2017年11月29日水曜日

Seven Squeeze! (2017-11-20)

11月11日(日)に台湾式マッサージを受けても体調は好転しなかった。平日は仕事帰りの電車で酔って気持ち悪くなってしまう(自分自身がキモくなるという意味ではない)。iPhoneや本を見るのをやめても焼け石に水。18日(土)は外にいるだけでしんどかった。困ったときの葛根湯を服用して12時間以上の睡眠を取ったが、ほとんど治らなかった。19日(日)には頭痛がひどくなった。バファリンで何とかごまかして、カラダ・ファクトリーに駆け込んだ。元々、体調がこうなる前から予約していた。武道館の前日は身体を整えるタイミングとして最良だろうと思っていたのだ。結果的にその通りになった。この体調で明日を迎えるわけにはいかなかった。症状を訴えると、先生は私の首と顔を中心に歪みを調整してコリをほぐしてくれた。

「何か、上に来るんですかね? 僕、昔は腰が痛くて、それが治ってきたら背中になって、今度は頭で…」
「よく言われるのは、いちばん悪いところがよくなってくると、二番目に問題のあるところが浮き彫りになってくるということですね。もともと腰が悪かったのがよくなって背中に来て、今度は背中がよくなってきた分がこうやって頭に集中しているんでしょう」

「おそらくですが、最大の原因は眼(の疲労)だと思います。電車に酔うのは、そこから三半規管に影響が出ているんでしょう。眼と耳と鼻はつながっていますから」

最近カラダ・ファクトリーに通うようになって分かったのだが、身体の慢性的な張りやコリを治すには骨盤や骨格の歪みを調整する必要がある。単なるほぐしのマッサージだけでは一時しのぎだ。しばらくすると再発する。『なには友あれ!』(モーニング娘。)、19日(日)に受けたわずか40分の施術で問題は解消した。明らかに楽になったのである。電車に酔わない、頭痛のない、しんどさのない『新しい私になれ!』(スマイレージ)という願いは叶った。一日を楽しむのに支障をきたさない状態で月曜日を迎えることに成功した。危なかった。滑り込みセーフ。カラダ・ファクトリーのN先生が救世主。次に行ったときに心からのお礼を言いたい。

今日はグッズ販売が13時半から。当然その何時間も前から列はできる。昨年の武道館ではグッズを諦めたが、今回は日替わりを買う。今日は東京都に住むギャンブル依存症のロリコン、中島(仮名)と一緒に観る。彼と11時に新大久保駅の前で待ち合わせる。10時半頃、電車が遅れているから到着が11時18分になるという連絡が中島から入る。既に新大久保にいた私、風月堂に入る。チョコレート・ケーキとホット・コーヒーを頼む。800円。私が入った時点で他に客がいない。後から二人入ってきた。ケーキ、おいしい。Anker PowerCore 20100でiPhoneを充電する。Hunter S. Thompsonの“Songs of the Doomed”をカバンから出したが惰性でTwitterのTLを眺めていると中島が着く時間になって、結局は本を開かなかった。新大久保駅前のパチンコ屋の前で中島と落ち合う。彼は前に会ったときから髪がだいぶ伸びて椎名誠さんのようになっていた。私は中学生の頃、椎名誠さんの本が大好きで、たしか40冊くらい読んだ。ナングロ・ガル。中島はサマエボウジ1,200円。私はネパールローカル料理セット1,300円。私はいつもサマエボウジを頼んでいるので、店員さんはサマエボウジを私の前に置いた。違うと言うとびっくりして笑っていた。サマエボウジはおととい食べたばかりので、たまには違うものにしたかったのだ。

13時頃に武道館の前に着いてグッズ列じゃ「モロ最後部な奴ら」(ZEEBRA, “MR. DYNAMITE”)になった。中島という話し相手がいたし、何より中からリハーサルの音が漏れてきたので待つのは苦ではなかった。いわゆるネタばれではあるが、そもそもJuice=Juiceは持ち歌の数が限られているのでセットリストに驚きが介在する余地はほとんどない。『イジワルしないで抱きしめてよ』、“Fiesta! Fiesta!”、“CHOICE & CHANCE”、『地団駄ダンス』、『愛・愛・傘』、『東京グライダー』、『背伸び』、Ça va ? Ça va ?等が聞こえてきた。『地団駄ダンス』が漏れてきたときは嬉しかった。言ってみればイロモノの曲なので、一定の期間が終わればコンサートでやらなくなっても不思議ではなかったからだ。℃-uteの“The Power”も聞こえてきたときは、つばきファクトリーが前座のリハーサルをしているんだと思った。売り場に近づく。START POINTに雇われている案内係たちは不慣れなようで、勝手が分かっていない。窓口によって売っているものが違うようだ。売り場の手前にいた男の係員に日替わり写真はどこで買えばいいのかを聞いたらあたふたし始めた。不憫だったので「分からなかったらいいです」と言ったらすみませんと謝ってきた。その先にいた女の係員が「グッズによって列が分かれています」と言ってきたので「どう分かれているんですか?」と聞いたら答えられず、目が泳いでいた。彼女は私が窓口に並んでいると「そこはグッズ列に並ばないと行けません」と言ってきた。「並んでここに来たんです」と返した。13時から3時間近く並んでいたんだよと語気を荒げそうになったが、怒りを抑えた。労働者が労働者を責めてどうする。

「こういう派遣の人たちは歯の欠損率が高いんですよね」
「あー、何かそういう記事を読んだことがある。お金がなくて歯医者に行けないとか」

「みんな派遣なのかな? いつもいるリーダー的な人もいてね、そういう人たちはよく分かってるんだ。彼らも正社員じゃないのかな?」
「いやあ、正社員にはしないでしょう」

15時40分くらいに購入を終えた。DVD MAGAZINEのVOL.14と15。宮崎由加さん、宮本佳林さん、高木紗友希さんの日替わり写真。コレクション生写真3枚。その時点で日替わりの売り切れはなかった。コレクション生写真の内訳は梁川奈々美さん、金澤朋子さん、植村あかりさんだった。当然のように宮崎由加さんは当たらない。写真をアルバムに収め、中島と神保町方面に歩いた。17時までランチをやっている中華料理店に入ると、店主らしき紳士に何で来たんだというような顔で出迎えられた。メニューの品切れが多く、二つの料理を組み合わせられるコースも選択肢が炭水化物×炭水化物しかない。『炭水化物が人類を滅ぼす』(光文社新書)のである。話にならない。店を変えることに決めた。「また今度にします」と言うと、店主はそうだろう、むしろその方がこっちも助かるという顔で気持ちよく送り出してくれた。二度と来ないだろう。そこから10分ほど歩いた中華料理店に入った。あんまりおいしくなかった。ニラ玉は、自炊といえば納豆ご飯くらいしか作らない私でも作れそうなレベルだった。フェイクな飲食店。フェイクな町。池袋とは大違いだ。

17時半くらいに武道館の中に入った。A8ブロックの一番うしろだった。これはどうでもいいことだが、私は高校のときのクラスがA8組だった。A7ブロックを挟んでサブ・ステージがある。なかなか見やすそうである。前座はつばきファクトリー。彼女たちが今日のステージに立つのは朝の風月堂で知った。迂闊だった。事前に知っていれば小野(瑞)Tシャツを持ってきていた。周りを観るとちらほらつばきファクトリー構成員の名字が印刷されたTシャツを着ている人がいる。つばきファクトリーの衣装は『ハナモヨウ』。各人の自己紹介の後、就活グリーティングとサンライズ・ジャンプを一緒にやってくださいという岸本ゆめのさんの前振りで『就活センセーション』と『初恋サンライズ』が披露された。ヘルニアを抱える浅倉樹々さんは欠場。曲は盛り上がり、いい雰囲気だった。℃-uteのさいたまスーパーアリーナ公演の前座の、どこか冷めた感じとはだいぶ違った。Hello! Projectメンバーズがいつも座るエリアには、たしか二列目のこちらから見て右から三番目に牧野真莉愛さんがいらっしゃった。姿勢よく、微動だにせず、一人ポツンと真顔でお座りになっているお姿に気品を感じた。牧野さんの右上、二列後ろだったか、にはこちらから見て左から井上玲音さん、浜浦彩乃さん、広瀬彩海さんがじゃれ合っていた。浜浦さんは顔の大半をマスクで隠しているのに一目で判別できた。あとはHello! Project研修生。前田こころさんと西田汐里さんといった、『僕たち可憐な少年合唱団』で見た人たちもいた。開演の直前くらいにアンジュルムがゾロゾロ入ってきた。

コンサートが始まると、Juice=Juiceはサブ・ステージから登場した。一定数の観客はすぐには気付かず、メイン・ステージの方を眺めていた。全身白の衣装で、“Wonderful World”。これは2016年11月7日(月)の武道館公演の最後の数分間の再現のようだった。あの時間の続きのような感覚を覚えた。この曲といえば、観客の合唱である。はじめから我々に声を出させてぶち上げていく作戦かと思ったが、今回は合唱部分はなかった。他の違いとしては、歌詞が英語ヴァージョンだった。この曲における英語の発声は、金澤朋子さんが一番いい。この曲が終わると昨年の余韻を振り切るかのように衣装を変える。外側の衣装を下→上という二段階で脱いで、中には上下に分かれたお腹を出す衣装。Beyond the Beyondツアーの衣装と同じ方式であった。今回はさらにその状態から上にヒラヒラした布を羽織ったり、別の衣装に着替えたりしてくれた。武道館公演ではさすがにライブハウス(和製英語)公演よりも衣装が多く、目で大いに楽しませてくれた。海外公演の思い出映像を流してから“Ça va ? Ça va ?”で出てきたときの衣装は手が込んでいて、思わず双眼鏡で凝視した。黄色と黒のチェックのような模様が織り交ぜられていたのだが、もしかしてボルシア・ドルトムントのチーム・カラーを取り入れたのか?と思った。ドルトムントはワールド・ツアーの開催地の一つだったので。おそらくそういうわけじゃないだろうけど。全体を通してお腹を出してくれる時間帯が長かったのは嬉しかった。

Juice=Juiceがサブ・ステージに来たときと、ステージの右端(上手)の2階客席近くに来たときは近さを感じられた。そこからさらに双眼鏡で見ると大迫力だった。私の位置からはJuice=Juiceを左から、後ろから、前からとさまざまな角度から堪能することができた。去年はあえて双眼鏡を持参せず、ひたすらヴァイブスをぶち上げることに専念した。今日は要所では双眼鏡を使い、声を出すところではしっかり出す、バランスの取れた鑑賞スタイルを採った。私の左が空席だったので場所を0.5席分くらい広く使えて快適だった。去年に比べて今日の方が、Juice=Juiceも我々も地に足が着いた公演だった。経験者の五人(宮崎由加さん、宮本佳林さん、高木紗友希さん、植村あかりさん)の落着きが、主役として武道館に立つのが初めての二人(段原瑠々さんと梁川奈々美さん)の緊張をうまく包み込んでいたように思う。2016年11月7日(月)はひたすら感情の高ぶる公演だった。私はあのコンサートのソロ・アングルDVD(ファンクラブ会員向けに販売された、各メンバーだけを追いかけたDVD)の宮崎由加さんヴァージョンを所持している。このブツを再生すると始まった直後から彼女が涙ぐんでいるのが分かる。今日は終盤に段原瑠々さんが感極まっていたのを除けば、メンバーが涙を流す場面はほぼなかったはずである。昨年の武道館はMISSION 220というストーリーの締めくくりだった。その分、忘れられない、感動的な時間になった。一方で、時間がたってから動画で観たときに完成度が高いと感じるのは今日のコンサートだったと思う。Blu-rayで観るのが楽しみである。

よくも悪くも、ではなく、よい意味で「普通の」コンサートだった。もちろんクオリティが標準的だったとか、凡庸だったという意味ではない。今回はアンコールが一度で終わったが、これは盛り上がりの不足というより、むしろ「普通に完璧なコンサート」であったことの証左と受け止めるべきである。アンコールは重ねればいいってもんじゃない。今日のアンコールは、はじめは「ゆかにゃ、ゆかにゃ、朋子、朋子…」と年齢順にメンバーの名前を形式で沸き起こったが、浸透せずグダグダになった。武道館のような大きな会場でやるには難易度が高すぎた。結局、会場を支配したチャントはいつもの「ジュース! もう一杯!」だった。そのアンコールのチャントのせめぎ合いに、最後のサツアイで触れる宮本佳林さん。ファンの思いを感じ取り、泣いてしまったという。宮本さん曰く、次に武道館で公演をする機会があれば、年齢順に名前を呼んでほしい。やなみん(梁川さん)はカントリー・ガールズでのキャリアがあるので、最後はるるちゃんにしてほしい(我々のチャントは「るるちゃん」だが宮本さんは「るーる」と言っていた)。

アンコールといえば、「ジュース! もう一杯!」のチャントに合わせて小野瑞歩さんと秋山眞緒さんが身体を交互に寄せ合っていた(ジュース!で小野さんが秋山さんに寄って身体をぶつけ、もう一杯!で秋山さんが小野さん側に傾くという風に)。小野瑞歩さんはグレーのスウェットシャツ(最近よくリリース・パーティのリハーサルで着ているやつ)に青系の膝上丈スカート。たしかこっちから見て左に小野さん、右に秋山さんがいた。

前述したように、Juice=Juiceのコンサートでセットリストに驚くことはほとんどない。唯一“The Power”のイントロが流れてきたは観客がどよめいた。私もつばきファクトリーの前座用の曲だと思っていたので、おーって声を出してしまった。久しぶりなのに、乗り方を身体が覚えている。昔取った杵柄。自分は元Team ℃-uteなんだというのをつくづく実感する。過去のクラシックがスピンされてヘッズが活気づくのはつばきファクトリーのリリース・パーティでよくある光景である。なくなったグループの曲を、現存グループがこうやって歌い繋いでいくのは素晴らしいことだ。現行のサウンド・プロデュース体制がまともにアルバムも制作できない人たち(橋本慎さん)である以上、過去の資産を大切にする重要性はますます高まっているのである。11月11日(土)のBeyond the Beyondツアー大分公演で新曲『東京グライダー』と“Never Never Surrender”が初披露された。アプカミに公開された。私は予習しないで武道館に臨むつもりだった(曲の第一印象を現場で得るというのも、それはそれで贅沢な体験である)が、段原瑠々さんが何度も観ておくようにとブログで要求していたので従った。何回か観た感触では『東京グライダー』が好きだった。開演前に中島は、この曲が東京女子流っぽいと言っていた。曲が始まると武道館のモニターに作詞・作曲・編曲の名前が出てきたのだが、編曲は松井寛さんという方だった。私は知らなかったのだが東京女子流の音楽に深く関わっている方らしい。コンサート後に中島から薦めてもらった東京女子流のアルバム“Limited Addiction”を聴いたらとても気に入った。これを書いているのは11月29日(水)だが、25日(土)から毎日一回は聴いている。グルーヴィーで、ソウルがあって、まさに私の好みにドンピシャではまる。その音の世界が単発のシングルやトリプルA面(今のHello! Projectの得意技)ではなく、フル・アルバムの長さに閉じ込められている。今のHello! Projectでは成しえない仕事である。自分の好みにピッタリ合致する作品に出会えたことを喜ぶとともに、Hello! Projectの現状が悔しくなった。橋本慎さんと松井寛さんをトレードしてほしい。Juice=Juiceに“Limited Addiction”をカヴァーしてほしい。彼女たちが歌ったらどう聞こえるのだろうかと想像しながら聴いてしまう。

私はHello! Projectがアルバムという単位で音をプロデュースできないことに対する不満を強く抱いている。ただ、曲単体で見ると良質なシットはそれなりにドロップされている。児玉雨子さん、CMJKさん、中島卓偉さんといった才能がHello! Projectの楽曲に関わるようになったのはポスト・つんく時代の明るい部分である(CMJKさんは最近は出てこないが…)。橋本慎さんの功績として認めるべきであろう。最近のJuice=Juiceだと『この世界は捨てたもんじゃない』が私はとても好きで、公演で聴けないと物足りない身体になりつつある。今日のコンサートでやってくれたのは嬉しかった。“Magic of Love”の大団円で、声を出し切った直後に『この世界は捨てたもんじゃない』が始まったのにはびっくりした。当然のように息を切らさずきれいに歌いきるJuice=Juice。(“Magic of Love”といえば、我々の「ここだよ朋子!」チャントは完全に浸透しているとアリーナの最前線からは感じられた。相当な音量になったのではないだろうか?)

Juice=Juiceらしい、トークはほどほどの、楽曲の波状攻撃だった。トークでいちばん私が笑ったのが、加入当初は先輩が恐かったという段原瑠々さんに「誰がいちばん恐かった?」と高木紗友希さんが聞いて、「やっぱり…金澤さん」と段原さんが答えた場面。え?私?という金澤朋子さんの顔がモニターに大写しになる。(この金澤さんを映すところはバッチリだったが、その他の場面では映像の切り替えタイミングがうまくいっていないことが多い印象を受けた。)「だよねー、普通に考えて」と追い討ちをかける植村あかりさん。最もしんみりしたのが、新メンバーが入るかもしれないと聞かされた際、最初はイヤだったと金澤朋子さんが吐露した場面。素直な言葉は人の心に響く。実際に梁川さん・段原さんと対面してからはすぐに考えが変わったと続ける金澤さん。

『Goal~明日はあっちだよ~』でタオルを振り回すようにJuice=Juiceは要求してきた。この曲ってタオルを使うのが通例になっていたっけ? 恥ずかしながら把握していなかった。ペンライトで代用した(代用できていない)。タオルね…。たしかに一体感は演出できるし絵としては爽快だが、湘南乃風じみたことはやらなくてもいい。

グループの増員に伴って中島卓偉さんが書き直した“GIRLS BE AMBITIOUS”の新リリックはちょっとやっつけに感じた。内容的に、今ははまるかもしれないが、賞味期限が長くなさそうな印象。半年に一度くらい更新していくのであれば理解ができる。

私の前列に、スティンキーな(2012年8月11日に秩父・両神山で11時間の登山を終えた私のような臭いの)紳士がいた。常にそのスメルと対峙しながらの鑑賞となった。でも、昨晩に受けた整体のおかげで体調がよかったし、クリアな頭で、集中してコンサートを楽しむことができた。幸せな時間であった。今日は金澤朋子さんから嬉しい知らせがあった。来年のJuice=Juiceは全国のライブハウス(和製英語)での公演を続けていくのに加えて、4月28日の静岡を皮切りにホール会場を回るツアーを開催する。私はエグゼクティブ会員の限定特別シートで広島に応募し、当選した。あとは静岡と中野に申し込んだ。

2017年11月24日金曜日

僕たち可憐な少年合唱団 (2017-11-11)

体調がよくない。といっても熱があるとか咳が出るとかそういう分かりやすい症状がない。目覚めが悪い。日中も微妙にしんどい。帰りの電車ではほぼ必ず寝てしまう。夏にもこういう時期はあった。ここ何ヶ月かは平気だったのだが、再発している。こういう具合のときは早起きして会社に行って朝から夜まで最低限のことをこなして帰るというルーティンに耐えるのが精一杯だ。その平日の流れを断ち切れなかった。疲労感を引きずったまま目覚めた土曜日。真野恵里菜さんの名盤“More Friends Over”を久しぶりに聴きながら埼玉から東京へと向かった。新大久保「ナングロ」でサマエボウジを食った。池袋「フラミンゴ」でコーヒーフロートを飲んだ。ポメラDM100を開いてブログを書こうとした。思うように進まなかった。

今日も先週に続き池袋で演劇女子部。15時からの♭公演と18時半からの♯公演。先週も今日も全部A列だったが、実際に座ってみた感触としてはA列よりもB列の方がよかったと思う。というのが、A列の前に段差なしで3列追加されているので。B列はそこから一段上なんだ。とはいっても、私の前にはいい具合に空席が二、三個あって(あんな良席をもったいない…)視界がよく、ストレスなく、間近で舞台を堪能することができた。A列の中央ブロックだけなぜか椅子にクッションが置かれていた。そのおかげもあってケツの痛さで集中を切らすということもなかった。ただ、自分の調子が整っていなかった。残念なことに、15時の♭公演では途中で少し寝てしまった。18時半の♯公演では何とか回復し、起きたまま観ることができた。(そのかわり隣の紳士が居眠りをしていた。親近感を覚えた。)私が何かの公演中に寝るということは基本的にない。普段からちゃんと寝ているし、週末に影響が出るほど平日の仕事で無理もしない。最近ではほとんど残業すらしていない。記憶にある限り、私が寝た最後の現場は2012年12月31日から2013年1月1日にかけて行われた坂本真綾さんの年越しコンサートである。あのときに関しては時間が遅かったからしょうがない。寝てる時間だから。

♭公演は、♯公演と内容が違うのではないかと私は予想していた。♭チームの四人は、先に私が観ていた♯公演ではヒールだった。コンテスト優勝を目指すHグループの四人から自信を奪おうとしてくる、Aグループの四人であった。そのAグループの視点から、♯公演とは同じ期間を描きながらも別の視点からのストーリーが展開されるのではないかと思っていた。視点を変えれば実は彼女らにも感情移入すべき事情があって、それが描かれるのではないかと思っていた。実際に観てみると、内容は同じだった。もちろん細かい部分は違ったけれど(たとえばHグループを嘲笑した後の、Aグループ全員の声を揃えての笑い方)、役も台詞も歌も一緒だった。

このミュージカルの最終公演は観客のアンケート投票でどちらのチームになるかが決められる。私は三回とも、♯に投票した。先週は片方しか観ていなかったので判断のしようがなく、困ったが、♯にチェックを付けた。

というところまで、11月19日(日)に、バファリンでもサファリン(sufffering)を抑えきれない頭痛を堪えながら書いた。限界が来て筆を置いた(ポメラを閉じた)。以降は11月23日(木・祝)と11月24日(金)に万全の体調で書いている。

♭チームの公演を実際に観て、♯チームの方が全般的に完成度が高いと感じた。もちろんアイドルを比較してどっちの方がよかったとか悪かったとかを語るのは野暮である。エンターテインメントはスポーツとは違う。『みんなちがって、みんないい。』んだし、成長の余地を楽しむのもアイドル鑑賞の醍醐味である。でも、このミュージカルに関してはある程度、優劣という観点から比較せざるを得ない。最後の公演をどちらのチームが務めるかを観客の投票で決めるということ自体がそれを促しているわけで。考えてみるとこの投票制度は合唱コンクールで優勝を目指すという劇の設定にリアリティを持たせるための仕掛けなのかもしれない。劇の中でAグループとHグループが争っているのと同じように、リアル・ライフでも♯組と♭組が最終公演の主演を巡って争っているというね。先週の投票を仮にやり直せたとしても結果は変わらない。

私がこのミュージカルを観たのは♯2回、♭1回である。ファンクラブ先行で申し込んだ時点では、どちらの公演に誰が出るかは分からなかった。そもそもHello! Project研修生が出演するというだけで、具体的に誰が出るのかすら明らかにされていなかった。それでいい。ホンモノは「演劇女子部」「Hello! Project研修生」という情報だけで申し込むのである。出演者の割り振りが発表されると、♭を二回にしたかったと思った。なぜなら♯組には私が注目する研修生は特におらず、一方の♭組には研修生発表会を観て気になっていた金津美月さんがいたからである。でも実際に観て、♯公演が二回でよかったと思った。

私にそう思わせたのは、西田汐里さんと島倉りかさん。このお二人は私に強い印象を与えた。西田汐里さんは本当に声が魅力的。声量も安定していて、彼女の歌声には場を引き込む力がある。彼女が一人で歌うとそこは西田汐里ワールドになる感じがした。島倉りかさんは、ヴァイブスが抜きん出ていた。ステージにいるだけで、この子はちょっと違うんだなというスペシャル感があった。演技も役に入り込んでやりきっていた。今日はポスト・パフォーマンス・トークがあった。新たな面を発見したメンバーというお題。この劇における島倉さんが普段とあまりに違って共演する研修生たちも戸惑っているというのが話題になった。堀江葵月さんは、島倉さんはいつもおっとりしていて研修生の間では山岸理子さんに似ていると言われている。けど安藤(Aグループの意地悪な生徒役)を見てびっくりしたのだという。「金津ちゃんからも『意地悪なの?』と聞かれたんですけど、違うので。そう思わないでください」と島倉さんは笑った。「演技がうまいんだね」と誰かが言うと島倉さんは反射的に「はい」と答えて、違う違うという感じで顔の前で手を振っていた。笑いが起きた。西田さんと島倉さんには今後も注目していきたい。

先週に観たときに比べて観客の温度が低いと感じた。意外だった。なぜなら公演を重ねるごとに演者も観客もこなれてきていい雰囲気が醸成されていくものと認識していたからだ。先週は開演直後に拍手が起きたが今日は昼も夜もなかった。あと、先週は笑いが起きていたところで起きなかった。もしくはごくわずかだった。かくいう私も先週の方が声を出して笑っていた。先週は終演後に私の近くで「(自分がこのミュージカルを観たのは)何回目? 覚えてねえや」「これまでの(開催された)公演を数えれば自ずと分かるだろ」という会話が交わされていた。彼らは極端にしても、何度も観る人にとっては、話の内容も、劇中の細かい笑いどころも、少し浅かったかもしれない。

20時半から池袋で90分6,000円の台湾式マッサージを受けた。この店は着替えが生臭いのと客がケチくさい(細かい値段について揉めているのが聞こえてくる)のを除けば非の打ち所がない。帰りの電車である駅に着いたところ、プラットフォームで酔っぱらいらしき紳士が三人の駅員たちの手で車椅子に乗せられて搬送されるという光景が私の眼前で繰り広げられた。

2017年11月12日日曜日

つばきファクトリー 小片リサバースデーイベント2017 (2017-11-06)

タイミングよく上司が目眩と吐き気を訴えて早退したため、誰に断ることもなく16時すぎに会社を出ることができた。向かう先は半蔵門。TOKYO FM HALL。小片リサさんのバースデー・イベント。その前に新宿。飯屋を探してさまよった結果、歌舞伎町、川香苑。麻婆豆腐(1,080円)とご飯(300円)と麦焼酎(500円)を頼んだ。間違えて芋焼酎を入れたので芋焼酎でいいかと聞かれ、戸惑いながらも了承した。会計のときにはきっちり600円(芋焼酎の値段)を取られた。だからというわけじゃないが、夜に一人で入ってサッと食って出ていく店としてはいまいちだ。川香苑は。二人以上で歓談しながら飲み食いをしないと金額分の価値がない。「ぼったくり条例 そんな法律あてにならねえ 結局最後は自分で自分守るしかねえ」(MSC、『新宿U.G.A. Remix 03'』)。地下鉄で半蔵門。駅の周辺を少し散策して気付いたが、意外と店がある。次回はこの辺で食おう。U.S.A.のトランプ大統領が来日中。東京都では駅のゴミ箱を封鎖するという最先端のテロリズム防止策が施されている。意味があるのか? TOKYO FM HALL付近にもpopo(警察官。Kendrick Lamarの曲で学んだ。日本語でいう「お巡り」のような感じだろう)がうろついている。そういや皇居が近いのか。開演が19時45分、開場が19時15分。19時すぎにTOKYO FM HALL前に着いた。うつむいて電話をさすっていると目の前に警棒を持ったpopoが現れた。『フルートベール駅で』『ストレイト・アウタ・コンプトン』といった映画を観ている私はpolice brutalityを警戒し思わず身構えたが、何もしてこなかった。

おまいつさんがたくさんいる。小片リサさんといえばこの人というあの有名な青年。ド派手な柄物に定評がある彼が今日はモノトーンでお決めになっている。その取り巻きとされる、顔付近に身体の脂肪をかき集めてきたような紳士。ハロコンの度に中野サンプラザ前でよくコレクション物のトレーダーをなさっている紳士。新沼希空さん支持者の有名な紳士。今日はスーツを着用されている。労働に従事されているのか。いつぞやの金澤朋子さんのバースデー・イベントでステージに上がってゲームに参加された、最近のハロコンでは自作らしき小野瑞歩さんのTシャツをお召しになっている紳士。入場。今日は後方の左端。勝負服なのかいつもユーズド加工でボロボロに破れたパンツをお履きになっている50代とおぼしき紳士が通りがかり、ギョッとする。なぜなら彼は公演中に帽子を脱がないからだ。でけー黒いハット。近くに来たら厄介だ。この紳士を初めてお見かけしたときはが客席に紛れ込んだのかと思った。それくらいに服装が独特の雰囲気を放っている。孤独で独り身のままファッションを変にこじらせたらああなり得るというのは私も痛いほど分かる。私もかつてはヨウジ・ヤマモトの信者だった。私はヨウジの服をほぼすべて捨てたか売ったが、信者のままだったら彼のようになっていた可能性がある。私は彼の中に、そうなっていたかもしれない自分を投影しているのである。だからこれはディスではない。ピース。結局、彼の席は前方中央付近だったから私は何を逃れた。後ろの人たちは災難である。こんなイルなヴァイブスの紳士が高速握手で流れてきても目を合わせニコッとして「帽子がお似合いですね」と咄嗟に言える小野瑞歩さんは、ワイの天使なのである。他にも、さまざまなHello! Projectメンバーさんのバースデー・イベントに顔を出しその度にメンバー・カラーの派手な服で決めてくる紳士がいた。今日はオレンジ。想像だがいつもドンキホーテのパーティ・グッズ売り場あたりで調達しているのではないだろうか。

小片リサさんは、ステージに出てきた瞬間からめっちゃ美人だった。髪の毛がツヤツヤ。薄オレンジのドレスがきれい。司会は鈴木啓太。ジャケットの中にオレンジのシャツを着ている。この方からメッセージが来ています、え、誰?というお決まりの展開。画面に映ったのは福田花音さん。私は喜び驚く気持ちが半分、苦い気持ちが半分。福田さんはTwitterを始めてから私からのプロップスをだいぶ落とした。作詞家という自己像と、我々の目に入ってくる活動とのギャップ。Hello! Projectを辞めて、約2年。片手で数えられるほどのリリック。数え切れないほどのTwitterとInstagramへの投稿。もちろん歌詞はボツ作もたくさん書いてはいるのだろう。それくらいは分かる。けどさ。地道な創作活動に耐えきれず、SNS更新でお手軽に承認欲求を満たさずにはいられない。有名人ではあり続けたい。私はそういう自己顕示欲の強さを彼女から嗅ぎ取ってしまう。それが私が「作詞家」福田花音を素直に好きになれない部分だ。彼女のリリックにケチを付けているわけではない。特に『明日やろうはバカやろう』は好きだ。Juice=Juiceの現場で盛り上がる定番曲。その福田さんから小片さんへのメッセージは、「私のことを好きと言ってくれる人がHello! Projectにいると、私がHello! Projectでやってきてよかったと思える。私のどこが好きかを人づてに聞くと、マニアック。ふくらはぎが好きとか、私と同じアクセサリーを買ったとか。ガチオタだなと。嬉しい。今度、食事、買い物、カラオケに行こう」的な内容だった。ハッピー・バースデーの歌は名前のところが「リサちゃん」だったが、福田さんがその前に「せーの」を入れないから我々のタイミングが統一できなかった。これは新沼希空さんのバースデー・イベントのときに映像で出演した石田亜佑美さんもそうだった。何年やってるんだ。映像を観ながら小片さんは何度も指を目の下にやっていた。涙が出てきたようである。ふくらはぎが好きなんだって?という鈴木さんの問いかけに、この辺なんです、と自らの脚を指さした。ふくらはぎの下部、くるぶしに近い位置だった。

つばきファクトリーのメンバーがブログに載せている写真から、あざとさランキングのトップ3を発表。診断を下すということで先生っぽく見せるためにドレスの上から白衣と黒縁メガネを着用する小片さん。こうやって変化を付けて我々を楽しませてくれるのは理解(わか)っている。3位は小片リサさんご自身。両手を握ってお顔の下に持ってきている写真。目線。目が合っているような、目の前にいる感じ。2位は小野田紗栞さん。萌え袖。口の形。「こんな口の形してるの見たことない。写真でしか見られない表情だなと」。1位は新沼希空さん。制服を着て、顔を両手で隠している。最後に自分はつばきファクトリーの中で何番目にあざといと思うかと鈴木さんから聞かれ、「7位」と答える小片さん。観客からエーイング。「え? そう?」。小片さんがあざといポーズをいくつかやって、鈴木さんがスマートフォンで撮影。「後で俺のTwitterに載せる。そうすると上がるので(たぶんRTとかふぁぼとかフォロワー数が伸びるという意味)」。

小片さんのジェスチャーをファンが野次で当てるジェスチャー・ゲームを経て、新しい特技の披露。タップ・ダンス。何でタップ・ダンスを選んだのという鈴木さんの問いかけ。Hello! Projectでできる人が今はいないのでやってみようと思ったという小片さんの答え。私は感心した。発想が戦略的というか。他の人ができないことが自分の強みになるというのをよく理解した発言である。どれくらい練習したの?という鈴木さんが聞くと、3回、1時間ずつという小片さん。3時間の練習で特技にするのかと笑う鈴木さん。タップ・シューズに履き替え、スタッフが運んできた木の板に乗ってダンスする小片さん。手拍子を促すが、みんながクラップをするとタップが聞こえなくなる。それにみんな気が付き一部の人を除き手拍子をやめた。自己採点は92点。鈴木さんによると1公演目は84点だったので上達したそうだ。無表情で淡々とやっていたので、次はもっと表情を付けてやるべきだと指摘する鈴木さん。靴を履き替えるために捌ける際にニコニコする小片さんを見て、「そうそんな感じで」と鈴木さん。小片さんが捌けている間を埋めるために鈴木さんがタップ・ダンスをやったことがある人がいるか客席に問いかける。前方の中央付近の老紳士が挙手。一ヶ月くらいやっていたそうだ。どうでしたかと鈴木さんが聞くと、3時間やったらあんなもんだろうと老紳士は答えた。

ミニ・コンサート。
1.“Moon Power”(Berryz工房)
2.『秋麗』(モーニング娘。)
3.『Don't STOP! 恋愛中』(T&Cボンバー)
4.『co・no・mi・chi』(Buono!)
5.『シューティングスター』(スマイレージ)
『Don't STOP! 恋愛中』というのが、私にとっては初めて聴く曲だった。いい曲だと思ったし、今回の5曲では最も小片さんの魅力を引き出していると感じた。声に合っているというか。ミニ・コンサートを終えた小片さんは、一人でこんなに歌うことはなかなかないと言っていた。多人数グループにあって一人の歌唱をこれだけじっくりと聴ける機会は他にない。それがバースデー・イベントの醍醐味である。この子はこういう声をしていたんだとか、こういう歌い方もできるんだ、という発見がある。最後のお見送りでは「おめでとう。衣装きれいだった」と私が言うと「あーありがとう」と小片さんは言ってくれた。コスプレ感が出る前に制服を着ておきたいというご本人の意向でお見送りの衣装はセーラー服だったが、一瞬だったし、目を見て言葉を交わすのに精一杯で、制服を凝視する余裕はなかった。そういえば書くのを忘れていたが、小片リサさんは昨日で19歳になった。

僕たち可憐な少年合唱団 (2017-11-04)

ハロプロ研修生が主演の演劇女子部『僕たち可憐な少年合唱団』を観させてもらいました。以前に行われたミュージカルの再演らしいのですが、私は元を知りません。もちろんハロプロ研修生発表会には何度か入っているので出演者の皆さんを知らないわけではないですが、特別お目当ての出演者がいるわけでもない。ですので、なぜ自分がチケットを手にして会場に足を運んだのかがよく分かりませんでした。席に着いてからふと冷静になって、奇妙な気持ちになりました。しかも今日だけじゃなくて来週も観るんですね。計3公演。アンジュルムの『夢見るテレビジョン』は1回だけなのに、なぜこっちは3回入るのか。首を傾げざるを得ません。逆じゃないでしょうか。『夢見るテレビジョン』を3回、『僕たち可憐な少年合唱団』を1回にするべきだったのでは。せめて2回ずつですよ。まあ思い返すとファンクラブ先行受付の時点ではJuice=Juiceとつばきファクトリーのスケジュールが出ていなかったので申し込みには慎重にならざるを得なかったのと、私の中でのアンジュルムの優先順位が大幅に落ちていたのが大きな要因でした。

池袋「みなと」で刺身定食1,620円をいただいてから、シアターグリーン BOX in BOX THEATERに歩きました。このミュージカルは回替わりで♯(シャープ)公演と♭(フラット)公演の二種類があります。今日、私が入ったのは15時開演の♯公演でした。来週の土曜日にも二回、観させてもらうのですが、アップフロントが私に送付したチケットは三枚ともA列でした。最前と思っていましたが、違いました。A列の前にパイプ椅子が3列設置されていました。真の最前は普通のパイプ椅子とは違う、ミニチュアのような椅子でした。ふくよかな方は収まらないかもしれません。出演するハロプロ研修生は8人。堀江葵月さん、野口胡桃さん、西田汐里さん、島倉りかさんが♯組。前田こころさん、金津美月さん、小野琴己さん、山田苺さんが♭組。彼女たちにはまだ目立つほどおまいつが付いていないのでしょう、見覚えのある人は最前付近にいませんでした。(つばきファクトリー主演の『ネガポジポジ』ではいつも例のあの人が最前にいました。)本当にステージのすぐ前まで椅子が置いてあって、前方は下北沢の小劇場(何度か行ったことがあります)的な距離感でした。そう、そこはまるでシモキタ。席を埋めていたのはキモオタ。

話の内容が分かりやすく、暴力や過激な描写もなくて、安心して観られるミュージカルでした。堀江葵月さん、野口胡桃さん、西田汐里さん、島倉りかさんは、音楽学校の級友。同じ寄宿舎に寝泊まりしています。一週間後に迫ったコンクールに向けて練習をしているのですが、チームがまとまりません。そんなとき、西田さんの中身が少年に入れ替わってしまいます。他の三人が戸惑っていると、守護天使(高橋愛さん)が現れて事の顛末を説明します。西田さんに乗り移ったのはウィーン少年合唱団の少年で、友人をかばって車にひかれて亡くなりました。彼が成仏して西田さんの身体から抜けるには、夢を叶えてあげる必要がある。それはウィーン少年合唱団のコンサートで歌うこと。実現したと思わせるためには一週間後のコンクールで優勝しなければならない。一週間という制限時間の中で、西田さんの中にいた女の子を取り戻すためにチームが一体となってコンクール優勝を目指します。西田さんに合わせるために、残りの三人も一週間は少年になりきります。もう片方のチーム(前田こころさん、金津美月さん、小野琴己さん、山田苺さん)は要所でヒールとして登場します。自信をなくさせようとしたり、チームの分断をはかろうとしてきます。物語が終盤にさしかかるにつれ、西田さん(に乗り移った少年)にとって大事なことは大きな舞台で歌うことではなく、大好きな友達と歌うことだったということが判明します。

このミュージカルの内容には、彼女たちがHello! Project研修生として置かれている現実と重なる部分があると感じました。この演劇における音楽学校をHello! Projectに置き換えると、ウィーン少年合唱団はもっと大きな動員力を持つ事務所になるでしょう。劇の中のコンクールやコンサートは、たとえば日本武道館、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナといった大会場でコンサートをやることと置き換えることができます。大事なのは規模ではない、好きな仲間と好きな歌を歌うことだ、というのがこのミュージカル内で彼女たちたがたどり着くメッセージです。私としては、彼女たちには大きな会場でコンサートをやってみたいという野望を胸に抱いてほしいです。お友達と歌えればいいのであれば、そもそもデビューする必要すらないですからね。とはいえ、規模の拡大には限界がありますし、それだけを追い求めても自分を見失ってしまうかもしれない。その意味で、前述の教えは、彼女たちが今後アイドルとして活動をしていくにあたって立ち返るべき原則と言えるのかもしれません。どうやったらうまく歌が歌えるようになるのか、と聞く島倉さんに、西田さんが答える場面があります。彼女(彼)の答えは、上手く歌おうとしないこと、歌を楽しむこと、という二点でした。こういった台詞も、このミュージカルに関わった大人たちから出演したHello! Project研修生たちへのメッセージのように思えました。

私に最も強い印象を与えたのは、西田汐里さんです。開演するまでまったく注目していなかったのですが、紛れもなく本公演のMVPでした。声が魅力的で、声量にも安定感がありました。ずっと聴いていたい歌声でした。次点は、島倉りかさん。間近で見るとアイドルとしてのヴァイブスを強く感じました。演技では細かい表情の使い分けが見事でした。あまり注目していなかったこの二人に引きつけられました。この二人だけでなく、全員よかったですけどね。

研修生の他には高橋愛さんと扇けいさんが出演していました。扇けいさんは寄宿舎のシスター役でした。歌って踊る高橋愛さんを観られるというのは地味に凄いことです。何せタカハシステムという言葉を生むくらいに一時代を築いた方ですからね。容姿と技量において長い間、モーニング娘。の中心にいた人です。当時を知る身からすると、数メートル先にあの高橋愛さんがいるというのはちょっと緊張を伴う体験でした。私にとってはステージでご自身を表現する高橋さんを観るのは2011年9月29日(木)の日本武道館以来でした。

2017年11月5日日曜日

We are MORNING MUSUME。 (2017-11-03)

あまり大きな声じゃ言えないが、グラム5.6円でハイになれるブツを売ってくれる店がある。横浜駅西口。モアーズ。8階。ハングリー・タイガー。取引開始の11時にはいつも20人近くのジャンキーが上物を求めて待っている。440グラムで2,470円。この値段で、付け合わせ、パンか米、飲み物まで付いてくる。静岡にも有名なディーラーがいる。私はそっちのお世話になったことはないが、こっちが一番だと自信を持って言える。通常のサイズは220グラム。440グラムというのはダブル・ハンバーグ・ステーキ。ちょいと多すぎるくらいだが、わざわざ前後の食事を軽くしてでもダブルに挑戦する価値がある。私を横浜に呼び寄せたのは15時からパシフィコ横浜で開催されるモーニング娘。のコンサート・チケットである。でもこの公演に申し込むにあたって、このドープなレストランの存在が動機の一つであったのは間違いない。モーニング娘。のコンサートを観に来るのを口実にハングリー・タイガーに来たと言っても過言じゃないくらい、好きなのである。老人になっても、ダブルは無理にしてもここのハンバーグをおいしくいただける身体でいたいものである。

SKE48の現場に通うイルなブラザー(東京都に住むギャンブル依存症の無職・中島)も、スター・ダストからHello! Projectに流れてきたイルな名古屋のブラザーも、Hello! Projectの現場をご一緒した際、異文化体験だったと異口同音に言っていた。私にとっても、モーニング娘。の現場は異文化体験だった。何せ、このグループの単独コンサートに私が参上するのは一年半ぶりなんだ。会場に着くと若えのがたくさんいるし、ぱっと見3割くらいはナオンである。同じ団体の興行なのを疑うほどにJuice=Juiceとは雰囲気が異なる。一般社会に溶け込んでいる、とまでは言えないが、会場前で開場を待つ人だかりはオタク特有の邪気をそれほど発していなかった。目の前に海が広がる爽やかな空間が認識に補正をかけている可能性はあるが、それを差し引いても客層が違う。以前、Juice=Juiceの宮本佳林さんがもっと女の子に応援してもらえるようになりたいとブログに書かれていたけど、それを叶えるにはモーニング娘。に入るのが手っ取り早いんじゃないかな、と思ってしまう。男性陣には安定感がある。「MM☆ Reina Tanaka fanclub tour in FUKU★KA 2011.11.11-13」と背中に印刷された、ボロボロに色褪せた(どんだけ着てるんだ。他に服を持っていないのか?)hoodieを着用する「ホンモノ」の紳士。皆さん服装がちょっとアレなのはいいとして、寝癖さえ直していないのは何なんだ。寝癖がつくほどの髪の毛がない人と合わせると過半数を占めるのではないか。彼らは身支度の一環として朝にシャワーを浴びないのか? どういう生活をしているんだ。

深夜からグッズ列に並んでいる人がいたという情報をTwitterで見ていた。だから半ば諦めていたが、売り場を覗いてみると意外に並んでいなかった。私がDVD MAGAZINE vol.101と牧野真莉愛さんの日替わり写真とコレクション生写真2枚をゲトるのに5分とかからなかった。販売の窓口が40くらいあった。さすが天下のモーニング娘。。13時過ぎの時点で日替わりは誰のも売り切れていなかったので、一部の人たちが深夜から並んでいたのは意味がなかったね。

何かしらCDをコジキろうと目論んでいたが、配っているオジキがいなかった。会場前のコンクリートに腰掛ける。海を眺める。思い出す。あれは2013年の6月。℃-uteのコンサートを友人二人と観に来た。そのときにもちょうどこの辺に座った。その様子は一瞬だけ『ハロー!SATOYAMAライフ』(今の“The Girls Live”の枠で放映していたテレビ番組)に映った。私の右に座っていた人物は2014年11月のJuice=Juice新潟公演を一緒に観て新幹線のプラットフォームで別れたのを最後に音信不通になった。もう二度と会わないのかもしれない。

過ごしやすいにも程がある清々しい日。しかも会場と海の間は公園になっていて。もう、野外飲酒、待ったなしですよ。いま飲まなくていつ飲むんだと。今でしょ、っていうね。と言いつつ、飲まなかったけど。この陽気と気温は6月11日を思い出すな。新潟。屋外。つばきファクトリー。

私のチケットに印字された席は20列だったが、意外と近かった。最前が10列くらいだったので、実際には10列目くらいだった。しかもど真ん中で、ゼロの位置だった。ここから目撃するモーニング娘。のショウは、壮観であった。14人いるからこその圧力、熱量。どちらが優れているという問題ではなく、7人のJuice=Juiceとはまた違う表現を見せてもらった。14人ともなると、ソロ・ラインがほぼゼロに近いメンバーもいるわけですよ。主要なソロ歌唱は小田さくらさん、譜久村聖さん、佐藤優樹さんあたりが受け持っている。彼女らの歌が骨組みのように曲を支えて、安定させている。他のメンバーたちは脇を固める存在だった。でもダンスではそういうことはなかった。歌で出番の限られるメンバーもダンスではアクロバティックな見せ場を与えられていたりして、総合的に見ると、主役と脇役という棲み分けは感じなかった。

私はモーニング娘。の中では牧野真莉愛さんがいちばん好きでね、その割に彼女がホストを務めるラジオ番組『牧野真莉愛のまりあんLOVEりんですっ』をちゃんと聴けていなかったんだ。だからこの一ヶ月で未聴だった50数回分をまとめて聴いた。この番組ではおバカな一面を見せている彼女だけど、ステージで歌って踊るとヴァイブスが違う。同じ人とは思えないくらい。まずスタイルがずば抜けている。大人数でステージに立ってもすぐに目立つ。そして、笑顔の力がひときわ強い。表情から心から楽しんでいるのが伝わってきて、こちらも笑顔になってしまう。モーニング娘。の全員にその技能が備わっているけど、牧野真莉愛さんの笑顔はひときわ強い。たとえばモーニング娘。をよく知らない人を初めてコンサートに連れてきたとして、誰が牧野さんかを理解させるのは難しくはない。一番スタイルがよくて、ニコニコ・キラキラしていた子と言えば分かるはずである。今日も開演の直後から、牧野さんすげーなって。圧倒された。主に彼女を観ざるを得なかった。

このツアーに限らないが、モーニング娘。の衣装はお腹をふんだんに見せてくれる。Juice=JuiceのBeyond the Beyondツアーくらいのを当たり前にやってくれる。これはHello! Project全体が倣うべきベスト・プラクティスである。Hello! Projectメンバーのお腹(もっと言えばおへそ。何度も書いているが、Hello! Projectはおへその国なのである。)は文化遺産であり、隠すのは文化的な損失なのである。「生み出す文化遺産 薬にたとえるなら太田胃散 心に残す壮大な資産」(ラッパ我リヤ、『七人の侍 feat.三善/善三、GINRHYME DA VIBERATER, ARK, SKIPP, PAULEY』のPAULEYバースより)。

資産といえば、モーニング娘。はセットリストの厚みが違う。2017年の新曲と、1997年に出した曲を同じコンサートで披露できるグループやアーティストはこの世にほとんど存在しないでしょう。大量のつんく曲を所持しているのがこのグループの最大の強みだ。『愛の種』(これはつんく作ではない)は20年前の同じ日(11月3日)に発売されたらしい。同曲のリメイク版がこの公演からセットリストに入った。モーニング娘。の歴史にそこまで思い入れのない私でも、畏敬の念を抱いてしまう。セットリストにクラシックを混ぜ込むことで、新曲が多少ワックであろうとも、コンサート全体では帳消しできるのだ。今日のセットリストに含まれていた『涙ッチ』『気まぐれプリンセス』は、私が初めて入ったモーニング娘。のコンサートでも聴いた曲だった。2010年春。当時のメンバーは一人も残っていない。でも曲はこうやって大切に歌い継がれている。それがモーニング娘。の偉大さである。『弩級のゴーサイン』はこの公演で披露された過去のクラシックと肩を並べるような曲ではない。年月の経過に耐えるだけのクオリティに欠ける。五年先、十年先まで歌い継がれるような曲ではない。(この曲の見所である某ムーヴ時に森戸知沙希さんのそこを見ようとしたが、ちょうど肝心な部分に最前のカメラが重なって見えなかった。)もちろん、つんくを美化しすぎる必要もない。彼も『がんばれ 日本 サッカー ファイト!』のような箸にも棒にもかからない曲を大量にドロップしている。しかし、彼が築き上げてきた膨大な曲の資産があるからこそモーニング娘。がHello! Projectの看板として持ちこたえているのもたしかである。

『私のなんにもわかっちゃない』を初めて生で聴けたのは嬉しかった。2015年(まだ鞘師里保さんがいた頃)にモーニング娘。のコンサートで初めて披露された曲だ。ハロ!ステでもコンサート映像が公開された。ファンから大評判でありながら本日に至るまで未だに円盤にもmp3にもなっていない。12月に(ようやく!!三年ぶりに!!)発売される15枚目のアルバムに収録されるらしい。聴くのが楽しみである。

尾形春水さんの丸さにビビった。鈴木香音さんの後継者を狙っているのだろうか。今ヤングタウン土曜日に出演したら明石家さんまさんから金玉呼ばわりされるのが目に見えている。その尾形さんと、飯窪春菜さん、羽賀朱音さんの三人によるトーク・セグメントはパンチが効いていて面白かった。EMOTION IN MOTIONのトーク・セグメントはつまらなかったが、今日は笑わせてもらった。今日のメンバーがよかったのかもしれないし、それだけじゃなくグループとしても上達したのかもしれない。片方の眉を上げることができるという飯窪さんが、こういう感じと実践する。「それ使うところがないですよ」と突っ込む尾形さん。「格好いい曲で使えるかなと」と構想を語る飯窪さんに、「格好いい曲では、ない」と否定する羽賀さん。「それ家で鏡の前でやってください」ととどめを刺す尾形さん。もう二度とやらない、と拗ねる飯窪さん。「私と尾形ちゃんとくどぅー(工藤遥さん)でトリプル・エーというユニットを組んでいる。諸事情により」という飯窪さん。今日からオープンしたというモーニング娘。のカフェ。各メンバーをモチーフにした飲み物がある。「トリプル・エー」は三人とも豆乳を使っているのだと話す。「あとマシュマロとか。マシュマロも効くらしいです」と尾形さん。その話に入ってこない羽賀さんを見て、「あ、何、羽賀ちゃん、わたし関係ないからみたいな顔して」と飯窪さんが言うと、「豆乳は効かない」「遺伝ですから」とバッサリ切り捨てる羽賀さん。「どうする? 何も言えない…」と話し合う飯窪さんと尾形さん。

アンコール明けのコメントで加賀楓さんが「今日は私にとってモーニング娘。として初めてのパシフィコ横浜で…」と言うと間髪入れずに「俺もー!」と元気な紳士がシャウトし、客席から失笑が漏れた場面は公演のハイライトの一つだった。メンバーが無反応というのもまたよかった。その紳士は1階の前方にいたのだが、3階からでも聞こえたらしい

泡沫サタデーナイト』の台詞部分を今日は森戸知沙希さんが担当した。「皆さん、私のこと見えてますか? 今日は横浜のあなたに言いたいことがあります。今度、私と中華街デートしよ?」だった。アンコール明けの森戸さんのコメント時に飯窪さんが「何て言ってたの? 聞こえなかった」と促し、その場でもう一度言わせた。個別握手会で森戸さんに付き合いたいと言ったら「無理」と一蹴されたという報告をTwitterで見たことがある。「中華街デートしよ」と申し出ても同じように「無理」と言われるのは確実である。このコンサートの翌日には握手会があった。おそらく何人かは無謀にも森戸さんを中華街デートに誘ったことだろう。