2017年4月24日月曜日

FRAGILE TOUR -FINAL- (2017-04-15)

サンシャイン池袋のすぐ横にある公園には猫がたくさん住み着いていて、昼時にベンチで飲食物を手にしているとたかりにくる。今日(4月24日)も一匹が私の膝の上まで乗っかってきて、身を乗り出して私の左手のケバブ・ラップにありつこうとしてきた。公園には家のなさそうな紳士たちもいるが、彼らはたかってこない。むしろ猫に餌を与える側だ。もしあの紳士たちが食事や金を無心したら通報されるだろう。猫が同じことをしたら人間に愛でられる。猫は可愛いからだ。最高の天気だったので横になりたい衝動が芽生えたが、やめておいた。現在の私は横になりすぎて背中と脇腹が痛んでいるのだ。それを悪化させてはいけない。今日は月曜なんだけど、何で月曜の昼間に池袋の公園にいたかというと休みを取っているから。風邪をひいた。思い返すと先週の火曜日くらいから前兆はあった。胃の調子が悪いと感じていた。もたれるというか。木曜日の朝に起きたら喉が痛くて、ああ風邪だなと。金曜日には咳と鼻水がひどくなった。金曜の夜に帰宅してから月曜の朝まで、ほぼずっと家で寝込んでいた。日曜の夜遅くまで頭痛が止まらなかった。こんなに長引くとは思わなかった。ここ最近というもの12月、2月、4月と2ヶ月おきに重い風邪をひいている。勘弁してくれ。マジで。

fox capture plan。“FRAGILE TOUR -FINAL-”。リキッド・ルーム。恵比寿。土曜日。4月15日。風邪をひく数日前。なぜ私はそこにいたのか? アルバム“FRAGILE”を買ったときにこのコンサートへの先行申し込みIDが封入されていて、応募したところ、当選したからだ。なぜ応募したのか? この日のスケジュールは埋まっていなかったし、fox capture planのコンサートには前に行ったことがあって凄く楽しかったからだ。最初のときはどうしてfox capture planのコンサートに足を運ぼうと思ったのか? それは私が彼らの音楽が好きで、一度は生で味わってみたかったからだ。なぜfox capture planのファンになったのか? きっかけはbohemianvoodooとのスプリット盤“Color & Monochrome”だった。bohemianvoodoo目当てで買ったのだが、この盤を機にfox capture planの虜になった。彼らが出してきたすべてのCDを買ったし、それ以降に出したCDもすべて買うようになった。bohemianvoodooを聴くようになったのはなぜ? それは上原ひろみに打ちのめされたからだ。上原ひろみを聴くまでの私はアメリカのジャズだけ、それも有名な古典だけを聴いていた。もちろん古典はリイシュー盤が千円で買えるという経済的な理由もあったが、何よりもアメリカの黒人たちによるジャズだけが本物のジャズだと思っていた。上原ひろみの音楽に衝撃を受けてからはその考えが消えた。そして伝統的なジャズそのものだけでなく、ジャズに影響を受けた色んな音楽にも興味を持つようになった。そんな中あるTwitterのアカウントが勧めているのを見てたまたま買ってみたのがbohemianvoodooの“Aromatic”だった。そもそもなぜジャズを熱心に聴くようになったのか? それは無職になったからだ。私はヒップホップをよく聴いていたのでサンプリングのネタによく使われるジャズには元々興味があった。でも何から入ればいいかが分からなかった。Madlibの作品はだいたい聴いたけどジャズそのものは数えるほどしか触れることはなかった。それが2013年5月に無職になると毎日ジャズばっかり聴くようになった。むさぼるように。ジャズが妙に沁みるようになったのだ。無職の孤独に寄り添ってくれる音楽のような気がした。私がfox capture planのコンサートの観客としてリキッド・ルームのフロアに立つまでの経緯を遡ると、2013年に無職になったところまでが明確に一つの線に結ばれる。私に無職経験がなかったらfox capture planのコンサートには来ていなかったかもしれない。

コンサートの内容や感想を直接的に表現しようとしても陳腐な言葉しか思い浮かばない。不思議なくらいに、何て書けばいいかが分からない。会場から出て、完全に満たされていたのは覚えている。出てくる言葉といえば、格好良かった。楽しかった。最高だった。○○という曲を聴けて嬉しかった。いや、それでいいのかもしれない。別に間違ってはいない。それでいいはずなんだが、何か違うんだ。セットリストが大体こういう構成だったとか、最後の最後が私が一番好きな○○だったとか、キーボードの岸本さんがこんな面白いことを言っていたとか、書けるネタはいくつかある。岸本さんが言っていたことを書き残すだけでも価値はあるだろう。そういったことを詳しく書いていけばそれなりの記事に仕立てることは出来そうなんだけど、記録と感想を残せば残すほど、あのコンサートの素晴らしさの記述からはかけ離れていってしまうような気がする。もしかすると体調がよくなってからじっくり時間を取れば、自分で納得の出来る文章が書けるのかもしれない。でも、今週は土曜日にJuice=Juiceのコンサート、日曜日にはつばきファクトリーの接触が控えていて、時間に余裕がないんだ。だからあのコンサートのことは下手に吐き出して記録として残すのではなく、自分の中にとどめておきたい。一つだけ気の利いた(?)感想を述べておく。fox capture planの音楽があって、私がいる。この世界がそれだけの単純な場所に感じられた。そんな2時間強だった。

2017年4月15日土曜日

変わるもの 変わらないもの (2017-04-09)

イリーガルな写真屋さん通称アンオフィは、朝から降り続ける雨で出店を見送ったのだろう、見あたらなかった。残念。去年の5月14日15日に、私は三郷市文化会館を訪れていた。そのときには会場前の道路沿いに店が出ていた。誰がどうやって撮影しどこから流れた写真なのかは知らないが、公式の写真に比べて質が高く値段も良心的(8枚で1,000円)なので彼らのビジネスに対して私から文句はない。もしアップフロントが彼らをよく思っていないのであれば、もっといい写真をもっと安く販売すればいいだけの話だ。そうすれば自ずと駆逐されるだろう。そうしないってことは何か裏でつながってるんだろう。知らないけど。今日は朝からいまひとつ気持ちが盛り上がらない。もう4月なのに寒いし、雨が本降りで外出日和ではない。昼に入ったインド・ネパール料理屋では出されたラッシーを定食の付属品と思って飲んだところ会計時に別途150円を請求された。150円を払うのはいいのだが、注文していなかったのでモヤモヤが残った。三郷駅に着いてから歩く方向を間違えた。逆側に5分くらい進んでからおかしいと気付き、引き返した。室田瑞希さんの日替わり写真は欲しかったが、そのためだけに雨をしのぎながらグッズ列に並ぶ意欲もなく、開場までは室内で時間を潰した。

観させてもらったのは15時開演の一回のみ。夜公演も申し込んでいたが、外れた。席は2階の5列目。2週間前にチケットを受け取ってこの番号を見たときには顔をしかめたが、2階は4列目までがファミリー席でみんな座っていたので、見晴らしがよかった。変に1階の後方に行くよりはむしろいい席だった。アップフロントから私への愛情を感じた。アンジュルムに関しては「田村」(退団済みの田村芽実さん)と印字された紫のTシャツしか持っていないので、無地の黒Tシャツで臨んだ。光る棒はカバンに入れてくるのを忘れた。公演中、大半の時間、私は双眼鏡を使っていた。レンズで追っていたのは、主に室田瑞希さん。私の目には彼女が今のアンジュルムのエースに見えた。田村芽実さんの最終公演で、田村さんが担ってきた役割を引き継ぎます的なことを室田さんが言っていたのを、私は覚えている(検索してみたら室田さんは当時のブログでもそんなことを書いていた)。あのときに宣言した通りに、アンジュルムのパフォーマンスを引っ張っているという印象を受けた。歌唱とダンスの力量、見た目の麗しさにおいて際立つ存在だし、実際に配置でも真ん中にいることが多かった。元々、私にとって今のアンジュルムではいちばん好きなメンバーなので彼女のことを贔屓目では見ていたわけだが、彼女を見ることでよいところが目に付き、ますます彼女ばかりを見て、さらによいと思っていくスパイラル、これはアイドル鑑賞あるある(スパイラルとあるあるで韻を踏んでいる)だが、今日はそうなった。

「変わるもの 変わらないもの」と銘打たれたコンサート・ツアーの初日の一回目であった。初回ならではの新鮮さを味わえた。和田彩花さんが一人でステージに立ち、『夢見る15歳』のイントロが流れる。誰もが「女の子には秘密の…」と和田さんが歌い出すかと思いきやイントロで踊っただけでメンバー紹介に移る和田さん。歌わんのかい!っていう感じでえー?と残念がる観客。その反応に戸惑い笑う和田さん。一人ずつが何かの曲のイントロで自由に踊りながら登場する。壇上に残っている一人前のメンバーが、その子を紹介する。という感じの、メンバー紹介。「次は、顔のパーツが大きい上國料萌衣ちゃん!」と室田さんは言っていた。スマイレージ時代の曲が始まったときのざわめき。『あまのじゃく』のイントロにおける、悲鳴のような歓声。旧スマイレージ時代の曲を含めて新旧を織り交ぜたセット・リストだった。豪華ではあったし、個人的には『スマイル美人』が好きなので聴けて嬉しかったが、ちぐはぐな感じはした。旧スマイレージの曲たちと、現アンジュルムの曲たちが、コンサートの中でまだうまく調和していなかった。公演を重ねていく毎に馴染んではいくだろうが、それだけではない。

つんくさんが作り上げたスマイレージの世界を上書きするほどの世界を、アンジュルムはまだ作れていない。それはアルバムがないからだ。もちろん“S/Mileage / ANGERME SELECTION ALBUM『大器晩成』”という円盤が発売されたのを私は知っているが、その名の通り寄せ集めの音源集に過ぎない。前のアルバム以降にリリースされたすべてのシングルすら網羅していない。しかも新録の6曲が通常盤・初回盤A・初回盤Bに2曲ずつ分散しているという、私たちをなめくさったワックな代物だ。これは単なる商品であって、世界観の表明ではない。アンジュルムは『大器晩成』をはじめとして数多くの圧倒的なヴァイブスぶち上げ曲を多数、取り揃えているが、それらをアルバムという単位で一つの世界に統合できていない。まだつんくさんが手がけていた頃のスマイレージの名盤『悪ガキッ①』には有無をも言わせぬスマイレージ・ワールドがあった。今のハロプロにはそれが出来ない。単発のリリースばかり。やたらとダブルA面だとかトリプルA面だとかを連発してお茶を濁す。本来であればアルバムを定期的に制作し、実験的な曲や、2-3人だけが歌う曲やソロ曲を拡充させていく。それでコンサートのレパートリーが広がるしグループ毎の特色が出てくる。シングル曲だけではそういう展開が出来ない。いつからかカップリングという概念もどこかに消え去った。総合的なプロデューサーの不在。つんくさんを切った影響。今のハロプロの致命的な弱点。

新メンバーが必要、というかおそらく近いうちに入るのではないかと、観ていて思った。上國料萌衣さんも笠原桃奈さんも溶け込んでいるが、そのぶんグループとしては良くも悪くもまとまっている。もちろんまとまっているのはいいことなのだが、アンジュルムに関しては一定の異物感があった方がいいような気がした。相川茉穂さんがいなかったのもあるかもしれないけど、どこか物足りなさを感じた。田村芽実さんがいないのは私には大きかった。めいめいが退団したのはとうの昔だろうが、ボケてやがるのかこのジジイはと思うかもしれないが、私が前に入らせてもらったアンジュルムの単独コンサートは2016年5月30日。田村さんの最終コンサートだった。つまり田村さんがいないアンジュルムの単独コンサートを観させてもらうのは今日が初めてだった。もちろんハロコンでは田村さん退団後のアンジュルムを何度も目にしているとはいえ、ハロコンと単独コンサートは別物だ。これはシングルとアルバムが違うのに少し似ている。分からないかもしれないけど説明するのが面倒くさいからいいや。

実のところ、今日の私はそこまで底抜けに(そこまでと底抜けで韻を踏んでいる)楽しむことが出来なかった。60点だな、とコンサート中に私は考えていた(公演の評価ではなく、あくまで私がどれだけ楽しんだかの点数である)。終盤の盛り上がりが楽しかったので65点に修正した。それでもかろうじて行ってよかったと思えるレベルだ。点数があまり高くない理由を考えてみると、まず私は数日前に久しぶりに筋トレを少しやって筋肉痛と疲労が残っていた。週にいちど走ってはいたが筋トレはしばらくやっていなかった。次に、4/1に福岡で得た経験が特別すぎてまだ余韻が残っていた。完全に満ち足りていて、新たなハロプロ現場をそこまで求めていなかった。そして、アンジュルムに関してはメンバー的に室田さんを除けばそこまで惹かれているわけではない。和田さんのことはリスペクトしているが。埼玉は竹内朱莉さんの地元だ。開演前には「たけちゃん! お帰り!」コールが沸き起こったが、私にとって竹内さんはアンジュルムの中でひときわ興味を持てないメンバーの一人だしお帰りとも思えないので、きつかった。黙殺した。竹内さんといえばJuice=Juiceの宮本佳林さんから好かれていることで有名だ。完璧なアイドルである宮本さんが半ば一方的に竹内さんを溺愛しているという絵には違和感がありすぎて、目にする度に私は首を傾げている。さすがにアンコールの「たけちゃん! 最高!」コールには乗っかった。開演前に比べると私の気分が高揚していたので。アンコールで再登場してからの和田さんの謝辞で気付いたが、「最高」ではなく「最強」だったらしい。私たちの「たけちゃん! 最強!」が鳴り響く中、「何でたこ焼きって言ってるんですか?」と上國料さんがメンバーに聞いていたと誰かが明かした。「私も聞こえました!」と室田さんが言った。以前にラジオ番組のヤンタンで明石家さんまさんが竹内さんのお顔を金玉になぞらえていたが、彼女の頭部を円形の何かにたとえるのは定番のようだ。室田さんは最後に「このツアーに向けて筋トレをしてきた。終盤、立て続けに激しい曲が続くけど、よく動けているんじゃないかと思う」的なことを言っていた。笠原さんは「私にとって初めてのホールツアー。こんなにたくさんの人が観に来てくれた。一生忘れない」的なことを言っていた。もし私が夜公演にも入っていたら、先ほどの主観的な点数は75点とか80点になっていた可能性はある。でも今のアンジュルムに関してはホールのツアーに一回だけ入らせてもらうくらいで、私はちょうどいいと思った。笠原さんにとっては忘れられない経験だったかもしれないが、私にとってはいずれ忘れてしまう、足を運んだ数多くのハロプロ現場の一つ、そうだったと言わざるを得ない。

2017年4月7日金曜日

NEXT ONE (2017-04-01)

2時間は長いと飛行機に乗る前には思っていたが、疲れたな、眠いな、と思いつつ、うとうと、ぼんやりしているうちに福岡に着いた。持ってきた『仕事と日本人』は数ページしか進まなかった。生産的なことをロクにしないまま何となく時間が過ぎる。まるで仕事のようだ。天神駅のコイン・ロッカーに旅行カバンを預けて、福岡Drum Be-1へ。グッズ販売が始まった11時過ぎに会場着。私がグッズ列に加わった数分後に急に10人以上が後ろに並んできた。自分の番が来るまで誰の日替わり写真を買うか迷い続けたが、販売員を目の前にして私の口から出たのは「日替わり写真を全員分、1枚ずつください」だった。全メンバーズのを買ったのは初めてだ。後ろの若いナオンが連れに「いいなぁ…」と言っているのが聞こえてきた。あとコレクション生写真を5枚、買った。11時25分。開場まであと2時間。昼飯を食いに徒歩でキャナル・シティへ。天神のストリートで地図を眺めていたらローカル淑女が声をかけてくださって、親切にも行き方を教えてくれた。Twitterの博多民が勧めてくれた「天ぷら たかお」。たかお定食980円。思っていたより全然よかった。天ぷらは揚げ立てが都度、目の前に提供される。明太子が取り放題。

なるべく身軽になりたかった。背負っていたヘルメット・バッグ。預けようとした天神駅のコイン・ロッカー。すべて埋まっていたので断念。福岡Drum Be-1に着いたのが開場時間の10分前くらいになって、ちょっと焦った。この時点で既に観客は番号順に並ばされていた。並び方を指示していたバイト・リーダー的な若者にクロークはあるのかと聞いたら入場した後にあるという。それじゃ誰も預けない。入ったらみんな我先にと前に急ぐからね。開場前に預けられるようにしないと。それはまだいいとしても、客の並ばせ方が適当すぎた。客同士で確認して勝手に番号順になっといてっていう感じ。私の番号は5番で、ちょうど列の5人目だったのだが、前には番号が後の人が何人かいた。あくまで大雑把に番号の塊ごとに人を分けているだけかと思っていたら、番号を呼び出すこともなく適当に作られた列をそのままの順番で中に入れていた。仲間と組めば簡単に不正ができる。仲間がいなくても、良番保持者の体で前の方に紛れ込めばそのまま潜り込めただろう。

前の日から博多にいたかった、本当なら。その方がゆとりを持って過ごせるから。移動が当日だと、何かの理由で飛行機に乗れなかったらおしまいだ。昨日は金曜日。普通に仕事があった。私の仕事場は埼玉の奥地。働いてから羽田に向かう、それは全休とは言わずとも半休を要する。普通の金曜日ならそうする。3月31日は普通の金曜日ではなかった。年度末、最終日。売上の締め、棚卸。休むわけにはいかない。午後半休の取得でさえ、会社における私の信用に関わりかねない。だから当日の4月1日に飛行機で羽田から福岡に飛ぶことにした。8時10分発。所要時間は約2時間。開場は13時半。あまりギリギリに着きたくなかった。グッズも買いたかった。これくらいの時間が遅すぎず、早すぎずかなと思った。ちょうどグッズを売り始めた頃に会場にたどり着いたので、読みは完璧だった。心配だったのが、朝。その時間までに羽田に着こうとすると5時くらいには起きないといけなかった。普段の平日は6時にアラームをかけて6時20分頃にもぞもぞと布団から起き上がる。土曜日に5時にスパッと起きられる自信がなかった。だから3月31日は羽田の近くに泊まった。蒲田駅の近く。職場はバタバタしていた。16時前に会社を出た、半ば強引。そこから行った病院。花粉症のクスリをゲットして、不動産屋に行って物件を見て引っ越しを決めて入居の申し込み。いちど帰宅してコンビニ飯を食って荷造りをして、そこからまた家を出て、22時半頃に蒲田のホテルに着いた頃にはヘトヘト。ホッとする暇もなくホット・シャワーを浴びる気力もなく、歯だけ磨いて寝た。今朝、5時45分と6時に仕掛けておいたiPhoneのアラームで起床。じわじわと溢れてきた喜び。寝坊をしなかった。これで私は8時10分の飛行機に乗れる。福岡に行ける。Juice=Juiceのコンサートを観させてもらうことが出来る。本当に楽しみで、楽しみで…。

Juice=Juiceの単独コンサートを前に観させてもらったのは昨年の11月7日。あの武道館公演だ。12月にはFCイベント、1月にはハロコンで彼女たちを目にしていたが、単独コンサートに限れば実に約5ヶ月ぶり。2月の新宿での2公演もファンクラブ先行で申し込んでいたが、外れていた。もちろん私はつばきファクトリーにもマジ興味ある。でも現在のハロプロで一番のグループはJuice=Juice。FCイベントもいいが、彼女たちの真骨頂が発揮されるのはコンサート。ハロコンもいいが、他の出演者がいない彼女たちだけのステージは特別だ。私に生きる意味がいくつかあるとするとJuice=Juiceの単独コンサートはその筆頭に属する。それを5ヶ月もお預けされてようやく観に行かせてもらえるとなると、否が応にも期待が高まる。その上、アップフロントが物凄い番号をくださった。昼公演が5番、夜公演が106番。昼公演は最前で観られる。ライブハウス(和製英語)の至近距離で、間に誰も挟むことなくJuice=Juiceを脳に刻むことができる。昨年の6月に横浜で体験して以来、二度目の僥倖である。あのときに分かった。別世界だ。夜の106番というのも、そんなに悪くはない位置に行けるだろう。こんな番号をいただければ、埼玉から福岡に行く甲斐があるというものだ。極めつけが、『地団駄ダンス』というドープな新曲。先週末(3月25日・26日)のひなフェス2017が、現場での初披露。Twitterでは何かと騒ぎになっていた。コミカルな曲らしい。これまでのJuice=Juiceとは路線が違うらしい。多くのファンが抵抗を示しているらしい。私は4月1日まであえて耳にしないつもりだったが、3月29日のハロ!ステを開いたらいきなり冒頭に流れてきた。私の第一印象:乗り方が難しそうだが、ありなのでは。その後、何度も繰り返して観ていくにつれ「どんどん」好きになっていた。『地団駄ダンス』を生で観るのを想像すると(セットリストに入るという保証はなかったが)ワクワクした。

本当にチケットの番号どおりに入場をしていれば、私は2人くらい前に入れていただろう。でも、そんなのはどうでもよくなった。なぜなら、仮に一番目に入っていたとしてもここを取っていただろうという最高の位置を確保することができたからだ。ステージのいちばん前に二つ置いてあったお立ち台の、右側(上手)の、真ん前。お立ち台がない場所にはスピーカーが設置されていた。つまりJuice=Juiceを最も近くで観させてもらえるのがお立ち台の前なのだ。ついにここまで来た。ここに来るのをどれだけ心待ちにしてきたことか。人生でそう何度と味わえることのない、刺激的で奇跡的な時間が始まることが、約束されていた。左右を見渡すと、左側(下手)の女性限定エリアを含めて、最前に陣取る幸運に恵まれたのは15人くらい。私は右から6人目だった。金澤朋子さんの影アナを経て、ついに始まった。

Daniel Gilbertの“Stumbling on Happiness”によると、人間は過去に味わった感情を正確に思い出すことが出来ない。その出来事が起きる前に抱いていたこう感じるだろうという予想や、こう感じたに違いないという理論に引きずられた記憶を脳が作り上げる。これを書いている今は、4月4日の20時10分。会社から家に帰る電車の中だ。ここにしたためているのはリアルタイムの感情ではない。コンサートは過去の記憶だ。Daniel Gilbertに言わせれば正確な述懐ではない。たしかに、そのときの気持ちをそっくりそのまま再現することはできない。それでも私は自信を持って言える。人生でこれ以上の幸福はないと、私は心から感じていた。甘美で贅沢な体験に、圧倒され、恍惚としていた。この記憶に間違いはない。100点を幸福の上限とすると、期待が100点で、実体験が100点で、記憶も100点だった。ライブハウス(和製英語)の一番前に立ち、すぐ目の前で繰り広げられるHello! Projectのスターたちによる歌唱とダンスに酔いしれる。これは当事者になってみないと理解しがたい類の悦楽である。何十回コンサートを観させてもらっても、最前にいるときの感覚は最前に行かないと分からなかった。

明日、宮崎由加さんが23歳になる。彼女のバースデー・イベントは、今年はお誕生日の当日に東京のTFT HALL 1000で開催される。私はあさってまで福岡にいる。だから今日のコンサートは、私にとっては宮崎さんのバースデー・イベントを兼ねていた。福岡と東京の距離を考えると、会場にいた宮崎さんのファンの大半にとっても同じだっただろう。昼公演ではサプライズで宮崎さんを祝う場面があった。ある曲の直前に植村あかりさんが後ろに捌けた。異変を察知した宮崎さんが前の宮本佳林さんの肩?背中?を叩いて、まだ曲に移ってはダメだと必死に伝えた。宮崎さんはこれでトークを引き延ばすつもりだったが、そこで植村さんがケーキを持って後ろから出てきた。ろうそくが消えそうだったようでJuice=Juiceの皆さんは焦り、我々はハッピーバースデーの歌を倍速で歌った。後に植村さんが一人で少ししゃべるセグメントで、宮崎さんのお誕生日に言及していた。「私は23という数字が好き。3はそんなに好きじゃないんだけど…。その次に1230が好き。自分の誕生日にも23が入っている」「ケーキおいしそう。チョコレートがまんべんなく振りかけてあって。後でちょうだいと由加に言ったらいいよと言ってくれたので食べるのが楽しみ」。植村あかりさんは日替わり写真にも「明日はゆかの23歳の誕生日!!!『23』もゆかもだーいすき。」と書いていた。昼公演のアンコールは「ゆかにゃ! ゆかにゃ!」だった。Juice=Juiceが再登場した際に「凄いね」とマイクを通さずにメンバー同士で(たぶん言っていたのは高木紗友希さん)言っているのが聞こえた。おそらくみんなライトの色をピンクにしていたんだと思う。私はいちばん前にいたから分からなかったけど。私は明日のイベントには行けないので、こうやって宮崎さんのお誕生日を祝うことが出来て嬉しかった。

Juice=Juiceの単独コンサートでは初めて披露される『地団駄ダンス』の目撃者になれた、それも最前で、というのは本当に光栄だった。ひなフェスでそんなに盛り上がらなかったというストリートの噂をTwitterでは目にしていたが、福岡Drum Be-1ではそんなことはなかった。次は『地団駄ダンス』をパフォームするとJuice=Juiceが宣言すると、待ってましたという感じのヴァイブスが、ヘッズの歓声から伝わってきた。遊び心に満ちた歌詞、メロディ、アレンジ、転調。弾けまくるJuice=Juice全員の笑顔。激しくもユーモラスな振り付け。目が釘付け。この曲をハロー!プロジェクトでもトップ・クラスの歌唱とダンスのスキルを誇る、正当派のグループである彼女たちがパフォームしていることに意味がある。一見ふざけたような曲だからこそ、Juice=Juice一人一人の歌唱とダンスのスキルが凄くしっかりしているのが分かる。我々は既に曲中に声を出していた。「ジダダ・ダンダンス・ジダダンダンス」の後に「オイ!」、「じだんだ・じだんだ・じだんだ」の後に「どんどん!」。その二箇所。Juice=Juiceの皆さんは後のトークで「どんどん!」をやる我々を褒めてくださった。「ひなフェスのときにもやってくれた人はいたんですけど、やってくれない人もちらほらいて…」と愚痴る植村あかりさん、ドッと沸く会場。

私は生で体験して『地団駄ダンス』がますます好きになった。℃-uteに与えられた職安のような芸名の紳士が携わったクソ激安お涙ちょうだいテンプレ感動セルアウトジェイポップ路線にJuice=Juiceが舵を切らなくてよかった! 売れ線を狙ったところで何十万枚・何百万枚と売れるようになるわけじゃないだろ。大衆向けジェイポップでマネーとフェイムをつかむ、そんなドリームは宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoで終わったんだよ。だから売上を伸ばしたいという願望を変に楽曲に反映させないで、ひたすらフレッシュで尖ったシットをドロップしてくれ。大体ヒップ・ホップ、ジャズ、ポスト・ロック等々のジャンルに親しみ日々新旧のドープな音に触れている、鋭い感性を持つ音楽愛好家である私に、今さらその辺の学生受けを狙ったようなジェイポップが響くはずがない。あんなんじゃ上がらねえんだよ(そりゃ現場でかかったらタオルを振るけどさ)。我々を馬鹿にするなよ。私が℃-uteへの熱を保てなくなった大きな理由の一つが、ポストつんく期の楽曲が好きではないからだ(好きなのもある)。Juice=Juiceは℃-uteと似ているが、もし職安系の曲をJuice=Juiceのレパートリーに追加するような動きが今後あるとすればそんなフェイクワックA&Rの提案困る。トイレで酔わせた姉ちゃんとやる。あまりに大金払い精出る、資本主義丸出しレーベル。英語ばっか使うむこ…って何の話だ。

私は『地団駄ダンス』とこのコンサートで初めて披露された『Feel!感じるよ』によってポスト武道館のJuice=Juiceに希望を持った。武道館での公演を成功させた後の目標設定とビジョンが大きな問題であることを℃-uteの先行事例から私は知っていた。℃-ute以上に武道館を悲願の目標として突き進んできたJuice=Juiceが、それを成し遂げてからどこに向かって活動を続けていくのか? ℃-uteと同じようにもっと大きな会場で何回かやって、終わっていくのか? それはそれで十二分に立派なのだが、私はしっくり来ていなかった。『地団駄ダンス』のダンスが激しく体力を消耗するから6曲連続のセグメントがこの曲で始まるのが大変であることや、『Feel!感じるよ』に振り付けがほとんどなく、リズムを刻むことも禁じられているのが難しいと説明する中で、Juice=Juiceのメンバーが「課題」という言葉を口にしていた。それを聞いて、そうか、次にJuice=Juiceが目指すのは単純な拡大路線ではなく、表現の幅を広げるために今までとは毛色の違う楽曲に挑戦していくことなんだな、と合点した。夢を叶えて目標を喪失し、次にどこに向かえばよいのかよく分からなくなると終わりの始まりだ。彼女たちが常に何かしらの難しい課題に向き合っていくのは好ましいことだ。植村あかりさんは『地団駄ダンス』をもっと盛り上がるように育てていきたいと言っていた。彼女たちならきっとこの曲をRakimのようにMove the Crowdするまでに高められる。ついて来られるのか試されている我々。理解できないフェイク野郎はバレバレ。

宮本佳林さん曰く、昨日は一人で広島でイベントをやった。明日の福岡来てくれる人?と聞いたら3人か2人しか手を挙げてくれてなかった。広島と福岡は近いのに何でこんなに少ないんだと思ったら、今日(4月1日)は広島でモーニング娘。のコンサートがあることをイベントの後にスタッフさんから知らされた。まあハロー全体が好きな人ならそっちに行くのは分かるよ。私(宮本)だってその立場ならそうするもん。明日は福岡にモーニング娘。が来るらしい。明日も行く人に、Juice=Juiceもこんなところがよかったと思ってもらえるコンサートにしたい。

終演後の高速握手会では、宮崎さんには「明日おめでとう」、高木さんには「地団駄ダンスよかった」(この曲への我々の反応を人一倍、気にしているように見えたので…)、他のお三方には「楽しかったです。ありがとう」と申し上げた。が、ざわざわしていて、私の言葉が彼女たちに届いたかどうかは疑わしい。一人目の宮本佳林さんが、彼女の言葉は聞き取れなかったけど上機嫌でやたらと愛らしい反応をくださった。今日買ったコレクション生写真の一枚が「天使と見るかデビルと見るか…あなた次第。」と書いてある宮本さんの写真だったが、コンサート本編から最後の握手まで、終始一貫して天使だった。やばいよ、この方は。宮崎さんは私の着ていたTシャツを見て「ピンクありがとう!」と言ってくださった。五人目の高木さんは頷いていた。私が何を言っているかは分からないけどとりあえず頷いたようにも見えた。

酒を入れたくなった。福岡Drum Be-1の近くにポプラがあった。プレミアム・モルツの黒500mlとせんべいを買った。ビールを飲んで、せんべいを食った。いい気分になりかけたがビールのアルコホール度数だとまだ足りない。もっと欲しい。「ジュース、もう一杯、ジュース、もう一杯」と叫びながら(それは嘘)再度ポプラに入って、サントリー角ハイボール濃いめ500mlを購入した。夜公演の開場を待ってたむろするジューサーたちを眺めながら、公園の芝に座り込んで、つまみなしで、角ハイボールを飲んだ。天気がよくて気温も過ごしやすい公園で酒を飲むの、いいな。計1リットルの酒を胃に流し込み終えると、最高の状態に仕上がった。缶を捨てるために立ち上がると、少し足がふらついた。コンサートが始まる前から気持ちよすぎる。飲酒してのご観覧は禁止されているが、飲酒しないでHello! Projectメンバーさんの元気さについていくのは無理なのである。

初めて飲んだ開演前に酒1リッター。飲みまくったらハイになった。ハイになったらコンサートがあり得ないくらい楽しかった。のはよかったのだが、それは前半までだった。中盤から、コンサートの楽しさよりも尿意を我慢する苦しさが上回ってきた。膀胱の悲鳴を本格的に無視できなくなってきたときに時間を見ると、18時14分だった。開演したのが17時半。握手も入れると19時半くらいまであるはずだ。あと1時間以上。これはまずい。ここまで我慢できないほどの尿意は、最近では記憶にない。その場でペットボトルに陰茎を突っ込み黄色い液体を中に放出するという考えが何度も頭をよぎった。こうやって文字にすると頭がおかしい発想だが、尿を体内に留めることにすべての脳内資源を奪われ、正常な思考力を失いつつあった。私が獲得した位置は二つ目の段差の一番前、真ん中だった。福岡Drum Be-1はステージが高い上にフロアにも段差が二つあって、とても観やすかった。数メートル先では宮本佳林さんたちが(真ん中にいたので彼女が一番目に入りやすかった)ステージで躍動していた。にも関わらず私の下腹部からの訴えがあまりにもきつすぎて、コンサートが早く終わってくれないかとさえ思い始めた。開演前の酒は500mlでは少なかったが、1リットルは多すぎた。しかも何を血迷ったのかその後に水を400mlくらい飲んでいた。ビールとハイボールの350mlを一缶ずつくらいに押さえておくべきだった。もしくは角ハイボール濃いめだったら500ml×1だけでも足りたかもしれない。可能であれば飲酒のタイミングもトイレに行けるように余裕を作っておくべきだった。本編が終わったところで前から一人の紳士が後退してきた。それに便乗して(その紳士が道を作ってくれたので)私も後ろに下がった。アンコール後の曲はこの位置からは観られないが、3曲だから諦めることにした。Juice=Juiceを目に焼き付けたいという私の思いが尿意に敗北を喫した瞬間である。いちばん後ろに階段があって、2階にコイン・ロッカーとトイレがあった。夜のアンコールはゆかにゃではなく「ジュース!もう一杯!」だった。いざ小便器の前に立つと、飲んだ量の割には、そんなに大量に出たというわけでもなかった。たったこれだけの量の液体を体外に排出できないためにあれだけの苦しみを味わったというのが恨めしかった。最後の3曲はいちばん後ろから観た。いくら視界のいい会場とは言ってもさすがにここでは見づらかった。それでも近くの宮本佳林ファンが一生懸命声を出しているのが立派だった。終盤のトークではMOL(ラッパーのmol53ではなくて“Magic of Love”の略)の最中にお化けが見えたという話を宮崎さんがした。実はそれは他のメンバーが口裏を合わせてドッキリを仕掛けていたんだと高木さんが明かし、宮崎さんはショックを受けていた。

今日の2公演(といっても2公演目は気もそぞろだったが)を通して、私の植村あかりさんへの印象が変わった。飛び抜けた美人ではあるものの他のメンバーに比べると表情の種類が少なくて、ちょっとツンとしていて、機嫌に波があるという印象を私は持っていた。今日の彼女は表情がとても柔らかくて、以前に私が(勝手に)感じていたトゲがなかった。最近はトーク中にキレないしね。キレるのも面白かったけど。植村さんが人間的に丸くなった(というのも私の勝手な決めつけだが)ことで、Juice=Juiceはますます成熟したグループになったと思う。

終演後に中州まで歩いてTwitterの博多民強く推薦のラーメン屋「海鳴」で夕食を摂った。酒が残っていて、頭が正常に機能していない。壁に貼ってあるメニューの漢字が読めず、「えーっと、いちばん右の…」という頭の悪い頼み方になった。「ぎょかいとんこつラーメンですね?」と確認する店員。自分が「魚介」という文字が読めなかったことに愕然とした。硬さはと聞かれてよく分からなかったので普通で、と私は答えた。スープは一口飲むと気持ちが安らぐ味わいがあった。麺は追加せず、会計を済ませて店を出た。バリカタって言って替え玉も頼むのがリアルなストリートの作法だったのかな? 店内に貼ってあった求人には月給23万円と書いてあった。iPhoneを取り出して、計算機に「23×12=」と打ち込んだ。仮に残業代とボーナスが出なければ年収276万円か。屋台が立ち並ぶ博多の風景を目に焼き付けながら、今日の寝床がある二日市のホテルに向かうべく、天神駅まで歩いた。2公演目はまともな理性を伴わない鑑賞となってしまったが、今日の総括としては、Juice=Juiceがこの世で最もイルな集団であるのと『地団駄ダンス』が最高であるという、この二点は間違いないと私は言える。