2015年12月31日木曜日

メリクリxJuicexBox (2015-12-23)

9時半頃に目が覚めた。4日前にドイツ出張から帰ってきてからいつもの時間に起きることが出来ない。時差8時間の国に行っていたのだから時差ボケがあるのは当然だが、それに加えて喉が痛い。風邪気味。今日は天皇誕生日で会社が休みだから何時に起きても問題はないが、明日は9時から会議を入れている。サシの会議だから私が遅刻すると成り立たない。明日はもうこの時間には会議の最中なんだよな…。

昼に池袋の「麻辣香」で上海春雨スープ750円を食べたが、いつものように楽しむことが出来なかった。普段と同じ中辛を頼んだのだが、やたらとからく感じた。からさがおいしさを上回っていた。身体が本調子ではないので刺激に弱くなっているのだと思う。昼食の選択を間違えた。

今日は雨が振る予報だが、家に傘が一本もない。家を出るときにはまだ降っていなかった。コンビニに置いてあるやつよりもう少しちゃんとしたのを買おうと思ってロフトとオッシュマンズを見たが欲しいと思うのがなかった。中国製なのに1万円近くする傘があった。服もそうなんだけど中国製で値段が高いのって何のために中国で作ってるのよ。結局、無印良品でエンジ色の傘を買った。商品の横に12月4日に1,500円から1,980円に値上げしたとの通知が貼ってあったが、レジに持っていったらなぜか1,500円だった。

ディファ有明のグッズ列に並んでいる途中から雨が降り始めた。今日は冷え込んでいて、手がかじかむ。16時開場、16時45分開演。14時すぎから並び始めた。このまま並んでいれば開演までには買えそうだったが、寒いし体調も万全ではないので列から離れた。歩くこと数分で「クラブハウスカフェ」という文字を見つけた。テニス場に併設されている喫茶店のようだ。ドリンクバー300円。ゆったりした広さに客が数人。いい気だるさが漂う空間だった。今日のイベントが楽しみだというよりは、ここで横になって寝たい気分だった。

会場に入ると、私の席は後ろから4列目だった。場内のグッズ列が空いていたので並んだが売場から宮崎さんの何かが売り切れたという販売員の声が聞こえてきた。自分が買いたい商品の一つである可能性が高かったのでここで買うのは諦めて後で通販で買うことにした。開演の前に『武道館』助監督のマツダを名乗る青年が出てきた。この場を利用してドラマの撮影を行うとのこと。開演前に練習させられて、後で本番をやらされた。宮本佳林が演じる日高愛子の誕生日コンサートの場面らしく、「愛子、誕生日おめでとう!」と、その後に歓声をあげている様子を分けて撮らされた。ステージには誰もいないけど、宮本佳林がいる体で。

このイベントは国内外の映画館で生中継されていたり、後述するように『武道館』の撮影終了の式典を兼ねていたり、来場者全員にプレゼントがあったりと内容が盛りだくさんだった。ただ、自分がそれを十分に楽しめる体調ではなかった。だからあまり感情を伴った記憶になっておらず、筆が進まなかった。日付が後の戦極MC BATTLE第13章の記事を書くのが先になった。

・Juice=Juiceはクリスマス時期のハロプロのイベントではお約束になっているサンタクロース風の衣装だった

・初めてもらったクリスマスプレゼントは、植村「遊びの料理用具」、宮本「おもちゃのカラオケ機械」

・古坂大魔王が登場。「いや、分かるよ、分かる。何でお前やねんと思ってるでしょ」と言った数分後に「ファンの皆さんの受け入れ方が凄い。誰でも歓迎みたいな」と掌を返す。「(ファンの皆さんは)優しいから(誰がイベントに来ても受け入れてくれる)」とJuice=Juiceの皆さん

・アイドルがたくさんいる中でハロプロが一番と繰り返す古坂。ステップを実践し「こういうときに足の向きが揃っている」「あとちゃんと歌ってるし」「大勢のアイドルが出ていたFNSの番組を観たら分かるやん」(「これインターネット駄目ね」と言っていたがこの程度のことで予防線を張らないでほしいしどうしても公開してほしくないなら内輪の飲みの席にとどめておいてほしい)

・古坂に関する印象。高木「頭が長いなと」。馬が同類だと思ってきたエピソードを披露する古坂。それでも三兄弟でいちばん身体が小さい。100キロ超の兄は切手を貼るときに肌の脂を指に付けるという話に気持ち悪がるJuice=Juice

・Juice=Juice一人一人から古坂にプレゼント。
金澤、王冠。「大魔王だから」。古坂、頭62センチ。
「あたしたちのウエストと同じくらい?」
「もっとあるよ」

高木「古坂さんのことをウィキペディアで調べたんです」
古坂「あれ半分以上嘘やで」
えーと驚くJuice=Juiceメンバーたち。
高木「爆笑問題の田中さんと温泉旅行に行ったと書いてあって」
古坂「それは本当やわ」
温泉旅行の券が入っているという封筒を差し出す。
古坂「(王冠のひどさに比べて)この差は何ですか?」
何でですかと抗議する金澤。高木のプレゼントにいたく感心する古坂に「推し変あるな?」とJuice=Juiceがざわめく(この前にJuice=Juiceの中で誰が一番好きかと聞かれた古坂が宮本を指名していた。)それを受けて「推しを高木さんに変えた」と応える古坂。膨れる宮本。ところが、封筒に何も入っていない。「私のお小遣いでは買えなかったので、入浴剤です。田中さんと一緒に入ってください」と高木 

植村、伊達メガネを数種類。2016という数字になっているものや、鳥?が鼻のところに付いたもの

宮本、シューベルト『魔王』のCD

宮崎、カセットテープ。「私のウグイス嬢をほめてくださっていたので」と、その場で録音。古坂リクエスト。宮崎言い間違える。逆にこっちの方がいいと古坂。これまでのプレゼントには客は笑っていたがこのプレゼントばかりは俺も欲しい…という羨望に満ちる

・クリスマス関係の曲で固められたセットリスト

・『武道館』の収録。
『大人の事情』
NEXT YOUには?「夢がある」
みんなで行こう「武道館」
絶対行くぞ「武道館」
オー!
『Next is You!』
金澤が何かを間違えてやり直し。『大人の事情』の後半からとのことで、そのまま上記の最後までやるものと(私だけでなくおそらく他の客の多くも)思っていたので『大人の事情』が終わった時点で「カット」の声が出たときはまた撮り直すのか?今のよかったじゃんという感じで客席からエーイングが出たが、これでOKという意味のカットだった。

『武道館』これにてクランクアップ。スタッフ一同が壇上に。Juice=Juice一人一人に花。高木と宮本、涙。高木「お芝居が好きなんだなって改めて実感した」

・宮本「Juice=Juiceの曲を一つもやらなかった。久しぶりというか、初めて。客席側に降りたときに皆さんの笑顔を見られていいプレゼントをもらえたと思った」

・リハーサルをしているときに来場者へのプレゼントを作っていた。全員分。コースター。メンバーのサイン入り。誰が当たるかはランダム。金澤「サインをしたのは裏だから使って。あんまり交換とかしないで持ち帰ってもらえるといいなと」。金澤さんの場を読んでコメントを発する能力が高い。観衆が何となく頭の中で思っていることを察して喋るから的を射ている。受ける。(ラップバトルでもそうなのだが、真にアンサーすべきは対面する相手ではなく実は観客や審査員の無言の問いなのだ。)

・終演18時25分くらい

・会場を出る際にコースターだけでなくnotebookももらえた。コースターは金澤さんのが当たった。ハロプロらしからぬ大盤振る舞い

池袋「大連餃子房」で牛肉の四川風炒め定食950円とライチ酒390円をいただいて、家に帰って、風邪薬と胃薬を飲んで、寝た。

2015年12月30日水曜日

稲場愛香バースデーイベント2015(2015-12-29)

2015年12月某日

「ファンクラブ会員の者なんですが」
「はい」
「一件ですね、入金を忘れていたものがあることに気付きまして、どうしたらいいのかという相談をしたいのですが」
「入金の期限を過ぎたものに関しましては一切ご対応が出来ません。お支払いの期限は…」
「過ぎています」
「そうですか、でしたら申し訳ありませんが、当選はされていたようなんですが、対応は出来ません」
「そう、ですか…分かりました。はい。ありがとうございました。失礼します」

戦極MC BATTLE 第13章(2015-12-27)

ギャンブルには手を出さない品行方正な人間なので競馬には疎いのだが、毎年この時期になると有馬記念というのが開催されているらしい。競馬ファンにとっては特別な日のようだ。戦極MC BATTLE第13章を一緒に観に行くつもりだった二人の友人が、共に有馬記念と同日であることを理由に断ってきたのだ。戦極MC BATTLEは今まで10章と12章を観に行ったが7時間ほどの長丁場である上に座ることが出来ないという過酷な現場である。その上ヒップホップの現場には慣れていないため一人で行くのはやや気が引けたから、行かないつもりだった。そうこうしているうちにチケットも売り切れていた。しかし後から出場者の情報が公開されていくにつれどうしても行きたくなって、ちょうどそのときにチケットが追加で販売されることになったのですぐに1枚購入した。

一番の決め手はライムベリーというアイドルラップユニットのMC MIRIが出るという知らせだった。ファンだった訳ではない。ライムベリーのことは名前を聞いたことがあるくらいだった。MC MIRIについては名前すら存じ上げなかった。だが彼女が戦極に出場するという記事を読んで、これは見ておかないと損をすると直感的に思った。YouTubeでライムベリーの『SUPERMCZTOKYO』という曲のビデオクリップを観た。ハハノシキュウがMC MIRIにラップを指導しているのをTwitterで知った。興味は増していく一方だった。12月16日に発売したライムベリーの1st album “RHYMEBERRY”はもちろんbonus track入りの初回盤を買い、繰り返して聴いた。そうやって一ヶ月もたたないうちにまるでファンのようになってしまった。ライムベリーのファンのことはSquadと言うらしい。(Juice=Juiceでいうところのジューサー、℃-uteでいうところのTeam ℃-uteである。)

池袋「みなと」(店を出るときに尋ねたところ年末年始は休みなく店を開いているらしい)でこの上なく贅沢な刺身定食1,620円をいただいてから渋谷へ。Twitterを見ていると中島早貴のブログ記事が流れてきた。開いたところ、デイリースポーツで有馬記念の予想をしたから見てくれという告知であった。昨日も岡井千聖が東京スポーツで有馬記念の予想をしていた。アイドルは有馬記念の予想をするな。戦極MC BATTLEの予想をしろ。会場のTSUTAYA O-EASTの近くで、いかにもB系ですという見てくれの青年4、5人が歩いていた。そのうちの一人がラブホテルの前でおもむろに立ちションを始めた。後から気付いたが小便小僧ではないうちの一人はバトルの出場者だった。

ブログに公開された予定によると、開場14時で、14時45分から15時12分までBOILRHYMEと崇勲のライブパフォーマンス(こんな分刻みの予定を守れる訳がない)。15時12分から16時32分までバトル(BEST 64→32)。16時32分から17時20分までDopeman、言 X THE ANSWER、晋平太、般若のライブパフォーマンス。17時20分から18時30分までバトル(BEST 32→8)。18時30分から19時10分まで呂布カルマ、ISSUGI、バブルソのライブパフォーマンス。19時10分から20時20分までバトル(BEST8→決勝)。20時20分から21時までKEN THE 390、KAKATOのライブパフォーマンス。21時から21時15分まで閉会とオープンマイクとのことだった。

今日の入場予定数は1,100人らしい。私のチケットに書かれた整理番号は820番だった。会場に入って、500円で買わされたドリンク券を缶入りのハイネケンと交換したのが14時39分頃だった。「こいつらを知らないやつはモグリです」という八文字さんの触れ込みで登場したBOILRHYMEがいいなと思った。会場でCDを売っていると言っていたので、後で買おうと思った。いよいよバトルの時間になった。「後でDVDも出るしYouTubeにも上がるのに、わざわざ見に来てくれる皆さんは本当にバトルが好きなんですね! 今日ここにいるのは最高の人たちです!」と来場者たちを持ち上げる正社員さん。

にわかSquad化した私は、MC MIRIが出てくるまでは気が気でなかった。途中で司会の八文字さんが「ミリ!」と次の試合の出場者を呼んだのでついに来たかと思って唾を飲んだが、魅RIン(みりん)という紛らわしいにもほどがあるMCだった。MC MIRIが呼ばれたのは最後の方だった。相手はK-razy。赤いチェックのミニスカートにグレーのフッド付きスウェットシャツ、黒のベストに帽子、マンハッタンポーテージの肩掛けカバンという出で立ちのMC MIRIが下手から登場すると私の周りからは「可愛い」という声がちらほら聞こえてきた。後攻のMC MIRIが初めてのバトルでどんなラップをするのだろうかと息を呑んだが、普通に上手かった。ままごとではない見事なフロー(ままごとと見事で韻を踏んでいる)で会場を沸かせた。攻撃の切り口としては、お前はCD何枚売ったんだ? どれだけの会場でやってきたんだ? という感じで、私が事前に想像していたのに近かった。「私が戦極に出ることが決まっただけでニュースになる」というのは破壊力があったし、会場も盛り上がっていた。延長戦まで持ち込んだものの、最後はK-razyが一枚上手だった。MC MIRIに対して「お前はここでこういうやり取りが出来るくらい成長している」「俺とお前はここでグルーブを生み出している」というようなことを言っていた。「ブス」とか「アイドルがいていい場所じゃねえ」といったありきたりなディスで脅さずにMC MIRIの言葉をしっかりと受け止めて返したK-razyは立派だと思う。MC MIRIも、敗れたものの胸を張っていい堂々たる戦いぶりだった。試合の直後に「あー、やっとアイドルに戻れる! この後チェキ会やるからみんな来てね!」と言って笑いを誘っていた。

13章に出ているMCの中で私はハハノシキュウが一番好きだ。今日もTHE NORTH FACEのマウンテンパーカとインナーダウンの中にはハハノシキュウの「8x8=49」Tシャツを着てきた。このTシャツを着て「計算間違っていますよ」と言われたことがあるし「頭のおかしい人かと思った」と言われたこともある。このTシャツを身に付けてハハノシキュウに歓声をあげているとサクラっぽくなるのでTシャツ一枚で観戦するのはやめておいた。ハハノシキュウの初戦はテレビ番組『フリースタイルダンジョン』でサイプレス上野に負けたBALA a.k.a. SHIBAKEN。下手から出てきてそのまま上手にはけるという奇行に走るハハノシキュウ。先攻BALAの攻撃を「あ、ごめん寝てた」と受け流す。「お前アイドル好きなんだったら49じゃなくて48じゃねえか?」とTシャツの「8x8=49」をいじるBALA。東京女子流のスウェットシャツを着てきたんだというBALAに対して「同じオタクとして言わせてもらうけど、今日からお前はライムベリーのオタクになるよ」とハハノシキュウ。ハハノシキュウ、勝利。

ハハノシキュウはBEST 32でAmaterasに勝ち、BEST 16でKEN THE 390に負けた。私はハハノシキュウの優勝を期待していたので、KEN THE 390に負けた瞬間には力が抜けた。しかし名勝負だった。「何で顔を隠すんだ」というKEN THE 390に対して「顔を隠すのには理由があるんだ。自分の声とラップだけを届けたいから僕は顔を隠すんだ。顔がよくなかったらお前のラップなんて誰も聴かねえよ」とハハノシキュウが返す。「顔がいいだけで10年やっていけるほどこの世界は甘くない。そんなことも分からないからお前はいつまでたってもパッとしないんだろ? 顔を出したくないならバトルに出てくるな」という390に「さっきからお前の言っていることは正論じゃねえか。教科書に書いてある。会社の上司みたいなことばっか言ってんじゃねえ。説教ばっかり」「そんなんだからお前はいつまでたっても390のままで400になれねえ」という最高の切り返しを見せた。他にも「他のアーティストをフィーチャーしたYouTube動画の再生回数が伸びてフィーチャリングなしの曲の再生回数が伸びていない」というのもあった。

ハハノシキュウが負けたのは悔しかったが、今日のKEN THE 390は決勝進出に値した。決勝ではNAIKA MCが勝ったが、私はKEN THE 390に声をあげていた。初戦から決勝までバチバチの戦闘モードだったし内容に一貫性があって常に的確だった。BEST 8で「俺はドライブシュートを決める」的なことを言ったKBDに「ドライブシュート? それはフィクション。キャプテン翼の話だ。ヒップホップはノン・フィクションつまりリアル」とMC漢のようなことを言っていた(ただ、ドライブシュートはフィクションではなくて実在するんだけどね…)。これも同じ試合だったと思うけどお前はポップだという批判に対する「2015年にもなってポップがどうとか言ってるのはどうかしてるだろ」的な反論には説得力があった。もっとも、私の場合ポップだからどうとかじゃなく、純粋にKEN THE 390の曲は格好悪いと思うし好きになれない。ポップなラップそのものは好きだ。昔、太郎 & KEN THE 390名義の“JAAAM!!!!”という1,000円のアルバムを買ったことがあって(Amazonによると私は2005年11月3日に購入したそうだ)それは割と好きだった。

MC松島が「ミクソン重一」という名前で出場した。MC松島も私が好きなMCの一人だ。最近8ronixというトラックメイカーとの合作ミニアルバムを松島さんご自身が運営しているweb storeで買った。このweb storeで買うといつも松島さんご本人の直筆messageが入った紙切れが封入されている。8ronixとのミニアルバムのときは「発送おくれてすみません。風邪ひきました」と書いてあった。初戦はLuiz。Luizは数々のバトルで上位に進出しているACEの弟である。先行のミクソン重一が「お前は兄貴の七光り。兄貴がいないと何も出来ない」というようなことを言ってLuizを攻め立てる。「兄貴の七光りなんかじゃねえ」とLuizが言い返すと「結局そうやって兄貴の名前を出さないと盛り上がらない」とミクソン重一。「兄貴の話を始めたのはお前の方じゃねえかよ」とLuiz。こうやってムキになった時点でミクソン重一の策にはまっている。ミクソン重一、勝利。

ミクソン重一はベスト32でGOTIT(ガッティ)に負けた。GOTITに対しては「そうやって大きな声で感動的なことを言って沸かせるしかない」とか、マザファカでバースを締めたのを受けて「そうやってマザファカ的なことで小節を締めるしか能がない」とか、「お前はダサい。なぜかを説明しよう…」というように相手のスタイルを斜めからおちょくる憎たらしさがたまらなかった。Luizとの試合でもそうだったが、相手のターン中にいつもニヤニヤしながら頷いて、メタ的な視点から的確に相手の弱みを述べるのが凄く性格が悪かった。ところでMC松島とは別の名義で出場していることにケチを付けてきたGOTITに対して「こっちには名前を変えざるを得ない事情があるんだよ。それくらい分かれ。子供か」というようなことを言っていたのだが、事情って何なんだ…。

他に印象に残ったパンチラインとしてはふぁんく→KEN THE 390の「俺はドリームボーイの390よりもDREAMS COME TRUEの『サンキュ.』の方が好き」や、KBD→呂布カルマの「格闘技じゃあり得ねえ。瓦(Twitterによると身体という説もあり)のウェイトに差がありすぎる」(戦極12章の呂布カルマを引用)といったあたりだ。MCでは、MAKAという人がフロー巧者だった。「MAKAとCHICO CARLITOは俺が見つけてきた」と正社員さんが誇らしげだった。「CHICOは俺(が見つけた)」と八文字さん。(このやり取り、正社員さんと八文字さんが逆だったかも。)

16時32分から(実際には時間はずれていたはずだが)のライブパフォーマンスの時間に会場を抜け出すと(TSUTAYA O-EASTそのものからは出ていない)ライムベリーがチェキ会をやっていた。MC MIRI以外の二人も来ていた。MC MIRIとチェキを撮りたかったが、システムが分からない(どこで何を買えば参加できるのか、参加時の手順はどうなっているのか…私は楽曲派なのでライムベリーのはもちろんハロプロでも接触を主とするイベントにはいっさい参加したことがない)上に誰に聞いたらいいのかも分からなかったし、チェキ会の様子を見ていると何かこう風俗感が漂ってきて胸が苦しくなってきて、やめておこうと思って、大人しく会場に戻った。晋平太のライブパフォーマンスの途中だった。晋平太の次に般若が「制服を盗んできました」と言いながら出てきた。自分の曲だけでなく、ACEと二人で『フリースタイルダンジョン』用に作ったとおぼしき曲もやっていた。「私は今バトルシーンの中心にはいませんが…君たちはいつまで人と人が罵り合うのを見て興奮しているんですか。戦極とか、罵倒とか…名前からして下品じゃないですか。やめてしまえば世界は今よりも平和になるのに。全員死んじまえ」
「制服を盗むよりも制服を脱がしてキスした方が興奮するんじゃないか? これが私からの今年最後の言葉です」
「この20年間やっていることとして冷水のシャワーを陰嚢に当てているのですが、その最中に書いた曲です」と新曲を披露した。

呂布カルマがライブパフォーマンス時に言った「手振ったりヘラヘラしたり、飲み会の一気コールみたいな音楽を30超えてやる訳にはいかねえんだ」というのが頭に残っている。10章や12章でもライブパフォーマンス時に客が盛り上がってこないことに機嫌を損ねるラッパーがちらほらいた。彼らからすると「お前らバトルにしか興味がねえのか?」ということになる。今日も般若が曲と曲の間に「ライブはそんなに楽しくないか?…まあいいや」とこぼしていた。しかし、そもそもの話として、日本語ラップの大半はワイワイ盛り上がるタイプの音楽ではないのでは? 言葉を味わう音楽だ。それが客が熱狂していない最大の理由だと思う。もう一つの理由は、客がそんなに曲を知らないことだと思う。

NAIKA MCがKEN THE 390を倒して戦極MC BATTLE第13章の覇者になったのが20時42分頃だった。本来の予定だと20時20分だったのでほぼ時間通りだった。回を重ねる毎に進行が改善していくのは凄い。この後もライブパフォーマンスがあるが、私は明日、仕事がある。6時に起きなくてはならない。ここから徒歩と電車で家まで1時間くらいかかる。晩飯も軽く食っておきたい。しかも昼飯を食ってから一度も座っていないので疲れている。だからバトルが終わったらすぐに帰った。今日出ていたラッパーの一人から500円のCD-Rを買った。あとBOILRHYMEのメンバーたちが会場外の階段を下りたところでCD-Rを売っていたので買った。1,000円。アイドルの写真を1枚500円で買うのに慣れた身からすると随分と安い。帰りに路地裏でケバブロール辛口600円を買って、食べながら歩いて駅まで向かった。ずっと興奮と幸福感に包まれて(「こうふ」で頭韻を踏んでいる)、夜はなかなか寝付けなかった。

2015年12月12日土曜日

田村芽実バースデーイベント2015 (2015-12-03)

漢 a.k.a. GAMIの『ヒップホップ・ドリーム』に、彼の仲間が麻薬を密輸しようとして成田の税関で捕まった話が書いてある。今これを書いているのは外(池袋の喫茶店「フラミンゴ」)で手元に本がないから再読できないが、手に汗握る展開だったのを覚えている。一緒に帰国していたMC漢は税関を通過したのだが、仲間がなかなか出てこない状況は見ているだけで気が気ではなかっただろう。ましてや本人は言葉で言い表せないほどの緊張を味わっただろう。頭が真っ白になるだろう。私は麻薬を密輸したことはないが、想像することは出来る。

ハロプロにはファンクラブの会員しか参加が許されないイベントがある。これから行く「アンジュルム 田村芽実バースデーイベント2015」もそういうイベントの一つだ。通常のコンサートやイベントであればチケットさえあれば入れる。後は荷物検査があるくらいだ。ファンクラブ会員限定のイベントの場合、当選通知メール(チケットは発行されない)、ファンクラブ会員証、顔写真付きの身分証の三点を提示しなければ中に入れてもらえない。メールは印刷してきたし(画面の提示でも可)、会員証と身分証は常に財布に入れているので問題はない。と安心して入場列に並んでいたら、免許証の期限が切れていることを思い出した。更新はしたのだが新しい免許証は実家にある。保険証でもいいのではないかと思ってメールを見直したらこう書いてあった。
当イベントでは、「運転免許証」「パスポート」「住民基本台帳カード」「学生証(顔写真がないいものは不可)」「Hello! Projectエグゼクティブパス2015」の5点以外は、顔写真付き本人確認資料としてお取り扱いしません。
パスポートは持ち歩いている訳がないし残りの三つはそもそも所持していない。メールを見ると携行品のどれかが欠ける場合は12/2(水)までにファンクラブに連絡するようにと書いてあった。昨日だ。

逡巡した。免許証の期限が切れていると申し出るべきか。迷っているうちに自分の番になった。メールを印刷したA4の紙と、ファンクラブの会員証と、期限切れの免許証と、保険証。その四枚を重ねて、無言で係員の女性に渡した。保険証を入れたのは、免許証の期限が切れていることに相手が気付いた場合、事情を話して保険証で逃げられないかという一縷の望みに懸けたからだ。

係員がメールを見た。会員証を見た。で、免許証。思ったよりしっかり見ている。免許証に開いた穴も、過ぎ去った有効期限も、係員の視界には入っているはずだ。何か言ってくるのを覚悟した。説明の言葉を用意して息を吸い込んだが、無事に入場を許された。保険証には目もくれず、そのまま一式を返してくれた。何で大丈夫だったのか、と思いを巡らせた結果、おそらく彼女が指示されたチェック項目の中に「有効期限を確認する」というのが入っていなかったのではないかという考えに至った。名前がメールと会員証と合っているか、そして顔が本人で間違いないか。その2点を確認するように言われていたんだと推測する。それらの点に集中することで、それ以外の箇所が苫米地英人が言うところのスコトーマ(盲点)になっていたんだろう。助かった。入場を許されてから客席に向かう途中、ドキドキして手が震えた。そこで冒頭に書いた『ヒップホップ・ドリーム』内のエピソードを思い出した。麻薬を密輸する人の気持ちを追体験できた気がするからだ。

客席に入るすぐ手前で、数名の来場者たちが光る棒を配っていた。私は礼儀正しくありがとうございますと言ってそれを受け取った。一緒に渡された紙には、開演して田村芽実さんが入ってこられたら一斉に点灯し、そのまま氏が歌われた場合は一曲目の最後まで光らせてくれと書いてあった。

TOKYO FM HALLは2年前に岡井千聖さんのバースデーイベントで来たときに好印象を持っていた。こじんまりしていてステージが客席よりも高い位置にあるので、近くて見やすかったからだ。ファンクラブでやるちょっと緩めのイベントには最適の会場だと思う。もっと人気のあるメンバーさんだと山野ホールとかのもっと大きな会場でやる。私が応援するメンバーさんはなるべくTOKYO FM HALLでやってほしい。今日は運良くいい席だったのでますますこの会場が好きになった。C列の6番。3列目。A列は左端が4番から、B列は3番から、C列は2番からだった。

下手(左側)から登場した田村芽実さんがそのまま歌った一曲目が『私のすごい方法』だった。私は嬉しかった。なぜなら私がハロプロにはまるようになったきっかけが、この曲が収録された松浦亜弥さんの1st album 『ファーストKISS』だったからだ。つまり私は根っからの楽曲派なのである。入場時に有志の方々からもらった光る棒をはじめは言われた通りに点灯させていたが、チカチカするのが曲と会場の雰囲気に合わないし気が散るので途中で消した。『私のすごい方法』が終わると、進行役としてサミットクラブの静恵一氏が登壇した。「私たちの絡みを知ってる人?」と田村さんが客席に問いかけるとほとんど誰も反応しなかった。あまりの少なさに「これだけいて一人、二人て」と静さん。「私がまだ眉毛を手入れしていない頃からの関係なんですよ」と客に説明する田村さん。
「3年ぶりくらい?」
「そうですね、3年か3年半くらいです。その頃わたしは中二でした」
「まだ前のグループ名で」
「そう、スマイレージ」
「まともに喋れる子が一人もいなかったんです。ずっとゴリラの物真似してる子がおったり」

一曲目に選んだ『私のすごい方法』について「知ってる人?」という田村さんの問いかけに会場の大半が手を挙げる。「わあ、たくさん!」と喜ぶ田村さん。「最近は若い子がたくさん出てきている。アンジュルムには上國料萌衣ちゃんが入ってきた、そんな中、私は培ってきた経験を生かして私だけのすごい方法でやっていく」と決意を表した田村さんに対して、17歳にして随分としっかりしてるね…と感心する静さん。「アイドル寿命は短いんですよ! アイドルはどんどん若くなっている。今が大事なんです」と田村さん。

福田花音さんが卒業して悲しいか?と聞く静さんに、いや、と首を傾げる田村さん。意外な反応に驚く静さん。
「いや、あれからまだ二期としか会っていないんです。アンジュルム全員で集まる仕事というのをあれからまだやっていなくて」
「じゃあ福田さんがいなくなったのを実感するのはこれからだね」
「でも卒業した翌日からTwitterを始めたじゃないですか。あれには本当にびっくりして。でも私のことを何にも書いてくれないんです」

田村芽実さんの誕生日は10月30日である。バースデーイベントは本来、誕生日の前後にやるのが通例だが、今回に関しては一ヶ月以上が経過している。
「(バースデーイベントを)いつやるの?と握手会で多くの人たちが聞いてくれたんですけど、今日の一回目(この公演)は当日券があるらしいです。そうやって聞くくせに結局は来ないのかと。まあ、今いる人たちは優しい人たちですけど」と冗談めかして話す田村さん。

田村芽実memoriesと題して、幼少期の動画(selected by 本人)を何本か流してその頃を振り返るというセグメントがあった。
・生まれて間もない頃、おそらく病院にて(会場のあちこちから「可愛い…」というため息混じりの声が)
・家の階段をハイハイで上る。父親が撮影(カメラが向いた時点で顔がカメラに向いているのを指し、この頃から撮られる準備が出来ていると静さん。照れ笑いする田村さん)
・家族で苺狩り。カゴに地面の落ち葉を入れる。「雨だよ」と退避を促す母親の声を無視して悠然とした態度(動画に苺が映っていないので「苺狩りちゃいますやん」と突っ込む静さんに「じゃあ落ち葉狩りですね」と返す田村さん)
・家でテニスラケットをギターに見立てて歌っている(後ろにいる田村さんのお姉さんがラケットにとどまらず、バケツをかぶって星型のサングラスをかけていたので田村さんよりもお姉さんが専ら静さんによる突っ込みの的になった)
記憶が正しければこの4本の動画であった。

名前の由来は二つある。
1.お姉さんがトトロを好きでサツキになりたかったので妹をメイにしたがっていた
2.難産だった。母親が大変な思いをして命が実ったので命実と名付けたが、名前に命が入っているのは重いため芽実にした

生まれてはじめて喋った言葉は「かっ、かっ、かっ」だった。
「痰を吐くみたいな?」
「違うんです。お姉ちゃんが花恋っていうんですけど、お姉ちゃんが近づいてきたときに花恋と言おうとしてかっ、かってなったんです」
「それはお姉さん嬉しいだろうね」

生い立ちがこうやって動画で残ってるんですねという静さんに、「現代っ子ですから。すみませんね」と返す田村さん。

その後、彼女は『Kiss! Kiss! Kiss!』(しゅごキャラの主題歌で、前から好きだったとのこと)、『はじめてを経験中』(可愛くて大好きな曲とのこと)を歌った。

「次の曲は2回目では歌わない。2度と歌わないかも知れない。2回目ではここではハローの曲を歌う」と田村さんが紹介したのはテレサテンの『別れの予感』だった。「知ってる人?」。後ろの水を飲んでこちらに振り返って、挙がった手の数を見て「あ、微妙…。20代、30代の人が多いんですかね。40代以上じゃないと分からないみたいです」。こんな貴重な場にいられない人は損をしている、というようなことを言ってから「当日券あるのにね」とここでも1回目が売り切れなかったことへの怨み節を披露していて面白かった。

次に『王子様と雪の夜』、最後に『Never Forget』であった。後半になると徐々に暖まってきたが、今日は客のノリがおとなしかった。メンバーさんもファンの側も、どれだけ盛り上がるかで現場の価値を計りがちではあるが、来場者がまったりと楽しんでステージの演者を温かく見守っている現場も、それはそれで幸福感に包まれているし悪くない。

最後の喋りで田村さんは「開催が延びてよかったと私は思っています。アンジュルムだから遅れさせられたんじゃないかと思う人もいるかもしれないですけど、10月11月はアンジュルムのツアーで忙しかった。あの時期にバースデーもやっていたら大変なことになっていた。歌いたい曲を温める時間が出来てよかった」と締めくくった。

良い会場で席にも恵まれ、間近で田村芽実さんを見るというなかなか得がたい経験だった。バースデーイベントならではの話がたくさん聞けたし、田村さんの歌声にまったりと酔いしれることが出来た。

2015年12月6日日曜日

MISSION 220 (2015-11-30)

YouTubeに『MADE IN KAWASAKI 工業地帯が生んだヒップホップクルー BAD HOP』という動画がある。その内容についてここで語ることは出来ない。なぜなら私はその動画を見ていないからだ。雰囲気から察するに、どうやら川崎の不良少年たちが徒党を組んでヒップホップのクルーを作る話のようだ。BAD HOPという造語をクルー名にしていることから、ワルさを売りにしているのが見て取れる。川崎という土地に対しては何となくそういう刷り込みがあった。それ以外で川崎について私が知っていることと言えばヴェルディ川崎とフロンターレ川崎の本拠地であるということくらいである(ヴェルディは後から東京全体をホームタウンと標榜するようになったが)。したがって、私にとっての川崎とはワルさを押し出した少年たちによるヒップホップクルーとJリーグのチームが二つある街なのである。一般的に、関わりのない土地に対する印象というのはそんなものである。名古屋と言えばエビフリャーとコーヒーを頼んだだけでおまけが大量に付いてくる喫茶店であり、大阪と言えばかに道楽と漫才であり、インドと言えばカレーである。普通の外国人から見れば日本はスシ、ゲイシャ、サムライ、カミカゼなのである。

川崎に来るのは初めてかと思ったが、違った。川崎市に住む友人がいて、彼の家に遊びに行ったことがあるし、等々力陸上競技場にヴェルディの試合を観に行ったこともあった。ただ、昔のことだ。少なくとも川崎駅で降りるのは初めてだった。クラブチッタ川崎に着いたところグッズ列はそれほど長くなかった(20人くらいだったか)。私の番だと思って売り場の淑女と目を合わせて軽く会釈をして一歩踏み出したとこら、いがぐり頭のガラの悪いオタクが「次オレじゃねえの?」と割り込んできた。咄嗟に「あ、すみません」と譲って穏便に済ませた。これが一瞬で出来たのは我ながら成長したなと思った。大学を卒業してから10年間を経て、どうでもいいことで争うということをしなくなった。仕事の経験が大きいと思う。彼は宮本佳林さんのTシャツ3,000円と写真500円を買っていた。5,000円札で支払って1,500円のお釣りを受け取っていた。どうして天使のような宮本佳林さんを好きでいながらあのような感じの悪い人間になれるのかが不可解だったし、彼に推される宮本さんが可愛そうだった。オタクでありながらガラが悪いというのはモノホンの底辺だ。彼に対する怨嗟の言葉が頭を駆けめぐり、気分が悪くなった。この気分を引きずるのか、忘れて楽しむのか。自分の度量を試されていると思った。川崎駅に戻って、コインロッカーの前でtilakのダウンヴェストとBattenwearのスウェットシャツを脱ぎ、コム・デ・ギャルソンのTシャツの上から宮崎さんの研修生風Tシャツを着た。スウェットシャツを着直した。ジーンズのポケットにチケットと2,000円を入れた。宮崎さんと宮本さんの日替わり写真(各500円)とコレクション生写真2枚(各500円)をカバンに収めて、ロッカーに入れた。暖かいのでダウンヴェストも預けた。400円。セブンイレブンで「深み味わうヱビス」を買って、店の前で飲んだ。最後の方を口の中に流し込みながら周りを眺めると、上下紺のスウェットシャツにスウェットパンツを着てヒゲや髪の毛をあまり整えていない紳士が通りがかって他人の自転車のカゴにゴミを入れていた。治安があまりよろしくなさそうな空気を肌で感じた。平日の16時半頃にカバンも持たずにコンビニ前でビールを飲んでいる私も大概だが。空腹のおかげでアルコールが効くのが早かった。ややノリのいいシラフくらいに仕上がった。これくらいがちょうどいい。

開場17時15分、開演18時。17時前に会場前に行くと、係員が1~200、201~400、401以降という三つの塊に分けて来場者を立たせていた。となると今日の客は500~600人くらいか。私のチケットに印字された整理番号は55番だった。クラブチッタ川崎は初めて来るが、ネットで画像を見るかぎりステージが高い位置にあって見やすそうだし、ライブハウス(和製英語)としては収容人数が多い方なので(ネットには1,300人と書いてあった)、55番というのは相当にいい番号のはずだから楽しみだった。入ってみると、大体2列分くらいまで人が入っていて、空いているのは3列目くらいからだった。一箇所だけ2列目に入り込めそうだったが一瞬迷った隙にむすっとした顔の恰幅のいい紳士が走ってきて、その空間を埋めてきた。彼のすぐ左後ろに立つことにした。2列目は逃したが、それでも最高の位置だ。2002年サッカーW杯アイルランド代表のダミアン・ダフのような右側前方のポジション。右前の紳士がTwitterをいじっているのが見えた。宮本佳林さんの画像をアイコンにして「がんばりんです」等と誰かに送っていた。入場時に渡されたビニール袋や自分のカバンを床に置く人が近くに何人もいた。混雑した電車でボストンバッグを足下に置く高校生から進歩していない。

開演前の場内announcement(いわゆる影アナ)は宮本さんが担当した。注意事項を読み上げる度に客席の皆さんがはーいと声を揃えて返事をするのが通例なのだが、今日は宮本さんが自分で読んだ注意事項の後に自分ではーいと言っているのがやたらと可愛らしく、彼女の上機嫌さがこちらにまで感染してくるようだった。Opening actでJuice=Juiceさん扮するNEXT YOUさんが登場し“NEXT IS YOU”を歌った。NEXT YOUさんのお決まりとして「NEXT YOUのライブは?」「授業参観!」「NEXT YOUのファンのみんなは?」「ネクス中毒!」「みんなで目指すぞ」「武道館!」(細かい言葉は間違っているので雰囲気だけをつかんでほしい)のようなやり取りをNEXT YOUさんと客が行うのだが、こう言ったらこう返すんですよという根回し一切なしにいきなりこのくだりを始めて、しかも客の大半が対応できていた。私はうろ覚えだったので半分くらいしか咄嗟に反応できなかった。

NEXT YOUさんとして出てきた最初の挨拶で、植村あかりさんの声がかすれているようだった。前方で細かい表情が見えたからこそ気付けたのだが、踊っているときの表情を見ても生気が欠けており、どうも元気がなさそうだった。Juice=Juiceさんとして出てきた本編でも同様で、無表情でいることが多く、目の焦点が合っていない感じがして、このまま意識を失ってしまうのではないかとヒヤヒヤした。いつもの植村さんではなかった。サッカー雑誌の寸評風に言えば、精細を欠いた。他のメンバーさんは四人とも元気ハツラツで、植村さんと交互に見ると落差が明確だった。約1年半で220公演を達成するというのはおそらく理詰めというよりは体育会系のノリで決められたコンセプトだろうし、これだけの公演を短期間でこなしていけば常に100%の品質を保つのは無理な話だ。既に欠員が出たこともあったし、公演によっては体調や気分にムラが出るのは当然だ。

間近で見て改めて、金澤朋子さんがやたらと美人だった。いつも美人のはずなのだが今日は特にそう思った。自信に溢れた表情で歌って踊るお姿は、優美という言葉がよく似合う。宮崎由加さんは人並み外れてきれいで、彼女と私が同じ世界に住んでいるというのが理解しづらかった。日本人や人間といった何かしらの属性を私と同じくする存在というよりは、お人形さんだった。宮本佳林さんはいつ見ても至上の元気さと可愛さと一生懸命さを我々に見せてくれる100点、100%のアイドルである。この方には不調という状態が存在するのだろうか?

宮本佳林さんが明日で17歳になる。おそらく開演前のannouncementを割り振られたのは今日で16歳最後ということでfeatureされたのだろう。一人喋りのセグメントも宮本さんが担当した。宮本さんがおっしゃっていたことの一部:
・明日のバースデーイベントの1回目は当日券もあるので来て欲しい。1回目でしかやらない、激しい何かがある。何かは言わない。セットリストも絶対に言わない。でも皆さんに喜んでいただけるセットリストになっていると思う
・(今日の客には)久しぶりに見る人がたくさん。1年ぶりくらいの人が多い。どこに行っていた? こぶしファクトリー? つばきファクトリー? カントリーガールズ?
当たり前のように「1年ぶりくらいの人が多い」とおっしゃっていたが、友人や同僚でもあるまいしそんなに深く接している訳ではないのに覚えているとは、どういう記憶力をしているんだ…。

その後、宮本さんが着替えていて他のメンバーが喋るセグメントで金澤さんが、佳林ちゃんの誕生日になにをあげたらいいか、と客に投げかけた。「私よりも佳林ちゃんのことを知っているだろうから。小学生の頃から知っている人もいるんでしょ?」。タケちゃん(宮本佳林さんが敬愛していることで知られる、アンジュルムさんの竹内朱莉さん)という声が客から挙がった。タケちゃん? どうすればいいの? と笑っていた金澤。「ああ、グッズを買えばいいのか。生写真とか? ハロショに行けばいいのか」とグッズの購入を検討するが、「生写真だと300円くらいでしょ。安すぎる」ということで、高いグッズにはどういうものがあるのか? と金澤さんが問いかける。するとメンバーさんの誰かがタペストリーがいいと言った。「私たちのタペストリーを家に貼っている人?」とメンバーさんが入場者に聞くとほとんど手は挙がらず、「意外と少ない…」と笑っていた。高木さんが「Juice=Juice以外のを貼っている人!」と問うと後方の誰かが手を挙げ「いるんかい! 素直か」と高木さんが突っ込んだ。着替えを終えた宮本が「それ欲しい!欲しい!」と竹内さんのタペストリーの話に乗っかってはしゃぎながら合流した。高木さんが「佳林ちゃん、タペストリーは壁に貼るだけだよ」と下ネタを匂わせる?発言をしたがパスの出し手と受け手の意図が噛み合わず一瞬だけ変な空気になった。宮本さんが「タペストリーって家を出るときに行ってきますって言うためにあるんじゃないの?」と言ってすぐに空気を元に戻した。

宮本さんの誕生日を祝うセグメントがあった。17 HAPPY BIRTHDAY KARINの文字と苺?でdecorateされたケーキならぬ厚焼き玉子が袖から運ばれてきて、大好きな厚焼き玉子だ!と宮本さんは感激していた。その前の曲の終盤、何の曲かは忘れたが「愛してる」という歌詞が何度か続く箇所があって、そこをメンバーさんが代わる代わる宮本さんに近寄って抱きついて歌うというのをやっていて、宮本さんが泣いていた。そのタイミングで誕生日厚焼き玉子が登場したので二重のサプライズになって祝福の演出として成功していた。会場全体でハッピーバースデーの歌を歌った。私が平日に川崎のイベントに参加するには仕事の午後半休を取る等の特別な対応が必要であり、現に今日も有給を取っている。月末月初に二日連続でそれをやるのは厳しいので明日の宮本さんのイベントは申し込まなかった。今日のコンサートでこうやって祝福に参加できてよかった。

めちゃくちゃいい位置だったし、全体的に会場が盛り上がっていてメンバーさんも「皆さんの熱気が凄い」と言及していい雰囲気だったし、事前にお酒をちょっと入れたことでいつも以上に音楽に乗れたし、宮本佳林さんへの祝賀もあったし、グッズ列で遭遇したいがぐりオタクのことを忘れて存分に楽しむことが出来た。

アンコールは「佳林! 佳林!」だった。昨日の福田花音さんのfinal講演で「かにょん!」と叫んでいるときにも思ったが、最後が「ん」の3文字のコールは若干やりづらい。最後の「ん」を一音として言わないといけないからだ。4文字だと言いやすくなる。例えば仮に小林よしのりさんがJuice=Juiceさんの一員で今日が彼の誕生日だとして「よ・し・りん」だと「ん」が「り」とつながって言いやすくなるのだ。

最後の挨拶で宮崎さんは「今ドラマの撮影をしているんですけど、やっぱりライブが楽しいんです。皆さんの反応を直に見られるので。どんどん笑顔になっていく人や、どんどん汗だくになっていく人がいる」とコンサートへの愛を語っていた。高木さんは「今日はもっとガラガラになるかと思っていた」と笑いを誘い「だから出てきたときお客さんがたくさんいて嬉しかった」とおっしゃった。植村さんは「かりんちゃんみたいにパキパキに踊りたいですけど(宮本さんはいやいやという感じで恐縮した表情と謙遜のリアクションを見せていた)、すぐには難しいのでまずはりんかを見習って筋トレに励みたい」とおっしゃっていた。

高速握手会は、植村さん、宮崎さん、高木さん、金澤さん、宮本さんの順番だった。植村さんの感情がない反応に私の心がクラブチッタで砕け散った(クラブチッタと砕け散ったで韻を踏んでいる)まではいかないがやや削られた。他のメンバーさんはいつもの元気と愛想を振りまいてくれた。宮崎さんが見せてくれたこれ以上ないくらいの笑顔が私の頭にこびりついて離れない。高木さんが私がかけていたアラン・ミクリのメガネをいじってくれた。それを見て次の金澤さんも「あら」と私のメガネに注目してくれた。最後の宮本さんも何かを話しかけてくれたが聞き取れなかった。19:48に終演し、会場を出たのが20:38だった。仕方ないけどこの規模の会場だと握手会の待ち時間がだいぶ長くなる。

家に着いてから、コレクション生写真を開封した。1枚目は宮本佳林さんだった。いいね、と呟いてアルバムに収めた。2枚目を開けると、そこには満面の笑みを浮かべた植村あかりさんがいた。最高のオチだった。