2018年3月23日金曜日

さくら (2018-03-18)

名古屋に来るのはもう四回目なもんで、そこまで旅情を感じなくなってきた。よく知らない土地に足を踏み入れたときの、ワクワクする感じ。あれがもうない。行く場所にしても、移動方法にしても、だんだん固定されてくる。新鮮味が薄れてくる。今回の目新しい体験としては、ウェルビー今池というカプセルを利用した。この施設はもちろん初めてだったし、カプセルに泊まるのも人生で二回目だったんで、面白かった。楽天トラベルで大浴場と禁煙にチェックを入れて検索して、安くて評判がいいところを選んだらここになった。んーとね、一泊で4,220円。風呂が期待以上で。カプセルなのに露天風呂まであって。サウナではロウリュまであってさ。昨晩はたまたま髪と身体を洗い終わったところで23時のロウリュが始まるタイミングになってね。お兄さんが正面と背面に熱風をかけてくれて。爽快だった。設備にしても至れり尽くせりでさ。そういやお風呂には標準のシャンプーとリンス以外にLUX SUPER RICHとTSUBAKIが選べるようになっていた。当然、TSUBAKIを選んだよ。つばきファクトリーの支持者だからさ。そういやつばきファクトリーのファンに呼称を付ける話って立ち消えたのかな。夜中にオジサンのイビキで目が覚めたんだけど、カプセル内に用意されていた耳栓をハメたら聞こえなくなって、熟睡できた。つうかアレだよね。あんだけイビキをかくのにカプセルに泊まりにくる神経の図太さ。感心するわ。自覚ないのかもしれないけどさ。

朝風呂に入って、チェック・アウト。よく寝たんだけど、なぜか気分はちょっとすぐれなくて。体調が悪いというほどではないんだが。腹具合(パラグアイではない)が微妙に悪いのかな。何かイラつく感じ。今日は24時のバスで名古屋を出て、6時半に新宿に着いてそのまま会社に行く。だからカバンに会社のコンピュータを入れていてね。双眼鏡なんかも入ってるからパンパンに膨らんでいて、それがイヤだった。NICK STOCKに入ったら混んでいて落ち着かないし、アイス・カフェ・モカは水っぽくてまずいしで、ヴァイブスは下り坂だった。昼は栄のコモでタラコ・スパゲッティを頼んだ。前回は少なめで頼んだら量が物足りなかったのね。だから今回は普通にしたんだけどさ。今度は多すぎて。少なめの倍くらいあったんじゃないかな。その中間くらいがいいんだけど。15%くらいは残してしまった。この店のカウンターで、オジサンたちが大しておいしそうでもなく淡々と処理するように食べている光景。俺は嫌いじゃない。

12時29分にZepp Nagoyaのグッズ列じゃモロ最後部な奴らになって、約10分後には小野瑞歩さんと高瀬くるみさんの日替わり写真と、小野瑞歩さんの2L写真4枚組の購入が完了した。前回は早朝から並んで意味ねえと思ったんだけどさ、やっぱり並ばなくてよかった。ただ場外のグッズ販売は13時までだったっぽいから、ギリギリだったね。今日は昼公演が13時半開場、14時半開演。夜公演が16時半開場、17時半開演。セブンイレブンの前でつばきファクトリーの曲を聴きながらハイボール350mlを飲んでTwitterを眺めていたら何か話しかけてくる奴がいてさ。イヤフォンを外すと割引しますよと言ってくるわけ。何をと聞いたらチケットって。持ってる。あ持ってるの。余分にはない? ない。退散するダフ屋さん。売りたいのか買いたいのかどっちなんだよ。

Zeppの近くにあるセブンイレブンにはアルコホール9%の濃いめハイボールがなくて、7%の普通のしか置いていないんだ。それも350ml缶しかなくてね。7%の350mlを一本飲んでもぜんぜん普通な感じだった。まあでも夜公演もあるしその後もお酒は飲むんで、それでやめておいた。三ヶ月前にここに来たときは昼がいちばん後ろ、夜が後ろから四列目という散々な席だったんだけど、今回は昼がE列、夜がI列というよさげな位置をいただいてね。席に着いてみると、こりゃ近いなって。最前がC列だったから、昼は三列目だった。右の方。双眼鏡が要らない距離。いつも客席を回って観客のTシャツに印字されている名前を数えて集計していることで有名な紳士が隣にいた。開演前、いつもの三人衆。いっちゃん連呼キチガイ紳士(いつもの必死さがなく惰性っぽくなっているように感じた)。土居麗奈不規則チャント紳士。小野田紗栞さんと控えめに叫ぶ紳士。他にはるるーって声を出してる紳士が何人かいた。Juice=Juiceに昇格した段原瑠々さんの名前を叫ぶ悪ふざけをしているのかと思ったけど金光留々さんという人がいるのね。いや、オーディション番組から入ってきた人なんでしょ? あれまだ最初の方しか観ていなくて。松原ユリヤさんと出頭杏奈さんは分かる。全員をちゃんと把握していない。俺が名古屋の研修生発表会に来てる主目的は研修生を観ることじゃないからさ。

主目的は言うまでもないけどつばきファクトリー。というか小野瑞歩さん。もちろん研修生にも目は光らせるけど、それだけのために交通費と宿泊費で2万円は出さない。俺はつばきファクトリーというか小野瑞歩さんの現場としてここに来ている。もちろん名古屋には現地民の文化的資本不足により空いている美術館を観られること、『フリースタイル・ダンジョン』が放送されず“The Girls Live”も一週間遅れ、東京に出るにも交通費が高いといったフラストレーションを溜めやすい土地柄から養成されるイルな人間たちと会えるといった楽しみはある。でも俺にとっては小野瑞歩さんに会いに来ているというのが第一にある。会いに来ているといっても、握手はない。出演者は何十人もいる。小野さんが属するつばきファクトリーは常に出ているわけではない。こっち(観客)も千何百人かいるわけでさ。物理的に接触するわけでも、言葉を交わすわけでもない。普通に考えたら会いに行くというのとは程遠い。でも、たしかに俺は小野さんと会ったんだ。そう思えるだけの体験を、昼公演で得ることができた。まず冒頭の出演者紹介。つばきファクトリーは最後の三列目にいてね、一列目の紹介が終わって彼女が二列目に出てきてから、俺がいるのに気付いてくれた感触があった。真顔だったのがふわっと和らいでニコッと笑いかけてくれた感じ。終盤の数曲では恒例の降臨があってね。『初恋サンライズ』で何と小野さんが降りて来る位置がすぐ俺のすぐ左だったんだ。といっても俺がいたのは通路席ではなくて、間に3-4人は挟んでいたけど。それでも近くて。単純な近さでいうと握手の方が近いけど、歌って踊っている姿を近くで見られるというのは格別で。天国だった。曲の半分くらいだったかな、小野さんはそこにとどまっていて、その間3回くらいは目を合わせてくれて、こう頷く感じというか。会釈っぽい感じというか。それをしてくれて。極めつけはコンサートが終わりましたというときに手を振って、さらに最後に捌けながら手を振るんだけど、二回とも俺に向けて手を振ってくれた感覚があってね。Hello! Projectのコンサートにはもう百回以上来ているけど、これは初めて味わった。あ、こういうことがあるんだっていう。いや、分かんないよ。俺の隣も小野さんのファンだったからさ。そっちも含めてだったのかもしれない。でもさ、俺としてはたしかに俺個人に向けて手を振ってくれたって感じたんだ。そう感じたならそれが正しいんだ。そういうもんなんだ。以前、宮崎由加さんも目が合ったと自分が思ったならそれは目が合っているんだと何かで言っていた。

降臨のときにね、その小野さんがいた位置に橋迫鈴さんが来る場面があって。彼女の目の前の通路席に橋迫と印字された黄色いTシャツを着たキチガイっぽい紳士がいて。そこまでやりますかっていうくらい必死にがっついていたんだ。橋迫さんの背丈に合わせてこう、身をかがめて、こっち見て、レスちょうだいっていうの丸出しで。橋迫さんは彼のことを一瞬だけ怯えたように見たんだけど残りはずっと目も合わさずにガン無視していて。それがあまりにも面白すぎて。コンサート中なのに俺は普通に声を出して笑ってしまった。

高瀬くるみさんは髪型が凄く可愛かったし、相変わらず艶やかであざとい。清野桃々姫さんはどんどん見た目も技量も洗練されていく。彼女らと一岡伶奈さんのデビューを2017年の5月(!)に宣言しておきながら未だに宙ぶらりんにしているアップフロントプロモーション代表取締役の西口猛さん。何やってんのマジで。千秋楽の今日も発表はなかったから、発表から一年は彼女たちの処遇がはっきりしない状態が続くことがほぼ確実となった。あの子たちにとっての一年ってのは、俺ら賃金労働者の十年くらいに相当するんじゃないか? こんな状態を放置し説明もせず、ハロショのイベントの司会としてヘラヘラ人前に出てくる神経が分からない。ブラジルのセレソンだったら空港に着いた瞬間に罵声を浴びせられて生卵を投げられる。それくらいの失態を彼は犯している。城彰二さんは1998年の仏ワールドカップで無得点に終わり、帰国の際に成田で水をかけられた。俺らは優しいから西口さんにそんなことはしないけど、インターネットでの批判は怠ってはならない。西口さんには早く責任を取ってほしい。辞めろという意味ではなく、説明して、実行してほしい。

つばきファクトリーの新沼希空さん、浅倉樹々さん、秋山眞緒さんのトーク・セグメント。秋山さん曰く最近メンバーが冷たい。メンバーと別れた後に電車の中で鼻血が出て買ったばかりの服に付着した。ホームの端で一人で泣いた。新沼さんに戻ってきてと連絡したが無理と断られた。新沼さん曰く、秋山さんはグループで最年少。甘えてくる。でも自分のことは自分でできるようになってほしい。教育的な意味を込めて断った。とはいえ、結局は染み抜きを手伝ったとのこと。その後、秋山さんが何かを言ったんだけど(俺が覚えていない…)それ中二病じゃんと浅倉さんが突っ込む。甘えん坊で中二病のまおぴんの応援をこれからもよろしくお願いしますと話を締める浅倉さん。

研修生のトーク・セグメント。北海道から来た佐藤光さん(造形に植村あかりさんっぽい雰囲気がある)。雪かきをしようとしたらスコップの柄が取れた。西田汐里さんは、夜一人で寝られない。誰かに見られていると心配になる。普段は両親に挟まれて寝ている。仕事で外泊するときは仕事モードに切り替わるので問題ない。

朝からの軽い不調はどこへやら。嬉しさ、楽しさ、面白さが凝縮した80分。最高の位置から堪能した。ハイボール缶一つでは何の効果もないかと思っていたが、ほんのりと効いてくる感じがあって、悪くなかった。俺にとっては2018年に入ってから1月3日のハロコンFULL SCORE2月4日のつばきのリリース・パーティと並んで今日の昼公演が三本の指に入る体験だった。夜公演はどうでもいい、もうおまけだと思えるくらいだった。

名古屋でも東京でもよく会うようになったM、そして彼経由で初対面のSと合流。Sとまさか会うことになるとは思わなかった。センズリ回数をTwitterで報告するような人物なんでね。つい最近、2018年の回数が100を超えていた。一体どんな人なんだと先々月から戦々恐々としていたが、話してみると飄々として意外にとっつきやすく、まともな方だった。ハイボールをまた一缶開けて、Zepp Nagoyaに入る。Mは二列目(D列)、私はI列、一般販売でチケットを買ったSは最後列。俺の席は左のブロックだった。右に三つ席を挟んで通路。降臨のとき、小野瑞歩さんは少し前の列の横にいた。そのときに見つけてくれて、目を合わせてくれた。松原ユリヤさんがあまりにちっちゃくて思わず笑みがこぼれてしまう。小野田紗栞さんがよく横に来たんだけど、本当にきれいだった。岡村美波さんが通路に来たとき、俺の前の列にいた岡村と印字されたTシャツを着た紳士がみいみ!と言った。すると岡村さんは振り返って声の元を確認しようとしていた。アンダーグランド育ちのハングリーさが窺えて私は好感を持った。その紳士、シャイなのかレスをもらう絶好のチャンスにも関わらず引っ込んでそれ以降は黙っていた。

つばきファクトリーのトーク・セグメント。はじめはこちらから見て小片リサさん、谷本安美さん、小野田紗栞さんという並びだったが、小片さんが谷本さんと位置を交代する。「私たち、少女漫画大好きアイドルです」と『アメトーーク!』の何とか芸人です風に声を揃える小片さんと小野田さん。ポカーンとする谷本安美さん。小片さんと小野田さん曰く、少女漫画には色んなジャンルがある。ご近所さん、先輩後輩、兄弟…。どのジャンルが好き?とオタク特有の早口で問いかける小片さんと小野田さん。二人の勢いに引き気味で、回答に窮する谷本さん。同じ質問を振られ、兄弟が気になると答えるまことさん。兄弟と思いきや実は違っていたとか…?と聞くまことさん。あーと嬉しそうに声を揃える小片さんと小野田さん。漫画は読み方が分からない、あちこちに絵と文字があって順番も分からないというようなことを谷本さんが言うと、帰りの新幹線で、つきっきりで読み方を教えてあげるね!と満面の笑みの小片さん。寝たかったんだけどなあ…と谷本さん。昼もそうだったがつばきファクトリーのトーク技術はメキメキと上達している。もうまことさんの補助は必要としていない。

研修生のトーク・セグメント。橋迫鈴さんがお母さんの襟足を刈り上げたが失敗してTポイントカードの(要はT字?)形になった。橋迫さんがお母さんをかあちゃん、お父さんをとおちゃんと呼ぶことが発覚。私もかあちゃんと呼ぶと割り込んで橋迫さんとハイタッチをする前田こころさん。

研修生発表会はセットリストが事前にインターネットに公開されるのが通例なんだが、今回はなぜか公開されなかった。公式プログラムにも記載がなかったらしい。何という曲か分からないんだけど、最後のお祭りっぽい曲が降臨の幸福感と合わさって、これ以上ないくらいに楽しかった。どうやら今回の発表会でつばきファクトリーは会場毎に違う曲をパフォームしているらしい。今日は昼も夜も『低温火傷』の衣装で『低温火傷』と『就活センセーション』。『就活センセーション』は『春恋歌』と並んで俺がつばきファクトリーでいちばん好きな曲なので、聴けたのは嬉しかった。

終演後、M、Sとネパール料理店。三人で5,900円だった。たぶん店の人が計算を間違えている。その後ジャズ喫茶に入ったんだけど、俺たちが席に着いた直後くらいにフラメンコの生パフォーマンスが始まって呆気に取られた。そこからフュージョン、テクノと来てなかなかジャズがかからなかった。ここでの会計額がさっきのネパール料理店を超えた。ここで夜遅くにアイス・コーヒーを飲んだせいもあって、帰りの夜行バスではあんま眠れんかった。


併せて読みたい:
Hello! Project 研修生発表会 2018年 3月 ~さくら~ Zepp Nagoya
ワンラブ、為永幸音

2018年3月4日日曜日

First Blossom (2018-02-22)

「そこ座っていいでしょ」
「先にお越しになったお客様がいらっしゃいますので。その後にご案内します」
「いやだからそこ空いてるでしょさっきから」
「順番にご案内しますので。お待ちください」
「あーすげーイライラする」

Denny's ThinkPark店(大崎)。粘着する労働上がりのおっさん。スーツ。連れと二人。毅然とした対応の店員。たぶんおっさんより年上。たぶん店長。ねえねえおっさん。ココ東京。付近に他の店がねえ田舎とちげえんだよ。ここは何でもあんだろ。数分歩けばさ。わざわざ選んでここに来てんだろ? イヤだったら黙って他の店に行けや。それともDenny'sしか見えねえのか? てめえの眼には。労働が終わったらここにしか来られないようにプログラムされてんのか? 猫まっしぐらかよ。緊張が走るレジ前。間隙を縫って会計を完了させるM。

「他の店に行きゃいいのに。何であそこまでしてデニーズにこだわるんだよ」とC。
「きっと過酷な労働で心を蝕まれているんですよ」と、先ほど店の中で放ったtweet()とは裏腹に寛容さを見せるM。

夜行バスで名古屋に戻るMと別れるC。大崎駅までの間に、あるわあるわ。居酒屋。中華料理店。その他。そっちに入っときゃいいじゃん。無駄にカリカリしやがって。呆れる。



「小野さん、泣いてました?」
「いや?」
「ボクんとき、もうボッロボロに泣いてて…」
「普通でしたね」
「笑ってましたか」
「そうですね。ボクんときは最後の最後だったんで」
「じゃあ泣きやんだんですね」

「握手が早いから何も話さなくて済む」と嬉しそうな紳士、「オレつばきオタク辞めます」と興奮気味にお知り合いに告げる(何やら連番していた奴らと一悶着あったらしい)有名おまいつなどを横目に見ながら、後ろから2列目にいたMが握手から抜けてくるのを待つC。彼にとっては(たしか)三回目だった。初めは、2016年12月29日。池袋。サンシャイン噴水広場。次が、2017年1月29日。渋谷。Mt. Rainier Hall。そして、今日。ディファ有明。何がって、小野瑞歩さんが涙を流すのに居合わせた回数である。Cは個別握手会(2017年4月30日)で、泣き顔が好きだと小野さんに伝えたことがある。「ありがとうございます。でも笑顔でいたいです!」というのが彼女の答えだった。個別握手会というものに参加するのが初めてで、慣れていなかったC。ちょっと変なことを言って困らせてしまったかもしれない。後からやや申し訳なく思った。一般的には小野さんの持ち味は笑顔だ。彼女に限らずアイドルと呼ばれる人たちは普通そうだ。同じグループに所属する小野田紗栞さんはご自身の笑顔をハッピースマイルと称し、売りにしている。その小野田さんが、小野さんの笑顔が素敵すぎて私のハッピースマイルが目立たなくなるという苦情をバースデーイベントに寄せるほどのまばゆさが、小野さんの笑顔にはある。それを踏まえた上でも、Cにとって彼女が泣いたときの美しさは特別なのである。

コンサートの終盤にはつばきファクトリーのおそらく全員が感極まって涙ぐんでいた。小野さんも例外ではなかった。この一年で一番よかったことはメンバーとの距離が縮まったこと、そしてファンの皆さんとの距離が縮まったこと、とアンコール明けに涙ながらに語った。ここまでなら、また泣いてるな、で終わりだった。今日は異なった。すべての演目を終え、最後にステージから捌けたのが小野瑞歩さん。それまでは泣いていた彼女がくるっと回って、最後の瞬間にとびっきりの笑顔を見せたのである。双眼鏡を使っていたおかげでとらえることができたこの一瞬が、Cにとってはこの公演のハイライトだった。

18時半に始まったコンサートは20時4分に終わった。この後の握手会では「最後の笑顔がよかった」と小野さんに言おう。Cはそう決めていた。「泣いてたね」なんて言うのは野暮すぎるほどに小野さんも、それ以外のメンバーも、泣いていた。小野さん以外の8人には「ツアー行きます」。そうしよう。初めの6人には予定通り「ツアー行きます」と伝えた。7人目。小野瑞歩さん。用意していた言葉を発しようとするCの想像を超える泣き方をしている。絵に描いたような号泣。涙の滴がぽたぽたと瞳から頬に落ちている。Cは何も言えなかった。「ありがとうございます」と絞り出すように言う小野さんを通過したCは、残る二人にも言葉はかけられなかった。



「明日から仕事で海外に行って、19日に帰国して、その次の20日に川崎でイベントあるでしょ。それに行くつもりだから、楽しみにしてます」
「ディファは来ますか?」
「チケット取れなくて…」
「あ、そうなんですか…」
「うん、だから、行け…ない…かも」
「そうなんですね…お仕事頑張ってください!」

2018年2月12日(月・祝)バレンタインイブイブ企画!ハッピーバレンタインin飯田橋!! 個別握手会 小野瑞歩 2部



つばきファクトリーチケットのご注文

2018年02年22日(木)18:30 ディファ有明

18,521円(1枚)

- 内訳 -
チケット 15,000円(1枚)
安心プラス 1,620円
取引手数料 810円
送料 510円
決済手数料 581円

15,000円でも高い。いや、5列目とかなら分かる。でもさ、決していい位置ではない。「18~19列通路席のいずれか」。いちばん後ろが34列。通路席というのは価値が上がる要素ではあるが、真ん中付近の席に定価の3倍近くの値段。しかも何だこれは。送料と取引手数料は分かるにしても安心プラス? 決済手数料? 何で15,000円のチケットが18,521円になるんだ。2割以上も増えてますやん。何ですのんこれ。転売クソ野郎がアップフロントから6,000円以下でゲトったチケットに1万2千円以上を乗っけて払うのは気分がいいはずがない。元々はファンクラブ先行受付で外れた時点で、この日のコンサートに行くのは諦めるつもりだった。ファンクラブ先行と称しながらURLさえ分かれば誰でも申し込めた。それで大量の転売クソ野郎たちが申し込んだはずだ。オークションに出てもどうせ高騰する。そんなチケットは買いたくない。行けなかったとしても、つばきファクトリーの現場はこれだけじゃないんだし。Cはそう思っていたが、小野さんご本人からああやって残念がられると、何とかしてでも行かなくてはいけない。もし2月22日にディファ有明に行かなかったら、あのときの彼女の反応が脳裏に浮かび続け、何年も先まで後悔することになるだろう。



「21世紀サバイバル 背に腹は代えらんねえだろ シャレになんねえよ実際」
K DUB SHINE、『トワイライトゾーン』



上高田の転売クソ野郎が送ってきたチケットに印字してある席は、18列目の右端だった。これは「18~19列通路席のいずれか」という奴による記述から考えられる最悪の席だった。チケットを見たときのCは、あの男(顔も知らねえし女かもしれないけど)に一杯食わされたという感じだった。列は18よりも19の方がいい。なぜなら19列から段差が始まって視界がよくなるからだ。そして通路席と聞いてCの頭に端っこという可能性は浮かんでいなかった。左から三つブロックがある。通路席といったら左と真ん中の間、もしくは真ん中と右の間のこととばかり思っていた。そうか、端っこでも「通路席」というのか。言われてみたらたしかに通路だ。出品者は嘘をついていない。ある意味、感心した。開演前、横に来たMと一緒に双眼鏡でおまいつを観察し、報告し合う。前方に二大巨頭がいる、と興奮するM。

右端は、Cが思っていたよりはよかった。前にいた小野田紗栞さんを応援するTシャツを着たややふくよかな紳士が大きく右にずれたことで視界がよくなったからだ。その紳士は完全に自身の席を離れて横の通路で観ていた。係員がたまに通るものの一度も注意しなかったので、その快適な状態が最後まで続いた。もう一つの理由としては、ステージの右側に小野瑞歩さんが来ることが割と多かったからだ。双眼鏡を使って観るメンバーを絞れば、いい画は得られた。もし小野瑞歩さんがいなければCが今日ここにいなかったのは間違いない。この特定のコンサートに限らず、つばきファクトリーの現場に足を運んでいなかったかもしれない。Juice=Juiceばかりを観ていた可能性が高い。だから、今日のようにステージとの距離がある公演では双眼鏡で小野瑞歩さんを中心に観るのがCにとっての正解なのだ。そうすることで多少コンサートの全体像を把握できなくなったとしても仕方がない。それよりも小野瑞歩さんの細かい表情や動きを見逃さないことの方が重要なのである。Cにとっては。そうやって各自が好き勝手な見方をすればいいんだ。そういうもんだ。

つばきファクトリーの出で立ちは、前半が高島屋の包み紙のようなワンピース。後半が日本有線大賞の時の白い上下。このコンサートのために新しく作った衣装はなかった。アンコールでは後半の衣装から上をTシャツに着替えて出てきたけど、グッズのTシャツだし衣装っていうほどのものでもない。高島屋の包み紙にくるまれて出てきた小野瑞歩さんの眼は少し潤んでいるように見えた。新沼希空さんも。その他にも何人か、開演前に泣いたような形跡があった。



前半と後半の着替えタイム中のトーク。
・岸本ゆめのさんはここ一年で三回、忘れ物をした。一回目は大阪から名古屋に行くときの、一時間くらいの新幹線。網棚にカバンを置き忘れた。カバンは返ってきた。大阪で受け取った。二度目はタクシーに携帯を忘れた。親切な運転手さんが戻してくれた。三度目も一時間くらいの電車。マネージャーに「絶対、忘れませんから」と宣言して網棚にカバンを置いたが、また忘れた。今度は戻ってこなかった。(その話を聞いて、えー誰が持ってるの~?と引き気味の他メンバー。)
・小野瑞歩さんは仙台のハロコンの日、寝坊をした。電話で起きた。親かなと思って携帯を見たら「小野田紗栞」と表示されていた。時間を見たらもう集合時間になっていた。やばいと思って起きて、自力で会場まで行った。(小野さんは)いつも集合時間の前に来ているので驚いた、と山岸理子さん。(Cはこの話を聞いて、一日の睡眠時間は4-5時間で最近は午前2時か3時まで起きていると小野さんが言っていたのを思い出した。2月12日の個別握手会。)
・浅倉樹々さん曰く、前にも話したことがある(おそらく2016年12月の研修会発表会)が、リリース・イベントでショッピング・モールに行った際、みんなおかずとご飯を食べていたのに自分だけご飯がなかった。するとまおぴん(秋山眞緒さん)が天津飯をおかずにご飯を食べていた。最近まおぴんは背が伸びているが、そうやって他人のご飯をいっぱい食べているからに違いない。



ルーレットを回してプレゼントをもらえるというセグメント。回す権利を得たのは秋山眞緒さん、新沼希空さん、小野瑞歩さんの三人。
・秋山眞緒さん。当てたのは一周年記念のフルーツ盛り合わせ。フルーツが大好き。つばきファクトリーは8人いるので奪われないように気を付けるという秋山さんに、まおぴんのものはみぃのものというジャイアン的な理論とグループの食事リーダーという肩書きを持ち出しておこぼれをもらおうとする谷本安美さん。じゃあぶどうを一粒だけあげると譲歩する秋山さん。
・新沼希空さん。ファンからの声援を独り占めできる権利を獲得。いいなぁと他のメンバーたち。新沼さんの一言を受けていっせいに歓声を浴びせる我々。
・小野瑞歩さん。あの人からのビデオ・メッセージを獲得。画面に出てきたのは清水佐紀さん。つばきファクトリー初の単独公演を祝福し、これまでの努力を労った後に、4月15日の高崎を皮切りにライブハウスツアーが始まることを発表。悲鳴をあげ崩れて喜ぶメンバーたち。

メンバーの声でスタートとストップのタイミングは決まってはいたが、物理的にルーレットを回しているわけではなかった。画面上で結果が出るだけだった。『スーパージョッキー』の熱湯風呂ルーレット並に出来レース感が強かった。



コンサートの完成度としては、決して高くはなかった。
・前半はどこかふわっとしていた。後半から一体感が出てきた。だからもう少し尺が長ければコンサートとしてはもっとよくなっていただろうと思う。次が最後の曲ですからのエーイングというお約束の流れが今日もあったが、普段はみんなそこまで本気でエーとは言っていない。でもこのコンサートに関してはこれでもう終わりなのかという物足りなさを感じた。単純に時間が短いというよりは、つばきファクトリーも我々もまだ完全に力を出し切っていない感じがした。公演後の握手会を削って曲数を増やしてもよかったかもしれない。(ただ、Cとしては涙をぽろぽろ流す小野さんと対面するという貴重すぎる体験ができたので、握手があってよかったと思ったが。)
・今日のセットリストは、つばきファクトリーとしてリリース済みの曲+未発表の一曲(たしかKOUGAさんが作曲した、何か昔っぽい曲)という構成だった。Hello! Projectクラシックスから数曲をカヴァーしていればもっと盛り上がっていたのは間違いない。カヴァーの威力はリリース・パーティで証明済みである。
・前述したように衣装が二つ、それも既存のものだけというのは意外性がなさすぎた。何か一つ、見たことのない衣装で楽しませてほしかった。
・演出がよくなかった。開演直前の音楽や映像には我々を盛り立てる要素がほとんどなかった。アルビ兄さんが前説をやった方がよっぽどよかった(別にコンサートにまで出てきてほしいという意味ではなく、あくまで例えばの話。)そして、何だ曲中に画面に流れていたあのスクリーンセーバーのようなやっつけの映像は。曲のテーマともリンクしていない。十分なお金や人員を割けなかったのか、それともディファ有明ではこれが限界なのか?

ただ、初めての単独公演としては申し分なかった。Good startだった。曲数や尺を含めて、あえてカヴァーを入れないことでHello! Projectの資産でドーピングをしない、今のつばきファクトリーの実力を出し切ったコンサートだった。ここまで出来る、そして同時にまだここまでしか出来ない。その両方が分かった。もっと重要なこととして、つばきファクトリーがこれからもっともっとよくなる。もっと大きな会場でも観客とのオートマティズムを作り上げて、かつての℃-uteやBerryz工房と比肩するグループになれる。Cは希望というよりは確信を持った。スキルがどうこうというよりは、ステージに立つ全員の立ち振る舞いや発言の節々から、ハートのよさを感じた。これからもつばきファクトリーを応援していこうと思える、そんな夜だった。


併せて読みたい:つばきファクトリー ワンマンLIVE ~First Blossom~