受けるなよ。向こうは好きになってもらうのが商売なんだから。たしかにそうなんだが、あまりそういうことを言われると『泣いちゃうかも』(モーニング娘。さん)。嬉しいモンは嬉しい。アイドルさんの言葉に『素直に甘えて』(Juice=Juiceさん)いたい。小野さんの制服衣装目当てで(男の子はみんなそういうの好きだから)チェキを撮りに行った2019年3月16日(土)には、エンジニアド・ガーメンツのアトランティック・パーカ(カラシ色)に、ニードルズのトラック・パンツ(ターコイズ)を合わせた。そのときは、可愛いと小野さんは言ってくれた。

また横浜に行くのか、と電車の中で思った。この数ヶ月で何回行っているんだ。7月12日(日)、7月22日(水)、8月8日(土)、8月23日(日)、8月26日(水)、9月5日(土)、9月13日(日)、9月16日(水)、9月23日(水)と新横浜。日産スタジアムでフットボール観戦。今日の会場はランドマーク・ホール。で、明日も横浜(今度は三ツ沢)にフットボールを観に行く。石井遊佳、『百年泥』読了。横浜駅。ハングリー・タイガーでダブル・ハンバーグ(ソースに乳製品が使われているので本当は避けないといけないが、たまにはいいでしょう)。食後のホット・コーヒーを飲み、財布を出そうとしたところで気付いた。ない。財布が。この店の支払いはパスモで出来る。チャージしたばかりだから残高はあるはず。問題はバースデー・イベント。身分証とファンクラブ会員証がないと入ることが出来ない。取りに帰るしかない。まあ、仕方ない。公演には間に合うのが不幸中の幸い。

振り出しに戻る。やっていることがスゴロク。スゴく耄碌。やっていることが子供、まるで小6。本日は有給休暇。夕方の公演まで優雅に過ごすはずが、自由時間をほぼ移動に奪われた。埼玉と横浜の二往復。交通費の重複。まるで財布を忘れておらず最初からパスモで払うつもりだったかのようなヴァイブスで食事代を払い、駅の改札へ。家に戻って財布を回収し、再出発。元町・中華街駅。仙台青森への遠征による疲れが少し残っている。

公演番号:01 開場/開演 16:15/17:15

会場はランドマーク・プラザの5階。見るからに独身異常という風体の紳士たちが散見される。自分もそう見られているのだろう。人を分散させるために入場時間が席によって何段階かに区切られている。自分の席はまだ入れない。無意味に近くをうろうろして少し時間を潰す。同じ階に飲食店がいくつかあったが、しょうもない店ばかり。こういう施設の店はショバ代が高いだろうし、どうしても割高になるよね。

入場。マスク着用、間隔を空けて並ばされるだけでなく、工場のように床に敷かれたマットまで踏まされる。手にスプレイを吹きかけられる。数あるコロナ対策儀式、感染拡大防止しぐさの中でも、他人にアルコールを噴射されるのは飛び抜けて気分が悪い。この不快感の源流は映画版『新世紀エヴァンゲリオン』のあの有名な場面に違いない。我々の世代は掌で液体を受け止めている描写に集団的なトラウマがある。

コロナ・バカ騒ぎ以降に再開したハロー・プロジェクトのファンクラブ・イベントでは、なぜかマスクだけでなくフェイス・シールドも着けさせられる。マスクに効果がない(もしくは不十分)と言っているのと同じ。もしそうだとするとフェイス・シールドだけでいいだろう。フェイス・シールド(全員に配布される)の装着方法を記した紙には、咳エチケットにご協力をお願いしますと書いてある。訳が分からない。マスクとフェイス・シールドを装着した状態での咳エチケットって何? くしゃみや咳がマスクとフェイス・シールドを貫通するの? だったらマスクもフェイス・シールドも無意味。咳エチケットだけでいいじゃん。全部やっときゃいいってもんじゃないだろ。ラザニア食ってチーズ・フォンデュ食ってグラタン食ってみたいなもんだよ! ―くりぃむしちゅーの上田晋也さんならそう呆れるに違いない。もちろん発声も立ち上がるのも禁止。縛りが多い。SMか! 刑務所の慰問コンサートを鑑賞する囚人のような気分。

口が悪すぎるだろ。アップフロントさんがこうやってイベントを開催してくれていること、今日の二公演にお前を当選させてくれたことに感謝しなさい。もちろん感謝しているよ。文を書くときってさ、文句の方が筆が進むんだよね。それでついつい。言い過ぎた。全体的にさほど不満はなく、ストレスなく観覧できたよ。客入れが一席おきなので視界がよく見やすかった。フェイス・シールドは自分で購入したものを使った。仙台のハロ・コンでご一緒した紳士から、配布されるフェイス・シールドは粗悪品だと聞いていた。彼にリコメンドしていただいたのがYAMAMOTO(山本工学)超軽量フェイスシールドグラスYF-800L サイズ:L(仙台の夜公演前に注文し、今朝7:47に置き配完了。すぐに発送されずやきもきした)。快適に鑑賞できた。開演前に大スクリーンで流れていたつばきファクトリーFCイベント(2019年のクリスマスのやつと、アロハっぽい衣装のやつ)の映像が眼福だった。そうそうコレよ、アイドルさんってのは。露出の多い衣装を纏い、笑顔で元気に歌って踊る。この映像がいいウォーミング・アップになった。日頃からこうやって大画面の高画質でアイドルさんを観たい。FCイベントの映像はせめてBlu-rayでドロップしてほしい。もういい加減DVDはやめてくれ…。

司会はここ最近ヘッズからのプロップスの下がり方が笑い事では済まない域に達している鈴木啓太。リアルなハロー・プロジェクト支持者で彼をディスっていない人はいない。キモいポエム。ハロー・プロジェクトさんを漫画『ワン・ピース』になぞらえたキモいブログ(私はページを開いたが読んでいない)。アイドルさんとイベントの司会で競演する度に、キメえ決めポーズで手前に陣取り、アイドルさんが奥で小さく写った写真を撮影し、嬉々としてインターネットにアップロードする図太い神経。軽く殺す鋭い韻で(K DUB SHINE)。肥大したエゴ。自分を裏方ではなくアイドルさんと同格の存在と勘違いした痛すぎる奴。

ステージに現れてすぐに、こんなに人いるんですね、といつもの笑みを浮かべつつ驚いている様子の小野さん。距離を空けないといけないからこんなに人が来るとは思わなかったそう。

二十歳になった瞬間は? 新沼希空ちゃんと関係ない連絡をLINEでしていた。9月28日23時59分に希空ちゃんからおめでとうというメッセージが来た。まだだよと送ったらそのメッセージを送った時間が0時00分だった。秋山眞緒ちゃんが2分くらいの動画を送ってきた。冒頭が歌詞の一部を瑞歩と眞緒にした替え歌で、その後に音楽に乗せて私のいいところを話してくれた。瑞歩ちゃんは可愛くて~みたいな感じで。

写真集のお気に入りの衣装は? 部屋着。黄色と紫。

4年前のキャメリア・ファイッ!でやった自己紹介ソングのアップデイテッド・ヴァージョンを披露。これを覚えれば私を攻略できると小野さんが言って、私はドキッとした。攻略って、何かそういうエー・ヴイのシリーズなかったっけ? 完全攻略だっけ? いま検索したら完全攻略だった。みずほchanを完全攻略、してみたいナ…。ナンチャッテ。来世に期待。まず当時の映像をスクリーンで鑑賞。幼い! 別人のよう(私は彼女がこんな頃から応援していてのか? まるでロリ・コンじゃないか?)だけど、今の面影もある。可愛い。映像に続いてステージの小野さんがリリックを更新した2020年版をキックする。始まってからすぐに止めて、手拍子を要求してやり直す。変更点は、嫌いな食べ物がなかったのがパクチーが嫌いになった。うどんより最近は蕎麦派になった。その二点。歌の最後の方で小野さんが吹き出してテンポがずれたが、我々の手拍子もそれに合わせて変調。その点を鈴木啓太に指摘された小野さんは、みなさん適応力がスゴいのでと言っていた。

蛇足だが、これから自己紹介ソングを歌いますと小野さんが言ったとき、俺らのネタで自己紹介ソングってのがあるからドキッとしたわと鈴木啓太が言った。まだ自己イメージはお笑い芸人のようだ。

佐藤優樹さんからのヴィデオ・メッセージ。おみずの可愛さを見習った方がいいよ、ツンツンしないで、と鈴木啓太から言われたことがある。何でそんなこと言われなきゃいけないのと思ったけど、でもたしかにみずほちゃんは(何か忘れたが三つくらいの擬態語)で可愛い。マサ歌うのイヤだ! となぜかハッピー・バースデーを歌うのを嫌がる佐藤さん。司会の上々軍団に一緒に歌うよう要求。鈴木啓太、それを部分的にハミングで歌う。

ミニ・コンサートは8曲。フルートで始まる『会えない長い日曜日』(藤本美貴さん)はどこかで聴いたことがあるなと思ったらソロ・フェスだ。実のところ私はソロ・フェスの映像をまだちゃんと観ていないので(リーガル、イリーガル、手段を問わずに観ろよ)生で聴けたのは嬉しかった。小野さん曰く、ソロ・フェスは無観客で、会社の人しかいなかった。みなさんがいるからあのときより楽しく出来た。あとは『私の心』(スマイレージさん)とか『消失点 - Vanishing Point -』(Buono!さん)とか『さぼり』(Berryz工房さん)とか。

オイオイとかみーずほ!とかやってもらいたかったけど、それは来年、再来年に取っておいて、今年は聴かせる曲でセット・リストを組んだという小野さん。(来年、再来年、という言葉が心強かった。)二十歳という節目なので、前にやって、(今日のが)完成形じゃないけどもっとうまく出来たんじゃないかなと思う曲を選んだ。『私のすごい方法』(松浦亜弥さん)では横に岸本ゆめのちゃんがいると思って歌った。締めが『帰ろう レッツゴー!』。帰るまでがバースデー・イベントですからね、と小野さん。しかし私はまだ帰らない。二公演目にも入る。

二十歳になってドレスを着てバースデー・イベントをやっているなんて想像出来なかった。ハロー・プロジェクトでデビューすることも想像出来なかった。こんなにたくさんの人に来てもらえている。今ここに立っていられることがどれだけ幸せなことか。これも応援してくださる皆さんのおかげ。これからも応援してほしい。という感じの結びの言葉。

終演後、出口付近で立ち止まる紳士たち。ココで溜まるな、他の場所に行ってくれとエスタシオンの青年たちが追い出す。仮に談笑するとしてココでやろうが別の階でやろうが野毛の飲み屋でやろうが同じ。とにかくココで万一何かが起きたら責任を問われる可能性があるから、どこかに行けと。自分(自社)がババを引きたくないだけ。そんなくだらない保身はやめて、世界全体を大きなコヴィッド・ナインティーンのクラスターにしよう。

…我々は、「感染者が出たときに組織に迷惑をかけないようにするための対策」をやっているんですね。感染症はもうほとんど関係なくなっている(藤井聡さん)(『コロナ「以後」の大暴落時代』『別冊クライテリオン「コロナ」から日常を取り戻す』)

公演番号:02 開場/開演 18:45/19:45

外をぶらぶら歩いて時間を潰す。次々に電光の色が変わっていく観覧車を、9月7日(月)に機種変更したiPhone SE (2nd generation)で撮る。光が潰れずクッキリ見える。iPhone 8と比べて画質の向上を実感する。

私は夜公演ではフェイス・シールドを着けなかった。エスタシオン係員さんの言うことをよく聞くと、2列目までは必ず着けてください、それ以外の方はご協力をお願いしますと言っていたんだよね。だから実は3列目以降は任意なんだよ。昼は7列だったんだけど、私より前でも着けていない人はいた。でもまあせっかく買ったわけだし、初めてだからと思って大人しく従って様子を見た。夜は16列。ほぼいちばん後ろ。ステージから何メートル離れてると思うんだ。さすがに(よく聞くと)任意のフェイス・シールドをこの位置で着ける理由なんかない。

写真集の話。撮影がすぐに始まった。メイクして衣装を着たらすぐにカメラ・マンさんが撮り始めて戸惑った。そうしたらぜんぶ教えてくれた。こっちを見てとか。勉強になった。目線の外し方とか。やりすぎると白目になる。カメラ・マンさんと自分の間に岩があった。カメラ・マンさんが撮影に夢中になって岩につまずいて一回転した。カメラは守ったのが流石。カッコいい。そのまま痛いのを見せずに平静を装って撮影を続けているのが面白くて笑いそうだった。写真集は前から密かに出したかった。

自己紹介ソング。4年前のオリジナルでは間奏でフルートのアレンジが変則的になる箇所があった。昼公演ではそこを小野さん自身が把握しておらず(ステージで映像を観てびっくりしていた)再現しきれていなかったが、夜公演ではしっかりと再現していた。ネギをそんなに食べなくなったし、うどんもアレだから食べなくなったと言っていた。アレって太るからってことかな? 小麦は穀物の中でも特に血糖値を上げやすいからね。小野さんは写真集撮影に向けてお菓子を断ったり、三日間のファスティングをしたりと、相当に気を使っていたから、その過程でうどんを食べなくなっていても不思議ではない。

『会えない長い日曜日』(藤本美貴さん)では最初のフルートがうまくいかず、初めて間違えた~! と歌い出す前にマイクに乗せて残念がる小野さん。

『さぼり』(Berryz工房)をまだ歌っていないのに間違えて曲名を言ってしまう。後で歌うとは言ってないじゃないですか~。自らを落ち着けるためにデコルテのあたりをポンポンと叩く音がマイクに乗って聞こえた。

公演を通して、ヘッズの反応は昼よりもよかった。昼に入って要領が分かっている人が一定数いるからだろう。たとえば自己紹介ソングでは初めから手拍子が起きた。爆笑問題の太田光さんも、お笑いのショーは昼公演は受けないのが常と言っていたが、同じ理由なんだろうか。

鈴木啓太は本当に二流だなと私が思ったのが、小野さんとずっと向き合って話をしていたこと。相手を向いて話すのは礼儀としては正しいのだが、もっと客席に向いてほしい。いや、別に鈴木啓太はどうでもいいんだが小野さんをもっとこっちに向かせてほしい。鈴木啓太と小野さんの個別お話し会のような場面も多々あった。ただ彼が小野さんとイチャイチャ話しているだけの時間が長く、イライラした。もちろん、百パーセント彼が悪いとは言わないが、一応は小野さんより年上で芸歴も長いのだから、彼がもっと導いてあげないといけない。アマチュア。ただの気のいいお兄さん。これではメンバーさんも伸びない。

夜公演のハイライトは何と言っても本人にサプライズで女性スタッフが代読した、お母様からの手紙。小野さんが締めのコメントを言っている途中だった。バースデー・イベントで歌いたい曲リストは作っている。それは来年以降に回して、しっとりと?聴いてもらうセットリストにした。4回やってきて、声が出せないバーステー・イベントをやるのが私は初めて。退屈じゃないかな、みんな寝ちゃわないかな、と思っていたけど、皆さんがペンライトや拍手で応援してくれて気持ちが伝わった。皆さん、優しい眼差しをお持ちで…。皆さんは優しいですよね…と言ったところで鈴木啓太が右から出てきて、手紙のサプライズを発表した。

私が記憶しているかぎりでは、大体こういう内容だった:小学生の頃、持久走で体調が悪くてうまくいかず泣きながらゴールした。ハロプロ研修生に入ると決まったときは喜びよりも不安が大きかった。それまでやらせていた習い事と違い、夢が叶う可能性がある場所だったので。小野家の次女としてお姫様のように育てられてきた瑞歩で大丈夫だろうかと心配だった。でもステージで瑞歩が見せる、家では見せたことのない笑顔を見て、ずっと見ていたいと思った。ハロ・コンで失敗して朝まで練習したことや、研修生発表会で失敗して毎日何十回も歌って、眠っているのに曲の動きをしていたことがあった。スタッフさん、メンバー、そして何より応援してくださる皆様に感謝。ファミリー席から見るエメ・グリは家族の誇り。

最初の宛名がみーたんだった。手紙の代読が終わると小野さんは、何でみーたんって書くの? 後で怒ろう、と口を尖らせていた。ハロ・コンで失敗して朝まで練習したのは覚えていない。覚えていないのは今こうやって楽しく活動出来ているからだと思う。つらいことばかりだったら根に持って覚えていると思う。今を全盛期にしたくない。21、22と今を超えていきたい的なことを言って、終わり。しばらく手を振ってから、あ、と思い出して、おやすみずほ! とシャウトして小野さんは捌けた。お見送り会はなし。今年も無事に小野瑞歩さんと同じ空間でお誕生日をお祝いすることが出来てよかったが、欲を言えばご本人に直接おめでとうと伝えたかった。せめて文字にしておこう。小野瑞歩さん、二十歳おめでとう。

2020年10月11日日曜日

The Ballad (2020-09-27)

エア・ウィーヴは最高(ヤクブーツはやめろのフロウで)。家に欲しい。毎日エア・ウィーヴで寝たい。とぽすのプレミアム・ルームに採用されているエア・ウィーヴ四季布団。家の布団で寝たときよりもスッキリした目覚めを得られる。泊まる度にそう実感するから偶然や思い込みではない。検索してみたら約十万円。間違いなく値段分の価値はあるが、在籍する会社による素晴らしいコスト(人件費)削減の影響を真正面から食らっている今、おいそれと買うわけにはいかない。

朝の大浴場を堪能。チェック・アウト。仙台駅。新幹線。改札内のコンヴィニエンス・ストアでレーコーを購入。近くのソファで飲む。BOOK EXPRESSで石井遊佳さんの『百年泥』を購入。移動中に読む。仙台9時5分発、新青森10時52分着。人生で最初で(十中八九)最後の青森県。事前にジョルダンで検索したかぎり、新青森駅から宿とコンサート会場がある青森駅までは在来線で5分で行けるはずだった。が、本数が異常に少ないらしく、今の時間だと千何百円もする特急しかない。バスに乗る。バスもそれを乗り過ごすと当分なさそうだった。ふるかわという停留所で降りるまでほぼ老人と病院しか目にしなかった。たまたまバス停のすぐ近くに今日の宿があった。まちなか温泉 青森センター・ホテル。荷物を預ける。

11時半頃、今日の会場、リンクモア平安閣市民ホールの場所を把握。さて、昼食。のっけ丼というのが名物らしい。好きに具を乗っけられる海鮮丼。株式会社青森魚菜センター本店というのがのっけ丼の拠点のようだ。一度は並んだ。観光客的な人がこぞって来店している雰囲気があったのと、中を覗くと具を乗っけるときに毎回色んな紳士と対面して頼まないといけないっぽい(実際のところは分からない)のとで、億劫になってやめた。朝市寿司という店に入りかけたが、Googleのレヴューで評価が異常に低い。いくつか読んでゾッとした。ふらっと入らなくてよかった。最終的に居酒屋弁慶に入った。弁慶海鮮丼1,480円とサッポロ黒ラベル(瓶)480円。税込み2,156円。高すぎず、味も悪くはなかった(※1)。

私は青森県を訪れることに少し不安があった。お隣の秋田県では他県からのお客様お断りという貼り紙を出している飲食店が多いらしい(※2)。政府がGO TOキャンペインで全国的に旅行を促進しているにも関わらず。呪術信仰に頼って生きているような人々が、2020年の日本にもまだ一定数はいるのだろう。そうでなければそのような貼り紙を掲示するという発想には至らない。Twitterを見るかぎり、田舎ほどコロナ・バカ騒ぎとの親和性が高く、神経質になっている人が多そうな印象。仮に秋田県ほどではないにしても、よそ者が行ったら白い目で見られるのではないか。コンヴィニエンス・ストアで支払いの際にPASMOでと口を滑らせようものならその場で地元民に取り囲まれ、殴る蹴るの暴行を加えられるのではないか。

それは杞憂だった。他県民を排除する飲食店は見当たらなかった。通行人のほぼ全員がマスクを着けてはいるものの、ストリートには刺々しい雰囲気はなかった。青森駅前のパサージュ広場ではバンドの生演奏を無料で観覧できる催しが開かれていた。コンヴィニエンス・ストアでPASMOを使っても殺されなさそうだ。秋田は知らん。

開場:13時 開演:13時45分

青森公演に出演するメンバーさんは

  • 石田亜佑美さん
  • 森戸知沙希さん
  • 小野瑞歩さん
  • 西田汐里さん

これまでのバラード・ハロ・コンは8人が標準だった。4人となると、単純に考えて一人あたり倍の出番が期待できる。人数が減ったからといってコンサートの尺が半分になることはないだろう(※3)。コンサートにおける小野瑞歩さんの密度が12.5%(8人のうちの1人)から25%(4人のうちの1人)になるということだから、マジ興味ある。さすがに埼玉から青森までこのために移動するのは躊躇するが、前日に仙台に行ってそこから移動すれば効率がいいのではないか。ついでという感じで(※4)。そう考えて仙台と青森の公演に申し込んだ。

昨日の仙台公演を鑑賞して痛感したのは、とにかく単純に歌が上手なメンバーさんが何人かいないと成立しないということ。曲はバラード。歌うのは一人。演出は最小限。生演奏ではなくカラオケ。歌一本の勝負。昨日は井上玲音さんの歌声には何度か唸らされた。彼女がいなければどうなっていたことか…。その意味で、今日は西田汐里さんがいるのが楽しみだった。私は彼女を2017年の演劇女子部『僕たち可憐な少年合唱団』で初めて知り、その声と歌に魅了された。そのときに私はこう書いた

彼女が一人で歌うとそこは西田汐里ワールドになる感じがした。

そこなんだと思う。歌が上手なとさっき書いたけど、より正確に言うと、歌で自分ワールドを作れる人。それがソロ歌唱のコンサートで輝けるメンバーさんの条件。音程とかリズムとか声量とかはもちろん大事だけど、もっと大事なのは、歌を通して自分のヴァイブスを表現し、会場中を包み込むこと。文章でもさ、誰々節ってのがあるわけじゃない。同じ内容や題材を書いたとしても。歌にも近いことがあると思う。

今日の出演者では、西田汐里さんが自分のワールドで会場を満たせる唯一のメンバーさんだった。声ひとつで、歌ひとつで観衆を引き込む強さは井上玲音さん以上かもしれない。ハロー・プロジェクトのメンバーさんが皆それぞれ魅力的なのは言うまでもない。しかし殆どのメンバーさんにとって、歌一本のショー・ケースというのはその魅力を存分に発揮できるフォーマットではない。かなりのハンディキャップを課せられた状態。ハロー・プロジェクトはみんな歌が上手いと言っても普段は集団で踊りながら細切れに歌っている。それぞれがプロのソロ歌手として訓練されてきたわけではない。

西田汐里さんは冒頭のコメントで、今日の四人では私以外の三人が昨日の仙台公演に出演していた。私だけ仲間外れ。ずるい的なことを言って笑いを誘っていた。が、すぐに歌だけでなくトークでも機転の効いたコメントを連発し、存在感を示した。ステキだったのは他のメンバーさんの歌唱を褒めていたこと。森戸さんの裏声が好きで、私も出来るようになりたいだとか(出来てます、と森戸さんは恐縮していた)、小野さんは歌うときに表情を作っているから私も見習って顔を動かしたいとか。

昨日は石田亜佑美さんが務めた司会進行役が今日は森戸知沙希さん。いい味を出していた。何度も噛みまくって、あわあわしている感じの仕草。和む。青森のことを調べてきたという森戸知沙希さん。地元の人に挙手を呼びかける。少数…。と笑う。ピラミッドがある。工藤さんが多い。イギリス・トーストが有名。それを作っているのも工藤さん。200種類以上。他にも調べたがブログに書く。

一人四曲になって私が嬉しかったのは、小野瑞歩さんの『カブトムシ』を聴けたこと。私はそこまでジェイ・ポップを知らない(それも私がこのコンサートをさほど楽しめない一因かもしれない)が、aikoさん、椎名林檎さん、宇多田ヒカルさん、Dragon Ashさんが世を席巻していた頃は追っていた。コンパクト・ディスクをよく買ったり借りたりしていたし、やまだひさしさんの『ラジアン・リミテッド』(TOKYO FM)を聴いている時期もあった。その後はヒット・チャートの世界から離れ、日米のヒップホップをディグった。aikoさんのことはデビューから『暁のラブレター』くらいまでは追っていた。オールナイト・ニッポンは初回から毎週聴いていた。『カブトムシ』は私がリアル・タイムでよく聴いた数少ないジェイ・ポップ曲なので、2020年になって小野瑞歩さんに歌ってもらえるのは感慨深かった。…って、書いて気付いたけどそれがまさに私が揶揄していた接待カラオケやんけ。

トーク・セグメントでは昨日の二公演に続いて今日も秋の味覚の話だった(※5)。飽きた。聞くのがきつかったので、メンバーさんには出来れば口を滑らせておちんちんと言ってほしかった。今日のメンバーさんだったら誰が言っても嬉しかったな。西田汐里さんはそういうの得意そうだよね。コラー、それは違うでしょ。たしかに口に入れるものではあるけど(※6)…と誰かが突っ込むまでの流れを定番にすればいい。そういうお笑い芸人さんでいう営業ネタを仕込んでもいいんじゃないか。そうでもしないとさ、寝ちゃうよこのコンサートは(※7)。見方によっちゃ、アイドルさんの子守唄で眠れる稀有で贅沢な場ではあるけど。

小野瑞歩さんがこういうことを言っていた:このツアーを通して、自分の想像力のなさを発見した。割り当てられているのが恋愛の曲ばかり。同じ好きという言葉でも色々な意味がある。普段は、歌詞を解釈するときはつばきのメンバーと話して(メンバーが言うことに)そうだよねと言っている。いざ自分で考えるとなると難しい。もっとたくさんドラマや映画を観た方がいいのかなと思った。

ーこのコメントはちょっと可笑しかった。なぜなら他のメンバーさんは恋愛を経験済みだけど自分(小野さん)は未経験だから分からない的な含意が感じられたからである(おそらくご本人にそういう意図はなかっただろうが)。

ファミリー・マート青森駅前店でアイス・コーヒーを買い、駅前の広場に腰掛けて飲んだ。夜公演まで時間があったので商店街を散策していると、ふとパサージュ広場から流れてくる音楽が気になった。広場に入ってしばらく聴いていると、どんどん引き込まれていった。50代、60代とおぼしき紳士たちの4ピース・バンド。V-projectさん。木訥な津軽弁の曲紹介。淡々と繰り広げられるドープな演奏。思わず身体を揺らす私。さっきまでのバラード・コンサートになかったグルーヴ。ハロー・プロジェクトよりもドープなプロジェクトをまさかココで見つけるとは。おかげで目が覚めた。夜公演を堪えるだけの活力を補給することが出来た。楽器が弾けるジイさんはカッコいいよなあ。

開場:16時半 開演:17時15分

係員の若者によるアルコールのスプレイ噴射が雑で、服にかけられてイラッと来た。服にかけんじゃねえよと声に出そうになったが、みっともないので抑えた。我々は常に、いい歳をして遠方まで少女を観に来ているという弱みを握られている。

森戸知沙希さんが喋りで醸し出す独特の空気は夜公演でも健在。みなさんびっくりしましたか? 私こんなんなんですと彼女が言うと、ヘッズはさらにドッと笑った。彼女が笑いを堪えながら披露した石田亜佑美さんに関するちょっとしたエピソードが面白かった。曰く:(おそらく昼公演と夜公演の間に)今日の四人で買い物に行った。青果市場のりんごが東京で買うよりも安い。まあ私は東京の人間じゃなくて栃木の人間なんですけど。私は三つくらい買ったんですけど、石田さんは五個も買った。五個で420円。石田さんは煎餅のみみも買っていたけど、煎餅は買っていなかった(※8)。

西田汐里さんはつばきファクトリーさんのYouTubeチャネルにドロップされた小野瑞歩さんの『I LOVE YOU』を寝る前に聞くことがあるので、生で聴けてよかったと言っていた。小野さんはそれを聞いてとても喜んでいた。

9月29日(火)に二十歳になる小野瑞歩さんにとって、十代最後のコンサートだった。小野さんがそう言うのを聞いて、そういえばそうだなと私は気付いた。彼女の十代の終わりをこうやって見届けることが出来たという点において、青森まで来た意味はあった。というか、そう自分に言い聞かせる。当然、お誕生日当日のバースデー・イベントも観覧する。

私の前にいた五十代前半くらいの紳士がペン・ライト二本を持ってコンサート中ずっと妙な手首のスナップを利かせた指揮者的なキモい動き(なおリズム感ゼロ)をやり続けていて気が散った。こいつもそうだけど、中には両手で計8本のペン・ライトを掲げているキチガイもいた。メンバーさんの色に光らせたペン・ライトを振る以外の音楽の聴き方を知らないんだろ。だからバラードだろうが何だろうが常にペン・ライトを振るし、ペン・ライトの数は多ければ多いほどいいという単純な思考しか出来ない。手に負えない紳士たち。短髪、ペン・ライト複数本所持、小太り、フィーチャー・フォン利用者。というかさ。メンバーさんはこのコンサートでヘッズが自分の色のペン・ライトを光らせてくれるのは表向きには嬉しいと言うじゃん。別にその言葉に嘘もないだろうとは思う。けど、リズムを取る上で邪魔じゃないのかな? 田村芽実さんのコンサートだと、ペン・ライトは禁止なんだよね(※9)。歌を聴かせるというコンセプトとは相性が悪いんじゃないだろうか。

夜公演後の夕食は、この遠征を締めくくる意味でもいいモンを食おうと思って南大門という焼肉店に入った。食いながらiPhoneでDAZNを開き、19時キックオフの柏レイソルさん対横浜F・マリノスを観た。


※1 後から海鮮丼の写真を見返して、私がアレルギーのある鯛が入っているのに気付いた。普通に食べてしまった。

※2 もちろん、統計データとしてではなく、個別の例としてそういう報告を見ただけなので、全体としてどうなのかは分からない。

※3 公演の数日前には各メンバーさんが4曲ずつ(8人のときの2倍)ソロで歌うことが明らかにされたが、ファンクラブ先行受付時点では発表されていなかった。

※4 日本地図を見れば分かるが、ついでに移動する距離ではない。

※5 石田亜佑美さんはサツマイモが好きで、味噌汁に入れるのが好き。サツマイモや里芋が入ったサツマ汁が好き。西田汐里さんは炊き込みご飯。おこげが好き。全部おこげになってほしい。小野瑞歩さんは梨が好き。夏から食べていたけど秋が旬なので秋の梨をたくさん食べたい。

※6 昔のくりぃむしちゅーさんのオールナイト・ニッポンで、ニコチンとポコチンの違いは何ですか? というリスナーからの質問に上田晋也さんが答えようとして、ニコチンは口に入れる…いや、ポコチンも口に入れるな。ニコチンは中毒性がある…いや、ポコチンも…となったのが面白かった。

※7 昼にビールを飲んだせいもあるのか、昼公演はちょっとだけ寝た。

※8 可笑しさを理解するには、石田亜佑美さんが倹約家として有名である点と、森戸さんにとって石田さんは先輩であるという文脈を知っておく必要がある

※9 田村芽実さんは以前Instagramのストーリーで、申し訳ないけど私のコンサートでペン・ライトはやめてほしい的なことを書いていた。で、その効果もあるのか実際に彼女のコンサートでペン・ライトを振る人はいない。

2020年10月10日土曜日

The Ballad (2020-09-26)

百五十万円。これは2020年にコロナ・バカ騒ぎ(※1)による業績悪化を理由に勤め先が実行した休業、賞与の削減、残業禁止によって私がこれまでに失った収入である(※2)。年末には二百万円を超えるのが確実だ。仮にまったく同じ消費活動をしていれば銀行の預金残高が今よりも百五十万円多かった。そう考えると少しつらくなる。もちろん皆さんご存じのように根が浪費家に出来ている私にそんな堅実な貯金が出来ていた可能性は限りなくゼロに近い。理論的にはあり得たというだけの話である。しかし、好きな商品や娯楽に自分のお金を使うのと、そのお金がそもそも収入として存在しないのとでは大きな違いがある。コロナ・ヴァイラス自体には私も、親も、同僚も、知人の誰もが罹患していない。明らかな不摂生、不養生をしている者も含めてである。もういい加減、理解しないといけない。日本国民の殆どにとって問題はコロナ・ヴァイラスではなくコロナ・バカ騒ぎだ(※3)。ステイ・ホーム(笑)、自粛(笑)といった茶番に付き合わされている間に、多くの人々が職を失った。収入が減った程度で(今のところ)済んでいる私はまだ恵まれている。

悪いことばかりではない。コロナ・バカ騒ぎの副産物として、在宅勤務を今後も続けられることになった。これは大きな勝利である。通勤時間がなくなった。片道一時間半なので、一日三時間のゆとりが生まれた。朝は心ゆくまで寝られるようになった(もちろん一定の時間までには起きないといけないが、夜更かしをしなければ目覚まし時計は不要)。労働後のジムも格段に行きやすくなった。終業時点で会社にいるという物理的制約がなくなったからだ。

仙台と青森でのハロ・コン(後述する理由により今回のコンサートをそう呼んでいいのか分からないが)に申し込んだ。仙台はともかく、青森は日曜日。翌日は労働。日曜日のうちにお家に帰ってくるのは難しい(調べてみたら不可能ではなさそうだったが、ギリギリだった)。でもインターネットにつないでラップトップをいじれる環境があれば業務が成り立つ今の状況なら何とかなる。日曜は青森に一泊して、月曜の午前は新幹線で労働に従事することにした。新幹線は、通常であれば選択肢ではない。高すぎる。トク50とかいうキャンペインで半額になっていたから新幹線にした。宿はGO TOキャンペインで35%引きになった(※4)。ありがたいが、ここで得をした金額を遙かに上回る額の収入が減っていることを忘れてはいけない。

9月26日(土)
やまびこ(全席禁煙)125号
大宮(埼玉)(8:06)~仙台(9:38)
5,170円
駅前人工温泉 とぽす 仙台駅西口
[男性専用]プレミアムルーム
2,860円

9月27日(日)
はやぶさ(全席禁煙)5号
仙台(9:05)~新青森(10:52)
5,610円
まちなか温泉 青森センターホテル
[禁煙]シングル(ベッド幅110cm)天然温泉付ホテル
3,055円

9月28日(月)
新青森(8:29)~大宮(埼玉)(11:18)
8,360円

仙台には労働の出張でたまに来ることがあったが、ここ半年以上は足を踏み入れていなかった。コロナ・バカ騒ぎを受けて会社で出張が原則禁止になった。好きで出張をしていたわけではないので、それは別にいい。だが、仙台の街は少し恋しかった。何があるというわけではないが、駅前の商店街が好きなんだ。お気に入りのカプセル・ホテル、とぽす。お気に入りの飲食店、福光。前者はこの旅で泊まることが出来るが、後者は未だにコロナ・バカ騒ぎの余波で休業を続けている。この時期になってまだ開いていないのは心配になる。どうか廃業だけはしないでくれ。お宅の大冒険ハイボール、枝豆、ハラミをまた思う存分味わいたいんだ。

夏場はダニ(という確証はないが、たぶんそう)に苦しまされる。彼らに睡眠を妨げられることなくこの季節を乗り切ることが出来ない。毛布やシーツを定期的に洗濯し、ダニトリーゼを配備し、ナチューヴォを噴射してもなお、腕や脚に出処不明の赤みを帯びた跡が発生する。新幹線の切符は勢いで購入したため、時間の検討が不十分だった。5時半に起きないと間に合わないとジョルダンの乗り換えアプリで検索して知ったのが昨夜。しかも最近、寝付きが悪い。一抹(イチモツではない)の不安。眠れないまま布団で目を瞑る→もう朝かと思い起きると24時→また寝る→5時20分に正式な起床。酷い睡眠だったが、寝坊はせずに済んだ。

早めの時間に仙台入りした私は、とぽすに荷物を預け、タリーズ・コーヒー仙台中央通り店でアイス・コーヒーを飲み1時間半ほどダラダラした。(何だそれは。このために私は5時20分に起きたのか?)BIKINI TAPA+でモーニング(ここのホットドッグとお代わり自由のコーヒーが仙台で一番のモーニングだと思う)をと思ったが、同店舗が入居するエスパル仙台が短縮営業のため閉まっていた。10時からの営業。いくら仙台とはいえ、地方都市はまだ東京ほどには元に戻ってはいないのだろう(※5)。

昼食を摂る店を物色し商店街のいちばん奥まで歩いたあたりで、石田亜佑美さんのケツを追いかけて(※6)東京から駆けつけた紳士(金澤朋子さんのケツを最も熱心に追いかけてらっしゃる)が仙台に到着したとTwitterに投稿なさっていた。落ち合うことに。今野珈琲。色んな豆のコーヒーを出すこだわりの店。タバコ吸いながらコーヒーの香りが分かるんですか? 分かります。でもタバコと混じり合っていると思います。昼食はあゆみ書店の近くにあるハロー・ヴェトナム。私は牛肉の乗ったフォーを食い、ネプ・モイ(※7)を飲んだ。

開場:13時半 開演:14時半

いつものハロ・コンとは何もかもが違う。モーニング娘。さん、Juice=Juiceさん、つばきファクトリーさん、アンジュルムさん、BEYOOOONDSさんといった集団は登場しない。それらの集団に所属するメンバーさんが個人としてステージに立ち、ソロで歌を披露する。彼女たちが歌うのはハロー・プロジェクトではなくジェイ・ポップの名曲。ハロー・プロジェクトさんのメンバーさんが一堂に会するのではなく、8人もしくは4人ごとに分かれ、全国各地に散る。同じ日に複数の地方で公演が行われているので、すべての公演に入るのは物理的に不可能。今日、仙台に帯同しているメンバーさんは8人。

  • 石田亜佑美さん
  • 森戸知沙希さん
  • 佐々木莉佳子さん
  • 井上玲音さん
  • 浅倉樹々さん
  • 小野瑞歩さん
  • 高瀬くるみさん
  • 里吉うたのさん

私が仙台サンプラザ・ホールに来た理由である小野瑞歩さんは言うまでもなく、それ以外に『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)メンバーさんが一人もいない。もしハロプロ・ソートをやったら比較的上位に来るメンバーさんばかり。明日の秋田公演に関しては出演者が四人だけなので小野瑞歩さんを長い間観ることが出来そうだ。中高年のオジサンが主流を占める観客に対する接待カラオケと揶揄したくなるコンサートのコンセプトを私はあまりよく思っていなかった。ただ、ここまで本腰を入れてツアーを続けられると、最低でも一度は観ておかねばという考えが生まれた。一度も観ていないのに何かと理由をつけて避け続けるのはワックである。

私にとって仙台サンプラザ・ホールに入るのは初めてだった。何となく先入観として、中野サンプラザと同じようなつくりなのかと思っていた。名前が同じなので。そんなことはなかった。収容人数は中野サンプラザと同等らしいが、その割にこじんまりとしていて、後ろでも上の二階でも観やすそう。ステージとの距離感とか、何となく雰囲気として三郷市民文化会館に近い。

来場者数を絞るために一席おきにしかチケットが販売されておらず、人の密集を避けるためにグッズの販売もされていない。いつものハロ・コンらしい活況やお祭り感はなかった。この会場は三階まである。一階は(一席おきに)埋まっていたけど、二階にはやや空席があり、三階はせいぜい一ダースくらいしか観客がいなさそうだった。最大でも収容人数の半分しか観客を入れないように制限しているにも関わらず、その定員すら埋まらない。地元出身の石田亜佑美さんと佐々木莉佳子さんがご出演なさる公演の割に、少し寂しい客入りに思えた。

コンサートを実際に鑑賞すると、チケットが完売しないのも納得できた。二、三曲目くらいで、この感じがずっと続くのか…きついな、と思った。別に誰が悪かったとか、そういうことじゃない。メンバーさんそれぞれが、割り振られた曲を自分なりに一生懸命、表現しようとしているのは伝わってきた。それはよく分かった。よかったはよかった。でも、日頃いくら誰々の歌唱力がスゴいなんてファン同士で言っていても、実際にこうやって個人の歌唱を切り出して見せられると厳しいなというのが正直な感想。アイドルさんという下駄なしで一人の歌手として辛うじて聴けたのは井上玲音さんだけ。全体的に、右の耳から入って左の耳から抜けるような歌の連続だった。身体の中に入ってこない。心に届かない。(非常食としてなら拍手を送れる。何か事が起きたら大袈裟に報道されスケープ・ゴートにされかねない困難な状況でも何とかして公演を遂行するアップフロントさんの姿勢は賞賛に値する。)

森戸知沙希さんの二の腕と、高瀬くるみさんのいわゆる絶対領域(スカートの裾と靴下のてっぺんの間にある脚)を鑑賞できたのは数少ない収穫。衣装はご本人たちが選んだそうだ。この二人は理解(わか)っている。それ以外は…。基本的にどれもステージに映えない。その辺の仙台ストリートを歩く服としてはちょうどよさそうだが、一人でステージに立つ晴れ着としては冴えない。値段もお手頃そう。先述のお二人以外はほぼ肌の露出が皆無。かといって曲のコンセプトに合わせたわけでもなく。ファッション好きで知られる佐々木莉佳子さんがドレープのあるシャツとぶっとい半端丈パンツで雰囲気のあるシルエットを作っていたが、そういうのが好きなんだねという以上の感想がない。

数ヶ月前ならまだしも、世の中がだいぶ普通に回るようになりつつある今でもこのソロ歌手ごっこ巡業をありがたがっている人々は、ハロー・プロジェクトだったら何でもいいのかと思ってしまう。ごめん、ちょっと言い過ぎた。非難をしたいわけではない。純粋にどこがいいと思っているのか興味がある。おそらくこのツアーを心から楽しんでいる人たちは、ハロー・プロジェクトの見方が私とはだいぶ違うのだと思う。繰り返すが、何をいいと思うかはみんなちがって、みんないい。だが、今後ずっとこればかりをやられたら私は静かにハロー・プロジェクトさんから離れる。

小野瑞歩さんが歌った後にステージに残らないといけないのに間違えて左から捌けようとして、出てきた石田さんに止められ、さらに立ち位置を間違えて修正し、恥ずかしそうに笑っていた。間違えてやんのという感じで佐々木莉佳子さんが笑うという、普段はなかなか見られない心温まる交流があった。緊張せずに歌えましたと言おうと思っていたんですけど、緊張しました、と小野さんが言うと、それが曲と相まってよかったよと石田さんがパイセンらしく優しい言葉をかけていた。

最後の曲(本コンサート唯一のハロー・プロジェクト曲『ふるさと』)では私の席からだと高瀬くるみさんに隠れて小野瑞歩さんが見えなかった。その腹いせに私は高瀬さんの絶対領域を双眼鏡でひたすら凝視した。やられたらやり返す、倍返しだ。

終演後、石田亜佑美さんのケツを追いかけて来た紳士と合流。彼は序盤の数曲で寝てしまったという(※8)。これに何度も入る俺の異常性が分かったでしょう、と彼はどこか誇らしげに微笑んだ。私は頷くしかなかった。メンバーさんがまんこを見せてくれるわけでもないのにこんなつまらないコンサートに足繁く通うのは本物の好事家しかいない。タピオラというサテンでレーコー。先ほどの今野珈琲といい、石田亜佑美さんのケツを追いかける紳士の案内。よくまあ生活圏でもないのにタバコの吸えるサテンをいくつも知っているなと感心する。私が飲食店を探すとき卵や乳製品に神経を尖らせる(※9)ように喫煙者はタバコの吸える店や空間を血眼になって探すようだ。

開場:17時15分 開演:18時15分

せっかく二の腕を出している森戸知沙希さんだが、ワキを見せてくださらないのがさっきの公演では不満だった。しかしよく見たら最初の全員曲(『365日の紙飛行機』)で腕を何度か上げて見せてくださっていた。他には高瀬くるみさんが絶対領域だけではなくデコルテもふんだんに見せてくださっているのに今さら気が付いた。昼公演では見落としていた。

トーク・セグメントでは、昼もそうだったんだけど(※10)、秋の食べ物は何が好きかというお題だった。里吉うたのさんがサツマイモのことをおいもさんと言って、メンバーさんたちがざわめいた。その後に森戸知沙希さんと石田亜佑美さんもおいもさんが…と被せていた。石田亜佑美さんが、私は芋羊羹が好きだけど、変に砂糖で甘くしたのではなくサツマイモ自体の味が楽しめるのが好きだと言った。すると私の前に座っていた肥満男性がうんうんと頷いていた。私は思わず頭の中で突っ込んだ。いやいや、あんたは砂糖を控えとらんやろ。これは私にとってこの夜公演のハイライトである。

コンサートが半分を折り返したところで、まだ半分あるのか? と私は絶望混じりに驚いた。もうお腹いっぱい。終わりでいい。だんだん苦痛になってきた。ただ時間をやり過ごす。消化試合。評価しない。超場違い。わざわざ新幹線で赴いた仙台。交通費、チケット代、宿泊費を支払い。

メンバーさんは口々に、普段は一人で一曲を丸ごと歌うことがバースデー・イヴェントくらいしかなく、それは集団の一員として歌割りをもらい部分的に歌うのとは異なると言っていた。里吉うたのさんは、このツアーを通して歌うのが楽しくなったと言っていた。そういった感想を聞いて私がしみじみ思ったのが、彼女たちが日頃やっているのは歌手ではないんだな、ということ。田村芽実さんも8月1日(土)のインスタ・ラジオで言っていた。ハロー・プロジェクト時代に身に付けたワン・フレーズに命を込める歌い方では、最初から最後まで歌うとぶつ切れに聞こえてしまうと。どちらがいい悪いではなく、アイドル集団で歌い踊るのと、一人の歌手として歌うのは、別モン。違うことにチャレンジしているのだから、質が伴わないのは当たり前。今日に関しては井上玲音さんだけは声の乗り方からして違った。他のメンバーさんは、全然悪くはないんだけど、心まで掴まれなかった。

長いスカートの下で膝がガガガガッて震えていた、と里吉うたのさんは明かした。一人でステージに立ち、一人で歌と向き合い、最初から最後まで歌い切る。緊張と試行錯誤。それは今後の彼女たちの活動に生きるだろう。でもそれはこの期間に習得した個人の技能をモーニング娘。さん、Juice=Juiceさん、つばきファクトリーさん、アンジュルムさん、BEYOOOOONDSさんで生かしてほしいという意味であって、ソロ歌手になりたいという色気を出さないでほしい(セクシャルな意味での色気はどんどん出してほしい)。むしろ、それは自分の進むべき道ではないということに気付いてほしい。このツアーをアーティスト病の予防薬にしてほしい。アップフロントさんもこのジェイ・ポップ・バラード・コンサートがイケていると勘違いしないでほしい。イケていないから。

―お酒を飲んだくらいで観るのがちょうどいいですね。途中ちょっと寝るくらいで。

―そうですね。素面で真面目に観るのはきついですね。

仙台駅内の郷土料理みやぎ乃で、石田亜佑美さんのケツを追いかけて来た紳士と夕食。石田亜佑美さんは明日、青森での公演に出演するが、彼はそこまでは彼女のケツを追いかけず、東京に帰った。私はとぽすにチェック・インし、大浴場でゆっくりしてからエア・ウィーヴのマットレス(※11)で横になった。


※1 副島隆彦さんが『日本は戦争に連れてゆかれる』で付けた、この一連の騒動の呼び名。コロナ騒ぎ、あるいはコロナ・バカ騒ぎ。

※2 コロナ・バカ騒ぎがなくても賞与は水物なので正確な影響額を算出するのは難しい。対昨年比。

※3 小林よしのりさんの『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』を読みましょう。全員。

※4 楽天トラベルで予約したんだけど、執筆時点(10月9日)ではクーポン発行数が上限に達したとかでもう同サイトでのGO TO割引は終わったらしい。

※5 東京でもまだ一部の店舗が短縮営業中だけど、大型施設はおおかた平時の営業時間に戻っている印象。

※6 ケツを追いかけてはいるが、私の知る限り特に尻フェチではないと思う。(という注を公開した後に、ケツは結構好きだというご連絡をご本人からいただいた。)

※7 甘いナッツのような香りがするヴェトナムの焼酎。私は2018年2月11日(日)に郡山駅前のヴェトナム料理店で出会い、はまった。

※8 これを公開した後に、完全に寝たのは二公演とも4曲目と5曲目のみ、というご連絡をご本人からいただいた。夜も寝とったんかい。(追記:後から気づいたけど、「序盤の数曲で寝てしまった」という書き方が、序盤の数曲以外はすべて寝てしまったという意味に伝わってしまったようだ。たしかに紛らわしい。「序盤の数曲では寝てしまった」にするべきだった。)

※9 7月に受けた遅延型フード・アレルギー検査の結果、私は卵白、カゼインに強いアレルギーがあることが判明し、医者から摂取を禁じられている。他には鯛、エンドウ豆等。

※10 殆ど印象に残らなかったから書かなかったけど、里吉うたのさんがマスカットが好きだと言っていた。シャイン?と石田さんが聞き、それはたまにしか食べられないと里吉さんが答えていた。

※11 標準のカプセルよりも少し値段の高いプレミアム・ルームでエア・ウィーヴが採用されている。

2020年8月16日日曜日

つばきファクトリー ミニライブ&お見送り会イベント「再会」(2020-08-10)

完全に自由なセックスシステムになると、何割かの人間は変化に富んだ刺激的な性生活を送り、何割かの人間はマスターベーションと孤独だけの毎日を送る。経済の自由化とは、すなわち闘争領域が拡大することである(ミシェル・ウエルベック、『闘争領域の拡大』)
ミシェル・ウエルベックさんは、個人の自由と快楽がキリスト教や家族といった伝統的な規範を押しのけた現代のヨーロッパ社会を、小説の形で鮮やかに描いた。恋愛とセックスが自由競争に組み込まれ、二極化した勝者と敗者。一部の人間が富(若くて生物的に魅力的な異性)の大部分を占有し、残りの人々はわずかしか手に入れられない。もしくはまったく手に入れられない。自由競争の論理的な帰結は、寡占である。他人と競わないと手に入れられないものが増えていくことをウエルベックさんは『闘争領域の拡大』と呼んだ。彼のヨーロッパへの洞察は、日本社会にも大いに当てはまる。この状況に対する日本からの回答が、アイドル文化だ。

現代日本ではアイドルが職業として認知されるようになった。これは倒錯している。Idolの語義を考えてみてほしい。憧れや崇拝の対象という意味だ。あなたが誰かに強い憧れを抱いているのであれば、その人はあなたのidolだ。たとえば子供の頃のあなたにとって強くて頼りになる父親がidolだったかもしれない。いずれにせよ、idolは他称(あの人は私にとってのidol)であって、自称(私はidol)するものではない。Idolという単語に、歌って踊って恋人を(表向きには)作らない、若くて容姿の整った人たちという意味は一切ない。プロ意識の高いアイドルとは何だろうか? 歌や踊りの技能を磨くのに熱心で、恋人を作らない(存在を表に出さない)? 否、プロ意識の高いアイドルという言い方はおかしい。Idolは職業ではないからだ。
…男性においては、ホルモンの分泌、勃起、そしてそれに伴うあらゆる現象が消えても、若い女性の肉体への関心は減少しない。尚悪いことに、それはやがて、真に精神の産物、欲望を欲する欲望になる(ミシェル・ウエルベック、『ある島の可能性』)
アイドルが生業になり、産業になった。それは恋愛とセックスの競争で負けた人たちへの救済のシステム化を意味する。ウエルベックさんが言うところの“欲望を欲する欲望”、それを効率的に満たすためのフォーマットがアイドル。もちろん性風俗とは違い、直に肉体的なサービスは提供してくれない(少なくとも私が知っているアイドルさんは)。アイドルさんは我々の精神に働きかける、薬物のような存在である。だが、彼女たちに“欲望を欲する欲望”を満たしてもらうことで、どうやら肉体的な欲求も解消するようだ。当ブログに幾度となく登場している東海地方のホーミーは、コロナ・ヴァイラスの影響でアイドル現場がなくなったのをきっかけに五年振りに風俗店を利用したとブログで明らかにした。言い換えると、アイドル現場が継続的にあった時期に、彼は性風俗を必要としなかった。これが示唆するのは、人間のあらゆる欲望は結局のところ精神的であるということだ。

森永卓郎さんがこれに近いことを言っていた。鈴木愛理さんとの対談。何年も前。森永さん曰く、日本では労働者の収入が減少傾向にあり、それが原因で結婚できない男性が増えている。アイドルはそんな男性たちに希望と活力を与える存在。だから君(鈴木さん)のようなアイドルは日本経済に貢献している。という感じだったと思う。(今YouTubeで検索したらそれらしき動画があった。本当は記憶で書くんじゃなくてそれをちゃんと観た方がいいんだけど、面倒くさいからいいや。興味があればチェックしてみてくれ。)彼は鋭いことを言っていた。ただ、結婚できない男性が増えている真の原因は給料が安いことではない。恋愛とセックスが競争で手に入れるもので、それらと結婚が不可分だからである。ウエルベックさんの言う闘争領域の拡大である。

コロナ騒ぎでしばらくの間、Hello! Projectから一切の現場が消えた。コンサートも、舞台も、握手会も。リリース・パーティも。何もかも。それを補うかのように連続投下されるYouTube動画。次々に開設されるメンバーさんのInstagramアカウント。前と変わらず毎日更新され続けるブログ。メンバーさんの努力は痛いほど伝わってきた。頭が下がる。でも、日を追うごとにHello! Projectに対する私の熱は冷めていった。小野瑞歩さんがブログでお菓子禁止を宣言なさってから毎日コメントするようにしていたがそれもきつくなって、80日くらいで止めた。彼女のブログを毎日開くのも楽しみというよりは義務になってきた。ハロ・コンが開催されたが、数十年前の歌謡曲をメンバーさんが一人ずつカヴァーするという、観客の年齢層に合わせた接待カラオケのような趣向は私の興味を惹かなかった。営業再開したジムで運動して、大浴場でリラックスし、本を読み、『太田上田』を観て、『爆笑問題カーボーイ』を聴き、横浜F・マリノスの試合を観に行く(7月12日から厳しい条件付きながらもスタジアムでの観戦が可能になった)。仕事は在宅勤務中心で、たまに出社する。まあまあ満ち足りた生活が送れている気がした。もちろん、小野瑞歩さんのことだけは、最後まで見届けたい。でもアイドルがなくなっても私の生活は成り立つんじゃないか。少しずつ、そう思い始めていた。

気が乗らないので、8月9日(日)の盛りだくさん会では小野瑞歩さんのチェキを一枚だけ買った。買わなくてもいいけど、まあ久しぶりの開催だし、行っとくか…という程度の考えだった。そのたった一枚のチェキが命取りだった。渋谷ベルサール・ガーデン。208日ぶりに1メートル以内の至近距離で、お互いマスク未着用で対面した小野瑞歩さん(マスク着用のお見送り会を数えると170日ぶり)。あのわずかな時間で、引き戻された。あー、ありがとう! 私を見るなり、小野さんはそう発声なさった。その瞬間、2月22日(土)を最後に止まっていた時計が再び動き始めた。午前中に撮ったチェキを、私は夜まで何度も何度も見返した。iPhoneの壁紙に設定した。小野瑞歩さん、なんて可愛いんだ…。そしてめっちゃ優しかった…。私は痛感した。人は“欲望を欲する欲望”を一時的に忘れることは出きるが、葬ることは出来ない。『消せやしないキモチ』。消せやしないキモ・オタ。

前日に小野さんと対面して心に火が灯っていた私には、この異常な蒸し暑さ(摂氏35度は優に超えていたはず)も、6時という起床時間も、炎天下のとしまえんで並び続けるという異常行動も、苦ではなかった。7時45分から入場列を作るという事前の通知。最初は少し混乱があったようだ。某有名おまいつさんが、汚い身なりの禿げデブ中高年男性たちがとしまえんの入り口に群がる写真をTwitterに投稿した。たしかにあの写真は本物だろう。Twitter映えしすぎる。揶揄したくなるのはよく分かる。でも現地にいた身として、あの写真から受ける印象ほどには実際の客層は醜悪ではないというのは言っておきたい。アレに写っているのはいわば(ある意味の)上澄みであって、サンプリングとしては偏っている。写真はいつも公平だとは限らない。どこを切り取るかによって受け手の印象はいくらでも操作出来るということは念頭に置いてほしい。メディア・リテラシー、ナーミン?

Estacion
since 2009
http://estacion.asia

7時59分、列に並ぶ。Dr. Josh Axeさんの“eat dirt”を読む。8時41分、アルビ兄さんがいつものように険しい顔で列の横を通り過ぎる。髪の色は黒に近い。白地で胸にAIAと印字された、イングランド・プレミア・リーグ、トッテナム・ホットスパーFCさんのユニフォーム。下はハーフ・パンツにスパッツ。8時47分、一度の購入制限は2枚までという聞き覚えのない紳士の声が聞こえてくる。おそらく列の先にあるステージから誰かがマイカフォンでしゃべっている。姿は見えないがアルビ兄さんとは別人。9時7分、頭にタオルを巻いたクラシカルなオタクのような見た目の男性によるマイカフォン・チェック。ハッ、ハッ、ハッ、ハ…ハッ、ハッ、ツッ、フッ、ハッハッハー、フー、ツツ…。9時9分、音楽が流れる。iPhoneのShazamによるとIncognitoさんの“Too Far Gone”。9時13分、Incognitoさんの“After the Fall (Instrumental Version)”。リリース・パーティの音声確認で流れる音楽は決まってフュージョン。9時25分、杖をつきながらぎこちなく歩く、I Love it!と印字された半袖Tシャツを身につけた腹の出た紳士。連れのナオンと談笑しつつはしゃいで踊る、若い頃の大津祐樹さんから筋肉を削ぎ取ったようなナリの中性的な男性。9時44分、コンパクト・ディスク1枚を予約し、着席観覧券(82番)とお見送り会参加券(65番)を獲得。割といい番号なんじゃないかな。10時12分、もう間もなく、着席券の配布が終了します。10時14分、ただいまをもちまして着席券の配布が終了しました。その頃には列は殆どなくなっていた。

10時19分、1番から170番までは10時25分から、171番から340番は10時35分から事前に列を作るとエスタシオンさんが説明。つまり着席は340番までなのかな?(後に分かったが500番くらいまであったようだ。)10時23分、番号の仮呼び出し開始。11番から20番の方。10時25分、60番までの方。10時26分、100番までの方。10時28分、ここでアナウンスメント担当がアルビ兄さんに変わる(今日はアルビ兄さんじゃない紳士が主に取り仕切っていた)。ベンチ椅子の両脇に一人ずつ座ってくれ、各ベンチに二人ずつ。一度座ったらずーっと座っていてください。そこで友達と喋ったりすると密になりますから。10時30分、呼び出し始まる。10時32分、20番。10時33分、40番。10時34分、50-55番。80-85番で入場する私(82番)。思ったよりも席は空いている。三列目、右寄りを確保。一つ前も空いていたが、その前の人たちが日傘を差していたのでイヤな予感がしたのと(アルビ兄さんじゃない紳士の事前お願いもあって開演までには仕舞っていた)、ステージとの角度を考えてココにした。すぐ右の紳士が、スピーカーから流れるつばきファクトリーさんの曲をずっとぶつぶつ歌っていて気味が悪かった。10時39分、180番まで呼び出し。10時43分、300番。10時49分、400番。10時50分、470番。10時54分、アルビ兄さんではない明るい茶髪の中年男性が、熱中症になったら言葉を発さずに倒れる人がほとんどなので、前後左右を見回して顔色が悪い人がいないか、息をしていない人がいないか確認してほしいと言う。

公開リハーサル。『ナインティーンの蜃気楼』。私の認識が正しければ、つばきファクトリーさんが最後に全員揃って同じステージで歌って踊ったのは、2月22日(土)の新宿ReNYである(間違っていたら後で直す)。メンバーさんの表情には照れ臭さとか、喜びとか、さまざまな感情が入り交じっているように私は感じた。我々もどれだけ待ち詫びたことか。としまえんのそれいゆステージには特別な雰囲気が漂っていた。この瞬間に立ち会えたことが、一ファンとしてどれだけ感慨深かったことか! 11時4分、終了。

我々の熱中症対策のため、客席右側前方に、ホースの水を出しっぱなしにしてくれている。11時7分、オタクさんの頭にホースで水をかけてあげるアルビ兄さんではない紳士。11時8分、アルビ兄さんの前説。密を避けるために立ち見でのご観覧はご遠慮いただいております。もしご気分が悪くなったら周りのスタッフに声をかけてください。ここは無理をする場所ではない。一切の発声は禁止。いま日本全国を見渡しても数百人規模でリリ・イベが出来るのはここだけ(拍手)。としまえんのスタッフさんのおかげ(拍手)。あとこの方(アルビ兄さんではない紳士)がいなければできなかった(拍手)。これまでつばきファクトリーの全シングルでリリ・イベをやってきた。その流れを止めたくなかった。

キモすぎる“自粛”の同調圧力に支配されたこの国民的(世界的)狂騒状態で、ハロ・コンもソロ歌唱に切り替えている中、つばきファクトリーさんだけが集団的なパフォーマンスを大勢のヘッズに見せるというのが簡単ではなかったであろうことは想像に難くない。今日のリリース・パーティを実現させてくれたアップフロントさんととしまえんの関係者の皆さんに、私は本当に感謝をしている。反対勢力や慎重派がいたとしても不思議ではない。としまえんは今月いっぱいでの閉園が決まっている。万一何かがあってもどうせ潰れるから思い切ったことができたのだろうか? いずれにしても勇気がある。心から、ありがとうございます。
もしアイドルにクソ曲を歌わせたかったら すぐ俺に言え
SHOCK EYEさんはかつてそう歌ったことで有名だが(嘘)、彼の名前はHello! Projectを愛好するリアルな奴らの間で確かなブランドを築き上げている。作詞作曲の欄に輝くSHOCK EYEさんの名前、それはクソ曲界のNON-GMO、100%オーガニック認証、モンド・セレクション金賞受賞。常にクソであることが保証されている。人間は定期的にクソ(大便)を排泄しないと生きることが出来ないが、SHOCK EYEさんがHello! Projectに提供する楽曲もどきも、氏の排泄物と考えて差し支えない。あらゆるメロディとリリックが陳腐でワック。例外なし。音楽産業廃棄物。(もっとも、彼からすれば発注された仕事をこなしているだけであって、本当に悪いのは何度も懲りずにSHOCK EYEさんを起用してHello! Projectのヘリテージに泥を塗るフェイク野郎、橋本慎さんである。)

そのSHOCK EYEさんがこさえた新曲『断捨ISM』が、今日のパーティでは二回も披露された。コロナ騒ぎの前だったら私は苦々しい気持ちで観ていただろう。今日はそんな贅沢は言っていられない。つばきファクトリーさんの9人が同じステージに立ち、ワキや脚を出した衣装で(そう、曲が酷い代わりに衣装は良い。全員がワキを見せてくださっている。結局のところ、露出度の高さが衣装を評価する最重要の指標である)、曲をパフォームしている。それを、恵まれた位置から鑑賞させてもらっている。2020年8月10日(日)に全人類で許される最大の幸せを噛みしめるべきだ。今日は来たくても入園チケットが買えなかったヘッズもいるんだ。

いよいよ本編。いつもの入場曲。オイオイ出来ない代わりに手拍子の我々。ステージにメンバーさんが再登場して並ぶや否や、右端(客席から見て)の秋山眞緒さんが靴紐を結ぶためにしゃがんだ。無防備なショート・パンツの股間。私はSCARSさんになった。BLOODSとつるみCRACKを作りBLOCKを仕切りGLOCKを握り(…CROTCHをガン見)。初っぱなから生の醍醐味。リリース・パーティの醍醐味。曲を何百回聴いても分からない。現場でしか感じられないリアル。
ヒップホップのどこがリアル? それは現場つまりここにある(RHYMESTER feat. KING GIDDRA & SOUL SCREAM、『口からでまかせ』)
1. 『断捨ISM』
(各メンバーさんが手短に意気込みを語る)
2. 『明日はデートなのに、今すぐ声が聞きたい』(スマイレージ)(山岸理子さん、小野田紗栞さん、谷本安美さん)
3. 『最高ミュージック』(℃-ute)(小片リサさん、新沼希空さん、秋山眞緒さん)
4. 『夕暮れ 恋の時間』(スマイレージ)(岸本ゆめのさん、浅倉樹々、小野瑞歩さん)
(各メンバーさんが手短に感想を語る)
5. 『ナインティーンの蜃気楼』
6. 『断捨ISM』

『断捨ISM』は、音楽以外は非常によい。前述したように肌を多く出す衣装。身体を見せることを重視した、動きの多い振り付け。特にフックで腰を落とすムーヴで、小片リサさんの脚の付け根付近に私の目が釘付けになった。小野瑞歩さんだけを観るつもりだったが、この曲では後列にいることが多く、位置的にも見づらいことが多かった。フォーメーション的に、浅倉樹々さんと小野田紗栞さんをフィーチャーしているように見えた。この組み合わせは、天使と悪魔という感じでコントラストが効いている。純粋な正当派センターの浅倉さんと、江ノ島の件で邪悪な魅力を身につけた小野田さん。

意気込みと感想は、各メンバーさんが数秒ずつ程度。まとまったトークやゲームのセグメントは設けられていなかった。熱中症対策だろう。セットリストにおいても、三人ユニットで一曲ずつパフォームするセグメントが設けられており、メンバーさんが休息できる時間を設けていた。理にかなった采配である。どうやらこの三曲は四年前のファンクラブ・イヴェントの再現らしい。その小ユニットで、新沼希空さんが存分にワキを見せてくださった。頭上で手を叩いて我々に手拍子を促しながら。

殺人的な太陽光線と湿気の中、マスクを着用していると、ただ座っているだけなのに汗が止まらない。何度も眼鏡を外してタオルで拭いたが、汗が入って左目が開けられない。それでも何とかステージのつばきファクトリーさんを目に焼き付けようと、私は必死だった。

序盤の意気込みで小野瑞歩さんは、としまえんは子供の頃から何回も遊びに来ている、ここでライブが出来るのが本当に嬉しい、というようなことをおっしゃった。岸本ゆめのさんは、私は初としまえん。最初で最後になるとおっしゃった。終盤の感想で秋山眞緒さんが発した、今日は皆さんマスクをしている人が多いと思うんですけど、マスクの下の笑顔が見えました! というステキなコメントに私はほっこりした。

この数ヶ月のコロナ騒ぎは、日本人、そして人間の醜悪な部分をこれでもかと露呈している。恐怖に支配された人間の恐ろしさ。思考力を持たず、他責的で、排他的で、与えられた情報(それ単独で見てもまったく無意味な感染者数等)に一喜一憂する、牧場で犬に追い回される羊のような大衆。悪い夢でも見ているのではないか、と私は思うときがある。マス・ヒステリア。コロナにさえかからなければ死んでもいいとでも言わんばかりの、バランス感覚のなさ。密集しているわけでも、喋っているわけでもないのに、ストリートではほとんどの歩行者が平然とマスクを着けている。この炎天下で。みんなこんなに頭が悪かったのか。仮にテレヴィジョンでコロナのことを報じていなければ大多数の人たちは普通に生活していたに違いない。それで特に支障はなかっただろう、どうせ。外を歩くときはちんちんを出せって毎日テレヴィジョンが言い続けたら従うんだろ、馬鹿ども。
私ひとり つらいときは みんな同じ つらいんだね (つばきファクトリー、『青春まんまんなか』) 
つらい思いをしていない奴は気に食わない、みんなで叩け。それがジャップの基本的な考え方なので、コロナ対策としての有効性と関係なく、みんなが我慢しているときに我慢しないと非難の対象になる。我慢大会が大好きな民族。もっともマスク警察(マスクを着けていない他人を非難するキチガイ)は西洋でも出現しているらしい。ジャップ特有というよりは、もともと何らかの精神的な問題を抱えた人間がパニックに陥ったときの普遍的な反応のようだ。質的栄養失調、日光不足、テレヴィジョンの見すぎ。

この狂気に満ちた世界で、2020年8月10日(月・祝)としまえんで行われたつばきファクトリーさんのリリース・パーティは一服の清涼剤だった。出口がどこにあるのか分からない洞窟の先から一筋の光を示すような、夢のような時間だった。救いだった。平時においてはリリース・パーティの空間が社会的には異常だが、社会がこれだけ異常になった今、我々が取り戻すべき日常がココにはあった。人によっては死のリスクさえちらつくかもしれない、過酷な天候。コロナと関係なく何らかの疾患を抱えていそうな人は普段から客層の一定割合を占めている。現に件の有名おまいつさんは後日コロナではない何かで入院しているとtweetした。仮に今日のリリース・パーティがきっかけで体調を崩す人がいたとしても、その人は幸せだったと私は思う。生存することや死なないことよりも大事なことが人生にはある。死んだら元も子もない、それは一見ごもっともだが、死ななければ幸せな訳ではない。リスクを承知した上で楽しく生きる。やりたいことをやる。そっちの方が大事に決まっている。

11時42分、本編終わり。お見送りは2メートルどころか、5メートルは離れていた。それが分かるとヘッズがどよめきと変な笑いが起きるくらい遠かった。左からメンバーさんの年齢順。

秋山眞緒さん
小野田紗栞さん
小野瑞歩さん
浅倉樹々さん
岸本ゆめのさん
谷本安美さん
新沼希空さん
小片リサさん
山岸理子さん

どうやらアルビ兄さんたちが許容する以上にヘッズが早く流れているらしい。心の中では握手をしているスピードで。急がなくていいですよ、と彼は笑っていた。それでもみんな飼い慣らされているから早足で通り抜ける感じになった。

小野瑞歩さんが、あ!という感じの表情で気付いてくれて、長く目を合わせてくれた。私はそこですべてがどうでもよくなり、残りのメンバーさんに手を振るのも忘れた。昨日のチェキ撮影時のあー、ありがとうだけじゃ100%の確信は持てなかったが、半年くらい振りでも小野さんはまだ私のことを覚えていてくれた。正直、ホッとした。私は別に大量のチェキ券や握手券を積んできたわけでもないし、名前やハンドル・ネームで彼女に知られているわけでもない。いつ忘れ去られても不思議ではない雑魚に過ぎない。11時54分、お見送りから出た私は、そのままとしまえんの出口へと向かった。二日連続で生の小野さんを観ることが出来て、ますます会いたい気持ちは強くなった。会ったところで文字通り物理的に接触することさえ今では許されない。それでも、会いたい。
一方で欲望を我慢できなくなるまで煽りながら、実現の道をどんどん険しくしていく。西欧社会はこうした特殊な法則の上に立っている(ミシェル・ウエルベック、『ある島の可能性』)

2020年6月16日火曜日

こういう時期

田村芽実さんでさえ“頑張るぞ、本気で頑張るぞ!と意気込んだ時間は短く”、“こんなにダラダラした日々は過去にあったか。というくらいダラダラした日々を送っ”たという(田村芽実 公式ブログ - みなさま)。私のような凡人が何かを成し遂げられなかったのは無理もない(もっとも彼女と私ではダラダラの尺度が一緒ではないだろうが)。せっかくの自由な時間を生産的に使えたとは言いがたい。私にはいくつかやりたいと思っていたことがあった。料理を作れるようになりたかった。毎食、外食ばかりでは飽きるだろうし、経済的にも賢明ではない。私はミート・ソースだけは上手に作ることが出来るが、それ以外のレパートリーとなると目玉焼きとスクランブル・エッグくらいだった。所持しているウー・ウェンさんの料理本からいくつかの料理を習得したかった。結果、作れるようになったのは鳥もも肉の肉じゃが。ただ一つだけ。(ちなみに肉じゃがの発祥地については広島の呉と京都府舞鶴市で50年くらい争っている。肉じゃがと呼ばれ出したのは戦後で、当初は甘煮だった。出典は2019年12月10日放送『三宅祐司のふるさと探訪』。)気温が上がってきた時期(5月11日)にミート・ソースを作っている最中、ゴキブリが現れ、自炊の意欲が大幅に削がれた。今では家で食べるときは魚の水煮缶とメステマッハーさんのライ麦パンあたりで適当に済ませている。パンにはローヤル・ゼリーを塗る。あと炭酸水。それでいいんだよ、もう…。栄養的に悪くない食材で腹をまあまあ満たせれば。あとは本を大量に読むつもりだった。理論上は十分に可能なはずだった。日によってはたしかに一日三、四時間読んでいたが、最近では一日一時間くらいしか読まなくなっている。普通に仕事をしているときと変わらない。四月から読み終えてきた本はこんな感じだ(括弧内の日付は読了日):

  • 藤井雅彦、『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』(4月3日)
  • Charles Bukowski, “Women”(4月15日)
  • 村上陽一郎、『ペスト大流行』(4月19日)
  • 小松左京、『復活の日』(4月26日)
  • スティーヴン・ジョンソン、『感染地図』(5月3日)
  • Richard Preston, “The Hot Zone”(5月9日)
  • 朝倉かすみ、『てらさふ』(5月13日)
  • 西村繁男、『さらば、わが青春の「少年ジャンプ」』(5月15日)
  • 斎藤糧三、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴』(5月16日)
  • Walter Dean Myers, “145th Steet: Short Stories”(5月19日)
  • Jarrett Kobek, “The Future Won't Be Long”(5月24日)
  • 『まんが凶悪犯罪者の驚愕半生』(6月2日)
  • Douglas Murray, “The Strange Death of Europe”(6月7日)

今はミシェル・ウエルベックさんの『素粒子』を読んでいる。こうやって振り返ると、まとまった時間を取って向き合わないと歯が立たない本に一つも挑んでいない。(半分読んで数ヶ月放置していた“The Future Won't Be Long”を読み切れたのだけは潤沢な自由時間の恩恵だったと思う。)中学数学を学ぶと決めたが、二週間ほど前に『増補改訂版 語りかける中学数学』を入手して以来まだ手を着けられていない。仕事に使える本はいっさい読んでいない。部屋の片付けは頓挫している。当ブログも二回しか更新していない。

こういう時期ですから…というのは便利な言い方だ。天気の話のように波風を立てない。相手と同じ立場にいる感じを出せる。実際には天気と違い、期間や中身は人為的に設定されている。また、人によって内容が異なる。私にとっては、生きる糧だった明治安田生命J1リーグ、Hello! Project、田村芽実さん等々の活動が中止・中断し、会社からは在宅勤務が認められ、50%の休業により収入を減らされ、その代わりに自由時間が増え、あまり外出をするなと社会的に圧力をかけられている、四月はじめから今日に至るまでの時期が“こういう時期”である。俗に“自粛期間”と呼ばれる奇妙な日々。自粛という単語のアクロバティックな用法。自粛 意味で検索すると、自分から進んで、行いや態度を慎むこととネット上の辞書には書いてある。この定義は私の感覚とも一致する。でも多くの人々が疑問を持つ様子もなく、禁止令のような意味にすげ替えている。“自粛期間”にも関わらず山に登ったとか、“自粛を破る”奴はけしからんとか。“自粛警察”と呼ばれる気味の悪すぎる老人たちまで一部で発生した(私は彼らを実際に目撃した訳じゃないが、おそらく実在するんだろう。第二次世界大戦中はそれが優等生の行動様式だったんだろう)。世を覆う“自粛”に私は、会社員に求められる“自主性”に近い気持ち悪さを感じる。本当に自分で考えて決めるというよりは、みなまで言わんでも会社(上司)の望むように動けやってこと。会社とかスポーツ・チームのように同じ目的を共有する機能集団であればそれでいいのかもしれない。合わない人は他に転職・移籍することが出来るから。国民という共同体で法律や命令ではなく“自粛”や“自主性”に頼ろうとしてもそう一枚岩になるものではない。構成員同士の監視、密告、暴力が生まれる。アメリカでは連邦政府の権限を制限した結果、自警団が発達し、リンチが生まれた(鈴木透、『性と暴力のアメリカ』)。

結局のところ“自粛期間”は終わったのか、そうではないのか。ちょっと曖昧だ。日本政府による緊急事態宣言の解除に伴い“自粛期間”が終わったような雰囲気になっているが、“自粛”の定義が完全に明確ではない上に(休業した店もあれば“自粛営業”と称して営業時間を少しだけ短縮した店も多数ある)、法律で期間が定められている訳でもないので、何となくなし崩しで少しずつ元に戻っていくのだろう。完全に元通りにはなるには年単位の時間がかかるのかもしれないが。結局のところ、私を含めて日本人の大多数は何となく空気に従っているだけ。山本七平さんが『「空気」の研究』で書いた通り。日本教。上述の“自粛警察”もそうなんだけど、戦争になったときもこういう感じなんだろうな、と思うことがこのCOVID-19を巡るパニックでは多々あった。率先してステイ・ホームを呼びかけ社会を息苦しくさせた出しゃばりな有名人たちは、戦時中には自国民向けのプロパガンダに喜んで協力するだろう。スポーツ選手はそのスポーツが上手であるという以上でも以下でもないのに、媒体を通し、国民のリーダー面をして我々に指図する(もちろん一部の選手だが)。受け手もそういった言葉に影響を受けてしまう。人間はある分野で能力が高い人は別の分野の能力も高いに違いないと錯覚する。ハロー効果(ふろむだ、『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』)。その点、爆笑問題さんの太田光さんの発言は地に足が着いていて好感を持った。彼が出演するラジオ番組、爆笑問題カーボーイを聴いてほしい。YouTubeにたくさん違法アップロードされている。(ある回で田中裕二さんが、お子さんがソーセージが大好きだという話をしたところ、じゃあ将来フェラチオ大好きになるねと太田光さんは言ってケラケラ笑っていた。五十代になってもこれでいいんだ、と私は感銘を受けた。自分の人生に少し光が差したような気がして、何だか楽になった。)

私にとっては本日をもって“こういう時期”に一区切りがつく。50%の休業が今日で最後だからだ。(こうやって文を書こうと思い立ったのもそれが大きな理由。)在宅勤務はもう少し続けそうだが、7月からは段階的に出社することになるだろう。今後も100%在宅だけでやっていくのは無理にしても、せめて週に一、二回だけでも続けられたらいいなあと思っている。仕事に取りかかる少し前まで寝ていられる気楽さ。掃除、洗濯、宅配便の受け取りが出来る便利さ。オフィス環境がクソだから尚更。

胸を張ってコレをやりましたと言えることがない。無為と言ってもいい日々だった。現時点で後悔はしていない。これでよかったのか悪かったのかは後にならないと判断できない。無職期間がその後においても私の糧になったように、一見、無意味で無価値な時間が、長い目で見たら役に立つこともある。マルコムXさんが収監中に数多くの本を読んで思想を先鋭化させたように、私も生き甲斐(サッカーの試合とコンサート)を奪われむやみな外出をするなという圧力をかけられたソフトな牢獄で悶々としながら感じたこと、考えたことが今後の人生で活きてくるはずだと信じている。でも、あれだ。Twitterは例外だ。少しやる分にはいい。でも人生の貴重な時間の浪費と紙一重。5月24日からiPhoneでTwitterアプリの使用時間を一日一時間半までに制限したが、まだデスク・トップで見るという抜け道がある。SNSは利用者を短期的な報酬に反応する動物にする。流れてくる短文にふぁぼやRTをポチポチ押すだけの猿。まとまった文章を作る時間、意欲、集中力を削ぐ。ナカムラ・クリニックの中村先生もTwitterを始めてから4月14日を最後にブログ(今はnoteに移行)を更新しなくなった。悲しい。目まぐるしく入れ替わっていく流行りの話題に反応(画面に表示されるボタンを押すか、せいぜい140文字以内の感想を述べるだけ)して何かをやった気になるのは簡単だ。それよりも大事なのは本を読むこと。判断することではなく、理解すること。
人間は善悪が明確に区別できる世界を願う。というのも、理解する前に判断したいという御しがたい生得の欲望が心にあるからだ。(ミラン・クンデラ、『小説の技法』)
Twitterでは、自分の意見に価値があると思っている人が多すぎる。ほとんどの場合、あなたの意見に価値はない。人が意見で救われることはほとんどない。意見が影響力を持つにはそれ相応の専門知識か立場が必要だ。その題材についてロクに学んだこともない人がスマート・フォンでお気軽に表明する意見に何の意味があるのか。Twitterで何かの社会問題に感心を抱いたのであれば、その事柄に関する本を読むべきなのだ。Twitterは何かをちゃんと勉強するきっかけとしては最適である。

2020年5月7日木曜日

Hello! Project スペシャル会員(ゴールド)限定ポイントプレゼント フリーメッセージDVD

4月29日(水)に受け取ったが、5月7日(木)まで観ることが出来なかった。緊張で。握手会の列に並んでいるときの、胃に来る感じ。あれと同じ。佐川急便さんが来たとき私は早めの昼食を摂っていたんだけど、受け取った封筒に書いてあったSPポイントプレゼント商品という文字を見て急に食欲が失せた。申し込んだのが2月末だったから、しばらく来ないと踏んでいたんだよね。COVID-19の騒ぎでアップフロントさんは通常の業務は回っていないだろうから。別に半年くらい届かなくてもいいやって思っていた。意外にも遅延なく来てしまい意表を突かれた。小野瑞歩さんの直筆による宛名(私の名前)とオートグラフが書いてあるブツを封筒から取り出して、テレビ台に置いたままにしていた。握手は強制的に自分の番が来るけど、DVDはプレイヤーに入れないと始まらない。いつまで先延ばしにするんだ? そろそろ観ろよ。今日は天気がいい。部屋に掃除機をかけて、窓を開ける。気持ちのよい風が部屋を吹き抜ける。気分がよい。やるなら今しかない。



█████さん、いつも応援ありがとうございます。つばきファクトリーの小野瑞歩です。█████さんからいただいた質問に、さっそく答えていきたいと思います。一問目~もしHello! Projectにはいっていなかったら今頃どういう生活をしていますか?…と思いますか? という質問なんですが、いやぁ…私は、中学三年生の頃にハロプロ研修生に加入したので、何か、高校、大学の、そのーハロプロに入っていなかったら、どう生活していたのかっていう、想像をあまりしたことがなくて、なのでちょっと難しいんですけど、でもやっぱり周りの友達は、普通に大学に通って、勉強をして、アルバイトをしたり、しているので、私もそういう風に生活していたんじゃないかなとおもいますね。でもハロプロは好きだったので、好きだったので、中学生の頃から。だからハロプロのライブとかに、もしかしたら行ってたかもしれません。二問目! これまでの人生でやり直したい決断や戻りたい瞬間はありますか? という質問なんですが、私ホントに失敗とか、多くて。何か、皆さんの前で失敗して転んでしまうとか恥ずかしい思いをしてしまうことが、結構あるんですけど、でもたぶん、いちいち戻ってたら、たぶんキリがないくらいの失敗をしているので、なので、まあやり直したいなって思うことはあるけど、戻りたい瞬間は今のところありません。三問目。これからアイドルを目指す子に1つだけアドバイスをするなら何と伝えますか? ん~…。アイドル…は、何か、いろいろ覚えたり、色んなことをしたり、大変なこともあるかもしれないんですけど、私自身、あのアイドルが好きでHello! Projectが好きで、こうアイドルになって、ハロプロに入ってそれでとても楽しい生活をいま送っているので、何か好きな気持ちを忘れないでほしいなって、思いますね。アイドルが好きって思ってアイドルを目指していたら、いつか絶対になれると思うし、なった後も頑張れると思うので、その気持ちを忘れずに頑張ってもらいたいなと思います。はい! 四問目。Hello! Projectに入ってから、ご自身が1番成長したと思う点は何ですか? ん~…何だろうなあ…。でも、ここ一、二年…一年くらいは、結構、何か自分の中で、殻が破れたなって思うこと? がたくさんあって、そこは成長できたんじゃないかなって思います。ポジティブになったっていうか、あんまり、はぁ(溜息)…もうダメだ…みたいなことを、思わなくなりました! 五問目! 今日、起きてから何を食べましたか? という質問なんですが、朝ご飯は、昨日の、残りの、中華スープと、あとご飯と、あと、あのー、鶏むね肉で作ったハンバーグを食べました。鶏むね肉と、えのきと、おからパウダーとか入れて、何か最近わたしご飯ちゃんと作るようになったんですけど、健康的なものを意識して摂るようにしています。お昼はサラダ! 六問目! アイドルとしての最終的なゴールは何ですか? おー! おっきな質問ですね。アイドルとしての最終的なゴールは、たくさん、目標は決めているんですけど、まだ、あのー…ゴールってのは決めてなくて、でも目標はたくさん達成していって、いつかゴールが決められるように頑張りたいなって、思います! 最後の質問! 可愛くい続けるために気をつけていること、やっていることを教えてください。ということで、これは、やっぱり可愛い女の子を見たり、可愛い子に、どういうメイクを使ってるの? どういうメイクしてるの? とか聞いたりすることですかね。努力を惜しまない。もっと可愛くなれるように頑張ります! たくさんの質問、ありがとうございます。これからも、私の応援、よろしくお願いします! 小野瑞歩でした! バイバーイ



正直、どうしても聞きたいことってそんなにないんだよね。普段から。ラジオなりブログなりでしゃべりたいことをしゃべってもらって、書きたいことを書いてもらって、それを受け取ることが出来れば、私としては満足なんだ。だったら同じ10,000ポイントの特典でバースデーメッセージDVDにすればいいじゃんと思うかもしれないけど、自分の誕生日(8月)から遠いし(2月末で数百ポイントが消失するのに気づき急いで応募した)、私は誕生日に対する思い入れがあんまりないので。質問を考えるにあたっては、普通の握手会では聞けないような、ちょっと考えないと答えられないようなのを入れたいなと。あとは、小野さんがアイドルというものをどう考えているのかを引き出せればなと思っていた。Alex Banayanさんの"The Third Door"という本を前に読んだことがあって。異常なまでの行動力、使命感、執念、体力、知力、根性で、数々の失敗を重ねながらも各界の著名人とのインタビューを成功させていく無鉄砲な無名大学生(著者)の冒険物語。その中で誰かが筆者にこう助言したんだ。インタビューをするときは、これからこの世界を目指す人に一つアドバイスを送るなら何ですかと聞けと。その職業に対する相手の考え方を引き出すことが出来るから。(記憶だけで書いているんだけど、たしかそんな感じだったと思う。)三問目はそれを参考にした。(『サードドア』という題で日本語版がある。オススメ。)

応募する前。1月だったかな。池袋で豚の脳みそを一緒に食べた二人の紳士に、お二人ならどういう質問をしますかと聞いてみたんだ。うーん…と二人とも首を傾げた。握手会で聞けるからなあ。たしかにそうなんだよな。個別握手会が頻繁に開催され、メンバーさんと対面して言葉を交わすことが出来る。その常識を誰も疑わなかった。今では2月に開催予定だった握手会が延期され、いつになるかの見通しが立っていない。もしコンサートが再開できるようになっても、握手会という風習はしばらく出来ないだろうし、なくなっていくのかもしれない。

10,000ポイントを貯めるのは並大抵のことではない。ポイントのボーナスやキャンペーンを加味しなければ、一千万円分の買い物。ポイントは一定期間で消失する。普通にやっていたら無理だと思うよ。私は家賃、ガス代、出張費、等々、極力すべての出費をアップフロント・インターナショナル・カードに集約してここまでたどり着いた。これからCOVID-19の影響で出張は激減する。特に海外出張はもう年単位で発生しないだろう。短期的にも既に私の収入は減っている。短期で済むのか、長期化するのか、長期化した場合に収入が減るだけで済むのか、先は見えない。10,000ポイントの頂にもう一度到達する日は来ないかもしれない。小野瑞歩さんが5分近くも私だけのためにしゃべっているDVDが存在するという事実。答えを考えるときの仕草や笑顔。宝物です。ありがとうございました。

2020年4月29日水曜日

イタリアン・トマトでマスクを着けて書いた文

自由な時間がどれだけあるかと、その中で何を生産できるかはまったく別の問題だ。むしろ時間が限られていた方がやりやすい。このブログの話だ。誰かの発注を受けて書いているわけではない。締め切りはない。でも放置していたら書かないといけない現場は溜まっていく一方。時間が経てば経つほど書くのが大変になるのは経験済み。未来の自分が苦しむのが目に見える。だから何とか時間を工面してやらないと…そう駆り立てられる。私は四月から在宅勤務になった。その上、月の半分が休業になった。COVID-19の流行に伴う業績悪化を受けて(+見越して)の会社による措置である。たとえば月曜と火曜は8時間、木曜は4時間、というような働き方をしている。いつ終わるかは分からない。とりあえず6月末までは続くのが決まっている。通勤の時間がなくなったし、半分は休みになった。だいぶ暇。となれば週に一本くらい数千文字の文章を書いて投稿するのは造作がなさそうなものだ。実際には二ヶ月前を最後に、ブログの更新は途絶えている。今こうやってイタリアン・トマトの机でポメラを取り出すまで、私はブログ用の文章を一文字もタイプすることはなかった。

もちろん最大の理由は、主な題材としてきたHello! Projectの現場がなくなってしまったことだ。コンサート、ミュージカル、リリース・パーティ等に行ったら何かしらの記録をここに認(したた)めるという習慣は私の身体に染みついている。ライフ・ワークだ。伊達にこのブログを五年も続けていない。現場はしばらくなくなっているが、何かしらを書いて残したいとは思っていた。でもさ。完全な休みの日だったとしても洗濯、掃除、食事、風呂といった雑事をこなして音楽を聴いてYouTubeでも観ていれば一日というのは何となく終わってしまうものなんだ。明日も休みだしその先も時間に余裕がある。そのうちやればいいや。そういう感じで三週間以上が経過した。こうも休みが多くなると、フル・タイムで働いていた頃とは時間の感覚が変わってくるんだ。以前は9時から6時まで働いて20時からジムで運動をするという風に朝から晩まで活動的なのが普通だった。今は15時頃には一日が終わったような感覚。

生活にメリハリを出すのが非常に難しい状況。通勤がなくなった分、早起きのプレッシャーから解放された。それはありがたいけど、オンとオフの境界は不明瞭になった。Hello! Projectの現場だけじゃなく明治安田生命Jリーグも止まっている。ジムは閉まっている。外出をなるべく控えるよう政府は全国的に要請している。ストリートに出たところで多くの店は政府の意向を汲み閉まっている。平坦な日々。労働の負荷は軽減されたが収入は減ることが決まり、娯楽も大幅に減った。底抜けに楽しいことがない。たしかにHello! Projectのメンバーさんは今でもブログを毎日のように更新してくれるし、家にこもらざるを得ない我々に向けてTwitter, YouTube, Instagramにいつも以上にさまざまな動画や写真を投稿してくださる。だが、それはコンサート、リリース・パーティ、ミュージカル、握手会の代わりにはならない。Hello! Projectを通して知り合ったリアルなホーミーたちとTwitterで会話をしても、それは実際にお会いして食事を共にする楽しさには代えられない。フットボールに関して言えば、いくら名試合であったとしてもDAZNで過去の試合を観るのと、スタジアムに赴いて目の前で行われている試合を観る喜びとでは比較することさえ無意味だ。

つばきファクトリーさん、田村芽実さん、横浜F・マリノスを支えに生きる日常が早く戻ってきてほしい。私は強く願っている。でも一方で、もし政府が5月6日をもって緊急事態は終了したと宣言し世の中が経済活動の完全再開に急旋回したら(それはなさそうだが)それはそれで味気ないという思いもある。たしかに私の給料は減る。ボーナスもほとんどもらえなさそうだ。それは痛い。ただ労働者生活は長い。下手すりゃ死ぬまで働かないといけない。たまにはクッションの時期がないと息が詰まる。このまま会社の業績が悪化していけば、そんな呑気なことも言っていられなくなるかもしれない。状況によって私は失業する可能性もある。そうなったら、そうなったときに考える。それでいい。一寸先は誰にも分からない。失敗小僧さんもそう言っていた。

それに、世の中がいい方向に変わるきっかけになるのではないかと期待している。たとえばさ。在宅勤務が広く一般的になるとか。事務所の座席配置に社会的距離が考慮される(席と席を離すとか、パーティションを付けるとか)ようになるとか。人々が電車に乗るとき特定の車両に密集するのではなく分散するようになるとか。飲食店やサテンで空いているのになぜかすぐ隣のテーブルに座ってくる奴がいなくなるとか。まあ、喉元過ぎれば熱さを忘れるで、何事もなかったかのように元に戻るかもしれないけど。もちろん人々がそこまで気にするようになった社会では、コンサートやサッカーの試合で歓声をあげて飛沫を飛ばすのはいいのかとか、アイドルさんをたくさんの人々に接触させる握手会はいいのかといった問いからも逃げられないんだけどね。

今だからこそ出来ることをやろう的な薄ら寒い意識高い系の言説から、私はソーシャル・ディスタンスを取りたい。とはいえ私も今こそやるべきだと思って実践していることはいくつかある。たとえば、感染症に関する本を読むこと。何年も積ん読していたカミュさんの『ペスト』を読む気になったのはCOVID-19のおかげだ。いま読まなきゃ一生読むことはなかっただろう。同書を皮切りに、三冊を読んで、いま四冊目。今のところ手元にあるのはこの五冊。四冊中で一番のオススメは『感染地図』。まだ読んでいる途中だけど言い切れる。

  • カミュ、『ペスト』★★★★☆(現代のCOVID-19をめぐる人々の反応をそのまま記したかのような場面もある。人間の普遍的な感情を描いたクラシックだと感じさせる)
  • 村上陽一郎、『ペスト大流行』★★☆☆☆(さまざまな文献のコピー&ペースト集。大学の授業を聞いているような感覚。読ませる文章ではない。いかにも岩波新書)
  • 小松左京、『復活の日』★★☆☆☆(私の好みではなかった)
  • スティーヴン・ジョンソン、『感染地図』(読んでいる途中)★★★★★(これぞプロの文章。『ペスト大流行』のような日本国内でしか通用しなさそうな拙い文と比べ構成力にプロとアマの差がある)
  • Richard Preston, “The Hot Zone”(未読だけど期待している)

(★の数はオススメ度)

近所に詳しくなること。今の家に引っ越して約三年経つんだけど、これまではほとんど家と駅の往復だった。徒歩圏内に自然のあるちょっとした散歩コースがあるのを初めて知った。隣駅まで歩くと知らなかったサテンとかスーパーマーケットがいくつもある。遠出の機会を減らす代わりに、徒歩の行動範囲を広げる。

太陽の光を浴びること。身体にビタミンDを生成させる。家にこもりがちなこの時期は特に気を付ける必要がある。
また最近ビタミンDが心や神経のバランスを整える脳内物質セロトニンを調節することがわかり、うつなどのメンタル症状に効果的であることがわかってきました。例えば北欧諸国は自殺率が比較的高いとされていますが、日照時間の短さからくるビタミンD合成不足が一因ではないかとされています。(ビタミンDの効用 - 新百合ヶ丘総合病院
私は真冬のドイツに一ヶ月半ほど滞在したことがあるんだけど、終盤はだいぶ精神的に参ってしまった。いま思えば日照が少ないことによるビタミンDの不足が一因だったのではないか。COVID-19が問題になってからの生活で気分が落ち込んでいる人は楽しみにしていた何かが中止になったとか色々あるかもしれないけどもっと生理的な原因として日光を浴びる機会の減少でビタミンDが不足している可能性がある。日が出ている時間帯は一定時間、外に出よう。それか窓を開けて日差しを肌に浴びよう。この肌に浴びるというのが大切らしくて、長袖長ズボンでは効果が低いようだ。

さいきん読んだ山田鷹夫さんの本(『無人島、不食130日』)に、人間は太陽から力をもらって生きていると書いてあった。だから人間は太陽を凝視することで生命力を得ることが出来、食べなくても生きられるというのが筆者の主張。そこまで行くとさすがにぶっ飛んでいる。私はその境地には至れないと思うけど、人間が太陽に生かされているというのは一つの真実な気がしているんだよね。最近の私は信仰に近い気持ちで太陽に感謝し、日光を身体に取り込んでいる。

そういえば、マスク。いいのを見つけた。編み目が荒いが飛沫の拡散防止には十分。呼吸がしやすい。生地の肌触りがよく、着用のストレスがない。そしてメガネが曇らない。とても気に入った。諏訪繭マスク 普通サイズ シルクふぁみりぃ

2020年2月28日金曜日

椿 (2020-02-22)

50メートルで200円くらい。マツモト・キヨシさんでいちばん安かったデンタル・フロス。同社のプライヴェット・ブランド製品。2月17日(月)に使っていたら歯の詰め物が取れた。右上の奥歯。出張中だったので歯医者さんに行けなかった。本当は治療の予約を今日に入れたかったが、先生が学会に参加のため不在らしく、来週の土曜日まで持ち越すことになった。右側で噛むと食べ物が詰まって痛む。我慢を強いられている。なるべく左だけで噛むようにしている。食べ物を完全に味わいきれていない感覚。私がふだん使っているJ&J リーチ デンタルフロス / ワックス・ノンフレーバー / 55ヤード(50.3m)でも同じことは起きていた可能性はある。しかし私はマツモト・キヨシさんサイドにも落ち度があった気がしてならない。糸が微妙に太く、滑りが悪い。余計な力がかかったのではないか。いずれにせよ安物買いの銭失いだった。50メートルのうち49メートル以上を残したまま出張先のホテルで捨てた。二度と買わない。

歯が気になる上に労働もインテンシティが高く、くたびれる一週間だった。昨日は仕事の後、外国人三名に仙台駅付近を案内した。ずんだスムージーを飲ませ、焼き鳥を食わせた。そういえばそのうちの一人のアメリカ人とこんな会話をした:
―マスクはしないの?
―しないね。マスクでcoronavirusは予防できないから(Twitterで聞きかじった情報)。
―そうなんだよね。俺の兄弟がCenters for Disease Control(アメリカ疾病予防管理センター)に勤めているんだけどさ。マスクではcoronavirusを防げないというのを彼から聞いているから俺もしない。手洗いが有効だそうだ。
日本のストリートではマスクを着けている人が多い。もしcoronavirusの予防に少しでもなると思っているのであれば、おまじないの世界と言っていいだろう。ただし感染した本人が付ければヴァイラスの拡散防止にはなるらしいし(そもそもストリートに出てくるなという話だが)、ちょうど花粉症の時期でもあるので、マスクの着用がまったく無意味というわけではない。

今日は会場が新宿で、当選していたのも夜公演だけ。早くから移動する必要はない。少しゆっくりしたかったので、ちょうどよかった。DAZNの見逃し配信で湘南ベルマーレさん対浦和レッドダイヤモンズさんを観てから家を出る。水谷竹秀さんの『日本を捨てた男たち』を読む。

12時58分、池袋の楊3号店。回鍋肉とご飯。
―花粉症ですか?
―ちょっとね。花粉症ですか?
―そうです。
―クスリ飲んでますか?
―飲んでます。
―ビタミンD3をたくさん摂ると、軽くなります。
―クスリは飲んでいない?
―飲んでないです。ビタミンだけ。
―いいこと聞いた。
―花粉症 ビタミンで調べてみて。
調べてみます、と会計のときにお店の人は言った。もっとも、私自身がグズグズしていたので説得力はなかったかもしれない。

13時32分、池袋フラミンゴ。コーヒー・フロート。

新宿ReNYには何度か来ているから最初に比べれば迷わなくなったが、相変わらず私には新宿駅付近の土地勘を得られない。まだ仙台駅付近の方が分かる。15時14分、小野瑞歩さんの日替わり写真とコレクション生写真2枚を購入完了。あとDVD MAGAZINE Vol. 10。どれも売り切れていなかった。昼公演が行われている最中だけあって待ち時間なしで買えた。

Hello! Projectはコンサートやイベントの参加者にマスクの着用を呼びかけている。無自覚の感染者もいる可能性を考慮すると、一律でマスクを付けさせるのは理にかなってはいるのかもしれない。私自身がcoronavirusに感染していないとはいえ、この状況でマスクを持参しないのはメンバーさんに対して不誠実。ポーズとしてでもマスクは着けたほうがいい。私の家にはマスクが無駄に80枚以上ある。二、三枚カバンに入れてきた。が、マスクを入れたままそのカバンを新宿駅西口中央地下1階(白色/右側)コイン・ロッカーに預けてしまった。今日の会場である新宿ReNY近くのセブン・イレブンに入ったところ普通に売っていたので買った。お一人様一点のみという制限はあった。花粉症ではある。今年はまだ薬を飲まずビタミンD3+K2で乗り切っている(鼻にスプレーは一日に一回くらい噴射する)が、ビタミンの量が足りないのか症状を抑えきれていない。今日はだいぶくしゃみが出る。喉のかゆみもある。だからマスクはあるに越したことはなかった。

16時7分、新宿アンダーグラウンドのリエ・コーヒー。季節のハーバル・ティー。何だったかは分からん。暖房が過剰。暑苦しい。鼻水が治まらない。

今日は17時半開場、18時開演。

17時15分、150番までお持ちの方はこの付近まで来るようにとエスタシオン係員。
17時26分、50番まで階段どうぞ。

オタクさんがたくさん集まる場所に来るのは久し振りな気がする。入場を待つ人々をまじまじと見ると、やはりキモい。我々オタクさんとアイドルさんでは生物的な階層が違いすぎる。同じ学校なら言葉を交わすことすら許されなかった。本来であれば交わる要素など一切ないはずのオタクさんとアイドルさんが、こうやってコンサートやイベントを通じてお互いを必要としているのは貨幣経済の妙である。アイドルさんが仮に我々を個々の人間としては哀れな負け犬だと思っていたとしても、お金を払って興行に足を運ぶ人たちとしての我々がいなければ彼女たちの活動は成り立たない。

若いカップル。ファックしていればいいのに、何でHello! Projectのコンサートに二人で来るんだろう。その辺の一般ピーポーのナオンがどうあがいたってセックス・アピールでつばきファクトリーさんとは張り合えないわけやんか。(勘違いをする人が多いけど、セックス・アピールという言葉は性的魅力という意味だよ。)彼女の自己評価は知らんけど。男は極上のナオンたちを見てしまった後でどうやって目の前のナオンに対して気持ちを高めるんだ。無理じゃないか? それともアレか、FANZAで準備運動をしてからアイドルさんの写真集でシコる(俺グラビアでは抜けないんですよという40代男性に対するある関西出身者による助言)的な感じで、アイドルさんを観た後に普通のナオンとファックするといっぱい出るんだろうか? 順序は逆だが…。

17時30分、100番まで呼び出し。

今チケットが手元にないから正確な番号は分からないんだけど、アップフロントさんが私に与えた整理番号は480前後だった。新宿ReNYの収容人数からするともうほとんど最後なんじゃないか。だからってわけじゃないんだけど、去年一昨年の2月22日のような高揚感はない。あ、分かっていると思うけど、2月22日というのはつばきファクトリーのメジャー・デビュー日。番号が悪い以上に、会場の規模が拡大するどころか縮小したという特別感のなさね。当然来ると思っていた東海のホーミーはそれを理由にファンクラブ先行の申し込みを見送ったんだって。次に会うのは5月23日(土)、このツアーの岐阜公演かな。予定通り開催されればの話だが。

17時35分、230番までの方どうぞ。
17時38分、330番。
17時40分、当日券ご希望の方いらっしゃらないですか?
17時41分、待機場所に人がまばら。この様子だと私の後ろはほとんどいなさそう。
17時42分、420番。
17時44分、460番。

10番毎に呼び出され一列に並んでいるにも拘わらず、私の後ろにいたオレンジ色のフード付きダウン・ジャケットをお召しになった50代半ばくらいのふくよかなハゲが徐々に私の真横に来た。気色悪いなと思っていたら案の定、どさくさに紛れて私を追い越した。いくつだよアンタ。何かもう、死んじゃえよ。チケットをもぎられ、600円を支払い、ミネラル・ウォーターを手にし、フロアへ。うわ、マジかよ。思わず声が出た。もう人が溢れつつあった。味噌汁を飲み終わった後の残りカスのような場所しか残っていなかった。選ぶ余地はほとんどなかった。入ってすぐの段を上がったところに立つ。しまった。前の紳士が包茎チンポ(いわゆるドリチン)のような形状をしたニット帽をお召しになっている。だがもう動くのは難しい。ライブハウス(和製英語)で初手の失敗は覆せない。

だけど会場に救われた。見やすいね新宿ReNYは。包茎チンポ(いわゆるドリチン)のような形状をしたニット帽で視界は塞がれはしたものの、基本的にはよく見えた。メンバーさんのほぼ全身が見えた。一番後ろでここまで見える会場はそうないだろう。二つ目の衣装で小野瑞歩さんが左奥に下がって水を飲むときに屈んだ際のスカートの中も見えた。もちろん、見えていいものしか穿いていない。かといってそう簡単に見られるものでもなく、稀少性は高い。ご利益があるとされている。ありがたや~、ありがたや~。公演を通して包茎チンポ紳士が脱帽していればもっとよく見えたのは間違いない。だがもし彼が包茎チンポでなかったとしたら私がいた空間は先に誰かが埋めていたかもしれない。

ただ、場所が悪いだとかチンポジ(包茎チンポニット帽を被った紳士の位置取り)がどうのとかは開演すぐにどうでもよくなった。つばきファクトリーさんが私の雑念を吹き飛ばしてくれた。彼女たちがステージに現れた次の瞬間から眼を奪われた。最初の衣装がとてつもなく素晴らしい。ハレの日に相応しい。着物をアレンジしたようなデザイン。キレイなだけじゃなく肌も見せるところは見せている。絶妙にツボを押さえている。『エイヤサ!ブラザー』を思い出したけど、こっちの方が手が込んでいる。マブすぎるナオンたちが身に着けることによる相乗効果。眼が喜ぶ。瞬く間にコンサートの世界に連れて行かれる。衣装ってのはこうじゃないと。Hello! Projectもこれだけの仕事が出来るのかと驚いた。だって前にも書いたように最新シングルの衣装がクソだせえからさ。雲泥の差よ。つばきファクトリーさんも嬉しそうで通常に比べ40%増し(当社比)で生き生きとしていた。初めて人前で見せることの興奮、新鮮味も寄与していただろう。一つ目の衣装をもっと長く観ていたかったが、二つ目の衣装もいかにもアイドルさんっぽくそれはそれでよかった。衣装替えを終えてステージに現れた時点では小野瑞歩さんはお腹はほとんど露出されていないのだが(メンバーさんによって着替えた段階でのお腹の出方に差がある)、動くにつれ生地がずれて肌が露わになってくる。趣がある。いとおかし。どのメンバーさんもおへその国からこんにちはしてくださらないので、そこだけは残念。

私の場所的に山岸理子さんがよく目に付いたんだけど、彼女の表情やヴァイブスがとにかくセダクティヴで。もう、セックスでしょ。メンバーさん全員から溢れんばかりのフェロモン。分泌されまくっている女性ホルモン。新沼希空さんがお好き博多のお菓子は通りもん。もし彼女たちが性の悦びを覚えているのだとしてもこのような形(や写真集等)で還元してくれるのであれば私は歓迎する。性の悦びが関係しているのかどうかは私には知る由がないが(小野田紗栞さんは別として)、つばきファクトリーが魅力を増し続けているのは間違いない。浅倉樹々さんが復帰した9人のつばきファクトリー。旬の中の旬。何使ったって止めらんねえ。誰がやったって超えらんねえ。それぞれの個性。どこを見ても完璧。欠点がない。いくら観ても飽きない。ずっと観ていたい。この集団はまだ私を夢中にさせ続けている。私は一時期に比べるとHello! Projectにはやや醒めつつあるが、つばきファクトリーだけは例外である。

トークのセグメント。デビューしてからの3年間で恥ずかしかったこと的なお題。
・昔ブログでやらかしちゃって…と小野田紗栞さんが言い始めて、場内がしばらくざわざわしていたのが可笑しかった。もちろん我々の頭に浮かんだ好きってなった♪の件をぶっ込むわけがなく、ささくれが出来たときにその写真をブログに載せたという話だった。見た人? 手はそんなに挙がらず。掘らないでねと懇願する小野田さん。(いま検索してみたら2016年9月6日の記事だった。)
・リリース・パーティでメンバーさんが一斉に水を飲みに行ってステージ上に岸本ゆめのさんと二人だけになったときの話をする小片リサさん。場をつなぐために二人で話したが、岸本ゆめのさんがことわざを言ったのに対抗し、私の方が頭いいとマウントを取った。
・昔のブログでは小学生の頃のプリクラのように写真にフレームをつけていた。私なんて餃子を切り取ってフレームに使っていた、と岸本ゆめのさん。
・谷本安美さんはブログ冒頭でやっていた挨拶が今となっては恥ずかしい。消したい。浅倉樹々さんは最初に魔法使いのキキですと書いていたが、皆さんに告知をせずやめた。キャラじゃないなって。(ヘッズからエーイング。)飛べません。

就活センセーション』のイントロで、小野瑞歩さんが一対一で笑顔を交換してださった。この椿ツアーにおいて『就活センセーション』がみずほchanと私のテーマ・ソングになった瞬間である。みずほchanと言えばさ。コンサート中の小野さんへの掛け声はみずほ!なんだけど、今日は咄嗟に出て来ず、お…と言い掛けてしまった。私は最近(1月20日からなるべく毎日。と言いつつ毎日は出来ていない)小野瑞歩さんのブログにコメントを投稿するようにしているんだけど、そこで小野さんのことをおみずchanと書いているのね(最近はみずほchanに変えつつあるけど)。おみずchanとして認識することが続いていたから、お…になってしまった。コンサート中の掛け声は瞬発的な反応が求められる。筋力トレーニングと一緒で、少し日にちを置くだけで感覚は鈍ってしまう。

立て続けに曲をやった後のみずほchanの表情がHIIT (high intensity interval training)をやっている最中の私のようだった。出せる力をすべて出し切っている爽快感が伝わってきた。

2019年11月末にドロップされたBEYOOOOONDSさんの1stアルバム“BEYOOOOOND1St”の衝撃によって、私の中で同集団以外のHello! Projectの音楽は影が薄くなっていた。しかし今日のコンサートでつばきファクトリーも名曲揃いであることを再認識した。私の記憶がたしかなら(違っていたらごめん)セットリストはカヴァーなし。オリジナル曲だけで構成されていた。初めてだよね。たぶん。あ、いや、デビュー一周年のコンサートがオリジナル曲だけだったね。でもね。同じオリジナル曲だけのコンサートでも二年前とはクオリティが段違いだったよ。あのときに比べて曲の充実度といったら。新曲『意識高い乙女のジレンマ』『抱きしめられてみたい』は共に間違いのないドープ・チューン。セットリストには間違いが一つもなかった。『ハッピークラッカー』もなかった。

衣装、セットリスト、メンバーさんの魅力、すべてにおいて申し分なし。これまでのつばきファクトリーのよさをすべて凝縮した、集大成のようなコンサートだった。正直なところ整理番号がアレだったので多くは期待していなかった。大事な記念日のコンサートを観させてもらえるだけでありがたい、参加することに意義があるというオリンピックの精神を持っていた。しかし蓋を開けてみると一本満足バーを百本食べても得ることが出来ないほどの満足感を得た。

新宿ReNYは開場前からクロークを受け付けていた。にもかかわらず大多数の観客が足元に荷物を置いていた。私がフロアに入った時点でほとんど足の踏み場はなかった要因は客入りの多さだけではなかった。みんながコイン・ロッカーなり会場のクロークなりに荷物を預けていればだいぶ余裕を持って観られたはず。もうさあ、カバンを床に置くという風習はいい加減やめさせろや。ジャンプ禁止の前にまずそっちだろ。人が一人立てるくらいの床面積を荷物で占有している奴らも普通にいるしさ。でも彼らは何かに違反しているわけではないんだよね。むしろエスタシオン係員は荷物を下に置けって積極的に呼びかけていたからね。係員がそう言うのならこれでいいんだって思うよね。わざわざお金を払って預けようとはならないよね。オタクさんはランダムのL版写真1枚に500円を平気で払うのに普通の出費には異常にケチだから。あとちょっと不満だったのが女限に余裕があったこと。後ろの方はスカスカだったよ。狭めてほしかった。女がみんな女性限定エリアに行くわけでもないし。

アンコールはつばき! 三周年! だった。最後のコメントで秋山眞緒さんは今日で皆さんのことが大好きになりましたとおっしゃっていた。私のような汚れた大人はつい言葉尻をとらえて昨日まではどうだったんだと勘繰りたくなるが、彼女の言葉に他意はないであろう。

小野瑞歩さんは、この先も4周年、〇周年、〇〇〇、〇〇〇(おううえんという感じでぼやかすような言い方)…とずっと皆さんとこの日を祝っていきたいという旨のことをおっしゃった。素敵な言葉だと私は思った。しかしアイドルさんは永遠ではない。いつ終わっても不思議ではない。流れ星のように眩い光を放ち、いつの間にか彼女たちは儚く消えていく。その日が五年後なのか、一年後なのか、はたまた明日なのか、それはそのときにならないと分からない。明日ってのはさすがにないと思うが、何も保証されていない。

今日のセットリストで私が唯一ピンとこない曲が『ハナモヨウ』だが(どういうわけかずっと好きになれない)、どうやら曲が始まったときの我々のどよめきが凄かったらしく、皆さん『ハナモヨウ』お好き? と山岸理子さんはオーディエンスに聞いていた。(私の周りでは最後の『帰ろう! レッツゴー』が始まったときにはしゃいでいる人たちが多かった。)

終演後のお見送り会に参加せずにお帰りになる紳士はそれなりにいた。おそらく15-20人前後いたんじゃないかな。Coronavirus前に全員握手を回避する紳士はこんなにいなかったと思う。握手に比べて濃厚接触度が低い(というか語義通りの接触ですらない)のでそんなのを待つよりは早く帰るという判断をしているのだろう。エスタシオン係員から手にアルコール消毒液の噴射を受ける。2メートルくらい離れたところに一列に並んだつばきファクトリーさん。私は扉のすぐ近くにいたので二番目だった。バースデー・イベントのお見送りのときと同じスピード感(つまり一瞬)だが相手が9人なんで、言葉をかけるのも難しい。マスクを着用し手を振る美女たちの前を、マスクを着用してペコペコしながら通り過ぎるというシュールな時間。二人目の小野瑞歩さんから、指を差しながらのあ!!!をいただいた。マスクをしていてなおかつ普通の服装(黒いTシャツ)姿でも瞬時に認識してもらえたのが私は単純に嬉しかった。

コンサートの余韻に浸りながら新宿駅に向かって歩いていたら前に某有名オタクさんがいた。たぶんお連れの紳士だと思うんだけど、1メートル圏内に入ると臭いがツンと来た。あのはじめの肩出しの衣装! アレ見てまたコンサート行きたいと思いましたネ! と彼は異臭を放ちながら興奮気味にまくし立てた。コレが新宿スタイル。

Eldar Djangirovさんの新譜(“Rhapsodize”)を聴きながら帰途につく。つばきファクトリー ライブツアー2020春 椿、非常に楽しかった。最高だった。つばきファクトリーさんが横浜F・マリノスと並んで世界で最もイルな集団であると確信した。明日は個別握手会が中止になったので明治安田生命J1リーグの開幕戦、横浜F・マリノス対ガンバ大阪さんを観に日産スタジアムに行く。楽しみだ。三連休の初日がつばきファクトリーさん、二日目が横浜F・マリノス、三日目が予定なし。至福。

これを書いている時点では、私が次に入る予定だった3月7日(土)の柏公演の中止が決まっている。3月15日(日)の横浜公演以降は実施してほしい。仮にやむを得ず中止したとしても、必ず振り替え公演を設けてほしい。なぜならつばきファクトリーが最高だから。椿ツアーが最高だから。

2020年2月25日火曜日

ウエスト・サイド・ストーリー (2020-02-15)

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』にヒロイン役で出演するのがどれほど凄いことなのか、私は分かっていない。でも去年のバースデー・ライブ(コンサートのことをライブというのは和製英語)でご出演決定を我々に知らせる田村芽実さんの喜びようと、まさか受かるとは思っていなかったという口ぶりからして、ご本人にとって、そして客観的にも相当ビッグな仕事なのだろう。ファンクラブに入っている身として先行受付に申し込まない手はなかった。15,000円のミュージカルは高いから一公演だけ申し込み、6,500円のコンサート(つばきファクトリー)は24公演に申し込む(当選したのは18公演)という、俄かに理解しがたい経済観念。私は普段の消費活動でも同じことをしている。高い商品の購入には慎重で、単発で見るとそこまで高くはない買い物を繰り返す。結局、累計すると大きな金額になる。毎月のカード請求額が異常な金額になるカラクリ。

ここ一、二週間は目覚めが悪かった。朝になっても疲れが取り切れていない。中途覚醒はしていないし、Fitbitの睡眠スコアも安定して80点前後。日中にしんどくなるわけでも、眠くなるわけでもない。深刻さはない。でもどこかスッキリしない日が続いていた。こうなるのを見越していたわけではないが、今日は朝一で整体の予約を入れていた。先生の施術が的確だったのだろう、昼過ぎには元気がみなぎるのを実感した。パンダさんパワーMAXとはこのことである。

Weston A. Priceさんの“Nutrition and Physical Degeneration”という本がとても面白い。未開部族が白人文明の食事(小麦粉、甘いもの、缶詰等)を取り入れることで顔と歯列弓が狭まる。歯が収まらなくなる。虫歯が大幅に増える。口呼吸になる。身体が弱くなる。というのを筆者が実際に数々の部族や伝統的な食生活を続けている地域を訪れて実地調査で示していく。これらの変化はわずか一世代で起きる。古来からの食事を続ける親と、白人文明の食事が主の子供で顔の形と歯並びがまったく異なる。素晴らしい発育や歯の健康、丈夫な身体を支える伝統的な食事の例は、
・ライ麦パンとチーズ。肉を週に一度
・魚の肉、脂、卵。野菜を数種類。たまにクランベリー
・動物の血、肉
といった具合だ。(ちょっとうる覚え。気になる人は原典にあたってほしい。ネット上で無料で見ることも出来る。)白人の食事を導入して虫歯に悩まされるようになったある部族では、歯の痛みが自殺の唯一の原因になっているという(彼らの社会には歯医者が存在しない)。私はこの本をどこか遠く離れた地域に住む人たちの話としてではなく、自分の問題として読んでいる。私は子供の頃に歯の矯正をしたし、口で呼吸をすることが多かったからだ。そしてたしかに、糖質を制限し始めてから明らかに虫歯は減った。出版されたのは1939年。80年の経過を感じさせない。こういう本のことをクラシックと呼ぶのだろう。(『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』という題で2010年に日本語版がドロップされているようだ。)

健康や栄養に関する言説は混沌を極めている。考えられるほぼすべての説が入り乱れており、それぞれの論者が自分こそは正しいと主張している。しかし、小麦粉についていい話を聞いたことがない。この時期に多くの人々を苦しませる花粉症をもたらす原因の一つとも言われている(たとえば宮澤賢史、『医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」』)。花粉症に罹っている人たちが真っ先にするべきことは糖質の過剰摂取をやめること、特に小麦を避けることである。(小麦がここまで敵視されている最大の理由は20世紀後半の品種改良。その影響を受けていないスペルト小麦はよいとされている。)今日の昼食はそれを踏まえた上で、池袋の楊3号店で汁なし担担麺を注文した(いや、めっちゃ小麦粉ですやん)。おいしい。3号店でいつも腕をふるっている料理人さんは汁なし担担麺を作るのがあまり上手ではなかったが、ある時期から技量が向上し、2号店と遜色なくなった。

13時半過ぎに市場前駅。IHI STAGE AROUND TOKYOの場所を把握。開場が17時、開演が17時半なのにこの時間に来たのには二つの理由がある。一つは万が一の事態(電車が止まる等)に備えたかった。もう一つが、何時間か労働をする必要があった。MIFA Football Parkというフットサル場に併設されたサテン。アイス・コーヒー。会社のラップトップを開く。カウンターの席。椅子が低すぎる。フットサルをやっている子供たちの母親たちとおぼしき集団が後ろの長机でワイワイやっている。うざめ。そういう場所なのでしょうがない。Tame Impalaさんの“The Slow Rush”を聴く。非常にドープなアルバム。労働を完了させてサテンを出る。しばらく会場付近をウロウロする。空間がだだっ広い。建物が密集していない。余裕がある。この近くに住んでいればジムに入らなくても好きなだけジョギングが出来る(ジョギングは筋肉とテストステロンを低下させるので私は滅多にやらないが)。一口に東京といっても広いんだな。

開場予定時間は17時だったが、16時45分にロビーまで入れるようになった。中の掲示で公演の長さを知る。
上映時間
1幕:1時間30分
休憩:20分
2幕:55分
約2時間45分
ロビーでプロテイン・バー(Rise Bar, The Simplest Protein Bar, Almond Honey)を食べる。私はiHerbでプロテイン・バーを色々と比較したが、原材料に関してはコレが圧倒的に優れている。アーモンド、はちみつ、ホエイ・プロテイン・アイソレート。何と三つだけ。お腹も空いていないし、夕食はコレだけでいいかなと。ロビーの座席表。自分のチケットと照合。田村芽実ファンクラブ事務局さんがとてもよい席を恵んでくれたことを知る。4列目の中央付近(最後部が32列)。すぐ後ろが通路。実際に座ってみるとそれはもう明らかに良席だった。これはやばいなと。これ以上前だと近すぎて却ってステージが観づらそうという絶妙な塩梅。整体によってパンダさんパワーはMAXだし、席はステージに近いしで、開演が楽しみで仕方なくなった。このワクワクする感覚は横浜F・マリノスの試合前にもあるのだが、Hello! Projectで味わうことは減ってきている。これからどんなスペクタクルが展開されるんだろう、という純粋な期待。客席が回るってどういうこと? いや、言葉の意味としては分かるんだけど。実際どういう感じなのか、想像がつかない。

開演してすぐに私は圧倒された。体験したことのない没入感。我々が観ている場所も演出の一つに組み込まれている感覚。冒頭からガンガン回る客席。(一つ一つの席が回るんじゃなくて、全体が時計回りと反時計回りに動く。)自分で顔を動かさなくても、視点が勝手に物語の中心に移動するんだよね。こんな会場があるんだな。IHI STAGE AROUND TOKYO。一度、体験してみる価値があるよ。観る前はチケット代が高いと思っていたが、値段に納得するのに時間はかからなかった。まずこの会場と席の時点で数千円で済むはずがないし、ミュージカルそのものも相当な労力をかけて作り上げられているのが伝わってきた。私はミュージカルのことはよく分からないが、おそらくこういうのが一流のミュージカルなんだろうなと思った。こういう経験を出来るのは大きい。要所で繰り広げられるダイナミックなダンスは動きが揃っていて、鳥や魚の集団移動を見ているようだった。衣装も手が込んでいた。移民役の男性たちが着ているデニム上下がカッコよかった。自分も上下でデニムを着たいと思った。

田村芽実さんはヒロインだったので自ずと出番は多く、あえて注目する必要はなかった。物語に身を任せていれば田村さんのことを追うことが出来た。今回のミュージカルで私がちょっとびっくりしたのが、キスの頻繁さ。そんなにキスする必要があるのかというくらいにフィアンセ役の村上虹郎さんとキスをなさっていた。村上さんの欲望でどさくさに紛れて台本に書いてある以上にキスをしているんじゃないかと訝しがりたくなるほどだった。桐村里紗さんの『日本人はなぜ臭いと言われるのか』によると日本人が一般的に自分の口臭に無頓着なのは欧米人のように日常的にキスやハグをしないからと考えられている。舞台役者さんたちはそうはいかない。あれだけキスの機会が多いと口臭の予防には相当に念を入れざるを得ないだろう。個人のエチケットを超えてもはや職業的な義務の領域。なお、同書では口腔ケアに有効な栄養素として
・ビタミンC(炎症→歯周病の元になる活性酸素を抑える)
・マグネシウム(体内のカルシウムのバランスを調整し歯石の沈着や歯槽骨の脆弱化を防ぐ)
・フィトケミカル(抗酸化、抗菌、消臭)
・食物酵素(口臭元のタンパク質分解)
が挙げられている。

私は物語にはそれほど引き込まれなかった。開演前に横の若い女性が読んでいた冊子(おそらく公式パンフレット)に田村さんのインタビューがあった。横目でちょっと覗いたら(覗くな)マリアの悲しみを歌で表現したい的な言葉が載っていた。私がHubert Selby Jr.さんやDonald Goinesさんを愛読して麻痺しているのかもしれないけど、そんなに悲しい話には思えなかったんだよな。主役の二人は恋愛を楽しんでいるわけで、悲劇って言ってもさ。知れてるじゃん。それに、たしかに人は死ぬんだけど、話としてはキレイで、ドロドロしていなかった。麻薬が出てこないしさ。もちろんストリートの現実を描くのは主眼ではなく、民族の壁を超えた純愛が物語のテーマなんだろう。だからこそ広く民衆に支持される有名なミュージカルになったんだろう。

田村芽実さんがご出演されていなければ私はブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』を観ることはなかったし、IHI STAGE AROUND TOKYOに足を運ぶことも一生なかったかもしれない。田村さんが私をこのミュージカルに、この会場に導いてくれた。今日の観劇は私が今後ミュージカルを観る上での一つの尺度になるだろう。そんな貴重な経験をさせてくれた田村さん。私をココに連れてきてくれてありがとう。

2020年1月24日金曜日

つばきファクトリー 6thシングル発売記念 ミニライブ&握手会イベント (2020-01-14)

三連休明けだろうが何だろうが、休暇を取るんだよ。12月12日(木)にアルビ兄さんが予告していた通り、シングル発売週につばきファクトリーさんがクラブ・チッタに戻ってきた。リリース・パーティの会場としてこれ以上の箱は望むべくもない。ショッピング・モールのイベント広場よりも音響がよくステージが高いのは言うまでもない。通常のコンサートをやる場所としてもライブハウス(和製英語)としては上位に属する。それにリリース・パーティはコンサートに比べて混雑しないので他の中年男性たちと密着しなくてよい。ストレスが少ない。つまり一公演6,500円くらいするライブハウス(和製英語)・ツアーよりも1,100円で入れる今日のパーティの方が(時間はもちろん短いが)鑑賞環境としては上なのだ。私はつばきファクトリーさんの春ツアーに18公演入るのだが、クラブ・チッタと張り合えるクオリティを備えた会場は新宿ReNYと岐阜のClub-Gくらいしかない。(と書いていて思ったけど何でツアーのコンサートをクラブ・チッタでやってくれないんだ?)

私が大学生の頃に聴いていたAFN(米軍関係者向けのAM放送)で、いつも同じ時間に同じ場所を通るとテロリストに狙われやすいから気を付けろという注意喚起が流れていたのを覚えている。川崎でつばきファクトリーさんのリリース・パーティがある日の私はまさにそれに当てはまる。行動パターンが固定化している。一日のスケジュールがほぼ同じだし、横浜まではいつも同じ電車に乗っている。

そう。まずはハングリー・タイガー。横浜モアーズ店。開店時間の11時1分に整理番号を発券。20番。11時34分、ダブル・ハンバーグ・ステーキ。11時53分、ホット・コーヒー。12時5分、会計。2,270円(平日は土日より数百円安い)。横浜駅から東海道線。プラットフォームで20分くらい待たされた。人身事故があったとかで。川崎駅。私と同じ電車に乗っていたのか、おまいつの中年男性二人組がすぐ前を歩いている。クラブ・チッタ。今日はコンパクト・ディスクを予約する必要がない。発売日の前日。いわゆるフラゲ日。昔から業界の慣習で、実物をゲトれるようになる。12時59分、列に並ぶ。穴の開いた箱に手を入れて、くじ引きのような感じで自分で参加券を取るんだけど、前にいたバーコード頭の紳士の取り方が乱暴で(わざと多く取ってその中からいい番号を選ぼうとしているような感じもした。それは私の憶測だが、いずれにしても動きが不審だった)、箱が壊れるんで…と売り場の青年に露骨にイヤがられていた。13時12分、何やら買い出しのビニール袋を手に下げたアルビ兄さんがクラブ・チッタに入る。ルイ・ヴィトンの財布、NIKEのhoodie(グレー)、NIKEのロング・パンツ(黒)、NIKEのスニーカーといういつもの、オラつき気味な地方の男性を体現したスタイリング。13時17分、私がコンパクト・ディスクを購入完了。ガッカリする番号。一部が272番、二部が483番。顔をしかめる。が、深追いはしない。列には並び直さない。そういえば前に並んでいた50代くらいの紳士が高校のときの担任の先生に似ていた。

13時27分、星乃珈琲店駅前店でウインナー珈琲。Jarett Kobekさんの“The Future Won't Be Long”を読む。面白いが、同じ著者の“I Hate the Internet”の方が私は好きだ。“I Hate the Internet”は小説ではあるが物語はおまけ。補足説明のような形で展開される実在のさまざまな人物、組織、大衆への辛辣な論評がメイン・ディッシュ。書きたいことを好きに書く喜びが伝わってくる。こういう文章を自分も書いてみたい。そう思える稀有な本。Slum Villageさんを聴きながらこの本を読むと、私の文化的な洗練度合いを追体験することが出来る。『くたばれインターネット』という題で日本語訳されている。2,860円とちょっと高いが、私のコアなファンは読んでみてほしい(翻訳の質は未確認)。支払いのときに私が出した10円玉の一つがピカピカだったので気になってめくったら令和元年と刻印されていた。店員さんが取る前に財布の中にある古い10円玉と替えようかという考えが頭をよぎった。製造が何年だろうと10円玉の価値には変わらないんだから…と思ってやめた(行動経済学の本を読んで身につけた合理的な思考)。少し後悔した。

① 16時集合、16時半開始

番号がどうであれ、この会場だと大体いつもこの辺になる。右端付近の6列目。コンパクト・ディスク売り場の列の長さからして前よりもヘッズの数は少ないんじゃないかと私は思っていたが、そうでもなかった。同じくらいかな。NIKEのhoodie(グレー)を脱いだアルビ兄さんが登場。黄色と緑のストライプ長袖Tシャツの上にBILLABONGの半袖Tシャツ(黒)、首には金色のネックレス。客入りの少なさにモチベーションの低下すら感じさせた前回に比べると士気は高め。今日から浅倉樹々が全部出ると言って我々を鼓舞する。ジャンプの禁止を強調。(ジャンプが禁止になってから)リリイベ初なんで、変な意味で注目されてますから、とアップフロントの社内事情を漏らす。残念ではございますが…、禁止禁止言うのは好きじゃないんですが…と現場の苦悩を匂わせた。盛り上がる準備できてますかと我々に発声を求めるいつもの流れ。半分くらいしか声が出てねえんだよなあ…とか、何か声が小さいなあ…的ないつもの煽りはなく、彼はあっさりと捌けた。(パーティ中、左の袖から腕を組んでフロアを睨みつけるアルビ兄さんの眼光があまりに鋭く、私はステージよりもそちらに注意を奪われることが何度もあった。)

ストリート(Twitter)の情報によると数日後のリリース・パーティで、優勝する準備は出来てますか!とアルビ兄さんがヘッズを煽ったらしい。横浜F・マリノスのファンである私はこう思ってしまう:我々は2019年の明治安田生命J1リーグで優勝しました。アルビレックス新潟さんはどうですか?(まだ2020年シーズン開幕前なので王者として調子に乗らせてください。)

薄々は気が付いているのだが、昔に比べて私の聴力は落ちている。いつからなのかは分からない。五年前なのか、十年前なのか。もっと前なのか。私は幼少期から生粋の音楽好きだったし、電車やバスに乗って片道一時間半くらいかけて学校や会社に行く生活を中学生の頃から続けている。通学・通勤ではずっとひとりきりイヤフォンで音楽聴いている。たしかどこかの国際機関がイヤフォンで音楽を聴くのは一日一時間以内にしろというガイドラインを出していた。私の場合、一時間で収まっている日はゼロに近い。その上、耳栓をつけるようになったとはいえ過剰なデシベル数に鼓膜が晒されるコンサートやイベントに年数十回も行っている。耳に負担の大きい生活。数年前に耳年齢を計測できるアプリをiPhoneにインストールはしたものの一度も開くことが出来ていない。結果を知るのが恐いからだ。

他人よりも早く耳が遠くなったとしても、私は仕方がないと思っている。この生活を自分の意思で選択したからだ。仮に大音量の環境にい続けるにいることが聴力に与えるリスクを私が知らなかったとしても、それは知らなかった私が悪い。大人なんだから。もちろん耳が悪くなるのをなるべく防ぐために自分で出来ることはしていきたい。コンサートでは必ず耳栓をつける。イヤフォンの音量を大きくしすぎない。あとは抗酸化サプリメントを摂取する(参考:難聴と栄養 ナカムラクリニック 院長ブログ)。もちろん私だけではない。今日クラブ・チッタにいた人たちがいくら鼓膜にダメージを受けてゆくゆく難聴に悩まされようとも、同情の余地は一切ない。二人を除いて。

最前に設置されたスピーカーのすぐ前。赤ん坊を連れた女性が二組。中年男性たちがヘッズの大半を占める中、赤ちゃんの存在はつばきファクトリーのメンバーさんにとって一服の清涼剤であったに違いない。母親とおぼしき女性二人は、連れてきた子供に耳栓をさせていたのだろうか? 耳栓のあるなしにかかわらずライブハウス(和製英語)のスピーカーの数メートル以内に三半規管が未発達な幼児を滞在させるのは賢明なのだろうか? 余計なお世話かもしれないが、私は心配になった。もし自分がいつか耳が悪くなって、それが幼児期に親の趣味でアイドルさんのリリース・パーティに何度も連れて来られたのが起因していると知ったら、やるせないだろう。自分の意思による行動の結果ならいざ知らず。

肌の露出が少ないドテラとマタニティ・ウェア風の衣装もあってつばきファクトリーさんの6thシングルに私はそれほど気乗りがしていなかったのだが、今日のパーティ一部で『意識高い乙女のジレンマ』が急にピンときた。あ、これいいじゃんって。小野田紗栞さん風に言えば好きってなった♪である。この瞬間に出くわすことは、音楽を聴く喜びの一つだ。(意識高い乙女もいいけど、つばきファクトリーさんには露出高い乙女になってほしいナ…。)『抱きしめられてみたい』はまだ何とも言えない。

トーク・セグメントは意識高い未成年の主張(最初、序盤でこのセグメントを始めかけていたが、もっと後にやることだと岸本ゆめのさんが気付いてメンバーさんに呼びかけ、取りやめていた)。浅倉樹々さんがご担当。皆さんは会社で上司への不満があっても言えないことがあると思うんです。そういったことを溜めこまず、週に一度、話し合う場を設けてはいかがでしょうかという、思いのほか真っ当な提案をなさっていた。自分の思いを真面目に伝えようとする浅倉さんが健気だった。

全員握手

山岸理子さん
小片リサさん
新沼希空さん
谷本安美さん
岸本ゆめのさん
浅倉樹々さん
小野瑞歩さん
小野田紗栞さん
秋山眞緒さん

―ツアーたくさん行きます、私は小野さんに言った。
―小野さんのお返事は、この野郎と聞こえた。

小野さん以外には無言で通したのだが、秋山眞緒さんが今年もよろしくお願いしますをエンドレスでリピートしているのを聞いて、そうか新年だからそれを言えばよかったのかと気が付いた。その発想が浮かばなかったのは、私にはもう新年がめでたいとか、新しい年だから心機一転するとか、抱負を立てるというような感覚がもうないからだ。労働生活という日常と、Hello! Projectや明治安田生命J1リーグといった非日常。その繰り返し。それ以上でも以下でもない。

無言で会釈するだけの気味の悪いオジサン(メンバーさんに言葉をかけたらそれはそれで気味が悪い)に対して、しっかり目を合わせてありがとうございますと言ってくださるつばきファクトリーのメンバーさん。プロフェッショナル。

この野郎と小野さんがおっしゃるわけがない。何だったんだ。クラブ・チッタを出たあたりで分かった。そうか、ことよろだ。

17時33分、観行雲で芝エビと卵の炒め物の定食とホッピー・セット(黒)。

② 18時半集合 19時開始

Hello! Projectの現場におけるジャンプの全面禁止は、会場の後方ならOKにどこかのタイミングで軟化させるべきなのではないだろうか? ライブハウス(和製英語)ならココから後ろはジャンプ可能だと床に線を引く(つばきファクトリーさんのリリース・パーティでアルビ兄さんが一時期やっていたように)。座席つきの会場では、一般席とジャンプ席でチケットを分けて販売し、売れ行き次第で境界線を設定する(たとえばFC先行で申し込みが半々なら後ろから半分をジャンプ可能にする)。私もかつてはジャンプを忌み嫌う側だったが(今でもさすがに最前で跳びまくる輩は頭がおかしいと思っている)、今のHello! Project現場の主流を占めるライブハウス(和製英語)で番号が悪いと跳ばずに楽しむのは難しい。後方の恵まれない位置にいる人々には、前方の人々にはない自由が与えられてもいいと思う。ジャンプ出来る後方席と出来ない前方席という区分けを作れば、従来の最前管理的な異常者たちが後方に流れる等の面白いことが起きるかもしれない。

『可能性のコンチェルト』では少しうずうずした。本来であればココではジャンプをしたいところなんだが…。フロア右端の後方からステージとの間にいるヘッズを眺めていると、2019年なら見えていたであろう光景が頭に映像化された。この曲のこのあたりで彼らは跳んでいたはずだ。

ハイライトは何と言っても最後にキックされた『帰ろう レッツゴー!』。私はこの曲に関しては初めて聴いたときから好きだった。浪漫ツアーで最後に歌われた曲だった。コンサートを締めくくるに相応しい、高揚感、一体感を作り出す曲。つばきファクトリーには欠かせない曲。リリース・パーティにはもったいないくらい。私は一部ではそこまで楽しいという感じではなかったが、二部ではスイッチが入って、『帰ろう レッツゴー!』で頂点に達した。

意識高い未成年の主張は小野瑞歩さんがご担当。(浅倉さんと小野さんの二人だったのは今年二十歳になるからだった。)
―大人の尊敬するところは落ち着いているところ。転ばないところ。つばきの年長組は落ち着いている。でも鬼ごっこをやってくれない。そんなに動きたくないの?(本気で拗ねている感じ。それを見て手を叩いて笑う新沼さん。)
―私もやってみたい。鬼ごっこは若い者たちがやることなので十代のうちにやってみたい、と浅倉さん。
―その言い方が既に若くないと突っ込む岸本ゆめのさん。
―もっとみんなが元気に楽しく過ごせたらいいという社会のヴィジョンを表明する小野さん。たとえばおはようのときにギャグを言ったり…でも私はそういうのが苦手で、苦手な人に強いるのもよくないと思うので、まおぴんとか、きしもんとか、関西人の方にやってもらって…。目標は自立する、皆勤賞(皆勤賞を目指すと小野さんは言ったようだが会計士を目指すと私には聞こえた。コレも加齢性難聴だろうか)、転ばない。(浅倉さんも同じテンプレートに沿って回答をしていたんだけど、詳しく覚えていない。)

全員握手

岸本ゆめのさん
小野瑞歩さん
新沼希空さん
小片リサさん
谷本安美さん
秋山眞緒さん
山岸理子さん
浅倉樹々さん
小野田紗栞さん

―さっきことよろって言ったの? 岸本さんを早めに切り上げて(ごめんなさい)私は小野さんに尋ねた。
―ことよろ、と小野さんは頷いた。
―この野郎って聞こえた、と言って私は次に流れた。
―この野郎じゃないよこの野郎!!! 新沼希空さんに対面しつつある私に向かってパンチのモーションをつけながら小野さんはおっしゃった。いい笑顔をいただいた。(私の後ろにいた紳士には悪いが、こうやって次の人との時間を犠牲にしてまで応対していただけると嬉しくなる。)

2020年1月14日(火)現在でも小野瑞歩さんは私の心を満たす。それを確認した。1月4日(土)にHello! Projectコンサートを3時間半(2公演)観ても得られなかった充足感がある。小野瑞歩さんがアイドルさんという道を進み続けるかぎり、私は最後までついていくつもりだ。

21時4分、帰りの電車。駆け込みで乗ってきた紳士の荒い息遣い。病的な口臭。本当に何かの病気だろう。

2020年1月8日水曜日

HELLO! PROJECT IS [     ] ~side A~/HELLO! PROJECT IS [     ] ~side B~ (2020-01-04)

8:20-
12月の頭からだったと思う。セブン・イレブンさんが富裕層向けのコーヒーを売り始めた。高級キリマンジャロ・ブレンド。レギュラー・サイズで110円。普通のは100円。安い豆と高級豆の区別すら怪しい私が100円と110円のコーヒーの違いなんて分かるはずもない。でも、つい110円のを頼んでしまう(貯金できない人にありがちな行動様式)。違い以前にそもそも普通のホット・コーヒーをセブン・イレブンで買ったことがない。アイス・コーヒーはしょっちゅう飲んでるんだけど。キリマンジャロ・ブレンド用であることを示す青いカップをレジで受け取ると、白いカップをコーヒー・メーカーに設置している先客たちが賤民に思えてくる。100円のやつしか買えねえのかよって。変な優越感が自分の中に生まれる。たぶんカップの色が違うのが大きい。こうやって社会は分断されていく。セブン・イレブンさんは差別の温床。

8:53-
G.T.HAWKINSのバックパックを背負った老紳士の強い加齢臭を鼻孔に吸い込みつつエスカレーターに乗る。池袋北口へ。岐阜からお越しになった、センズリをカウントしてTwitterで報告なさっている紳士と待ち合わせ。お会いする度にお太りになっている気がする。カフェ・ド・巴里。クリームの乗った紅茶。680円(モーニングと同価格だが、私は朝食を食べないので…)。親はインターネット経由で色んな人と会って危なくないのかと心配しているんですよ。いや、まずあなたが危ない人ですよ。コレと同じ巴里という字の風俗が名古屋にあるんですよ。どうなんですか、そこは? いや、行ったことはないんですが…。センズリ以外の方法で射精した場合は、数に入れるんですか? いや、それは入れません。センズリではないので。だから風俗に行っている暇なんかないですよ。2019年は何回くらいまで行ったんでしたっけ? 400回くらいですね。働いていたときと比べて回数は増えたんですか? そうですね。無職の方が時間があるんで。つばきが春ツアーで名古屋と岐阜に行くんでまたそのときにでも会いましょう、と言って別れる。

11:30-
譜久村聖さんの支持者であられる紳士と合流。彼は私に譜久村さんの最新写真集『多謝!』の贈与を申し出ていた。1月4日(今日)が二人ともHello! Projectコンサートを観に行く日だったので、お会いすることにしていた。蜀签(しょくせん)というリアルな店で豚の脳みそを食べようとしたが、ランチの貼り紙を出していない。まだ開店していないのか、それとも今日はランチをやっていないのか(後で通ったときもまだ貼り紙はなかったので、ランチをやっていなかったようだ)。一路香に入る。この店は最近の私のお気に入り。安くて、おいしくて、いつでもやっている。1月1日もランチ営業をしていた。値段も含めるとこの辺で昼食を摂るならココが一番と言っても過言ではない。私は麻婆豆腐と黒ホッピー。モーニング娘。さんの前作シングルのリリース時には20ボックスをご購入され20回チェキをお撮りになった紳士はシャオチャオロウ麺とハイボール。『多謝!』よりも前作の写真集がよかったとおっしゃるので題名を伺った。“One Day”だったかな…とのこと。後で検索してみたが、それは写真集ではなくBlu-rayの題名だった。

山手線で新宿、中央線で中野。鈴木愛理さんのアルバム“i”について。聴きました? 聴きました。どうでした? よかったですよ。オフィシャル…髭なんとかって人たちの曲が好きです。ただ曲はいいんですけどね、もっと肌を見せなくちゃダメですよ。それが鈴木愛理なので。そうか、元々℃-uteを観ていたんですよね。そうです。たしかに、愛理と言ったらくびれですもんね。そうなんですよ。

中野サンプラザ近くの喫煙所に、宮本佳林さんから横山玲奈さんへの推し変が100%完了した(にもかかわらず未だにTwitterに投稿するハロプロ・ソートでは宮本さんを一位ということにし続けている)紳士と、大学生時代は英語の政治ディベート大会に出場していたのにどこかで道を踏み外し今ではオタクとしての異常性を高く評価される佐々木莉佳子さん支持者の紳士がいた。年始のご挨拶もそこそこによこやん支持者の紳士がHello! Projectオフィシャル・ショップの袋を渡してきた。いいから見てください。中を見ると、井上玲音さんの新しい写真集『燿 ~You make me~』だった。いいから見てください、と繰り返す紳士によって強制的に見させられた。横から覗き込んでいた譜久村聖さんの支持者が、ツーケーが…などと言い出したので年上なのについタメ語で注意してしまった(普通の人も通る場所だったので)。

俺、グラビアじゃ抜けないんですよねと譜久村さんの支持者は大きな声でおっしゃった。私は少し距離をとって他人のふりをした。(『多謝!』という題名を見たら多射というしょうもない連想をせざるを得ないのが男の性だが、この言葉が正であれば、彼は同書で多射はなさっていないことになる。)FANZAで準備運動をしてから最後に写真集でフィニッシュしてください。そのうち写真だけで抜けるようになります、というのが横山玲奈さんを支持する(しかしセンズリに関しては横山さんだけでなく数多くのHello! Projectメンバーさんのお世話になっている)紳士の助言だった。グラビアでは抜けない40代男性曰く、横山玲奈さんの最新写真集『REINA is eighteen ~N to S~』にはツーケーが不足しているという。それに同意しつつも、バックからの写真は後日デジタル・ブックスで出るはず。後ろから撮っているのはメイキングDVDで確認済み。写真集の評価はデジブが出てから。と横山さんを愛する紳士は冷静にコメント。買います、と私は言って写真集を返した。

13:35-
会場内でグッズを買いたかったので、私はお先に失礼して入場列に向かった。井上玲音さんの書籍をゲトるつもりだったが、本日分は完売していた。日替わりの小野瑞歩さん500円に、Tシャツ3,000円。Tシャツは背面にHello! Projectメンバーさんたちの顔が並んでいるドープなデザイン。これをゲトらない手はない。製品は白地だが、スタッフさんはコレの黒バージョン(非売品)を着ていた。Hello! Projectのグッズ売り場では時折、これでもかと商品を次々に注文し買い終えるまでに異常な時間を要する紳士がたまにいる(会計額が数万円になるのはざら)。所要時間は大抵、体臭のきつさと比例する。今日、私の前にいた紳士からはプーンと臭いが漂っていた。お召しになっているキャップは薄汚れ、乾燥した汗が白く付着していた。中高年男性(特に老紳士)がキャップを被りがちなのは、そうすれば髪のセットだけでなく洗髪も一生免除されると認識しているからなのだろう。

14:30-
5列の左ブロック。思っていたよりもステージに近い。2020年のHello! Projectでは公演中のスマ・フォによる写真撮影が解禁された(ただし降臨中はダメとかの細かい条件がある。もっと意味不明なのが開演前の撮影禁止)。最前やその付近から撮影された写真をTwitterで何枚か観たが、画質が悪く(スマ・フォだからねえ)、まったく羨ましくならなかった。だから私は撮らないつもりだったが、この近さを目の当たりにすると、少しだけ撮ってみたいという欲求を抑えられなかった。数枚だけiPhoneに収めた。周りの人たちも基本的にはステージを自分の眼で観るのに集中していて、たまにトーク中とかにちょっとスマ・フォを取り出す感じだった。みんなが撮影に必死になってコンサートを観るのが疎かになるとか、撮影する手が邪魔になって観づらいとかはなかった。

羽賀朱音さんが道重さゆみさんに見えた。何か、お顔のつくりとか、自信に満ちた表情とか。

序盤、小野瑞歩さんがステージから左側に捌けるときに私の存在に気付いてくれたような気がするが、私の気のせいかもしれない。(そういやコンサートが久し振りすぎて、ペンライトを持ってくるのを忘れた。Tシャツ、耳栓、双眼鏡は持って来たんだけど。)

BEYOOOOONDSさんの“BEYOOOOOND1St”は名盤。2019年にリリースされたアルバムで(私が聴いた中で)最も優れたアルバムを一枚だけ挙げよと言われたら上原ひろみさんの“Spectrum”を選ぶが、三枚とか五枚とか選べるのであれば“BEYOOOOOND1St”は食い込んでくる。2019年にはHello! Projectから三作もまともなアルバムが出た。後の二作はこぶしファクトリーさんの『辛夷第二幕』と、カントリー・ガールズさんの『カントリー・ガールズ大全集①』(後者はアルバムというより音源集ではあるが)。2018年に遡るとつばきファクトリーさんの“First Bloom”。いずれも繰り返して聴くに値するクラシック。私はこのブログで橋本慎さん率いるHello! Projectの音楽制作陣をアルバムを作れないワックな人たちと評し続けてきたが、そろそろその評価を撤回しなくてはならない。

ただ事務所が配分する資源には集団によって大きな偏りがある。そのときに力を入れる集団とそれ以外の集団との落差が激しい。言うまでもなく今はBEYOOOOONDSさん。つばきファクトリーさんは2019年はシングル一枚だけだった。アップフロントさんはどういうつもりなんだ。BEYOOOOONDSさんに流れろということなのか。まあ単純に保有する全集団を十分にサポートするだけの人員がいないというのが内実なんだろうけど…。私はつばきファクトリーさんから流れるつもりはないけど、実際問題、今はBEYOOOOONDSさんの曲がいちばん面白い。『恋愛奉行』をやってくれたのは嬉しかった。同曲はアルバムの中で私が最も好きな曲の一つだ。毎日のように聴いているアルバムの、好きな曲を、目の前で、生でパフォームしてくれたという純粋な喜びがあった。

開演直後に流れる映像ではHELLO! PROJECT IS [     ]の空白部分に各メンバーさんが記入した内容が一人ずつ流れる。公演毎に一人を呼び出して、その回答を説明させているようだ。この公演では山岸理子さん。たしか [輝ける場所]だった。曰く、Hello! Projectに入る前は学校で図書委員になるような地味な子だった。Hello! Projectに入ってから変われた。ステージではいちばん輝ける。司会(アシスタント)の宮崎由加さんが、でもその衣装だいぶ目立つよね、と山岸さんがお召しになっていた衣装に触れる。(月光ツアーで最後にお召しになっていた、女性の上にBEAUTYと書かれた衣服。私は何度も見てきたので、正直またそれかよと思った。)でも、コレは私服で着ていてもおかしくない、せめて私服だけでも目立ちたい、と山岸さん。

ステージの近くで観るHello! Projectコンサート。たしかにコレだけたくさんの美女たちが入れ代わり立ち代わり素敵な笑顔で歌とダンスを披露してくださるのを観られるのは幸せで、眼福ではあるんだけど、どこか無心に楽しみ切れないというか、煮え切らない部分があった。何なんだろうな。

16:28-
会場近くのストリートでGirl's Bar M'sという看板を見て、小野瑞歩さんのブログによく出てくるえむぅーずという単語を思い出した。彼女は自身と秋山眞緒さんの組み合わせをえむぅーずと称している(MizuhoとMaoの頭文字がMなので)。お二人で指でMの形を作った写真をよくブログで拝見する。ファミ・マでバター・コーヒーをゲトって飲む。

17:53-
開演まであと数分。通路のすぐ後ろの中央ブロックのが四列くらい(13-16列)全員若いナオンで占められている。偶然ではあり得ない。何かの招待なんだろうな。前もこんなことがあった。まあ、降臨させられるメンバーさんにとっては前にいるのが若いナオンの方が精神的な負担が軽くて済むだろうからいいけど(前のときもこのブログに同じことを書いた)。

開演前はエスタシオンの奴らが撮影禁止の札を持って歩き回っている。開演後は撮影していいのに、こんな労力をかけて監視するのは何が目的なんだ…。規則を作ったのは彼らではないから、彼らをディスってもしょうがないのだが。

噂には聞いていた(Twitterでそういう声をいくつか目にしていた)が、夜公演(パターンB)の方が楽しかった。BEYOOOOONDSさんとアンジュルムさんの共演による『眼鏡の男の子』が面白かった。清野桃々姫さんが言おうとした最初の台詞を、奪うように室田瑞希さんが言って、そこからアンジュルムのメンバーさんで寸劇をやるっていうね。そういえば室田さんと言えばさ。意外と接触では人気が低いらしい。アンジュルムさんのコアなオタクさんに聞いたんだが、ステージでよく見せるあのひょうきんな感じで来るのかと思いきや実際には内弁慶で、お得意様になっていかないと面白い感じの対応にはならないらしい

モーニング娘。さんの衣装がよかったなあ。新曲“KOKORO&KARADA”の衣装。ストッキングの上に短いスカート的なのを履いていて。擬似パンチラ気分を味わえる。譜久村聖さんは身体の線が出る衣装が似合う。どんどん身体の線を出していくべきである。つばきファクトリーさんもこれくらいはやってほしい。最近はドテラやマタニティ・ウェアのようなのばっかじゃんか。勘弁してくれや。せっかくメンバーさんたちは素晴らしいスタイルを維持しているのに、それを活かす衣装になっていない。モーニング娘。さんの新曲をちゃんと聴くのは初めてだったが、『LOVEペディア』『人間関係No way way』は二曲で一つの曲のようになっているのかな?

Hello! Project研修生ユニットの新曲、『ミステイク』だったかな? のダンスが観ていて楽しかった。両足を交互に、こうやってスウィングさせるの。

今日、印象に残ったメンバーさんを一人挙げるなら島倉りかさん。前から分かってはいたけど、常に弾け続けて崩れることのない笑顔。自分をステージで表現する喜びと意欲がみなぎっている、躍動的なダンス。歌でもBEYOOOOONDSさんで中心的な役割を果たしているよね。

夜公演は15列だった。90%以上の時間は双眼鏡を使った。きらびやかなショーを堪能は出来たけど、めちゃくちゃ楽しいというほどではなかった。オレはサッカーよりもマリノスが好き:2019年でフットボーラー稼業を引退した横浜F・マリノスの栗原勇蔵さんはそう言った。今の私も同じだ。オレはHello! Projectよりも小野瑞歩さんが好き。だからHello! Projectコンサートにそこまで入り込めないんだ。Hello! Projectのメンバーさんは50人だか60人だかいるけど、彼女ら全員を観るよりも小野瑞歩さん一人を観る方が私の心は満たされる。

19:48-
帰りに高架下のアンオフィシャル・フォトグラフ品揃えを確認。小野瑞歩さんの写真はなし。42番が佐藤優樹さんのエッチなお腹。ちょっと心を動かされるが、佐藤さんはいいや。何も買わなかった。しかしあんな上モノは画質的にも技量的にも我々には撮りようがない。写真撮影はプロに任せなくてはならない。我々はコンサートを楽しむのに専念した方がいい。スマ・フォのワックな画質で得られる写真などクソ食らえ。スマ・フォを構えるな。ゴツい双眼鏡を構えろ。

私が昼公演で何枚か撮った写真もほとんど意味を為さない代物だった。前方の席なら普通に観て、そうじゃなければ双眼鏡で凝視している方が絶対に私は満足できる。だから私は二度と撮影はしないつもり。仮にスマ・フォでアン・オフィ並の画質が実現できるなら話はまたは別だが、そうではないので。撮影可にするのであればスマ・フォのみとか降臨中はダメとかの中途半端で意味不明な規制を撤廃すべき。いっそのことK-POPのようにエゲツないfancamがYouTubeに出回るくらいの自由度にしないと面白くないよ。