2017年2月25日土曜日

つばきファクトリー メジャーデビューシングル発売記念イベント (2017-02-22)

1.

「幸福度が高そうですね」―東京都に住むギャンブル依存症の無職・中島(仮名)は周りを見渡してつぶやいた。目の前にはディファ有明。有明テニスの森駅から徒歩で3分のところにある、多目的施設である。中島は自分がここに来ることをほんの2時間前まで分かっていなかった。TwitterのDMでC(仮名)から2月22日(水)の昼から夜にかけて会えないかと打診され、受諾したはいいものの、よく考えてみると目的を知らされていなかった。新大久保の駅前で待ち合わせたCは、中島と出会うや否や、まずは昼飯を食おうとお気に入りのネパール料理店の方向に足を進めた。今日の用件が何なのかますます分からなくなった中島は、思わず聞いた。「今日は、何を…?」。答えは「分かっていると思っていたけど」だった。そんな無茶な、と思いながら平静を装う中島が「いや、全然わからないです」と返すと、Cは(理不尽にも)少しがっかりしたような様子でため息をつき、ようやく説明してくれた。何でも今日はつばきファクトリーというグループがメジャー・デビューする日で、そのイベントを観に行くのだという。中島は心配していた。呼び出されたのは何かの陰謀で、翌日には東南アジアで臓器を抜かれているのではないか…。無職特有の将来への漠然とした不安と、十分な食事を摂れていないことによるさまざまな栄養素の不足から、被害妄想じみた考えが頭に浮かんでしまうのである。つばきファクトリーというのが何なのかはいまいち把握していないのだが、今日の目的が分かり、ホッとした。サマエボウジという一風変わった料理をいただいてお腹も満たせたことで、不安は解消し精神的な余裕が生まれた。その証拠が冒頭の発言である。ディファ有明に集まったつばきファクトリーのファンを観察して論評を加えるだけのゆとりが生まれたのである。

Cによると今日のイベントは18時半から始まるが、参加するには会場に行ってあらかじめCDを買う必要がある。CDを買うと整理券が配られるという。販売が14時から始まる。ディファ有明に着いたのが13時なので、だいぶ時間がある。それでも既に人だかりが出来ている。ざっと300人近くはいそうだ。
「中島さんが普段行くSKEの現場と比べて、だいぶ来ている人の感じは違うの? 例えば年齢層とかさ」
「年齢は…同じくらいかもしれませんね」
「いつも気になるんだよね。こういうところに集まっているのはどういう人たちなんだって。職業とか、年収とかさ。すげえ知りたい。こんな平日の昼間にさ、普通は来られないよ」
あなたも会社を休んでここに来ているでしょうが、と言いたくなるのを中島はギリギリで抑えて頷いた。
「年収は、高くはないでしょうね。僕が平日のSKEの現場で隣の人と話すと、サービス業で働いていることが多いですね。仕事上、土日はどうしても来られないということで」

近くで並んでいた青年が読んでいるアイドル雑誌を見て、中島がCに言った。
「『○○(雑誌名)』ですね。過去に何度か買ったことあります」
「うん。つばきファクトリーの特集があるんだよ、たしか。でも『○○(雑誌名)』って文章がクソじゃない? インタビューは別にしてもさ。インタビュー以外の文章が。アイドルという対象を客観的に書いてもつまらないということだろうね」
「それもあるかもしれませんけど、それ以前に誤植が多すぎます。どうやったらこんな誤植になるんだというような、本当にひどいレベルで。たとえばですけど、記事の題名が乃木坂で、サブタイトルが違うグループだったりとか、そんな感じなんですよ」
「そんなことがあるんだ」
「アイドルのことをよく分かっていない人が介在している可能性があります。たぶん3人くらいで作っているんじゃないですかね。文章にしてもクソさの傾向が雑誌全体を通して似ているので、おそらく一人が大量に書いていると思うんですよね」
「文面から知性というか教養をあまり感じないんだよね。何かの分野について少し難しい本を読んだ経験を持つ人が書いた文章には、その分野とは関係のない文章であったとしても、それがにじみ出るんだ。『○○(雑誌名)』の文章はそういう感じがしない。あまり本を読んだりはしていない人の文章に見える」
「分かります」
「あと、あれだよ。言葉をよく理解しないで使っている。例えばアカデミックな背景があるようなカタカナの単語を、何となく用いている。今はウェブで検索すれば簡単に言葉の定義や背景が分かるのに、そんなこともしていないというか、気にならないんだろうね」
「『エモい』みたいな感じで適当に使っているんでしょうね」

2.

葛根湯がなければ今日、ここにはたどり着けていなかったかもしれない。2月22日のイベントは、Cにとって絶対に外せなかった。元々、つばきファクトリーの熱心な支持者ではなかった。小野瑞歩が昨年の夏に加入するまでは、このグループにはそれほど興味がなかった。CDを買って曲に親しみ、DVD MAGAZINEなどを通して各メンバーの個性を知るようにはなったが、メジャー・デビューの日に現場に居合わせたいと思うようになったのはごく最近のことだ。2016年12月と2017年1月のファンクラブ限定イベントに足を運び、彼女たちのメジャー・デビューに対する思いを知っていくにつれ、徐々に情がわいてきたのである。1月29日のイベント『キャメリア ファイッ! Vol.5』1回目で、2月22日のリリース・イベントがディファ有明で行われることが、「前説のお兄さん」(つばきファクトリーのイベントでよく前説を勤めるアップフロント社員とおぼしき紳士)から発表された。仕事の早いCは翌日に有給を申請した。1月30日から2月21日は、参加する現場が一つもなかった。その渇望感も相まって、この日を本当に心待ちにしていた。2月20日(月)、急に体調を崩し、会社を休んだ。頭が痛くて、全身がだるい。布団から起き上がることすら難しかった。この日はほぼ完全に寝込んだ。夕方に何とか家を出て近くのセブン−イレブンで食料を調達するのが精一杯だった。iPhoneの歩数計には2月20日は708歩と記録されている。思い返すと、土日から調子はおかしかった。花粉症だと思い込んでやり過ごしていた。葛根湯を飲んで寝ると、その花粉症だと思っていた症状が一気によくなった。翌日も会社を休んだ。何はともあれ、集中的な休息と葛根湯のおかげで、2月22日には外出できる目処が立った。一時はどうなることかと思った。もし体調を崩すのがあと一日後ろにずれていたら、諦めざるを得なかっただろう。

「あと4時間あるのか」と苦笑を浮かべながらCが言うと、中島も笑った。Cたちの前には200-300人もの購入希望者たちがいたにも関わらず、列はサクサク進み、14時の販売開始から30分足らずでCD、イベント参加券、握手券の入手が完了したのである。こんなに早く済んだのは、窓口が4つあったのと、HMVの出張販売だったので販売員たちが手慣れていたのと、商品が3種類(通常磐A・B・C)しかなかったという三つの理由だろう。「どこか行きたいところある?」とCが聞くと、中島は特にないというので、ディファ有明から歩いて5分ほどで着くテニス場のクラブハウス2階にあるカフェに入った。

3.

イベントの観覧と終演後の握手を終えて会場を出た中島は、一連の時間を「異文化体験」と称した。彼の宗教であるSKE48の現場とはだいぶ雰囲気が違った。今日のイベントでは開演前にスタッフ(Cによると有名な人らしい)がステージに現れた。彼が連続ジャンプが禁止である旨を告げた後に、それ以外に禁止事項がないと明言したときは恐ろしかった。今はまだおとなしいこの観客たちが、イベントが始まるとどう豹変するのか、不安で仕方がなかった。しかしふたを開けてみると連続ジャンプどころかみんな決まった曲の決まったタイミングでしか飛ばないし、曲中でもそれ以外でもメンバーの名前をそんなに叫んでいない。

開演前、中島の左にいた青年が、Cに話しかけていた。
「すみません、小野瑞歩さんのファンでいらっしゃいますか?」
「はい」と答えたCに、紙切れを見せながら「定価で買いませんか?」
それを一瞥したCは小さく頷くとおもむろにカバンから財布を取り出し、お金を手渡した。青年は握手券をCに渡して、「ありがとうございます」と言った。さっきCにハロプロの個別握手会の仕組みを聞いて、驚いた。何でも、誰の握手券が当たるかはランダムだそうだ。より正確には、つばきファクトリーは9人いて、Aチーム(4人)とBチーム(5人)に分かれる。購入者はチームを指定するが、メンバーは指定できない。Cの場合はお目当ての小野瑞歩がいるBチームを12枚買ったら5人の内訳が4枚、4枚、2枚、2枚、0枚で、小野瑞歩は2枚だったそうだ。2枚でも少ないし、仮に12枚も買ってお目当てのメンバーが0枚だったらやっていられないだろうな。SKE48の個別握手会は、まず買う時点でメンバーを指定する。その上、本人確認がある。だから望まないメンバーの券が手元に来るということはないし、仮に交換や売買をしたくなったとしても本人確認の関門を越えられない。こうやって自由に売買と交換が出来る(というか交換しないと成り立たない)仕組みなのは面白い、というかちょっと不憫である。今日の開演前にCはTwitterを検索し、小野瑞歩の握手券を持っている見ず知らずの人にリプライで交換を持ちかけていた。

ランダムといえば、CDを買ったときの入場整理券の番号もそうだった。何でも何時間も並んで1,000番台を当てた人がいたらしく、笑った(ディファ有明の収容人数は1,129人)。中島とCは342番と500番だったが、500番が呼ばれるタイミングで一緒に入った。中途半端に前に行くよりは段差のある後方が見やすいというCの判断で、左寄りの後ろから5列目くらいのところに座った。あの人は有名なオタクなんだとCに教えてもらった人(白髪交じりの髪を後ろに結んでいる)が、近くにいた。たしかにCが言うとおり見晴らしがよく、ステージに立つメンバーの全身が見えたが、メンバーの顔まではよく見えなかった。ただでさえつばきファクトリーの顔と名前が一致しないどころか顔も名前もほとんど知らない状態だ。さっきカフェで公式ブログを斜め読みした程度である。文字情報としては唯一、小野瑞歩を認識していた。Cのブログによく出てくるからだ。個別メンバーを認識していなかったし、距離もあったので、このメンバーがよかったというような感想を言うことは出来ない。しかし生歌のパフォーマンスは見応えがあった。どちらかというとダンスよりは歌に比重を置いたパフォーマンスだと感じた。SKE48の場合は基本的に全部口パクなので、そこが大きな違いだった。

終演後の握手会では、カレーにナスを入れるかどうかを聞くつもりだった。これは中島が得意とする握手会のプレイ・スタイルである。出来れば全員に聞きたかった。せめて小野瑞歩だけにでも聞いてCに報告するつもりだった。結果は、一人にも聞けなかった。原宿のポスターを見て、小野瑞歩は入れそう、山岸理子は入れなさそうという予想を立てていた。大人っぽい顔立ちの子はナスを入れて、子供っぽい子は入れない傾向があるからだ。実際に握手をしてみると、とてもではないがそんなことを聞ける雰囲気ではなかった。何とか最後の子(山岸理子)だけにでも聞こうかと思ったが、号泣してこの世の終わりのような顔をしている彼女に投げる質問としては難易度が高すぎて、断念した。

4.

「見えてたよ」―Cにとって今日のイベントの記録として書き残しておくべきはこの5文字に尽きると言っても過言ではない。終演後の握手会。シンデレラ・タイム(労働基準法により18歳未満の子を21時以降は働かせてはいけない)という制約のため、普段よりも高速であると「前説のお兄さん」が説明した。それもあったし、今日つばきファクトリーにかけるべき言葉はこれ以外にないだろうと考え、Cは「おめでとう」と言って左に流れる機械と化した。たしか小野瑞歩は3人目だったと思う。前の二人のときと同じように「おめでとう」と言って次に流れようとすると、思いがけず向こうから話しかけてくれた。それが「見えてたよ」だった。以前Juice=Juiceのライブハウス(和製英語)公演を最前で観させてもらったときに金澤朋子から「見えてましたよ」と言ってもらったことがある。もちろんありがたかったし、びっくりもしたが、意外ではなかった。何せ最前だったので。イヤでも視界には入るだろうから。でも今日に関して言えば、Cがいたのはだいぶ後ろの方で、何ならCが小野瑞歩をちゃんと見えていたかが怪しいくらいの距離だったのだ。開演前にCは「双眼鏡を持ってくればよかった」と中島にこぼしていた。

「小野瑞歩から『見えてたよ』って言われた」
握手を終え、ビニール袋を破いてカバンを取り出しながら笑うCの顔は上気していた。
「本当ですかね? とりあえず言ってみたんじゃ」
「いや、本当に見えたんだよ」
「僕だったらそんなことを言われたら疑っちゃいますね」
中島の冷静なコメントは、Cにはまったく響いていなかった。

2013年12月23日。池袋サンシャインシティ噴水広場。スマイレージの発売記念イベントが行われた。無職だったCはCDを一枚も買わずに無料エリアからイベントを観覧した。たまたま母親と買い物に来ていた少女がそのステージを目にし、自分もあんなアイドルになりたいと思うようになった。その時点で彼女はモーニング娘。を知ってはいたが、ハロプロ全体に興味を持って目指すきっかけになったのが、そのイベントだった。2015年の4月に、彼女はハロプロ研修生に加入した。2016年12月29日に、彼女はハロプロの研修生内ユニット、つばきファクトリーの一員として噴水広場に立った。このときには有職者CはCDを3枚購入し、優先エリアから観覧した。2017年2月22日、彼女の所属するつばきファクトリーはメジャー・デビューを果たした。その彼女とは、小野瑞歩である。

たかだか数年かもしれないけど、皆さん(ファン)と出会えたのは奇跡。メンバーと出会えたのも奇跡。山岸理子が今日のイベントで、そんなことを言っていた。私と小野瑞歩が同じイベントを観ていたのも奇跡だし、そのイベントをきっかけに小野瑞歩がハロプロを目指したのも奇跡だし、彼女がハロプロ研修生に入ったのも、つばきファクトリーに選ばれたのも、今こうやってハロプロのメンバーとファンという関係でいられるのも、すべてが奇跡だ。小野さん、これまでつらいこともたくさんあっただろうけど、諦めないで続けてくれて、ありがとう。ひとまず、メジャー・デビューという形で報われたね。これからも小野さんが一生忘れられない経験をもっともっと積めるように、一ファンとしてこれからも出来るかぎり応援します。

2017年2月2日木曜日

キャメリア ファイッ! Vol. 5 (2017-01-29)

「もし○○さんから電話がかかってきたら、俺からの伝言で、死ねって言っといて」。これは私が1月27日(金)に職場を去る際に言い残した言葉です。私はいい歳をした大人ですし、会社員というのを通算10年以上やっています。仕事中に他人への攻撃的な態度がまったく表に出ないとまでは言いませんが、それが一定の線を超えないように自分で制御しているつもりです。プロフェッショナリズムと言ったら完全に言い過ぎなのですが、自分の年齢と立場をわきまえた言動を取っているつもりです。例えば仮に会社にクソ野郎がいて「死ね、デブ」と思っても実際に本人に向かって「死ね、デブ」とは言いません。例が極端でしたが、冒頭の「死ねって言っといて」も自分の中では一線を超えた発言でした。それを分かった上でも発せざるを得ないくらい、怒りに支配されていました。その後にいつもの焼鳥屋さんに寄ったのですが、メニューを手に持ったまま数分間、何も決められませんでした。頭が回らない。会社での出来事で脳みそをガンと殴られた感覚がありました。ジン・ライムをちびちび飲むと、ダメージを受けた脳が麻痺して楽になる感覚がありました。

一週間の労働の、最悪の締めくくりでした。金曜日の夕方までは順調だったのですが、最後の最後に精神をかき乱されて、土日を迎えました。週末に何かしらの処置をして精神を整えないといけないと思い、土曜日にはマッサージを受けました。背中の張りをほぐしてもらったことで、だいぶリラックスが出来ました。途中で少し寝てしまうほどでした。いつも背中がこるんですよ。昔はとにかく腰が痛くて困っていました。ひどいときには咳をするだけで腰に痛みが走るほどでした。10年くらい前に病院に行ったらヘルニアと診断されました。カラダ・ファクトリーというマッサージ屋さんに通いまくったら(一時期は週に一度行っていました)腰の慢性的な痛みが引いてきて、その代わりに背中がこるようになったんですよ。今は月に一度マッサージに行くくらいで一応は何とかなっています。腰痛持ちだった頃に比べれば、症状としてはだいぶ楽になりました。何かで読んだことがあるんですけど、背中の痛みって精神的なストレスと密接につながっているらしいんですね。普段から背中が痛みがちな上にそれを加速させる出来事が金曜日にあったので、自分をいたわってあげようと思ったんです。

1月29日(日)には、つばきファクトリーさんのFCイベントを観させてもらいました。3回公演で、仮にすべて当選したとしてさすがに同じイベントに3回つづけて入るのは常軌を逸していると私の中のリトル良識人がささやき、申し込むのは1回目と2回目だけにしておきました。はじめは。でも我慢しきれなくて期限の直前に3回目も申し込みました。結局、1回目と2回目が当選、3回目は落選でした。「キャメリア ファイッ!」というつばきファクトリーさんがメジャーデビューするまでの応援企画です。月に一度やっていましたが来月(2月22日)にはデビューが決まっているので今回のVol.5で最終回です。私が「キャメリア ファイッ!」を観させてもらうのは前回のVol.4が初めてでした。

私は昔、IBMのThinkPadを愛用していました。キーボードの叩き心地と、真ん中にあるマウス代わりの赤いポッチ(トラックポイントというらしい)が好きでした。ある日、キーボードに飲み物をこぼしてしまいました。ぷしゅう、という音を立てて画面が少しずつ暗くなり、二度とつかなくなりました。ドライヤーで乾かしてしばらく待てば何事もなかったかのように使えるのではないかという淡い期待はもろくも崩れました。それ以来、ラップトップのコンピュータは一度も買っていません。デスクトップであればキーボードを入れ替えれば済みます。わずか百数十円の飲み物をちょっとこぼしただけで10数万円のコンピュータが全壊する恐ろしさとはもう向き合いたくありませんでした。忘れはしません。そのときにこぼしたのが、Mt.Rainierのコーヒー飲料(正確には乳飲料)でした。

今回のイベント会場は、Mt.Rainier Hallでした。最初に会場の名前を聞いたときはあまり気に留めていませんでしたが、現地で会場のロゴを見て戦慄が走りました。私のThinkPadを壊したあのコーヒー飲料(正確には乳飲料)のプラスチック容器に印刷してあるあのロゴが、会場の入り口にでかでかと掲げてあったからです。私にとっては挑発行為と言ってよかった。親の敵のようなロゴです。10年ほど前のあの事件を思い出さざるを得ませんでした。Mt.Rainierには故郷の村を焼かれたようなものです。Mt.Rainierの村を焼き返すことも検討しましたが、その村がどこにあるのかも分からなかったので、もうMt.Rainierのことは許すことにしました。500円のドリンク・チケットで交換したMt.Rainierのコーヒー飲料(正確には乳飲料)は二口くらい飲んで、捨てました。

1回目が14時45分開場、15時15分開演。2回目が16時45分開場、17時15分開演。12時50分にグッズ列に並びました。会場は建物の6階でした。その時点で列の最後尾が3階と4階の間でしたので、2階半ぶん並んでいたということです。非常階段に並ばされたのですが、薄暗いため本も読めず、本当に無駄な時間でした。13時20分に後ろを見ると10人くらいしか増えていなかったので、私の並び始めたタイミングが中途半端だったのかもしれません。エスタシオンの指示で我々は二列に並ばされました。13時49分に強面のダンディーな紳士(現場でよく見る)がエスタシオンの係員を呼びつけて、右と左で進み方がぜんぜん違うじゃないかと叱りつけていました。最初はいらついていちゃもんを付けているのかと思いましたが、よくよく聞いてみると至極ごもっともなことを言っていました。左右の列でちゃんと進み方が均等になるように左、右、左、右と順番に売場の窓口に案内しろと言っていました。その紳士の言うことは正しそうでした。エスタシオンの怠慢です。ただ、その紳士も部下に指導しているのであれば格好がつきますが、10代の美少女9人組が出演するイベント現場のグッズ列で係員に言っているわけでして、その絵の間抜けさとの折り合いをご自身の中でどうやって付けているのかが気になりました。私の場合は、自分なんかが当選させてもらって、楽しませてもらっているだけでありがたいなんていう気持ちがどこかにありましてね、多少の問題があってもマジになって苦情を言う気が起きないんですよね。14時8分に購入が完了しました。コレクション生写真を6枚買って小野瑞歩さんが一枚も当たらなかった上に山岸理子さんの同じ写真が2枚ダブりました。交換している人に声をかけて、谷本安美さんの写真と引き替えに小野瑞歩さんを1枚を入手することには何とか成功しました。後で別の近くの紳士が「厳しい引きだなあ…6枚しか買っていないのに小野瑞歩セットが出た…」とイヤそうに言っていました。私は現場には基本的に一人で行きたいですし、あまり他の人と群れたくないのですが、コレクションものの交換だけに関しては、同士がいればなあと思います。

「いないとは思いますがさわやか五郎目当てで来た人がいたらごめんなさい」というつかみで笑いを取ったアラケンさんが、イベントの司会でした。この間、「キャメリア ファイッ!Vol.1」のDVDを観たんですけど、司会は鈴木啓太さんとアラケンさんの二人体制でした。つまりアラケンさんは「キャメリア ファイッ!」にははじめから関わっているんですね。正直そこまでメンバーを熟知している感じも見えませんでしたけど(何というか、どのグループやメンバーでも使い回せるような汎用的な突っ込み方が多かった)、ストレスは感じさせない司会が出来ていました。

つばきファクトリーさんの衣装は巫女さん風でした。白いロング・ソックス、膝上丈のスカート。前日の1月28日に新沼希空さんがブログの最後に何の説明もなく「P.S. 絶対領域」と書いていたんですけど、これのことを言っていたんでしょうね。ブリリアントです。衣装を考案した側も理解(わか)っている。いくら巫女さんをモチーフにしたと言っても本当にまんま巫女さんにして脚をぜんぶ隠してしまったらすべてが台無しなんです。巫女さん「風」でありながらあくまでもハロー!プロジェクトの衣装で押さえるべき最低限の要件は押さえている。私が1回目で観察した限りでは絶対領域の露出度トップ3は、岸本さん、新沼さん、小野さんでした。1回目で小片リサさんが説明したところによると、巫女モチーフの衣装には1月のFCイベントだから正月を意識したのと、つばきファクトリーが来月のメジャー・デビューに向けて目標を立てて進んでいく時期だからという意味合いが込められていたそうです。

今回のイベントの目玉は何と言っても、各メンバーによるメジャー・デビューに向けた決意表明でした。これだけを聞くために会場に足を運ぶ価値があったと言ってもいい。それくらいに重要だったと思います。1回目の決意表明は小野瑞歩さん、谷本安美さん、小片リサさんの順番でした。各自が原稿用紙に書いてきた文章を読み上げるという形式でした。
・小野瑞歩さん:人を笑顔にする仕事に就くのが、私の小学生の頃からの夢だった。先生からもっと具体的に考えてみてと言われたが、当時の私は何になればいいのかが分からなかった。モーニング娘。さんのようになりたいと思うようになった。アイドルは人を笑顔にする、夢と希望を与える仕事。これから向上心を持ってたくさんの人を笑顔にしていきたい。(概要)
先生から…くらいのところで感極まり、以降は涙を流しながら懸命に読んでいました。モーニング娘。の名を何度も出していました。私が小野さんの涙を目にするのは昨年末のサンシャイン噴水広場でのリリース・イベントに続き、二度目でした。こう言うと変かもしれませんが、いいものを見させてもらいました。最高のご褒美です。
・谷本安美さん:これからつばきファクトリーが活動していくにあたり、何かで話題になるのが重要。新人にしか穫れない賞を穫りたい。そのためにはスキルアップが必要。表情ひとつで魅了できるようになりたい。(概要)
最後に前の小野さんを意識してうえーんと泣き真似をする谷本さんに「何で!」と抗議して小野さんが口を尖らせていたのが面白かったです。
・小片リサさんの決意表明は、残念ながらあまり思い出せません。というのが読み始める前から小片さんが泣いてしまったので、それがとにかく印象的で。いきなり「もうやだー」と言ったときは谷本さんに続いて小野さんを冷やかしているのかと思いました。小片さんがこういう場面で泣くとは思いませんでした。どちらかというと冷静、冷徹という印象があったので、私にとっては意外な一面でした。

2回目は、小野田紗栞さん、岸本ゆめのさん、新沼希空さんの順番。
・小野田紗栞さん:老若男女を問わず自分のことを知ってもらいたい。そのためにはつばきファクトリーを多くの人に知ってもらう必要がある。自分のよさはまだ知ってもらえていない。どれだけ知ってもらえるかは自分のこれからの努力にかかっている。十分な努力をすれば目標に近づけるのは、私が研修生からつばきファクトリーに抜擢されたことで証明されている。(概要)
この子は自分が有名になるのが一番の目的で、グループでの活動はそのための手段という位置づけだというのが分かって、興味深かったです。私が見させてもらった6人では小野田さんの決意表明が最も力強く、ハキハキしていました。
・岸本ゆめのさん:私はイヤなことがあったときは音楽を聴くことで忘れる。私もイヤなことを忘れられるような歌を歌う。そのために一生懸命、努力する。(概要)
岸本さんは、こうしたいではなく、こうしますという断言口調が多いのが印象的でした。
・新沼希空さんは最後に決め台詞を噛んで言い直して、その後にアラケンさんの振りで観客も一緒にそれを言ったのは覚えているんですけど、肝心の決意表明の内容が思い出せない…。数日後にふとしたときに急に断片的に思い出すのかもしれない。と思ったら執筆を中断して、洗濯とシャワーを済ませたら急に思い出しました。全員がセンターで全員がエースのグループにしたいと言っていました。
こうやって思い返しても記憶が歯抜けなのが残念です。Twitterで誰かが、あの決意表明はYouTubeでも文字でもいいからもっと多くの人が見られるように公開してくれと言っているのを見ました。私もまったく同感です。特に3回目は入ることが出来なかったので、秋山眞緒さん、浅倉樹々さん、山岸理子さんの決意表明がどうだったのか知りたいです。でも仮に何らかの形で一般公開されたとしても、その場に居合わせる体験には及ばない。非言語的な部分というんですかね、話を詳しく覚えていなくても、同じ空間にいることで伝わってくるものがあったんです。そういう意味では1回目と2回目を会場で聞くことを許された数百分の一になれたのは本当に運がよかった。しかも最高なことに、小野瑞歩さんの決意表明と涙を近い位置から目と耳に焼き付けることが出来たんです。1回目はD列(前から4列目)で、2回目は一番後ろの列でした。

決意表明以外は、冒頭のフリー・トーク、2種類のゲーム、ミニ・コンサートでした。2回目のフリー・トークで何かある人?というアラケンさんの問いに小野瑞歩さんが真っ先に手を挙げました。曰く、ハロコンで地方に行かせてもらっているが、これまで私は関東以外はあまり行ったことがなかった。握手会などでその地方のことをファンの方が教えてくださって、それぞれの地方について詳しくなれてきているんじゃないかと思う。当然のようにアラケンさんから具体例を求められたのですが、そこで小野さんは困ってしまい、仙台は○○(聞き取れませんでした)がおいしい。他には?と聞かれ、牛タンがおいしい。北海道は…寒いという苦し紛れの回答をひねりだしました。私は笑いました。自分から話題を振っておきながら想定される問いへの答えを用意していないのが愛おしいです。後は小片リサさんがある先輩と映画を観に行く約束をしたと言っていました。誰かは言わない、実際に行ったら事後報告する、まだLINEの交換もしていないそうです。山岸理子さんはモーニング娘。の尾形はーちんとよく話すそうです。意外でしょ?と少し得意げに周りのメンバーに言っていました。秋山眞緒さんはアンジュルムの佐々木莉佳子さんに憧れているらしくて、佐々木さんだけを拡大して画像をスクショしているそうです。これは本人談ではなくメンバーの誰かが暴露したのですが、言わないって約束だったじゃん!と秋山さんは怒っていました。すると「本人にも言ったから」と追い討ちをかけられていました。

つばきファクトリーさんが力を合わせてゲームに取り組み、正解した数だけ、列単位で観客にステッカーを配りました。公演ごとに二つのゲームがありました。1回目はまずメンバー一人ずつが「つばきふぁくとりーめじゃーでびゅーおめでとう」のひらがなを使って単語を作る。いちど使ったひらがなは二度と使えない。順番を決めるときに小片リサさんが「頭の回転がよろしい人が後ろに行った方がいい」と言ってから「いちばん前は樹々ちゃんね」と浅倉樹々さんを遠回しにディスって笑いを取っていました。浅倉さんは膨れながらも反論せず先頭に立ちました。順番を巡ってはメンバー同士でキャーキャー言いながらすったもんだしていましたが、小片さんが最後尾になりました。頭いいキャラを自称したことがある小野さんが一番後ろにされそうになって、イヤだと必死に反抗して後ろから3番目くらいに落ち着いていました。いちばん前に指名された気分はどうだというアラケンさんの問いに浅倉さんは「自分がいちばん頭いいみたいなさ…」と小片さんに対して不満タラタラでした。小片さんは笑っていました。このゲームでは見事に全員が単語を作り9列分のステッカー贈呈が成立しました。1回目の次のゲームは、メンバー全員がゼッケンを付けて、アラケンさんが出す問いへの答えを、並んで数字で表すというものでした。計算問題とか。アラケンさんの判定が甘々で、半ば答えを言っているようなときもあって、その緩さがよかったです。こちらでは3問正解し、1回目の公演では合計で12列にステッカーが配られました。私のD列もその中に入っていました。メンバーたちが抽選箱から列の名前が書かれた紙を引いて読み上げるのですが、小野さんはE列を引いていました。

2回目の公演では、一つ目がジェスチャー・ゲーム。3人がお題のポーズをして、残りの6人が当てる。一つ目は「戦隊ヒーロー」。岸本ゆめのさん、小野瑞歩さん、浅倉樹々さん。後の6人が輪になって話し合って、「ヒーロー」と正解しました。小野さんのポーズがスペシウム光線のようだったから危なかったねとアラケンさんが言いましたが、小野さんはスペシウム光線を分かっていなさそうでした。二つ目は「お相撲さん」。谷本安美さん、小野田紗栞さん、新沼希空さん。谷本さんと小野田さんの時点で、回答者の6人は答えが分かっていました。最後の新沼さんは股割りの格好をしていました。最後のお題は「山岸理子」。お題が出ると会場は笑いに包まれました。秋山眞緒さん、小片リサさん、山岸理子さん。最後の山岸さんが何もせず立ち尽くしてアラケンさんが「そのまんまじゃん!」と突っ込んだのが大きなヒントとなり、正解しました。自分のポーズをするのはどうだったかとアラケンさんに聞かれた山岸さんは、いつもボーっとしてるので(そのポーズをした)…と言っていました。ゼッケンを使ったゲームでは計算問題の他に、清水佐紀さんの身長は何センチでしょう?というような問題が出ました(答えは153センチ)。ここでも1回目と同じようにアラケンさんがつばきファクトリーさんを助けまくっていて、答えを言ったり、正解が出るまで何度も答えさせたりいました。2回目の公演におけるゲームの正当数は計10問でした。ここでも私の列は当たりました。小野さんはJ列を引いていました。

ミニ・コンサートのセットリストは1回目が『うるわしのカメリア』、『大きな愛でもてなして』、『Just Try!』、2回目が『Just Try!』、『大きな愛でもてなして』、『初恋サンライズ』でした。私はセットリストを覚えるのが苦手ですが、さすがに3曲なら覚えられます。『大きな愛でもてなして』は℃-uteさんのコンサートで何度も聴いているので昔とった杵柄で、乗り方が私の身体に染み付いていました。観客全体がそんな感じでした。Oh yeah, oh yeahのところで手でOとYの形を作るところとかね。『初恋サンライズ』のいわゆるサンライズ・ジャンプのタイミングを完全に習得したのが、私がこのイベントで得た大きな収穫です。事前にYouTubeでビデオ・クリップを何度か観ていたのが功を奏しました。ステージにいるメンバーたちとサンライズ・ジャンプのタイミングがシンクロナイズしたときの爽快感が最高でした。ハロコンではこの曲のフックでひたすら飛び続けている人が一定数いましたが、サンライズ・ジャンプはそうじゃないんです。もっと洗練されていて難しいのです。つばきファクトリーさんのコアなファンの間では正しいサンライズ・ジャンプが徐々に浸透してきているのを実感しました。ただ、いつも現場に来られる人たちばかりがファンでははないですし、現場で見てやって覚えろというのはちょっと酷です。サンライズ・ジャンプのタイミングに関しては『ハロ!ステ』に教育用の動画を公開すべきなんじゃないですかね。それにしてもサンライズ・ジャンプは楽しかった! 2回目の公演では『初恋サンライズ』が終わると大きな歓声とポジティヴなヴァイブスで会場は満たされました。

1回目公演の最後にはつばきファクトリーさんから発表があるとのことでしたがメンバーたちは知らされていないようでした。「この方の登場です」とアラケンさんが言うと出てきたのはスタッフの人で、つばきファクトリーさんのメンバーたちは「なんだー」と脱力していました。12月29日の池袋のイベントでACミランのユニフォームを着ていた紳士でした。この日は日本代表のユニフォーム(背番号12)にジーンズでした。出てくると「前説のお兄さんです」と言ってから「皆さん、ガチ恋サンライズしてますか?」と観客に呼びかけていました。メンバーたちは笑っていました。メジャー・デビューのリリース週のイベント詳細がここで発表されました。メジャー・デビュー当日の2月22日は会場がディファ有明であることが明かされました。日本代表さん曰く、メジャー・デビューに相応しい会場を押さえろとマネージャーからプレッシャーを受けていた。池袋サンシャイン噴水広場は10月の段階で埋まっていたから昨年末にした。このイベントには普段ハロー!プロジェクトのコンサートに関わっているスタッフも動員する。弊社的には大変である。裏事情を交えながら説明する日本代表さんに拍手が起きました。小野瑞歩さんは、正直ディファ有明がどれだけ凄いのか分からないけど、その日をベストの状態で迎えられるようにしたいと言っていました。ディファ有明のキャパは1,128人だと日本代表さんが告げると小野田紗栞さんは口をあんぐりと開けていました。不安そうな顔をするメンバーもいました。

というような感じで週末を過ごしているうちに、1月27日(金)に私が労働で受けた苦しみはどうでもよくなっていました。月曜日には気の重い定例会議があるのでいつも少し憂鬱なのですが、1月30日(月)の朝に会社に向かう私の足取りは軽かったです。純真でひたむきで心を打つつばきファクトリーさんの決意表明、心底スカッとするサンライズ・ジャンプ、最後のお見送り会でしっかり目を合わせてくれた小野瑞歩さん。○○さんに死んでほしいとはこれを書いている今でも思っていますが、そんなことよりもつばきファクトリーさんの方が私には大事なんです。○○さんが死ぬことよりも、小野瑞歩さんがハロー!プロジェクトにいてくれることの方が嬉しいんです。労働のワックさに打ち勝つ楽しい記憶で私の脳みそを満たしてくれたつばきファクトリーさんに感謝しながら、会社に向かいました。