2015年12月31日木曜日

メリクリxJuicexBox (2015-12-23)

9時半頃に目が覚めた。4日前にドイツ出張から帰ってきてからいつもの時間に起きることが出来ない。時差8時間の国に行っていたのだから時差ボケがあるのは当然だが、それに加えて喉が痛い。風邪気味。今日は天皇誕生日で会社が休みだから何時に起きても問題はないが、明日は9時から会議を入れている。サシの会議だから私が遅刻すると成り立たない。明日はもうこの時間には会議の最中なんだよな…。

昼に池袋の「麻辣香」で上海春雨スープ750円を食べたが、いつものように楽しむことが出来なかった。普段と同じ中辛を頼んだのだが、やたらとからく感じた。からさがおいしさを上回っていた。身体が本調子ではないので刺激に弱くなっているのだと思う。昼食の選択を間違えた。

今日は雨が振る予報だが、家に傘が一本もない。家を出るときにはまだ降っていなかった。コンビニに置いてあるやつよりもう少しちゃんとしたのを買おうと思ってロフトとオッシュマンズを見たが欲しいと思うのがなかった。中国製なのに1万円近くする傘があった。服もそうなんだけど中国製で値段が高いのって何のために中国で作ってるのよ。結局、無印良品でエンジ色の傘を買った。商品の横に12月4日に1,500円から1,980円に値上げしたとの通知が貼ってあったが、レジに持っていったらなぜか1,500円だった。

ディファ有明のグッズ列に並んでいる途中から雨が降り始めた。今日は冷え込んでいて、手がかじかむ。16時開場、16時45分開演。14時すぎから並び始めた。このまま並んでいれば開演までには買えそうだったが、寒いし体調も万全ではないので列から離れた。歩くこと数分で「クラブハウスカフェ」という文字を見つけた。テニス場に併設されている喫茶店のようだ。ドリンクバー300円。ゆったりした広さに客が数人。いい気だるさが漂う空間だった。今日のイベントが楽しみだというよりは、ここで横になって寝たい気分だった。

会場に入ると、私の席は後ろから4列目だった。場内のグッズ列が空いていたので並んだが売場から宮崎さんの何かが売り切れたという販売員の声が聞こえてきた。自分が買いたい商品の一つである可能性が高かったのでここで買うのは諦めて後で通販で買うことにした。開演の前に『武道館』助監督のマツダを名乗る青年が出てきた。この場を利用してドラマの撮影を行うとのこと。開演前に練習させられて、後で本番をやらされた。宮本佳林が演じる日高愛子の誕生日コンサートの場面らしく、「愛子、誕生日おめでとう!」と、その後に歓声をあげている様子を分けて撮らされた。ステージには誰もいないけど、宮本佳林がいる体で。

このイベントは国内外の映画館で生中継されていたり、後述するように『武道館』の撮影終了の式典を兼ねていたり、来場者全員にプレゼントがあったりと内容が盛りだくさんだった。ただ、自分がそれを十分に楽しめる体調ではなかった。だからあまり感情を伴った記憶になっておらず、筆が進まなかった。日付が後の戦極MC BATTLE第13章の記事を書くのが先になった。

・Juice=Juiceはクリスマス時期のハロプロのイベントではお約束になっているサンタクロース風の衣装だった

・初めてもらったクリスマスプレゼントは、植村「遊びの料理用具」、宮本「おもちゃのカラオケ機械」

・古坂大魔王が登場。「いや、分かるよ、分かる。何でお前やねんと思ってるでしょ」と言った数分後に「ファンの皆さんの受け入れ方が凄い。誰でも歓迎みたいな」と掌を返す。「(ファンの皆さんは)優しいから(誰がイベントに来ても受け入れてくれる)」とJuice=Juiceの皆さん

・アイドルがたくさんいる中でハロプロが一番と繰り返す古坂。ステップを実践し「こういうときに足の向きが揃っている」「あとちゃんと歌ってるし」「大勢のアイドルが出ていたFNSの番組を観たら分かるやん」(「これインターネット駄目ね」と言っていたがこの程度のことで予防線を張らないでほしいしどうしても公開してほしくないなら内輪の飲みの席にとどめておいてほしい)

・古坂に関する印象。高木「頭が長いなと」。馬が同類だと思ってきたエピソードを披露する古坂。それでも三兄弟でいちばん身体が小さい。100キロ超の兄は切手を貼るときに肌の脂を指に付けるという話に気持ち悪がるJuice=Juice

・Juice=Juice一人一人から古坂にプレゼント。
金澤、王冠。「大魔王だから」。古坂、頭62センチ。
「あたしたちのウエストと同じくらい?」
「もっとあるよ」

高木「古坂さんのことをウィキペディアで調べたんです」
古坂「あれ半分以上嘘やで」
えーと驚くJuice=Juiceメンバーたち。
高木「爆笑問題の田中さんと温泉旅行に行ったと書いてあって」
古坂「それは本当やわ」
温泉旅行の券が入っているという封筒を差し出す。
古坂「(王冠のひどさに比べて)この差は何ですか?」
何でですかと抗議する金澤。高木のプレゼントにいたく感心する古坂に「推し変あるな?」とJuice=Juiceがざわめく(この前にJuice=Juiceの中で誰が一番好きかと聞かれた古坂が宮本を指名していた。)それを受けて「推しを高木さんに変えた」と応える古坂。膨れる宮本。ところが、封筒に何も入っていない。「私のお小遣いでは買えなかったので、入浴剤です。田中さんと一緒に入ってください」と高木 

植村、伊達メガネを数種類。2016という数字になっているものや、鳥?が鼻のところに付いたもの

宮本、シューベルト『魔王』のCD

宮崎、カセットテープ。「私のウグイス嬢をほめてくださっていたので」と、その場で録音。古坂リクエスト。宮崎言い間違える。逆にこっちの方がいいと古坂。これまでのプレゼントには客は笑っていたがこのプレゼントばかりは俺も欲しい…という羨望に満ちる

・クリスマス関係の曲で固められたセットリスト

・『武道館』の収録。
『大人の事情』
NEXT YOUには?「夢がある」
みんなで行こう「武道館」
絶対行くぞ「武道館」
オー!
『Next is You!』
金澤が何かを間違えてやり直し。『大人の事情』の後半からとのことで、そのまま上記の最後までやるものと(私だけでなくおそらく他の客の多くも)思っていたので『大人の事情』が終わった時点で「カット」の声が出たときはまた撮り直すのか?今のよかったじゃんという感じで客席からエーイングが出たが、これでOKという意味のカットだった。

『武道館』これにてクランクアップ。スタッフ一同が壇上に。Juice=Juice一人一人に花。高木と宮本、涙。高木「お芝居が好きなんだなって改めて実感した」

・宮本「Juice=Juiceの曲を一つもやらなかった。久しぶりというか、初めて。客席側に降りたときに皆さんの笑顔を見られていいプレゼントをもらえたと思った」

・リハーサルをしているときに来場者へのプレゼントを作っていた。全員分。コースター。メンバーのサイン入り。誰が当たるかはランダム。金澤「サインをしたのは裏だから使って。あんまり交換とかしないで持ち帰ってもらえるといいなと」。金澤さんの場を読んでコメントを発する能力が高い。観衆が何となく頭の中で思っていることを察して喋るから的を射ている。受ける。(ラップバトルでもそうなのだが、真にアンサーすべきは対面する相手ではなく実は観客や審査員の無言の問いなのだ。)

・終演18時25分くらい

・会場を出る際にコースターだけでなくnotebookももらえた。コースターは金澤さんのが当たった。ハロプロらしからぬ大盤振る舞い

池袋「大連餃子房」で牛肉の四川風炒め定食950円とライチ酒390円をいただいて、家に帰って、風邪薬と胃薬を飲んで、寝た。

2015年12月30日水曜日

稲場愛香バースデーイベント2015(2015-12-29)

2015年12月某日

「ファンクラブ会員の者なんですが」
「はい」
「一件ですね、入金を忘れていたものがあることに気付きまして、どうしたらいいのかという相談をしたいのですが」
「入金の期限を過ぎたものに関しましては一切ご対応が出来ません。お支払いの期限は…」
「過ぎています」
「そうですか、でしたら申し訳ありませんが、当選はされていたようなんですが、対応は出来ません」
「そう、ですか…分かりました。はい。ありがとうございました。失礼します」

戦極MC BATTLE 第13章(2015-12-27)

ギャンブルには手を出さない品行方正な人間なので競馬には疎いのだが、毎年この時期になると有馬記念というのが開催されているらしい。競馬ファンにとっては特別な日のようだ。戦極MC BATTLE第13章を一緒に観に行くつもりだった二人の友人が、共に有馬記念と同日であることを理由に断ってきたのだ。戦極MC BATTLEは今まで10章と12章を観に行ったが7時間ほどの長丁場である上に座ることが出来ないという過酷な現場である。その上ヒップホップの現場には慣れていないため一人で行くのはやや気が引けたから、行かないつもりだった。そうこうしているうちにチケットも売り切れていた。しかし後から出場者の情報が公開されていくにつれどうしても行きたくなって、ちょうどそのときにチケットが追加で販売されることになったのですぐに1枚購入した。

一番の決め手はライムベリーというアイドルラップユニットのMC MIRIが出るという知らせだった。ファンだった訳ではない。ライムベリーのことは名前を聞いたことがあるくらいだった。MC MIRIについては名前すら存じ上げなかった。だが彼女が戦極に出場するという記事を読んで、これは見ておかないと損をすると直感的に思った。YouTubeでライムベリーの『SUPERMCZTOKYO』という曲のビデオクリップを観た。ハハノシキュウがMC MIRIにラップを指導しているのをTwitterで知った。興味は増していく一方だった。12月16日に発売したライムベリーの1st album “RHYMEBERRY”はもちろんbonus track入りの初回盤を買い、繰り返して聴いた。そうやって一ヶ月もたたないうちにまるでファンのようになってしまった。ライムベリーのファンのことはSquadと言うらしい。(Juice=Juiceでいうところのジューサー、℃-uteでいうところのTeam ℃-uteである。)

池袋「みなと」(店を出るときに尋ねたところ年末年始は休みなく店を開いているらしい)でこの上なく贅沢な刺身定食1,620円をいただいてから渋谷へ。Twitterを見ていると中島早貴のブログ記事が流れてきた。開いたところ、デイリースポーツで有馬記念の予想をしたから見てくれという告知であった。昨日も岡井千聖が東京スポーツで有馬記念の予想をしていた。アイドルは有馬記念の予想をするな。戦極MC BATTLEの予想をしろ。会場のTSUTAYA O-EASTの近くで、いかにもB系ですという見てくれの青年4、5人が歩いていた。そのうちの一人がラブホテルの前でおもむろに立ちションを始めた。後から気付いたが小便小僧ではないうちの一人はバトルの出場者だった。

ブログに公開された予定によると、開場14時で、14時45分から15時12分までBOILRHYMEと崇勲のライブパフォーマンス(こんな分刻みの予定を守れる訳がない)。15時12分から16時32分までバトル(BEST 64→32)。16時32分から17時20分までDopeman、言 X THE ANSWER、晋平太、般若のライブパフォーマンス。17時20分から18時30分までバトル(BEST 32→8)。18時30分から19時10分まで呂布カルマ、ISSUGI、バブルソのライブパフォーマンス。19時10分から20時20分までバトル(BEST8→決勝)。20時20分から21時までKEN THE 390、KAKATOのライブパフォーマンス。21時から21時15分まで閉会とオープンマイクとのことだった。

今日の入場予定数は1,100人らしい。私のチケットに書かれた整理番号は820番だった。会場に入って、500円で買わされたドリンク券を缶入りのハイネケンと交換したのが14時39分頃だった。「こいつらを知らないやつはモグリです」という八文字さんの触れ込みで登場したBOILRHYMEがいいなと思った。会場でCDを売っていると言っていたので、後で買おうと思った。いよいよバトルの時間になった。「後でDVDも出るしYouTubeにも上がるのに、わざわざ見に来てくれる皆さんは本当にバトルが好きなんですね! 今日ここにいるのは最高の人たちです!」と来場者たちを持ち上げる正社員さん。

にわかSquad化した私は、MC MIRIが出てくるまでは気が気でなかった。途中で司会の八文字さんが「ミリ!」と次の試合の出場者を呼んだのでついに来たかと思って唾を飲んだが、魅RIン(みりん)という紛らわしいにもほどがあるMCだった。MC MIRIが呼ばれたのは最後の方だった。相手はK-razy。赤いチェックのミニスカートにグレーのフッド付きスウェットシャツ、黒のベストに帽子、マンハッタンポーテージの肩掛けカバンという出で立ちのMC MIRIが下手から登場すると私の周りからは「可愛い」という声がちらほら聞こえてきた。後攻のMC MIRIが初めてのバトルでどんなラップをするのだろうかと息を呑んだが、普通に上手かった。ままごとではない見事なフロー(ままごとと見事で韻を踏んでいる)で会場を沸かせた。攻撃の切り口としては、お前はCD何枚売ったんだ? どれだけの会場でやってきたんだ? という感じで、私が事前に想像していたのに近かった。「私が戦極に出ることが決まっただけでニュースになる」というのは破壊力があったし、会場も盛り上がっていた。延長戦まで持ち込んだものの、最後はK-razyが一枚上手だった。MC MIRIに対して「お前はここでこういうやり取りが出来るくらい成長している」「俺とお前はここでグルーブを生み出している」というようなことを言っていた。「ブス」とか「アイドルがいていい場所じゃねえ」といったありきたりなディスで脅さずにMC MIRIの言葉をしっかりと受け止めて返したK-razyは立派だと思う。MC MIRIも、敗れたものの胸を張っていい堂々たる戦いぶりだった。試合の直後に「あー、やっとアイドルに戻れる! この後チェキ会やるからみんな来てね!」と言って笑いを誘っていた。

13章に出ているMCの中で私はハハノシキュウが一番好きだ。今日もTHE NORTH FACEのマウンテンパーカとインナーダウンの中にはハハノシキュウの「8x8=49」Tシャツを着てきた。このTシャツを着て「計算間違っていますよ」と言われたことがあるし「頭のおかしい人かと思った」と言われたこともある。このTシャツを身に付けてハハノシキュウに歓声をあげているとサクラっぽくなるのでTシャツ一枚で観戦するのはやめておいた。ハハノシキュウの初戦はテレビ番組『フリースタイルダンジョン』でサイプレス上野に負けたBALA a.k.a. SHIBAKEN。下手から出てきてそのまま上手にはけるという奇行に走るハハノシキュウ。先攻BALAの攻撃を「あ、ごめん寝てた」と受け流す。「お前アイドル好きなんだったら49じゃなくて48じゃねえか?」とTシャツの「8x8=49」をいじるBALA。東京女子流のスウェットシャツを着てきたんだというBALAに対して「同じオタクとして言わせてもらうけど、今日からお前はライムベリーのオタクになるよ」とハハノシキュウ。ハハノシキュウ、勝利。

ハハノシキュウはBEST 32でAmaterasに勝ち、BEST 16でKEN THE 390に負けた。私はハハノシキュウの優勝を期待していたので、KEN THE 390に負けた瞬間には力が抜けた。しかし名勝負だった。「何で顔を隠すんだ」というKEN THE 390に対して「顔を隠すのには理由があるんだ。自分の声とラップだけを届けたいから僕は顔を隠すんだ。顔がよくなかったらお前のラップなんて誰も聴かねえよ」とハハノシキュウが返す。「顔がいいだけで10年やっていけるほどこの世界は甘くない。そんなことも分からないからお前はいつまでたってもパッとしないんだろ? 顔を出したくないならバトルに出てくるな」という390に「さっきからお前の言っていることは正論じゃねえか。教科書に書いてある。会社の上司みたいなことばっか言ってんじゃねえ。説教ばっかり」「そんなんだからお前はいつまでたっても390のままで400になれねえ」という最高の切り返しを見せた。他にも「他のアーティストをフィーチャーしたYouTube動画の再生回数が伸びてフィーチャリングなしの曲の再生回数が伸びていない」というのもあった。

ハハノシキュウが負けたのは悔しかったが、今日のKEN THE 390は決勝進出に値した。決勝ではNAIKA MCが勝ったが、私はKEN THE 390に声をあげていた。初戦から決勝までバチバチの戦闘モードだったし内容に一貫性があって常に的確だった。BEST 8で「俺はドライブシュートを決める」的なことを言ったKBDに「ドライブシュート? それはフィクション。キャプテン翼の話だ。ヒップホップはノン・フィクションつまりリアル」とMC漢のようなことを言っていた(ただ、ドライブシュートはフィクションではなくて実在するんだけどね…)。これも同じ試合だったと思うけどお前はポップだという批判に対する「2015年にもなってポップがどうとか言ってるのはどうかしてるだろ」的な反論には説得力があった。もっとも、私の場合ポップだからどうとかじゃなく、純粋にKEN THE 390の曲は格好悪いと思うし好きになれない。ポップなラップそのものは好きだ。昔、太郎 & KEN THE 390名義の“JAAAM!!!!”という1,000円のアルバムを買ったことがあって(Amazonによると私は2005年11月3日に購入したそうだ)それは割と好きだった。

MC松島が「ミクソン重一」という名前で出場した。MC松島も私が好きなMCの一人だ。最近8ronixというトラックメイカーとの合作ミニアルバムを松島さんご自身が運営しているweb storeで買った。このweb storeで買うといつも松島さんご本人の直筆messageが入った紙切れが封入されている。8ronixとのミニアルバムのときは「発送おくれてすみません。風邪ひきました」と書いてあった。初戦はLuiz。Luizは数々のバトルで上位に進出しているACEの弟である。先行のミクソン重一が「お前は兄貴の七光り。兄貴がいないと何も出来ない」というようなことを言ってLuizを攻め立てる。「兄貴の七光りなんかじゃねえ」とLuizが言い返すと「結局そうやって兄貴の名前を出さないと盛り上がらない」とミクソン重一。「兄貴の話を始めたのはお前の方じゃねえかよ」とLuiz。こうやってムキになった時点でミクソン重一の策にはまっている。ミクソン重一、勝利。

ミクソン重一はベスト32でGOTIT(ガッティ)に負けた。GOTITに対しては「そうやって大きな声で感動的なことを言って沸かせるしかない」とか、マザファカでバースを締めたのを受けて「そうやってマザファカ的なことで小節を締めるしか能がない」とか、「お前はダサい。なぜかを説明しよう…」というように相手のスタイルを斜めからおちょくる憎たらしさがたまらなかった。Luizとの試合でもそうだったが、相手のターン中にいつもニヤニヤしながら頷いて、メタ的な視点から的確に相手の弱みを述べるのが凄く性格が悪かった。ところでMC松島とは別の名義で出場していることにケチを付けてきたGOTITに対して「こっちには名前を変えざるを得ない事情があるんだよ。それくらい分かれ。子供か」というようなことを言っていたのだが、事情って何なんだ…。

他に印象に残ったパンチラインとしてはふぁんく→KEN THE 390の「俺はドリームボーイの390よりもDREAMS COME TRUEの『サンキュ.』の方が好き」や、KBD→呂布カルマの「格闘技じゃあり得ねえ。瓦(Twitterによると身体という説もあり)のウェイトに差がありすぎる」(戦極12章の呂布カルマを引用)といったあたりだ。MCでは、MAKAという人がフロー巧者だった。「MAKAとCHICO CARLITOは俺が見つけてきた」と正社員さんが誇らしげだった。「CHICOは俺(が見つけた)」と八文字さん。(このやり取り、正社員さんと八文字さんが逆だったかも。)

16時32分から(実際には時間はずれていたはずだが)のライブパフォーマンスの時間に会場を抜け出すと(TSUTAYA O-EASTそのものからは出ていない)ライムベリーがチェキ会をやっていた。MC MIRI以外の二人も来ていた。MC MIRIとチェキを撮りたかったが、システムが分からない(どこで何を買えば参加できるのか、参加時の手順はどうなっているのか…私は楽曲派なのでライムベリーのはもちろんハロプロでも接触を主とするイベントにはいっさい参加したことがない)上に誰に聞いたらいいのかも分からなかったし、チェキ会の様子を見ていると何かこう風俗感が漂ってきて胸が苦しくなってきて、やめておこうと思って、大人しく会場に戻った。晋平太のライブパフォーマンスの途中だった。晋平太の次に般若が「制服を盗んできました」と言いながら出てきた。自分の曲だけでなく、ACEと二人で『フリースタイルダンジョン』用に作ったとおぼしき曲もやっていた。「私は今バトルシーンの中心にはいませんが…君たちはいつまで人と人が罵り合うのを見て興奮しているんですか。戦極とか、罵倒とか…名前からして下品じゃないですか。やめてしまえば世界は今よりも平和になるのに。全員死んじまえ」
「制服を盗むよりも制服を脱がしてキスした方が興奮するんじゃないか? これが私からの今年最後の言葉です」
「この20年間やっていることとして冷水のシャワーを陰嚢に当てているのですが、その最中に書いた曲です」と新曲を披露した。

呂布カルマがライブパフォーマンス時に言った「手振ったりヘラヘラしたり、飲み会の一気コールみたいな音楽を30超えてやる訳にはいかねえんだ」というのが頭に残っている。10章や12章でもライブパフォーマンス時に客が盛り上がってこないことに機嫌を損ねるラッパーがちらほらいた。彼らからすると「お前らバトルにしか興味がねえのか?」ということになる。今日も般若が曲と曲の間に「ライブはそんなに楽しくないか?…まあいいや」とこぼしていた。しかし、そもそもの話として、日本語ラップの大半はワイワイ盛り上がるタイプの音楽ではないのでは? 言葉を味わう音楽だ。それが客が熱狂していない最大の理由だと思う。もう一つの理由は、客がそんなに曲を知らないことだと思う。

NAIKA MCがKEN THE 390を倒して戦極MC BATTLE第13章の覇者になったのが20時42分頃だった。本来の予定だと20時20分だったのでほぼ時間通りだった。回を重ねる毎に進行が改善していくのは凄い。この後もライブパフォーマンスがあるが、私は明日、仕事がある。6時に起きなくてはならない。ここから徒歩と電車で家まで1時間くらいかかる。晩飯も軽く食っておきたい。しかも昼飯を食ってから一度も座っていないので疲れている。だからバトルが終わったらすぐに帰った。今日出ていたラッパーの一人から500円のCD-Rを買った。あとBOILRHYMEのメンバーたちが会場外の階段を下りたところでCD-Rを売っていたので買った。1,000円。アイドルの写真を1枚500円で買うのに慣れた身からすると随分と安い。帰りに路地裏でケバブロール辛口600円を買って、食べながら歩いて駅まで向かった。ずっと興奮と幸福感に包まれて(「こうふ」で頭韻を踏んでいる)、夜はなかなか寝付けなかった。

2015年12月12日土曜日

田村芽実バースデーイベント2015 (2015-12-03)

漢 a.k.a. GAMIの『ヒップホップ・ドリーム』に、彼の仲間が麻薬を密輸しようとして成田の税関で捕まった話が書いてある。今これを書いているのは外(池袋の喫茶店「フラミンゴ」)で手元に本がないから再読できないが、手に汗握る展開だったのを覚えている。一緒に帰国していたMC漢は税関を通過したのだが、仲間がなかなか出てこない状況は見ているだけで気が気ではなかっただろう。ましてや本人は言葉で言い表せないほどの緊張を味わっただろう。頭が真っ白になるだろう。私は麻薬を密輸したことはないが、想像することは出来る。

ハロプロにはファンクラブの会員しか参加が許されないイベントがある。これから行く「アンジュルム 田村芽実バースデーイベント2015」もそういうイベントの一つだ。通常のコンサートやイベントであればチケットさえあれば入れる。後は荷物検査があるくらいだ。ファンクラブ会員限定のイベントの場合、当選通知メール(チケットは発行されない)、ファンクラブ会員証、顔写真付きの身分証の三点を提示しなければ中に入れてもらえない。メールは印刷してきたし(画面の提示でも可)、会員証と身分証は常に財布に入れているので問題はない。と安心して入場列に並んでいたら、免許証の期限が切れていることを思い出した。更新はしたのだが新しい免許証は実家にある。保険証でもいいのではないかと思ってメールを見直したらこう書いてあった。
当イベントでは、「運転免許証」「パスポート」「住民基本台帳カード」「学生証(顔写真がないいものは不可)」「Hello! Projectエグゼクティブパス2015」の5点以外は、顔写真付き本人確認資料としてお取り扱いしません。
パスポートは持ち歩いている訳がないし残りの三つはそもそも所持していない。メールを見ると携行品のどれかが欠ける場合は12/2(水)までにファンクラブに連絡するようにと書いてあった。昨日だ。

逡巡した。免許証の期限が切れていると申し出るべきか。迷っているうちに自分の番になった。メールを印刷したA4の紙と、ファンクラブの会員証と、期限切れの免許証と、保険証。その四枚を重ねて、無言で係員の女性に渡した。保険証を入れたのは、免許証の期限が切れていることに相手が気付いた場合、事情を話して保険証で逃げられないかという一縷の望みに懸けたからだ。

係員がメールを見た。会員証を見た。で、免許証。思ったよりしっかり見ている。免許証に開いた穴も、過ぎ去った有効期限も、係員の視界には入っているはずだ。何か言ってくるのを覚悟した。説明の言葉を用意して息を吸い込んだが、無事に入場を許された。保険証には目もくれず、そのまま一式を返してくれた。何で大丈夫だったのか、と思いを巡らせた結果、おそらく彼女が指示されたチェック項目の中に「有効期限を確認する」というのが入っていなかったのではないかという考えに至った。名前がメールと会員証と合っているか、そして顔が本人で間違いないか。その2点を確認するように言われていたんだと推測する。それらの点に集中することで、それ以外の箇所が苫米地英人が言うところのスコトーマ(盲点)になっていたんだろう。助かった。入場を許されてから客席に向かう途中、ドキドキして手が震えた。そこで冒頭に書いた『ヒップホップ・ドリーム』内のエピソードを思い出した。麻薬を密輸する人の気持ちを追体験できた気がするからだ。

客席に入るすぐ手前で、数名の来場者たちが光る棒を配っていた。私は礼儀正しくありがとうございますと言ってそれを受け取った。一緒に渡された紙には、開演して田村芽実さんが入ってこられたら一斉に点灯し、そのまま氏が歌われた場合は一曲目の最後まで光らせてくれと書いてあった。

TOKYO FM HALLは2年前に岡井千聖さんのバースデーイベントで来たときに好印象を持っていた。こじんまりしていてステージが客席よりも高い位置にあるので、近くて見やすかったからだ。ファンクラブでやるちょっと緩めのイベントには最適の会場だと思う。もっと人気のあるメンバーさんだと山野ホールとかのもっと大きな会場でやる。私が応援するメンバーさんはなるべくTOKYO FM HALLでやってほしい。今日は運良くいい席だったのでますますこの会場が好きになった。C列の6番。3列目。A列は左端が4番から、B列は3番から、C列は2番からだった。

下手(左側)から登場した田村芽実さんがそのまま歌った一曲目が『私のすごい方法』だった。私は嬉しかった。なぜなら私がハロプロにはまるようになったきっかけが、この曲が収録された松浦亜弥さんの1st album 『ファーストKISS』だったからだ。つまり私は根っからの楽曲派なのである。入場時に有志の方々からもらった光る棒をはじめは言われた通りに点灯させていたが、チカチカするのが曲と会場の雰囲気に合わないし気が散るので途中で消した。『私のすごい方法』が終わると、進行役としてサミットクラブの静恵一氏が登壇した。「私たちの絡みを知ってる人?」と田村さんが客席に問いかけるとほとんど誰も反応しなかった。あまりの少なさに「これだけいて一人、二人て」と静さん。「私がまだ眉毛を手入れしていない頃からの関係なんですよ」と客に説明する田村さん。
「3年ぶりくらい?」
「そうですね、3年か3年半くらいです。その頃わたしは中二でした」
「まだ前のグループ名で」
「そう、スマイレージ」
「まともに喋れる子が一人もいなかったんです。ずっとゴリラの物真似してる子がおったり」

一曲目に選んだ『私のすごい方法』について「知ってる人?」という田村さんの問いかけに会場の大半が手を挙げる。「わあ、たくさん!」と喜ぶ田村さん。「最近は若い子がたくさん出てきている。アンジュルムには上國料萌衣ちゃんが入ってきた、そんな中、私は培ってきた経験を生かして私だけのすごい方法でやっていく」と決意を表した田村さんに対して、17歳にして随分としっかりしてるね…と感心する静さん。「アイドル寿命は短いんですよ! アイドルはどんどん若くなっている。今が大事なんです」と田村さん。

福田花音さんが卒業して悲しいか?と聞く静さんに、いや、と首を傾げる田村さん。意外な反応に驚く静さん。
「いや、あれからまだ二期としか会っていないんです。アンジュルム全員で集まる仕事というのをあれからまだやっていなくて」
「じゃあ福田さんがいなくなったのを実感するのはこれからだね」
「でも卒業した翌日からTwitterを始めたじゃないですか。あれには本当にびっくりして。でも私のことを何にも書いてくれないんです」

田村芽実さんの誕生日は10月30日である。バースデーイベントは本来、誕生日の前後にやるのが通例だが、今回に関しては一ヶ月以上が経過している。
「(バースデーイベントを)いつやるの?と握手会で多くの人たちが聞いてくれたんですけど、今日の一回目(この公演)は当日券があるらしいです。そうやって聞くくせに結局は来ないのかと。まあ、今いる人たちは優しい人たちですけど」と冗談めかして話す田村さん。

田村芽実memoriesと題して、幼少期の動画(selected by 本人)を何本か流してその頃を振り返るというセグメントがあった。
・生まれて間もない頃、おそらく病院にて(会場のあちこちから「可愛い…」というため息混じりの声が)
・家の階段をハイハイで上る。父親が撮影(カメラが向いた時点で顔がカメラに向いているのを指し、この頃から撮られる準備が出来ていると静さん。照れ笑いする田村さん)
・家族で苺狩り。カゴに地面の落ち葉を入れる。「雨だよ」と退避を促す母親の声を無視して悠然とした態度(動画に苺が映っていないので「苺狩りちゃいますやん」と突っ込む静さんに「じゃあ落ち葉狩りですね」と返す田村さん)
・家でテニスラケットをギターに見立てて歌っている(後ろにいる田村さんのお姉さんがラケットにとどまらず、バケツをかぶって星型のサングラスをかけていたので田村さんよりもお姉さんが専ら静さんによる突っ込みの的になった)
記憶が正しければこの4本の動画であった。

名前の由来は二つある。
1.お姉さんがトトロを好きでサツキになりたかったので妹をメイにしたがっていた
2.難産だった。母親が大変な思いをして命が実ったので命実と名付けたが、名前に命が入っているのは重いため芽実にした

生まれてはじめて喋った言葉は「かっ、かっ、かっ」だった。
「痰を吐くみたいな?」
「違うんです。お姉ちゃんが花恋っていうんですけど、お姉ちゃんが近づいてきたときに花恋と言おうとしてかっ、かってなったんです」
「それはお姉さん嬉しいだろうね」

生い立ちがこうやって動画で残ってるんですねという静さんに、「現代っ子ですから。すみませんね」と返す田村さん。

その後、彼女は『Kiss! Kiss! Kiss!』(しゅごキャラの主題歌で、前から好きだったとのこと)、『はじめてを経験中』(可愛くて大好きな曲とのこと)を歌った。

「次の曲は2回目では歌わない。2度と歌わないかも知れない。2回目ではここではハローの曲を歌う」と田村さんが紹介したのはテレサテンの『別れの予感』だった。「知ってる人?」。後ろの水を飲んでこちらに振り返って、挙がった手の数を見て「あ、微妙…。20代、30代の人が多いんですかね。40代以上じゃないと分からないみたいです」。こんな貴重な場にいられない人は損をしている、というようなことを言ってから「当日券あるのにね」とここでも1回目が売り切れなかったことへの怨み節を披露していて面白かった。

次に『王子様と雪の夜』、最後に『Never Forget』であった。後半になると徐々に暖まってきたが、今日は客のノリがおとなしかった。メンバーさんもファンの側も、どれだけ盛り上がるかで現場の価値を計りがちではあるが、来場者がまったりと楽しんでステージの演者を温かく見守っている現場も、それはそれで幸福感に包まれているし悪くない。

最後の喋りで田村さんは「開催が延びてよかったと私は思っています。アンジュルムだから遅れさせられたんじゃないかと思う人もいるかもしれないですけど、10月11月はアンジュルムのツアーで忙しかった。あの時期にバースデーもやっていたら大変なことになっていた。歌いたい曲を温める時間が出来てよかった」と締めくくった。

良い会場で席にも恵まれ、間近で田村芽実さんを見るというなかなか得がたい経験だった。バースデーイベントならではの話がたくさん聞けたし、田村さんの歌声にまったりと酔いしれることが出来た。

2015年12月6日日曜日

MISSION 220 (2015-11-30)

YouTubeに『MADE IN KAWASAKI 工業地帯が生んだヒップホップクルー BAD HOP』という動画がある。その内容についてここで語ることは出来ない。なぜなら私はその動画を見ていないからだ。雰囲気から察するに、どうやら川崎の不良少年たちが徒党を組んでヒップホップのクルーを作る話のようだ。BAD HOPという造語をクルー名にしていることから、ワルさを売りにしているのが見て取れる。川崎という土地に対しては何となくそういう刷り込みがあった。それ以外で川崎について私が知っていることと言えばヴェルディ川崎とフロンターレ川崎の本拠地であるということくらいである(ヴェルディは後から東京全体をホームタウンと標榜するようになったが)。したがって、私にとっての川崎とはワルさを押し出した少年たちによるヒップホップクルーとJリーグのチームが二つある街なのである。一般的に、関わりのない土地に対する印象というのはそんなものである。名古屋と言えばエビフリャーとコーヒーを頼んだだけでおまけが大量に付いてくる喫茶店であり、大阪と言えばかに道楽と漫才であり、インドと言えばカレーである。普通の外国人から見れば日本はスシ、ゲイシャ、サムライ、カミカゼなのである。

川崎に来るのは初めてかと思ったが、違った。川崎市に住む友人がいて、彼の家に遊びに行ったことがあるし、等々力陸上競技場にヴェルディの試合を観に行ったこともあった。ただ、昔のことだ。少なくとも川崎駅で降りるのは初めてだった。クラブチッタ川崎に着いたところグッズ列はそれほど長くなかった(20人くらいだったか)。私の番だと思って売り場の淑女と目を合わせて軽く会釈をして一歩踏み出したとこら、いがぐり頭のガラの悪いオタクが「次オレじゃねえの?」と割り込んできた。咄嗟に「あ、すみません」と譲って穏便に済ませた。これが一瞬で出来たのは我ながら成長したなと思った。大学を卒業してから10年間を経て、どうでもいいことで争うということをしなくなった。仕事の経験が大きいと思う。彼は宮本佳林さんのTシャツ3,000円と写真500円を買っていた。5,000円札で支払って1,500円のお釣りを受け取っていた。どうして天使のような宮本佳林さんを好きでいながらあのような感じの悪い人間になれるのかが不可解だったし、彼に推される宮本さんが可愛そうだった。オタクでありながらガラが悪いというのはモノホンの底辺だ。彼に対する怨嗟の言葉が頭を駆けめぐり、気分が悪くなった。この気分を引きずるのか、忘れて楽しむのか。自分の度量を試されていると思った。川崎駅に戻って、コインロッカーの前でtilakのダウンヴェストとBattenwearのスウェットシャツを脱ぎ、コム・デ・ギャルソンのTシャツの上から宮崎さんの研修生風Tシャツを着た。スウェットシャツを着直した。ジーンズのポケットにチケットと2,000円を入れた。宮崎さんと宮本さんの日替わり写真(各500円)とコレクション生写真2枚(各500円)をカバンに収めて、ロッカーに入れた。暖かいのでダウンヴェストも預けた。400円。セブンイレブンで「深み味わうヱビス」を買って、店の前で飲んだ。最後の方を口の中に流し込みながら周りを眺めると、上下紺のスウェットシャツにスウェットパンツを着てヒゲや髪の毛をあまり整えていない紳士が通りがかって他人の自転車のカゴにゴミを入れていた。治安があまりよろしくなさそうな空気を肌で感じた。平日の16時半頃にカバンも持たずにコンビニ前でビールを飲んでいる私も大概だが。空腹のおかげでアルコールが効くのが早かった。ややノリのいいシラフくらいに仕上がった。これくらいがちょうどいい。

開場17時15分、開演18時。17時前に会場前に行くと、係員が1~200、201~400、401以降という三つの塊に分けて来場者を立たせていた。となると今日の客は500~600人くらいか。私のチケットに印字された整理番号は55番だった。クラブチッタ川崎は初めて来るが、ネットで画像を見るかぎりステージが高い位置にあって見やすそうだし、ライブハウス(和製英語)としては収容人数が多い方なので(ネットには1,300人と書いてあった)、55番というのは相当にいい番号のはずだから楽しみだった。入ってみると、大体2列分くらいまで人が入っていて、空いているのは3列目くらいからだった。一箇所だけ2列目に入り込めそうだったが一瞬迷った隙にむすっとした顔の恰幅のいい紳士が走ってきて、その空間を埋めてきた。彼のすぐ左後ろに立つことにした。2列目は逃したが、それでも最高の位置だ。2002年サッカーW杯アイルランド代表のダミアン・ダフのような右側前方のポジション。右前の紳士がTwitterをいじっているのが見えた。宮本佳林さんの画像をアイコンにして「がんばりんです」等と誰かに送っていた。入場時に渡されたビニール袋や自分のカバンを床に置く人が近くに何人もいた。混雑した電車でボストンバッグを足下に置く高校生から進歩していない。

開演前の場内announcement(いわゆる影アナ)は宮本さんが担当した。注意事項を読み上げる度に客席の皆さんがはーいと声を揃えて返事をするのが通例なのだが、今日は宮本さんが自分で読んだ注意事項の後に自分ではーいと言っているのがやたらと可愛らしく、彼女の上機嫌さがこちらにまで感染してくるようだった。Opening actでJuice=Juiceさん扮するNEXT YOUさんが登場し“NEXT IS YOU”を歌った。NEXT YOUさんのお決まりとして「NEXT YOUのライブは?」「授業参観!」「NEXT YOUのファンのみんなは?」「ネクス中毒!」「みんなで目指すぞ」「武道館!」(細かい言葉は間違っているので雰囲気だけをつかんでほしい)のようなやり取りをNEXT YOUさんと客が行うのだが、こう言ったらこう返すんですよという根回し一切なしにいきなりこのくだりを始めて、しかも客の大半が対応できていた。私はうろ覚えだったので半分くらいしか咄嗟に反応できなかった。

NEXT YOUさんとして出てきた最初の挨拶で、植村あかりさんの声がかすれているようだった。前方で細かい表情が見えたからこそ気付けたのだが、踊っているときの表情を見ても生気が欠けており、どうも元気がなさそうだった。Juice=Juiceさんとして出てきた本編でも同様で、無表情でいることが多く、目の焦点が合っていない感じがして、このまま意識を失ってしまうのではないかとヒヤヒヤした。いつもの植村さんではなかった。サッカー雑誌の寸評風に言えば、精細を欠いた。他のメンバーさんは四人とも元気ハツラツで、植村さんと交互に見ると落差が明確だった。約1年半で220公演を達成するというのはおそらく理詰めというよりは体育会系のノリで決められたコンセプトだろうし、これだけの公演を短期間でこなしていけば常に100%の品質を保つのは無理な話だ。既に欠員が出たこともあったし、公演によっては体調や気分にムラが出るのは当然だ。

間近で見て改めて、金澤朋子さんがやたらと美人だった。いつも美人のはずなのだが今日は特にそう思った。自信に溢れた表情で歌って踊るお姿は、優美という言葉がよく似合う。宮崎由加さんは人並み外れてきれいで、彼女と私が同じ世界に住んでいるというのが理解しづらかった。日本人や人間といった何かしらの属性を私と同じくする存在というよりは、お人形さんだった。宮本佳林さんはいつ見ても至上の元気さと可愛さと一生懸命さを我々に見せてくれる100点、100%のアイドルである。この方には不調という状態が存在するのだろうか?

宮本佳林さんが明日で17歳になる。おそらく開演前のannouncementを割り振られたのは今日で16歳最後ということでfeatureされたのだろう。一人喋りのセグメントも宮本さんが担当した。宮本さんがおっしゃっていたことの一部:
・明日のバースデーイベントの1回目は当日券もあるので来て欲しい。1回目でしかやらない、激しい何かがある。何かは言わない。セットリストも絶対に言わない。でも皆さんに喜んでいただけるセットリストになっていると思う
・(今日の客には)久しぶりに見る人がたくさん。1年ぶりくらいの人が多い。どこに行っていた? こぶしファクトリー? つばきファクトリー? カントリーガールズ?
当たり前のように「1年ぶりくらいの人が多い」とおっしゃっていたが、友人や同僚でもあるまいしそんなに深く接している訳ではないのに覚えているとは、どういう記憶力をしているんだ…。

その後、宮本さんが着替えていて他のメンバーが喋るセグメントで金澤さんが、佳林ちゃんの誕生日になにをあげたらいいか、と客に投げかけた。「私よりも佳林ちゃんのことを知っているだろうから。小学生の頃から知っている人もいるんでしょ?」。タケちゃん(宮本佳林さんが敬愛していることで知られる、アンジュルムさんの竹内朱莉さん)という声が客から挙がった。タケちゃん? どうすればいいの? と笑っていた金澤。「ああ、グッズを買えばいいのか。生写真とか? ハロショに行けばいいのか」とグッズの購入を検討するが、「生写真だと300円くらいでしょ。安すぎる」ということで、高いグッズにはどういうものがあるのか? と金澤さんが問いかける。するとメンバーさんの誰かがタペストリーがいいと言った。「私たちのタペストリーを家に貼っている人?」とメンバーさんが入場者に聞くとほとんど手は挙がらず、「意外と少ない…」と笑っていた。高木さんが「Juice=Juice以外のを貼っている人!」と問うと後方の誰かが手を挙げ「いるんかい! 素直か」と高木さんが突っ込んだ。着替えを終えた宮本が「それ欲しい!欲しい!」と竹内さんのタペストリーの話に乗っかってはしゃぎながら合流した。高木さんが「佳林ちゃん、タペストリーは壁に貼るだけだよ」と下ネタを匂わせる?発言をしたがパスの出し手と受け手の意図が噛み合わず一瞬だけ変な空気になった。宮本さんが「タペストリーって家を出るときに行ってきますって言うためにあるんじゃないの?」と言ってすぐに空気を元に戻した。

宮本さんの誕生日を祝うセグメントがあった。17 HAPPY BIRTHDAY KARINの文字と苺?でdecorateされたケーキならぬ厚焼き玉子が袖から運ばれてきて、大好きな厚焼き玉子だ!と宮本さんは感激していた。その前の曲の終盤、何の曲かは忘れたが「愛してる」という歌詞が何度か続く箇所があって、そこをメンバーさんが代わる代わる宮本さんに近寄って抱きついて歌うというのをやっていて、宮本さんが泣いていた。そのタイミングで誕生日厚焼き玉子が登場したので二重のサプライズになって祝福の演出として成功していた。会場全体でハッピーバースデーの歌を歌った。私が平日に川崎のイベントに参加するには仕事の午後半休を取る等の特別な対応が必要であり、現に今日も有給を取っている。月末月初に二日連続でそれをやるのは厳しいので明日の宮本さんのイベントは申し込まなかった。今日のコンサートでこうやって祝福に参加できてよかった。

めちゃくちゃいい位置だったし、全体的に会場が盛り上がっていてメンバーさんも「皆さんの熱気が凄い」と言及していい雰囲気だったし、事前にお酒をちょっと入れたことでいつも以上に音楽に乗れたし、宮本佳林さんへの祝賀もあったし、グッズ列で遭遇したいがぐりオタクのことを忘れて存分に楽しむことが出来た。

アンコールは「佳林! 佳林!」だった。昨日の福田花音さんのfinal講演で「かにょん!」と叫んでいるときにも思ったが、最後が「ん」の3文字のコールは若干やりづらい。最後の「ん」を一音として言わないといけないからだ。4文字だと言いやすくなる。例えば仮に小林よしのりさんがJuice=Juiceさんの一員で今日が彼の誕生日だとして「よ・し・りん」だと「ん」が「り」とつながって言いやすくなるのだ。

最後の挨拶で宮崎さんは「今ドラマの撮影をしているんですけど、やっぱりライブが楽しいんです。皆さんの反応を直に見られるので。どんどん笑顔になっていく人や、どんどん汗だくになっていく人がいる」とコンサートへの愛を語っていた。高木さんは「今日はもっとガラガラになるかと思っていた」と笑いを誘い「だから出てきたときお客さんがたくさんいて嬉しかった」とおっしゃった。植村さんは「かりんちゃんみたいにパキパキに踊りたいですけど(宮本さんはいやいやという感じで恐縮した表情と謙遜のリアクションを見せていた)、すぐには難しいのでまずはりんかを見習って筋トレに励みたい」とおっしゃっていた。

高速握手会は、植村さん、宮崎さん、高木さん、金澤さん、宮本さんの順番だった。植村さんの感情がない反応に私の心がクラブチッタで砕け散った(クラブチッタと砕け散ったで韻を踏んでいる)まではいかないがやや削られた。他のメンバーさんはいつもの元気と愛想を振りまいてくれた。宮崎さんが見せてくれたこれ以上ないくらいの笑顔が私の頭にこびりついて離れない。高木さんが私がかけていたアラン・ミクリのメガネをいじってくれた。それを見て次の金澤さんも「あら」と私のメガネに注目してくれた。最後の宮本さんも何かを話しかけてくれたが聞き取れなかった。19:48に終演し、会場を出たのが20:38だった。仕方ないけどこの規模の会場だと握手会の待ち時間がだいぶ長くなる。

家に着いてから、コレクション生写真を開封した。1枚目は宮本佳林さんだった。いいね、と呟いてアルバムに収めた。2枚目を開けると、そこには満面の笑みを浮かべた植村あかりさんがいた。最高のオチだった。

2015年11月30日月曜日

百花繚乱 (2015-11-29)

会社を辞めるというのを、私は二回やったことがある。最初の会社は8年間勤めた。部長から「何か一言」とマイクを渡され、部全体に何か話すように仕向けられたときは困った。何も言うことは準備していなかったし、言いたいことはなかったからだ。「特にないんですが…」と言ってから数秒間の沈黙を挟み、さすがに本当に何も言わないで済ますことは出来ないと気付き「今までありがとうございました」というような言葉を手短に発したのを覚えている。次の会社は、在籍期間が一ヶ月だった。自分から辞めたが、半分クビにされたようなものだった。ゴールデンウィーク中に退職を決断した私は、連休明けの朝9時過ぎに出社し、10時半には手続きを終えて建物から出た。手続き上、人事と上司とは話さざるを得なかったが、それ以外の同僚には誰にも辞めることを知らせず、エレベーターで地上階に降りた。

福田花音さんが今日でアンジュルムを脱退し、アイドルを辞める。その公演を観るために、日本武道館に行った。アイドルがアイドルではなくなる現場を観に行くのは、初めてだ。高橋愛さんがモーニング娘。から引退する二日連続の公演のうち、初日を観たことはある。でも、この公演が最後だというのは映画館やDVD、Blu-rayでしか観たことがない。

私が今まで生きてきて最も好きでいたアイドルは、道重さゆみさんだった。彼女がモーニング娘。での活動を辞めたのはちょうど去年の今頃だった。パシフィコ横浜で行われた最後の公演。ファンクラブの先行受付では落選し、追加された席の受付でも落選した。数万円を出せば、娯楽道であったりTwitter経由で個人からチケットを入手することは可能だった。席を問わなければ現場に潜り込むことは可能だった。普通に考えれば、何万か積んででも行くべきだった。道重さゆみさんがモーニング娘。として放つ最後の輝きを見届けるのは、私にとってそれほど重要なはずだった。でも、私はそうしなかった。映画館での上映を観に行くことでお茶を濁した。それでよかったんだと今では思っている。その場にいたとしたら、耐えきれなかっただろうと思う。チケットが当たらなかったのは残念ではあったが、ホッとした部分もあった。

何かが終わるのに向き合うのが、私は苦手だ。最後に対して、終わりに対して、成熟した態度で臨むことが出来ない。避けてしまう。見ないようにしてしまう。

道重さんのラジオ番組『モーニング娘。道重さゆみの今夜もうさちゃんピース!』の最終回は、未だに聴いていない。彼女がモーニング娘。を引退する記念に発売されたDVDは、まだ開封していない。パシフィコ横浜で行われた最後の公演を収めたBlu-rayは、一度しか再生していない。道重さん以外でも、アマゾンで12,725円もした(定価17,280円)Berryz工房のBlu-rayは3月に買ってから開封していない。Berryz工房のことは特段、応援していたという訳でもないし思い入れも特になかった。そんなBerryz工房でも、なるべくなら終わるのをこの目で見たくない。(とは言ってもこのまま放置するのは無意味なので近いうちに観ようとは思っている。)

今日の物販は、ネットで公開された小さな画像を見る限り田村さんの日替わり写真がよさそうだった。通常は1枚なのだが、今日は全員2枚組で、1枚はいつも通り一人、もう1枚は福田花音と二人で映っている。あと今日から発売されたDVD MAGAZINEも欲しかった。14時すぎにグッズ列の混み具合を見に行ったところ、2時間くらいは待ちそうだったので諦めた。日替わり写真はこの場でしか買えない。DVDは後でe-lineupで買う。九段下駅の近くにあるPRONTOに入って、ホットコーヒー240円とキットカット50円を買った。ここに来る前にタワレコで買った和田彩花さんが表紙の『IDOL AND READ』を袋から出した。和田彩花さん、岡田ロビン翔子さん、佐藤綾乃さんのインタビューを50分くらいかけて読んだ。アンジュルムのTシャツを着た若い女性二人組が隣に座ってきた。福田花音のfinal公演への期待を楽しく語るのかと思っていたら、会社の部長の加齢臭が嫌だとか○ちゃんは△ちゃんを嫌いだとかそんな話ばかりだった。聞き耳を立てていたという訳ではないのだが、席が近くて、私が音楽を聴いていなかったので自ずと耳に入ってきた。iPhoneにearphoneをつないで、好きな実況主であるP(ピー)さんの新しい動画「友人が作った奇想天外でユーモラスなPRG【はがね】を実況プレイ!part7」を観た。

席は、南スタンドW列25番。後ろから二列目の中央付近。サッカー観戦であれば私が最も好きな位置だ。アイドルを観る席としてはステージが遠い。決して良席ではないが、不満はない。なぜなら;
・ハロプロで私が主に好きなのは℃-uteさんとJuice=Juiceさんであって、福田花音さんやアンジュルムさんの熱心なファンという訳ではない
・武道館は傾斜が強く、基本的にどこにいても見やすい。よっぽど端っこの席でない限り大外れということはない
・南スタンドはステージと対面する位置なので全体が見渡せる。死角がない
私の左は空席だった。最後まで来なかった。おかげで広く使えてよかった。右は静観派の紳士。常に双眼鏡もしくは腕組み。公演を通じて2回くらいしか声を出していなかった。

ステージには百花繚乱の漢字が一文字ずつ書かれた板が4枚置かれていたのだが、順番が「花繚乱百」になっていた。後で直すのかなと思っていたが、開演(10分くらい押した)してもそのままだった。コンサートが始まると、4人のハロプロ研修生がそれぞれの板を後ろから持って、前後左右に動いたりひらひらと回転したりしながら最後に「百花繚乱」に並び替わるという仕掛けだった。遊び心があって、心躍る演出だった。春っぽかった。冬だけど。入場列に並んでいるときから今日の公演は楽しくなるという予感がしていたが、その期待を裏切らない出だしの演出だった。大きな会場では演出の出来が観ている側の気持ちの盛り上がり方に大きく影響する。

私はアンジュルムでは田村芽実さんを推しているはずだったが、最近では自分が田村さんを推しているのかどうか分からなくなっていた。来週にTOKYO FM HALLで行われる氏の誕生日イベントには2公演ともに申し込んで片方に当選はしたももの、参加するにあたって気持ちの持って行き方が難しかった。前述のように私はグループとしてはJuice=Juiceさんと℃-uteさんが好きである。その2グループには宮崎由加さんを筆頭に、岡井千聖さん、宮本佳林さんといった素晴らしい面々がいて、彼女らを前にして自分の中で田村さんの存在が霞んでしまっていたような気がする。でも今日の公演が始まると、私は田村さんばかりを見ていた。ハロプロの中で一番見た目が好みかというとそういう訳ではないが、彼女の魅力を一言で表すのであれば、格好いい。ステージで自分を表現するために生まれてきたような輝きを感じる。才能の塊である彼女を見ていたい。私の田村さんに対する姿勢はそういうことなんだと、今日、認識した。

田村さんの衣装で一番好きだったのは、ダメージ加工の入ったデニム生地のオーバーオールに、虎が描かれたスカジャン(開けて着ていた)、黄色いハイカットのスニーカー。スカジャンの背中には23と書いてあった。マイケル・ジョーダン? あと、全身白のジャケット、長パンツ、帽子が様になっていた。田村さんはmannishな格好が似合う。

序盤の挨拶で室田瑞希さんが「今日は最後まで一人も欠けることなくやり遂げたい」という趣旨のことを言って、客席がざわついた。他のメンバーさんが福田花音さんが今日でいなくなるということを指摘する。「福田さんは欠けちゃいますけど…」と室田さん。客席は笑いに包まれた。その後に(客席の)皆さんが一人も欠けることがないようにやっていきたい」と言い直したが、こちら側に負傷退場や死の可能性がある物騒な現場なのか?という疑問が残り、面白かった。こうやってメンバーさんが言い間違えたりボケたりすることで緊張がほぐれて、暖かい空気が醸成されていった。

福田さんがアンジュルムを辞めるにあたって、サブリーダーに中西さんと竹内さんが就任することが発表された。このサブリーダーという役職にどれほどの意味があるのか不明である。指名された本人たちへの意識づけややる気の向上といったところだろうが、有名無実化するような気もする。ただ例えばマネージャーが中西さんと竹内さんにもっとしっかりしろとか、もっとこういう風に振る舞えとか言うときに「お前はサブリーダーなんだから」というのはいい枕詞になりそうである。

終盤の喋るセグメントでは、田村さんが今後の福田さんとの関係について「羨み合える関係になりたい」と言うべきところを「恨み合える」と言ってしまい客席がざわつき勝田さんが「こわーい」と言っていた。「私は何も恨みはないよ」と福田さん。

中西さんは、福田さんがいかに優しくしてくれたかを泣きながら話してから「私の半分は福田さんで出来ている」としっかり笑いを取っていた。

和田さんは8年前に貸したお気に入りの赤いボールペンを福田さんがまだ返してくれないことを興奮ぎみに暴露し(Twitterの誰かの投稿によるとこの話自体は既出らしい)、一生恨み続けると述べた。
福田「マネージャーさんにも赤いボールペンを返していない」
中西「私もTシャツを返してもらっていない」
福田「Tシャツだけじゃなくてスパッツもね。履き古して捨てたけど」

「いじってくれる人が一人減ってしまうのは残念」という竹内さんに「客席から野次を飛ばすね」と福田さんが返した。

途中、ドッキリで℃-uteとハロプロのリーダーである矢島舞美さんが登場した。福田花音さんの『わたし』に移る気が満々のメンバーさんたちは驚きを隠さず、和田さんに至っては「次の曲があるんですけど!」と矢島さんに訴えていた。矢島さんが登場する前の、次の曲がなかなか始まらない10秒くらい、前屈みになった体勢を維持していた田村芽実さんの胸元を遠くから双眼鏡越しに凝視していたことは秘密である。矢島さんは福田さんに向けた手紙を読み上げた。コンサートの流れを邪魔しすぎない程良い長さで、手紙を読むと矢島さんはコンサートを見させてもらうと言って捌けていった。

この矢島さんのセグメントに限らず、セレモニー的な時間が必要最小限に抑えられていた。よくモーニング娘。のコンサートである、メンバーさんが一人ずつ辞めていく人にお別れをして涙を流して抱きついていくというくだりがなかった。私はこの判断を支持する。いくら特別な公演とは言え、長々と本編とは関係のない時間を取ってしまうと、流れをぶった切ってしまい、コンサートとしての完成度を下げるからだ。辞める本人からの挨拶はファンに向けたものなので、コンサートの一部である必要がある。だがメンバー同士でのお別れというのは内輪の話であって、ファンに見せる必要はない。少なくともコンサートの中に組み込む必要はない。今日の公演は、私のようなそれほど福田花音さんに思い入れのない来場者にとっても過剰に映らない、カラッとした、ちょうどよいセレモニーであった。ダブルアンコールで出てきた福田さんが今日は人生で一番特別な日だと言っていて、そんな場に居合わせてもらえるのはありがたいなと思った。

セットリストには緩急があって、新旧の曲をバランスよく織りまぜていた。曲のメッセージがコンサートの流れともうまくつながっていていた。直近のsinglesはもちろん、『地球は今日も愛を育む』、『私、ちょいとカワイイ裏番長』(中西さんが振り付けを間違えていた。終盤で蹴らないところで一人だけ蹴っていて、すぐに気付いて恥ずかしそうだった)、『ヤッタルチャン』、『大器晩成』、『夢見る15歳』、『新・日本のすすめ!』、『同じ時給で働く友達の美人ママ』(順番はめちゃくちゃ)…。傾向として、やっぱり古い曲の方が、乗りやコールが我々の側に染み付いているから盛り上がる。メンバーが変わっていってもそこはスマイレージ時代からの積み重ねがある。

終演後の私に残った感覚は、胸一杯の感激というよりは、納得だった。これからすぐに粛々と元の生活に戻れるような、地に足が付いた感覚だった。何かが終わってしまったという喪失感はそこにはなかった。これは福田花音さんの最後の公演であって、福田花音さんの終わりではなかった。「○○関係のお仕事をしたい」とか「留学したい」といったふわっとした目標ではなく、作詞家という明確なvisionが決まっている。単なる雲をつかむような話ではなく、具体的な展望がある。既に『わたし』の詞を手がけたし、アンジュルムが将来出すヒット曲を作詞したいと言っていた。これからハロプロを去っていくメンバーの方々の出来るだけ多くが、福田さんのように希望のある辞め方をしてほしい。

2015年11月23日月曜日

℃an't STOP! (2015-11-21)

Hungry Tigerのハンバーグが、私は子供の頃からずっと好きだ。横浜を中心に九つの店舗を構えるハンバーグレストラン。そのうちの一つが実家の近くにある。誕生日のような特別な日には親に頼んで連れて行ってもらっていた。大人になって韓国料理にはまりインド料理にはまり四川料理にはまった。香辛料の刺激に耐えきれずお腹を壊し体調を崩したのは一度や二度ではない。ひどい時には通勤中に少しだけ漏らしてしまうという悲劇も経験してきた。(その教訓を生かし、会社では机の引き出しにトランクスを常備するようにした。)そうやって自らの身体で本物を知ることで、世の中の「○○料理」の多くが日本人の味覚に広く浅く訴える子供騙しであることに気付き、そういった店は利用しなくなった。そういった訓練を経てもHungry Tigerは陳腐化せず、自分の中でリアルであり続けている。横浜に用事がある際には極力Hungry Tigerで食事を摂る。今日はパシフィコ横浜で℃-uteさんを観る。今回のコンサートツアー『℃an't STOP!』を観るのはこれで5回目であり、私はこれで見納めだ。来週に中野サンプラザで千秋楽があるが、それには行かない。開店時間の11時ぴったりに横浜モアーズ9FのHungry Tigerに到着(その時点で整理番号が10番だった)。ほどなくして店内に案内された。オリジナルハンバーグと野菜のブロシェットのレギュラーセット2,240円をいただいた。いつ食べても最高である。食後のコーヒーを飲み干して、会計を済ませて、店を出た。次は年末年始かな。

14時半開場、15時半開演で時間に余裕があった。Twitterで知り合ったある面白い人物(I)と終演後に飲む約束をしていた。彼とは過去に二度、会っていた。彼の投稿を見る限りまともな物を食っていなさそうだったので何か食べる物を渡すことにした。ポンパドールでチーズバタールとロンドの二分の一サイズを買って、みかん10個を買って、鶏肉の惣菜を買った。あげるために買ったものの自分の好物でもあるので我慢できずチーズバタールを一切れ失敬して、食べた。みかんもさっき試食したらおいしかったので二つもらってカバンに入れた。根本敬の『人生解毒波止場』と一緒に後で渡す。LUMINEのFREAK'S STOREを見て、みなとみらい駅に移動して、BEAMSを見た。ネットで見て気になっていたBEAMS別注のorSlowのジーンズが二種類とも置いてあって、いいな、欲しいな…と思ったが、あんまり時間がなかったので試着する等の深入りはやめておいた。Levi's VINTAGE CLOTHINGのジーンズもよかった。もしもっと時間があれば買ってしまっていたかもしれない。危なかった。

私に与えられた席は2Fの後ろから二番目(2F15列)という、いわゆるクソ席であった。席に関係なく生で℃-uteさんを観られることに感激するような純粋さはもう持ち合わせていない。しかもこのツアーに入るのが5回目だ。℃-uteさんは過去に行ったパリ、台湾、メキシコでの公演についてテレビやラジオの番組で聞かれると、来場者の熱狂ぶりをよく口にする。それに比べると日本人は恥ずかしがり屋だと言っているメンバーさんもいた。もちろん日本人が世界的に見てシャイなのは間違いないだろうが、行こうと思えば一回のツアーに何回も行ける日本のファンと、℃-uteのコンサートに居合わせるのが人生で最初で最後かもしれない海外のファンとを単純に比較するべきではない。いくらパリ、台湾、メキシコが熱かったとはいえ、年に何十回もやれば彼らも同じ熱は維持できないはずだ。私が℃-uteさんのコンサートに足を運ぶのは彼女たちを観るためであって、コンサート空間を盛り上げるための駒になりたい訳ではない。という訳で今日は盛り上がるのはそこそこに、先月に手に入れて以来すっかり手放せなくなった双眼鏡を活用し、まったり観させてもらうつもりだった。

ところがまったりしていられなくなった。開演前にiPhoneをなくした。カバンの中も椅子の隙間も探したが見つからない。もし置き忘れたとしたら1Fの客席の後ろにあるベンチだった。なかった。ここではなかったか、もしくは誰かが係員に届けてくれたのか。近くにいた係員の男に、緑のiPhoneの落とし物はないかと聞いたところ、落とし物は1Fのインフォメーションに行ってくれと言ってきた。インフォメーションと言われたって分かんねえよinformationって訳すと情報だぞ「情報に行け」って意味が通じてねえぞという雰囲気を出しながら「インフォメーション?」と聞き返すと行き方を教えてくれた。若い女性が親切に対応してくれたが、iPhoneは届いていないとのことだった。終演後に掃除をして落とし物を収集するのでそのときにまた来てくれと言われた。礼を言って2Fの席に戻った。ちょうどハロプロ研修生のopening actが終わってこれから℃-uteさんのコンサートが始まるところだった。冷静に考えると席に着いた直後、「2Fの後ろから二番目は(stageが)遠い」という趣旨のことをTwitterに投稿していたので、この席の付近で落としているはずだということに気付いた。だが、どうしても見つからない。

なくしたiPhoneそのものに対する執着はなかった。今のiPhone 5cに切り替えてからちょうど2年がたつので、機種の代金はほぼ払い終えている頃だ。データも数日前にバックアップを取ったばかりだ。気がかりなのが、終演後にどうやってIと連絡を取るか。あと、可能性は低いとは思うが誰かが拾って悪用する可能性。もし見つからなかったら何らかの方法でiCloudにログインして紛失モードに切り替えないといけない。事情を話せば後でこの会場のコンピュータを使わせてくれないかな。それが駄目ならインターネット喫茶を見つけて入るしかないな。この近くにあるだろうか? いや、でもこの辺に落としたはずなんだよな。公演中にも二度ほど探し直したが、見つけることが出来なかった。せっかくコンサートに来ているのだからコンサートに集中しようと思ったが、それは無理だった。ただでさえ自分の気持ちが盛り上がっていなかったので、頭の中からiPhone問題を消し去ることが出来なかった。気もそぞろになってしまった。

追い打ちをかけたのが、周囲の観客だった。1Fはいつも通りに盛り上がっていたようだが、私がいた2F後方は温度が低かった。女性が多かった。声を出す人は少数だった。別に白けている訳ではなく、めいめい(田村芽実さんのことではなく各々という意味)が楽しんではいたが、あんまり盛り上がっているという感じではなかった。ライブハウス(和製英語)でアンジュルムさんにディスられるタイプの鑑賞態度であった。もし私が事前に酒でも入れていれば率先して声を出すことが出来たかもしれないが、まったく飲んでいない上にiPhone紛失で精神的に削られていたのでそれが出来なかった。アンコールのときにも周りの人たちはほとんど誰も声を出していなかった。でも彼ら・彼女らの気持ちはよく分かる。慣れないうちは恥ずかしくて声を出せないものなんだ。パシフィコ横浜くらいの大きさの会場でこの席となると、こんなもんなのかも知れない。実際、1Fの良い席にいる奴らと同じくらい盛り上がれというのは無理な話だ。

・Stageから遠くて見づらい席であった
・開演の直前にiPhoneをなくした
・5回目だったので新鮮味がなかった
・周りの温度が低かった

今日の公演は以上の理由により、2015年で私が最も楽しめなかった現場の一つとなった。℃-uteさんやコンサートが悪いのではなく、完全に私の問題である。十分に集中できていなかった。喋りのセグメントで何箇所か笑わせてもらったのは覚えている。でも誰が何を言ったかをあまり正確に覚えていない。

・コンサートの前に岡井が『鶏ガラスープを食べたい人?』と呼びかけたところ他メンバーズが乗ったので岡井がスープを作って振る舞った。卵入りだった。

・昨日はナルチカだった。会場にwi-fiがあったので萩原がつないだところアプリが一斉に自動的にupdateされ始めた(そういう設定にしているらしい)。LINEが使えなくなった。受信していることは分かるが中身が見られない。10回くらい電源を切って10回くらい機内モードにしたが直らなかった。翌朝になっても直らなかった。LINEが直る夢まで見た。26通メッセージが来ているのは分かっていたがそれを伝えると「そのうちの5通は千聖だよ」と岡井が言ったという。

・バス移動の際、こぶしファクトリーの藤井が矢島が食べた後のパンだかお菓子だかの袋を拾おうとしたので岡井が「それはやめときな」と制した。「犯罪だよ犯罪。ファンの人の方がまだ常識あると思う」と萩原。

・12月に発売するalbumの題名が発表された。『℃maj9』。シーメジャーナインスと読むらしい。何か音の響きが○ックスナインみたいだな…と私は不謹慎ながら思ってしまった。

・女性の皆さん?と客席に呼びかけてキャーと返ってきた声援を受けて「ほとんど女性なんじゃないですか?」とおどける岡井。

終演後、iPhoneはすぐに見つかった。右隣の人の席の隙間に挟まっていた。Twitterを開くとIから@が入っていた。18時まで待ってほしいとのことだった。開演前に買ったコレクション生写真が2枚とも矢島さんだった。会場の外で交換をしている紳士に岡井さんと交換したいと持ちかけたが、岡井ちゃんは切らしているとのことだった。Iと合流し、野毛まで歩いて「小料理屋トモ」に入った。ちょうど奥の座敷が空いていた。鯨の竜田揚げを頼んだらマグロも入れてくれて、おまけにアンキモが付いてきた。鶏の唐揚げを頼んだら切らしているとのことでなぜかピリ辛に味付けた豚足が出てきた。アボカドのフライを頼んだらフライの粉がないとのことで天ぷらになった上にぶり大根がおまけで付いてきた。鮨の盛り合わせを頼んだらシャリに白子やホタテ(貝柱の部分だけじゃなく丸ごと)やかに味噌のような謎のペーストを乗せた奇想天外な料理が出てきたしおからのグラタンがおまけで付いてきた。おまかせピザを頼んだら山芋を使ったような生地にポテトサラダとチーズを乗せて焼いた物が出てきた。頼んでいないウコンのジュースを出してくれた。木の香りがした。会計は8,000円超を覚悟していたが5,700円だった。帰り際に裸の状態でウコンを渡された。「どうすればいいんですか?」と聞くと、入り口にいた上機嫌な客が「そのままかじればいいよ」と話しかけてきた。トモさん(店主のおばちゃん)によると「摺り下ろしてもいい」とのことだった。Iとは以前に会ったときよりも打ち解けてきて(少なくとも私はそう思っている)、前よりも話題が広がってきた。『フリースタイルダンジョン』、アイドルの握手会、虹のコンキスタドール、℃-ute、サッカーの日本代表や海外リーグ、インターネットに長文を書くことについて、等々。「今のサッカー日本代表は(『フリースタイルダンジョン』の)モンスタールームの皆さんのようになっている」というのが二日後に思い返しても味わい深い言葉だった。SKE48さんの『前のめり』というsingleをもらった。「同じのが7枚あるから」とIは笑った。21時半くらいに店を出た。振り返ってみると、とても楽しい一日だった。

2015年11月13日金曜日

℃an't STOP! (2015-11-08)

チケットの先行受付に申し込んだときは近場のような感覚だったが、伊勢原は遠かった。東京寄りとはいえ埼玉から神奈川の奥深くまで移動しているのだから、ふらっと出かけるという距離ではない。昨日の夜から体調がやや優れなくて、ジムで一走りするつもりだったが断念していた。明日からアメリカに出張するが荷作りをほとんどしていない。今日は18時から新宿タワレコでfox capture planさんの無銭現場がある。ゆっくり休んで体調を回復させながら、出張の準備をして、夕方にふらっと新宿に足を運んでfox capture planさんでも見物するという過ごし方が出来ればよかったが、14時からと17時半からの℃-uteさんのコンサート2公演のチケットが手元にあり開催場所が伊勢原である以上それは許されなかった。大体、明日からのアメリカ出張というのも今日の℃-uteさんのコンサートを観られるように日程を調整したのだ。

昼公演。12列。近い。双眼鏡がいらないくらいだ。いっそのことカバンにしまっておこうかと思ったほど。一番前から何列かが座り席だったのと、一つ前の11列の11番が途中まで空席だったので、はじめは視界が良好だった。『涙の色』の途中から短髪の岡井オタが来てからは視界が2-3割遮られた。彼はちょうど段差分くらい私よりも身長が高かったので、同じ身長の人が段差のない状態で前に立ちはだかっているのと同じだった。私の二つ右の人は優に180cmを超えていた。その後ろの人は災難だっただろう。身長の高い本人は何も悪くないが。前に背の高い人が来る度に、一般的に男性に比べて背が低い女性はこういう思いをするのが普通なのか…と思う。とはいえ伊勢原市民文化会館は当たりの部類に属する会場だった。

今日は雨が降っていた。この時期にしては気温が高めだった。
中島「雨が降っているとステージでも湿気を感じる。髪の毛がすぐに崩れる」
萩原「舞美ちゃんって汗が鼻の下に溜まったときにどうしてるの?」
顔を振って汗を落としていると矢島。
萩原「汗って一直線に落ちてくるから鼻まで流れてくると困る」
岡井「二十歳を前にしてよく汗をかくようになった舞ちゃん」
萩原「トシをとって代謝が悪くなったら嫌だ」
岡井「二十歳でトシとったって言っちゃダメだよ。ね、舞美ちゃん?」
矢島「ね、舞美ちゃんって言わないでよ」

このツアーで恒例となった『Danceでバコーン!』のintroにおける中島メンバーから客席への振りは「ダンスでダンスでダンスでダンスで?」と言って「バコーン!」と言わせるという、こちらにとって対応が容易なものだった。我々の「バコーン!」は気持ちよく揃った。

中島と矢島が二人で喋って、後の三人は着替えが終わり次第、合流する。
中島「℃-uteは最近みんな画像を加工するのにはまっている。最近℃-uteのLINEに千聖が変顔を送ってきた。これは加工しろってことだなと思ってみんなで加工した。リーダーだけ時間がかかっていた。店にいたが閉店間際になって、店の人がお茶を出したりして早く出るよう圧力をかけてきた。店を出てホテルに着いたらリーダーからメールが来た。ああ頑張ったんだな、という画像だった」
矢島「千聖からは使えないよと公開を拒否されていた。画像を削って、これならいいよという許可をもらった」
その画像がscreenに映し出される。岡井の口元。万歳の格好をしている萩原が、岡井の2本の前歯の間に挟まっている。萩原を丹念に削っていく作業に時間がかかったらしい。
2枚目はおそらく水族館で撮った写真。魚の頭に中島の顔をはめ込んである。よく見ると後ろの小さな魚にも中島の顔。矢島曰くなっきぃの子供とのこと。
後から合流して2枚目の写真を見た岡井、「なっきぃの子供」に気付いて「気持ち悪い」。
矢島「なっきぃは魚にしやすい。おでこを出している方が魚にしやすい」
中島「じゃあ一生おでこ出さない」と言いながら捌ける。
萩原「千聖は変顔の公開を嫌がるけどバラエティ番組で変顔よりもきわどいことを言っている。この間も『これから何の仕事?』と聞いたら『ニノさん』。中身を聞いたら前から拭くか後ろから拭くかとか…」
鈴木もえーと驚く。
岡井「変顔は画像だから残るけど言うことは一瞬だから」
萩原「でも残るよ」
鈴木「地上波だから」
岡井「あと下着はボクサーパンツ派か、あと何て言うんだっけ?(客席の声を聞いて)トランクス?んー、そういうやつ。シャカシャカのやつ」
会場にいる人たちにどっち派か客席に聞いてみたら?と岡井に振る萩原。「私は興味ないけど。(客、エーイング)え、みんながどういう下着を穿いてるかなんて興味ないよ?」
客、エーイング。「え、聞いてほしいの?」
最初はその話題をやめてコンサートを進めようという空気だったが客席がそれを許さない空気だったのでどっち派かのアンケートが始まった。ボクサーパンツ派の人? シャカシャカ派の人? と呼びかける℃-uteさん。シャカシャカ派のときに声を挙げる客に、岡井が「同志よ」という感じで喜んでいた。
萩原「千聖、グッズで下着を出せばいいじゃん。緑の」
岡井「何で千聖が好きなパンツをグッズにするの」
矢島「以前グッズで℃-uteの下着を売っていた」
えー?と驚くメンバーズ。
岡井「売ってないって! リーダー勝手に売らないでよ!」
腕で丸を作って売っていたと伝える客。
え! 売ってたの!と驚く矢島以外のメンバーズ。ほら売ってたじゃんと言う矢島。
大盛り上がり。
矢島「これだけ声を出してもらってから聞くのも何ですが…」
通常であれば「女の人? 男の人?」「後ろの方の人? 前の方の人?」というような聞き方で会場の声を拾っていくのだが、この公演では先ほどまでの話題に乗っかって「ボクサーパンツの人ー?」と矢島が聞く。
矢島の後に客席に問いかける役割である鈴木が「え、私がシャカシャカの人って聞くの?」と恥じらう。フーと冷やかす客。少し間を置いてから「シャカシャカが好きな人ー?」
半々に分かれたことに驚く中島。
ピッタリのやつ嫌だ!と本当に嫌そうな岡井。
岡井「でもねピッタリの方がいいんだって。理由はね…オンエアを観てください」

アンコール明け。

岡井「女性の皆さん?(男がふざけてキャーと叫ぶ。それをやめさせる岡井)心配してくれなくても最近は女性が来てくれるようになった。前は本当に男性だけだった。女性の皆さん?(それなりの数のリアル女「キャー」)可愛いですね。男性の皆さん?(ウオーという野太い声)頼もしいですね。女性の皆さん?と呼びかけると男性の方がキャーって…(男がまたふざけてキャーと叫ぶ)女性の皆さん、こういう感じだったんですよ」

矢島「アンコール出る前に鼻血が出てきた。気付いたのが直前だったので、いいやって出て来た」
岡井「ボクサーパンツとシャカシャカパンツの話をしたからだよ」

萩原、アンコール明けの一曲目『嵐を起こすんだ Exciting Fight!』を終えると捌けて、他のメンバーが喋っている間はしばらくいなかった。右肘をマイクにぶつけて出血したとのこと。その手当をしていた。キズバンドを貼っていた。

夜公演。15列。昼よりも双眼鏡を多く使った。私の五つくらい左に、金髪で若くて(たぶん二十歳そこそこ)日焼けしたチャラそうな見た目の奴がいた。いかにもオタクっぽい中年の紳士を現場で見るとさもありなんと思うが、パッと見ギャル男やんという青年を見ると、こいつはどう間違ってこうなってしまったんだ…というやばさを感じる。

萩原「昨日ホテルのシャワーに知らない人の髪の毛が3本くらい落ちていて。ちゃんと掃除しろよ!と思った。舞、髪の毛だいきらいだから」

鈴木と岡井が喋り、残りの3人が着替え次第、合流する。
鈴木「昼公演でとあるものに関してどっち派かというのをやった。昼公演が終わってから℃-uteで色々と話して、アンケートをやりたいとなった。皆さん、青春時代を思い出してください。女の子の制服でセーラー服とブレザー、どっちが好きですか?」
結果、半々に割れた。
岡井「学校の制服がセーラー服だった人がブレザーに憧れ、制服がブレザーだった人がセーラー服に憧れているのでは?」
岡井が聞きたがっていたということで、唐揚げにレモンをかける人、かけない人というアンケート。3:2くらいでかけないが優勢だったか?
岡井「レモンかけないでほしい」
他のメンバーも、液体をかけるとせっかくサクッとした唐揚げがしなっとしてしまう等、レモンをかけることに否定的な意見。こういうところで℃-uteはみんな意見が一緒だということで話がまとまりつつあったが、「私レモンかけるんだけど」と中島が水を差す。客席から歓声。そこから話の風向きが変わり、なっきぃが℃-ute内でことあるごとに仲間はずれになりがちだという流れになった。
みんながボーダーの服を着ていたがなっきぃだけ違ったことがあると萩原。ボーダーの服をあまり持っていないと中島。
中島「メキシコで山田大使とお会いしたとき、清楚な感じでと言われていたのでシャツにデニムのスカートを着て行った。他の四人は全員、灰色で揃えていて…」
たまたまだという他メンバーズ。
萩原「なっきぃをボツにしようとか、そういうのじゃない」
中島「次からは打ち合わせしよう」
岡井「でもなっきぃのそういうところが可愛い」

岡井千聖がアンコール明けに「握手会で(下着を)見せてくるのは絶対にやめてください」と客に釘を刺したときは、最後の締めの挨拶がそれかよと思った。面白かった。

今日の中島のダンバコのイントロでの振りは鈴木が考えたらしい。夜公演のは何を言っているのか分からなかった。

職安のような名前の紳士が提供した『Iron Heart』、このツアーで初披露にも関わらず、既に客の乗り方が完成しつつある。ウォッオー。オイオイオイオイ。コンサートで盛り上がりやすい、分かりやすい仕掛け。そういう曲を作るのは、発注者の要望を満たしたプロの仕事なのだろう。

夜公演の後には客席で恒例の「℃-ute最高!」と「おつカレーライス!」からの「ばんざーい!」合唱が起きた。
萩原舞さんご本人が恥ずかしくなって使わなくなってから1年半以上は経っている「おつカレーライス」が今でも℃-uteコンサート終演後の客席にこだまする定番phraseであり続けているのがとてもいい。

2015年11月1日日曜日

MISSION 220 (2015-10-31)

当選したのは昼公演だと思っていた。手帳にも14-16時に「J=J西川口」と書き込んでいた。今朝カバンに入れる前にチケットを確認したら17時開演と書いてあってびっくりした。危なかった。というのも今日は友人に18時からの食事会に誘われていて、承諾していたのだ。二日前に料金を知らされ、高いからという理由で直前に断っていた。だってそりゃ、軽い誘いのつもりで受けた食事会に1万円を超える金額はポンと出せねえよ。船に乗って飯を食う豪華な会らしいから(昔『ハロモニ』でモーニング娘。がそういうのやっていた)、ぼったくりじゃないのは理解できる。それくらいするだろうよ。でも事前まで知らされていなかったんだから、この値段はキャンセルの理由として正当でしょ。結果的にはよかった。断っていなかったらRobert GlasperばりにDouble Bookedになっていた。そうなっていても当然Juice=Juiceを選んでいたけどね。

西川口Heartsという焼き鳥のような名前の会場だ。西川口駅の間近になってから気付いたが、ここって先週℃-uteさんのコンサートを観に行った川口駅の隣だ。駅から徒歩で数分。一度行けば覚えられる分かりやすい場所だった。15時半頃に会場に着いて外にいた係員の紳士に「グッズって買えますか?」と聞いたら「確認します」と言って中に聞いてから「どうぞ」って入らせてくれた。日替わり写真の宮崎さんと宮本さん各500円。コレクション生写真500円も2枚。計2,000円。日替わり写真は衣装が前回に江戸川で買ったときのと一緒だった。同じ日に撮ったのだろう。DVD MAGAZINE VOL. 4のときの。それぞれが自分で選んで買ったっていうやつね。私が聞いてグッズ販売が再稼働したくらいだから、あっけないほどに早く買えたわけ。開場時間の16時半までまだ1時間あるから駅前に引き返して、BOOKOFFを物色(韻を踏んでいる)。モーニング娘。のDVD MAGAZINEが結構たくさん置いてあった。松浦亜弥のファンクラブツアーを収めたDVDなんてのもあった。しかも別々の年のが二回分。東武ストアに行って銀河高原ビールを買って店のすぐ外でつまみなしで飲み干した。短時間で流し込んだのでちょっと苦しかった。ゲップが出た。

16時15分ごろに再び西川口Heartsに着くと人だかりが出来ていた。中でクローク料金の500円を払ってゴミ袋を受け取った。150番以降のチケットを持っている方は左側のデッキにいてくれと係員が案内していたので従った。喫煙所だった。係員は二人いて片方は中川淳一郎のような見た目だった。宮本佳林を崇め奉る文言を刺繍した特効服を着た人がいた。ハロウィンということで特殊な格好をしている紳士がちらほらいた。相撲取りの仮装をした紳士、デーモン小暮のようなメイクアップを施した紳士、顔に傷を書いた紳士。白髪で痩せ身の、誰が見てもおじいちゃんとしか形容しようがない紳士が「金澤朋子激推し」と背中に印字された一般に販売されていないTシャツをお召しになっていた。自転車で会場前を通りがかった競馬と風俗が好きそうな地元の紳士が、興味津々で何だと聞いている相手がそのじっちゃんだった。「何やるの? え、ライブ? 何のライブ?」と徐々に核心に迫っていく自転車紳士の声から、回答をぼかしながらやり過ごそうとしているじっちゃんの様子がひしひしと伝わってきた。

16時40分の時点で50番までしか呼ばれていなくて、17時の開演までに全員の入場が間に合うのか不安になった。案の定、ハロプロには珍しく開演時間は少し遅れた。正確な遅延時間は見ていないが5分遅れているまではiPhoneの時計で確認した。私の整理番号は154番だったのだが、予想以上に後方、というかほぼ一番後ろだった。右に女性エリアがあったので(大体左なので珍しい)せめてその後方であれば前方に男性がいるよりは見えやすいのではないかという一縷の望みに懸けて右に位置を取りかけたが、以前にも言及した驚異的な身体能力でjumpする長身の金澤オタクがいたのでギョッとして左にずれた。無理のない程度に少しずつ前に詰めてくれという中川淳一郎の呼びかけで一歩は前に行けたが大勢は変わらず。これじゃ殆どJuice=Juiceさんが見えそうにない。

実際、見えなかった。今までに見てきたすべてのハロプロのコンサートやシリアルイベント、リリース記念イベント、そういったすべての現場の中で、最も出演者が見えなかった。これはきつい。感情を高ぶらせるのが難しかった。前の方の奴ら、このコンサートを盛り上げるのはお前らに託したっていう、そういう気分だった。顔ですらたまに見える程度。人と人の間を縫って出来た少しの空間に、ちょこっとご尊顔がチラ見する。全身どころか腰より下が見えたことは一度もなかった。信じがたいことにJuice=Juiceさんがお立ち台に乗ったときでさえ、視界が人に塞がれてあまり見えなかった。断片的に見える彼女たちの表情から輝きを感じ、お姿がすべて見えたらどれだけ神々しいのだろうか、どれだけ楽しいのだろうか、と想像し、悔しかった。だからもう、ゲームのルールを変えるしかなかった。途中から自分の中でこの公演は、歌声だけでどれだけ早く誰かを当てるというtrainingに変わっていた。今まで以上に各memberの声の特徴や歌い方の癖に注意を払うことが出来た。そのおかげで、この人はこういう息の抜き方をするんだな、というような着目の仕方が出来るようになった。だから悪いなりに収穫も得たけど、もうイヤだよ、見えないってのは。定価を出して得る体験じゃないよ。2,000円ならまだ分かる。結局さ、ライブハウス(和製英語)がいくら近いからといって、見えなきゃ意味がないのさ。こういう人を救済するために毎回、公演後に握手会があるのか?って思った。公演中には見えない、握手会もない、では救いがない。

客の中に顔にパックをしていた人がいたらしく「パックしてるよねあなた」と植村さんがいじった。すると宮本さんが「パックって付けすぎると逆にお肌の水分が失われちゃうんだよ! 15分くらいにした方がいい。15分したら外して」と身を乗り出して力説していたのが面白かった。顔に凄いメイクアップをしている人がいるけどそれは元は何ですか?とメンバーの誰かが聞くと、KISSだとその人は答えた。あーバンドの、とJuice=Juiceさんは納得していた。もしかして私がデーモン小暮だと思っていたあの人のことか?と思った。KISSをよく知らなかったので後から画像検索してみたが多分そうだ。

終演後、近くにいた来場者が「こんなのはライブハウスではない。掘っ建て小屋でライブをやっているだけだ」というようなことを仲間に言っていた。私は会場に詳しくないのでここがどれくらいの水準にあるのかあんまり分からないのだが、ステージを見せるために設計された場所ではないのはよく分かった。人を詰め込んで音を聞かせるだけ。耳が悪くなるような爆音ではなかったので、その点は中の人が周南チキータよりはマシだったと思う。しかし、私が今までに訪れた中でも上位の劣悪会場であることに疑いはない。今日に関してはひどい経験だったというのに尽きる。コンサートの中身について書くことはない。いや、おそらく素晴らしいコンサートだったのだろうし、Juice=Juiceさんが至高の存在であるのはたまに見える彼女たちの表情から見て取れた。しかし、今回は環境が悪すぎた。こういう日もある。

そう言えば金澤さんは肩を傷めて最近の公演を休んでいたが今日は(わずかに見えるお姿から判断するに)元気そうだったので安心した。だが終演後の高速握手会で一人目の金澤さんに「肩、治った?」と聞いたら「んー……なおっ…た…かな?」と迷いながら歯切れが悪かったので治っていなさそうだった。高木さん無言。植村さんに「写真集、買ったよ」と言ったら「あ! ありがとう」。宮崎さん、宮本さんは無言。もう少し各memberに言葉をかけるつもりだったが、思った以上に流れが速く、つべこべ言わずにさっさと次に行けやという係員たちによる無言の圧力に屈した。しかしJuice=Juiceさんは最後の握手会まで抜かりなく笑顔を見せてくれて、本当にprofessionalだ。

2015年10月31日土曜日

℃an't STOP! (2015-10-25)

orSlow(オアスロウ)のdenim jacketを買った。それからというもの街でdenim jacketを着ている人ばかりを目にするようになった。こんなにdenim jacketを着ている人たちが世の中にいるのか、と驚くほどに。カラーバス効果。7-8年前に読んだ『考具』というビジネス書にはそう書いてあったと記憶している。ある色(であったり車であったりブランドであったり)を意識することで、生活している中でその色(であったり車であったりブランドであったり)ばかりが目に付くようになるということだ。私は今まで街行く人々がどういうdenim jacketを身に付けているかなどほとんど気にしていなかった。自分がdenim jacketに興味を持ち、実際に手に入れ、脳内の一定割合をdenim jacketが占めている今では、すれ違う人々が着るdenim jacketの色の落ち具合や安物加減、他の服との合わせ方等々、細かいところが気になるようになったのである。

一週間前のコンサートで初めて導入した双眼鏡に関しても同じことが言える。それまでは周りの客がどれだけ双眼鏡を使っているかなど意識になかった。自分が双眼鏡を使い始めてその有効性に気付いてからは、あそこにいる人も双眼鏡を使っているな、と視界に入る双眼鏡使いをいちいち自然と把握するようになったのだ。把握しようと意識しているのではなく、嫌でも自ずと意識に入るようになった。何を認識し何を捨て去るのか、頭が勝手に選んでいるのだ。同じ一人の人間でも、そのときの知識や意識の状態によって目に入ってくる情報は変わる。ましてや百人や千人単位となると、同じ場所で同じコンサートを観ていたとしてもそれぞれの客に見える景色は異なっている訳だし、そこから何を感じ何を考えるかも人によって違うのが当然だ。自分の記事を読み返すと、誰がこういうことを言ったという記述が多いが、おそらく私は誰が何を言ったか、誰が何を考えているのかに興味があるのだろう。だからその人の考え方が伺いしれる発言は頭に残るし、記録したくなるのだろう。

先週に引き続き、℃-uteさんのコンサートを観る。川口総合文化センターリリア、メインホール。川口駅のすぐ目の前にあるので便利だ。今日は昼公演と夜公演の両方だ。

昼公演。15時開演。1F28列39番。一番後ろから2番目だが、双眼鏡のおかげで℃-uteさんがくっきりはっきり大きく見えた。

℃-uteコンサートツアー℃an't STOP!、始まりです(もしくは始まります?)と序盤にバシッと決めようとした中島が「始まりだす」と言い間違えて空気が緩む。噛みキャラかい!と自分に突っ込みを入れる中島。
岡井も噛む。「今日℃-uteみんな噛みまくっている。地元だからふわふわしているのかな?」
「気を抜いちゃダメ」と岡井を諫める萩原。
中島「℃-uteは5人中4人が埼玉出身で、愛理はお母さんが埼玉だからハーフなんです」
鈴木「(おどけて変な動きをしながら)ハーフです」

メキシコ出張の話。同部屋だったという中島と鈴木が二人で話し始めて、その間に他のメンバーは着替え。
中島「メキシコに滞在中、愛理の眠気が増していた」
鈴木「着いた日、19時半くらいに寝たもんね」
中島「寝相がやばい。ベッドの隅っこでこんな感じで(座って片脚を伸ばし片脚を折り曲げて片方の肘を折り曲げた方の膝に乗せて手で頭を支える)寝ていたり、こんな感じで膝を抱えたまま寝ていたり」
最初に着替えを済ませて話に合流した萩原。「早いね」とびっくりする中島に答える途中、間違って「ぜんぶ脱いだ」と言ってしまい会場は大いに沸き、メンバーもそれに乗って「さすがだね、私はぜんぶ脱いではいなかったわー」等といじる。萩原、隣にいた鈴木を叩く。
鈴木の寝相の悪さについては「お見せ出来るレベルではない」とニコニコ顔で太鼓判を押す矢島。
メキシコに着いたら矢島以外の全員が体調を崩していた。着いた当日みんなで夕飯を食べる予定だったが、様子を見て無理しなくていい、自由でいいよと言ってくれた。矢島のみが食べに行った。
萩原と岡井(この二人が同部屋)、部屋に入るや否やそのまま投げ捨てるようにカバンを置き、ベッドに倒れ込み、寝た。その様子を再現。

長旅で体調を崩したという彼女たちの話を聞き、私は安心した。あれだけ体力があって若さと元気の塊である℃-uteさんでも海外出張で調子が悪くなるのであれば、私が海外出張で長時間の移動に疲れて時差ボケに苦しむのは無理もないことである。私の勤める会社のあるじっちゃん部長がアメリカに2週間行ったら帰国後に体調を崩して、今日は自宅での勤務とさせてくれと言っていたことがあったのだが実際には寝ていたようだ。電話会議で声を聞く限りではあからさまに不機嫌そうで発言も支離滅裂になってボケ老人のようになっていた。海外出張は負担がかかるというのを理解した上で、自分の体力と年齢をわきまえて、しっかりと休養を取らないといけない。

とはいえ、℃-uteとボケ老人を一緒くたにするのは無理がある。萩原と岡井がベッドに倒れ込んだのは19時頃だったが、24時くらいに起きてそこから活動が始まったらしい。
萩原「なっきぃに電話をかけてエクステを取ってもらった」
中島「そう!(迷惑そうに)夜中に何させんだよって」
萩原「ノリノリだったじゃん」
中島「すみません話を盛りました」
同時にバタンキューした岡井と萩原だったが、起きたタイミングも同じだったらしい。
岡井「起きて横を見ると舞ちゃんがこっちを見て目を合わせてニヤッと笑ってきた」
なお、コンサートでは矢島以外の体調が回復し、矢島の体調が思わしくなかったとのことだ。
言及がなかったが矢島は一人部屋?

『Danceでバコーン!』のintroで中島が「みんなー、ダンスで、バ…?」とアドリブの煽りを挟んで、ファンが咄嗟に「コーン!」と返せるか試して楽しんでいた。

アンコール明け。

中島「渋谷の街をうろちょろしても誰にも気付かれないのに、こうやってステージに立つと私を応援してくれる人がいるのは不思議。普通の女の子だと思うけど、応援してくれる人がいるのであれば頑張っていきたい」

岡井「(本来のメンバーカラーとは違う色の衣装を全員が着る場面で、自身がピンクを着ていることについて)ピンク似合わないねって色んな人に言われている。誰とは言いませんが愛理のファンが私を見て『あ、ちげ、ちげえ』ってすぐに愛理の方を向き直していた。一瞬くらい見てくれてもいいじゃん! このツアーで愛理のファンを一人は私のファンにしたいな、と思います(笑う鈴木)」

矢島「普段は働いていたり学校に行っていたりすると思うんですけど、私たちのために働いてくれてるんだな、と思うと…」とまで言って、あれ何か私おかしなことを言っているなという感じで苦笑する。何を言っているんだという感じで他メンバーが突っ込みを入れる。「そういうこと言っちゃダメだよ」と矢島を注意する萩原。客席もざわつき始めるが数秒後には「そうだよ、℃-uteのために働いているんだ!」という空気に変わり歓声が上がる。

どうやらこの昼公演に萩原の親が来ているらしい。「親が来ると緊張する」と言い、なっきぃはどう?と中島に振る。最初は緊張するが途中から気にならなくなるというようなことを中島は言っていた(たしか)。

鈴木「目を合わせようとすると目を逸らしてくるファンの方がいる。油断させておいてから不意に見ると、また目を逸らして見ていないふりをしてくる。くそー!と思う。出来るだけ多くの方と目を合わせるようにしたい」

先週の座間公演では矢島さんと萩原さんのおへそしか見えなかったが、注意して観察したところ今日は鈴木さんと中島さんのおへそも途中から辛うじて姿を現すときがあった。

このツアーは初めから最後まで立ちっぱなし。以前のツアーだとゆっくりした曲や喋りのセグメントではここは皆さんも座ってくださいと℃-uteさんが促してくることもあった。今回はそれがない。じっくり聴くのではなくガンガン乗っていく曲ばかりだ。悪く言えば一本調子。ずっと80点くらいの盛り上がりで、100点にはならない。昼公演の帰りに4人組くらいの若いナオン集団の一人が「可愛い曲があって盛り上がる曲があるから盛り上がるのであって、盛り上がる曲だけを集めるのは何か違う」という説を展開していて、「分かる」と内心うなづいた。このセットリストには勢いはあるけどメリハリ、落差、緩急が不足している。盛り上がる曲が最高潮に盛り上がるにはそこまでの流れが必要なんだ。座間公演のときから何となくそう思っていたがたまたま聞こえてきた(これもカラーバス効果?)ナオンの発言で強化された。

夜公演。18時半開演。1F17列37番。昼よりはだいぶマシな席だった。双眼鏡に映る℃-uteさんは昼公演のときよりも大きかった。とは言ってもずっと双眼鏡で観察を続けるという無粋なことはしない。ちゃんと声を出して身体を動かした。右の紳士(岡井オタ)がガンガン声を出す人だったのでそれに釣られて私も力が入った。身体が熱くなった。

夜公演の前に萩原が残る4人の顔にラメを付けてくれたからみんなキラキラだという。
岡井「きょう花粉症きつくないですか?」
微妙な反応の会場に「あれ? 何か平気そう」と矢島。
これが萩原にとっての10代最後のツアー。
岡井「10代と20代ではだいぶ気持ちも違うと思う」
「早くこっちへおいで」と手招きする鈴木、岡井、中島。萩原を挟んで逆側にいたので少し遅れて入って「こっちへおいで」をやる矢島に、舞美ちゃんは20代になってからだいぶ経つというようなことを言って中島に遮られていた(ような気がした)。

岡井と萩原の二人が、仕事で集合場所を間違えたときのことを喋った。
岡井「集合場所が多摩川駅だと思って、駅に着いた。『(待ち合わせ場所の)東口がない。出口は一つだけ』とマネージャーにLINEで連絡したところ『そんなはずはないんだけどな…』という返事が来てからしばらくして『あ、もしかして岡井、多摩川にいる?』と聞いてきた。はい。多摩川ですと答えたら、集合場所は京王多摩川駅という、多摩川駅とはまったく別の駅であることを知らされた。私と同じ間違いをしている子はいないかな…と考えたところ、こんな間違いをするとしたら私以外では舞ちゃんくらいしかいないと思って、『舞ちゃん今どこ?』と連絡したら『あと一駅で多摩川』と返事が来たので『じゃあ一緒に京王多摩川に行こうね』と送ったら『え、どういうこと?』と舞ちゃんから電話がかかってきた」
萩原「多摩川から京王多摩川が遠くて、45分くらいかかった」
岡井「なっきぃ、よく行けたね?」
中島「私、バカから脱したから」
岡井「5×6=?」
中島「36。(客が笑っているのを見て)あ、いや、5の段だから5か0なんだよね。1の位が。だから…」
鈴木「7×7=?」(Twitterを見ていると7x4=?に聞こえた人もいるようだ)
中島「42」
矢島「じゃあ6÷2=?」
中島、答えられない。(Twitterを見ていると問いが6÷3=?で答えが3だったという情報もあった。そっちが正しいのかもしれない。)
鈴木「なっきぃは九九の問題に36と42しか答えない」
中島「でも世の中には電卓というものがあるからね」

九九の文化がないアメリカでは数学者でも九九が出来ないことがあると何かで読んだ記憶があるので、なっきぃの言うこともあながち的外れではないかもしれない。

『Danceでバコーン!』の前奏で中島が我々に与えてきたチャレンジは、「チーム℃-uteのみんなー、はーじける?」と言って「ぞい!」と言わせるという、即座に対応するには難易度の高い振りであった。

アンコール明け。

岡井「今日、家を出る前にパパが『千聖、今日のライブに来てくれる人に感謝しろよ』と言ってきた。『感謝してるよ。何で?』と聞いたら『今日は菊花賞なんだよ。菊花賞に人が集まる中で℃-uteのコンサートを選んでくれる人には感謝しないといけない』とのことだった」
菊花賞の単語に大いに沸く会場、ポカンとする岡井以外の℃-uteメンバーズ。誰かが教えて「あ、競馬!」と理解していたが「伝わりづらいよ」と萩原が岡井に文句。「(客席を指し示し)伝わってるじゃん。(菊花賞を)知らない方がやばいよ。うちらより全然CM多いよ」と岡井。納得しきっていない表情の萩原。

ダンバコ(『Danceでバコーン!』)で自らが振った「はじけるー?」からの「ぞい!」が返ってくる率の高さに中島が感心していたが、曲が始まった時点から我々はオイ!オイ!と声を出していたので、中島が「ぞい!」だと思ったうちの一定の割合は実はオイ!なんじゃないだろうか?

萩原が、「○○のファンの人ー?」と一通り自分以外のメンバーのファンに声を出させて、最後に「舞のファンの人ー?」と聞いて客席全体が黄色い棒を光らせて大歓声を上げて沸き上がるという、たまにやってめちゃくちゃ盛り上がるやつをやって、案の定めちゃくちゃ盛り上がった。前の列にいた男性二人組はこの一連のお約束を知らなかったらしく何これ面白いという感じで笑っていた。
萩原「名古屋公演に来る人、どれくらいいますか?」ちらほらと手が挙がる。こんなにいるのかと私は驚いたのだが、℃-uteさんはむしろ少なさに驚いていた。
「名古屋に観に来てくれるのって、いま手を挙げてくれた人たちだけじゃないよね? もしそうだとするとこれから言うことがスゴく言いづらいんだけど…」と前置いてから「次の名古屋のライブはハロウィンなので、私たちも少し仮装するから、皆さんもやってください」と客席に呼びかける萩原。一部でエーイングがあったようで他のメンバーがそれに触れると「えーって言った人はやらなくていい! 嫌ならやらなくていいんだから! …嘘です、お願い、やって! ここにいる人で名古屋に来る人は少ないけど、今はインターネットがあって、色んなことを広められるじゃないですか。無駄なことも広めるじゃん? だからこのお願いを広めてください」

昼公演後には今回のセットリストにやや否定的な評価を下していたが、夜公演の途中からちょっと考えが変わってきた。たしかに現時点では一本調子さが目立つが、℃-uteさんと客の双方が適応と改善を重ねて行けば、11月21日のパシフィコ横浜や、千秋楽(11月28日)の中野サンプラザでは今日よりも素晴らしいコンサートになっている可能性が十分にあるのではないかと思えてきた。たぶん昼公演後に苦言を呈していたナオンも千秋楽に近い公演に入り直すことが出来れば、そのときにはまた違った感想を抱くと思う。℃-uteさんたちはそれくらいの変貌は見せてくれる。まだツアーの序盤に過ぎないのだ。

2015年10月24日土曜日

℃an't STOP! (2015-10-18)

世の中には二種類のコンビニがある。濃密ギリシャヨーグルトを置いているコンビニと、置いていないコンビニだ。残念なことに、私の近所のセブンイレブンは後者に当てはまる。それに限らず品揃えが私の感性に響かない。何か飲み物が欲しいなとか、何か軽いデザート的な物が欲しいなとか、そういうぼんやりした思いで店に入っても、ピンと来るものがなくて何も買わずに出て来ることがよくある。最近になって扱い始めた横浜乳業「これでフルーツ10種類ヨーグルト フルーツミックス」は悪くない。210gの大容量で、果物がどっさり入っている。横浜乳業をウェブで検索したら森永のグループ会社で、濃密ギリシャヨーグルトの製造元でもあるようだ。濃密ギリシャヨーグルト(略して濃ギリ)とおにぎりを買うと「濃ギリ」と「おにぎり」で韻を踏んだ朝食を摂れるのだが、それが叶わないため「これでフルーツ10種類ヨーグルト フルーツミックス」とサンドウィッチという語呂の悪い組み合わせの商品を購入し、家で摂取した。

家を出るときにスーファミ版の『スーパーマリオワールド』のハナちゃんのような虫がコンクリートを這っていた。1-2分ほど観察した。そのままの軌道で進み続ければ私が住む部屋のベランダに到達してきそうだったので心配だったが、仮にここで殺した場合とてもgrotesqueなことになりそうなのでやめておいた。部屋に戻ってから洗濯物は中に入れておいた。Grotesqueと言えばけいさんという実況主によるホラーゲーム“OUTLAST”のYouTube動画に最近どはまりした。20分前後の動画が20本以上あるのだが全部観たし二周目も観ている。『やべっちFC』等を消化しながら、洗濯と掃除を済ませた。週末のこの時間が大好きだ。落ち着く。無になれる。11時過ぎにジムに行って時速8.5kmで30分走った。焼き肉屋でハラミ定食(肉150g)と梅酒サワーをいただいた。1,598円。酒を飲んだのは夜の℃-uteコンサートの準備として気持ちを高めておきたかったからだ。もう一度家に戻ってから15時に座間に向けて出発した。つまり朝食を買うため、ジムで走って昼食を食べるため、℃-uteさんを観に行くため、と家を3回出た。

相武台前駅に17時ちょい前に着いた。17時開場、18時開演。昨日と今日の昼夜計4公演に申し込んで今日の夜公演のみが当選した。今日が日曜日でなければ、そして家からもっと近い会場であれば、終演後に飯を食ってもよかった。20時に終演するとしてそこから飯を食って移動するとなると明日早起きするのがきつくなる。だから入場前にささっと食っちまおう。吉野家も魅力的だったが、面白そうなハンバーガー屋があったのでそこにした。ダブルハンバーガー500円とバドワイザー480円。店の内装が醸し出すアメリカンな雰囲気に反してハンバーガーは思ったより小さかったが500円だからこんなもんか。味は可もなく不可もなく。店主が一人で切り盛りしていた。愛想がなく不機嫌そうだった。正直なところ、何かおっかない人だな…という否定的な印象を抱いていた。店を出た後、私が椅子に置き忘れたペットボトルをわざわざ外まで持って来て渡してくれる親切さを見せてくれた。一時の印象で人を判断するもんじゃないなと反省した。

17時35分にハーモニーホール座間に着いた。ちょうどいい時間だ。グッズは今日は買わないつもりだったがいっさい並んでいなかったのでDVD MAGAZINE VOL. 57(2,600円)を買った。私の席は1FのO列5番。真ん中よりやや後ろ。良くもなく悪くもない。大体この辺の席がよく当たる。もっといい席の割り当てを望むのならファンクラブのエグゼ会員とやらにならないといけないのだろうか。前の列には鈴木と矢島のTシャツを着たナオン二人組。左には萩原Tシャツ、右には矢島Tシャツをお召しになった紳士。

萩原「℃-uteの中で誰の楽屋が一番汚いかというのを決めるためにブログに写真を載せてファンの皆さんに決めてもらうというのを以前にやった。舞の画像に対して『アイドルなんだからきれいにしないといけないよ』とcommentで叱ってくる人がいた。それは違うと思った。アイドルだからきれいにしないといけないなんて、そんなルールはないし。℃-uteのファンは8割から9割が優しくて、残りの1割が厳しいことを言ってくると思うんです。舞のことを好きな人は優しくしてくれる。舞以外を好きな人は舞にもっと優しくして欲しい」

楽屋の話は聞き覚えがあった。記憶が正しければ、私が初めて観に行った℃-uteのコンサートツアー『美しくってごめんね』の中野サンプラザ昼公演(2012年5月4日)で、誰の楽屋が一番汚いかをファンの歓声の大きさで決めるというのをやっていたのだ。萩原さんが自分のファンの相対的な少なさをネタにしていた頃なのでファンに対して「ちょっと待って、(誰に歓声を上げるかに)推しとか関係ないからね?」と言って笑いを誘ったのを覚えている。もしそのときの話だとすると、なぜ今になって蒸し返す? 最近も同じ事をまたやったのだろうか? 私はアイドルオタクではないため彼女らのブログをたまにしか見ておらず、その辺の事情に疎い。

話の終盤にステージに戻ってきた中島に萩原が「アイドルだから部屋をきれいにしないといけないとか言われたら嫌だよね?」と振ると中島は強く同調した。「そういうこと言われるとストレス溜まる」と言ってから、はっきり言い過ぎたかな、という感じで苦笑いしていた。千聖がきれい好きなんだよと他メンバーに振られた岡井は「私、意外ときれい好きなんですよ」と自慢げに言った。
鈴木「楽屋で舞ちゃんの物を片付けるのが千聖」
岡井「千聖の領域までせんりゃくしてくるから…こう寄せて寄せて(客席から突っ込みが入る)」
中島「占領?」
岡井「侵略だ!」
「千聖はお掃除おばさんみたい」という中島に、ちょい待て、おばさんはないやろ的ないい反応を見せた岡井。以前はそうでもなかったが、今では廊下の細かい溝を爪楊枝できれいにするほどの掃除好きになった。掃除に一度はまると気になるようになったという。

初めてコンサートで双眼鏡を使った。前から興味はあったのだが、以前2ちゃんねるのハロプロ関連の板でお勧め双眼鏡のスレを見た際、2万円は出さないとまともな双眼鏡は買えないと書いてあって尻込みしていた。一度、家電店でいくつか見てみたことがあったのだが、眼鏡をかけた状態だと見づらそうだった。しばらく双眼鏡のことは頭になかった。数日前にある友人のTwitter accountのふぁぼ欄を見ていたところ、プラネタリウム関連のお仕事をされている方(ご本人のホームページにあるbioを見ても一言で何という職業なのか分からなかった)が、夜空の星を見るのにお勧めの双眼鏡をいくつか紹介している投稿を見つけた。1万円以下の商品も二つあった。その一つである「Vixenアトレックライト BR 6 X 30 WP」9,499円が、Amazonのcustomer's reviewで評判が高く、眼鏡をかけている人でも使いやすいという言及もあったったので、買うことにした。

軍事における革命(RMA=revolution in military affairs)ならぬアイドル鑑賞における革命(RIV=revolution in idol viewing)であった。メンバー同士が曲中にすれ違ったときに目配せをして笑うときの表情など、普通だと見逃してしまう、もしくは気付くことの出来ない細部を極めて鮮明な画質で目にすることが出来た。いわゆる良席に行かないと味わうことが許されない細部を、凡席から観察することが出来た。ファンクラブ限定で販売したりしなかったりのソロアングルDVDに足りないものがそこにはあった。過去に何回かハロコンや娘。のコンサートであった映画館でのライブヴューイングよりもずっとよかった。何せ、双眼鏡から見る映像はDVDよりもずっと高画質で、ライブヴューイングと違って自分が見たい場所を選べるのだ。評判通り眼鏡をかけていても煩わしさを感じずに使えた。あまり声を出したり手を動かしたりする必要がないときにはなるべく双眼鏡を使って℃-uteさんを見ていた。左の萩原ファンも双眼鏡使いだったのでやり易かった。複数人が一箇所に固まったときに双眼鏡越しに一望できる情報の密度と景色の美しさには感激した。お腹を出す衣装のときには矢島さんと萩原さんのへそが見えた。他の3人はパンツがへその上まであった。矢島さんに関してはもちろん腹筋も見えた。萩原さんは相変わらず細くて軟体動物のような胴体だ。(つんくがプロデューサーの座を退いてからハロプロ全体としてへそ出し衣装が減ったような気がする。悪しき風潮だ。)自分が払った定価(ファンクラブ価格)に1万円上乗せした金額で手に入れられる(娯楽道などで)席にいたくらいの景色を見ることが出来たので、今日の公演だけで9,499円の元が取れたと言っても過言ではない。いい道具を手に入れた。今後もよっぽどの前方席が当たるかライブハウス(和製英語)での公演ではない限り必ず持って来よう。夜の星を見るためにお勧めされていた双眼鏡だったが、確かに私は夜(公演)の星(℃-ute)を見ていた。

常に終盤戦のような勢いのあるセットリストだった。この公演は二日連続の計4公演の最後だったので、℃-uteさんはきつかっただろう。なっきぃはアンコール明けにはだいぶへばっていた様子で、喋っている最終、放心したように一瞬の間があった。リハーサルではこのセグメントでは腰に手を当てないとまともに立てないくらいに疲れていたが、今日はファンの皆さんがいてくれたのでアドレナリンが出たから乗り切れたと言っていた。私の体力的には意外と大丈夫だった。あと3-4曲来ても平気だった。よくも悪くもいつもの℃-uteだった。常に90点くらいの安定感がある。下方にも上方にも振り切れることはない。アイドルとしてそういうphaseだ。

岡井「さっき踊りながら考えていた。10年前にオーディションを受けていなかったら今ここにいない。℃-uteになっていなかったし、ファンの皆さんとも出会っていなかった。すべてが奇跡。モーニング娘。の妹分オーディションが開催されたのも奇跡。もっと色んな人に知ってもらえるように頑張りたい」

矢島「(汗をかいて)お風呂上がりみたいになってますけど(客『フー』)。私がお風呂上がりと言っても色気がありませんけど(客『フー』)」

『嵐を起こすんだ Exciting Fight!』ではビデオクリップと衣装が少し違った。例えば矢島さんはクリップでは長いパンツをお召しになっていたが今日は短パンだった。岡井さんは今日はクリップで鈴木さんがお召しになっていたのに近い衣装だった。

2年振りにアルバムが出るとの発表。喜ばしい。そのアルバムから職安のような名前の紳士が提供した曲が披露された。既視感のある前向きな歌詞だった。実のところ氏が関わった曲は『我武者LIFE』の時点から私にはそれほどはまっていない。「良い曲」なのはよく分かるし、実際にコンサートで歌われたら斜に構えずにちゃんと声を出してタオルを回す。だが、私は普通の「良い曲」にはあまり興味がない。感動させようという意図や、売れたらいいなという下心が見え見えで、興ざめしてしまう。中島卓偉やCMJKが関わっている路線の方が好きだ。とは言っても、ハロプロに複数グループがある中でそれぞれが同じ事をやっても意味がない。湘南乃風経由で℃-uteを好きな人が少しでも増えるならこの方向も歓迎する。販促の作戦としてであって、音楽として、ではない。

2015年10月11日日曜日

Special Code (2015-10-10)

今日から三連休だが気分は晴れない。今週は平日の後味が悪かった。色んな事が重なって部署にかかる負荷が重く、所属員たちのストレス、疲労、不満が募っている。一人は休日出勤をしている。彼は残業と休日出勤が増えて、情緒不安定になっている。壁にぶち当たっている。彼のことを思うと無邪気に休みを満喫する気にもなれない。電話をかけて労いの言葉でもかけようかと思ったが、少し迷って、やめた。仕事で使っているbackpackには会社のiPhoneが入っている。嫌なメールが入っている可能性が高い。開くのはやめて、家を出た。

フリースタイルMCバトルで一世を風靡した元KICK THE CAN CREWのラッパーKREVAの地元、江戸川区。新小岩駅から15分ほど歩いたところにある江戸川区総合文化センター大ホールにJuice=Juiceさんのコンサートを観に行く。

11時から歯医者で検診を受けた。前回行ったのが1月っぽい。9ヶ月振りにも関わらず虫歯は一つも出来ていなかった。それまではいくら丁寧に磨いても虫歯がよく出来ていたのに、2012年に電動歯ブラシに切り替えてから一度も虫歯が出来ていない。(記憶にないだけで一度くらいは出来ているかもしれない。)池袋の楊で汁なし坦々麺と、カシスウーロンを頼んだ。憂鬱さを吹き飛ばす景気づけとしては酒の量が足りなかったが、何度食べても相変わらずパンチのある坦々麺の辛さに、カシスウーロンの甘さがよく合っていた。坦々麺はおまけで大盛りにしてくれた。行く途中の電車で気が付いたが今日は10月10日、つまりJuice=Juiceの日だ。こういう特別な意味のある日に現場に行けるのは喜ばしい。子供の頃に10月10日と言えばJOMO CUPの日だった。今ではサッカーの試合を観てもあの頃のように心が躍ることはない。今の私が心躍るのはハロプロとMCバトルだ。

13時開場、14時開演。13時過ぎに会場に着いた。公式homepageの地図が分かりやすかった。今日発売のDVD MAGAZINE VOL. 4(2600円)と、日替わり写真の宮崎さんと宮本さん(各500円)を買った。3,600円。13列の14番。通路を挟んで二列目だった。結構近かった。左の席に白髪の紳士が座っていた。席に着いて、MADE IN USAのMELOのbackpackからアルバムを取り出し、日替わり写真を折れ曲がらないよう慎重に収めた。左の席に目をやると老紳士はタブレットで2chを開いて「一人で行くJuice=Juiceライブツアー 『Juice=Juice LIVE MISSION 220』」というスレッドを見ていた。見てはいけないものを見たような気がした。開演した時点で私の右隣とその右も席が空いていた。今日の公演はチケットが売り切れて当日券も出ていない。数少ないホール公演なので夜公演も入りたかったが、娯楽道に出ているチケットは随分と高かったし、数日前に洗濯機が壊れて買い替えるという急な出費があったから購入は自重した。11月28日の℃-uteの追加公演に申し込むのも自重した。

「新宿スタイルはリアルな歌しか歌わねえ」(MSC, “新宿U.G.A Remix 03'”)

MC漢のスタイルは一貫している。彼はリアルにこだわる。それはラップの言葉通りに生きること。実生活でやっていることをラップすること。著書『ヒップホップ・ドリーム』で彼が挙げたフェイクの例としては、ビデオクリップで車を運転している場面があるのに実は免許を持っていない。銃社会ではない日本でCDのジャケットでモデルガンを構える。ビデオクリップで乗り回す高級車や着用するアクササリーが借り物。ただし無茶なことを言っても一週間以内に実行できればリアル。仲間がバトルで興奮して「今度お前を見かけたら刺すからな!」と口走ってしまった落とし前を付けるために実際に集団で相手を襲撃して刺した。『ヒップホップ・ドリーム』は一読をお勧めする。最近始まったTV番組『フリースタイルダンジョン』でも自身のラップ・スタイルについて「ファンタジーはない」「現実主義」と言っていた。尚、英語のfantasyは最後のsが濁らないのでカタカナにするならファンタスィーの方が近い(これは高校時代の英語教師も知らず、授業中に指摘したら教室がざわついた)のだが、便宜上ファンタジーと表記する。

私にとってハロプロの世界はまったく逆だ。新垣里沙はディズニーランドに通い「自分の仕事はこういうことなんだ」と気付いたとかつて言っていた(多分何かのラジオ番組だったかな)。ステージと客席という非日常の空間で、現実離れした輝きを放つ演者たちが、普段の生活では想像できないくらいの楽しさを味わわせてくれる。最近では個別握手会が高頻度で開催されている。ハロプロの所属員たちと直に言葉を交わすことや、自分のことを認知してもらうことに至上の喜びを覚える人も大勢いる。そういった喜びも理解はする。だが私にとってハロプロの人員はファンタジーの世界の住人であり、同じ人間として言葉を交わすのは恐れ多い。私にとっての現場とは誰かに会いに行くというよりは映画を観に行く感覚に近い。

今日のSpecial Juiceは、今までに観てきたJuice=Juiceのコンサートの中で最も強くファンタジーを感じられた。前日のブログで高木メンバーが予告していたように、ハロプロのコンサートで見ないような演出がふんだんに盛り込まれていた。導入部では「武道館に潜入せよ」というこのコンサートツアーのコンセプトであるmissionの出し手からのmessageが映し出された。Code 1の諸公演を駆け抜けたメンバーたちを労い、ご褒美に休暇を与えるという趣旨だった。それが今日のSpecial Code公演の設定らしい。仕事のご褒美に仕事とは、会社員から見ると冗談がきつい、それはともかく、のっけから豪華できらびやかな演出に驚いたし、すぐにコンサートの世界に入り込むことが出来た。音量さえまともに管理できない周南チキータのような会場とは隔世の感があった。

疾走感が強かった。一度走り始めたら最後まで立ち止まらない。一度作った流れを止めない。そういうコンサートだった。通常だと曲と曲の間に行う各メンバーの挨拶も今日は曲の間奏で簡潔に済ませていた。流れ(フロー)のよいコンサートだった。

『相合傘』は一人一人が傘を持って歌っていた。全員が自分の傘を持っていたら相合傘ではないよね、と思いながら見ていた。この曲の前には一度ステージが動いて彼女たちが下に降りて、また上がってくるという演出があった。別の曲では窓越しに彼女たちが踊っている影が見える場面もあった。中野サンプラザで観たときよりもずっと工夫が凝らされていて、面白かった。「お金かかってるな」という下衆な感想が頭に浮かんだが、具体的にどれくらいのお金がかかって、それが相場に比べて高いのかどうかが分からないトーシローがそんなことを考えても意味がない。我ながらしょうもないことを考えてしまった。

喋りのセグメントは、主にドラマ『武道館』の主演が決まったこと、台湾と香港でコンサートをやってきたことの報告だった。ドラマ内の架空アイドルのプロデューサーをつんく氏が勤めると知って、全員でキャーと喜んだ。この決定を受けて宮本佳林は『だから、生きる。』の感想を添えてつんく氏に連絡をした。普段やり取りをしていないので勇気が要った。「音楽は毎日触れていないと、生き物だからなついてくれないよ」という返事をもらった。海外に行ったときのエピソードとしては、宮崎由加曰く空港に着いた瞬間から歓声が凄く、大スターになったと勘違いするほどだった。入国審査時、“Hello? Hello?”と係員に声をかけられ、“Hello…”と言って通り抜けようとしたら(この“Hello…”と言うときのちょっと怯えた表情や声の可愛さとったらなかった)呼び止められ、耳の中に体温計を入れて体温を測られた。36.9℃だった。宮崎としては普段通りの体温。普段から平熱が高い。空港のサーモグラフィで明らかに色が浮いていたらしい。宮本は入国審査でカメラを見るときに間違った場所をずっと見ていて、そこじゃないと指摘された。アイドルだねと茶化す高木。

金澤朋子は喋りのセグメントはほとんど不在で、最後の「海外は楽しかったね」というメンバーのまとめに「楽しかったね」と駆け込みで合流するのみだった。どうも様子がおかしかった。以前から故障している右腕は上がっていたが腕の付け根に肌色のテープが巻いてあるのが場内モニターで分かったが、どうもそれだけではなさそうだった。踊りのステップや動きはすべて小さくなっていて、どこかを故障しているのは明らかだった。後にTwitterやJuice=Juiceのブログで知ったが、足を怪我していたらしい。ただ他のメンバーが金澤が動けない分を十二分に補っていた。特に宮本が相変わらず100%を超えるハツラツさを見せていた。『五月雨美女がさ乱れる』での腰の落とし方が一人だけ違う。慣れて来たことで流している感がまったくない。公演の度に、あたかもこれが最初であり、最後でもあるような新鮮さと気持ちのこもったperformanceを見せてくれる。

メンバーが舞台全体に広がったときに、一番下手がちょうど私がいた14番(左から14番目の席)と対面する位置だった。そこに宮崎由加さんが来ることが何度もあった。対面とは言っても13列分は離れている訳だが、それでも所謂ゼロずれを体感できたのは嬉しかった。Buono!の『恋愛サイダー』という意外な曲が披露された。最初の「ワン・ツー・スリー・フォー!」をちゃんと言えている客が多くて、訓練された奴らばかりだなと感心した(私もBuono!のツアー『R・E・A・L』で習得済みだったので言えた)。宮崎さんが「当たり前すぎるくらい友達の時間が長かったせいで」「時々甘えてみたり拗ねてみたりそんな作戦らしくない」といういい箇所の歌割を獲得していた。堂々たる歌いっぷりであった。ここぞとばかりにゆかにゃ!と私は叫んだ。

“Wonderful World”ではモニターに歌詞が映し出された。これは他の曲ではなかった。ということは、歌全体を一緒に歌って欲しいという意図だと思う。でも最後のラーララーは別にして、歌っている人はほとんどいなかった。私が思うに理由は二つある。第一に、来場者は歌うよりはメンバーの名前を叫びたい。第二に、大音量の音楽が流れる中、音程を取りながら歌うのは普通の人には難易度が高すぎる。

夜公演は入れなかったが、帰途の私は完全に満足していた。後味の悪い平日で頭を支配したnegativeな感情を、生きる喜びで上書きしてくれるコンチェルトであった。私にはリアルだけではなくファンタジーが必要なのだ。

2015年10月3日土曜日

428+448

夏と入れ替わるように花粉症がやってきた。さっきも駅まで歩いている途中くしゃみが5連発くらいで出てきた。クスリを飲む必要があったが、飲み物を持っていなかった。昨晩500mlのペットボトルにジャスミン茶を入れて冷蔵庫に入れるまではよかったが、今朝それをカバンに入れてくるのを忘れていたのだ。自販機の品揃えを一瞥し、110円の水を買おうかと思ったが、考えを変えて「加賀棒ほうじ茶」150円にした。石川県の金沢発祥ということで、同県出身の宮崎由加さんのルーツに触れてみたかったのだ。自分のしょうもない購買動機に呆れながらほうじ茶を取り出し、クスリを服用した。

天気予報には昼間は28℃まで上がると書いてあった。でも夏の不快さはもうない。涼しくはないが暑くもない。心地よい陽気だ。今日は午後から別の事業所で打ち合わせがあるので、昼から移動している。Juice=Juiceリーダーの出身県とゆかりのあるほうじ茶を飲みながら、駅のplatformに立ち、ぼんやりと周りの景色を見ていた。次の電車まであと15分以上ある。

今の自分は幸せである、という考えが頭に浮かんできた。それは今日たまたま天気がいいからそう思っているのではなく(まったく無関係ではないだろうが)、何となくだが最近は常に考えていることだ。仮に今仕事がなければ同じ考えを持てただろうか? 断言できないが、おそらく出来なかったであろう。仕事をしていなかった頃に、私は幸せであると感じることはなかった。任意の日付を二つ入力するとその間の日数を計算できるサイトによると、私が無職だった期間は428日だった。職に復帰してからは448日たっているが、428日の記憶が上塗りされて消えることはない。“あの期間”に味わってきた感情や考えは今の自分が物事を認識するときのと礎となっている。何かにつけて、もし私に職がなければこう思っただろうかと考えを巡らせることから逃れられない。

無職の頃と今の私の大きな違いは、社会の中で自分の居場所があるかないかである。会社に属し、役割を与えられている。解決すべき問題がある。頼まれていることがある。期限がある。同僚、上司、部下、他部署、取引先の人々とのやり取りがある。責任がある。仕事があれば、「私はこういう仕事をやっています」と言うだけで曲がりなりにも社会の中で一員として認められる。無職の男というのはバグやエラーのような存在であって、社会の正式な一員ではないのである。仕事を辞めたばかりの頃は「お仕事は何をされているんですか?」という以前は何でもなかった質問が刺すような鋭さを帯びてきた。テレビから無職という言葉を耳にするだけでドキッとした。外を歩いているだけで「こいつは何をやっているんだ」という無言の視線を感じるような気がして落ち着かなかった。それは職に就いていた頃の私が無職に向けていた視線なのである。当時の日記から引用する。
足腰の疲れが無視できなくなってきていたので(中略)60分のマッサージを受けた。どうやらこっちでは60分4,000円くらいが相場のようだが、それよりも何百円か安かった。スタッフは二人いてともに女性だった。
やってくれた人は長崎で生まれ育ったという。マッサージの序盤に「お仕事は何をされているんですか?」と聞かれ、ドキッとした。「会社をやめて、今は充電してるんですよ」と答えた。俺の無言の圧力を感じ取ったのか、それ以上は掘り下げてこなかった。(2013年6月7日、長崎旅行中の日記より)
テレビから何かの事件の報道が流れてきた。犯人は無職。犯人は無職。犯人は、無職! 自分が共犯者のような気がして、決まりが悪かった。次のニューズに移ってくれ、早く。なぜ赤の他人なのに、無職が何かをやらかしただけで自分が責められたような決まりの悪さを感じるのか。それは、俺がこれまでの人生で、心の奥底で無職を馬鹿にしてきたからだと思う。(2013年6月15日の日記より)
葬式が終わってから、火葬場に移って遺体を燃やすまでの待ち時間が最上級の拷問だった。よく知らないけど無視できない人たちと強制的に対面させられた状態で、時が早く過ぎるのをひたすら願っていた。アイス・カフェ・オレは飲み始めたらすぐになくなった。トイレに逃げると、一時的に解放感を味わうことができた。待合室の近くの小さな図書コーナー(といっても小さな本棚に本が数十冊程度)に行くと、火葬施設なのに何とか殺人事件という題名の小説が何冊も置いてあった。知らないおばさんから「お仕事は何をされているのですか?」というあの悪魔の質問が来た。「今はやっていないです」と平静を装って答えた。「勉強中なのよね」と、隣に座った叔母が助け舟を出してくれた。(2013年7月29日、祖母の葬式出席時の日記より)
仕事を再びやるようになって、正式な社会の一員に復帰した。しかもその負荷は自分の私生活を蝕むほどではなく、好ましいバランスを取っている。それが私の精神の安定に寄与しているのは間違いない。

無職の生活を通して気付いたことは、自分は社会に必要とされていない、そして自分がいなくても社会は何の問題もなく回っていくということだった。実のところ、その認識はいまでも大して変わっていない。再び有職者になったことで自分が社会に必要であるという実感が持てるようになった訳ではない。しかし上記の前提は、無職時代の私にとっては絶望を意味し、現在の私にとっては希望を意味している。自分が社会に必要とされていない、自分がいなくても世の中は回っていくというのは、無職の頃の私にとっては、自分がこの世にいる意味がないという意味であった。今の私はこう考えている。つまり、自分がいようがいまいが社会が回っていくのであれば、自分が絶対に達成しなくてはならない使命は、この世にない。自分はこうあるべきだとか、こうならなくてはいけない、といったものは存在しない。他人が決めた“成功”を追い求める必要はない。自分は自分でしかいられない。だから力まずに生きていけばいい。そう思えるようになってから、生きるのが一気に楽になったのである。

無職の頃はいつでもぼんやりとした将来への不安に苛まれていた。職に戻ってからはそれはほとんどなくなった。そういう話をある人としていたら、「(今は)将来が見えているからですかね」と相手は言った。それは正しいようで、実は正解ではない。なぜなら私に将来など見えていないからだ。幸いにも今の仕事は上手くいっているし会社では高く評価されているが、5年後にも同じ状況が続く保証はない。人生そのものの計画となるとまったくないに等しい。それでもなぜ将来への不安に襲われなくて済むのかというと、確固たる現在があって、日々の生活の中に楽しみを見出せているからだ。今振り返ると無職の頃には現在がうまく行っていなかったのでそこから目を逸らすために将来のことに思いを馳せていたのだ。

「子供の頃から将来のためにと言われて色んなことをやってきたけどさ、その将来っていつ来るのよ? 将来のために今を犠牲にしてその先に何があるんだ? 今を楽しむことを最優先にしてもいいと思うんだよね」
ある友人と5年前に飲んだとき、別れ際に彼が言った言葉である。やけに頭に残っているのだが、当時はピンと来ていなかった。今では彼の言っていたことが少し理解できてきた気がする。

2015年9月27日日曜日

MISSION 220 (2015-09-26)

いつもの池袋「楊」に入った。たまには汁なし担々麺以外のものを頼もうかなと思って迷っていると店の人が「担々麺でよろしいですか?」と聞いてきて「はい、お願いします」となった。何か今日のはいつにも増して辛かった。最後の方は苦しかったが何とか平らげた。成城石井でホップが通常のbeerの30倍入っているというScotlandのbeerとさきイカを買った。地下鉄で西新宿に行った。初めて降りる駅だ。駅を出た地上でさきイカをつまみにbeerを飲んだ。Beerはよく分からないがさきイカはうまい。駅に戻って、ジーンズのポケットに2,000円とチケットをねじ込んで、ピンクの宮崎Tシャツを手に持って、ロッカーにカバンを預けた。今日は土曜日にも関わらず稼働日なのだが、休暇を取っている。とは言ってもJuice=Juiceの新宿公演を観に行くという責務を果たすためであって、単なる休みではない。Juice=Juiceは今日と明日(9月27日)にそれぞれ2公演ずつ、新宿で公演を行う。全4公演を申し込んで唯一当選したのが今日の昼公演だった。

Beer一缶ではほとんど仕上がらなかった。ほぼ素面だ。先日DOTAMAのコンサートを観に行ったときはBeer 500mlに加えて入場してからジンライムを一杯飲んでいた。それくらい飲まないとアルコールの効果を明確に感じることが出来ない。まあ、でも飲まないよりはマシだろうと思う。コンサートという非日常空間に入り込んで楽しむには事前に酒を飲んでおくのが効果的だとDOTAMAのときに学んだ。この間も家で℃-uteのDVD MAGAZINE vol. 56を観ていて、こんな元気な子たちの要求するノリに付いていくにはアルコールの助けがないと無理だと確信した。

新宿Renyは入場時の「ドリンク代」として500円ではなく600円を徴収する強欲な運営の会場だった。14時開場、14時45分開演なのだが13時40分くらいから、1番から200番、200番以降、という番号のかたまり毎に場所を決められて立たされていた。開場時間よりも前から入場の準備が始まっているのはよくあることだ。下手をすると開場時間よりも前に入場が始まっていることすらある。そうなると自分が本来見られたはずの位置よりも悪い位置からコンサートを見なければならなくなるかもしれない。そんな注意事項はチケットにもホームページにも書いていない。自分で経験して学ぶストリートの掟だ。席が事前に決まっているコンサートであれば開演ギリギリに行っても間に合うことが多いが、整理番号順に客を入れる現場だと開場時間より前に近くで待機しておく必要がある。

私の整理番号は248番だった。ウェブには収容人数800人と書いてあった。今日入っていた客は見た感じ500人いるかいないかだったと思う。別にスカスカではなく、適正な混み具合だった。もしあの広さで800人を入れていたら満員電車のようになって最悪だっただろう。500人(推測)中の248番ということで、真ん中くらいの番号だった訳だが、その割には見やすかった。舞台の最前にお立ち台が5個設置してあった(今まで観に行ったJuice=Juiceの公演では2個だった)。つまりJuice=Juiceの全員が同時にお立ち台に立つことが出来るつくりになっていた。彼女たちは本当に出来た子たちで来場者たちのことをよく配慮して積極的にお立ち台に上がってくれる。そのおかげで、よく見えた。幸いなことに私の前にはジャンパーがいなかったので視界を妨害されるフラストレーションもなかった。

左斜め前の紳士がお召しになっているシャツの背中が部分的に白くなっていた。汗が乾いて塩になったやつだ。汗をかいたら必ず洗濯しろ。汗をかかなくても高頻度で洗え。汚れやシミには着る前に気付け。自分自身の身体と、身に付ける衣服や靴、カバンは清潔に保て。身だしなみを整えろ。

℃-uteの現場でよく見るヒョロ長い紳士がいた。Juice=Juiceでは金澤さんを応援しており、彼女が歌う度にバネが付いたように飛びまくっていた。氏の後ろになったら災難だ。今後彼を見かけたら彼の後ろは避けるように気を付ける。

私はJuice=Juiceでは宮崎由加さんを一番に推しているが、今日に限っては宮本佳林さんに釘付けになった。宮本さんは元気と意欲がみなぎりまくっていて、見ているだけで自然と笑顔になれた。私があれだけの元気と意欲を出すのはクスリなしでは無理だ。いつもと違う髪型にしていて、やたらと可愛らしかった。注目しないのが不可能だった。冒頭MCの「本日はお足元の悪い中、足を運んでいただきありがとうございます…。あ、雨が降ったのは昨日か。昨日と間違えちゃった」というのが最高だったし終盤MCの「今日から新しい髪型にしたんですけど、そのせいか汗がここら辺(頭頂部)から垂れてきて目に入って来て、涙みたいになるんです。『イジワルしないで抱きしめてよ』のとき、泣いてるみたいになっちゃって…強気な歌なのに」と言ってからの「このまま汗で髪がなくなるまで頑張ります!」という結びも最高という他なかった。こちらが呆れるほどに、心配するほどに精力的。岡崎慎司のようなプレースタイルだった。今日の宮本佳林にはガゼッタ・デロ・スポルト紙であれば8点(最高点)、ビルト紙であれば1点(最高点)を付けていたであろう。

一人しゃべりのセグメントは植村あかりが担当した。「昨日のブログを見てくださった人はどれくらいいますか?(7割くらいの客が手を挙げる)おー、たくさん! ありがとうございます! まあ見ていない人もいますが…。写真集の表紙をね、載せたんですよ。見た人は最低+一冊は買っていただきます。水着姿も撮影したんですけど、どうしても泳ぎたくて。自分から海に飛び込んだんです。時間をかけてメイクをしてもらったのに。メイクさんも『ほとんど取れちゃったね』と言っていました。撮影のほとんどの時間は泳いでいたというくらい泳ぎました。海底に、石とかあるじゃないですか。飛び込んだときに怪我をしちゃって。足を何箇所も。でも出来上がった写真を見たら痛そうな感じは出ていなかった」「一緒に写真を撮った犬。値段を聞いたんです。そうしたら14万円ということで、14万円はちょっと高いなーということで、諦めたんです。(客エーイング)えーじゃないよ! 14万は大金だよ!!」客のエーイングにムキになるところがとても面白かった。

14時45分ちょうどに開演、16時29分に終演。握手会までだいぶ待たされた。退屈だったので前方にいたキャスケットをかぶって革ジャンを着た紳士を見て、こいつのことをどうやってディスろうかなと考えを巡らせた結果「人工皮革/貧乏似合う」という韻を考案するなどして時間を潰した。高速握手会では、一つ前の公演から肩を傷めて右腕を上げられなくなった金澤さんに「肩をお大事にしてください」と伝えることが出来た。それ以外は誰とも会話が出来なかった。流れが速すぎたというよりは私の能力不足だ。私は音楽空間を楽しみたいのが第一でアイドルとの接触願望は非常に弱いのだが、もし何度も足を運ぶうちに顔を覚えられて「何かあいついつも来るけど無言で気持ち悪いな」と思われたら嫌だ。だから、高速握手での立ち回りをもっと上手く出来るようになりたい。最後の宮崎さんが宮崎Tシャツに気付いて「ああー!」と反応くれたが何も返せなかったのが悔しい。17時5分だった。開演前には「地方に行ったときの日替わり写真は旅の記念にもなるから買うけど東京公演のときはわざわざ買わなくていい」という考えだったのに、コンサート後には1,000円札を握りしめて列に並び、「宮崎さんと、宮本さんをください」と言っていた。ドリンク代が600円だったので手持ちが1,400円になっていた。もしドリンク代が500円で1,500円残っていれば、金澤さんの日替わり写真も買っていた。

本当なら他の回も観たかった。でも同時に、この一回だけで十分な満足感と幸福感を得ることが出来た。幸福感というのは大袈裟ではない。それくらい楽しむことが出来た。こんな気持ちにさせてくれるJuice=Juiceは最高である。

2015年9月22日火曜日

ヨウジの服を売り払った。

かつては、週末にヨウジ・ヤマモト(以下ヨウジ)の服を身にまとうのが私にとっての至福だった。ヨウジの服を買うために働いていると言っても過言ではなかった。そうではないと説明が付かない出費だった。投資ではなく浪費であり、自分を幸せにしないことは分かっていた。ある時期からは使う金額をほどほどにしようと努力していたが、好きだという気持ちとの折り合いが付けられず、うまく行かなかった。毎シーズンずるずると店に通っていた。

2013年5月に無職になったのを境にヨウジをまったく着なくなった。収入がなくなったので新しく買い足せなくなっただけでなく、既に持っていたヨウジの服を着る意欲も失った。当時メールでやり取りをしていたヨウジのTさんには、事情があって少しの間お店に行けない、でもヨウジが好きであることに変わりはないという連絡をしていた。偽らざる本心だった。その少しの間は今でも続いていて、あれから一度もお店に足を運んでいない。実に2年半だ。2014年7月に再び職を得て、1年以上が経った。生活に余裕が出てきて、また服を見るのが楽しくなってきた。でもヨウジは見ていない。

私の部屋の2割以上をヨウジの服が占めていた。今ではほぼゼロになった。捨てたし、売ったからだ。8月のある日、ふと思い立った私は「ブランド 買い取り」で検索して上位に来たZOZOTOWNの買い取りサービスに申し込んだ。驚くほど簡単だった。段ボールの小か大、あとは袋の3種類から選ぶ。届いたら服を詰め、集荷を申し込む。ヤマトに渡す。こちらは伝票に記入する必要すらない。集荷の依頼もZOZOTOWNのページから数クリックで出来る。3日くらいすると査定額の連絡がメールで来る。取引を確定させ、銀行口座を登録し、身分証明書の画像をuploadすればお金が振り込まれる。査定額については、Yahoo!オークションに出して買い手が付けばもっといい金額で売れただろうが、問い合わせへの対応や発送を全部自分でやらなければならない。一点一点の服に対してそんなことをやるのは大変だし、出品したところでいつ売れるかは分からない。売れないかもしれない。そう考えると、まあ納得できる査定額であった。信頼できると踏んで2回目、3回目とZOZOTOWNに服や靴を売った。

1回目:リユースバッグ(57x37x27cm)
6点 28,510円

2回目:段ボール大(57x37x27cm)x2箱
16点 69,510円

3回目:段ボール大(57x37x27cm)x2箱
31点:60,620円

計53点 158,640円

売ったのはヨウジだけではないが、これでヨウジの服や靴は殆どすべて家からなくなった。スーツ2着はこれからも使えるので残した。捨てていた服も何着かあったのだが、それらもZOZOTOWNに売っていればあと数万円になっていたと思う。惜しかった。

レッグウォーマーがアームウォーマーとして査定されていて、ZOZOTOWNの古着市場でアームウォーマーとして販売されるのを想像するとちょっと面白かった。2007年秋冬のDr. Martensとヨウジのコラボ作ブーツ2足に10,000円ずつの値段が付いたのは大きかった。だって8年前のブーツで、買った値段はたしか35,000円だよ? 薄手のカーディガンでも厚手の凄く値の張ったセーターでも一括りにセーターとして同じ値段が付いていたのは少し不満。けっこう着古したコム・デ・ギャルソンのシャツに3,000円くらいの値段が付いていた。ヨウジとかコム・デ・ギャルソンは古着市場でも強い。

溺愛して止まなかった、自分の身体の一部とさえ思っていたヨウジの服は一部を除き私のものではなくなった。もう二度と見ることもなくなった。売ったことを後悔している服や靴は一点もない。むしろすがすがしい気持ちでいっぱいだ。スッキリした。私はもうヨウジを必要としていなかったのだ。ヨウジは私の心の中で何かの不足を満たす存在ではなくなっていたのだ。こう書くと何かの依存症や中毒から脱却したかのようだが、実際それに近いかもしれない。今後、前のようにヨウジにはまる気がしない。今の私は再び服を、ファッションを楽しみ始めているが、ヨウジを愛好していた頃とは方向性が前とは異なる。それはまた別の話。

2015年9月12日土曜日

ニューワンマン(2015-09-11)

突然すぎて最初は何が起きたのか分からなかった。想像を超える唐突さと激しさでゲリラ豪雨が襲来した。渋谷ハチ公前。18時15分過ぎ。幸いにもすぐ近くに東急百貨店の入り口があったのでそちらに避難した。友人Aが合流したときには10分もたっていなかったが、だいぶ小降りになっていた。彼が傘を持っていたので入れてもらった。会場に向かった。途中にあった「ラーメン王」という店に入った。飯を食うだけではなくコンサート前に一杯引っかけておきたかった。Aも同意見だった。私は肉味噌炒め定食670円。友人Aはレバニラ炒め定食670円。二人で500mlの瓶ビール500円を分けたが、足りなくてもう一本頼んだ。豪快な味付けで元気が出る飯だった。Aはレバニラに途中から七味唐辛子をかけて食うという悪趣味さを発揮していたが私が彼を火鍋に連れて行って以来彼はこういう病気になったのだ。辛い料理にはまると辛くない料理では満足できなくなるのだ。

店を出ると雨はほぼ止んでいた。500mlのビールが私を楽しい気分にさせていた。公演を観るのがどんどん楽しみになってきた。19時頃に渋谷O-NESTに着いた。友人Bと合流した。今日は開場19時、開演20時なのでもう入ることが可能だ。私が買った3枚のチケットに印字されている整理番号は4番から6番だ。仮にハロプロのコンサートでこんな整理番号を引き当てたら問答無用で一番前に行ってがっつくが、今日のコンサートはちょっと違う。DOTAMAというヒップホップMCのソロ公演だ。DOTAMAがソロのコンサートをやること自体が初めてだ。どういうノリで臨めばよいのかがつかめない。いきなり最前線に突っ込むのではなく少し引いた位置から様子を見たかった。だからあえて19時半まで待った。Aは会場横のコンビニでビールを一缶買った。3人で立ち話をしながら彼はそれを飲み干した。

DOTAMAのことはMCバトルで知った。CDはすべて買った。彼のアルバムはどれも個性的で、単なる曲の寄せ集めではなく一枚毎にコンセプトが練られている。特にハハノシキュウとQuviokalとの合作アルバム『13月』は他に類を見ない独創的なラップ・アルバムである。『ニューアルバム』という新しいアルバムの発売(8月12日)とそれを記念しての『ニューワンマン』というソロ公演の開催(9月11日)が、6月22日に発表された。その日のうちにアルバムを予約して友人AとBをコンサートに誘った。彼らは快諾してくれた。このコンサートに確実に参加するために友人Bは有休を取った。私は仕事の関係者に今日は17時に会社を出なくてはいけない旨を事前に伝えた上でその通りに実行した。

19時半過ぎに会場入りしたら拍子抜けするほどガラガラだった。最前に10人ほど張り付いているくらいで、後はポツポツ。DOTAMAはUMB2014でR-指定と当たったときにお前のライブは会場がガラガラだったというようなことを言って攻撃していたのだが、このままでは次にバトルでR-指定と当たったときにまったく同じことを言い返されてしまうのではないかと心配になった。会場は凄く快適で、円卓っていうのかな、ドイツのソーセージ屋台で立ち食いするときのあのテーブルみたいなのが二つ設置されていた。その片方に私たちは陣取った。ドリンクチケットと引き替えたジンライムで、私はいい感じに仕上がっていた。

15分遅れの20時15分にDOTAMAが登場した。サラリーマン出身であることをアイデンティティにしているDOTAMAなので時間はきっちり守るのではないかと私は予想していたが、フレックス出勤したと考えれば15分の遅れの説明はつく。開演した頃には客入りはだいぶマシになっていた。少なくともバトルでR-指定にお前のライブこそガラガラだったやんけと意趣返しされないくらいには埋まっていてホッとした。最後には電車の乗車率で言うと100%近くにはなっていた。身体がぶつかるまでは行かないストレスのない程よい混み方だった。たぶんヒップホップのヘッズには開演時間までにきっちり入場しておくという習慣がないのだろう。DOTAMAも「オープニングからのご来場」をTwitterで呼びかけていた。そのために先着100名にステッカーを配っていた。私も一枚もらってカバンに入れたが、なくした。見つけたら来年のタワレコ手帳に貼りたい。客は私たちやDOTAMAと同年代くらいの会社員(見るからに仕事帰りというスーツ姿の男性も何人かいた)や若い男女などさまざまだった。ガラの悪さがなくて、安全な客層だった。以前K DUB SHINEのコンサートを観に行ったときにはダボダボの服を着た坊主頭が客の大半で威圧感があった。見間違いでなければ私たちのすぐ近くにカクニケンスケがいた。

DOTAMAはだいぶ緊張しているように見えた。表情がこわばっているように見えた。彼がどれだけ気合いを入れて今日に臨んでいるかはTwitterの投稿で十分すぎるほど分かっていたが、それにしてもおちゃらけた感じがなかった。ただ、歌声は安定していて音源と変わらなかった。『ニューアルバム』のジャケット写真の衣装だった。『HEAD』から始まって『名曲の作り方』など、前半は『ニューアルバム』の曲が多かった。曲を1コーラスだけ歌って次の曲につないでいく形が多かった。中だるみせずsmoothな展開だったが、欲を言えば『音楽ワルキューレ』はfull chorusで聴きたかった。イントロだけで終わっちゃったんですよ。めちゃくちゃ盛り上がったので、そこでぶった斬って『音楽ワルキューレ2』に移ってしまったのは惜しかった。

「セイホー」「ホー」というヒップホップの定型のやり取りは二回だけあったが、それ以外にDOTAMAが客に同じことを叫ばせたり同じ動きをさせたりして一体感を演出することはなかった。各々が自由に酔いしれて音楽に乗っていた。それが凄く心地よかった。みんながDOTAMAの音楽を大好きで、この瞬間を楽しんでいるんだという空気が充満していた。平和で楽しく気持ちのよい音楽空間だった。The Telephonesのドラム担当者とベース担当者が助っ人として参加して3曲くらいやった後、説明がないまま出演者が引っ込んで、しばらく間があった。まだ時間がそれほどたっていなかったし、登場が予告されていたハハノシキュウもまだ出ていなかった。まだ終わりではないとみんな分かっていたと思うが、アンコールが起こった。客に軽妙なノリのよさがあって雰囲気がよかった。偽アンコールの後に出てきたハハノシキュウとDOTAMAのフリースタイルによる掛け合いが自由で面白かった。ハハノシキュウと同じステージに立つとDOTAMAがまともな常識人に見える。ハハノシキュウ最高。Tシャツ、パーカー、キャップと「8x8=49」の完全コーディネートだった。

DOTAMAのトークでは『ニューワンマン』という公演名を付けた理由の説明が一番印象に残った。曰くこの公演名は「常に新しいものに挑戦するのがヒップホップ。新しいフロー、新しいラップのやり方、新しいテーマ、新しいトラック…」というヒップホップ観に基づいているのだという。これはDOTAMAというヒップホップ・アーティストを理解する上で重要な発言だと思う。本人の口から聞くことが出来てよかった。私は正直『ニューアルバム』というアルバム名も『ニューワンマン』という公演名も好きではなかった。『無題』のような誰もが思いつく面白くない奇のてらい方だと思っていたからだ。しかしこれらの題名が上述したDOTAMAのヒップホップ観から来ているのだと知って非常に腑に落ちた。この公演を通して彼が一曲一曲に意味と思いを込めて真摯に音楽を作っているのを再認識した。どこまでも生真面目なMC。DOTAMAの話を聞きながら、私のヒップホップ観は何だろうと考えた。

22時3分に終演。これだけ楽しませてくれたコンサートのチケット代がわずか2,000円(終演と2,000円のえんで踏んでいる)。数十万円の売上にしかならないのが不憫である。利益となるとほぼゼロなのではないかと想像する。次回の公演では是非DOTAMAの顔がでかでかと印字された「DOTAMAのドタマTシャツ」を売り出してmake moneyしてほしいものである。OBAMAとDOTAMAで韻を踏めるのを利用して、OBAMAの顔のTシャツを引用したデザインに出来ないですかね。

2015年8月30日日曜日

MISSION 220 (2015-08-16)

7時半くらいに目が覚めた。今日はJuice=Juiceさんのコンサートを2公演観るために山口県の周南に移動しないといけない。正直なところ昨日のハロコンで大満足してお腹いっぱいなので、motivationは下がっている。3日間で4公演のコンサートを鑑賞するのは決して楽ではない。今日行くのは駅でいうと徳山というところだ。電車代節約のため行きは新幹線ではなく在来線で行くので、あまりもたもたしていられない。とはいえ大浴場での朝風呂は欠かせない。ホテルの近くにヤマト運輸があるのに昨日気付いていた。大きなカバンを家に送ることが出来れば、旅の残りがだいぶ楽になるだろう。incaseのバックパックに必要な物を入れて、karrimorの車輪付きカバンを明日の20時~21時着で家に送った。1,520円。その価値はある。最近読んだ小説『男たちは北へ』(風間一輝)で主人公が旅先から荷物を宅配便で家に送る場面があったのが印象に残っていて、自分もやりたいなと思っていた。

今日は1回目が12時半開場、13時開演。2回目が15時半開場、16時開演。会場の周南チキータまで徳山駅から徒歩で20分。11時半頃には徳山駅に着いていたい。昨日の晩にジョルダンのアプリで検索して下記の電車に乗ることを決めていた。

9時26分広島発
10時19分岩国着
(乗り換え)
10時20分岩国発
11時28分徳山着

路面電車を乗り間違えて余計な時間を食ったが、9時26分の数分前に広島駅に着いた。朝の目覚ましアラームも付けていなかったので、こんなにぴったりの時間に広島駅に着いたのは偶然である。1,660円の切符を買って9時26分の電車に乗るまでは予定通りだった。途中から様子がおかしくなってきた。電車が遅れたのではない。昨日食べた辛すぎるカレーの影響で胃腸が暴れ始めた。端的に言うとうんこがしたくて仕方がなくなったのである。私のこれまでの人生経験が、このまま我慢していたら漏らしてしまうという確信をもたらしてくれた。しまった。長時間の移動を伴う日の前日はもっとおとなしい物を食べておくべきだった。どこかで途中下車しなくてはならない。とはいえ岩国の前で下りると電車の本数が少ないのでJuice=Juiceの公演に間に合わなくなるかもしれない。それは避けたい。ジョルダンで検索すると10時20分の次の岩国発は10時43分でそれに乗ると11時50分に徳山に着くことが分かった。何とか岩国まで我慢した。本来乗るはずだった向かい側の電車を完全に無視しして階段を上がってトイレの印がある方の階段を下りると「50メートル先」という表示があって恨めしかった。幸いにもトイレ個室はすべて空いていて、難を逃れた。

11時50分に徳山駅に着いた。12時半開場とはいえ、その前に写真を買ったり、荷物を預けたりする必要があるし、開場時間の前から入場列を作り始めるのはよくあることなので早めに着いていたい。しかも初めての土地で道が分からない。ホームページには駅から徒歩20分と書いてあったが迷わずに20分でたどり着ける保証はない。だからタクシーを使った。運転手さんが親切ないい人で、彼との会話は先ほどまでの便意との戦いで殺伐とした心境になっていた私に安堵を与えてくれた。870円。コンサート会場前にタクシーで乗り付けるのは何だかVIP気分であった。誰も並んでいないグッズ列で日替わり写真の宮崎さん、宮本さん、金澤さん各500円を買った。写真をアルバムに収めた。前と後ろに大きく宮崎と印字されたピンクの研修生風Tシャツを、着ているColumbiaのTシャツの上からかぶった。財布を入れたTHE NORTH FACEのwaist bagは装着したままにして、incaseのバックパックを500円払って預けた。

1回目の整理番号は106番だったが番号の割には見やすい位置に立つことが出来た。4列目くらいだったかな。

金澤「グループの中で私がよく食べると思われがちだが最近ほかの4人の食欲が半端ない。一皿の料理がテーブルに運ばれると皆ハイエナのように食いつき1分以内になくなる。昨日も食べる前に済ませようとブログを打っていたらどんどん食事がなくなっていった。しかも同じ料理をもう一度頼む」
高木「ホルモンの味噌いためもう一つ!って」
金澤「同じ物をもう一皿ではなく二皿頼もうとする。(計)二皿にしようか、三皿にしようかと相談し合っている」
宮崎「一皿が30秒くらいでなくなる。塩ミノ(?)がおいしくって…(食べ過ぎで体型に)気を付けないといけないかな…(由加は大丈夫だよと金澤)」
金澤「ハロコン後の打ち上げでJuice=Juiceのテーブルは食べ物がすぐになくなるのでスタッフさんが(Juice=Juiceが遠慮して注文していないんだと思って)『頼んでいいんだよ?』と言ってくれるが、来てもすぐになくなっているだけ」

宮本「今は夏休みな訳ですが」
宮崎「ここにいる人たち(客)に夏休みがあるか分からないけどね」
宮本「夏休みの宿題って読書感想文が苦手か自由研究が苦手かに分かれる気がする」
宮崎、植村「?」
宮本「私はどちらかというと読書感想文が得意で自由研究が苦手」
宿題をちゃんとやらないだろうという嫌疑をかけられた植村。そんなことはない、一日でやると弁明。漢字や計算のドリルが苦手。「30ページとか何で?」
宮本「漢字ドリルを早く終わらせるために木偏だけを一気に書いて…」
宮崎「やったことはあるけどそれをやるとちゃんと覚えられないのでやめた(客から拍手)」
宿題をちゃんとやる人とやらない人が登場しますという振りで金澤と高木が合流。
金澤「私は意外とちゃんと提出しない。むしろ言い訳ばかりを考えていた。(家に忘れましたとか、と植村)家に忘れただと次の日に持ってこないといけないからダメ。何かに食べられたとか…」

高速握手会。一人目の金澤朋子さんに「俺も埼玉から来たよ」と言うと「ワオ、遠いのに!」と返してくれた。それを聞いていた二人目の高木紗友希が被せるように「ださいたま」と満面の笑みでディスってきたのが楽しかった。

2回目の整理番号は94番と1回目よりも少しよかったが、1回目よりもやや後ろでの鑑賞となった。それでも視界はそんなに悪くはなかった。宮崎由加さんがいつでも完璧だ。私の目に入るどの瞬間を切り取っても圧巻の美しさだ。宮崎さんをはじめとするJuice=Juiceメンバーの方々の輝かしいお姿を至近距離で目に焼き付けることが出来る幸せ。目と耳でJuice=Juiceの可憐で輝かしい姿と歌声を味わいながら鼻では発狂したようにフリコピする隣の紳士の体臭を嗅いでいると、脳がオタクの体臭とJuice=Juiceを関連付けて記憶してしまうのではないかと不安だった。

夜公演に関してはTwitterにもiPhoneにもほとんどメモが残っていないし、細かいことを覚えていない。周南チキータのスピーカーから出る音が大きすぎて、頭が痛くなっていた。昼公演の途中からややきつかったが、夜公演になると本格的につらくなっていた。耳栓をすればよかった…。しかも起きてからもみじ饅頭三つと水しか口にしていなかったので、力が出なかった。iPhoneに残っているメモとしては、宮崎さんの言葉として、
・今朝牛乳を300ml飲んだ。
・1回目と2回目の間にフルーツをたくさん食べた。
・今までは台風や体調不良があって全員でこの会場に立てなかったが今日は5人で立ててよかった。5人で立てるのは当たり前ではない。皆さんに来てもらえるのも当たり前ではない。
あとこれを書きながら思い出したが、終盤に宮本佳林が「今日は皆さんの熱気が凄くて汗をかいていて、会場も汗をかいてエアコンからポタポタ水がこぼれていて…」と言っていたのが遠回しに会場へのディスになっていて(もちろん本人に悪意はないだろうが)面白かった。1回目には客から見て左側の天井からケーブルが垂れ下がっていて、メンバーが台に上がって手を上げるとケーブルに手が触れていた。高木さんや植村さんはそれを気にしているのが分かった。おそらくメンバーの誰かがカイゼン要望を出したのだろう、2回目には天井にしっかり貼り付けられていた。老朽化が進んだ会場のようだ。

2回目に関しては体調のせいで途中から私の態度が怠惰になっていた。音がキンキン響く度に周南チキータの音を管理する担当者への憎悪が募っていた。ところが、最後の最後。終演後の高速握手会で最後の宮崎由加さんが私の宮崎Tシャツに気付いてくれて「わああ!」、一瞬間を置いて「ありがとう!」と、数秒のあいだ私を見て大きく喜んでくれたので、すべてが帳消しどころかいい思い出となった。つまり、宮崎由加さんが一番なのである。

2015年8月29日土曜日

DISCOVERY (2015-08-15)

8月15日に広島でハロコンが開催されるという事実を知ったのは4月4日だった。終戦記念日、広島、ハロコン。相当ドープな組み合わせだ。しかも今年は原爆ドーム(の元の建物)が出来て100周年らしい。広島を訪れるのにこれ以上のタイミングはないだろう。そう思ってチケットの先行申し込みに応募し無事に当選した。元々広島のことは好きだった。過去に二度来ていた。だから最初は広島旅行を兼ねてハロコンを観に行くかという軽い気持ちだった。しかしながらアップフロントが8月14日に広島でカントリー・ガールズのコンサート、8月16日に隣の山口県でJuice=Juiceのコンサートをぶち込んできたせいで、8月14日、15日、16日と三日連続でハロプロのコンサートに足を運ぶ羽目になった。気が付いたら三日分のチケットが手元にあったのである。旅行のついでのハロプロというつもりだったのが、ハロプロのための遠征のようになってしまったのである。

本当は大久野島に行くつもりだったんだよ、昨日。戦時下に毒ガスを製造していた島。『広島おさんぽマップ』によると当時は地図から消されていたらしい。今ではうさぎがたくさんいてうさぎ島と呼ばれている。非常に興味があった。ところが一昨日ジョルダン乗り換え案内で検索した結果、夕方までに広島市に戻ってくるのを考えると無理があることが分かった。不可能ではないがほぼ移動だけになってしまいそうだったので、断念した。次に広島に来たときは必ず大久野島に上陸したい。

ホテルの朝風呂が最高だった。風呂は夜に入るよりも朝に入る方が好きだ。これ以上ないくらいリラックス出来る。普段は夜に入るけど、旅先では夜は歯磨きだけを済ませて風呂は朝に入ることが多い。ホテルの大浴場で時間を気にせずゆっくりと朝風呂に浸かるのが旅行中の楽しみの一つだ。ホテルから歩いて平和記念公園。広島平和記念資料館。さすがに終戦記念日とあって資料館は混みすぎていて、落ち着いて見ることが出来なかった。小倉豊文『絶後の記録』823円を買った。原爆ドーム前の日陰に腰掛けて、水を飲みながら、しばらくぼーっとした。「茶の環」で抹茶満月1,620円を買った。抹茶満月というのは3年くらい前に人から貰って初めて食べて以来、非常に気に入っている抹茶バターケーキだ。東京だと日本橋の三越で売っている。昨日もこの店に来て「15周年・抹茶満月セット」という詰め合わせを友人夫妻に送っていた。2-3週間前に故郷の桃を14個送ってくれたお礼だ。2年前に広島に来たとき「南大門」という焼肉屋のランチが大当たりだったので再訪したが、開店時間の11時半に店に入ったところ既に満席だった上に何人も待っていたので諦めた。付近をさまよったところ気になる店がいくつかあった。「オンドルバン」という韓国料理店に入った。チョンゴル定食1,000円。辛味噌スープの中に豚肉、キムチ、キャベツ、卵、春雨など。

広島文化学園HBGホールまで歩いた。会場に着くといつもの安心する光景があった。様々な色のTシャツを着たオタクたちがたむろしている。グッズ列に並び、日替わり写真の田村さん、岡井さん、宮崎さん各500円を購入した。14時32分。A5写真専用のアルバムに納めた。会場付近でうんこ座りをしてカップラーメンをすすっているオタクがいた。そんなのばっか食うから体臭がきつくなるんだよと思いながら通り過ぎた。外にはアンオフィの露店があって、広島でも売っているのかと感心した。田村さんの写真を買った。ハロコンは15時半開場、16時半開演。会場に併設されているカフェ&レストラン「RIVERS GARDEN」のドリンクバー510円で14時44分から1時間くらい時間を潰した。入場口が見える席だったが、15時半ぴったりに入場が始まっていた。席は決まっているし入場はサクサク進んでいるので、早く入っても意味はない。

私の席は16列目の通路側だった。右には工藤遥ファンの女の子と母親らしき女性。前にいた紳士が開演前からなぜか汗だくで嫌な予感がしていたのだが、開演するや否やサトウのご飯がレンジで温まるくらいの早さで臭いを発するようになった。何かアボカドのようなスメルだった。16列目は前方の通路を挟んで4列目だった。恒例となったメンバーによる通路へのいわゆる降臨によって、相川、福田、中島を近くで見ることが出来た。相川さんの動きがふにゃふにゃしていて面白かった。

司会のまこと氏が登場したとき、そうか、まこと氏もこの仕事のためにわざわざ地方に遠征しているのか、と失礼ながら思った。

今ツアーが最後のハロコンとなるアンジュルム福田が、岡井、矢島の二人とトークするセグメントがあった。
福田「ハロコンの風物詩といえばリハーサル。先輩の前で新曲を披露するのが緊張する。私は℃-uteさんをキッズの頃から応援してきたアイドルオタク。先輩同士が私を見てこちょこちょ喋っていると『何こいつ、顔赤くてキモい』とか言われているんじゃないかと気になってさらに赤くなる。地獄」
岡井「ZYXの頃は松浦亜弥さんがいたんだよ(福田、悶絶)。それに比べれば℃-uteなんてまだ緊張しない」
矢島「これからも後輩のリハーサルを見ていきたい」
福田「見守ってやってください(観客、温かい拍手)」

℃-uteと一緒に踊ろうという唐突なセグメントは滑っていた。最初は何となく乗っていている人もいたが途中からほとんど誰もやっていなかった。

コンサートの感想を一言で表すと、くそ楽しかった。今まで自分にとってハロコンはどちらかというと一歩引いて観察するタイプのコンサートだったが今日の公演に関しては℃-uteの単独コンサート並に熱くなった。後半の盛り上がる曲の畳み掛けが最高だった。『大器晩成』で飛んだときに踏み外して前の列に一瞬はみ出してしまった。ハロプロの構成員たちが総勢56人(たしかまこと氏がそう言っていた)でこれでもかというくらい代わる代わる攻めてくる。先週中野で観たCHALLENGER公演も楽しかったが、広島のDISCOVERY公演に関しては単に楽しいを通り越して完全燃焼した感さえある。終戦記念日に広島でハロコンを楽しむという旅の目的を、最高の形で達成できた。これ以上の平和式典はない。

夜は「ナーナック」というインド料理店に入った。パンジャビセット2,138円。タンドリー料理とナンとカレー(たしか選択肢が三つあって、チキンマサラを選んだ)とラッシー。激辛を頼んだら、痛みを伴う辛さだった。辛いのは好きだが、辛ければ辛いほどいいという訳ではない。辛すぎると他の味が分からなくなる。何とか完食。
「思ったより辛かったです」
「そうでしたか?」
「でもおいしかったです」
「よかったです。コックさんが『水無しで激辛を食べてる』ってびっくりしてました」
若い女性の店員だった。旅の記念にレシートを貰った。コンビニで水と200円くらいのチョコレート味アイスを買って、ホテルに戻った。

2015年8月27日木曜日

カントリー・ガールズ コンサートツアー2015 (2015-08-14)

週末に池袋の四川料理屋「楊」で汁なし担々麺800円を食べることを生き甲斐の一つにしている私が、同料理が広島のご当地グルメの一つに数えられていると聞いて黙っていられるはずがなかった。広島旅行の間に絶対に一度は口にしなくてはならない。この旅のために買ったガイドブックである『広島おさんぽマップ』680円でもお好み焼き同様に見開きで大々的に取り上げられている。「キング軒」というのがホテルから近そうだ。ここにしよう。意気込んで乗り込んだところ、16日まで休みであるという知らせが貼ってあった。来た道を戻って、20-30分歩いて「中華そば くにまつ」という店にたどり着いた。10人くらいの行列が出来ている。ガイドブックによるとこの店が広島における汁なし担々麺流行の火付け役らしい。並んでいると後ろで男が女になぞなぞを立て続けに出していた。私も答えを考えたのだがほとんど分からなかった。頭が固くなったのだろうか? 子供の頃はもう少し出来た気がする。

「くにまつ」は食券制だった。辛さは基本1辛~4辛で、その上下に辛さゼロと激辛がある。四川料理愛好家である私は辛さへの耐性にある程度は自信があったので3辛にした。それなりに空腹だったので大盛りにした。660円。結構安い。実際食べてみると、思っていたよりもmildでパンチが弱い味だった。テーブルの唐辛子をドバドバかけた。それでも普段食べている「楊」の汁なし担々麺の方が辛かった。隣の客は同伴者に「1辛でも辛い」と言っていた。店を出たのが大体13時半だった。並んで食べるほどのものではない。

今日はカントリー・ガールズのコンサートを観に行く。彼女たちは昼間に広島駅前でシングルの販促イベントをやっていたのだが、私はアイドルオタクではないのでそちらには顔を出さずコンサートのみを鑑賞する。会場の広島クラブクアトロはPARCOの中だった。念のため、エレベーターでその階まで上がって場所を確認した。18時会場、18時半開演だからまだ時間に余裕はあるが、それまでに色んなところを動き回ることはしない。昨日、宮島の弥山を登って消耗したので今日は軽めの日にしたいのだ。ブログを更新したくてしょうがなかった。PARCO近くのサンマルクカフェでホットのベトナム珈琲345円を飲みながら書いた。8月9日に中野で観たハロコンの記事だ。ポメラで書いて、QRコードをiPhoneで読みとって、Bloggerのアプリから記事を投稿した。よく集中できた。すがすがしい気分だ。音楽を聴いたり映画を観たりすることで同じ気持ちを得ることは出来ない。自分で何かを作ることでしか得られない満足感がある。自己満足だが仕事ではないのでそれでいい。

15時半くらいにサンマルクを出た。Twitterを見るとグッズ販売が既に始まっている模様だったので、会場に向かった。一つ前の記事で書いたように私は8月9日に中野で観たハロコンで、カントリー・ガールズの中では稲場さんを推すことに決めたので、日替わり写真の稲場さん500円と、2L写真part. 1の稲場さん500円を購入した。17時前にロッカーが開放されたのでカバンを預けた。同じPARCO内にあるタワレコを物色した。収穫としてはGoGo Penguinという集団を知った。ジャズに根を張ったプログレッシブな音楽という私の最近の嗜好に合致していそうなのである。1st album “Fanfare”を買った。fox capture planが好きな人にお勧め!という売り文句を店の棚に書かれるとこっちは弱い。商品に貼ってある値札は1,700円台だったが店員氏がバーコードをスキャンしたところ2,500円台の値段が出てきてそのまま黙っていたら高い方の値段で会計を済まされるところだった。指摘したら安い方でレジを打ってくれた。油断出来ない。

17時45分すぎになると、客同士で番号を確認し合って2列で番号順に並べという雑な指示がクアトロ人員から下された。クアトロ人員というよりは、正確に言うとCANDY PROMOTIONという会社の従業員だった。社名の入った何かを身に付けていた。ネットで調べたところこの会場の収容人数は800人らしいがもしこんな指示で800人が勝手に整然と並んでくれるなら日本人は規律正しいにも程がある。と思ったがさすがにそれで投げっぱなしということはなくて、係員が番号を呼び上げて細かく列を作っていた。非常階段に客を並ばせていた。18時には列が200番台になっていた。私は272番だった。いまいちな番号だなと思っていたが、さっき近くでオタクがもう一人のオタクに「300番台のチケットが2万円で出ているらしいよ」(おそらくオークション)と話しているのを聞き、この番号でチケットを取れているだけでも恵まれているのかもしれない、と認識を改めた。18時17分頃に入場した。周りのオタク同士の会話によるとチケットは300番台くらいまでしか出ていなかったようだ。

公演を通して何にも増して印象に残ったのは、小関舞だ。彼女は喉の調子が悪く声が出せないため、歌も喋りもなしだった。それでもいっさい申し訳なさそうでもつらそうでもなく、むしろ普段以上に(そんなに普段を知らないが)堂々としているように見えた。過去に怪我や体調不良で十分な力を発揮できない子は何人か見てきたが、ここまで悲壮感のないパフォーマンスと立ち居振る舞いの子は初めて見た。この子はamazingだ。感銘を受けた。

嗣永曰く、今日メンバーの昼食はあなご飯だった。一昨日カントリー・ガールズとスタッフのLINEに「突然ですが皆さんはあなごは食べられますか?」という質問。仕事のアレルギー調査だと思って「お疲れさまです。あなごの件ですが嗣永は大丈夫です。何卒宜しくお願いします」と返した嗣永。山木はあなごを食べたことがないので分かりませんと回答。食べてみたらおいしかった。今日は山木のあなご記念日だねと嗣永。苦笑して何だそれと首を傾げる山木。

森戸知沙希が冒頭で意気込みを語る際、コンサートがうまくいったらご褒美にもみじ饅頭を食べたいですと言った。その後にスタッフが買いに行ったことを嗣永桃子さんに知らされて飛び跳ねて喜んでいる森戸さんを見て、何のご褒美でもないのに昨日一日で4個食べた私はやや罪悪感を覚えた。

嗣永桃子がいることでトークがとことん円滑で愉快になる。面白かった場面を思い返すとほとんど嗣永が絡んでいる。森戸がもみじ饅頭を食べたことがないと言うと「買ってあげるよという人は?」と客に投げかける。当然、はーいと大半のオタクが手を挙げる。「教育上よくないから」と笑いを誘う。終盤のMCでも客に「皆さんずっと楽しそうにニヤニヤしていて」と言って稲場らから「ニコニコですよ」という突っ込みを引き出す。

夕飯は「若貴」でお好み焼きスペシャル1,200円。ハイボールとライチサワーを飲んで、2,052円。ほろ酔いで、いい気分だ。コンビニで水と濃密ギリシャヨーグルトを買ってホテルに戻った。念のため会社のiPhoneを持って来ているのだが、会社のメールなんてどうでもいいわという気になっていて、旅行に出てから一度も仕事のメールを確認していない。それだけリフレッシュ出来ているということだし、これが大事なんだろうと思う。

今日から2泊するホテルは、立地が最高なのだがやたらと宿泊客が多そうだ。エレベーターはボタンを押しても一向に来ない。あてにしていたコインランドリーは洗濯機と乾燥機が4台ずつあるのだがすべて埋まっているし1台だけ空きそうな洗濯機はふくよかな淑女が先にブロックしていて「次は私です」と牽制してきた。「そうですか」と言って私は引き返した。歯だけ磨いて、風呂には入らずに寝た。

2015年8月14日金曜日

CHALLENGER (2015-08-09)

汗ばまない程度の陽気。夏はこれくらいが上限であって欲しい。来週の広島旅行でもこれくらいの気候であればかなり動き回れるのだが。13時過ぎにハロコン会場の中野サンプラザに着いたところ、グッズ列が思ったより短くて、会場内の階段に収まっていた。日替わりA5写真の田村さん500円と、コレクション生写真2枚1,000円を購入。生写真はこぶしファクトリー井上とJuice=Juiceの植村が当たった。どっちも「暑中お見舞い申し上げます」と書いてあったような気がする。気がするというのは一瞥してすぐに袋にしまったからだ。田村芽実の写真と交換することしか頭にない。会場近くのテントがオタク同士の交換場所になっていた。入るや否やすぐに体格のいい紳士に声をかけられた。
「何かお探しですか?」
「はい。コレクション生写真の田村さんが欲しくて、持っているのがこぶし井上とJuiceのうえむー」
井上玲音は名字で呼び捨てたのに対して植村あかりのことはうえむーと愛称で呼んだ。こぶしファクトリー単独の現場には(ミュージカル“Week End Survivor”を除けば)一度も行ったことがないし井上氏のことはおはスタに出ているらしいという程度の知識しかないのに対して、Juice=Juiceに関してはイベントや単独コンサートを何公演か観に行ったことがあるしラジオ番組“We are Juice=Juice”を毎週聴いているという差が自然と私の態度に表れているのである。
「めいめいですよね?」
「はい」
私が田村芽実のことをめいめいではなく田村さんと言ったのは彼女に対する気持ちの相当部分が敬意であって、簡単に愛称で呼ぶことがはばかられるからである。とは言ってもコンサート中にめいめいと叫ぶことにためらいはない。
その紳士が奥で商品を管理している部下のような男に確認させると、あまり芳しくない反応。どうも田村さんの写真は数が少ないらしい。
「最悪2枚1枚でもいいですか?」
「いいっすよ」
結局、私が先ほど買った2枚と、田村さんの写真1枚との交換になった。強いトレーディング・カードを手に入れた気分。

L判のコレクション生写真はビニールのスリーブと折れ曲がりを防ぐ厚紙が付いてくる。だからそのままカバンに入れても問題ない。日替わりA5写真はA4の半分という大きさにも関わらず厚紙を付けてくれない。取り扱いに失敗すればすぐに折れ曲がってしまうだろう。私の今日のカバンには入らない。A5写真を買う度に、保護する入れ物を持ってくればよかったと思うのだが、私はアイドルオタクではなくライトなファンであり写真の購入頻度が低いため、忘れてしまうのだ。田村氏の写真を入手した時点で13時半すぎだった。喫茶店に入ることも考えたが、開場が14時、開演が15時(私は3公演やるうちの真ん中の公演だけを観る)だったので本屋をぶらぶら見るだけで時間は潰れた。開演前に、近くの席にいた女性がA4サイズのプラスチックで出来た硬い入れ物に写真類を収納していた。私に必要なのはあれだ、と思った。

私の席は1F17列の中央付近だった。一つ前の16列に所謂アンオフィ(コンサート会場の近くで非公式の業者が販売している出所の謎な写真。8枚組で1,000円。公式の写真より質が高く値段も良心的)の撮影者とおぼしき不審な紳士がいた。黒いパンツに黒いSTUSSYのTシャツにTHE NORTH FACEのウエストポーチ。短髪に黒いキャップ。50歳くらいか。公演前から何か変な雰囲気を漂わせていた。明らかにコンサートそのものにもハロプロにも興味がなさそうだった。何かの布ですっぽり覆っていたけど明らかにキャメラで写真を撮っていた。別に私はアンオフィの業者を糾弾するつもりはなく、高品質な写真を良心的な価格で提供し続けて欲しいとしか願っていない。私からすると正直彼らのおかげで助かっている側だし、鑑賞の妨げになっている訳ではないので積極的に咎める理由はない。

実のところ、目の前の席でSTUSSYが撮影しているのに途中まで気付かないほど私の意識はステージに釘付けになっていた。眼が二つだけでは追いきれない情報量の多さがハロコンの魅力だ。ステージ中央で曲を披露するユニットがいれば、横のひな檀で思い思いのやり方で曲に乗ったり隣の子とふざけ合ったりじゃれ合ったりする子たちがいる。カントリーガールズの『わかっているのにごめんね』の最初と最後の台詞部分を真似し合う岡井千聖と鈴木愛理。岡井が「若いっていいわねえ」のくだりを前にいた研修生の子に向かって言っていた。一部の曲ではメンバーが通路に現れることもある。いくらでもある見所の中から、その場その場で自分なりに焦点を絞ってじっくりと観察する。飽きない。

ハロプロ研修生の中に加賀楓と一岡伶奈を見つけたときの「君たちはまだここにいたんですね」感。他の研修生たちが続々とデビューする中、取り残されてしまった感。これから加賀さんと一岡さんがデビュー出来る可能性はおそらく低いだろう。どうするのか。そんなことを考えると研修生たちの歌唱や踊りに身が入らなかった。研修生はこぶしファクトリーとつばきファクトリーが抜けたことでだいぶ小粒になった。他のユニットとはだいぶ差がある。こぶしの面々がまだいた頃はオールスターという感じで凄かった。

こぶしファクトリーの『ラーメン大好き小泉さんの唄』が事前に“The Girls Live”で観ていた通りに癖になる面白い曲で、楽しかった。「麺上げて! 湯を切って! ラーメン大好き小泉さん!」とこぶしたちが唄って観客が同じ言葉を繰り返すというのが2回続けてあるのだが、2回目は1回目に比べて歌唱のリズムをずらしてあって、いきなりやるには少し難しい。2回目に私たち観客はどっちのリズムで返すのか。おそらく歌唱と同じリズムで返すのが正解なんだろうが、みんなが付いてこられるリズムではない。

今日確信したのは、今ハロプロのユニットで一番旬なのはJuice=Juiceであるということだ。アイドル集団は、ただ新鮮なだけでは表現に深みが出ないし、熟練しているだけでは面白味がない。その両方をどれだけ兼ね備えているかが大事だ。今のJuice=Juiceは、新鮮さと円熟味を掛け合わせたときに現在のハロプロで最も点数が高い集団だ(実際に点数を出して計算した訳ではない)。びっくりするくらい華があった。思わず乗せられてしまう宮本佳林の力強く迷いのない煽り。可愛すぎる宮崎由加。自信と喜びに満ちたパフォーマンス。デビューしたばかりで新鮮なのはこぶしファクトリー、カントリーガールズ、つばきファクトリー。一方で圧倒的な熟練を誇るのが℃-ute。℃-uteは、今日に限っては何だかつまらなかった。

途中のトーク。金澤と和田。二人とも耳フェチ。金澤は薄くて女性らしい耳、和田は福耳が好み。それぞれ画像をスクリーンに写して解説。
金澤:ハロプロで一番理想に近い耳を持っているのが宮本佳林。自分にあの耳が欲しい。
和田:理想の耳を持つのは仏像。前のめりになって仏像の耳の特徴や魅力を語り始めるが「仏像の話はまた後で・・・」とまことに遮られ終了。

最後に、個人に着目すると、今節最大の発見は、稲場愛香である。引き付けられた。仕草、表情、声。何と言っても、踊り。ハロプロダンス部ではバッキバキの動きで振り付けにも分かりやすい派手さがあったが、『ためらいサマータイム』のゆっくりしたテンポの控えめな振り付けでもこんなに存在感を示せるのか!と驚いた。とにかく目を離せなかった。来週、広島でカントリーガールズのコンサートを観るが、まなかん推しで行くことに決めた。

2015年7月25日土曜日

COVERMIND 360° SESSION (2015-07-12)

遅めの昼食と待ち合わせまでの時間潰しを兼ねて「らんぶる」に入った。新宿を訪れたら高確率で利用する喫茶店だ。ピザトーストのセットを頼んだ。セットという言葉を日本では定食のような意味で使うが英語圏ではこの用法は通じない。先日Twitterを見ていたら英語圏でハンバーガーのsetを頼んだらハンバーガーが二つ来たという話が回ってきた。日本語でいうセットのことはmealと言うらしい。それはともかく「らんぶる」のピザトーストは高く評価できる。具は少ないけどね。サラミでも乗っていたら完璧なんだけど。タバスコをこれでもかとかけて食べる。串カツがソースを味わうためにあるのと同様、ピザトーストはタバスコを味わうためにある。食後のコーヒーを飲みながら入り口の方に目をやると何人かが並んでいた。950円の会計を済ませて新宿ロフトに向かった。fox capture plan、日本語にするとキツネ捕獲計画という名前の集団のライブ演奏を聴きに行くのだ。今日は大学時代からの友人と一緒だ。

このブログにはほぼハロプロの現場に行った記録しか書いていないのでまるでアイドルオタクのように見えるかも知れない。それは大きな誤解で、私は音楽愛好家なのである。以前の記事にも書いた通りである。いつでもドープな音楽を探し続けているんだ。2014年の12月だった。私が信頼しているTwitterの某アカウントがbohemianvoodooという集団の新しいアルバムを勧めていたので買ってみた。気に入ったので過去作をディグっていったところ、同じPlaywrightというレーベルの仲間であるfox capture planと共同で出したcolor & monochromeというミニアルバムに出会った。それがきっかけでfox capture planの虜になった。彼らが出してきたアルバムをすべて揃えた。もっとも7月8日に発売したCOVERMINDは7月15日に発売するJuice=Juiceの“First Squeeze!”と一緒にタワレコから届くのでまだ持っていない。

普段、新宿は好きで来る場所ではない。むしろ苦手だ。新宿ロフトを探し当てるまでに歌舞伎町をうろうろしている間、サイレンを鳴らしたパトカーが私の横を通ってからラブホテルの前で止まったし、目の前に人が飛び出してきたと思ったらベロンベロンに酔っぱらった女だった。ホストクラブの従業員らしき男が介抱していた。普通に歩いているだけでそういう光景に出くわすので疲弊する。Google Mapの力を借りたにも関わらず新宿ロフトを見つけるのには難儀した。女性が客として来るタイプの水商売の店やガールズバーばかりが入居したビルヂングの地下2階だった。まさかここだとは思わなかった。凄い場所にあるなというのが率直な感想だ。おかしいな…この辺りのはずなんだけど、と思いながら付近を何周もしていた。新宿ロフトのすぐ側には「客引きは詐欺の手先です! 料金システムの何十倍も取られます」という新宿警察署による看板が立っていた。この周辺の空気を肌で感じたことによって、以前YouTubeで見たMCバトルで晋平太がGOLBYに向けた「そこどうだよ新宿ロフト お前はただの韻踏むホスト」というフレーズの味わいが理解できた気がする。歌舞伎町のど真ん中にあるホストクラブだらけの建物の地下に新宿ロフトがあるという事実を知らないとあれはただの韻のための韻に聞こえてしまう。

事前にメールでチケットを確保してある。当日に前売り料金(3,300円/1枚)で引き替えることになっていた。16時半頃に会場に行ったら引き替えは開演30分前からだとスタッフの男性に言われたので17時まで待った。コンビニに入ろうとしたらラッパーの輪入道のような風体の紳士が出てきて気が抜けなかった。店内にレッドブルが大量に陳列してあるのに土地柄を感じた。そろそろ17時かなというタイミングで、もうチケット引き替え出来ますよと先ほどのスタッフが声をかけてくれた。6,600円を払って二人のチケットを入手。整理番号58番と59番だった。17時半開場、18時半開演のはずだったが実際にはそれより前に入場が始まっていた。17時29分になってもまだ友人が来ないので電話をかけた。近くまで来ているが少し迷っているとのことだった。水商売の店ばかりが入ったビルだと言うと程なくして到着した。既に前売り券の所持者は全員が入れるようになっていた。当日券組の入場が始まる前に何とか滑り込むことが出来た。

こういう会場で必ず強制的に買わされる500円のドリンクチケットは大抵の場合は水と交換するか、使わないことが多い。大体、ギッチギチに客が入った立ち見会場でゆっくり何かを飲む余裕なんてない。でも今日は違った。会場がやたらと素晴らしいんだ。どう素晴らしいかっていうと、中心にフォックスキャプチャーたちの演奏場所が設置されていて、それを客が取り囲む。段差がないし柵もない。驚くほどに近い。最前列なら手を伸ばせば届く。警備員もいないのでナイフがあれば襲撃して刺すことも可能な距離だ。今回は“COVEREMIND 360°SESSION”といってfox capture planの周りを客が360°取り囲むというコンセプトだとは読んでいたが、どんなもんなのか想像がつかなかった。しかも客を無理に詰め込んでいなくて、ゆとりがある。私たちの整理番号58と59が前売りのほぼ最後で、当日券はそんなにたくさん出さなかったはずだからおそらく100人以下。少人数の観客で、物凄い近さで、最高の集団による演奏を楽しめる。開演前から既に最高の時間になることが保証されていた。話をドリンクに戻すと、私はジンライムを注文した。友人はビールを頼んだ。一番後ろ(と言っても十分に近い)でちびちびやりながら友人と色んな話をした。アルコールが少しずつ回ってきて気分がよくなってきた。

奴ら(fox capture plan)が12分遅れの18時42分に登場した頃にはジンライムで私の頭がいい感じに麻痺していた。ハロプロの現場では出演者たちのダンスと表情、ふともも等を脳裏に焼き付けるのが極めて重要だが、fox capture plan相手ではそこに神経を使う必要がないので、多くの時間帯で目をつぶってただ音に身を任せた。気持ちよすぎた。酒がちょっと入った状態で聴く音楽ってのがまた別格なんだよね。(別格と言えば、別格希少珈琲という220円もするKIRINの缶コーヒーは期待外れだった。)出来ればハロプロの現場でも少し酒を飲んで臨みたいと思った。最高すぎた。当たり前だがiPodで聴くのとは臨場感が違いすぎた。まだ聴いていない“COVERMIND”の曲群を先にライブ演奏で堪能するという贅沢。浸った。MCで主に喋っていたピアノ氏をはじめとして、MCで垣間見るfox capture planの人間性に好感を持った。彼らは私と同年代であることを知り親近感を覚えた。「これが最後の曲です」と言うと観客はお約束のエーイング。すると即座に「えーじゃねえよ!!」とピアノ氏がキレたのが面白かった。どうやら恒例のネタっぽい。今日はアットホームな会場のつくりだとfoxの構成員たちは何度か口にしていた。タイトで熱い演奏とほのぼのとした喋りの緊張と緩和が、心地よかった。客に取り囲まれているので出るに出られないということで、アンコールの拍手を受けると一度裏に引っ込んでからの再登場ではなく、その場で追加演奏をしていた。

新宿歌舞伎町で私が知る唯一のリアルな飲食店である四川料理屋「川香苑」で友人と夕食。もしかすると入れないかもと思ったが意外と空いていた。麻婆豆腐、豆腐と豚肉と野菜の炒め物、ワンタンを頼んだ。360° SESSIONの感想戦の他、音楽の話をたくさんした。これだけ詳しく音楽の話を出来る友人は彼しかいない。fox capture planが好きなら、ということでquasimodeとJazztronikを勧めてくれた。いずれ聴く。quasimodeというのは名前だけ印象に残っていた。というのがMadlibの変名であるQuasimotoのアルバム2枚は聴き込んだからだ(3枚目は数回しか聴いていない)。何か似た名前のグループがあるんだな程度には気になっていた。

fox capture planは非常にドープな人たちなので皆さんも是非チェックしてみてください。まず一枚聴くなら“BRIDGE”というアルバムを勧めます。

2015年6月17日水曜日

Future Departure (2015-06-11)

昼食を摂るために横浜駅近くにあるお気に入りの店に入った。いつも混んでいる人気店。平日なのに入るまで40分ほど待たされた。案内された席に腰掛けて注文を済ませると、近くの席にいた男女の会話が嫌でも耳に入ってきた。男が女の恋愛遍歴について詳しく聞き出していた。女曰く前の彼氏は某有名企業に勤める30代の男だったが、社員かと思っていたらアルバイトであることが付き合い始めてから半年で発覚し、それが別れる一つのきっかけとなった。何か夢があってアルバイトをしているなら許せる。例えば芸人を目指しているけど今はそれだけでは食えないからバイトをしているということであれば問題ない。でも彼にはそういう目標がなかった。バイトをやめて正社員の働き口を探すからそれが決まったら結婚しようと言ってきたが、アタシには結婚願望がないので乗り気にならなかった。しかも就活がうまく行かなかったらしく、一ヶ月後にはまた週6でバイトをやり始めた。は? あり得ない。就活するって決めたんならちゃんとやれよって思った。そういったいくつかのすれ違いが重なって別れた。というところで電話が鳴って女は席を立った。男はその間に会計を済ませた。食事を平らげてホットコーヒーを優雅に飲み干した私は、店を出て新横浜に向かった。今日、私が有休を取得したことで自分を含めて8人の出張日程が変更になった。そこまでしてでも絶対に行かなければならない現場がそこにはあったのである。℃-uteにとって初めての横浜アリーナ公演だ。

この横浜アリーナ公演はツアーの千秋楽だったが、私が観に行った川口公演と比べるとセットリストが大幅に変更されていた。開演するとモニターに最新シングルから新しい順に今までのシングルのビデオクリップが数秒ずつ流れて、インディーズの2nd(『即 抱きしめて』)...と来たところで℃-uteが登場し、最初のシングル『まっさらブルージーンズ』を歌い出すという始まり方が、熱すぎた。涙が出てきた。何かのアニメのキャプチャ画像で緑のサイリウムを持って泣いているおっさんの画像を見たことがあるが、私がまさにあんな感じだった。入場前に喫茶店を探して新横浜の町を歩いていたときに、一曲目が『まっさらブルージーンズ』だったらいいなという考えが唐突に頭に浮かんでいた。Twitterにもそう書いていた。それが現実になったときの感情の高ぶりといったら、もう。そのままMCを挟まず、リリース順に、メジャーデビュー曲の『桜チラリ』までの5曲が披露された。曲が切り替わる度に会場はどよめきと高揚感に包まれた。おー、そう来るかって感じだった。

The Future Departureという、過去との決別を思わせるツアー名でありながら、その千秋楽にて冒頭から昔の曲をこれでもかと畳み掛けてきた。しかも2012年にセルフカバーしたときの新しい編曲ではなく、元の編曲だったんだ。10年やってきたけど私たちは変わらないんだという力強さを感じた。2015年6月11日は℃-ute結成10周年の日なんだ。普段はそこまでセットリストのことを気にしないのだが、今日に関しては選曲にあたってメンバーたちやスタッフが込めたであろう思いについて考えざるを得なかった。変わり種としては“Flash Dance”のカバーが面白かった。彼女たちは英語がしゃべれる訳ではないのでつぶさに聴けばpronunciationは危なっかしそうだが、日本語で歌うときと同じように堂々としていた。What a feeling...のユニゾンがとてもきれいで、たまらなかった。私はこの歌をニュージーランドに住んでいた頃に音楽の授業で歌っていたので、懐かしく、嬉しくなった。

これまでの彼女たちの人生で一番の晴れ舞台だったが、℃-uteさんは落ち着いているように見えた。実際には普段以上に緊張していたのだろうが目に見えてパフォーマンスが乱れることはなかった。横浜アリーナが初めてとはいえ、武道館を何度も経験しているのである。何かの曲で歌のタイミングを外した萩原舞の後に完璧にテンポを取り戻す鈴木愛理の技術と落ち着きに感嘆。本編最後の『たどりついた女戦士』では中島早貴を筆頭にみんな完全に泣いていた。その光景はただ美しかった。極めつけは最後に全員が泣きじゃくりながら肩を組んで歌い上げた『我武者LIFE』。「もう誰一人も欠けないで」と岡井千聖が心の叫びをあげたところは名場面として語り継がれるであろう。何列か前にいた女オタクも号泣していた。

岡井千聖はいつもながら具体的な金額や数字を出して言いたいことを伝えるのが面白い。本編中のトーク。

萩原「ハロプロに入った頃アイドルの掟みたいな紙が配られた。例えばタンクトップは着てはいけません(露出が多いので)とか、アクセサリーは高校生になってからとか、MDプレイヤーを買ってくださいとか」
岡井「当時MDプレイヤーは一番安くて1万5千円くらいした。そんな高いものうちでは買えないと思った」
萩原「ビデオテープに名前を書いて『お願いします!』と会社の人に渡していた」
岡井「ビデオテープは1本300円、それを毎日。破産するかと思った。家の水道止まった」
記録媒体の進化でテープ持参が不要になったときは出世したと思ったと岡井。

岡井千聖はアンコール後のトークでも金額を出して話をしていた。「最近妹と弟がバイトを始めた。夜勤とか大変。それでも時給は900円とか800円。℃-uteのチケットは7,000円くらい。皆さんはそんなお金を℃-uteのチケット1枚に使ってくれている。働いている人はもう少し(時給が)高いかもしれないけど。このコンサートに来るために有休を取ってくれたり、無理矢理来てくれたり。℃-uteがそんな存在になれているのが凄い。(もう嫌だ...と言って泣きじゃくる。頑張れとメンバーが励ます)普段泣かないのに。千聖のことを泣かすのはパパと皆さんくらいですよ」

「私たちは℃-uteを好きで、℃-uteを応援してくれる皆さんのことが好きだからここまでやって来られている」という岡井千聖のしみじみとした語り口。一時的な高揚感やアイドルとしての職業意識から生まれる「みんな大好き」とは違う重みがあった。
「私たちは℃-uteのことが好きで、℃-uteのことを応援してくれる人のことも好きだからここまでやって来られている」という彼女の言葉には嘘がないと感じた。

「℃-uteにはまだまだ夢があります。最近、色々なことがあって不安な方もいると思いますが、まだまだ突っ走って行きます。置いて行かれないように付いてきてください」というようなことを、矢島リーダーが言った。色々なことというのは主にBerryz工房の活動停止を念頭に置いているのだろう。ずっしり来る決意表明だった。℃-uteはまだまだ続く。オタクはそれに付いて行く。2015年6月11日は、℃-uteとオタクの間でその契りが交わされた重要な一日であった。

私の席はアリーナのEブロックだったのだが、周りのオタクたちは公演中にほとんど声を出しておらず、調子が狂った。アンコールも声を出していたのは一部だけだった。私は今ではある程度、現場慣れしているのだが、最初の頃は現場でどう振る舞っていいのかがいまいち分からなかったし、声を出すのは恥ずかしかった。たぶんそういう人がたくさん来ていたんだと思う。会場がいつもより大きくなると、普段あまり来ていない人たちが来るんだということに気付いた。今後横浜アリーナで年に数回やるのが当たり前になっていけば、そういう人たちも現場慣れしていって、会場の一体感は確実に増すと思う。ただ、現場慣れしていない人をもっと巻き込んで、横浜アリーナ級の会場を最高潮に盛り上げ続けるには、仕掛けや演出にもう一工夫が必要なのではないかと思った。ラベンダーのギター担当者が二人登場し何曲か演奏していたのだが、曲にいつものオケとは違うgrooveが生まれ、非常によかった。『都会っ子 純情』冒頭の爆発にも興奮した。あともう一つか二つ、分かりやすいスパイスが欲しかった。今後さいたまスーパーアリーナ等のもっと大きい会場でやることを念頭に置くと、常連以外のオタクに現場慣れしてもらうだけでは不十分だ。曲をそれほど聴き込んでおらず、℃-uteのコンサートを初めて観に来た人でも思わずうわっと声を出して、帰り道に凄かったねと感想を言い合えるような工夫がもっとあればいい。℃-uteであればそんなコンサートが出来ると思うし、ハロプロでそれを出来るのは℃-uteしかいない。

2015年5月31日日曜日

大器晩成(2015-05-26)

夕方の5時半開場、6時半開演のコンサートを観るためであれば、丸一日の休暇を取得する必要はなかった。午後の半休、もしくはフレックスを活用して3時過ぎに退社しても開演に間に合わせることは十分に可能だった。しかし、結果としては全休を取っていたことが功を奏した。昨晩お腹を壊したからだ。夕飯のもつ煮定食が当たったとしか考えられない。食後30分ほどで突発的な腹痛に襲われ、電車を途中で降りてトイレに駆け込まざるを得なかった。夜中にお腹の痛さで目が覚めたし、午前中もしばらくは安静が必要だった。正露丸と休息のおかげで何とか回復し、アンジュルムの武道館公演を観に行くために家を出た。

グッズを買うために13時過ぎに九段下駅に着いた。日替わり写真は今日のこの会場でしか買えないので、売り切れたらもうチャンスはないのだ。田村メンバーの日替わり写真とマフラータオル、そしてアンジュルムのDVD MAGAZINEを買った。田村芽実のTシャツを持っていないのでいつかは買いたいのだが、現在買えるものでは欲しいと思えるデザインのものがない。仕方ないのでハハノシキュウTシャツを着て、首からめいめいのマフラータオルをかけて臨むことにした。13時半くらいから並んで、14時半くらいに買い終わった。

九段下Family Martで飲み物などを調達すると思わぬ接触イベントが発生した。
私「・・・(商品をレジに置く)」
店員(おばさん)「(私が裸の状態で携行していた田村マフラータオル、田村日替わり写真、アンジュルムDVD MAGAZINEを見て)大きい袋にしましょうか?」
私「あ、そうですね。ありがとうございます」
店員「5時半からですか?」
私「6時半です」
店員「楽しみですね」
私「はい」

入場前に九段下駅近くの「ターリー屋」でマンゴービールを飲んでサモサ、チキンパコラ、タンドリーチキンを少しずつの詰め合わせ、それにフライドポテトを食べた。ビールにマンゴージュースを入れたマンゴービールが気に入った。5時半頃になると客は私ともう一人だけになった。店員同士が「(客が)全然来ないね。たぶん明日の方が忙しい」「明日は何時から?」「6時半」という会話をしていた。明日の6時半というのはモーニング娘。のコンサートのことだ。入場者数はそんなに変わらないはずなので、明日の方が忙しくなるかどうかは疑わしいんだけどな、と思いながら1,280円の会計を済ませた。

私の席は、2F西スタンドのE列だった。右はごつい紳士だった。身体が私の席にはみ出ていた。窮屈な思いをするのが心配だったが、ほとんど身動きを取らないタイプのオタクだったので助かった。地蔵かと思いきや途中から控えめに声を出していた。前の席には、緑にしか光らないペンライトを右手に握り締めて健気にステージを見つめる小学生くらいの少女とその父親らしき人がいた。父親はファンではなさそうだった。緑は相川茉穂の色だ。数ヶ月前に加入したばかりの彼女を、どういうきっかけで知って応援することになったんだろうか。ちょっと気になった。一つ前の列(D列)までがファミリー席だったので、見晴らしがよかった。こういう席は好きだ。下手なアリーナ席よりもこっちの方がいい。左の女二人組は、関係者席に続々と入ってくるハロプロメンバーたちを見ては、誰々がいるなどと言い合ってキャッキャしていた。開演前はまだ微笑ましかったが、私の左の女は公演中もしょっちゅう双眼鏡で関係者席を覗いていたので呆れた。何を観に来たんだよ、本当に。しょうもない奴ら。コンサートの盛り上がりにはほとんど寄与せず、アンコールの声も出さなかったんだから、こうやって後から私にブログでディスられるのも仕方がない。とは言え、ハロプロの現役メンバー大多数とBerryz工房の嗣永桃子以外が一箇所に固まって座っている絵は壮観であった。もし誰かが今この会場を丸ごと爆破したら、この国の可愛さの80%が失われるんだと思うと恐ろしかった。そのような事件は起きなかった。平和な国でよかった。

公演中、私はずっとめいめいを目で追っていた。そこに迷いはなく、他のメンバーに目移りはしなかった。自分がアンジュルムの中では田村芽実推しであることを再確認(reconfirm)した。おでこ丸出しで編み編みにした髪型がよく似合っていた。彼女がステージの端に行って西スタンドからは見えなくなるときが何度もあったが、そのときは彼女の表情が映し出されるのを期待してモニターを見るようにしていた。和田彩花がコンサートの中盤に「始まってから約1時間がたちました」と言って田村メンバーにコメントを振った。すると田村メンバーは大げさに驚いた表情で「い、1時間たったんですか??? 5分くらいしかたっていないと思いました!!! 皆さんも、5分くらいにしか感じていませんよね???」というようなことを、大げさな表情を作ってわざとらしい演技で言っておどけていた。これぞめいめいって感じで面白かった。田村さんを直に拝見するのは、1月11日以来であった。もう少し高頻度で拝みたいところだが。

メンバー全員から伝わってきた武道館に立つことの感激に、去年この舞台を経験済みの1・2期の落ち着きがバランスよく混じり合ったパフォーマンス。まるでMIX CDのように淀みがなく、息つく暇もない展開。常に後半戦のような体力勝負の、中だるみを排したsetlist。最高だった。MCでは福田花音さんがダイエットのためにswimming poolをスクール水着で歩いていたら知らないおじさんが水中を追いかけてきて手を伸ばしてきたので必死に逃げたという話をしたところ、中西メンバーがアリーナ席を指差しながら「この中にいるんじゃないですか?」と言ったのが一番面白かった。際どい発言はコンサートがBlu-ray化される際に削除される傾向がある。例えばモーニング娘。のコンサートで「What is Love?」のビデオクリップに使うための映像を撮影をした際に道重さゆみが「AKBグループの人が見たら驚くくらい盛り上がって行きましょう!」と言ったのはBlu-rayでは削られたし、岡井千聖が℃-uteのコンサートで父親の浮気の話をした際も会場は爆笑に包まれていたのにBlu-rayではきれいに編集されてなくなっていた。今日の福田さんと中西さんの話も出来ればもう一度Blu-rayでじっくり確認したいが、もしそれが叶わないのであればせめて自分のTwitterとブログには文字にして残しておきたいのだ。

2015年5月5日火曜日

Special Juice (2015-05-03)

池袋で唯一リアルでハードコアなインド料理店「A. Raj」でマトンカレーのBセットを注文した。昼に池袋でインド料理をいただくならここ一択だ。夜はやや値段が張るのでいつでも気軽に来るという訳にはいかない。昼だとカレーとナンにラッシーが付いて1000円。この味をこの値段で味わえるとなると、他の店とは比較するまでもない。カレーが飛ぶリスクを考えて、4-5年前にコム・デ・ギャルソン・オムのセールで買ったボタンダウンの半袖シャツを脱ぎ始めたが、中に着ていたTシャツがJuice=Juiceのものであることを思い出し、途中まで外していたボタンをかけ直した。洗っても取れないシミが大事なシャツに付く危険を冒してでも、5人組のキュートなガールたちを絵にしたデザインを店員の女性に見られるのを防ぎたかったのである。無論、普段からこのような危険度の高いTシャツを着用している訳ではない。これからJuice=Juiceのコンサートを鑑賞するため中野に向かうのだ。

全国のいわゆるライブハウス(和製英語)を回るツアーを2014年の6月から続けてきた彼女たちだが、5月2日と3日に中野サンプラザ、5月23日に大阪のNHKホールで初めていわゆるホール(観客の一人一人に備え付けの席がある類の会場)で単独名義でのコンサートを実現させる運びとなった。私はファンクラブの先行申し込みで5月2日のチケットは落選し、5月3日の昼公演と夜公演が当たった。本来であれば初めてのホールでのコンサートに居合わせたかった。原宿の娯楽道に行けば5月2日のチケットを入手することは可能だったが、お金が無尽蔵にある訳ではないし、5月3日に2公演観られれば十分だろうと思いやめておいた。

ファンクラブが私に割り当てた席が昼公演は1Fの28列、夜公演は1Fの32列だった。32列というのは1Fの一番後ろの列だ。ハロプロのコンサートに来るのが初めてであればこの席でも純粋な気持ちでワクワク出来たかもしれない。それどころか、最初に2010年にモーニング娘。のコンサートを観に来たときは(別の会場だったが)2Fの最後列という一番ステージから遠い席だったが、チケットを手に入れた喜びが席への不満を遙かに上回っていた。しかしながら、あれから4年半の月日が経過し、数十回と場数を踏み最前列に近い席も何度か経験してきた今では、1Fの28列と32列というのはあまり乗り気になる席ではない。その上、中野サンプラザという会場自体がそれほど観やすい会場ではないので、実のところそこまで気は進まなかった。

昼公演は13時半開場、14時半開演。13時半ちょっと手前に会場に着いた。ぼちぼち入場が始まりそうだったが、あまり早く入ってもやることがないのでどうしようかなと思っていると、何やら音楽が聞こえてきた。ジャージ姿の若い女の子たちだった。いい時間潰しになると思い、3曲ほど見物した。演奏後にCD-Rとチラシをタダでくれた。Caramelというグループらしい。この名前ではエゴサーチしてもキャラメルの情報しか引っかかってこないだろうな。もったいない。Caramelの無銭現場が終わると14時くらいという、会場に入るのにちょうどいい時間になった。14時15分くらいから前座が始まるはず。この時間になると入場列はほとんどなくなっていて、スイスイ入れた。

1Fの28列は、思っていたよりはいい席だった。中野サンプラザに入る前にはいつも期待値を思いっ切り下げるようにしている。そうすることで、実際に入ってみると思ったよりいいじゃんという前向きな気持ちになれるのである。こぶしファクトリーの広瀬リーダーがあしの怪我のためopening actを欠場するとのアナウンスが流れた。あしって言うけど足と脚のどっちなんだろうか、英語だったらlegとfootで区別するけど日本語の場合は漢字で区別するから分からないよな、などと比較言語論的な思索を巡らす。場内にカントリーガールズのコマーシャルが流れる。島村嬉唄の台詞のところになると「フー!」というお決まりの冷やかしの声が会場に響きわたる。やっているのは一部の人間だけではない。島村さん人気あり過ぎだろ。

Opening actはこぶしファクトリーが「念には念」の1曲をやってすぐに捌けたのに対し、カントリーガールズは2曲を歌った上にトークの時間まであった。この扱いの差は何なんだ。メジャーデビューしたからか(こぶしファクトリーはまだインディーズ)? 嗣永桃子がいるからか? 実際のところ、嗣永プロのしゃべりで客席は確実に暖まった。今のこぶしファクトリーでは真似できない。Berryz工房として11年間の実績を積んできた彼女が新人グループの一員としてopening actを務める様には凄みがあったし、観る側にとっては何とも贅沢だった。こぶしファクトリーは広瀬リーダーの欠場により藤井さんがグループを代表してしゃべっていた。彼女はリーダーになりたがっていたはずなので、臨時ながらリーダー的な役回りが果たせて内心嬉しいのかもな、と不謹慎ながら思った。

コンサートが始まると、会場中がポジティブで祝賀的な空気に包まれた。メンバーたちもこの舞台に立てているのが嬉しくて嬉しくてしょうがないのが伝わってきて、まさしく晴れ舞台と呼ぶに相応しかった。私も感情が高ぶった。℃-uteの初めての武道館公演を思い出した。冒頭で高木メンバーが「今日はデーブイデー(の収録)が入っています!」と言っていて、わざとDVDのことをそう言って受けを狙っているのかと思ったら特にそういう訳ではなさそうだった。私は昨日の公演は観ていないので分からないが、おそらく昨日の反省を踏まえて改善されているのだろうし、昨日よりも落ち着いて歌って踊れているのだろうなと想像しながら観ていた。植村さんの歌声がいい毒気を帯びていて、thugなvibesがあった。ちょっと怒っているような、強気な雰囲気の声。私の右隣がガタイのいいあんちゃんで私の領域に少しはみ出してきたが、そいつが地蔵だったのが幸いしてほとんどぶつかることはなかった。

2014年11月26日に観に行った新潟公演で、私はJuice=Juiceの中では宮崎由加さんを推すことを決めた。宮崎さんのメンバーカラーはピンクである。よって持参した光る棒は当然ながらピンクを発光させたいところだったが、今日の昼公演ではそれが出来なかった。棒に入れてある単四電池がもう少しで切れるらしく、一部の色しか出なくなっていた。10色以上あるはずなのに5色くらいしか選べない。赤っぽい色は出せたので仕方なく金澤さんのオタクとして昼公演は乗り切った。とは言っても金澤さんそして宮本さんにも宮崎さんと遜色ないくらいに魅力を感じる。自分自身、誰を推していても不思議ではないくらいに素晴らしいグループなのである。ただ、宮崎さんがこのグループでは一推しと決めている以上はピンク色に光らせた棒を掲げて参戦しなければ示しがつかない。それが出来なかったのが後ろめたかった。昼公演の終演後、会場近くのDQNホーテに駆け込みカフェインなしのそば茶とともに単四電池6本を買った。

昼公演が終わると、たしかによかったけれどもこれをもう一回観るのはちょっときついな、という後ろ向きな気持ちが芽生えてきた。席もさらに悪くなる訳だし、あまり夜公演へのモチベーションがわいてこなかった。私はTwitterを見てCMJK氏が夜公演を観に来ることを知っていた。同氏はアンジュルムの「乙女の逆襲」やJuice=Juiceの「Ca va? Ca va?」の編曲をされた方である。私は氏の編曲が非常に好きなので今後も継続的にハロプロの音楽に重要人物として関わっていただきたい。そのためにも今日の現場でハロプロの音楽世界に好印象を持ってもらいたい。その意味で、18:30開演の夜公演がどういう出来になるのかは興味があった。

実際のところ夜は格別だった。昼公演もよかったが、映像作品として残すなら夜公演にするべきだ。1Fの最後列まで十分に伝わってきた。メンバーたちの表現力が昼公演の時点から既に上達しているようだった。歌が脳の痒いところを刺激してくるような爽快な感覚を、全員の歌声から何度も覚えた。特に宮本さんと高木さん。Soulがあった。脳にいいコンサートだった。宮本さんの身体のキレはまるでバルセロナにいた頃のロナウドのようだった。昼公演後のいまいち気乗りしない気分は、夜公演の終演後には「最高だった。昼夜公演は両方観た方がよい」に結論が上書きされた。宮本さんには歌にも表情にも踊りにも仕草にも荒削りさがなく、細部まで丁寧に仕上げられていて欠点がないプロのアイドルだった。高木さんは自分の声を完全に手懐けており自信に溢れた歌声で場を掌握していた。金澤さんの相変わらずの妖艶な歌声と表情には目と耳を奪われたし、みんな大好きというアイドル的な発言に嘘っぽさを感じさせなかった。植村さんは今では他の人には出せない特色のある歌声でグループ全体の歌にスパイスを効かせていた。宮崎さんはグループ結成当初の自信なさげな立ち振る舞いや悪目立ちがまったくなく、しっかりとパフォーマンス面で不可欠なピースとして光を放っていた。目を閉じて歌に酔いしれていると凄くきれいな歌声が聞こえてきて、これは誰だ?と思って目を開けたら宮崎さんで驚いた。

今日「Wonderful World」を初めて生で聴いた。これまでこの曲はそこまで好きではなかった。「この世界はスバラしいよね」という歌詞を聞く度にこの世界のどこが素晴らしいんだよと思っていた。脳天気な、お花畑的な歌だと思っていた。でも、夜公演にこの曲を聴いて、ピンと来た。彼女たちが歌っている「この世界」というのはこのコンサート空間のことなんだ。作詞者の意図は知らないが、自分の中でそう解釈することで勝手に腑に落ちた。まるでこの日のために用意された曲のように思えた。MCでメンバーたちは口々に中野サンプラザで単独コンサートを行うのが夢だったと言っていた。宮本佳林は感極まって涙ぐんでいた。私は何という素敵な空間にいるんだと思った。Juice=Juiceのメンバーたちの夢が叶ったその場に居合わせることができる幸せ。彼女たちが夢見てきた景色の一部になれることの幸せ。この世界は、スバラしい。