2021年12月29日水曜日

つばきファクトリー 8thシングル発売記念 ミニライブ&お見送り会イベント (2021-12-09)

リリース・パーティは通常、開催当日の朝からコンパクト・ディスクの販売が行われ、買うと参加券がついてくる。ディスク販売所はパーティ会場に隣接。今回はちょっと変わっていた。12月9日(木)に横浜で行われるパーティに参加するため11月20日(土)に渋谷のタワ・レコに並ばされた。人によっては不便だったかもしれないが、私は助かった。今の労働状況では木曜日の全休取得は不可能ではないが難しい。今週のように水曜日も午後休となると木曜日に休むのは無理がある。幸い11月20日(土)にはなかった予定。日雇い労働もしくは炊き出しの列とF君に揶揄される光景に混じり、券をゲトることが出来た。なかなかいやらしい売り方をしてきやがった。ディスクを購入してもパー券を貰えるとは限らない。タブレットで引かされるくじ。結果はA賞、B賞。片方がパー券。もう片方は写真。一回あたりの購入上限は三枚。一枚、二枚で外れたら目も当てられない。並び直したらパー券が完売するかもしれない。三枚買うしか事実上の選択肢がない。わざわざ土曜日の午前を潰して渋谷に並びに来ておきながらその一枚、二枚をケチるのもおかしい。半ば強制的にJPY3,900を支払わされ、いくらでも結果を操作できるタブレット上のガチャを引かされた。結果は、パー券が一枚(整理番号62)、写真が二枚(小野瑞歩さんと新沼希空さん)。どうせあれやろ、三枚買ったら一枚だけパー券が来るように操作されてんのやろ。仕組まれとるんや。ジョージ・W・ブッシュさんが当選したときのアメリカ大統領選挙と同じや。と思ったが、Twitterを見るとパー券を二枚引いた紳士もいたようだ。(このあとG君、F君と恵比寿で合流してカシミールを食う地獄体験をした。)

二日連続、午前で切り上げる在宅クソ労働。12:01に来る午前中指定のヤマト便。正確には受け取った直後に見た時刻が12:01だった。配達員さんがインターフォンを鳴らした瞬間は12:00だったかもしれない。近所の店。唐揚げ定食。馬鹿デカいのが売り。約半年振り。思っていたより胃に重い。完食するのがしんどい。ちょっと後悔。横浜駅。平日でも入店待ちが出るほどサテンに人が来るんだな。老婆ども。私が無職だった頃に平日のサテンで専業主婦とおぼしき集団の会話が耳に入りイライラしたのを思い出した。駅から少し離れた上島珈琲店。レーコー。Ethan Wattersさんの“Crazy Like Us”を読む。この本は米田倫康さんの『ブラック精神医療』で知った。米田さんの本は『発達障害のウソ』も読んだが非常に面白かった。昼が重たい唐揚げだったから、何か軽めのものを。野菜が摂れたらいいな、と考えながら横浜駅の付近で夕食の店を物色した結果、なぜかポーク・ステーキの店に入った。マロリー・ポーク・ステーキ。岡野交差点。最近出来たという記事をネットで見、気になっていた。一番小さい高尾山(270g)JPY990。ハイボールJPY390。柔らかくてジューシー。一口一口が味わい深い。塩、コショウ、マスタード、わさび、醤油、柚胡椒、と用意された調味料。一通り試したけど結局は醤油。自分がジャップであることを実感。ココはなかなか。また来たい。カウンター。サッと食ってサッと出て行く感じの店。

桜木町駅。今日は何だか気分が冴えなかったが、夕食を摂ってから気分がよい。あのポーク・ステーキなのか、ハイボールなのか、両方なのか。いいものを身体に入れたという感じがする。よく分からないけどいい肉なんだろう。ハイボールも薄すぎず、好印象。桜木町駅。風は冷たいが半袖teeにLee x Needlesのストーム・ライダーで十分暖かい。ランドマーク・ホール。人だかり。席は決まっておらず整理番号順の入場なので、エスタシオンの案内を聞き逃さないよう、みんなが気を張っている。ファンクラブ・イヴェントにはいない若めの奴や女がちらほら。あいつらは優越感に浸っているかもしれない。えー引くんだけどー、ジジイばっかじゃんココに来てんの。ウチらみたいな若くてお洒落な子が全然いないって。気付いてほしい。君たちが主にジジイが来る場所にいるのは趣味趣向がそのジジイたちと同じだからということに。まだ若くて人生に色んな可能性があるはずなのに既にジジイたちの墓場にたどり着いているということに。

入場前の段階で前方を占めるのはおまいつ連中。新沼希空さんの有名支持者であられるあの紳士はますます老けてもはやお婆ちゃんだ。あの老け込み方にしては不自然に黒々とした髪。白髪染めをしているのだろう。アルビ兄さんは黒のコーディネート。フーディ、ポロ・ラルフ・ローレンのスウェット・パンツ、ナイキのスニーカー。リリース・パーティのヴァイブス。62番という整理番号は思っていたよりもよかった。2列目の、右から二番目の席を取ることが出来た。おまいつが最前中央付近を牛耳る、チケット転売への締め付けが厳しくなった昨今のHello! Project現場から失われていた、懐かしい光景。

開演時刻の19時ちょっと前に後ろを振り返ると、席はほぼ埋まっていた。イヴェントの前に注意事項を読み上げるエスタシオンのリーダー格がいつも言う「本人への思いは、拍手で」云々のくだりがいつも気になる。日本語として変だよね。本人って何だよ。せめて出演者への思いとかだろ。いつも得意げに言ってるけどさ。前説でアルビ兄さん(高見沢さん)はひとしきり注意事項を読み上げた後、そうは言ってもコンサートじゃないんで、リリイベなので、リリイベなりの楽しみ方をしていただければと思いますと言っていた。どういう意味だったのだろう? 多少は羽目を外してもいいぞということ? 6月のアルバム発売時には会場も抑えてあり、オープン・スペースでリリース・パーティを行うつもりだった。来年の春くらいまで今の感染状況が続けばオープン・スペースでのイヴェントもやりたいとのこと。(普通に考えるとオープン・スペースつまり屋外の方が感染リスクは低いので理屈としては変だが、もはやこの馬鹿げた一連のコロナ騒ぎとコロナ対策と称する儀式類は世間体の問題でしかない。その意味では理にかなっている。もはや本気でコロナ自体を恐がっているのは知能が衰えテレビに人生を預けた老人くらいしかいない。)

めっちゃ近くて全員めっちゃ可愛くてめっちゃ楽しかった。魅了されっぱなしだった。近距離で観るリリース・パーティが一番だと再認識した。五曲のミニ・コンサートと各メンバーさんの簡単なコメント。30分程度の簡素な内容でも下手なハロ・コンと比較にならないほど満足できた。つばきファクトリーさんが新曲をパフォームするのを近距離でしっかりと観ることが出来てよかった。コロナ騒ぎになってからハロ・コンばっかでつばきファクトリーさん単独の現場が殆どない。この一回かぎりのリリース・パーティが貴重な機会。渋谷で一時間半くらい並んで、JPY3,900を払って入場券を手に入れるだけの価値はあった。樹々ちゃんと二度くらい目が合って、好きになった。曲中に樹々ちゃんと目が合ったのは初めてかも。本当に可愛いな。でもその後みずほちゃんが三、四回目を合わせてくれて大好きになった。特に『涙のヒロイン降板劇』で二回くらい、数秒間じっと目を合わせてくれた。この曲を初めに聴いたときはさほどピンと来ていなかったが、今日のコレで忘れられない曲になった。衣装は『涙のヒロイン降板劇』。みずほちゃんの身体に対して短パンが結構パツパツでお尻のワレメに食い込んでいて目が離せなかった。どの曲か忘れたけど八木栞さんが斜めにひざまずいて止まるべきどころで、膝を立てず、両足を揃えて正座を少し浮かせたような体勢になっていた。アン・スコが見えるのを気にしたのだろうか。小野田紗栞さんは気にせずにガンガン見せてくれた。ベテランの貫禄。最後の曲は新曲三つの中からヘッズの拍手の大きさで決められた。ほぼ互角に割れたが『約束・連絡・記念日』が最初に脱落。(他の二曲が100、100、だとすると『記念日』が90な感じがすると言う秋山眞緒さん。『記念日』を落とすんじゃなくて『涙のヒロイン降板劇』と『ガラクタDIAMOND』の拍手が多いですねという言い方にした方がええやろ的に苦言を呈する岸本ゆめのさん。)この二曲で再度、拍手による意思表示。拮抗。決められないメンバーさんたち。舞台裏のアルビ兄さん(高見沢さん)に判断を仰ぐ岸本ゆめのさん。アルビ兄さん(高見沢さん)が『ガラクタDIAMOND』に決めた。この曲でもおみずちゃんがしっかり目を合わせてくれて、もっと好きになった。

お見送りではおみずちゃんに指を差されて何かを言われた。メンバーさんが全員ありがとうございます! と常時大きな声で言っていて聞き取れなかったけど、目が合った的なことを言っていたような気がする。おみずちゃんの何人か前、たしか二人目くらいに豫風瑠乃さんがいて、なぜか私を見てピョンピョン飛んで手を振ってくれた。おまいつの誰かと勘違いしたのだろうか? 少し申し訳ない気持ちになった。(彼女はパーティ中、合間のトーク中などに最前の支持者にいちいち反応して構ってあげていた。今のベテラン勢も最初のころは結構こういう感じだったよなと思い出した。)無邪気な瑠乃の姿がしばらく頭から離れなかった。心が痛むから、次からの個別は瑠乃にも少しは入らないといけないかもしれない(本シングルの特典会ではお絵描き会に一枚だけ入った)……。私にはおみずちゃんを最後まで見届けてシーンから身を引くという考えはあるのだが、彼女が退団した数年後のつばきファクトリーさんの個別で豫風券を求めている自分がちょっと想像できて恐い。でも瑠乃は今13歳だ。本家・豫風瑠乃さんこと田村芽実さん(お顔の系統が似ている)の現場を増やすことで瑠乃への興味を散らしていくという、治療法。私は来月、田村さんとめがねさんという方の二人芝居“Equal-イコール-”を三回、観に行く。(治療のために申し込んだわけではない。念のため。)

2021年12月25日土曜日

つばきファクトリーFCイベント 〜キャメリア ファイッ!vol.13 キャメリア Xmas2021〜 (2021-12-08)

開催前日にグッズがインターネットに公開されるのがHello! Projectのファンクラブ・イヴェントにおける通例。そこでメンバーさんたちが纏う衣装が明らかになる。映画やミュージカルを観るときに物語の予習をしない横着さで知られる小生だが、ファンクラブ・イヴェントのグッズ画像には必ず目を通すことにしている。どこを注目して観ればよいのかをある程度、掴んでおく必要があるからだ。フットボールの試合が始まる前に両チームのスターティング・ラインアップを頭に入れておくのに近い。昨晩ざっとグッズの画像を見て把握した。ymgs、tnmt、yhuのワキ。いや、ちょっと待って。yhuは取り消す。まだ13歳だったよな。そういうのじゃないから。小生は。メンバーさん毎に異なる衣装のデザイン。誰がどこを見せるかという業務分担。もちろんmzhちゃんを中心に観る。それが前提。

平日。1回目は16時10分、2回目は18時40分開演。フル・タイムで働いている人々が来づらい日程に行われるイヴェント、コンサート。自ずと来場者の異常者率が高くなり、ますます異常者しかコミット出来ないシーンになっていく。席がだいたい埋まっていたのを見るに、平日に開催するのは合理的な判断なのだろう。土日に比べ会場の使用料金は安いだろうから。と思って検索してみたが、そこまで極端に違うわけでもないんだな。江戸川総合文化センター大ホール。終日の使用料が平日JPY259,280、土日祝日でJPY311,150。もちろんその5万円の差が損益を分ける可能性もあるのは理解するが。

小生は今日、明日と二日連続でつばきファクトリーさんを観るために午後半休を取得している。明日は横浜でリリース・パーティ。半休とは言えこうやって労働を調整出来るようになった。2-3ヶ月前には考えられなかった。近所の韓国料理店でサムギョプサル定食、マッコリ。14時過ぎに新小岩駅。雨。目に入ったBECK'S COFFEE SHOPに入る。レーコー。

最近チンピラじみた青年たちがストリートでベビー・カステラを売っているのをたまに見る。流行りが来ているのだろうか? 会場に行くまでの商店街にもいた。ハットグ、タピオカ、マスク、PCR検査。結局は時流に乗っかってその時々に大衆が求める商品を低コスト高価格で売りさばいていく奴が生物として強い。もちろん最前線の労働は他人にやらせる。自分はマージンを回収し、次の流行に投資。その繰り返し。ラージな暮らし。会場すぐ側の公衆便所。個室の扉。犬の糞をトイレに流さないで下さいと書かれた貼り紙。マルチ・ビタミンで色が濃くなった尿が放出される小生の陰茎。会場の入口で思い出す。何年か前のJ=J Dayで来たことがある。

1回目が1階6列のど真ん中、2回目が2階のほぼ最後列。メリハリの効いた席配分。まともな神経持ってりゃ普通、1階6列で双眼鏡は使わない。躊躇はしたが、この機会を逃すわけにはいかない。mzhちゃんにキモいと思われるのは困るが、それ以外のメンバーさんからはどう思われてもいい。1回目では遠慮しながらも要所要所で双眼鏡を使わせてもらった。水着グラビアや写真集では修正されているあのymgsさんの無修正ワキだ……という感慨があった。グッズ画像の段階ではaskrのワキはガッチリ防御されているように見えたが、腕を上げるとガンガン見せてくれる構造になっていた。ミニ・コンサートでは最後の一曲が回替わりで、1回目が『低温火傷』、2回目が『恋のUFOキャッチャー』だった。願わくば1回目の席で『恋のUFOキャッチャー』を観たかった。

最近はブログで“友達”の存在を隠さなくなったmzhちゃん。tnmtとninmの助言だろうか? アドルフ・ヒトラーさんが言っていたとされるように、大衆は小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい。tnmtのInstagramを見れば分かるように、いかにもデート・スポットな場所で彼氏サンに撮ってもらった写真をSNSやブログに載せても、却ってバレない。もしくは問題にならない。言っておくがmzhちゃんのブログに登場する“友達”が彼氏サンを差すというのは半分冗談である。ただ、仮にそうだったとしても、彼女に感謝する小生の気持ちは変わらない。いない方がおかしのはもちろん分かっている。その事実が公になったとして、自分がどう反応するのかはそのときになってみないと分からない。でも、小生は彼女を裏切り者と罵って石を投げることはない。静かに離れていくような気がする。

アイドルも人間だ、恋愛禁止は人権侵害だなぞとTwitterに書いて悦に入る良識派ぶった奴らのことを小生は鼻で笑っている。そういう問題じゃない。そもそも、あらゆる労働が人権侵害だ。アイドルをアイドルたらしめるのは、愛を平等に配る、愛の共産主義。その枠外で特定個人と恋愛関係を持った時点でアイドルの条件が崩れる。もちろん、実際の共産主義体制において一部の支配層が富を独占するのはよく知られたことであって、本当に全員に適用される結果の平等なんてのはあり得ない。でも、アイドルというシステム、フィクション、幻想が成り立たなくなった状態で、キモい中年男性が特典会に大枚をはたいて彼女たちのレーンに並べるわけがない。アクリル板、マスク、数メートルの距離を置いて数秒話すためにJPY1,300、しょぼいチェキを一枚撮るためにJPY6,600を払うわけがない。

小生にとっては12人のつばきファクトリーさんをちゃんと観る初めての機会だった。10月18日(月)の日本武道館ではちゃんと観たとは言えない。距離が遠かったし、尿意でつばきファクトリーさんどころではなかった。最近は特典会の売上が集団の活動を支える主な原資になっているためか、つばきファクトリーさんに限らず構成員の人数が多くなりがちだが、さすがに12人は多すぎる。たとえ近未来の退団者を見越していたとしても、だ。歌割にしたって、いくら何でも細切れすぎる。

小生は4名の新加入者に対して悪い印象はなかったけれども、12人という大所帯になったことはさほど前向きに受け入れてはいなかった。しかし小生は今回のイヴェントを観て人員増に不満は感じなかった。むしろ新たな面白さが集団に加わったと感じた。クイズで答えが分からなくても次々にハイ! ハイ! と手を挙げて思いついたことをポンポン言っていくベテラン勢(tnmtに至っては何も思いついていないのにとりあえず手を挙げて、引っ込めるというのを何度もやっていた)と、答えが思いつかず固まってしまうyhu、yg、ksi、fkd。対照的。ベテラン勢が新人さんたちの初々しさを、新人さんたちがベテラン勢のこなれ具合をそれぞれ引き立て合っていた。1回目の最初の意気込みでondが左右の同僚を見渡し、見ての通りいちばん可愛く頑張ります! と言っていた。その何人か後のksiが、ondさんに負けないように可愛く頑張りますとやり返していた(今日観て思ったけどksiは演劇女子部で男役がハマりそうな感が強い)。yhuは、皆さんにとって最高のプレ・クリスマス・プレゼントになれるよう、がんばルノー! とか言っていて可愛かった。

司会がswgrだったのも寄与していると思う。ちょっとyhuへの当たりがきついのが気になったけど(イヴェント中にコメントを求められたyhuの反応が毎回たどたどしく、その度に用意しとけよ!なぞと叱咤していた)、面白く回してくれた。相方だからといってszkkitへの憎悪を自動的にswgrへのそれに結びつけてはいけない。一緒くたにせず、それぞれを個人として評価するべきだ。swgrにはszkkitのイヤさがない。

ヒントを元にその人や物を当てるゲームで、私の全盛期は昭和45年ですというヒントが出るや否や、さわやか五郎さん! と答えるmzhちゃん。生まれてないわ。しかも全盛期が昭和45年って何でだよ。今だわ。いや、今でもないか的に切り返すswgrに被せるように、うちの会長! と答えるakym。瞬発的で馬鹿馬鹿しい掛け合いの中でもakymはふざけている感じがなくずっと顔が真剣なのが可笑しかった。2回目も、誰も私の正式名称を知らないでしょう的なヒントにakymがさわやか五郎さん! と答える。正式名称(本名)は何だという流れになり、岡見時秀とksmtが本名を言う。やめろやめろ、そういうのがイヤだから芸名つけてるんだよ。芸名の人の本名を(普通は)言わないだろう、とswgr。

akymは持ち前のダンスに加え、鼻にかかった特徴のある歌声、見る見る洗練されていく容姿、天真爛漫なアホさと、年齢的にも集団の中堅になってきて、キー・パーソンになってきている感じがする。同郷のksmtさんとの掛け合いも軽妙。
1回目
(サンタさんが家に来るというyhu。どこから来るの? と聞く先輩メンバーたち。ちょっ困ってから、エントツから……と返すyhu。その話を受けて、うちにもサンタさんがくるというakym。)
akym:最近は宅急便やねん
ksmt:それアイスランドとかじゃなくて、大阪から来てない? 大阪の、秋山なんとかさんから来てない?
akym:
2回目
akym:私はサンタさん(のプレゼント)が宅急便で来る。でも去年のとき、来年はないかもなとママが言っていた
ksmt:ママって言うてるやん
akym:いや、ママがそう予想してるってことやろ
(このやり取り中、サンタを信じているというyhuは耳を塞ぐ。2回目でも1回目と同じ話をyhuに振って、家にエントツあるの? ないです……。エントツないのにエントツから来るの? と意地悪に突っ込んでいく年長組。)
ksi:私は小6でサンタの正体を知った。というか、向こうからカミング・アウトされた。カミング・アウトされてから最初にスマフォ・ケースを貰って嬉しかったのを今でも覚えている

ygは1回目では八木メシ、2回目では八木おやつを押し出していた。新メンバー四名をリーダーに、集団を四分割してのゲームで対決でymgs、mzhちゃんと一緒になったygは、1位になれなかったら二人に八木メシを食べさせると言う。結果、1位になれず、最後のコメントでも宣言通り八木メシを食べさせると言う。ジェスチャー・ゲームでチアリーダーというお題を引いたygは、ライン・ダンスの動きをしながら衣装の中の白いフリフリの際からはみ出す黒いanskを見せてくれた。2回目ではチーム・メイトとなったパイセンたちに、八木おやつを食べたいかー? と聞いて二人(ninmと、tnmtだったかな?)がイヤイヤ小さな声と動作で、お、おー…という感じになっていた。さらに、
askr:最近は食のことで頭がいっぱい。起きたら朝ご飯なに食べようかな、から始まる。12月は誘惑が多い
swgr:クリスマス・ケーキはどんなのがいい?
askr:チョコが好きなんですけど、最近はモンブランのホール・ケーキもいいなと思っていて。そっちの方向にも進んでみたい
yg:askrさん、八木おやつはどうですか?
askr:(話には聞く、見た目がちょっとアレで……的な反応)来年以降でいいかな
(最後のコメントで)yg:askrさんが八木おやつは来年と言っていたので、年始早々に持って行きたいと思います!
この調子だと、自身の写真集が発売された暁には八木オカズとして売り込みかねない。
ygはゲームのチーム分けで自分のところのメンバーが決まるのを待っている間ヤギ・ポーズをやっていたが全員から無視されていた。

yhuはswgrからイヴェント中にダメ出しされていたようにコメントを振られてから言葉を発するまでの時間が長く、言うこともまとまりがないのだが、この感じは今だけだろうし、可愛らしかった。不慣れというのを差し引いても受け答えや挙動のひとつひとつが他の新メンバーさんより圧倒的に子供っぽい。というか実際に子供。1回目では最初の意気込みをありがとうございましたで締め、終わるんかい的な突っ込みを周りから受けていた。我が家をわがいえと読んでいた。2回目の最初の意気込みで、全力で頑張ります! と普通に言ってしまい、あ、間違えた! と焦り、全力で頑張ルノー! と言い直していた。

ボックスからお題を引いて話していくやつで、tnmtが最近の小さな悩みというのを引いて、
tnmt:悩みないからな〜。アッハッハ〜
ymgs:私amちゃんで悩んでる。さっきも舞台袖で、あなたいつもすべすべねえ〜と言いながらずっと二の腕を触られた
akym:私も。まつ毛なめていい? って聞かれたことがある

2回目は1回目の反省を踏まえて細かく修正を加えていると感じた。たとえば、1回目はクイズで新メンバーさんたちが殆ど答えられなかったが、2回目ではむしろ新メンバーさんたちが率先して最初に答えていた。1回目の終演後、とりあえず最初に新メンバーが何か答えるようにしようというミーティングがあったんじゃないか。たぶんこういうイヴェントはロクにリハーサルはやっていなくて、1回目が事実上のリハーサル。試運転。だからいつも基本的に2回目の方がいいのではないか。かといって2回目だけ観ればよかったかというとそういうわけでもない。フットボールの前半と後半のようなもので、両方を観て初めてその日のイヴェントを語れるのかもしれない。もちろん、片方だけで十分に楽しいに越したことはない、というかそうあるべきなのだが。

リリックの断片から曲名を当てるゲームが、やけに難しかった。メンバーさんも苦戦していた。tnmtがいっさい挙手せず、amちゃんも参加してね〜とswgrさんに言われ、恥ずかしそうにしていた。歌詞の切れ端からksmtが即興で歌を作っていて面白かった。

1回目も2回目も新メンバー4人だけにプレゼントが用意されていた(1回目はninmからのプレゼントだったかな)。2回目ではみかんが贈呈された。自分たちに何も贈られないことに不満の先輩メンバーたちは大ブーイング。mzhちゃんのご立腹ぶりがかなり可愛かった。えこ贔屓や! とakymがswgrを糾弾していた。

2回目の最後、袖に捌ける前にymgsは、みんないいクリスマスを過ごしてね〜(私も男とよろしくヤッてるから〜)と、我々に温かい言葉を贈った。1回目でカッコよくポーズを決めてメリクリと言えという指令を受け、セクシー寄りのポーズを取り、それセクシーじゃんと同僚に突っ込まれていた。自分の武器分かってるな〜とksmtは関心していた。そう、ymgsには今後も自分の武器を思う存分に生かして、グラビアで大活躍してほしい。お願いします。

2021年11月28日日曜日

チーム「花」選抜FCイベント2021~為永幸音×工藤由愛×小野瑞歩×一岡伶奈~ (2021-11-21)

起きがけに水を飲むと喉の奥にやや痛みを感じる。風邪ではない。原因ははっきりしている。昨日の昼食。恵比寿のボンベイさんで、某紳士に勧められるがままに注文したカシミールというカレー。鶏肉を豚肉に変更。カシ・ブタ。食べている間、ずっと痛かった。口の中も、喉も。お店を出てからもしばらくは痛みの余韻があった。付け合わせのタマネギの漬け物で中和を試みるが焼け石に水。パッと見、量は多くないのだが皿を空にするのが大変だった。先客たちを見て随分と食うのが遅いなと思っていたが、理解出来た。私が好き好んで食べる域を超えていた。私にとっては味ではなく痛みだった。食事というよりは、身体に傷をつけることで何かの意味を見出すような、ある種の身体経験のような気がした。刺青を入れるのと根っこは同じなのではないだろうか。特にからいものが得意でもない一般的なジャップは一口目を飲み込むのも難しいと思う。いい人生経験にはなったが、二度と食うか、あんなモン。(幸いにも喉が少し傷んだ以外には何もなかった。お腹も大丈夫だった。)

桜木町駅。田村ゆかりさんの何かがあるらしく、I Love Yukariなぞと印字されたバッジをバックパックにつけた老紳士、同女史のグッズとおぼしきピンクのTシャツをまとった壮年男性などで賑わっている。俺はそういう人たちとは違う一般男性なんだぞっていう雰囲気を出しつつ、雑踏をくぐり抜け、ランドマーク・タワーへ。1階のコメダは行列が出来ている。ANTICO CAFFEで時間調整。レーコーのMがやたらとデカい。ノートブックを広げ、ペンを手に、次の金曜日に予定されている某社面接に向けた対策をぼんやりと考える。

アップフロントさんが私に与えたのは、1回目が13列の2番、2回目が14列の2番。たしか17列だったかな。一番後ろが。一方で2回とも最前に近い席をもらった人もいるようだ。最近の割り当てはこういう傾向があるらしい。同じ日の複数公演で、ほぼ同じ席が固まって来る。バランスが取られるわけでもなく。おざなりなお座席の配分。12月8日(水)に江戸川区で開催されるつばきファクトリーFCイベントではもっとマシな席にしてくれるのを期待している。

1回目 15時半〜

私は詳細を見ずに応募したので、開演してから小野瑞歩さん以外の出演者が誰なのかをちゃんと把握した。為永幸音さん、工藤由愛さん、一岡伶奈さん。司会進行が小野さん。私も明日のある会議で進行を務めなくてはいけないことを思い出し、彼女に親近感がわくと同時に少しつらくなった。メンバー紹介で初っ端からたまなが……と言い間違えてうわーっという感じになる小野さんの反応が可愛かった。たまながって金玉が長そうな名前だな、と私は思った。

他のHello! Projectメンバーさんと一日だけ入れ替われるなら? 一岡さんと小野さんの回答が、植村あかりさんで一致。
一岡さん:街をうろついて、男に振り返られるのを体験したい。私が男なら振り返る
小野さん:メイクしててもしてなくても変わらない(美人)だし、服もその辺に落ちてるのを着ても絶対キレイだと思う
小野さん:(美人という点では)谷本安美ちゃんもそう。安美ちゃんは頭の中が楽しそう。見た目もそう(キレイ)だけど、安美ちゃんになれたら楽しいんだろうなと思う。

工藤さん:最近投げキッスをよくする。Juice=Juiceだと稲場(愛香)さんとかが返してくれる。この間、ハロ・コンで最後に捌けるときのポーズをしてから癖で投げキッスをしてしまった。恥ずかしくなり、すぐに手を振りながら横に移動して誤魔化した
小野さん:投げキッスは別にしてもいい。私は日常的にする

為永さん:最近ハマっているホラー漫画は『カラダ探し』。少女漫画は『初婚』。

花チームは楽屋で井上玲音さんが音楽をかけて、セーイ? とか言ってノリノリになる。
小野さん:そのとき私はメイクをしてたけど、何か楽しそうだなって。一人一人を見たらそうではない子もいるかもしれないけど、花チーム全体としてはほわっとした雰囲気。

花チームのメンバーさんそれぞれにどの花が似合うかを選んでいくセグメント。後から花言葉が明かされる。
花の説明で、この花はおしべが長くて……と工藤さん。え、お尻が長い? と聞き返す小野さん。おしべと指摘され、恥ずかしがる。
新沼希空さんに割り当てられた花の花言葉が、ワガママな美人。たしかに、という感じで盛り上がるメンバーさんたち。後で(新沼さんに)言おう、一岡伶奈ちゃんがワガママな美人って言ってたよって、と小野さん。

最後に残った島倉りかさんの花選び。
工藤さん:可愛らしいの(花)がいいですよね
一岡さん:いや、意外と強いよ
小野さん:野生児っぽい
一岡さん:木ィ登るし

小野さん:花チームの長崎公演で、楽屋にハエが入ってきた。井上さん?がコップに入れてくれた。私が紙をかぶせてコップに蓋をして、外に逃がした。その紙はカステラの味が書いてある紙だったので、どのカステラがどの味かが分からなくなった。

『ハナモヨウ』の好き・嫌い・好き ハナモヨウの部分の替え歌風に、最初の二文字、三文字、二文字を元にハナモヨウに当たる五文字を当てるゲーム。正解を出した一岡さんが、正解者が取る小さな花瓶入りの造花を隣の小野さんに見せびらかす。煽らないでください、と小野さん。

抽選10名にメンバーさんたちのオートグラフ入りポスト・カード。10名中5名が10列で占められる。他の当選者も11列、13列とかで、随分と偏っていた。Hello! Projectのイベントの抽選ではよくあることだ。

延々トークとゲームが続き、花チームの『続・花鳥風月』ツアー残り二公演の告知。これで終わるような気配があったが、ちゃんと見に・コンサートをやってくれたので救われた。さすがにあのお喋りだけに二公演で一万円超を出して満足するほど私は酔狂ではない。衣装も全員が黒い半袖Tシャツにロング・スカートですべてを防御していたから、そういう意味での見所も乏しかった。(そう考えるとこのイベントは席が後ろで別によかった。)

為永さん:『愛の種』(モーニング娘。)
工藤さん:『銀色のテレパシー』
一岡さん:『やる気! IT'S EASY』(後藤真希)
小野さん:『インスピレーション!』(モーニング娘。)

それぞれのソロ歌唱。工藤さんがリリックを飛ばし、私ラーララーラーラーラララー……と音を埋め、最後の談話で謝罪していた。

小野さん:他のチームが選抜イベントをやっているのを見て、もし花チームでやるなら出たいなと思っていた。

2回目 17時45分〜

開演前にHello! Project各グループのビデオ・クリップがスクリーンに流れている。そういえばJuice=-Juiceさんの『がんばれないよ』のビデオ・クリップを観るのはコレが初めてかもしれない。

工藤さん:子供の頃、お姫様ごっこやおままごとが好きだった。小6くらいまで、草をすり潰して、これで治るよとか言って食べていた。その辺の草はしょっぱかった
他の三人が一斉に引く中、一番大きな悲鳴を上げた小野さん:いやあぁぁぁ!!!

小野さん:小学生の頃、梅を拾ってお道具箱に入れていたら、梅干しみたいにジュクジュクになって、お道具箱がダメになった……(黙る他のメンバーさんたちを見て)引いてるじゃないですか〜!
為永さん:私もお道具箱にダンゴムシを入れていた
お互いワンパク児だと意気投合するお二人。

花チームのメンバーさんと花を結びつけるセグメントで、花の説明役を務めた工藤さんが、台本の漢字を読めず、どれどれという感じで他の三人が見に来るが、結局だれも読めないということが二度ほどあって、可笑しかった。最後のコメントで、漢字の練習をしたいと思います、と工藤さんは言っていた。客席にいる中高年男性たちはステージにいる人たちよりは漢字を読めるかもしれないが、彼女たちは我々に出来ないことをやって、我々にお金を支払わせている。

私はこれまで一岡さんに注目したことが殆どなかったのだが、今日の2公演を通じて好印象を抱いた。トークでいい味を出していた。発言のテンポとか突っ込みとか。ちょっとぶっきらぼうな感じが。
小野さん:ペット・ボトルをちゃんと締められない。この間、カバンの中が水でびちゃびちゃになった。化粧道具も。力が足りないとかじゃないんですけど、いつも完全に締められない。どうしたらいいですか?
一岡さん:締めればいいんじゃないの??

小野さん:生きるのがめんどくさい……いや、楽に生きたい。靴も履きやすいのがいいので、サイズを上げる。ぴったりなサイズは24.0cmか24.5cmだけど、この間、通販で25.0cmの靴を買った。大きすぎて、歩くと脱げてくる
一岡さん:ちゃんと、合ったサイズを買いましょう

小野さん:よく転ぶので、普段はスニーカーしか履かない

小野さん:花チームで出雲大社に参拝した。(休養中だった)キソチャン(新沼希空さん)用にもお守りを買ったけど、まだ渡せていない。家のどこかにある。探さないと……

今月ハマっているファッション
小野さん:ヒートテック。極暖。着ていたら電車で暑くて頭痛がした。まだ早かった
一岡さん:冬はジーンズしか履きたくなくなる。それでもお洒落をしたい。最近、チャイナ服風のボタンがついた黒い上着をよく着る

ハナモヨウの五文字当てクイズで、一岡さん、小野さん共に正解一問で迎えた最終問題。小野さんが見事正解し(答えは「あいしてる」だった)、これみよがしに一岡さんの前で喜びを表す。1公演目で煽られたので、と小野さん。

為永さん:『紫陽花アイ愛物語』(美勇伝)
工藤さん:『Help Me!!』(モーニング娘。)
一岡さん:『恋ING』(モーニング娘。)
小野さん:『すっちゃかめっちゃか〜』(Berryz工房)

最後の『すっちゃかめっちゃか〜』で会場が一つになった感があった。手拍子にさほど前向きではない私も、本来は声を出すところで思わず手をたたいてしまう楽しさだった。小野さんが本当に楽しそうで、弾けていた。これが小野瑞歩さんだな、という感じがした。本日の曲はすべて自選とのこと。

終盤で歌詞を飛ばす小野さん。そのショックも醒めやらぬまま、ステージに戻ってきた他の三人に、一言ずつイベントの感想を、と振る。私“も”歌詞を間違えたんですけど……と始めて笑いを誘う一岡さん。曰く、曲終わりで捌けようとしたら足が動かなかった。それを見て皆さんが拍手をしてくださった。優しい方々だなと思った。

1回目だけだとそこまで楽しくはなかったけど、2回目を終えた時点では結構楽しめたという感触が残った。フットボールの前半と後半のようなもので、片方だけで判断するのは間違っているのだろう。もちろん、1回だけで十分に楽しめるに越したことはないのだが。コンサートにしてもそうだけど、どうしても1回目がウォーミング・アップ、2回目が本番という面があるのは否めない。ヘッズ側、出演者側の双方にとって。

ランドマークでメシを食う場合の唯一かどうかは分からないが数少ない正解の一つであることに間違いはない、横濱大食堂。チキン・ステーキJPY1,000と、サラダ・バーJPY580。豪華なサラダ・バー。店長らしき紳士がずっと厳しい感じでお店の人たちに指示を出していて、会計時にもややツンツンしていたが、おいしかったですと私が言うと表情が緩み、まだ来てくださいと言ってくれた。

2021年11月14日日曜日

"GREASE" (2021-10-31)

サッカー選手を目指したきっかけは、小一のとき休み時間にサッカーをやっていたらサッカー部員の先輩に入部を勧められたこと。横浜F・マリノス公式Podcast「SPEAK OUT!」で和田拓也さんはそう言っていた(VOL.12)。他の選手の回を聴いても、彼らの人生をフットボールの道へと分岐させた理由はちょっとした巡り合わせであることが多い。兄弟がサッカーをやっていたというような生育環境が鍵のように思える。フットボーラーに限らず、我々の職業選択には環境(周囲の人間を含む)が強く影響する。親がやっていた、友達に誘われた、周りにその職を選ぶ人が多かった、等々。

憲法で保障されている職業選択の自由とは、国民の職選びにおいて国家による強制や干渉がないということ。その意味ではたしかに現代日本に職選びの自由は存在する。しかし、個人の自由意志はどこまで介在しているのだろうか? 他の要因に比べると、実は微々たる重みしか持たないのではないだろうか? 人生がどの方向に転ぶかは環境に依るところが大きい。環境は生まれた時点である程度は決まっている。世界のどの地域で、どの親に生まれるか。それは我々に選べない。どの学校に行き、どういう教師に当たり、同じクラスにどういう生徒たちがいるか。私たちは小さな頃から一つ一つを自分で選んできたわけではない。人生の多くは偶然によって決まっている。

偶然とは言い換えると、運である。プロになれる人となれない人の差は何ですか? 先述のPodcast(VOL.15)でそう聞かれた岩田智輝さんは、運と答えた。幼少期から厳しい競争を勝ち抜かないとプロのフットボーラーにはなれない。それだけに、自分が人一倍の努力をしてきたからとか、才能があったからとか、言いたくなるのが普通だ。しかしそれは能力主義に毒された考え方である。実際には才能を持って生まれること、その才能が価値を認められる社会や時代に居合わせること、努力をして報われる環境で育つこと、そういったことも含めて運なのだ。Michael J. Sandelさんの“The Tyranny of Merit”(『実力も運のうち 能力主義は正義か?』)を読め。岩田さんがそこまで考えて言ったのかどうかは分からないが、端的に運と言い切れるのは大したものだな、と私は感心した。

田村芽実さんは天賦の才能に恵まれた表現者である。彼女がスマイレージさんに所属していた頃から私はそう思ってきた。今でもその考えに変わりはない。ステージで歌い、踊り、演じることが天職。今のミュージカル女優という職業にはなるべくしてなった、収まるべきところに収まった感がある。彼女が他の職に従事しているのは想像が難しい。だがその田村さんとて、お母様が劇団を主宰しているという家庭環境がなければ別の世界に入っていたかもしれない。誰かが別の仕事をやっているのを想像するのが難しいのは単にそれを見たことがないからだ。

何かの世界で頭角を現した(もしくは不遇の)人がいるとして、それが才能(もしくはその不足)なのか、環境の影響なのか、完全に区別することは出来ない。片方だけで誰かの境遇が成り立っているなんてことはあり得ないからだ。環境と偶然の産物で始めたことが、自分が選択した道ということになり、いつしかその道以外は考えられなくなる。他のことをやろうにも、どうしたらいいのかが分からない。Hello! Projectを退団しても結局はファンクラブやブログを開設しアイドルもどきのようなことに手を染めていくO氏やN氏のように。賃金労働者の転職に至っては、細分化された業界×職種のマトリックスでぴったり当てはまらないと会社を移るのでさえ簡単ではない。

田村芽実さんがステージにいて、私は客席から彼女を観ている。田村さんも、私も、それぞれの立場を幸せに思っている。けれども、絶対にこうならないといけなかったわけではない。もし生まれ育った時代、地域、家庭環境、色んなことが違っていれば、もしかするとステージにいたのは私で、客席にいたのは田村さんかもしれない。いや、いくら仮定の話とはいえ現実味が薄すぎる。そこまで行くともはやそれは田村芽実さんではないかもしれないし、私ではないかもしれない。(もちろん私には演技の道を志した過去があるわけではない。)いずれにせよ、私がこうやってミュージカル女優として次々に大きな仕事をゲトッてステージで活躍する田村芽実さんをファンとして観られているのはさまざまな偶然が積み重なった結果である。


神田駅前の江戸牛さん(私が最近はまっている焼き肉店)で昼食を摂って、北千住駅前のマルイ11階にあるTHEATRE1010。雨が降っていたが、駅を出てすぐだったので傘をほとんど差さずに済んだ。席が間引かれておらず、両隣に人がいた。今どの県でどの興行で何の規制があるのか分かっていないし、どうでもいい。早く普通に戻せ。8列目の中央付近。田村芽実さんファンクラブ会員のキモい中年男性ゾーンかと思いきや、左は男性出演者の誰かがお目当てとおぼしき女性二人組だった。(間の休憩時間に、そろそろお手洗い行きますか? ○○さんも、一緒に来てくれますか? うん。やった! という連れション交渉をしていた。)13時開演。

私はこの“GREASE”に関しては、物語も登場人物も、そこまで引き込まれるという感じではなかった。だが、耳馴染みのよい曲が多く、若者たちが活き活きとそれらをパフォームする姿からは単純に元気を貰えた。それぞれの出演者がステージで自分を魅せることに対して喜びを感じ、ギラギラしている感じがした。

話の本筋とは関係ないが、メリケンのパーティ文化とか、男がマッチョじゃないといけない感じ、異性とカップルを作れない意気地なし(そういう役が一人いる)に人権がない空気感が伝わってきて、こういう時代・文化で私がやっていくのは無理だな、死ぬなと思った。

田村芽実さんがお肌を露出する場面が多かったのは望外の喜びであった。パジャマ・パーティの場面では脚を付け根付近まで見せてくださった。その次の衣装ではタイトなジーンズでお腹とおへそを見せてくださった。田村さんのおへそ! こんなにガッツリ見せてくださるのはいつ以来だろうか? パッと思い浮かぶのはソロ女優としてのデビュー作『minako-太陽になった歌姫-』だが、さすがにそこまでは遡らないかな。双眼鏡を持って行くべきだった。

投票率が上がれば世の中がよくなるという無邪気な信仰が、私には不可解である。若者がもっと投票しなければ老人に有利な政治が続いていくという主張は、日本人の年齢の中央値が48.4歳という事実の前には空しく響く。高齢者が分厚い国で高齢者を優遇しているのであれば、それは民主制が機能しているのでは。いいか悪いかは別にして。(実際にそれが可能かどうかは別にして)年齢によって1票を2票や3票に数えるくらいのことをしなければ意味がないくらいの年齢分布になっている。私は東京都知事選でマック赤坂さんに投票するような人間である。自分の一票が何かの意味を持つとはまったく思わないが、家に帰ってすぐに投票所に向かい、締め切り間際の19時54分に投票を完了した。

2021年11月13日土曜日

続・花鳥風月 (2021-10-10)

昨晩の会は解散後、帰り道によっていくつかの小集団に分かれた。私は面接官を角瓶で殴った経験を持つ中島さん、中西香菜さんの元ファンである成金個人事業主(Iさん)の二人と一緒だった。中西香菜さんはHello! Project退団後、有料のブログをやっているらしい。Iさんは登録しないの? しないですよ。あの人から学ぶことがないですから。まあそうだよね。でもあれはスパム・メールと一緒で殆どの人に相手にされなくとも少数でも金づるを掴めればいいんだよね。一人に送るのと百万人に送るので労力は変わらないから。割高であればあるほど、忠実な信者を炙り出せる
。人の推しだった子のやってることをスパム・メール扱いするんですか? とIさんが笑いながら抗議したあたりで名古屋ビーズ・ホテル。また近々会いそうな気がするよね、というようなことを言い合って二人と別れた。

早起き(6時か6時半くらい)して朝風呂。私が予約したプランが朝食付きだった。コレがなかなかよかった。ミネストローネが具沢山。野菜たっぷり。栄養的に嬉しかった。パンも肉まん風の具材やチョコの入ったものがおいしく、思わずお代わりをした。一泊JPY4,500。リピートしたい。楽しかった飲み会の余韻、朝風呂の気持ちよさ、朝食の充実。若干二日酔い気味だが、いい気分。今日もいい一日になる。名古屋駅の逆側。ビック・カメラ前。8時半のバスで大阪へ。あらゆる所持品がHello! Projectで固められた、ハーコーな紳士。バックパックにジャラジャラのバッジ。クラシカルなモーニング娘。オタクという感じ。KOKORO & KARADAのTシャツ。靴下もモーニング娘。さんと何かのコラボ。労働の作業着を流用しているとおぼしきズボン。

新梅田食道街の二階にある居酒屋で昼食。牛ハラミ定食。味は悪くないが量が少なすぎる。物足りない。12時半過ぎに谷町四丁目駅。この谷町はパトロン的な意味のタニマチの語原らしい。モナコというサテンでホーミーたちと合流。Hello! Projectのメンバーさんで異常な回数シコッているが使うメンバーさんは意外と選り好む紳士(以下「████さん」)、小野瑞歩さんでいつでもシコれるように写真集『MIZUH◎』を取り出しやすい本棚の手前に置いていることでお馴染みの譜久村聖さん支持者45歳(以下「D君」)の二名。レーコーとチョコレート・ケーキ。一人の淑女が回している。一階は息苦しいほどだが、化粧室のある二階はガラガラだった。一人では目が届かないから客を入れていないのだろう。夜公演の後にメシを食おうとD君が誘ってくれる。今日は新幹線で帰るつもりだったが、それでは時間がなさそう。バスに方針転換。23時59分大阪発の池袋行き三列シートを予約。JPY7,800。東京から名古屋(夜行)、名古屋から大阪(昼行)と来てまた大阪から東京(夜行)をバスで移動するのは普通に考えてかなりイヤだし避けるべきだが何かイケる感じがした。気力的にも体力的にも。たぶん最近摂っているマルチ・ビタミン(Super Nutrition, Men's Blend, Iron Free)とKSM-66アシュワガンダのおかげだと思う。

NHK大阪ホール。昼公演(14時半〜)、夜公演(18時〜)ともに小野瑞歩さんの所属する花チーム。昨日の名古屋1公演、今日の大阪2公演で私の『続・花鳥風月』ツアーは終わり。重要だったのは何と言っても今日の昼公演。F3列。Fというアルファベットだから後ろなのかと思ったらどうやらFはfrontの略のよう。F1は潰してあったので、実質二列目だった。しかもほぼど真ん中。絶好の位置。全然違った。別の体験。平時のコンサートは席が後ろでも楽しみ方で補える部分が多少はあった。今はどの席でも同じ見方をしなければならない。だから席がよければよいほど楽しいし、悪ければ悪いほどそうでもない。みずほちゃんは最初の方で一、二回、私に向けてニコーッてしてくれた気がする。勘違いかもしれないが、後方席では勘違いをする余地すらない。メンバーさんがすぐ近くにいるという状態、その高揚感があるかないか。天と地の差。

わがまま 気のまま 愛のジョーク』でみずほちゃんが右から左(こちらから見て)の移動時、勢いをつけた状態で誰か(北川莉央さん?)とぶつかって、よろけていた。私はヒヤッとしたが、みずほちゃんはすぐに所定の立ち位置まで行き、何事もなかったかのように笑顔で踊っていた。(公演後、████さんとD君にこのことを話すと二人とも自分の崇拝対象を追いかけるのに夢中で気付いていなかった。オタクらしくていいなと思った。)

昨日の私はヒップを強調した『恋のUFOキャッチャー』のダンスを台無しにする野中美希さんの生地が多すぎるスカートに苦言を呈したが、よく見ると野中さんの腰の動かし方は思い切りがよく下品だったので、許した。この曲における手コキ的なムーヴでは福田真琳さんとそれ以外の三人の手馴れ具合の対比が面白かった。もっとも福田真琳さんは歌においては既に先発メンバーさんに見劣りはしない。新沼希空さんよりも声が出ていた。新沼さんは何かあるのか心配になるレヴェルだった。のか、そもそも彼女はこんなものなのか、私には分からない。

お喋りは有澤一華さんがご担当。ここ大阪が地元。曰く(客席に)同じ匂いのする人がいっぱいいる。子供の頃、串揚げ屋さんでソースの二度漬けをしてしまったことがある。この娘、やったなという目で周囲から見られた。それで学び、以降はしなくなった。二度漬けせずにソースを追加するには食べ物でソースをすくうという方法がある。

会場内のSeattle's Best Coffeeにて、████さん、D君と歓談。ゴール裏で京都サンガさんを観るKPさんに、来シーズンJ1で戦うにあたっての補強ポイントを尋ねたところ、FW、CB、あと荻原さんを残せるか次第で左SBとのことだった。来年、横浜F・マリノスが京都サンガさんをボコボコにやっつけるお祭りを観に行くのが楽しみだ。京都のあの新しいスタジアムにも行ってみたい。D君の支持する水戸ホーリーホックさんが横浜F・マリノスと対戦する日は来るのだろうか?

D君:新メンバーが(ソロ歌唱で)選んでいる曲、全部難しそうじゃないですか? もっと簡単な曲にすればいいのに。『初恋サイダー』とか

D君:メンズ・エステと言いつつ最後まで出来る店もあるんですよ
私:そういえば前、言ってましたよね。新大久保で、外でヤるならJPY4,500で、ホテルでヤるならJPY10,000で、ホテル代の方が高いという
D君:そうなんですよ。あの辺は結構有名みたいで。よく駐車場とかでヤッてる人がいましたよ。あとは手コキとか……
公衆の面前で大声で話すことではないことに気付き、近くの人々に聞こえていないかを気にするD君。

ガラクタDIAMOND』がつばきファクトリーさんによって披露される前にハロ・コンのシャッフルされた集団が何度もやるのはよくないと私は思う。オリジナルの集団が散々パフォームしてあるていど手垢をつけてからやらないと。

昼にあの席をいただいた私にとって夜公演はおまけのようなものだったが、思わぬ喜びがあった。お喋りの担当がみずほちゃんだったのだ。このツアーのお喋りではご当地情報を調べて発表するのがお決まりになっている。大阪出身の秋山まおぴんと岸本ゆめのchanに聞いてきたというみずほちゃん。
  • アメ村。1969年以降アメリカのお洋服を輸入して販売していたことからアメ村と呼ばれるようになった。古着はチャレンジしたことがない。かみこchan(司会の上國料萌衣さん)にコーデしてもらいたい。
  • 箕面。もみじの天ぷら。コンサートの差し入れで岸本ゆめのchanがくれたことがある。私が食べたことがあるのはプレイン味。調べたらきな粉など色んな味がある。秋はもみじがキレイ。パワー・スポットの滝がある。私たちは忙しくて行けないので皆さんに行ってもらって私たちにパワーを分けてほしい。(箕面とみずほちゃんが言ったときのざわつき方や拍手から、観客の地元民率の高さが窺い知れた。)
私が入った三公演でみずほちゃんのお喋りが一番よかった。昨日の名古屋公演は野中美希さんによるつけてみそかけてみその宣伝と商品を贈ってくれた会社へのおべっかで、クソつまらなかった。

私はNHK大阪ホールに来るのは今日が初めてだった。見やすく、いい会場だった。NHKは潰すべきだが。終演直後、エスカレーターに向かう途中でD君と合流。新世界とかの話をしていたのって今の公演の小野さんでしたっけと彼は聞いてきた。驚くべきことに昼公演で有澤さんが話していた内容とゴッチャになっている。いま観たばっかりなのに。

D君:譜久村さんとかもうグッショグショになってましたもん
████さん:下が?
D君:いや……
████さん:下は分からないですもんね

梅田食道街の洋食店、スエヒロさんで████さん、D君と夕食。昼公演後におのみずchanのソロがよかったとtweetしたD君だが、このコンサートに小野さんのソロはない。結局、それは全員曲における北川さんと小野さんのユニゾンであることが判明した。席に着く際に照明に頭をぶつけ、座ってからもモノを落とし、お店を出てからもモノを落とし、手持ちが足りず食事代のJPY1,950を払うために████さんからJPY100を借りるもののお金を卸す場所を見つけられず自販機のお茶で手打ちにしてもらう等、最後までD君の独壇場だった。彼のお誘いで私は夜行バスで帰ることを決意したものの、スエヒロさんを出ると彼はササッとバス乗り場に行ってしまった。21時35分集合らしい。████さんも明日早いんで……という感じでご帰宅され、私は21時過ぎから23時59分まで暇を持て余した。例によって21時を過ぎるとサテンもマクドも店内利用が出来ない。駅の周りをぶらぶら歩き続けていたら疲れてきた。帰りのバス(東京特急ニュースター号)は乗客が少なく、乗務員の紳士に言ったら席を替えさせてくれ、快適だった。どっちにせよ熟睡は出来ないから乗り心地はリボーンと大差なかった。翌朝7時39分、池袋着。まっすぐ帰宅しシャワーだけ浴び、すぐに家で労働開始。17時15分に切り上げ、スーツに着替え、17時半から某社の一次面接。目の回るような生活。

2021年11月7日日曜日

続・花鳥風月 (2021-10-09)

午前7時の開店直後に入ったダフネ珈琲館の期待外れなレーコーとトースト。同じ地下街のすぐ近くにあったコメダの方がリアルなのは想像に難くなかった。それは分かっていたけど、コメダは東京にもある。せっかく名古屋に来たんだから地元感のある店に入りたい。この土地にはホーミーが何人もいる。あわよくばそのうちの誰かと会えればという期待を込めて朝から名古屋にいるが、結局は夜まで一人になりそうだ。私を東京駅鍛冶橋駐車場からささしまライブまで送り届けた最高級バス、ウィラー社のリボーン。運賃JPY10,400。新幹線と殆ど変わらない。乗り心地は新幹線にかなわない。席が広くて水平に近いくらいまで倒せるが、道路がガタガタなのでしょっちゅう揺れる。それに最前以外の席は微妙に足のおさまりが悪い。熟睡は難しい。微妙に眠い。けだるい。それなら家でちゃんと寝てから新幹線で来ればよかった。

badbadnotgoodの新譜“Talk Memory”を聴く。正当派ジャズに今風の味付け。絶妙な匙加減。“City of Mirrors”が私のツボを刺激する。2時間経っても混んでくる様子のない店を出る。時間が余る。よもだカフェ。すぐ近くのよもだそばという立ち食い蕎麦屋と経営が同じのようだ。前からちょっと気になっていた。レーコーを受け取ってから気付いたが世界のビールが複数種、置いてあった。一杯やってもよかったかもしれない。昼は尾毛多セコ代。味噌とんちゃん定食。本当は夜の会をココでやりたかったが例のアレで21時に閉まるらしい。森川さん(仮名)が別の店を予約してくれている。私が今日入るコンサートは18時開演の一回のみ。宿のチェック・イン開始が15時。風呂に入ってから出かけたい。それまで近くのサテン。オカダ珈琲。レーコー。ブログを書く。Twitterで相互フォローの紳士からDMが来る。昼と夜の両公演に入るという同氏と、夜公演の前にお会いする約束をする。客は私を含め二人しかいないのにワン・ドリンク2時間までと言われて退店(もしくは追加注文)を促される。厳密には1時間40分くらい。外のベンチで瞑想をして時間を潰す。歩き回ると消耗する蒸し暑さ。

15時直後に宿。名古屋ビーズ・ホテル。いつもウェルビー栄だから、たまには違うところに。泉谷閑示さんの本(『「うつ」の効用』、『「普通がいい」という病』)にこういうことが書いてあった:精神を病んでいる人は毎日ひたすら同じモンを食い続ける等、行動の即興性が失われている傾向がある。こうするべきだという頭の指令に支配され、心=身体の声を聞けなくなっている。思い当たる節はあるんで、小さいことからいつもと違うことをしてみようと。大浴場。全身を洗う。プロダクトのボタニカル・ホールド・ジェルで髪を整える。香水(イル・プロフーモのショコラ)をつける。超フレッシュな気分。16時半頃に宿を出る。

ハゲ
濃グリーンT
デニム
黒のトレッキングシューズ

金山駅の改札を出たところで待ち合わせた初対面の紳士(E氏)がDMで送ってくれたご当人の識別情報には、筆頭にハゲと書いてあった。私はそれを冗談かと思った。日頃からTwitterで頭髪がないと自虐なさっているが、実際には多少薄くなっているくらいなのを誇張しているのだろうと思っていた。だが実際にご対面すると、それはもう完全に禿げていらした。いや、まだ大丈夫ですよなぞと言う余地は残されていなかった。駅前のカフェ・ド・クリエ。

E氏:あんまりアイドルっぽい顔ではないですけど、入江さんよかったですよ
私:歌が?
E氏:ボディーが。早く写真集出してほしいですね。アップフロントと親御さんとの調整になるでしょうけど

E氏曰く彼が居住なさっている某地方都市では未だに県外移動に目くじらを立てる雰囲気がある。県内の移動は問題がないけど県外はよくないという謎の基準。人の集まりにしても親族ならいいと思っている。親族一同で焼き肉屋に集まってクラスターを発生させている。村社会。初対面ながらご自身のことをかなり開示してくださって、信用できる紳士だと思った。日本特殊陶業市民会館ビレッジ・ホールに入場。またお食事でも、と言ってE氏と別れる。

開演からしばらく完全に無表情だった新沼希空さんを見て、鬱なのかと私は心配になったが(私は当事者として他人が示す鬱の兆候に敏感になっている)、いったん捌けてシャッフル・ユニットで再登場した際には幾分か表情が出ていたので、きっと███を我慢していただけなんだろうなと安心した。つばきファクトリーにスキルフルな若手四名が加入したことで、新沼さんをはじめとする先発メンバーさんは危機に直面している。「私がもし、つばきファクトリーになれたら、まずは実力、表現力ともに先輩方に追いついて、いつかはHello! Project全体をスキルで引っ張っていけるような、そんな存在になりたいです」、八木栞さんが集団への加入発表直前にそう述べた。「私たちと一緒に、スキルを磨いていきましょう」、山岸理子さんはそう言ってオーディション合格を告げた。

こと歌唱スキルについてはその時点で既に山岸さんが八木さんに負けていたことが後から発覚している。昨日の夜にYouTubeにドロップされたつばきファクトリーの新曲『ガラクタDIAMOND』。あのしょうもない規制で21時以降に入れる店がなく、私は東京駅鍛冶橋駐車場バス乗り場近くのストリートで立ちながら聴いた。「もう土砂降り」のフレーズだけで持って行く八木栞さん。曲の終盤で繊細なニュアンスのつけ方で聴かせる豫風瑠乃さん。二十歳前後の先発メンバーさんが会得していない表現の大人っぽさを、彼女たちはもう手に入れている。都並敏史さんが稲本潤一さんのヒップ・タックルで吹っ飛ばされて引退を決意したように、新メンバーさんたちの表現力を目の当たりにして自身の引き際を悟る先発メンバーさんがいたとしても不思議ではない。(とはいえスキルにも色々ある。アイドルさんのスキルは歌やダンスだけではない。)

上國料萌衣さんが一人で歌い出す。露出面の見所がゼロ。私は夜行バスで途切れ途切れの睡眠しか出来なかったため、少し眠くなっていた。しばし目を瞑って聴いていたら半裸の島倉りかさんが合流していたのに気付き、慌てて目を開け、双眼鏡を構えた。その島倉さん以外にはBEYOOOOONDSさんから一岡伶奈さんと小林萌花さんが出演していた。一岡さんと小林さんはワキをかなり自由に舐めさせてくれたが、島倉さんの衣装は肩周りに布が付加され、舌の侵入を許さない構造になっていた。

『恋のUFOキャッチャー』で野中美希さんが見せるお尻ふりふり。スカートは生地たっぷりでフリフリ。それじゃこっちは不利。出来ない受理。あれはピッタリしたパンツとか脚を出してミニ・スカートでやらないと。そういう曲だから。

名古屋駅。地鶏坊主。時短要請に従わないありがたいお店。地下1階。20時10分から予約。少し早めに入る。注文用のパッドが使えない。予約の時間になるまでロックされているのかと思ったが、20時10分になっても反応しない。店員さんを呼ぶ。どうやらお店の側でその機体を使えるようにする処理が抜けていた模様。

私:これは███(Kさんの勤め先)だったら詰められるんじゃないですか?
Kさん:███だったら激詰めですよ。そうなった“深い理由”を聞かれます

私、森川さん、Kさん、Iさん、Sさん、少し遅れて合流した中島さん(仮名)。

K氏語録
  • 24時間365日、仕事のことを考えてます。抜けないんですよね。頭から
  • 会社支給の携帯のGPSで居場所は常に管理されています
  • 死んだ方が楽です
  • この何年か4時間以上寝た記憶がない
  • 寝ないと死にます。仮眠は取らないと。本睡眠は取らなくても何とかなります。仮眠は必要です
中島さんが企業の採用面接で相手を角瓶で殴った経緯
  • 職歴がないことを面接官に非難される
  • 私は祖父から譲り受けた███万円を█████円に増やした。お前は労働でそれ以上の利益を出したことはあるのかと反論
  • 角瓶で相手の禿げ頭を殴る。知り合いの弁護士についてもらうから裁判するならしてみろと啖呵を切る。呆気に取られた相手は警察沙汰にせず

2021年10月31日日曜日

つばきファクトリーANNEX ~岸本ゆめの×小野瑞歩×秋山眞緒=Smile♪~ (2021-06-21)

四ヶ月以上前のことなので書くのが難しいが、それ以上に思い出したくもない。イベントのことではなく、その時期の生活のことを。書くとどうしても思い出してしまう。クソ上司との関係悪化(元からよくはなかった)、詰め、業務量の増加と担当変更。ストレスで精神を壊した。私はちょっと困ったくらいでは他人に相談をするタイプの人間ではない。このときも自分で本でも読んで解決できるのではないかと思っていた。不安障害や鬱に有効だとされる認知行動療法(cognitive behavioral therapy)の本を買ってあったのを思い出し、読み始めた(David D.Burns, M.D., “Feeling Good”。G.Lukianoff and J.Haidt, “The Coddling of the American Mind”経由で知った)。認知行動療法を学べるというSPARKSというゲームをiPhoneにダウンロードしプレイした。ただ“Feeling Good”は700ページもある。鬱状態で読むのはかなり難しい。SPARKSは鬱でも最後までプレイ出来た。役に立つ部分もあったが、殴られて痛いのは痛いと思う自分がおかしいからだ的な論理は、苦しみもがいている私を救ってはくれなかった。“Feeling Good”内で出来る診断によると私は重めの鬱のようだった。専門家のアドバイスを受けるのは有効だと本かゲーム中に書いてあったのを見て「ストレス クリニック」で検索。上位に来たクリニックで光トポグラフィー検査というのを予約した。そこの医師曰く健常な脳の血流と比べ私のそれは双極性障害に近い。明確に鬱病とまでは言えないが、問診の内容も踏まえるとこのパターンは適応障害と診断することが多い。私はTMS (transcranial magnetic stimulation)治療を受けてみたかった。その医師からも勧められた。ただそのクリニックが相場に比べ異常に高い(安いところは一回四、五千円だがそこは二万円。三十回やるのが標準的)ため、もっと安いところを探してそっちに通った。五月末から八月くらいにかけては地獄のつらさだった。生きるか、死ぬかという状況だった。これを書いている今でもトンネルから完全に抜け出してはいない。波がある。でも光はだいぶ見えてきた。確実によくなってきている。TMS (transcranial magnetic stimulation)とカウンセリング(タッピング)がなければ私は休職していた可能性が高い。最近ではアシュワガンダで精神状態が改善している感じがするし、クリニックで出して貰った五苓散という漢方薬で頭痛が和らいでいるし、プロセス・ワークというカウンセリングも有益だと感じている。『つばきファクトリーANNEX〜岸本ゆめの×小野瑞歩×秋山眞緒=Smile♪〜』を私が観たのは、トンネルの真っ只中、真っ暗で何も見えない、人生でも五本の指に入る苦しい時期。イベントを観たから次の日から労働を頑張れたなんていう甘っちょろいもんではない。殺されかけていたので。ストレスはマジで人を殺す。

謎のイベントだった。開催が発表されたのは4月23日(金)の蒲田。キャメリア ファイッ! vol.12の最後。メンバーさんのチーム分け、あとは題名もスクリーンに出ていたかな? 情報としてその時点で出されたのはそれくらいで、日時も、会場も、詳しい内容も分からなかった。蓋を開けてみると、行ってよかった、行けてよかったと思える楽しいイベントだった。横浜のランドマーク・ホール。1回目が16時45分、2回目が18時50分開演。ファンクラブ・イベントは事前に謎であればあるほど楽しい傾向がある。最悪の精神状態と体調(鬱は気分だけでなく身体に症状として出る。精神と身体は繋がっている。精神=脳と考えると身体そのものだ)ではあったが、このイベントに関してはそれにはさほど邪魔されず楽しむことが出来た。イベントに占める小野瑞歩さんの濃度が高い。つばきファクトリー全体のイベントだと八人の中の一人、今日は三人中の一人。小野さんを観るのが私がイベントに足を運ぶ目的なので、トークにしても歌にしても彼女の出番が多い方が満足度が高い。あとはこの三人だからこそ生まれる空気感が新鮮で、面白かった。組み合わせの妙というかね。自分のことを考えてみても、たとえばとある三人で飲むのと、そこにさらに二人加わって五人で飲むのとでは会話の中身も変わるわけじゃないですか。共通の話題も違ってくるわけで。イベントの内容も結構盛りだくさんで。パントマイム、寸劇、箱から紙を引いてのトーク企画。衣装もよかった。制服衣装。眼福。小野さんはピンク。めっちゃ似合っていた。2回目で彼女が言っていたけど、つばきファクトリーだとピンク担当のメンバーが二人いるので(浅倉樹々さんと小野田紗栞さん)あまり着る機会がない。稀少だった。岸本ゆめのさんが、皆さん嬉しいんじゃないですか? と我々に問いかけていた。その通りである。しかもみーたんだけスカートを真面目に短くしていて、大好きになった。本当に可愛かったなみーたんは。特に2回目の公演は、4列(実質3列目)という、フェイス・ガードの着用が義務づけられていない一番前の列を与えられて。間近で彼女をたっぷり観ることが出来て幸せだった。
セーラー服とかブレザーとかを着てました。やっぱりマニアックなお客さんが多くて、正直気持ち悪かった。制服とかが好きな人は、みんな40代、50代くらいの方です。親と同じくらいの年齢ですね。[…]会ったばかりなのに何々ちゃん大好きだよ、みたいなことを本気で言ってくる人もいました。何を考えているの、おじさんて。父親くらいの年齢の知らないおじさんに、真剣に冗談ではなく、大好きだよとか、そういうのは精神的に来ます(中村惇彦、『女子大生風俗嬢』)
寸劇の台本は鈴木啓太が書いたという。岸本さん、小野さん、秋山さんはしきりに鈴木を賞賛していた。鈴木もまんざらでもなさそうだった。たしかに我々はところどころで笑ったが、それは彼女たちが演じるから可愛くて思わず相好を崩したのであって、鈴木がそれを自分の手柄のように思わないでほしい。アップフロントさんはよくも悪くも既存の人員や取引先を大事にする社風なのかもしれない。最高のものを作るよりも今いる人たちに仕事を回してメシを食わせるのを優先している。tiny tinyの司会者の人選にしても、手持ち無沙汰な社員に仕事を与えている感が強い。アップフロントさんがファンクラブ・イベントの寸劇の台本を鈴木に書かせているのにはイヤな予感がする。司会者としての出番が減ったとしても、自己顕示欲の強い出たがり作家として末永くHello! Projectに関わりつづけるのではないか。

三人でのイベントだけあってミニ・コンサートではそれぞれがソロ曲を拾う。小野さんは『夏ダカラ』。最後に三人で合流してからの『表面張力〜Surface Tension〜』、『元気者で行こう!』の流れが熱かった。最後の「よし!」をみーたんが担当していた。『元気者で行こう!』を改めて聴いて思ったが、この曲を聴いて励まされて元気を出せる人はちょっと悩んでいる程度の健康な人。鬱病患者ではない。大体、リアルな鬱に苦しんでいる人には、この曲で連呼される「がんばれー!」は禁句だとされている。

トーク企画には期待していなかったけど意外に面白かった。iPhoneの断片的な覚書を見ても話の流れが甦ってこない。何せ4ヶ月以上前なので。だからここの記録も断片的にせざるを得ないが、残しておく。1回目。箱からお題のようなものを引くのだが、小野さんが「イッちゃうよ」と言ってから引いていて、私は少しドキッとした。何かこう、引いた紙に書いてある嘘をつき通すみたいな企画だった気がする。私、実は双子なんです、と言い張る小野さん。二卵性……一卵性双生児、と言ったら秋山さんが「ソーセージ!」と大受けしていた。そういう言葉があるんだよと指摘され、本当に恥ずかしそうだった。これあんまり(SNS等で)言わないでくださいねと我々に懇願していた。毎日仕事だと疲れるので、双子が入れ替わっている。二人の瑞歩はみずいー、みずにーと呼び合っている。岸本さんは、世界一の大豪邸に住んでいる。二万平米。秋山さんは、未来から来た4,000年後。こんにちは(という言葉)も変わっている。日本語は変わっている。こんにちはにあたる言葉はアザマラ(アズマラ? マラが入っていたのは間違いない)。4,000年後の言葉で自己紹介(イントネイションがちょっとフランス語っぽかった)。流行っているのは靴飛ばし。でも靴が進化し、二万ヘイバー? 二万平米飛ぶ。2回目。秋山さんはギネス記録を保持している。何の記録かと問われ、タマネギを切るうまさと答える。小野さんは英語が喋れる。アメリカにいた(アメリカ出身?)。どの州? と聞かれ答えられない。一つくらいあるやろと突っ込む岸本さん。ロサンゼルス、ジャージージュー。ジャージージューがツボに入る秋山さん、メモっとくと言って笑う。岸本さんは占いができる。修行をした。どこで? アフ……アフガニスタン。小野さんに対して、あなたはチャプチェが好きですよね。秋山さんに対して、あなたは身内の恋人と親しく出来るタイプ。お兄さんの彼女とか。と、実話ネタをぶっ込んでいく。私たちつばきファクトリーっていうんですけど……と集団の将来を占って貰おうとする小野さんと秋山さん。売れるね、と即答する岸本さん。私はみなとみらいの母と呼ばれている、と会場の地域名を入れてくる岸本さんは流石。

私たちは今日のために準備してきた。皆さんも今日のために仕事や学校を頑張ってきてくれていたら嬉しい。そうやってお互いが今日のために頑張ってきて、この空間を作っている。皆さんと会ったり皆さんの前で歌ったりする機会は(コロナ禍で)限定されているが、私たちは皆さんの前で歌って踊るのが一番好き、的なことを最後のコメントで岸本さんがおっしゃっていた。小野さんと秋山さんのコメントは覚書を残していないので記すことは出来ないが、岸本さんと同じように真摯な思いが伝わってきたのは覚えている。

2021年10月30日土曜日

CAMELLIA〜日本武道館スッペシャル〜 (2021-10-18)

バニラの求人見たい 見たい 見たい
バニラの求人見たい 検索してね
目の前の交差点を女性向け高収入求人サイトの広告宣伝車(バニラ・カーと言うらしい)が左折する。やけに耳に残る替え歌。原曲の名前は知らない。フットボール日本代表の応援歌でも採用されたことがある。
モリシのゴールが見たい 見たい 見たい
モリシのゴールが見たい ラララーラーラララー
かつてセレッソ大阪で活躍し、今は同クラブの代表を務める森島寛晃さん。彼が現役の頃は、まだ俺たちの日本代表と思えた。今の日本代表は、俺たちではない。彼らだ。この感覚は多くのフットボール・ファンが共有しているようである。海外でプレイする選手が殆どいなかった頃は日本の選手が世界にどれだけ通用するかを計る物差しが代表の試合しかなかった。普段Jリーグで観ている選手が代表の試合で名を売って、海外に移籍する。そういう夢があった。おらが村的な田舎根性に支えられた一体感。今では代表に選出される選手の殆どが海外のクラブでプレイしている。

バニラ・カーの動画を撮り始めたところで後ろから誰かに声をかけられた。振り返ると森川さん(仮名)。名古屋から新幹線で東上された。彼が秋葉原の店舗型リフレにつけているいいねがTwitterのタイムラインに毎日のように流れてくる。今日もコンサート前にお楽しみになるのかと思っていたが、品川経由で池袋に直行してくれた。タカセさんに入店。一度入ってみたかった。喫茶室、グリル、コーヒー・ラウンジ、コーヒー・サロンとそれぞれ店が分かれているらしい。グリルがレストランなのは分かるとしてそれ以外の三つの違いが分からない。2階の喫茶室へ。森川さんはロール・ケーキとレーコー。私は果物とビスケットのケーキとホット・コーヒー。各820円。来年の上半期には新沼希空さんと谷本安美さんは退団するのではないかという予想で見解が一致する。まあそう言いつつ、我々が支持するメンバーさん(森川さん:yumeちゃん、私:みずほちゃん)もいつどうなるか分からない。岸本ゆめのさんが昨晩だったかな、Instagramのストーリーで、今のメンバーで武道館に立つのは最後かもしれないと書いていた。

16時ちょい前にサテンを出る。タカセク? と店名に反応していた森川さんがレシートを記念に持ち帰る。入場前にアルコールを一杯入れておこうということで、九段下駅前のターリー屋さんに入る。ココは決してリアルなインド料理店ではない。アパ社長カレーとのコラボ・メニューを打ち出す見境のなさ。だが、武道館公演の前後にお手頃な価格でサクッと一、二杯やる店として価値がある。この区域はあんまり店がない。森川さんは生ビール350円を二杯。私は私はマンゴー・ビールとカシス・ビール各500円を一杯ずつ。それぞれがターリー屋コンボ。あとフライド・ポテトをシェアした。最近で注目のMCはいますかと聞く森川さんにIDKさん(Twitterに顔を見せなくなった某支配層のような芸名)の“USEE4YOURSELF”を勧めた。ラップではないがCola Boyyさんの“PROSTHETIC BOOMBOX”がとてもよかった。この場では言いそびれたがラップでいうとLittle Simzさんの“Sometimes I Might Be Introvert”も非常によい。もっとも私は今のヒップホップを熱心に追いかけてはいない。評価の高い新譜をつまみ食いする程度。あとは過去のクラシックをたまに聴き直すくらい。

いい感じにアルコールが回る。ターリー屋さんを出る。武道館に向かう。あの坂を上がる。人混み、サイリウム商人。アンオフィシャル・フォトグラフ・ディーラーさんの露店で立ち止まる。8枚1,000円なんですね、と驚いている様子の森川さん。名古屋では最近4枚500円になっているらしい。彼は小片リサさんの写真(B55)を買おうとしたが売り切れていたとのこと。私はみずほちゃんの34番を購入。Sapphire & Rubyのときの。その先を歩くとダフ屋。コロナ騒ぎの前の感覚を思い出してきた。これだよ、これ。ちょっとお酒を入れてさ。人混みの中、アンオフィとかダフ屋を通り抜けて。会場前に多数のオタクさんがたむろしていて。どこかうわついた雰囲気で。こういうのも含めてのコンサートなんだよ。喫煙所があったはずの区域に歩を進める。八木栞さんと豫風瑠乃さんに注目なさっている紳士と合流。もう喫煙所ではなくなったようだが、皆さんその辺で勝手にスモークしている。三人でしばし歓談。森川さんは黄色の岸本Tシャツ、私はエメラルド・グリーン(正確にはミント色)の小野(瑞)Tシャツを羽織る。

ヴァイブスは完全に仕上がった。気分は完全にコロナ・バカ騒ぎ前。これからのコンサートで声が出せないのが信じられない。アルコールを身体に入れたが、さっき放尿したばかりなので、そっちの心配もなし。私の席は北スタンド一階。対面の南スタンド二階にはHello! Projectメンバーさんが集まっている。最前にはこっちから見て左から譜久村聖さん、生田衣梨奈さん、小田さくらさん。研修生ユニットさん、BEYOOOOONDSさんの前座。北スタンドからだと彼女たちの背中を見る時間が長い。つばきファクトリーさんの本番(そっちの意味ではない)でもそうなるのだろう。ポジティヴに考えれば、お尻を見る機会が増えるということだ。(ちなみに機会という意味でチャンスという言葉を使う人が多いが、日本語でチャンスというときのチャンスは殆どの場合chanceではなくopportunityである。)

つばきファクトリーさんが姿を現し数分経ったところで、急激な尿意が私を襲った。入場直前にオシッコしたばかりなのに、なぜなんだ。何であのときに一気に出てくれなかったんだ。時間差で来るな。あのクソみたいな規制で、飲食店が久しくお酒の提供をしていなかった。私はそもそもそんなに飲む方ではないとはいえ、アルコールがほぼ入ってこない状態に身体が慣れていたのだろう。気持ちよくなるくらいのアルコール量が急に来て、うまく対応出来なかったのだろう。あるいは、常態的なアルコール摂取をしていたとしても同じ結果になっていたかもしれない。分からない。ともかく尿意でコンサートどころではなくなった。おそらくいいコンサートだったし、大成功と言えるつばきファクトリーさん初の武道館公演だったのだろう。尿意で判断が出来なかった。

抜け出して化粧室に駆け込むことはもちろん考えた。だが、タイミングを見つけられなかった。トークが始まって、どうせ大したことを言わないだろう、今しかないと思い腰を浮かせかけたが、いきなりみずほちゃんのターンだったので席を立つわけにはいかなかった。しばらく映像でも流れてメンバーさんが着替える時間でもあればその間に放尿出来ただろうが、そういう時間が一切なかった。常にメンバーさんの誰かしらが出ずっぱりだったし、トークもコンパクトで、ほぼずっと曲をパフォームしている感じだった。何とかしてオシッコをしたい、コンサートを見逃したくない、通路に出るには右の二人の前を通らないといけない、といった考えがグルグルとせめぎ合う。結局、尿意に終始支配されたまま、私にとってのつばきファクトリーさん日本武道館公演は幕を閉じた。

二着目の衣装が素晴らしかった。メンバーさん一人一人の体型を最大限に生かすためによく考えてデザインされている感じがした。メンバーさん全員が、この衣装はこのメンバーさんしか似合わないと思える衣装を着ていた。この点において私はコンサートを制作する側のつばきファクトリーさんへの愛を感じた。平時の武道館コンサートに比べて予算が限られているのは明らかだった。リハーサルのように簡素な演出と照明。ステージは剥き出しの台。映像効果は皆無。もちろん炎が出るとかの特殊効果もなし。最大で50%までしか客を入れられないというクソ規制は大きな打撃なのだろう。そんな中、二着目の衣装には制約の中でも何とかしてこの特別な日に花を添えようという意地を感じた。谷本安美さんがピタピタのロング・パンツで見せるお尻が物凄かった。私が双眼鏡から観ていた彼女の後ろ姿はそのままイメビとして通用する。岸本ゆめのさんが、この公演のためにジムに通っていた、この日のために私たちは体型を整えてきた、今日は私たちのスタイルも目で楽しんでくださいという旨のことを言っていた。お言葉に甘えさせてもらった。谷本さんについては数時間前のタカセで近々辞めるだろうと話していたが、あの唯一無二の身体を見せられてからは、あんみぃやめないで……という思いが強くなった。

大会場のコンサートでありがちな、ダンスを放棄してメンバーさんが各所に散らばってオイオイを煽る感じで拳を上下させて走り回る感じが殆どなかった。元のフォーメーションに忠実に曲をパフォームしていた。私はその方が好きだ。しかし北スタンドからでは反対側の客席に向けて行われているコンサートを後ろから観ているという感覚が何割か残り続け、消化不良感が残ったのは否めない。もし私の席が反対側だったらだいぶ違う体験を得ていただろう。早くBlu-rayで観たい。でも私は北スタンドから谷本安美さんのイメビ級絶景を目に焼き付けることが出来た。コレはコレでよし。『恋のUFOキャッチャー』のお尻を振る箇所が正面(南スタンド)向けだったのが歯痒かった。

私は今日のコンサートに臨むにあたり、みずほちゃんがつばきファクトリーさんに加入した当時(5年前)の画像やブログを少し振り返っていた。あどけなさが残る当時の写真。すっかり大人になった今までこうやって活動を続けていてくれている。Hello! Projectの、つばきファクトリーの、アイドルの小野瑞歩さんでいてくれている。感謝の気持ちがわいてきた。私がこの5年間なんとか生きて来られたのも何割かはみずほちゃんのおかげだ。もし彼女が日本武道館公演の前日や当日の夜に彼氏サンとエッチしていたとしても、私は彼女のことを悪く言うことは出来ない。

終演後、奴らは人を密集させないために規制退場をさせておきながら、駅に向かう道では我々をロープで囲って密集を作り出していた。アルバイトだか派遣だかの青年が、ロープをくぐらないでくださいと連呼していた。ロープの先にアンオフィシャル・フォトグラフ露店がある。そこに行きたかった。少し歩いてから私はロープを跨がって(くぐるなって言ってたからちゃんと従ったよ)踵を返した。世の中は本当に馬鹿ばっか。本を読まない、労働の外で何も物事を考えないような人たちが大半。みんながこうしているから自分もそうする。みんながやっているから正しい。誰かがこうしろって言ってきたから正しい。自分で決めて自分で結果を背負う覚悟もない。だからこのコロナ茶番でも国全体があの分科会とかいうキモ集団に牛耳られる。

アンオフィシャル・フォトグラフ露店前。森川さん、八木さんと豫風さんを観に来た紳士に加え、譜久村聖さん支持者(二日前は長崎、その前の週末は名古屋にハロ・コンを観に行って、今日も当たり前のように日本武道館に顔を出すキチガイじゃなかったナイス・ガイ)、初対面のローティーン愛好家と合流。ローティーン愛好家は最近撮ったという宮崎由加さんとのチェキを私に見せながら、ゆかにゃ老けましたよね。もう27歳ですから。27歳はババアですよ。Juice=Juice全員ババアですね、と笑いながら言った。コンビニで飲み物を調達し、コイン・パーキング・エリアで輪になって歓談。九段下サイファー。

譜久村聖さん支持者(以下「譜」):小野瑞歩さんスキルフルですよね
森川さん:熊井友梨奈さんを彷彿とさせる低音域が
私:そうすね。低音がね
譜:俺、シコッてるんで
私:はい?
譜:小野瑞歩さんでシコッてるんで
誇張なしでこの後、二十秒くらいは沈黙が続いた。沈黙が何周もするという感覚を初めて味わった。


併せて読みたい:10/18 日本武道館

2021年10月23日土曜日

Sapphire & Ruby (2021-07-24)

ニック・ストックはたしかコロナ騒ぎの前までは朝7時半から営業していた。今は9時にならないと開かない。朝食を食い始める時間として9時はちょっと遅い。2時間半もすりゃ昼食の時間帯が始まる。営業開始を7時半から9時に遅らせることがコロナ感染者数の抑制にどうつながるのかは不明だが、基本的にみんなバカだし疲れていて気力もないし事を荒立てることをよしとしない国民性なので、いちいち反抗しない。この度で三連泊するウェルビー名駅でゆっくりと朝風呂に浸かる。ニック・ストックで今日一人目の客になる。ニック・バーガーとホット・コーヒー。

名古屋駅前の地下街で昼食の店を物色。海転寿司 丸忠という回転寿司の店に入る。どうせ安いだろうとタカを括って気にせず食っていたら3,828円。精神的ダメージを負うが平静を装い、何事もなかったかのように支払う。700円のうなぎがおいしかった。820円の皿もあった。

金山駅へ。譜久村聖さん支持者の紳士、横山玲奈さんから浅倉樹々さんに推し変しつつある紳士と合流。ブラジル・コーヒーというサテンに入る。ここで昼メシを食うという選択肢もあったが、せっかく名古屋まで来たのだからおいしいものを食べておきたかった。実際、譜久村聖さん支持者が頼んだ定食は見るからにいかにもサテンのメシという感じだった。悪くはないが、私が求めているのはそれではない。

金山駅から地下鉄で数分間。どの駅で降りたのか定かではない。西高蔵駅か日比野駅のどっちか。名古屋国際会議場センチュリー・ホール。今回のハロ・コンはSapphire & Rubyと銘打って、団体を二つに分けての巡業。小野瑞歩さんが属するのはチームSapphire。今日は昼と夜の両方がチームSapphire。このツアーで私が入ったのはこの二公演のみ。

二公演を通しての雑感:
・小野瑞歩さんが、あっと驚くほど可愛かった。特に二つ目の衣装で三人シャッフルで出てきたとき。双眼鏡で観ていてデコルテ、背中。健康的な焼け方。肉の付き方。最後の曲『花が咲く 太陽浴びて』(モーニング娘。'18)で背中をこちらに向けて両腕を頭の上に伸ばして止まるとき、肩を出した衣装から覗く官能的な肌を堪能できた。何回観ても引きつけられる笑顔。彼女を支持すると決めたから義務として追いかけているという感覚は皆無。一から新たに彼女を再発見したような衝撃が、私の中に走った。『愛は今 愛を求めてる』のフックのイェー! とかシャー! 的なラインを歌う彼女がやたらと愛くるしかった。
・羽賀朱音さんがしばらくお見かけしないうちに見違えるほどキレイになられていた。誰かを判別するのに時間を要した。あれは誰だ? 岸本ゆめのさん? いや岸本さんはこの公演にはいないはず。いるはずないけど、和田彩花さん(今の姿ではなく現役時代の)? 衣装がモーニング娘。さんのメンバーさんと一緒。ということは……えっ、羽賀さん?? という感じだった。
・植村あかりさんの一着目衣装で、普通に踊っているだけでもチラチラと中のスコートが覗いていた。『表面張力〜Surface Tension〜』では終盤のキックでモロに見せてくれた。
・とにもかくにも衣装が最高。これがHello! Project。そうだよ、こうじゃなくっちゃ。セット・リストなんかより布の少なさが遙かに重要。つばきファクトリーさんとBEYOOOOONDSさんの二着目が素晴らしかった。特にBEYOOOOONDSさんのデニム生地衣装。岡村美波さんの短パンはそこまでキワキワな短さでもないのに下から肉が若干はみ出ていた。お辞儀をする度にお胸の谷間を見せてくれた。前田こころさんはしゃがんだときにほぼお尻の始まりに近い位置まで脚を見せてくれた。西田汐里さんはこれでもかとワキを見せまくってくれた。この衣装で身体の線が最も際だっていたのは里吉うたのさん。ダンス部でも彼女は目を引いた。
・横山玲奈さんが“Go Waist”で床に座って両ふとももを上げて前後に動かす運動をしていた。凄かった。イメビの世界だった。然るべきアングルから高画質ヴィデオ・カメラでねっとりと舐め回したかった。
・“Fiesta! Fiesta!”における小野田紗栞さんのソロ・ダンスが、目を疑う出来だった。笑ってしまうほど酷かった。キレが皆無で、何かの冗談かと思うほどだった。彼女にダンスが不得意という印象はなかったので不思議だった。
・昼公演と夜公演の間の限られた時間で、先述のお二人に加え、金澤朋子さん支持者、佐々木莉佳子さん支持者、個人事業主の6人で鳥貴族に入った。私にとっては初めての鳥貴族だった。あの値段であれが出てくるのはなかなかよい。

公演後。佐々木莉佳子さん支持者の紳士に佐々木さんは肌の露出度が低かったですねと言うと、よく見たら衣装が半透明で脚が透けていたしふとももとお尻の境目まで見えていた、と満足げだった。(Instagramで彼女に)DMするんですか、見えてたよって。と私が聞いたら、しないです。と彼は即答した。

東京五輪の開催に合わせた祝日配置で、7月22日(木)〜7月25日(日)が四連休だった。私は初日から名古屋に来ていた。精神的に限界に近かった。この時期は抑鬱症状が毎日きつく、そのままずっと労働生活を耐えきるのは難しい状況だった。今回の旅で毎日誰かしらと会って、コーヒーを飲んだり、メシを食ったり、お酒を飲んだり、コンサートを観たりと楽しい時間を過ごして、だいぶリフレッシュ出来た。一命を取り留めたと言っても大袈裟ではない。

ジェイミー (2021-08-14)

罹ったこともねえ癖によくもまあ一年半以上コロナコロナ言い続けられるよな。世の中のほぼ全員がコロナに強い関心を持っている。この状態が異常。いくら対立しようが同じ土俵。頭をコントロールされている。感染者数、感染者数って言うけどその感染者たちはその後どうなったんですかっていう話。みんな死んだの? 感染したことがないつもりのあなただって検査を受けていたら鼻腔や唾液からヴァイラスが検出された可能性はある。メディアが遊び半分で蔓延させたコロナ恐怖症がなければ、風邪をひいたで殆どの人は終わっていた。少なくとも日本では。コンサートやサッカーの試合で好きに声が出せていた。アイドルさんの握手会も続いていた。我々は物事を自分で体験せずに他人の作った文字や映像で知ったつもりになることに慣れすぎている。インターネットが便利になり過ぎて、遠く離れた異国で起きていることと身の回りで起きていることの区別がつかなくなっている。ことコロナに関しては、それらの弊害が社会や文化に甚大な被害をもたらしている。

せめて感染してからモノを言え。私のように。そう、私は唾液PCR検査でコヴィッド・ナインティーンの陽性認定を受けた。自分の身体でこのヴァイラスと付き合い、どういうものかを感じた。当事者として。インターネットで聞きかじった情報を元に稲川淳二さんの怪談のようにおどろおどろしく後遺症を語る奴らとは違う。この期に及んでコロナを素朴に恐れ続けるのは精神の病気だろう。煽りでも何でもなく信頼できる心療内科に通って適切な治療を受ければ楽になれるかもしれない。Twitterは精神病との相性がよすぎる。ストリートでは誰しもがマスクを着けているが雰囲気はTwitterより大らかだ。いくら従順な馬鹿でもみんな肌感覚で何となくは気付いている。コロナが大したものではないって。生きていく上では生活実感、肌感覚ってのが重要なんだ。

池袋の東急ハンズ(10月いっぱいで閉店する)の近くにあるブリリア・ホールで、ミュージカル『ジェイミー』を観劇した。後から振り返ると私はこのとき既にコロナ感染者だった可能性が高い。体調はまあ、ちょっと風邪っぽいかなというくらい。やや身体が火照るなという感覚はあったが、正確に体温が何度だったかは分からない。私には体温を測るという習慣がないため、自分の平熱も知らない。興味もない。体温が何度だろうと労働の責務からは免除されない。休んだら後からその分を取り戻さないといけない。劇場に入るときの検温では引っかからなかった。近所のクリニックで唾液PCR検査を受けたのが8月16日(月)。結果を私が知らされたのは8月18日(水)。クリニックで症状を説明したときでさえ、コロナの可能性は低いと医師は言っていた。8月14日(土)にコロナ感染を自覚する術はなかった。何せ、風邪っぽいという以外の何でもなかったからだ。コロナはただの風邪という標語は「ただの」の部分でバイアスがかかってしまうが、実際に風邪なのだろう。私はそれを自分の身体で理解した。

もちろん高齢者を中心にコロナ感染が生命にかかわる場合もあるのだろう。でも彼らの延命のためにそれ以外のすべての人々が我慢を強いられ、失業や収入源に苦しみ、鬱になり、自殺する社会はディストピアだ。糖尿病が恐いからといって世の中のありとあらゆる飲食店に糖尿病患者専用のメニューだけ提供させるようなモン。国全体が入院病棟のようになって、行動や経済活動を細かく管理される。それが日本という国の死に方なのかもしれない。

コロナが落ち着くなんてことはなくて、あるとすればコロナに対する人々の反応が落ち着くということしかあり得ない。知らないだけでコロナと同等もしくはそれ以上に健康や生命を脅かす要因はたくさんあるし、どれにどれだけ注意を払うかというだけの話。副島隆彦さんが『日本は戦争に連れてゆかれる 狂人日記2020』で書いていたように、コロナをいつまでも恐れてマスクだの人との距離だの県外移動だのワクチンだのを神経質に気にし続ける人たちは、震災から何年経っても福島の農作物が、放射線が、なぞと強迫的に騒ぎ立てる人たちと同じ分類のヤバい人たちとしていずれ無視されることになる。その日が早く来てほしい。

この日は私にとって誕生日の二日前だった。『ジェイミー』のファンクラブ先行受付が始まったとき、誕生日の付近に入りたいなと思ってこの日に申し込んだ。まあ、歳をとるってことはだいぶ前からめでたくはなくなっているし、特に祝いたいわけでもないのだが、どうせなら気分が高揚するような予定を入れておきたい。そういう気持ちがあった。

田村芽実さんがソロ女優として出演される舞台を、私は一度ずつしか観ていない。チケットは安くない。一万数千円する。Hello! Projectと横浜F・マリノスの出費もある。それに舞台において田村さんはあくまで登場人物の一人。ずっと彼女だけを観られるわけではない。だから一回だけに抑えている。チケットが高額なだけあってどの劇も出演者、衣装、演出等々すべてに抜かりがなく一流。いいものを観られてよかったという満足感を得て、それで完結していた。経済的な理由で我慢しているというよりは、一回で満足していた。今回の『ジェイミー』に関してはちょっと違った。翌日も心地の良い余韻が残った。観に来てよかった、もう一回観たい、と心から思った。田村さんが演じたのは主人公の親友という比較的いい役ではあったが、それよりも劇全体として、とても気に入った。結局、二度目の観劇は実現しなかったが、もしBlu-rayが出るなら買いたいなとは思う。

物語としては、高校のクラスで、これから進路を決めないといけない生徒たち。君たちはスターにはなれない、現実的な職を選べと言う教師。ドラック・クイーンになるという夢を密かに抱く主人公。教師、同級生、社会の多数派による圧力やいじめに傷つきながらも、なりたい自分になるためにもがいていく。という感じ。登場人物の一人一人が本当に魅力的だった。もちろん役の重要度によって描かれ方に濃淡はあるのだが、基本的に全員が濃い。それぞれに人生があって、人間味があった。どの登場人物にも、どこかしら入り込める要素があるというか。主人公の青年がチャーミングで、これ以上ないほどの適役だった。徐々にドラック・クイーンとして自信をつけていき、クラスの中でも立ち振る舞いが変わっていく、その様を表現する演技が見事だった。観ているこっちも応援したくなる感じ。私はドラック・クイーンのことをHubert Selby Jr.さんの小説などで文字としては認識していたけど、この劇で映像として認識出来たのは今後の読書に役立つはず。主人公と対を成す存在として、事ある毎に主人公をなじるいじめっ子の存在も欠かせなかった。横浜F・マリノスの仲川輝人さんに似た、実際に不良経験がありそうな紳士。2019年明治安田生命J1リーグ第33節の川崎フロンターレ戦で長谷川竜也さんに後ろから削られてガンを飛ばして詰め寄る仲川さんのような感じの威圧感と不機嫌さを常に放っていた。田村芽実さんは理解者として主人公に寄り添う内気な処女。(イスラム系の役のため肌の露出がほとんどなかったのは遺憾だが、今回に関してはミュージカル自体の魅力がそれを上回っていた。)

私は観劇前に本家米国のサウンドトラックを何度か聴いていた。今は便利なものでSpotifyに大体ある。劇中、どこかで聴いたことのある曲だな、というのがあって、咄嗟に思い出せなかったが、サウンドトラックに収録されている曲だった。音楽がいいというのも私が『ジェイミー』好きになった理由の一つだ。

学校という閉鎖された空間に特有のヒリヒリした人間関係やクラス内階級が痛いほど伝わってきたが、笑える場面も多く、とにかく全員のキャラクターが濃く、全体としてはポジティブで、爽やかで、楽しいミュージカルだった。いわゆるdiversityとかinclusionの話だと私は感じた(もっと広義にはsocial justice)。ただそのinclusionが、結局は権威(先生)に認められる形でしか達成できないというのに、私としては何となく後味の悪さを覚えた。(当初はドラック・クイーンとして新しい自分になった主人公がその仮装で学校のパーティに参加することを教師に拒絶されるが、最終的には教師が折れて参加を認められる。)多文化主義にしてもそうだが、いわゆる現代でリベラルという立場を取る人たちの目指すところは個人の自由ではない。マイノリティとされるさまざまな集団的属性を定義し、彼らへの資源配分を公共政策に反映させることだ。そのためには上から「認めて」「配分する」権威の存在が欠かせない。

2021年10月2日土曜日

つばきファクトリー 小野瑞歩バースデーイベント2021 (2021-09-29)

――ご家族の来日が決まり、奥さんや生まれたばかりの娘さんとも会えることになりました。一方、他のクラブには家族と一緒にいられないことに耐えられず、退団してしまう選手もいます。レオ選手はなぜ我慢して戦い続けられたのでしょうか?

 家族と一緒にいられなかったことで、正直つらい時期もありましたね。でも、またJリーグに戻ってきて、J1でプレーするのが僕の夢でした。以前の自分と今の自分がまったく違うことをJリーグのファンに見せたかったんです。そして、生まれてきた娘の未来のためにも僕は辛抱強くならなければならない、と自分を奮い立たせて、つらい時期を我慢しました。

――奥さんと娘さんはもう日本に到着しましたか?

 今はもう来日していて、隔離中です。あと1週間ちょっとで会うことができます。

――待ち遠しいですね。

 そうですね。早く会いたいです! もうつらい時期は過ぎ去りました。家族が日本に来られただけで、本当にありがたいなと思います。
筋骨隆々のフットボーラーでさえ、愛する妻や子供と数ヶ月会えないだけで精神の安定を保つのが難しくなる。運動が鬱の治療に効果的だと医者やトレーナーは言う。それなら運動を職業とする人々の精神的な不調はどう説明するのか? 彼らはもっと運動をすれば鬱や不安に苛まれなくなっていたのか? レオ・セアラさんの筋肉を見てみろよ。知らない人は検索してみてほしい。Jリーガーの中でも際だつ体躯。ストレスをレオ・セアラさんのように乗り越えられず日本でのプレイ継続を断念した選手もいる。筋トレさえすれば精神の問題と無縁でいられるなんていう無邪気なものではないことが分かる。ドイツ代表にまで上り詰めたゴール・キーパーのロベルト・エンケさんは2度の鬱に苛まれ、32歳で電車に飛び込み自ら命を絶った(著:ロナルド・レング、訳:木村浩嗣『うつ病とサッカー』)。サンフレッチェ広島さんで活躍した森崎兄弟も鬱に苦しんでいた(森崎和幸、森崎浩司、『うつ白 そんな自分も好きになる』)。

家族に会えない環境での生活に耐えられないフットボーラーの話を読むと、私の頭にはこういった疑問が頭によぎる:会えない以前に、そもそも愛するパートナーや子供がいない我々の立場はどうなる? 彼らが耐えられないその状況に、我々は常に置かれているのだが? ただ慣れているだけで、我々は慢性的に精神を病んでいるのではないだろうか? 少なくとも私には当てはまっているように思える。心の溝を、趣味を加速させることで誤魔化している。好きなアイドルさん、フットボール・クラブ、音楽家といった人々の活動への没入が、いつしか自分の人生から目を背ける手段になっている。同じコンサートに何回も入る。ほぼすべてのホーム試合を現地に観に行く。より多くの、より強い刺激と癒しを求め続ける。たとえば食事にしたって、妻子がいたならたまに家族でバーミヤンにでも行けば満足出来るのだろう。中国語の飛び交う池袋チャイナ・タウンの店に通って変に舌を肥えさせる必要などない。いつまで持ち堪えられるのか、分からなくなってきた。いつ死んでもおかしくない段階に、私の人生は入りつつある。

ランドマーク・ホールの10列(1回目も2回目も同じ列だった)から双眼鏡を使いながらおのみずchanを粘着質に追いかけていると、死にたいという考えが少しだけ私の頭に浮かんできた。正確には、毎日こうやって好きなものを観てヘラヘラして過ごしたい、もしくは死にたい。サブ・カルチャーの世界の人は四十で鬱になると誰かが言っているのを聞いたことがある。ナインティナインの岡村隆史さんが体調を崩した(鬱病と言われている)のも四十歳の頃。独身だった。人生の軸を家族に移さず他の何かで幸せを得ていたつもりだったのが誤魔化しが効かなくなってくる、節目の年齢なのかもしれない。もちろんすべての人間をひとまとめにして語ることは出来ない。Hello! Projectの現場には真っ当な人生のレールに乗り損ねた、行き遅れの成れの果てのような50代、60代男性がたくさんいる。彼らは彼らで幸せそうである。もちろん、何歳だからこうなっていなくてはいけないという考え方が間違っているのはTodd Roseさんが“The End of Average”(邦訳:『平均思考は捨てなさい』)で論じた通りだ。しかし一方で、そういった規範が現に社会に存在し、同調圧力がある以上、我々がそれに大きな影響を受けるのは避けられない。

気圧のせいなのかもしれない。先週、先々週と私は調子がよかった。二週間連続で調子がよいと思えたのはここ4ヶ月で初めてだった。今週は気分が落ち込みがちだった。これを書いているのは10月2日(土)なのだが、特に昨日は本当にきつかった。頭痛が酷かった。メンタル・クリニックで先生にそう伝えると、今週は気圧の変化が激しく、そのせいで調子の悪い人が多かった。昨日は台風が凄かったから(不調も不思議ではない)と言っていた。1回目が16時45分開演、2回目が18時50分開演。午後休を取って横浜に向かった。よく分からなかったのが、労働から解放され好きなことをやっているはずの午後の方が胸が苦しく頭が重かったことだ。

今日は平日ですよね? 火曜日? 今5時くらいですよね。違ったかな? 皆さん絶対、仕事をしてるでしょうに……。(笑いが起きる)何で笑うんですか?(これはきっと、まともに働いていない奴も一定数はいるだろうという暗黙の了解があるからだ。何らかの恵まれた境遇にいて働かなくても食っていけている。そうじゃないと説明がつかない人々がHello! Projectの現場にはいる。)私のためにきっと半休を取ったり、休んだり、他の手段を使ったりしてくださっている。それは普通のことではない。と、みずほchanは1回目の公演で噛みしめるように感謝を表していた。2回目でも、皆さん、仕事は終わらせてきたんですか? と我々に問いかけていた。本当に優しくていい子に育っているなと思う一方、企業勤めの彼氏がいるのではないかと勘ぐってしまう。Hello! Projectメンバーさんの殆どが異性交遊を文春にスッパ抜かれないのは取材費用に見合うニューズ価値がないだけで、普通に考えて多くのメンバーさんに彼氏はいる。つばきファクトリーさんの全員が我々に優しいのは、全員に彼氏がいて心に余裕があるからだ(※ここでいう全員に新メンバーさんは含めていない)。

アイドルとファンの関係は金銭を介さないと成り立たない。金の切れ目が縁の切れ目。これは産業、事業、商売。「需要 供給 満たす欲求」(漢、『需要と供給 feat. YOUTH』)。アイドルという存在は虚構、幻想。アイドルさんに(少なくとも第一線からの)事実上の定年があるのは労働条件の問題ではない。少女性に期限があるからだ。いま好きな子が活動から足を洗ったら、我々は何事もなかったかのように次の若い子に鞍替えする。(最近思う。若さの切り売りであり、歳をとって続けるのが厳しいという点で、アイドルと不良系のラッパーは似ている。)

アイドル産業とは愛の共産主義である。アイドルさんの愛はみんなで分かち合うものであって、私有してはいけない。その原則に反するから、彼氏の存在を公にすることはアイドル生命の終わりを意味する。労働環境とか人権の話ではない。疑似恋愛を商売にするのはいかがなものか的なことを訳知り顔で論評する奴らは、愛の資本主義で戦えない人たちへの救済策を提示してみろ。自分を磨いて婚活をしろなんてのは答えにならない。それこそが資本主義の論理だからだ。資本主義が必然的に生み出す敗者をどうやって救うのか。それが問題だ。仮にアイドル産業を規制したとして、他の産業が形や名前を変えてアイドル産業化するだけだ。私がこのブログで何度も書いてきたように愛とセックスへの『闘争領域の拡大』(ミシェル・ウエルベックさん)への日本からの回答がアイドル産業なんだ。

我々がアイドルに会いに(観に)行くのをやめられないのは、金銭を介さないと得られない関係とはいえ、そこにはたしかに愛があるからだ。少なくとも、この日のランドマーク・ホールには紛れもなく、それがあった。私が普段の人生では感じる機会が殆どない、それが存在した。小野瑞歩chanの21歳のお誕生日を祝うため、9月29日(水)、それぞれの異なる事情を抱えながらも横浜に集結した我々の愛。おみずchanがステージから我々に恵んでくださる愛。お金を払っている消費者と、職務を遂行している労働者というだけの関係ではない。もちろんファンクラブの年会費を払い、チケット代を払っていなければ我々は席を与えてもらえなかった。でも、それだけじゃないんだよな。
愛……。愛というのは、<滅多にない>ものですよ。知らなかったんですか? だれもそう教えてくれなかった?
(ミシェル・ウエルベック、『地図と領土』)
15歳の頃から観ていた小野瑞歩さんが21歳のお誕生日に『私がオバさんになっても』を歌う場に居合わせたのは私にとって感慨深く、時間の流れを感じた。この曲は二十歳を超えてベテランになってきたメンバーさんがソロ・イベントで歌うと鳴りが違う。私より若い子がたくさん入ってきたけど、これからも私のことを応援してくれる? とファンに聞いているような、そういう含みがある(と私は勝手に思っている)。

鈴木啓太がいないのは本当によかった。イベントの思い出がみずほchanだけになるから。みずほchanはグダグダになってしまったと一人でのイベント進行に反省しきりだったけど、私はとにかくみずほchanを視覚的、聴覚的に舐め回したいのであって、共演者気取りの二流三流司会者はその妨げでしかない。たとえグダグダであったとしても彼女の緊張している姿が愛しい。去年も書いたが鈴木啓太がやっているのはメンバーさんとの個別お話し会。メンバーさんの魅力を引き出す脇役に徹することが出来ていない。ただメンバーさんとの交流を楽しんでいる強いファン。そんなのを見せられるために私は労働を調整し平日の横浜に足を運んでいるわけではない。上々軍団さんはそろそろ潮時。彼らはファンクラブの仕事やエスタシオン的なことをやっていればいいんじゃないか。ともかく鈴木啓太がいなかったおかげもあって、私はみずほchanのことを新たに好きになり直した。

1回目
・まだお祝いのメッセージをくれていないつばきファクトリーのメンバーもいる。誰かは言わない。新メンバーからは昨日プレゼントを貰った。まだ八木栞chanにお誕生日のプレゼントをあげていないのに。
・20歳だと大人になりたてという感じがしますけど、21歳だと完全に大人じゃないですか。“完全に大人”の皆さんからしたらまだ子供かもしれないけど……。
・ビデオ・メッセージは佐藤優樹さんから。スケスケのエッチ衣装。
・おみずの前向きアドバイスというお悩み相談セグメント:一枚目だったかな、全部の漢字にふりがなが振ってあったらしく、私はそこまで馬鹿じゃないですよとやや不服そうだった。
・(最近、BEYOOOOONDS小林萌花ちゃんに似た一般女性に振られました。もう二度と一般女性を好きにならず、アイドルに専念するにはどうしたらいいですか?)(ヘッズ、笑う)何で笑うんですか?
・(たしか猫がなつきません的な悩み)自分も猫になってみればいいんじゃないですか? 自分と同じだとなつくと思うので。ニャーって……そんな冷たい目で見ないでくださいよ~。
・『私がオバさんになっても』の途中でちょっと泣きそうな顔になって歌に詰まりそうになっていた。客席に佐藤優樹さんでもいたのかと思ったら単純に歌詞を忘れただけのようだった。
・後輩が出来て教えることも増えたが、私はまだ人に教えられるような人間ではない。応援されるに相応しい人になりたい。

2回目
・(客席を見て)見るかぎり……。(ヘッズ:笑う)見るかぎり、21歳より上の人が多そうじゃないですか。21歳になったときってどうでしたか?
・普段のバースデー・イベントの企画は上々軍団が考えている的なことを言っていた。
・おみずの前向きアドバイスのセグメントで読まれた投稿の半分くらいがなぜかお悩みではなく質問だった。事前に裏方がチェックしていないのかな?
・(最近、一推し以外の子に目が行ってしまいます)いいんじゃないですか?(ヘッズ:笑)たくさんの人を見るのはいいと思う。この方も私が一推しじゃないかもしれないし。でも一推しの方のアレがアレしたらアレですけど……。いちばん好きな方のことは傷つけちゃダメだと思います。
・(名前が鈴木啓太なので上々軍団の鈴木啓太さんが滑ると自分も滑ったみたいで恥ずかしい)鈴木啓太さんが滑ることなんてあるんですか?(うなずくヘッズ)うんって、酷い! 鈴木啓太さんは色んなハロプロ・メンバーと写真を撮ったりイベントの司会をしている人ですよ。鈴木啓太さんが私とツー・ショットを撮っていたら、それを私とあなたのツー・ショットと思えばいいじゃないですか。
・(瑞歩ちゃんにとっての癒しは何ですか?)新メンバー。(豫風)瑠乃chanなんて楽屋で夏休みの宿題やってるんですよ! 私なんてもう何年前なんだろうって……。パフォーマンスは凄いけど普段は中学生らしさがある。
・瑠乃chanなんて何歳差? 6歳? 中二と21歳って何歳差? 7歳? 7歳も離れた子が入ってくるなんて!
・ミニ・コンサート中のたしか最初のブレイクで「ライブ、MC、楽しい」、とナチュラルに韻を踏んでいた。
・実は『愛・愛・傘』は研修生の頃に歌っていた。その頃からすると一人で続けて三曲も歌うなんて考えられなかった。
・1回目はとにかく緊張していて、それはそれで楽しかったんですけど、2回目は楽しんでいる自分を感じながら出来た。
・本当は客席側に降りて借り物競走とかやりたかった。前にやったことがある。でも今は出来ないので前向きアドバイスのコーナーにした。
・(バースデー・イベントが5回目なことについて)3から4よりも、4から5になる方が数字が大きくなったって感じがしませんか? ……しないか。19歳から20歳になるよりも20歳から21歳になる方が大人な感じがするんです、私は。それと同じように5回というのは大きい。5回もやってればそりゃ後輩も出来るなって思います。
・バースデー・イベントで歌いたい曲リストをいつも作っている。今回は、この衣装に合う曲は何かなと考えて今年はカッコいい感じの曲は封印した。来年は22歳になるので大人っぽい曲をたくさん歌いたい……今から来年の宣伝? 出来るかどうかは分からないですけど、楽しみにしていてください。

セットリスト
片思い』(Miwa)※
『夜風のMessage』(℃-ute)

『ダレニモイワナイデ』(真野恵里菜)
『愛・愛・傘』(Juice=Juice)
One Summer Night~真夏の決心~』(カントリー・ガールズ)

『私がオバさんになっても』(森高千里)
『明日の私は今日より綺麗』(こぶしファクトリー)
※2回目は1曲目が『I LOVE YOU』(尾崎豊)

最後に。しばらく私がブログを更新していなかったのは、現場がなかったからではない。精神の調子を崩し、抑鬱症状がきつく、毎日をやり過ごすだけで精一杯だったからだ。このブログを2015年に始めてから一番きつかった。治療の甲斐あって徐々に調子が上向いてきた。書けていなかったいくつかの現場の記事も、これから書いていく。

2021年7月10日土曜日

Rainbow (2021-06-06)

「最終面接でその会社の社長が言ってたんですけどね。人が年齢を重ねて変わっていくのと同じように、会社も変わっていく。法人と言うように、会社も人であって、人格があると。それが今でも頭に残っていて。本当にそうだよな、と。僕が会社に入って最初の何年か、それなりに仕事が充実していると思えていましたけど、それってそのときの上司とか、先輩とか、仕事を始めたばかりという自分の状況とか、色んな要素が組み合わさってそうなっていたんですよね。月日が流れていけば、そうじゃなくなっていくわけで。仮に同じ環境にずっといたとしても、同じ状態がずっと続いていくわけじゃないんですよね」
「あのときA社を去ったのは本当によかったのかなって、今でもたまに思うんだよね。A社の後にB社に行って、それで今の所に転職したわけだけど。B社にいたときはA社に戻りたいって思っていたし」
さんがよかったと思っているA社は、もうないんですよ。もう同じ会社じゃないです」
「ちょっと昔の恋愛の話をしていい? こういう話をするのは久し振りなんだけど」
「はい」
「中学校に入ったばかりの頃、大好きな女の子がいたの。ちゃんっていうんだけど。こいつと結婚したいとまで思っていた」
「中学生で」
「そう。中一だよ。それで何回かデートに行ったんだけど、周りの友達はさ、いやあ、そこまでの女じゃないよって言ってくるんだ。兄なんてお前と会う前の日には別の男とヤッてるとまで言ってきた。でまあ、結局長く続かなかったんだけど、同窓会で久し振りに見たら、もう別人なんだよ。あの頃の清楚さがなくて。あの頃、俺が好きだったちゃんではなくなっていたんだ。それでさっきのさんの話を聞いて思ったのが、俺にとってのA社は、ちゃんみたいなものだったのかなって。今でもA社が恋しくなることがあるんだ。奥さんに言ったら、あなたそう言うけどね。あのとき月収いくらもらってた? 今の月収と比べてご覧なさいよ。って言ってくるんだ。それがさ、ちゃんなんて大して可愛くないよと言ってきた友達や兄貴と重なるんだ。でも、A社は初めての会社だったし、俺にとってはそこがすべての基準なんだよ」
「初めて入って、それなりの期間を過ごした会社っていうのは、特別ですよね」
「そう。特別」
「思いが強いからこそ、A社がこうだというのを、自分の中で作り上げているんですよね。でも時間が経つとA社は変わっていく。今はもうさんがいた頃とは別の会社です」

「K島さんの前は、別の子を推していたよね。K島さんが歳を取ったら、また別のロー・ティーンに推し変するの?」
「どうでしょうね…。でも人間は二年半も経つと細胞が入れ替わるといいますから。それくらいの周期で推しを変えていくのは自然なんじゃないですかね」
「もう別の人間だから、考えも変わるってことか」
「そうです。だからずっと同じ人を推し続けている人は凄いと思いますね」

三善/善三さんが昔ZEEBRAさんのラジオ番組にゲスト出演したとき、若手のデモ・テープを聴くとみんなうまいんだけどヴァイブスが足りない的なことを言っていたと私は記憶している。一年半振りに生で観た研修生発表会には全体的にそういう印象を受けた。ただ、私はその感想を自分で信用できない。抑鬱的な症状が出ている中でコンサートを観ていたからだ。それでも江端妃咲さんのヴァイブスはビンビンに伝わってきた。もうデビューが決まっているかのような自信に満ち溢れていた。(これを書いている時点ではJuice=Juiceさんへの加入が発表されているのだが、この発表会の時点でもう決まっていたんだろうね。)

8列のど真ん中というかなりよい席で90%の時間は双眼鏡を構えていたものだから大迫力の絵を得られた。もしステージにいるのが小野瑞歩さんだったらこんな近距離で双眼鏡を使うのは躊躇していた。研修生の皆さんにキモがられようがどう思われようが一向に構わない。遠慮なく双眼鏡で舐め回させてもらった。衣装のスカートの中がハーフ・パンツというよりはブルマに近く、よかった。

人間が最も分かりやすく変化するのが成長期。一気に物理的に成長するから。ちょっと目を離しただけで大きくなる。子供から大人へと成長する過程を見守るのは、アイドルさんを追いかける醍醐味の一つだ。よく疑似恋愛なんていう言葉が使われるが、アイドルさんを長期間に渡って追いかけるのは子育ての疑似体験でもある。アイドル産業の主な顧客層である人々は『闘争領域の拡大』の割を食って恋愛とセックスの不足した生活を送ってきた。当然ながら子供の成長を見守る経験も奪われてきた。人々がアイドルさんを好きになる理由は恋愛感情や性欲の発露だけでは説明できない。特に(女性アイドルさんを応援する)女性オタクさんの存在については、彼女たちが子育ての代替としての娯楽を欲しているという説明がしっくり来る。そうやって、オタクさんたちは人生で自分が果たせなかったことや不足している要素を、アイドルさんを追いかけることで埋めているのだ。応援する研修生さんの配属先に文句を垂れたくなるのは、あなたがその少女の人生に自分の願望や希望を押しつけ、自分の人生から逃げているからだ。

「中山夏月姫さんは身体が成長してエロくなってきましたよね」と、譜久村聖さんを支持する自称四十代の某紳士から言われ、私は返答に窮したことがある。私は氏と違ってロリコンではないため、そういう視点で中山さんを見たことがなかったからだ。それがたしか前回(2019年12月)研修生発表会を観に来たときだったと思う。一年半経った今日、中山さんの身体の虜になったと白状せざるを得ない。抑鬱状態であまり頭が回らず、グルグルとネガティヴな考えが頭によぎる中、ほぼずっと彼女のことを双眼鏡越しにストークしていた。研修生ナンバー・ワンの身体。ソロ・パフォーマンスのため白いドレスを着て左から出てきたとき、鈴木愛理さんのような雰囲気があった。次点で広本瑠璃さん。

Hello! Projectが好きという気持ちが、研修生さんやメンバーさんが活動を続ける支えになっている場合が多いように思う。好きではないとやっていけない世界。事務所側もそこに甘えているように見える。ただ、そのHello! Projectも変わっていく。かつて(モーニング娘。のいわゆる黄金期と呼ばれる時期)はビッグになれる、有名になれる、普通じゃなかなか稼げないキャッシュをゲトれる場所だったかもしれない。2021年のHello! Projectにそんな夢はない。デビューしたら報われるかというと、それは微妙なところだ。研修生さんには冠のテレビ番組があり、四半期毎に東名阪のZeppツアーがある。デビュー組のグループさんにはそれらがない。ファン・クラブ会員を相手にしたクローズドな商売であるため、主な顧客層である中高年男性を個別イベントで喜ばせなければ人気が出ない。となると、研修生としての活動歴でつけた箔を利用して、次の活動なり就職活動なりをする。そうやって経歴を作り上げていく狡猾さも必要なのかも知れない。まだ若いうちに。それはそれで難しい。もっともらしいキレイな理由を述べて集団を去った人々の迷走ぶり。労せずチヤホヤされてお金を得たいという意思が残った、アイドルさんの残骸。

2021年7月3日土曜日

SAVE LIVE MUSIC Ⅲ~Ballads2~ (2021-05-31)

病気でもあるんですか? ―業務の引き継ぎを受けている相手に、この日は早く上がりたいと私が言うと、彼は聞いてきた。悪意がないのは分かる。彼はいい人だ。多少の好奇心が混じっているにしても、純粋に心配してくれている。しかし私はその発言にカルチャー・ショックを受けた。労働と私生活を捉える枠組みが違うからだ。平日に会社を早めに退勤するということが、通院のためでもないかぎり基本的にはあり得ない。想定できない。そういう常識、価値観を彼は刷り込まれ、習得し、自明のものとしている。だから悪気もなく上述のような疑問を投げかけることが出来る。私生活を楽しむための必要悪として労働が存在し、自分の好きなことのために労働の時間を調整する。それが出来なければ働く意味がない。そう考える私。認識している世界が違う。大袈裟ではなく、世界観が異なるというのはこういうことを言うのだろう。

彼からの引き継ぎで知る、業務の詳細。さながら奴隷の生活体験ツアー。信じがたい業務量を、信じがたい緻密さと真面目さで、有給もまともに使わず、文句の一つも垂れず、こなし続けている。それでいて、その自己犠牲に見合った待遇や役職を手に入れている訳でもない。正確な歳は知らないけど、三十代後半。ずっと平社員。将来、昇進していく具体的なビジョンはおそらくない。どうやら本人はそれを望んですらいない。おそらく末端の奴隷たち数名の取りまとめ役くらいで終わる可能性が高いが、それでも彼はその役割に感謝して人生のほぼすべてを捧げるだろう。

彼は例外ではない。むしろこれが普通の、一人前とされるジャップの労働者だ。高度成長期のように企業の羽振りがよく、自分の賃金や地位が上がっていく絵が見えているのならまだ理解は出来る。とっくの昔にその前提条件は崩れている。飴と鞭の飴が消えている。それでも鞭だけを喜んで打たれ続けるマゾヒストども。休日出勤をさせてから後付けでその分の時間はお金で受け取るな、必ず代休を取得しろ、コスト削減のためだと中途で紛れ込んできた気狂い上司が言ってきても(会社の制度上、お金で受け取るか代休を取るかは従業員が自由に選べるにもかかわらず)疑問の一つも呈さずはいッ承知しましたッという感じで粛々と代休手続きを進めるような奴ら。くそバカども。私は絶望した。異常人格者の上司に金銭のため面従腹背していたのではなく、金銭を受け取る権利すら平気で手放そうとする。こいつらが奴隷じゃなかったら何なんだ。

奴隷でいることは罪だ。どんな労働観を持とうが、どう働こうがその人の勝手であり自由? それは違う。奴隷が増えれば増えるほど、奴隷使いがのさばる。奴隷でないと雇用された生活を続けられなくなる。現代では雇用されないと生活していくのは現実的に難しい。好むと好まざるとにかかわらず、奴隷にならざるを得なくなる。奴隷制度は階級の全員に適用されるのであって、奴隷になるかならないかの自由は存在し得ない。よって、自ら進んで奴隷になることは労働者全体に不利益をもたらす。こうやって使用人同士がお互いに首を絞め合っているのが労働経済。しかし奴隷、奴隷と言ったところでどうせあいつらは奴隷の歴史なんて殆ど知りやしない。だから自分や賃金労働者全般の境遇を奴隷に重ね合わせることなんて想像もつかない。ブルシット・ジョブという言葉も知らないまま死んでいく。(仮に知ったところで自分のやっていることがそれだと気付くことはない。)

8時に出社して17時に上がったので、定時分は働いている。それでも事前に断っておく必要があった。彼は表向きには快く了解しつつ、どこか物足りなさそうな顔をしていた。仮に評価が下がるとしても、そんなことはどうでもいい。なぜなら私にとって働くことは生きる手段であり、生きる目的は自分の好きなことをやることだからだ。好きなこととの筆頭が、コンサートやフットボールを観ること。もちろんゼロか百かではない。個別のケースでは労働を選ばざるを得ない時もあるかもしれない。しかし自分の好きなことを犠牲にしなければならないのであれば、働いている意味がない。

好きなことを仕事に出来ればよかったのかもしれない。とは言え私の好きなこと、望む生活といえば、本を読んで音楽を聴いてフットボールを観て文を書いて優雅に暮らしたい、という感じであって、賃金労働とはつながらない。一年と少し無職をやったことがあるが、こういう仕事がしたいなんていう前向きな希望は何も浮かばなかった。労働とは他人の要求に応えるために自らを商品として売ることであって、生まれながらの召使いでもないかぎり、自分の好きなこととは基本的につながらない。労働に心からやり甲斐と充実を感じ、現状の待遇にも満足し、将来の希望を持てている状態というのは一時的な幻想に過ぎない。私はお金さえ続けばずっと無職でもいい。だから私は、税金のかからない十億円が今すぐに欲しい。それさえ手に入れば会社なんてすぐに辞める。残念ながら十数年も労働者の端くれをやってたどり着いた結論がこれである。学生の頃と大して変わらない。

個人として独立してもやっていけるような職に就ければよかったのかもしれない。私が労働で受けるストレスの大半は職務そのものではなく組織がもたらしている。私がこれまで経験してきた業務は組織の中で他部門との関係においてしか成立しない。そういう環境で働くことで人間としての最低限の社交性を身につけることは出来た。だが根っこの部分では色んな人と関わり合いながら何かをやるのが向いている人間ではない。そうは言っても個人として食っていくなんてのはかなり難しい。凡人は組織に雇ってもらい何とか立ち振る舞っていくしかない。学生の頃から計画的に行動を起こせていれば、もうちょっと個人寄りの労働が出来た気もする。しかし当時の私にはそんな行動力はなかったし、労働生活が未知すぎて先を見越すなんてことは出来なかった。お前はこういう道に進むのがいい、そのためにこういうことをしなさいと導いてくれる人はいなかった。そういう助言を得られる人間関係も作れなかった。あまりに内向的すぎた。

上原ひろみさん42歳、私38歳。自分と同年代や年下がさまざまな世界の第一線で活躍するのを目の当たりにするのには慣れた。自分と年齢の近い人の才能を目の当たりにして焦るなんてことはない。自分と違う世界にいるトップ・レヴェルの人たちと自分を同じ土俵で比べるのは不毛もいいところ。頭では分かりながらも、ある時期までどこかで自分と比較していた。その過剰な自意識はだいぶ前に捨てた。今では年齢に関係なく、凄い人のことは純粋に尊敬する。この歳まで自分の稼いだ(といっても売上を自分で作り出しているわけではない)給料で何とか生活が出来ている。学生の頃の私からすれば、それだけで奇跡だと言っても過言ではない。それはよーく分かっている。分かっているが、上原ひろみさんのピアノ演奏を聴いた上で、私は私で身の程をわきまえてキチガイ上司と奴隷同僚に囲まれてクソ労働を我慢する日々に戻ろう、とは思えなかった。コンサートの非日常によって明日からの労働を乗り切る元気をもらったと思えることがある。今日はそれとはまた異なる感覚を覚えた。

私は労働者になって三、四年くらいの頃、大量の自己啓発本を読んで自らを鼓舞し、つらさを乗り切っていた。クリエイティヴな仕事なんてない。クリエイティヴに仕事をするのが大事なんだ。ある本にはそう書いてあった。20代半ばの私はその言葉を信じ、目の前の業務に向き合いやり方を自分なりに改善することに注力した。やっている業務が何であれ、自分はクリエイティヴなことをやっているんだと自負すればクリエイティヴになる。何をやるかではなく、どうやるか。まったくの嘘っぱちとまでは言わないが、今の私は素直に首を縦に振ることが出来ない。ゴミのような労働で生計を立てている労働者にいつまでもゴミのような労働を続けさせるための方便じゃないか。ピアノと向き合う上原ひろみさんの佇まいを見てみろ。表情を見てみろ。一つ一つの所作が、まさに自己表現というに相応しい。朝から晩まで次から次へとしょうもないメールを送受信し何千行もあるエクセル・ファイルをせこせこといじり続けている自分と何かを重ね合わせられるとしたら、頭が狂っている。

私が会社でやっているのはクリエイティヴな仕事ではないし、実際にはホワイト・カラーですらない。出来る会社員になるための自己啓発。小さく見れば正しいが、大きく見れば間違っている。よき使用人、よき奴隷、お得な価格で手に入る商品になるための努力。労働者が搾取され、お互いに競わされる構図。それを防ぐには労働者がそのゲームに乗らないのが必須。この間のつばきファクトリーさんのリリース・パーティで参加券購入の列に並んでいた、横山玲奈さん風な喋り方のナオンのように。本当はみんなが結託しなければならない。

クソな労働生活を、素晴らしいコンサートでもらった元気で乗り切る。その公式だけでずっとやっていくのに無理が出てきたと私は感じている。クソ労働をかなりやらないとそのサイクルを回せないからだ。労働生活がクソなのは変えられないにしても、もうちょっとよくするためにもがいていいんじゃないか。溺れないように。現状を変えるための行動を起こさず、ひたすら受け身に、ただ我慢して、自分の将来を運に委ねる。そう割り切るには残された刑期が長すぎる。もちろんあてもなく退職して、これからは好きなことだけをして自由に生きていきますなんて血迷うほどガキではない。

いつからだろうか、月曜日に決まって頭痛と日中のひどい眠気に襲われる。会社を出た途端に治ったこともある。最近はたまらずバファリンを昼過ぎに飲んでいる。月曜日に限らないが、月曜日に発症する確率は明らかに高い。ほぼ毎週。整体の先生と医師に頭痛のことを言うと、気温の変化による自律神経の失調、首の骨が詰まっている、といった答えが返ってくる。本当の原因は労働のストレスなのではないか。業務量とはまた別の話。多くの人が同じ問題を抱えているらしく、ブルー・マンデイ症候群という名称があるようだ。上原ひろみさんはきっとこんな経験はしたことがないだろう。仕事のことを労働とは言わないだろうし、仕事と休みという区別さえしていないだろう。人生が、存在がピアニストであり、音楽家なのだろう。

バラードだけを演奏する、マニアックなコンサート。よくテレビで5秒や10秒くらいで紹介をされるときはピアノを殴っているような場面を切り取られますが、バラードも昔から大事にしています。緊急事態宣言の延長でお酒を飲めない。開演時間も調整された。そんな状況を乗り越えて観に来た皆さんはマニアの中のマニア。お酒は飲めないけど、ピアノの音に酔っていただこうと思います。いつものほんわかした調子で上原ひろみさんは観客に語りかけ、場を柔らかい雰囲気で包んだ。メロディは聞き覚えはあるが曲名が出てこないいくつものスタンダード曲、あと“Reminisce”という新曲も披露された。上原ひろみさんの生演奏を、ブルーノート東京で聴ける稀有な機会。先行販売で買うためにブルーノート東京メンバーズ・クラブに加入し、発売開始時刻になった瞬間に購入ページに急ぎ、それでもギリギリで手に入れたチケット。楽しみにしてきた時間。しかし公演の最中ずっと思考がグルグル廻り、音楽に集中出来ない精神状態だった。

2021年5月29日土曜日

つばきファクトリー 2ndアルバム発売記念 ミニライブイベント (2021-05-27)

食とは何か? 働くためです。
食の必要を突き進めれば、労働に結びつきます。
人間を働かせるために、食は発展したのです。
食が消えれば、強制労働は消えるのは必然な流れです。
(山田鷹夫[編著]、『不食実践ノート』)

労働と消費は同じコインの裏表。誰かの消費は誰かの労働。それでも我々は労働を憎み、消費を愛する。消費者は比較をして商品やサービスを選ぶ。競争が激しければ激しいほどその商品やサービスの提供元は二つの相反する要求に応え続けることを強いられる。もっと安く、もっと質を高く。それは回り回って誰かの労働をもっと安く、もっときつくさせる。自分の労働を厭々やっている人でも、消費者としてふてくされた接客や対応を受けようものなら当然のように怒る。自分のことは棚に上げ、他人にはプロであることを要求する。自分は大して給料がよくないからこの程度でいいんだと(口に出すかは別にして)開き直るのに、他人に要求するときには相手の待遇のことなぞ殆ど考慮に入れない。

最低限の衣食住にかかる費用は別として、我々は労働の痛みを癒すために消費をしている。労働は鬱病と強く結びついている。労働で鬱病になるのは言うまでもないとして、労働をしていなければしていないで自己肯定感や社会との結びつきを失い(デュルケームさんの言うところのアノミー)鬱病になる。場合によっては自殺する。現代日本では大人になって労働経済に参加していなければ社会の一員として認められない。だから我々は就労していようがしていまいが、消費を通じて得られる快楽なしで生きていくのが難しい。労働あるいはそれがない苦しみを、他人の労働で和らげてやり過ごしている。もちろん労働が楽しくて仕方がないとか、生き甲斐だという人(そういう人は労働という言葉は使わない)も一部にはいる。食えている芸術家や、心からやりたいことがあって起業して成功している人はそうなのだろう。ただの会社員がそう思っていたら一種の洗脳(やりがい搾取)を受けている。そうじゃなかったら相対的に楽で高給な職にありついている。運良くババを引かなくて済んだだけの話。雇用市場や社内での立ち回りが器用なだけ。くだらない。どこかの誰かがそのしわ寄せを受けている。

労働と消費のスパイラル。就労第一という価値観。適応出来ない者に渡される鬱病と自殺への切符。大学を出て企業に就職した瞬間から私は罠にかかっている。いや、その前から消費者として手懐けられ、この構造に組み込まれてきた。私はここから一生、抜け出せる気がしない。本当は労働を憎むのなら消費も憎まないといけない。Juliet B. Schorさんが“The Overspent American”で書いていたように、消費によって何らかのステイタスを得られるという幻想を捨て、不要な消費と過剰な労働というサイクルから抜け出すのが、労働を愛せない人の目指すべき道だ。消費をすればするほど労働への依存が高まる。もし仮に人生で支出をゼロに出来るなら労働はしなくていい。それを突き詰めたのが山田鷹夫さん。食べないで生活する(不食)という境地を切り開いた。無人島に移住して不食を実践すれば働かなくて住む(『無人島、不食130日』)。

私が何とか精神を病み過ぎずに(軽度に病むことはたまにある)労働経済に踏みとどまっていられているのは、横浜F・マリノス、田村芽実さん、Hello! Projectさんといった存在のおかげだ。私が生きる目的といっていい。しかし彼らとて慈善事業ではなく商売。お金がなければ活動を続けられない。お金を払わなければ試合や舞台、コンサートを観ることは出来ない。お金を得るためには労働を続けないといけない。

私は基本的に平穏で恵まれた環境にいるが、楽しい、ワクワクする、面白いといったポジティヴな感情を労働から得ることは皆無と言っていい。特に最近はそうだ。我慢するのが職務のようなものだ。何日か前にストレスで胃腸に異変をきたし、食欲が減退し、下痢になった。検索すると過敏性腸症候群というやつっぽい。私は元々ストレスにはさほど強くない。最近はそれを発散させるのも難しくなった。コロナ対策禍(コロナそのものよりむしろ行政によるコロナ対策が民衆を苦しめること。金井利之さんの『コロナ対策禍の国と自治体』参照)による興行への制限で、フットボールでもコンサートでも声を出すことが許されない。(ちなみに明治安田生命Jリーグではゴールが決まったときに観客が大声を出しているのは暗黙の了解である。これで1,000試合以上やっていわゆるクラスターの発生がゼロというのは皆さんにも知ってほしい。)マスクを着けて、座ったまま、黙って観ていなければならない。かつてのように感情を爆発させることが出来なくなった。人生そのものにおいて、である。

いいこと教えてあげよっか。黒い半袖Tシャツからムキムキの腕を覗かせる小麦色の男性が対面に座る女性に言っていた。話の断片によるとどうやらジムの店長らしい。ジャガイモは食物繊維だから、ベジ・ファースト。血糖値の上昇を防いでくれるよ。へえ、そうなんだあ、と女性は答える。食物繊維を最初に食べることで糖質の吸収が穏やかになり、血糖値の乱高下を防げる。よく知られた話。だけど、ジャガイモでそれが出来るのか? 食物繊維なんか入ってたっけ? 糖質制限系の本ではむしろ血糖値を急上昇させる悪役のような扱いを受けている。後で調べてみたらジャガイモに多くの食物繊維が入っているのは事実だった。驚いた。しかしベジ・ファーストのベジにジャガイモをカウントしてよいのか? 実際のところどうなんだろう。ある程度の食事が摂れるまでには胃腸が回復していたので、横浜のハングリー・タイガーさんで昼食を摂った。ダブルは無理。シングルでお腹いっぱい。

コンパクト・ディスク販売開始時刻の12時半ちょうどくらいにクラブ・チッタに到着。土砂降りの雨の中、信じ難い長さの列が出来ていた。全員が傘を差していた分、人と人との距離があった。それを差し引いても、つばきファクトリーさんが平時にリリース・パーティをやっていたときの二倍から三倍はいるのではないだろうか。周囲から漏れ聞こえてくる会話によると、10時頃からちらほら並んでいたらしい。もちろん早くから並ぶ人はいるにせよ、ここまでの規模になるとは予想していなかった。それに、事前に会場周辺に溜まらないでくれというアップフロントさんからのお願いに馬鹿正直に従いすぎた。マリーシアが不足していた。一度の会計で買えるのは一人一枚。つまり二回行われるリリース・パーティの両方に入るためには二度並ぶ必要がある。列の最後尾に着いた時点で分かったのは、二回分の入場券を手にするのは不可能だろう。一回分も手に出来ないという最悪の事態も想定しないといけない。その場合はお見送り会だけに参加しようか? それとも帰ろうか? “Your Money of Your Life” (Vicki Robin and Joe Dominguez)を読む。ページがびしょびしょに濡れていく。

この列は何なの? これみんな密になっちゃうんじゃねえの? なぞと笑いながらエスタシオン係員に聞く、通りすがりの小汚い老紳士。テレビで仕入れた密とかマスクとかワクチンとかのクソ情報で頭をいっぱいにしたまま死んでいくと思うと憐れだ。私がこのコロナ騒ぎで学んだことの一つが、人は老人になったら賢くなるわけではないということ。いや、それは何とか…とエスタシオンははぐらかすように答えていた。きちんと対策をしていますので密にはなりませんと自信を持って言えばいいのに…と思いながら、私は本に意識を戻した。

後ろに並んでいた若いナオン二人組の片方が、この瞬間もテレ・ワーク中ということになっていることを明かしていた。ちょっと横山玲奈さん的な喋り方。今日は朝8時に起きて、餃子を作って…それでここに来た、と労働に関する言葉が何も出てこなかった。バレないの? と聞くお友達。バレない。列は最後の方になると会場内に入る。フロアの後ろで、つばきファクトリーさんのリハーサルが聞こえてくる。『三回目のデート神話』。ちょっと得した気分。さっきのナオンが、これから会議が始まる。今当てられたら(リハーサルの音が入るので)困る。何かやたら当てられるんだよね。あんまり悪いことしてないのに。なぞと明るく話していた。私は感心した。労働というのは、労働者というのは、こうあるべきだ(有給休暇を取れなかったのかという疑問は残る)。売り場まであと20-30人というところで、参加券が残り少なくなっております、只今お並びのお客様でもご希望の参加券をお買い上げになれない可能性があります、と案内を繰り返す。緊張が走る。その少し後に、1回目の参加券が完売したという案内が来た(つまり販売開始時刻に少なくとも300人以上が並んでいたということ)。焦ったが、何とか2回目の参加券を確保することが出来た。1時間40分くらい並んだことになる。185番。うーん、決してよくはないが、パーティに参加する権利を有しただけでよしとしなければならない。箱に手を入れた感触ではまだ数十枚はありそうだった。箱はもう一つあった。用意されていた参加券は300枚ずつ(計600枚)らしい。何で1回目だけがこんなに先に枯渇する? 普通に考えたら19時開演の2回目の方が労働者は参加しやすいのでは? 首を傾げる。後から理由を考えたが、松永里愛さんと工藤由愛さんのFCイヴェントが夕方にあったので、それと回したい人が多かったのだろう。

星乃珈琲店で、オキニのノートブック(マルマンノート ニーモシネ A5 無地 N183A)にオキニのペン(パイロット アクロボール 0.5)で頭の中の考えを書き記す。数日前に比べるとよくなってきているが、まだ胸が苦しい。胸の内を言葉にして自分で向き合うことで少しでもこのつらさを鎮められるのではないか。そう思って書いた言葉の一部が、この記事の前半部分(最初の◆をつけるまで)の土台である。

商店街にある焼き肉店の夜定食に惹かれた。肉200gで、約2千円。この鬱状態から脱するために赤身肉を食ってタンパク質や鉄分をたっぷり補充した方がいい。迷ったが、もっと安く済ませたいという考えが勝った。観行雲さんで鶏肉とカシュー・ナッツ炒めの定食。700円。

10月18日(月)につばきファクトリーさんが日本武道館でコンサートを行うことが、5月26日(水)にYouTubeで発表された。いい知らせなのは間違いないが、私としては素直に喜びきれない部分があるのも否定できない。本来なら2020年の5月にいわゆるホール会場でのコンサート・ツアーをやるはずだった。コロナ騒ぎで頓挫したその計画から再開するべきなのではないか? 過程を踏まずにいきなり日本武道館というのは思い出づくりの印象が強く、白けてしまう部分がある。研修生ではなくつばきファクトリーさんとBEYOOOOONDSさんがホールでの単独公演をやるべきだった。もっとも一番大事なのはメンバーさんのモチベーション。武道館に立てるのを励みに彼女たちが前向きに活動を続けていけるのなら、それが正解なのだとは思う。

つばきファクトリーさんがドロップした新アルバム“2nd STEP”を、私は発売日前日の5月25日(火)に受け取った。まだ数回しか聴いていないので断定的な評価は下せない。新曲は一人一人の歌声をフィーチャーした曲が多くメンバーさんたちの成長を楽しめる。『断捨ISM』から始まるというハード・コアな構成で出鼻をくじかれるが、そこまで悪くはないのではないか。少なくとも音楽性の停滞したモーニング娘。さんの新アルバム“16th~That's J-POP~”よりは面白い。それが現時点の印象だ(モーニング娘。さんに関してはアップフロントさんが2012年の“One・Two・Three”以来のEDM路線をいつまでも最先端だと思っていそうなのが痛々しいし、この期に及んで例のフォーメイション・ダンスとやらの自己満を得意げに押し出しているのは見ているこっちが恥ずかしくなる)。

このように情報を受け取るだけで、曲を聴いただけで、ゴチャゴチャと意見を言うことは出来る。しかし、大事なのは御託をこねることでもケチをつけることでもない。現場で体感することなのだ。つばきファクトリーさんたちがひなフェス2021で初披露した脚をガッツリ露出したミント色の衣装でステージに現れ、照明を浴びながら『マサユメ』をパフォームするとすぐに余計な考えは頭から消え去った。メンバーさんの熱量、輝きに魅了され、夢中になった。「この現場以外に本場なんてのは存在しない 外野の野次は聞くに殆ど値しない」(ライムスター、『ウワサの真相 feat. F.O.H.』)という宇多丸さんのリリックが頭に浮かんだ。このパーティの前と後では『マサユメ』の鳴りが違うんだよ。明らかに。私の中で特別な曲になった。

私の席は真ん中よりも後ろだったけど、それでも十分に近くて。メンバーさんの表情からは、つばきファクトリーさんという単位でのショウが出来る喜びが伝わってきて。ラモス瑠偉さんみたいなことを言うけど、何をやるにも気持ちって大事だよ。技術があればいいってものではない。気持ちを伴わない表現、活動、労働はどこかで破綻するよ。本当に一人一人が可愛くて。太ももが眩しくて。全力でやってくれるキックではショート・パンツから覗く脚の付け根付近がちょっときわどくて。『恋のUFOキャッチャー』のヒップをふりふりするダンスがコケティッシュで(この箇所については事実上お尻を丸出しにしてくれているに等しいジャージ姿でのダンス動画が至高。同じ意味で『My Darling~Do you love me?~』のダンス動画も宝)。声は出せなくても会場の雰囲気はスゴくよかった。ハロ・コンより何倍も楽しかった。つばきファクトリーさんが出てきたら私はすぐに笑顔になった。音楽に身体を揺らし、エメラルド・グリーンのペンライトを小野さんに向けて振っていると、さっきまで重苦しかった気持ちが、スーッと楽になったんだ。そこでふと思った。もしかして配偶者や子供がいる人は、こんな回復効果を日頃から得ているのだろうか? そういえば前に読んだ本に、子供、孫、恋人、配偶者といった愛する人と過ごすことには大きな疲労回復効果があると書いてあった(渡辺恭良・水野敬、『疲労と回復の科学』)。我々はアイドルさんに依存してでも対抗しないと勝負にならないじゃないか!

不思議なんだけど、画像や映像だけでは、私は小野瑞歩さんが最も魅力的だと常に思うわけではない。でもこうやって現場に来ると、やっぱり彼女が好きだな、私は彼女を応援したいなってその度に思うの。『My Darling~Do you love me?~』のフックでメンバーさんが一列に並ぶとき、左端に来る小野さんがちょうど私の席から見て真正面でね。愛してるって私を見て言ってくれているような感覚を味わえて、好きになってきた。

本編中は一切の発声が禁止だったが、お見送りではなぜかメンバーさんとの会話が許された。メンバーさんの並びは右から左、年上順だった。人の流れをしばらく見たアルビ兄さんが、一回目もそうだったが流れ方が早い。心の中で握手をしているつもりで。次いつやれるかは分からない。とスピードを緩めるよう我々に促した。私は個別お話し会にも申し込んでいないし、たしかに小野さんとお話をする機会は滅多にない。私は殻を破ることにした。手元にある二枚のお見送り参加券。もしこれが小野さんと対面できる最後の機会だとしても悔いがないように、二つだけを伝えるとすると…。

お見送り1回目
小野さん:あ!(指さし)
小生:みずほchan一番かわいい!
小野さん:イェイ! 一番!(指で1を示す)ありがとう!

お見送り2回目
小野さん:みずほが一番!(指で1を示す)
小生:(意表を突かれ、言葉に詰まる)……。好きです
小野さん:あっはっはっは

つばきファクトリーさんに、小野瑞歩さんに、誇張抜きで、文字通り生きるための元気を貰えた。本当に楽しかった。くりぃむしちゅーさんのオールナイト・ニッポンを聴いても素直に笑えないくらい弱っていた精神が、帰りの電車では目の前に上司がいたら殴ってやると思うくらいまでに回復した。マジで殴りてえ。どんな薬でもこんなに効かないだろ。CBDオイルよりもつばきファクトリーさんが効く。ナイアシンよりもつばきファクトリーさんが効く。5-HTPよりもつばきファクトリーさんが効く。セント・ジョーンズ・ワートよりもつばきファクトリーさんが効く。つばきファクトリーさんは私を救った。つばきファクトリーさん、本当にありがとう。コロナ騒ぎで興行がやりづらい中、このパーティを実現にこぎつけたアルビ兄さんをはじめとする裏方の皆さん、本当にありがとう。

2021年5月21日金曜日

花鳥風月 (2021-05-16)

双眼鏡越しなのに小野瑞歩さんからレスをいただけたような感触が何回かあった。もちろん実際にはレスではなかったかもしれない。VAR (video assistant referee)が介入したら、3月17日(水)に徳島ヴォルティスさん戦で前田大然さんが決めたゴールのように取り消しになる可能性が高い。そんなに前の席ではなかったし、そもそも双眼鏡に送られるレスというものが存在するのだろうか? おそらく私が勝手にレスのように感じたに過ぎない。いわば疑似レスである。ところが人間の脳は都合よく出来ていて、疑似フェラを見て興奮するのと同じように、疑似レスでも実際のレスをいただいたような喜びを得てしまう。後から考えると単に双眼鏡で視界を拡大していたから小野さんがこちらの方向を見ただけで私を見てくださったと誤解しやすくなっていただけではないか。しかしそんな理性的思考とは関係なく、私の脳は勝手に幸せ物質を分泌させた。小野瑞歩さんのことがまた好きになってきた。

Hello! Projectへの依存度を下げ、フットボールとジャズを愛好するイケてるインテリ一般男性へのジョブ・チェンジを成功させつつあった私だが、仙台の地で小野瑞歩さんに引き留められた感がある。度々このブログでも書いているように私にとってHello! Projectは生きる目的というよりはいくつかある楽しみの一つになっていた。コロナ騒ぎがそれに追い討ちをかけた。制限下の興行に前のように興味を持てなくなったのもあるし、自分の収入が減って出費を絞らざるを得なくなったのもある。コロナ騒ぎ前に比べて私の心がHello! Projectから離れているのは間違いない。自己分析するに、私がこのブログでアイドルという存在についてメタ的に語ることが増えたのはそれが原因だ。料理があまりに熱いと味が分からないように、アイドルにどっぷり浸かっているよりは熱が少し冷めてきた頃合いの方が冷静に考えられる。その状態で出会ったミシェル・ウエルベックさんの小説。答えが書いてある、と私は思った。

こんにちは
あ、久しぶり! 超可愛いお洋服
あ、ありがとうございます。あの、ちょっと遅いんだけど
うん
お誕生日おめでとう。二十歳
ありがとう
何年もアイドルを続けてくれてありがとう。応援できることが幸せです
ずっと応援してね
はい
え、お洋服超可愛い!
2020年11月21日(土)ベルサール新宿グランド 個別お話し会 二部
(ちなみにこの日の私は上下Needlesだった)

コロナ騒ぎが始まってからのコンサートである『ザ・バラッド』、“STEP BY STEP”、『花鳥風月』に、数回ずつではあるが私は足を運んだ。小野瑞歩さんが出演する公演だけを選んで申し込んだ。実のところ、公演中は小野さんのことばかりを観ていたわけではなかった。彼女が団体から身を引く際には私もHello! Projectオタク活動からの引退を視野に入れている。何事もなかったかのように別のメンバーさんに鞍替えするということはあり得ない。ただそれは義理と意思の領域であって、小野さんへの熱をいつまで保てるかは別の話。一時期に比べれば弱火になっているのは否めない。でも、今日に関しては目が離せなかった。夢中でステージ上の小野さんの一挙一動を目に焼き付けるあの感覚が戻ってくるのを感じた。

照明に反射して光る、小野さんの顔の汗。衣装のラメのように彼女をキラキラさせる。意図された演出と感じられるくらい、コンサートの欠かせない要素だった。井上玲音さんが、今日はリハーサルから暑かった。そしてこの花ティームは残り数公演しかないので一同、気合いが入っていた。それが私たちの発汗につながった、的なことを言っていた。新沼希空さんが一番スゴかった。もう、汗だく。左肩を露出した衣装の譜久村聖さんはデコルテが水浸しになっていた。(公演後にご一緒した譜久村さん支持者の紳士は、譜久村さんの髪型がポニー・テイルだったので衣装と相まって首周りと肩をよく見せてくださっていた点にたいそう欲情なさっていた。)でも誰一人として汗を拭わないのがプロだった。

小野さんの表情が味わい深く、ずっと観ていても飽きない。単に笑顔がステキというだけでなく、その時々によって微妙に異なるさまざまな感情がブレンドされている感じがする。楽しいとか嬉しいだけでなく、たとえば照れ臭いとか。そのときのリリックとご自身のお気持ちに合わせて調合しているのだろう。表情のブレンドを変えることで言葉を使わずに我々と会話をしている感じ。

一曲目の『桜ナイトフィーバー』(春というだけで毎年この季節にセットリスト入りする駄曲)で、何度かメンバーさんが屈む場面がある(これってどうなんでしょう? の箇所)。譜久村さんが衣装の下で胸部に巻いているサラシのようなものが見えた。小野さんはどうも衣装の首元を真ん中で止めてあったらしく、衣装の中は見せてくれなかった。島倉りかさんがスカートの中にお召しになっているスパッツ。井上さんと新沼さんが足を高いキックで見せてくれる短パン。フットボールで球際の激しさ、インテンシティが重視されるのと同じように、Hello! Projectのコンサートでも足をしっかり上げる、腰を低く落とすといった動作の一つ一つを本気でやってくれるとメンバーさんの気持ちが伝わってくる。何となく流してやっていると観ている方も分かる。さんが最初にお召しになっていた白いロング・パンツはよく見ると中のが透けていた。それは私を性的に興奮させた。

女性の太ももを感知すること、その交わるところにある性器を頭の中で再構成すること、興奮の程度が直接持ち主の生足の長さに比例するこのプロセスは、ぼくの中では意識されることなく、あまりにも機械的に行われ、ある意味でDNAにすり込まれていた。(ミシェル・ウエルベック、『服従』)

トークネット・ホール仙台。アップフロントさんが私に与えた席は13列だった。中の上くらいの席だが、割と小じんまりした会場だったので、悪くはない位置だった。双眼鏡を使うと動くアンオフィとでも言うべき景色を得られ、満足出来た。盛り上がることが許されず、座って黙って鑑賞しなければならないという制限下では、ステージとの近さが公演への満足度を決める重要な要素である。どの席でも同じやり方でしか鑑賞させてもらえないので、席の悪さを自分の鑑賞方法で取り返すことが出来ないからだ。良席の相対的価値は前よりも更に高まっている。二階席からの観覧だった千葉公演に比べ私が格段に楽しめたのも、席が比較的良かったというのが大きな要因だったと思う。久しぶりにHello! Projectの現場が心から楽しかった。そう思えたのはたぶん去年8月のリリース・パーティ以来だ。

私は双眼鏡に専念するためにペンライトを持ってこなかった。ペンライト利用者への係員の当たりがきつかった。曲と曲の間にしょっちゅうスーツ姿の青年が飛んで来て注意してるの。誰かが『こんなハズジャナカッター』の最後に振りコピで一秒くらい頭上にペンライトを上げただけでも注意の対象になっていた。注意基準の妥当性は別として、禿げ散らかして、もしくは半分くらい白髪になって、ステージの少女に向けるペンライトの高さを執拗に注意される中高年は人生に悲哀があり過ぎる。

コンサートは日曜日だったんだけど、土曜日から仙台に入って精神的にリラックス出来ていたのもよかった。ちょっと危なかった。数週間前に労働でやらかしたエラーの火種が金曜日に燃え始め、不穏な空気が漂っていた。運良く丸く収まった。上司に説明と謝罪を済ませて土日に持ち越さずに済んだ。この旅で読むために部屋の積ん読から拾った『黄泉の犬』(藤原新也さん)が面白かった。独特の文章展開と構成。仙台でコンサートを観る以外にやったことと言えばサテンをハシゴしてひたすらこの本を読んだのと、メシを食ったくらい。土曜日と日曜日に入ったランチ処が両方とも大当たりで。商店街の中にある魚たつさんと、電力ビルの地下にある扶餘さん。おすすめ。公演後に譜久村聖さんを支持する紳士と入った焼き肉屋さんのひがしやまさんもよかった。焼き肉屋さんって簡単に一人五千円、六千円、あるいはもっと行くじゃない。ここは定食があってね。それと一杯ずつ飲んで一人2,300円で済んだ。もちろんもっとおいしい焼き肉屋さんはたくさんあるけど、値段を考えると高く評価できる。半額キャンペインで新幹線を利用できたので移動のストレスも少なかった。日曜の23時頃に帰宅。月曜日はフィジカル出社のつもりだったがちょっとしんどい。在宅勤務に切り替える。

2021年5月2日日曜日

キャメリア ファイッ!vol.12 キャメリア記念日 (2021-04-23)

太陽が毎日昇ることを祝う人間には、明日という未来は確定していない。人間は、地動説を信じることで、明日という未来を確定させた。知識、情報が増えることで、未来は確定していく。(妹尾武治、『未来は決まっており、自分の意思など存在しない』)

つばきファクトリーさんの結成6周年。(結成日は2015年4月29日。厳密にはこのイヴェントの時点でまだ6年は経っていない。)小学校に入って卒業するまでの期間だ、と岸本ゆめのさんはステージでいつもの真っ直ぐな笑みを浮かべ感慨に浸っていた。もうランドセルじゃなくなっちゃうよ、とメンバーさんの誰が言っていた。小学校と違ってアイドルさんの活動には決まった期間があるわけではない。長く続けたとしても二十五歳くらいが限界だという暗黙の了解がある一方、いつ終わっても不思議ではない。直近だと小片リサさんや高木紗友希さんを見よ。その日は突然やってくる。アイドルさんが何かと結成やデビューの日付を大切にし、記念日として毎年祝うのは理に適っている。その日が次に訪れる保証がないからである。(もちろん運営にとっては商業的な理由も多分にあるだろう。)もし余程のことがない限り十年後も二十年後も同じ活動をしている(=未来が確定している)のであれば、経過年数は事実として、単なる数字として通り過ぎるのみである。一般の労働者が入社日を毎年祝わないのは、生きている限りは労働を続けないといけないと分かっているからだ。

普通、アイドル10年やってらんないでしょ?』(Berryz工房)

アイドルさんの選手生命における6年間は、一般の賃金労働者にとっての20年、30年に相当する。終身刑としての労働生活を送る賃金労働者とは時間の重みが違う。じゃあ何で30歳、40歳になって(少なくとも10代のプレイヤーたちと同じ枠組みの中で)アイドルさんを続けるのが難しいのか。それは我々が熱狂するアイドルというフィクションの核を為すのは少女性であり、少女性はどうしても年齢と関係するからだ。年齢に関係なく本人の意思があればアイドルを続けられるべきだという論は、この視点を欠いている。(それにどうせそういうことを言う人は殆どの場合、応援するメンバーさんが40歳、50歳になっても同じようにお金と時間を費やす覚悟などない。)

アイドルさんがいちばん人間離れした輝きを放てる年齢は、思春期や青年期と呼ばれる、人間が最も多感な時期と重なっている。あれだけの美貌と愛嬌を備え人間的にも擦れたところのないハロー・プロジェクト・メンバーさんたちはミシェル・ウエルベックさんの言う『闘争領域の拡大』の恩恵を受ける側。恋愛とセックスを巡る競争で圧倒的な勝ち組になる資格を有している。普通の(普通というのが本当に存在するかはここでは置いておく)学生生活を送っていれば、上位のスクール・カーストに属し、サッカー部員のような男(高校で多少うまい程度ではどうせプロにすらなれないが…)と交際していたはずだ。しかし彼女たちは公然と彼氏を作りファックし放題の充実した学園生活ではなく、恋人が発覚しようものなら裏切り者として魔女狩りに遭う茨の道を選んだ。同年代の同性異性とワイワイする日々を捨て、下位スクール・カーストのなれの果てである中高年男性を主な顧客層とする産業のプレイヤーであることに若さを捧げている。

生涯未婚率という言葉がある。50歳で一度も結婚経験がない人が社会に占める割合のことだ(天野馨南子、『データで読み解く「生涯独身」社会』)。つまり50歳の時点で一度も結婚できていない人は100%に近い確率で独身のまま生涯を終えることが統計的に分かっている。とはいえ50間近になってとつぜん結婚するのは考えにくい。それなりの過程があるはず。30代、40代でアイドルを追いかけている。その時点で実質的には詰んでいる。一生アイドルのオタクでいることが約束されているようなものだ。つまり、ハロー・プロジェクトのメンバーさんが自由な恋愛とセックスを犠牲にしてアイドルとしての活動をしているのと同様、我々(私)もアイドルを応援することで生涯未婚への快速電車に乗っているのだ。もっともアイドル鑑賞をしていなければ結婚して家庭を作って…というような人生になっていたかというと、それは別問題だ。今よりも幸せだったかというと、それはもっと別問題だ。服の通販サイトでかなり値引きされているのに不思議なくらい無視されて売れない服がたまにある。あなたや私は恋愛市場におけるそれである。しかも我々は値引きされていないし、必死に売ろうともしていない。売り場に出ることさえ諦めている。アイドルという救いがなければ生きていられたかどうか分からない。

蒲田駅。微妙な場所。東京の端。隣が川崎駅。そういえば明日も横浜(日産スタジアムにマリノス対横浜FCさんを観に行く)だった。こっちに泊まってもよかったかもしれない。羽田空港に行くまでの中継地点として二度くらい来た覚えがある。そうそう。2019年9月。札幌遠征前に泊まったカプセル・ホテル。ダニに刺されてまともに眠れなかった。たしかあの建物がそうだよな、とホテル名の塗装が剥げかけた壁を見ながら私は思った。そこから徒歩数分以内にある今日の会場。大田区民ホール・アプリコ。向かいのカフェ・ド・クリエ。レーコー。石井妙子さんの『女帝 小池百合子』を読む。発売当初(2020年5月)から気になっていた。値段がこなれるのを待ちブック・オフで570円で買った。とてつもなく面白い。筆者に一円も還元されない買い方をしてしまったのが申し訳ないくらいの力作。12回目となったつばきファクトリーさんのキャメリア ファイッ! 1回目が16時半、2回目が18時半。両方とも当選したのは少し驚いた。だって席を間引いているし、久しぶりのファンクラブ・イヴェントだからヘッズは飢えているだろうし。

1回目で登壇したつばきファクトリーさんは客席を見、一様にホッとしたような反応を見せていた。何でも彼女たちが出てくる前にステージでちょっとだけ喋っていたさわやか五郎さんに対する我々の拍手を裏で聞いていて、その音からだいぶ観客が少ないのではないかと恐れていたらしい。「皆さん、優しい拍手だったので…」(岸本ゆめのさん)。私がe-Lineupであまり商品を買わなくなったせいかアップフロントさんの厳しい仕打ちは続いており、席は1回目が1階24列、2回目が2階。いずれも日本野鳥の会ばりに双眼鏡を常用しないと楽しめないのが確定していた。私は若干ふてくされてはいたが、VixenアトレックライトBR 6x30WPを構えて小野瑞歩さんをはじめとするうるわしのカメリアたちを追いかけると、すぐに口角が上がった。

だが、最初のセグメントのつまらなさと言ったらなかった。オタク引退が頭をよぎった。来場者から募っていたらしい(私はまずそれを知らなかった)つばきファクトリーさんのこれまでに関する(もしくはちなんだ)クイズにメンバーさんが答えていく。たとえば、低温火傷になるのは最低何度でしょう。正解は44度。他には、岸本ゆめのさんにゆめぴっぴというニック・ネームが出来たのは何年何月何日のブログでしょう、とか。メンバーさんが当てずっぽうで数字や日付を答える。もっと後、もっと前、と正答に導いていくかさわやか五郎さん。ひたすら数字を刻んで連呼していくメンバーさん。私は平日にわざわざ労働を調整して、コレを観に来たのか? 面白くなるヴィジョンが見えなかった。

次のセグメントはとてもよかった。前にJuice=Juiceさんのファンクラブ・イヴェントで似たのがあった。違法に投稿された動画で観たことがある。“Juice=Juice FCイベント2019~メリクリxJuicexBoxIV~”だ。それを参考にしたのかもしれない。メンバーさんの誰かが誰かを表彰し、賞を貰ったメンバーさんがそれにちなんだ曲を1ヴァースだけキックするという内容。たとえば、岸本ゆめのさんは新沼希空さんを表彰。同じ年代の女の子が集まっているので争いが起きがちだが、いつも仲裁し平和をもたらしてくれるのが新沼さんなのだという。曲が『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』。歌詞カードを見ながらの緩めの歌唱。後ろで自由に踊ったり手拍子を促したりのメンバーさんたち。平時のハロ・コンのひな壇のようで、幸せな光景だった。セグメントを通しテキツーな感じで身体を揺らす左側の年長組(山岸理子さん、新沼希空さん、谷本安美さん)、割とガチめに踊る年少組(特に浅倉樹々さん)のコントラストが可笑しかった。小野瑞歩さんがダンスマシーン的な賞の名前を発表すると「やばい私だ」と谷本安美さんが言っていたが特に誰も突っ込まなかった(言うまでもないが受賞したのは秋山眞緒さん)。

ミニ・コンサート。それまで無邪気にはしゃいでいたメンバーさんが一転、フォーメーションを作ってスッと真顔になる、スイッチが入る感じ。カッコよくて私は好きだ。このために訓練された集団。曲順は正確に覚えていないが、『抱きしめられてみたい』、“My Darling~Do you love me?~”、『低温火傷』、『笑って』、『三回目のデート神話』。あと一曲あったはず。計6曲。小片リサさんの退団から時間が空いたせいか、もう私はこのラインは本来リサchanが歌っていたんだよな…的なことを感じなくなってしまった。私は“My Darling~Do you love me?~”を音源で聴いてそこまで強い印象は受けていなかったんだけど、こうやってステージで歌って踊るつばきファクトリーさんの視覚的な要素と合わさると一気に魅力が増す。17時36分頃に終演。

半休を取得し名古屋方面から蒲田にお越しになったホーミー、森川さん(仮名)と合流。彼は2回目だけに入り、一泊するのだという。18時半の開演まであまり時間はないのだが、周囲の飲食店は軒並み20時に閉店するため、夕食をご一緒するなら今しかない。会場近くのソルマリに入る。新大久保にあるリアルなネパール料理店の支店なので安心していたが、変なローカライゼーションを施していた。許せないことにチリ・モモの中にチーズを入れてやがる。気持ち悪い。正月のハロ・コンで買った為永幸音さんのアンオフィシャル・フォトグラフを進呈。『競艇と暴力団「八百長レーサー」の告白』(西川昌希さん)をいただく。もっとゆっくりしたかったが、致し方なし。

2回目の公演は、のっけから1回目よりもメンバーさんの熱量があった。そんなもん。昼公演よりも夜公演の方が演者も客も乗っているという、よくある現象。公演を通して、小野瑞歩さんのトレードマークである弾けた笑顔を何度も目に焼き付けることが出来た。

最初のつまらないクイズ・セグメントの内容は何も思い出せないが、最も正答数が多かったのはさっきの回も今回も小野瑞歩さんだった(1回目では浅倉樹々さんと同率一位)。セグメントの冒頭で前と同じように一番になると宣言していた小野さん。有言実行の小野ですから、と胸を張った。

表彰からの1ヴァースをキックするセグメントでは、演出上、ちょっとした変化があった。1回目では、賞の名前を言ってから受賞者にスポットライトを当てるという順序だったが、今回は先に受賞者にスポットライトを当てて、後から賞の内容を発表するという順序に変わっていた。フットボールでハーフ・タイム中に戦術的な調整を行うように、1回目と2回目の間に裏方やメンバーさんが話し合ってやり方を変えたのだろうか。と思ったら、3人目くらいからまた1回目のやり方に戻った。あれは何だったのだろう。最後(発表者が誰だったか忘れた)は、あなたは熱い的な賞。受賞者が誰かは二重に自明だった。第一に、1回目の公演から一人ずつ受賞していき、残っているのが岸本ゆめのさんしかいない。第二に、つばきファクトリーさんで熱いと言えば岸本ゆめのさんしかいない。のだが、なぜか浅倉樹々さんに当たるスポットライト。違うでしょ、私ですよ、と照明担当者さんの方向を指さして抗議する岸本ゆめのさん。照明担当者さんの単なるポカなのか、意図的なボケなのか分からないが、笑いが起きて場内は盛り上がった。

セットリストは1回目と比べて2曲が入れ替わっていた。“My Darling~Do you love me?~”→『恋のUFOキャッチャー』。『三回目のデート神話』→『純情cm(センチメートル)』。

このイヴェントで採用された、メンバーさんの身体の大部分を覆うカーテンのような衣装はイケていなかった(新沼希空さんだけはチャイナ・ドレス感があって幾分かマシだった。また浅倉樹々さんのヒップ・ラインは見事だった)。今日の私が席に恵まれなくても悔しくならなかった理由は、衣装にある。どうしてももっと近くで観たいと思うほど肌が出ていなかった。年齢的にも、肌は出し惜しみせず見せていかないと。布面積の少なさで勝負する℃-uteさんの精神をちゃんと受け継いでほしい。江ノ島デートという原罪。小片リサさんがInstagramにドロップしてきた愚痴の数々。もう純真無垢では済まない。女性としての魅力はどんどん増し、いま雑巾掛けレースを収録したら円盤に年齢制限がかかりかねないこの集団が、今更ロング・ドレスを着て私たち清楚ですみたいなのはもう無理なんだから。もし予算の問題でアレになったのであれば、過去のシングルのを使い回してもよかったんじゃないの?

終演後、森川さんと公園でチル。彼は缶コーヒー、私は炭酸水。これ以上飲むとバッド入るんで…とコンビニでアルコールを避ける森川さん。身体に気を付けているんですかと聞いたところ、煙草を吸うことで飲酒欲が低下したとのこと。あまり書くと後にドロップされるかもしれない彼の創作物のネタばれになってしまうが、公演の直後に森川さんが残したフレッシュな感想をいくつか記録しておきたい。

  • 小野さんのおっぱいがよかったですね
  • Saoriが元気なかったですね。生なのカナ?
  • 『恋のUFOキャッチャー』はこの動き(手を上下に動かす)がアレ(手コキっぽい)ですよね

2021年4月25日日曜日

眠れる森のビヨ (2021-04-18)

iPhone SE (2nd generation) からTwitterとマリオ・カートを削除して一週間が経った。よくないことだと前から分かっていた。2010年頃に手にして以来、この文明の利器への依存は進んでいく一方。通信速度の制限なしで利用できるデータ量が引き上げられていく度に歯止めの効かない使い方になっていった。2018年3月に私は“Bored and Brilliant” (Manoush Zomorodi) という本を読んだ。脳は退屈を必要としている。スマ・フォから離れろ。アプリを消せ。頭では理解できたが、行動には移せなかった。Twitterにいつでもアクセス出来ない生活なんて考えられなかった。それに、このブログを見てほしい。私はこうやって一定の分量があるドープな文章を継続的に書いてきた。誰にも真似できねえクラシックを次々にドロップしている。スマート・フォン依存がもたらすとされる創造性や集中力の欠如など微塵も感じさせない。だから大丈夫。自分にそう言い聞かせていた。

私をこの問題に再訪させたのは“The Coddling of the American Mind” (Greg Lukianoff and Jonathan Haidt)。近年の若者(iGeneration、別名Z世代)は鬱や不安障害を抱える率が高く、その主な原因がソーシャル・メディアだというのだ。私はiGenerationには属していないが、他人事と一蹴することは出来ない。近所の書店でたまたま見つけて購入した『デジタル・ミニマリスト』(カル・ニューポート)を読んで、私は決意した。今の私から最も注意と時間を奪っているTwitterとマリオ・カートをiPhoneから消そう。

休みなくデバイスを使っていると、他者と交流しているという錯覚が生まれ、自分は人間関係の維持に充分に力を注いでいる、これ以上何かをする必要はないと勘違いしてしまう(カル・ニューポート、『デジタル・ミニマリスト』)

私は約一年半の無職経験で、自分が働こうが働かまいが世の中は同じように回っていくんだと心の底から理解した。当たり前のことではあるが、大学を出てずっと労働者であり続けた私には気付くことが出来なかった。自分は会社や社会に不可欠なのではないかという驕りがどこかにあった。大きな間違いだった。同じように、私がTwitterに常時張り付いていなくてもタイムラインは回るし、誰も困らない。何事も適正な量や時間がある。それを超えると毒になる。子供の頃にゲームは一日三十分まで、一時間まで、といった制限を課してきた母親は正しかった。

新宿サザン・テラスにあるブール・アンジュさんでレーコーとスコーン。660円くらい。“The Righteous Mind” (Jonathan Haidt) を読みながら約二時間の日光浴。iPhoneにTwitterとマリオ・カートがないだけで読書が各段に捗る。最後の方はカップ底に残ったレーコーがお湯になった。ちょくちょく通行人の英語が耳に入ってくる。中国語率の高い池袋とは雰囲気が異なる。最近はだいぶ行く町もサテンも固定化されていたが、普段とは違う場所に来るのも気分転換になっていいものだ。

新宿にいるということは? そう、私のコアなファンはご察しの通り(記事の題名で分かるが)、演劇女子部を観に来た。BEYOOOOONDSさんの『眠れる森のビヨ』。会場のすぐ近くにある慎といううどん屋さんがリアルだと聞いていたので昼はそこにするつもりだったが列の長さを見て断念。食いモン(それもうどん)に並ぶのは私の趣味ではない。人間は元気に活動をするために食べるわけで、食べる行為のために多くの時間を費やすのは、給油のために長々と自動車を走らせるようなものだ。本末転倒。トンカツ弁当(戦慄MC BATTLE、晋平太さん戦でのチプルソさん)。それにたしか『太田上田』で太田光さんか上田晋也さんのいずれか(上田さんかな?)がおっしゃっていたのだが、飲食店に並ぶという行為には、自分の欲を丸出しにしているという点で風俗店に並ぶような恥ずかしさがある。近辺を歩き回ってよさげなお店を探す。元祖麻婆豆腐さんに入る。豚肉の四川風煮込み定食。950円。極論を言うと飲食店というのは中国人がやっている中華料理店しか信用できない。

スペース・ゼロの舞台空間が持つヴァイブス。何なんだろうね、あれは。アンビエントな音楽が流れる中、この会場の席で開演を待つ時間。数あるHello! Project現場でも最上級の心地よさ。何回も書いているが、私はあの空間が好きだ。今日は席の間引きがなかった。チケット発売時点での開催制限に準拠しているらしい。それでいいんだよ。必要以上にビビるな、権力の意向を汲むな。そもそも黙って観る舞台で席の間隔を空けることに意味はない。私に与えられた席は9列のど真ん中。次々とガタイのいい紳士たちが着席していくのを見て心配したが、運良く私の前は小柄な女性だった。おかげで見晴らしがよく、ストレスなく観劇できた。(余談だが、例のまん防とかいうのを理由にあるヒップホップ行事がキャンセルされたのをTwitterで見て滑稽に感じた。麻薬を取り締まる法律に従わないような界隈なのにまん防とかいう名称からして人を馬鹿にした要請?には従うんだ。コンサートやイベントを強気に開催し続けるアップ・フロントさんの方がよっぽどヒップホップなんじゃないか?)

事前にインターネットに公開された衣装からは多くを期待出来なかった。『アラビヨーンズナイト』から肌の露出を減らした感じだったからだ。ところが実際には劇の大半でメンバーさんたちは学校の制服風の衣装を纏っていた。演劇部の高校生たちが繰り広げる物語。男役はパンツ(下着ではない)、女役はスカート。まず話がどうとか演技がどうとかの前に、これだけ見た目の麗しい少女たちの制服姿を気の向くまま鑑賞できるありがたさ。会場の外で制服少女を双眼鏡で観たら通報されるか、当人たちに撮影されソーシャル・メディアに晒される可能性が高い。出色だったのが岡村美波さん。女役。上着なし。タック・インされたピンクのブラウス。上目の位置で履いているスカート。否が応にも強調される膨らみ。清野桃々姫さんも同じ衣装。この二人は演劇部の一年生の役で、基本的に常に対になっていた。岡村さんの胸部はさておき彼女らは物語の中では周辺的で、さほど見せ場はなかった。

平井美葉さん、島倉りかさん、前田こころさんの三人が物語の軸で、その他のメンバーさんの役柄の重要性は一段、二段下だった。全員の役に確固たる存在理由があるというよりは、先述の岡村・清野ペアのように何人か毎に一つにまとめられていた。平井さん、島倉さん、前田さん以外から一人、二人が欠けたとしてもまあ話は成り立っただろう。意外だったのは、山﨑夢羽さんが何人かにまとめられる側に入っていたことだ。BEYOOOOONDSさんの結成以来、彼女は暗黙のセンターであったように私は思う。周囲もファンも認めざるを得ないような、持って生まれたセンターのヴァイブスがある。ところがこの劇では高瀬くるみさん、里吉うたのさんとの三人組で主役の周辺に収まっていた。昔2ちゃんねるでタカハシステムと揶揄されたような(もちろんプッシュされるメンバーさんの実力を前提とした)事務所の意向が配役に働くものと私は勝手に思っていたが、必ずしもそうではないようだ。

みんなお願い! ウチらを「その他」と呼ばないで!(平井美葉、小林萌花、里吉うたの、“We Need a Name!”)

主にHello! Project研修生からの昇格者で構成されるBEYOOOOONDSさんにおいて平井さん、小林さん、里吉さんの三人だけが外部からオーディションで選ばれた。他のメンバーさんがCHICA#TETSU、雨ノ森川海という小集団に属しているのに対し、名無しの三人組。どこか外様感があった。最近になってようやく与えられた三人の総称もSeasoningS。主役というよりは食材(他のメンバーさん)ありきの、それを盛り立てるスパイス的な名称である。「その他」だった平井さんがダンスが得意な飛び道具としてではなく、主役に抜擢された。彼女がどういう味を出すかがこの劇の見所だったが、見事に期待に応えていた。あの無理のない少年ぽさは、彼女ならでは。小野瑞歩さんが過去にラジオで盟友の前田こころさんについて、ボーイッシュなキャラをつけられがちだけど本当は誰よりも女の子らしい子なんです的なことをおっしゃっていた。平井さんももちろん内面的には少女性をお持ちなのだろうが、醸し出す雰囲気の少年性が魅力的だった。飄々としつつも要所では主役に相応しい熱の入った演技を見せていた。

エンタメというかコメディに振り切った過去作に比べ、割とシリアスな物語だった。物語の核を為す学園生活は平井さんの夢で、現実生活で彼女(彼)はトラックにひかれ五年間の昏睡状態が続いている。現実世界に引き戻そうとする幼なじみの島倉りかさん、夢の中に止めようとする演劇部員たち。板挟みに頭を割かれるような苦しみを覚える平井さん。楽しい夢の中に生き続けるのが幸せなのか、現実の人生に戻るのが幸せなのか。どちらを選ぶのが正解なのか。そんな問いが通底するこの劇を観て、私は少し胸が苦しくなった。なぜなら、夢の中に生き続けるという生き方を選んでここにいるのがまさに我々オタクだからだ。もちろん実際にそういうメッセージが込められているあるかどうかは知る由もないが、オタクたちよ、お前たちの人生はそれでいいのか? と制作陣やメンバーさんに問いかけられているような気がした。

頭の中はお花畑 私はどこにいるのでしょうか?(田村芽実、『ひめ・ごと』より)

2021年4月15日木曜日

花鳥風月 (2021-04-10)

新八柱駅から徒歩15分またはバスと公式サイトに書いてあったが、服装や雰囲気で分かるいかにも同志という感じのキモい人々が向かう方向から森のホール21の場所は自ずと明らかだった。何かがおかしい。偏った靴の擦り減り方。ずんぐりむっくりの緩くたるんだ身体。運動不足と不摂生が何十年も蓄積したからだ。中高生くらいで止まったファッション。安くて薄汚れた年齢不相応なカジュアル服。よく言えばモノを大事にしているのかもしれない。だが一定年齢を超えてガタが来ているものを外で身に付けるのは美徳と言えるのか疑わしい。かくいう私も背負っているバックパック(フリークス・ストア別注のグレゴリー・デイパック)の、前でカチッて止める部分のプラスティックが破損しているという負い目がある。ワンガリ・マータイさんも唱和したMOTTAINAIの精神で使用を続けているが、この発想は穴の開いた臭そうなカバンで現場に登場する彼らと陸続きである。気を付けないと。後継のバックパックはゲトるつもりだが、すぐに見つかるものではない。カバンは難しい。

前日にググって新八柱駅の周辺環境には期待出来なさそうと判断していた。駅の画像を見ただけで何となく分かる。何せ、千葉だし。だから昼は現地で食わず、家の最寄り駅前でシースー(15貫の盛り合わせJPY1,500)を喰らった。14時開場、15時開演。1時間ちょっと余る。駅直結のプロント。レーコー。カル・ニューポートさんの『デジタル・ミニマリスト』を読む。5lackさんの“Title”を聴く。

14時半くらいに着席。二階席ではあるが最前なのでSTEP BY STEP公演の干され席とは気分が違う。小野(瑞)Tシャツを装備する。客席を間引くというどこまで効果があるのかが不明な施策が続いているため前方の席は来づらい。関東の会場ではファンクラブ先行でもチケットの確保がままならない。チケット転売サイトでは平凡な席が高額で売り出されている。一方、地方の公演では一階席も埋まりきらないと聞く。しかし今の私には完全な形ではないハロ・コンのためにわざわざ交通費や宿泊費を割いて地方を訪れるほどの熱意と経済的な余裕がない(まあ5月に仙台には行くんだけど)。つばきファクトリーさんの単独コンサートなら申し込むけど。(そう言えば中止になったつばきファクトリーさんとBEYOOOOONDSさんの中野サンプラザ公演を棚上げして先に研修生でコンサートをやるというアップフロントさんの決断に私は怒りを覚える。研修生の位置づけが揺らぐし、デビューを目指す意味がなくなるのでは? 今ってデビュー組と違って地上波で冠番組もあるし、下手にデビューするより研修生でいた方がよくないですか?)

終わらないコロナ・バカ騒ぎ。「歴史上の戦争や革命の動乱というものは、だいたい3年半から4年続く」と副島隆彦さんが『裏切られたトランプ革命』で書いていた。このコロナ戦争もずるずるとそれくらい続くのかもしれない。たかだかコロナ ガタガタぬかすな。日本ではそう一蹴して差し支えない、世に五万とある病気の一つであることが分かっている。私にとってはコロナで健康を害するよりも家の近くで車にひかれる方が可能性が高く、怖い。この期に及んでそれも分からない大衆が大多数を占めるのだとすると、もうこの国はコロナ以外のすべてを犠牲にして沈んでいくしかない。小池百合子をはじめとする(民衆の知能に見合った)バカな知事たち、腹黒医師会会長、煽るのが商売のメディア、恐怖を煽って小遣いと信者を獲得する専門家たちと心中するしかない。

小野瑞歩さんがステイジで躍動するお姿は、今でも私を笑顔にする。去年からそうなりつつあるが今の私にはHello! Projectよりも明治安田生命J1リーグの方が断然楽しい。2021シーズンも今のところ横浜F・マリノスの全ホーム・ゲームをスタジアムで観ている。Hello! Projectへの依存度がだいぶ落ちている。それでもウレタン・マスク(PITTA)の中で表情が緩んでいくので、私はまだHello! Projectのことが、みーたんのことが好きなんだなと思った。今日のおみずちゃんは終盤の曲で何かを床に落とし、曲中に拾っていた。どうやら右の耳飾りだったようで、最後に全員が並んでコメントを言っているときに付けようとしていたが手こずっていた。あ、そうそう、おみずちゃんと言えば『今夜だけ浮かれたかった』の見せ場「どうしたら輝けるの~?」を久し振りに聴くことが出来たのは嬉しかったな。

悪夢の『ザ・バラッド』、多少はマシになった冬の“STEP BY STEP”と来て、『花鳥風月』はさらに辛気臭さが抜けていた。平時に比べるとショボいがステージには段が設けられている。衣装はきらびやかで、しかも途中で替えている。メンバーさん同士が近距離で密集している。しっかりダンスも見せてくれる。一定以上の強度で運動をすると得られる爽快感をメンバーさんの表情から読みとることが出来たのが先述の二ツアーとの大きな違い。私は家を出る前に某所にイリーガル・アップロードされたひなフェスの動画を途中まで(5本中3本まで)観ていたのだが、そこで見覚えのある衣装が今日のコンサートで採用されていた。(詳述はしないがひなフェスでは川村かわむーさんの衣装が秀逸だった。『花鳥風月』でも着用しているそうだ。それ目当てで彼女の出る回を観に行ってみたいくらいである。)布面積の少ない衣装を纏った何十人もの美女が一斉に歌って踊る。いわゆる同時多発エロ。泣く泣く観る場所を絞る贅沢さ。それこそが本来のハロ・コンの醍醐味だが、その要素を久し振りに感じることが出来た。もっとも本ツアーでもメンバーさんは全員集合しておらず、花、鳥、風、月という四つのティームに分かれている

小野さんが属する花ティームはなかなかイルな面子が揃っている。中でも私の目を引いたのは工藤由愛さん。文句なしに本日の最優秀選手。出発前に観ていたひなフェスの違法動画でも同期の松永成立さんもとい松永里愛さんと共にJuice=Juiceさんの新たな星となっていた。幼さが抜けてきて、でもまだ大人にはなっていない。田村芽実さんもご自身の表現テーマとしてよく言及する、少女という儚い存在。工藤さんは身体が物凄く細く、でも不健康さはない。非現実的なバランスを実現している。立ち振る舞いに内面の純粋さが滲み出ている。これから2-3年がアイドルとして最もキラキラするゴールデン・エイジ。アイドルという名称に相応しい人間離れした存在。この産業のプレイヤーにはどうしても旬の年齢というのはある。(その意味では今日の出演者だと為永幸音さんも非常にいい時期。コンディションも整っていた。)若さの消費と言えるが、あらゆる労働が若さを含めた人間性の消費であることを忘れてはいけない。年齢による選別や差別はフットボールの世界でも残酷なほどにある。アスリートとは程遠い事務職の会社員にさえ、年齢の壁は厳然として存在する。

蛇足:語弊があるかもしれないが今のJuice=Juiceさんは少し人数が多すぎるんじゃないかと思う。別の言い方をすると、多人数を前提とした歌割の細かさが、一人一人の表現力の高さと合っていない。たしかに7人(高木紗友希さんの退団前は8人)という数字だけを見ると他のグループに比べて多くはない。むしろHello! Projectの集団では最少だ。しかし“DOWN TOWN”における山手線ゲームのような歌割では彼女たちの能力を活用しきれていない。歌割を細かく区切るのはメンバーさんの歌の下手さを誤魔化すための手法であって、Juice=Juiceさんでやるのは惜しい。一人一人のスキルを立たせるなら℃-uteさんの最終形態やJuice=Juiceさんが元々そうだったように(なお大塚愛菜さんはいなかったものとする)5人こそがマジック・ナンバーではないだろうか。せめてメンバーさん一人ずつのソロ歌唱ヴァージョンをB面で入れるというやり方が出来なかったのだろうかと“DOWN TOWN”を聴いて私は思った(昔℃-uteさんがそれをやっていた。なおJuice=Juiceさんの最新シングルでは『がんばれないよ』に限って初回生産限定盤SP1という盤のみで各人のソロ版が収録されている)。

トークのセグメントでは北川莉央さんが、会場から10分ほどのところにあるというお店のカレー・パンとデニッシュをレコメンドしていた(聞き手:井上玲音さん)。サクサクを超えてサクサクサク。甘すぎずからすぎない絶妙な味加減。なぞと絶賛していた(井上さんはそれは食べておらずブリオッシュを食べたとたしか言っていた)。このハロ・コンでもトークにローカルネタを盛り込む決まりになっているようだが、千葉では限界があるだろう。北川さんが何とか捻り出した話題がスタッフさんが買ってきてくれたカレー・パンだというのも頷ける。北川さんと言えば私は双眼鏡を使っていない状態で、2、3回、彼女を小野瑞歩さんと見間違えた。何だろう、これまでそう思ったことはなかったんだけど、何か似ていた。

横山玲奈さんは最近の映像で髪の先端付近を金っぽくしている印象があったが、今日は黒髪だった。ちょっとむっちりしていた。肉感的なふともも。『こんなハズジャナカッター!』(完全にBEYOOOOONDSさん用に当て書きされた曲を今日のチームでやるのはちょっと変だった)で小林萌花さんが「うろたえるな玲奈」と言っている(通常は「うろたえるな汐里」)のはシャッフルされた集団ならではのスペシャル感があってよかった。

臥薪嘗胆』の歌い出しを担当した島倉りかさんが派手に歌詞を飛ばしていた。さすがの彼女もしばらくは顔がひきつっていたように見えた。

一岡伶奈さんががしゃがんでいるとき、短パンの奥にある左側のお尻を見せてくれた。立っている状態でいわゆる尻たぶと呼ばれる部分。ひなフェスの映像でも普通に立っているだけでちょっとお尻がはみ出るくらいのキワキワだった。ひなフェスは全体的にメンバーさんがよくお尻を見せてくださっている。ステイジが高いのと、ステイジを取り囲むように客席があるので後ろから映されることも多いのが理由である。

『ザ・バラッド』よりも“STEP BY STEP”が楽しかったし、STEP BY STEPよりも『花鳥風月』は楽しい。でも、このためにバンバン遠征するか、お金をつぎ込むかっていうと、私にとってはそこまでではない。公演時間も85分くらいとちょっと短い。よくなっては来ているけど、まだそこそこという感じ。フットボールのような、感情を入れ込んで夢中になる感じではない。私は横浜F・マリノスの試合を一つ観るとグッタリと疲れるが、今のハロ・コンにはそこまでの強度と密度はない。それでも楽しくはあるので、もう一度、仙台で観るのが楽しみだ。帰りは西川口に寄って、麻辣香鍋とコロナ・ビール。俺コロナ。

2021年4月4日日曜日

イン・ザ・ハイツ (2021-03-27)

ファンの皆さんはもう気付いてくれているだろうが、私は糖質制限から足を洗った。今は糖質を敵対視していないし、この食事は糖質何グラムだとかいちいち気にしていない。思想転向(conversion)はうやむやにせず文にして残すべしという副島隆彦さんの教えに従い、ここに経緯を記す。元をたどると2018年のゴールデン・ウィーク頃。体調を崩した。毎日ずーっとだるい。どうやっても抜けない疲労感。日々をやり過ごすだけで精一杯。週末のコンサートも楽しめない。本を読み漁って、色々なことを試した。食生活の面で行き着いた答えの一つが糖質制限。試行錯誤の末、何が決定打だったのかは分からないが、とりあえず当初のしんどさからは抜け出すことが出来た。が、なかなかその先に進めなかった。よく糖質制限で痩せましたという体験談がある(身近でも聞く)けど、私の場合は明確に痩せるということはなかった。太りもしなかったけど。私がはっきり体感した利点は頭がスッキリすること。昼食の後に頭にモヤがかかったり眠くなったりするということがなくなった。血糖値の乱高下がなくなったことの効用だろう。その後、糖質制限を緩めに続けながら、軸を間欠的ファスティング(intermittent fasting)に移した。間欠的ファスティングには色んなやり方がある。私がやったのは朝食を抜く16:8ダイエット(一日の中で食事を摂る時間を8時間の枠内に限定する)。一日二食は慣れたら平気になったが、食費が削れるという以外には目立った効果を感じられなかった。

生化学や栄養学の素養がない私がつまみ食いした知識で試行錯誤することに限界を感じた。近所にあったオーソモレキュラー(栄養療法)・クリニックの門を叩いたのが2020年6月。血液検査で脂肪肝という結果が出た(ネットで検索した限り予備軍くらいの数字だったが)。炭水化物の摂り過ぎではないか、と先生。あり得ないと私は思った。たしかに以前ほど厳格に制限はしていない。それでも一般的な水準に比べると少ないはず。これで多すぎるなら断糖でもしないと適正量にならない。何かがおかしい。Twitterを見ていたら糖質制限が原因で脂肪肝になる場合があるというtweetが目に飛び込んできた。それからはお菓子や砂糖は引き続き避け、小麦は程々にしつつ、米、芋、果物を気にせず食べるようにした。四ヶ月後の血液検査では数値が正常値だった。もちろん糖質の摂取量と関係ない要因で改善した可能性もある。しかしこの一件で私は糖質制限という基本原則を見直す必要性を感じた。洗脳が解け始めた。それから9ヶ月くらい糖質を気にせず摂っているが、太っていない。むしろ身体のバランスはよくなってきているように感じる。これまでは運動をしてもつかなかった筋肉が、糖質制限をやめてからは少しついてきた気がする。あと糖質制限をしたことで、どうやら前髪の生え際の後退が加速していたようだ。これ以上、悪化しないことを祈る。

今の私が大事にしているのは、身体によいものを食べること(最近は堀江俊之さんのTwitterを参考にしている)、運動をすること(週に二回のトレーニング)、乳・卵を出来るだけ避けること(遅延型アレルギー検査でカゼインと卵白がクロだった。他にもエンドウ豆、鯛等)。遅延型アレルギー検査についてはメイン・ストリームの医学界から批判があるのは知っている。盲信するつもりはない。(同検査についてはこのフォーラム?を見てみるとよい。)しかし病気を見つけて薬で治すという主流派の医療に頼るだけでは健康を手に入れられない。たとえば花粉症ひとつ取ってみても耳鼻科でやってもらえるのは薬を処方してもらうことだけ。それが一生続く。根本的な治療は望めない。私は乳と卵を避けるようになってからお腹の不調(もたれ等)がほぼゼロになった。とはいえ私のような外食フリークが特定の原材料を100%避けるのは無理。乳や卵が含まれると知りながら食べることもたまにある。ちょっと食べただけでGAME OVERではない。ゼロか百ではない。

Naomi Kleinさんは名著“The Shock Doctrine”で新自由主義がいかにしてさまざまな国の貧富の差を広げ経済を壊してきたかを暴露している。シカゴ学派が導入する極端な資本主義は、政府とズブズブの関係にある企業を豊かにする一方、庶民の生活を苦しくさせる。それを見てシカゴ学派の信徒たちが出す処方箋とは、自由競争のさらなる推進である。なぜなら自由競争が悪いから失敗したのではなく、自由競争が足りないから失敗しているのだ。人は理論の信者になると、失敗した場合でも悪いのは理論ではなく理論通りに行かない現実であるという認識に陥る。新自由主義に通ずる危うさが、糖質制限にはある。糖質制限の信者にとって、糖質制限が誰かに合わないということはあり得ない。成果が出ない場合はやり方が間違っている、もしくは徹底し切れていないのいずれかなのだ。糖質はすべて悪なのだから。端的に言うと自分が信じる宗教の世界観に酔っている。

今日は神奈川づくめ。14時からニッパツ三ツ沢球技場で明治安田生命J1リーグ ルヴァン・カップ グループ・ステージ 横浜F・マリノス対サンフレッチェ広島さん。18時半から鎌倉芸術館で田村芽実さんがご出演されるブロードウェイ・ミュージカル、『イン・ザ・ハイツ』。

横浜といえば私の大好物、ハングリー・タイガーさんのハンバーグ・ステーキ。公式サイトのアレルゲン情報によるとソースとミックス・ヴェジタブルズが乳成分(たぶんバター)を含む。遅延型アレルギーの件があるから、最近は横浜に来てもハングリー・タイガーさんに入らないことが多かった。乳と卵を避けようとすると、洋食系はほぼ無理。バターが必ずと言っていいほど使われている。まあ塩コショウで食ってもおいしいけど、あのソースがキモなんだよね。たまには食いたい。子供の頃から愛するハマのソウル・フードから絶縁は出来ない。ということで、ダブル・ハンバーグ・ステーキをいただく。パンも付けちゃう。久々のバターはちょっとくどく感じる。

ニッパツ三ツ沢球技場。快晴。半袖ティー・シャツで寒くも暑くもない。心地よい日差し。これ以上ないフットボール日和。オナイウ阿道さんの2点。仲川輝人さんの今シーズン初得点を含む2点。岩田智輝さんの移籍加入後初得点。最後の最後まで手を緩めない。容赦なきアタッキング・フットボール。5-0の圧倒的勝利。爽快。こんなに楽しいことはない。悪趣味かもしれないが、勝った後は相手クラブのサポーターさんの掲示板を熟読するのが好きだ。

名前からして鎌倉駅だろうと思い込んでいた鎌倉芸術館だが、最寄り駅は大船だった。私は中学生の頃、鎌倉の帰国子女向け英語教室に通っていた。そのときに大船駅を通過していたが、降りるのは初めて(たしかその教室で仲がよかった奴が大船駅付近に住んでいた)。会場近くのファミ・マでりんご、鮭のおにぎり(200円くらいする高級なやつ)、豆乳飲料、ハイボール。昼に440gのハンバーグ・ステーキを胃に入れたから空腹ではない。サーカディアン・リズムを崩さないための軽い夕食。アルコールを入れたのは、強烈に残るフットボールの余韻を少しでも消してミュージカルを楽しみたかったから。

私はこの『イン・ザ・ハイツ』では初演と千秋楽の二公演という品に欠ける申し込み方をしている。普段はこういうことはしない。むしろ最初と最後は外すことが多い。申し込む人が多く良席が来る確率が下がるだろうから。それに千秋楽というのは何度も足を運んだ人が味わうべき果実。ロクに観ていない奴がそこを狙うなんて洗練されていない。一方で私は、最初と最後が特別なのも理解している。限りある人生、限りあるお金。たまには体験してみたい。恥を忍んで申し込んだ。もっとも、厳密には今日の公演は初演にカウントされないかもしれない。というのが、ググったところ、どうやらプレビュー公演の後に行われるのが初演らしい。

マリノスの試合との時間間隔が絶妙で、ファミ・マ前で夕食を終えるとちょうど開場時間の18時過ぎになった。田村芽実オフィシャル・ファンクラブさんが私に割り当てた席は17列の左側。S列、JPY12,000円。良くも悪くもない席。感染症の拡大防止とは無関係だが経済破壊には抜群の効果を示したことでお馴染みの緊急事態宣言という名の営業妨害に伴う会場の収容制限で席が一つ飛ばし。単純に考えて100%収納だったら8列か9列くらいをもらえていたのかもしれない。筋金入りのギャングスタ小池百合子をはじめとする一都三県のろくでなし知事たちが憎らしい。(ちなみに後から収容制限が緩和されチケットが追加販売された。つまり後に買った人が前の席を得た可能性がある。)

劇中でウスナビという役の紳士(Microさん)が序盤からかましてくるラップ。どこかぎこちない。フロウがない。乗り切れていない。ちょっとあっぷあっぷな感じ。本筋ではないのは重々承知。でもこちとらジェイラップと米ラップを二十年以上前から聴き込んできた身。どうしても気になる。(そう考えるとDOTAMAさんはスゴい。安定した声量と滑舌。しっかり言葉を届ける。それをラップでやるのはプロの仕事。)帰宅してから本家米国のサウンド・トラックを聴いてみた(田村芽実さんが前にインスタ配信で勧めていたのを思い出した。Spotifyにあった)。オリジナル・キャストさんによるラップは、そうそう、これがラップだという納得感があった。もちろん音源と生歌唱なので公平な比較ではないが、滑らかさが段違い。Microさんはデフ・テックという集団の一員らしい。集団名は知っていたが曲は聴いたことがなかった。YouTubeで上位に出てきた動画を適当に再生。歌は流石で、フェイクではなさそうだった。今日のラップに関しては初回の緊張もあったとは思う。千秋楽でどこまでこなれるのか、成長に注目したい。もっとも氏を擁護すると公演の後半には多少マシになっていた。ラップ以外の歌唱や演技が素晴らしかったのは言うまでもない。

ピンクのドレスを纏った田村芽実さんがステージに現れるとパッと場が華やいだ。ヴァイブスが半端ない。役柄とは別の意味で主役感があるというか。私も思わずウレタン製マスク(PITTA)の下で笑みを浮かべた。今さら言うことではないが彼女はもはや元Hello! Projectメンバーではない(もはや戦後ではない的な意味で)。過去の経歴をレバレッジしなくても一人の実力ある女優として成り立っている。何らかの下駄を履いてこのステージに立っているわけではないのは、彼女の歌を聴き、立ち振る舞いを見れば、誰にでも分かることだった。田村さんを知らずに会場に来た紳士淑女たちも、彼女の歌には引き込まれたと思う。それだけの魅力があった。田村さんが演じたのはニーナ。町全体の期待を背負ってスタンフォード大学に進学した、成績優秀な娘さん。両親はタクシー会社を営む。衣装は計三着だったと思うけどいずれもピンクや赤を基調としていた。田村さんの雰囲気と合っていて眼福だった。

20分間の休憩が始まり、ふと右に視線をやると(一つ飛ばして)隣の女性が泣いていた。この話にそこまで感情移入できるのかと驚いた。私は例によって何の予習もせずに観ているが、舞台はおそらく50年くらい前のアメリカ。当時移民たちのこういうコミュニティがあったのだろうな、と想像する材料にはなった。ただそれを日本版キャストで日本語の台詞でやっている時点でどうしてもフェイクな要素があるのは否めない。宿命的に本物を超えることは出来ない。原作の登場人物と人種的、民族的なルーツを共にしていないと劇や映画で演じることも許されないという、西洋で盛り上がっている過激な社会正義(social justice)の運動に私は賛同しない。だが、その考え方も部分的には真実を含んでいるのだろうと思う。本場ブロードウェイの“In the Heights”公演はこの何倍もスゲエんだろうなという思いは拭えない。

観劇中、頭の片隅にマリノスの試合中の情景が頭に浮かぶことが何度かあった。あれはあまりにも楽しかった。もっと平凡な試合を見せてくれたなら気持ちを切り替えられたのに。夢心地から逃れることが出来ない。『イン・ザ・ハイツ』に100%の集中は出来なかった。仕方ない。不可抗力。

持参した双眼鏡は田村芽実さんを観るためだけに使うつもりだったが、思わぬ刺客に妨害された。セクシーなホット・パンツをお召しになっている淑女が一名いらっしゃったのである。石田ニコルさん。流石にモデル業に従事なさっているだけあって抜群のスタイル。見事なおみあし。二着目の衣装があまり身体の線が出ないドレスだったので内心舌打ちをしたが、その後にタイトなジーンズでツーケーを強調してくださったので再び双眼鏡のレンズを向けざるを得なかった。

田村芽実さんが出演する高額な舞台は毎度そうだが、おそらく日本で観られる舞台としてはトップ・クラスなんだろう。出演者は全体的に表現力が高く、言葉だけじゃなく表情、声の調子、動き等々で伝わってくるものがあった。日本語が分からない人が観たとしてもある程度は楽しめるんじゃないかと思う。衣装やステイジ・セッティングも細部に至るまで抜かりがなく、一つ一つに手間とお金がかかっていると感じた。ある場面では壁が上から降りてきた。田村芽実さん目当てで彼女の出演作を観に行く度、本物のミュージカルはこういうものなんだよと田村さんは教えてくれている感覚。劇中の音楽はステージの奥で生演奏だった。豪華。立派なステージで、生の伴奏で熱唱する田村芽実さん。ちょっとしたコンサート気分。早く彼女のソロ・コンサートが観たい。今年中には開催してほしい。『ひめ・ごと』も劇場で観たい。