2016年11月26日土曜日

『SPARK』ジャパンツアー2016スタンディングライブ (2016-11-16)

世界の二大ちゃんさんといえば宮本佳林と、上原ひろみである。通説では鞘師里保がブログで宮本佳林のことをカリンちゃんさんと書いたのが宮本がちゃんさんという愛称で知られるようになったきっかけである。彼女がJuice=Juiceの一員になってからはこの呼称が立ち消えていったが、ハロプロ研修生だった頃には宮本佳林といえばちゃんさんというくらいに普及していたと記憶している。単に語呂がいいとか面白いというだけの理由ではそこまで広まらなかったであろう。鞘師里保がブログにカリンちゃんさんと書いたのはきっかけに過ぎず、原因ではないのである。人をしてちゃんさんと呼ばせる力が、宮本佳林にはある。若さと可愛らしさと元気を兼ね備えたアイドルへの敬称は、普通はちゃんである。ちゃんだと愛でる感じだが、宮本佳林の場合は言動やパフォーマンスからにじみ出る禁欲主義とプロフェッショナリズムが畏怖の念をも抱かせる。したがって、ちゃんとさんを掛け合わせたちゃんさんという敬称のすわりがよいのである(鞘師のブログでは名前の後に付ける敬称だったが、ファンの間ではちゃんさんだけで宮本の愛称にもなった)。上原ひろみにも、ちゃんさんという敬称がしっくりくる。コンサート映像を観れば分かる。現場に行けばもっとよく分かる。ほんわかした人柄と笑顔。泣く子も黙る技の数々。ステージにおける上原ひろみの一挙一動は、ちゃんであり、さんでもある。高次元に融合したちゃんとさんが我々を魅了してやまない。『上原ひろみ サマーレインの彼方』という伝記によると、上原ひろみが音楽に生きると決意したのは11歳である。10歳手前でハロー!プロジェクトに加入し、アイドル・サイボーグと呼ばれるまでにストイックに生きる宮本佳林と重なる。この二人以上にちゃんさんという敬称・愛称が似合う人物は、今のところ存在しない。

上原ひろみは日本に拠点を置いて活動している訳ではなく、世界中を飛び回っている。前掲書によると飛行機での移動距離が客室乗務員を凌駕しているほどである。したがって、日本でのコンサートは来日公演なのである。私がこのたび観させてもらった公演名は「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アドリアン・フェロー&サイモン・フィリップス『SPARK』ジャパンツアー2016スタンディングライブ」である。スタンディングとあるように立ち見で、整理番号順に入っていく方式だった。18時開場、19時開演。私のチケットに印字された整理番号は504番だった。18時4分にEX THEATER ROPPONGIに着くと、既に350番まで呼び出していた。4分だけでここまで進んだとは考えにくいので、開場時間の前から呼び出していたのだろう。会場は地下3階だった。あらかじめ六本木駅内のコインロッカーにカバンを預けておいたのだが、入ってみるとコインロッカーがたくさんあって、値段も駅と同じ300円だった。ライブハウス(和製英語)での催し事ではいつもそうであるように500円(たまに新宿Renyのように600円取るところもあるが)を払ってドリンク引換券を受け取る。ジントニック。飲み干してカップをゴミ箱に捨てて、フロアへ。上原ひろみちゃんさんのピアノが置かれた左端(下手)に露骨に人が集中し、右の方(上手)はまだ人がまばらだった。ドラムすぐ前の二列目に陣取ることが出来たが、ハロー!プロジェクトさんのコンサートではないので前方にこだわってしょうがないと思い直し、段差があってステージ全体が見やすそうな後方に移った。開演前はみんな写真を撮りまくっていたが、開演前でもいっさいの撮影が禁じられているハロプロ現場と違ってそれは許されていた。係員が歩き回りながら、コンサート中の撮影は禁止だと言っていた。開演前にメンバーの名前を叫ぶ人がいないのが新鮮だった。18時45分くらいになるとだいぶ客が入ってきて、左右の埋まり方は均等になってきた。

これまでに私は上原ひろみトリオ・プロジェクトのコンサートを二回、観させてもらったことがある。2014年12月6日(土)と7日(日)。そのときもそうだったが、コンサート中のトークはすべて上原ひろみが担当した。これは世界のどこに行ってもこうなのかな? それとも日本での公演では上原が担当するけど、海外だと他のメンバーもしゃべるのだろうか? 今日は記憶している限り、こんなことをおっしゃっていた:
・今日はスタンディングということで、意を決して来てくださった方もいると思います。腰に不安を抱えながら立っている方もいると思います。私の公演ではライブハウスのときも着席のことが多い。しかも今回はまさかの演者が全員、座っているという。こんなスタンディングも珍しい
・伝説のライブハウス新宿ロフトの40周年記念ということで、歴史に名を刻めて嬉しい。今年は五大陸を回った。今日からアジアツアー
・日本に来てお鮨を食べたいという外国人の方はたくさんいらっしゃいますが、ベースのアドリアン・フェローが食べたいと言ったのが「すしざんまい」(すしざんまいという単語を聞き取ったフェローさんが「そうそう」という感じの仕草)

スタンディングがつらい人もいるでしょうという上原さんの気遣いを他人事として笑い飛ばせるのが、喜ばしい。私にとって、コンサートを楽しむための体力づくりが、定期的な運動のモチベーションになっている。多いときには土日に二公演ずつのときもある。土日の片方は何もせず純粋に休みたいなどと言わせてはくれないのである。最近はジムで時速9キロで40分。海外出張等でリズムが崩れるときを除けば、週に一度。大した運動ではないが、続けることで確実に効果を感じている。ジムに入りたての二年前には、5キロくらい走ったら二日くらい疲れが取れず仕事に支障をきたした。今では上述のジョギングを経ても疲労は残らない。むしろ心地よい。先日、二年ぶりにフットサルに参加したのだが、よく動けた。普段から少しずつ走り続けている成果だ。二年前は久しぶりの運動で吐きそうになった気がする。何事も小さな積み重ねが、時間をかけて大きな違いを生むのである。

私が週に一度、6キロ走ったり走らなかったりだとすると、上原ひろみさんは毎日欠かさず100キロ走ってきたようなものである。(これはあくまでたとえであって、実際に毎日100キロ走ったら死ぬかもしれない。)上原ひろみさんに天賦の才能があるのは間違いないだろうが、努力、気合い、根性を信条とする(前掲書)だけあって、子供の頃から絶え間ない鍛錬を繰り返してきて今がある。つまり、才能、努力、すべてにおいて我々と上原ひろみさんは比較のしようがない。自分も頑張れば上原ひろみさんのようになれるかもしれない、もしくは育ってきた環境次第では上原ひろみさんのようになれていたかもしれない、などということはあり得ない。私やあなたと上原ひろみさんの間には、海を隔てて向こう岸が見えないくらいの差がある。手は届きようがない。向こう岸に泳ごうとしても途中で溺れて死ぬ。これだけの違いを見せつけられると、みんな違ってみんないいという問題ではない。みんな違ってみんないい場合があるとすれば、それは同じレベルにいる対象同士を比較したときだけである。

この方は真のアイドルだと思った。人並み外れた存在。近距離で実在しているのがにわかに信じられないという感覚。ステージで光り輝く、圧倒的で、我々と対等ではない存在。ぽかーんと見とれる対象。最近ではアイドルという言葉が職業を指すようになっている。資格も要らないので、もはや自称すれば誰でもアイドルだ。会社員くらいの軽い言葉になりつつある。でもアイドルという言葉の意味に忠実であるならば「私はアイドルです」と当人が言うのは本当はおかしくて、他人が「あの方は私にとってのアイドルです」と崇めるのが正しい。横浜マリノスで活躍していたダビド・ビスコンティが、同チームで先にプレーしていたラモン・ディアスについて、彼は私のアイドルだと言っていた(裏の取りようがないが20年くらい前にマリノスのファンクラブ会報か何かで読んだ気がする)。アイドルという言葉はそう使うのが本来である。誰かが職業としての「アイドル」ではなくアイドルの語義通りの存在であるには、常人ではたどり着けないレベルの能力と魅力を身に付けるしかないのだと、今日の上原ひろみさんトリオのステージを目の当たりにして気が付いた。

比較するのもおこがましいが、私が文章を書くときに降りてくるひらめきのようなものがこの方には常に数千倍あるのだろうと、半ば打ちのめされながら、上原ひろみさんの即興演奏を堪能した。どんな舞台でも表現できる確固たる自分の世界があるのだろう。それでいて独善的にならず、その場の観客と対話をしている。演奏しながらトリオの二人と目配せをして呼吸を合わせるのはもちろんのこと、客の方を見て、「こう来るとは思わなかったでしょ?」的な、いたずらっぽい笑顔を浮かべる。それをちゃんと理解できるか、我々の感性も試されている感じがして、スリルがあった。超絶的な技巧だけでなく、感情豊かでお茶目な仕草があるから、彼女はちゃんさんなのである。アルバム『SPARK』を聴いていてよかった。聴いたのは今のところ30回くらいかな? もちろん何も知らない状態で臨んでも楽しめるとは思うけど、アルバム・バージョンとの違いが分かった方が100倍くらい楽しいはず。私は今年の2月-3月にドイツに長期出張で行ったが、『SPARK』を受け取ってから渡航できるように出発時期を調整していた。

終演後に貼り出されたセットリスト:
M1. SPARK
M2. DESIRE
M3. WONDERLAND
M4. WHAT WILL BE, WILL BE
M5. DILEMMA
M6. INDULGENCE
M7. IN A TRANCE
-ENCORE-
EN1. MOVE

コンサート・グッズは「SPARK」日本ツアー2016公演パンフレット1,700円と、SPARKオリジナルTシャツ3,000円の二種類だけだった。パンフレットを買って、帰途についた。家に着いて、5時間ぶりに座れる喜び。好きなことで疲れる幸せ。将来的には人工知能の発達でほとんどの労働が不要になった社会で、十分なベーシック・インカムをもらいながらこういうコンサートを定期的に鑑賞したい。

2016年11月20日日曜日

ネガポジポジ (2016-11-12)

土日の開演時間が11時半、15時、18時半の三通りあって、私にとって一番あり得ないのが11時半だった。昼飯の時間なんだよ。お昼に何をいただくか。それは私にとって土日の成否を左右する決断事項である。別の場所に用事があるときを除けば、土日はほぼかならず池袋に足を運ぶ(大半の行程は電車で運ばれる)。その主な目的はお昼ご飯を食べに行くことで、他に確たる目的がないこともある。それだけ通っていると、いくつかお気に入りの店やメニューは出来てくる。ただ、そこに安住は出来ない。お店が潰れることもあるし、お気に入りだったメニューが消えることもあるし、味が落ちることもある。ランチ営業をやめることもある。たまには新しい店を開拓していかないと手駒は減っていくばかりである。お昼ご飯は一日に一回。土日は週に二日。その二回の選択をどうするかに私の現在と未来の満足度がかかっているのである。私の土日は昼ご飯を中心に回っている。大抵の店ではお昼の営業が11時半から始まる。この時間帯は私のゴールデンタイムなのである。だから『ネガポジポジ』のファンクラブ先行では、11時半からの回は申し込まなかった。A、B、Cのパターンのうち土日のBはすべて11時半からだった。Bを観ないことになるが、仕方ないと割り切っていた。Aを二回、Cを一回の計三回で終わりにするつもりだった。それでいい、はずだった。

そうは問屋が卸さなくなった。オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)がBでキャストの主役を張ることが後になって分かったからだ。そもそもファンクラブ先行受付の段階(7月)では、たしか三つのパターンで出演者が違うということは明らかにされていなかったし、つばきファクトリーは全員出るはずだったし(新沼希空さん、谷本安美さん、岸本ゆめのさんが出演しないことが8月2日に発表された)、当然ながらパターンごとの割り振りは決まっていなかったし、オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)に至ってはつばきファクトリーに加入すらしていなかった(8月13日に加入)。インサイダー情報でも握っていない限り、7月の時点でBにオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)が主役として出ることを知るのは不可能だった、というよりおそらくインサイドでも決まっていなかった。チームAのアンサンブルで躍動するオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)を観て、キャストとして出演するチームBの公演も一度は観なければまずいという思いを強くした。11月5日(土)に原宿の娯楽道に赴き、泣く泣く(実際には泣いていない)大枚(10,800円)をはたいて11月12日(土)11時半からのチームB公演のチケットをゲットした。前日の夜にホームページを見たら8,000円くらいのチケットがあったのだが、売れたようで、店頭にはなかった。

五日前のJuice=Juice武道館公演があまりにも鮮烈で、その感触が頭と身体に残っていた。この週末は新たな刺激を取り込むのではなく、ぼーっとして11月7日の余韻を噛みしめたかった。あの日のことを消化してブログを書きたかった。でも本当にサボる訳にはいかない。今日は11時半からチームB、18時半からチームAの公演を観させてもらう。これで『ネガポジポジ』は見納め。11月16日(水)にはギロッポン(六本木)で上原ひろみちゃんさんトリオ・プロジェクトのコンサート、11月23日(水・祝)には℃-uteのコンサートが待ち構えている。これまでの人生で今年は現場の数がいちばん多い。

つばきファクトリーにおける私の一推しの座をめぐってオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)と小片リサさんが争っている。私のために争わないで。11月3日(木・祝)の『ネガポジポジ』初演、チームAを観させてもらってからオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)が頭一つ二つ三つ突き放していた。チームAには小片リサさんはいなかった。次に観させてもらったのが11月6日(日)のチームC。キャストとして主役を務める小片リサさんに引き込まれた。3日前にオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)に付けられた差は、取り返せないかと危惧されていたが、この日の大活躍で挽回のチャンスを残した。今日11時半からのチームBでは前述したようにオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)がキャスト、小片リサさんはアンサンブル。18時半からのチームAではオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)がアンサンブル、小片リサさん不在。つまり、11時半からの回がこの両雄が私の一推しを勝ち取るための直接対決となった。

対決の結果はどうだったかというと、引き分けだった。ハロプロソートでは引き分けをほとんど選ばない白黒はっきりさせる性格の私でも、甲乙付けがたかった。チームBのオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)は、キャストの中でも二人いる主役の片方に抜擢されていた。出演者たちの中で台詞とアドリブの見せ場が最も多く、目立つ役所(やくどころ)だった。すべてのチームの公演を観させてもらって分かったのだが、同じミュージカルを違うメンバーがまったく同じように演じている訳ではなく、細かい部分で違いがある。たとえば序盤の「ミチ・リサ・マイ・ルミ」を連呼する歌では、チームAの山岸理子さん、チームCの浅倉樹々さんに比べてオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)はキーが高かった。アドリブの場面ではチーム毎の違いがよく分かった。ユミ(A:山岸、B:小野、C:浅倉)がリサ(A:加賀、B:高瀬、C:小片)にアイスクリーム代として1万円を受け取らせようとする場面がある。「お金が苦手なんだ」と固持し逃げ回るリサをユミが追い回すのだが、オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)は「じゃあこれを機会に好きになろうよ」と言って我々を笑わせていた。他のチームではこの台詞はなかった。お風呂の椅子に座る場面では横の桶を「兄弟みたいだね」と言ってなでていた。オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)の歌声をちゃんと聴いたのは初めてだったのだが、ほんわかした見た目とは異なり低い声が出て意外とドスがあった。他にあまりいないタイプなので、つばきファクトリーの歌唱を牽引する一人になるのではないか。ユミ役はステージに一人で立って何分か歌う場面がある。オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)はつばきファクトリーに加入して間もないし、こんな機会はまだほとんどないだろうから、嬉しいだろうな、いい経験になるだろうなと思いながら観ていた。全般的に、オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)ならではの優しい雰囲気が演技によく生かされていた。一方の小片リサさんに関しては、今まで思っていたように雰囲気が好きだし、(決していやらしい意味ではなく芸術的な観点から)身体の線が魅力的で目を奪われた。アンサンブルの衣装は、脚を出したぴったりした衣装。太いボーダー柄のストッキング。その中でも小片リサさんは脚を多めに露出していて、(決していやらしい意味ではなく芸術的な観点から)目に焼き付けざるを得なかった。キャストのときとはまた違う魅力を感じた。あと今日わかったこととして、小片リサさんはけん玉がお上手だ。アンサンブルでけん玉をやる場面があるのだが、慣れた手つきで巧みに玉と棒を扱っていた。(後で彼女のブログに「けん玉お上手ですね」というコメントを送ったのに掲載されなかったようなのだが、検閲者が金玉と読み違えたのかな。)こうやってお二人がそれぞれの魅力を発していたので、私の注目はどちらかに偏ることはなかった。

11時半の回に関しては、MVPは高瀬くるみさん。私にとっての個人的なMVPです。オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)と小片リサさんを差し置いての受賞である。歌にソウルがあった。オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)の歌もよかったけど、高瀬さんの歌の方が強く印象に残った。終演後のアンケートにもMVPが高瀬くるみさんである旨を書いて投函した。後にハロプロ研修生のブログを見たら「今日は高瀬絶好調だったかなぁーって思います!」と書いていたので、本人にとっても会心の出来だったのだろう。私はアイドルオタクではなく音楽ファンなので、パフォーマンスの出来については推しがどうとかに関係なく公平に評価するのである。高瀬さんは前田こころさんと言い争う場面で「このくちびる!」というアドリブのディスをぶっ込み我々の笑いを取っていた。

会場から出ると13時半。駅の逆側に一目散。14時半までランチをやっている「美そ乃」。いま私の中でいちばん熱い店「美そ乃」。A5黒毛和牛ランチ1,480円+税、金メダル。特選牛タンランチ1,180円+税、金メダル。特選ハラミ・サガリランチ980円+税、金メダル。特選ホルモンランチ980円+税、金メダル。「美そ乃」のランチは全部、金メダル(参照:MC松島“She's a Hero”)。少し変な時間にも関わらずほぼ満員だった。左にいた青年二人が「向かいの焼き肉屋より4倍うまい」「ランチのコスパが最強」と言っているのが聞こえてきた。特選ホルモンランチと芋焼酎オンザロック。味噌ダレと塩でいただく。1,544円。店を出ると14時11分。

18時半のチームA公演。4回目なので、さすがに話の展開や台詞がだいたい頭に入った状態で観ることが出来た。他のチームと比べて演技がどう違うのか、台詞の言い方がどう違うのか、アドリブではどう遊んでくるのか、この演者はどういう表情を見せるのか、といった細かい部分に注目して鑑賞するだけの余裕があった。アンサンブル、キャスト、アンサンブルの順番でオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)を観察したが、アンサンブルとして躍動する彼女により引き付けられた。道具をアンサンブル4人くらいで動かすときに小声で「せーの!」と言って他の子たちとタイミングを揃えていた。はちきんガールズからハロプロ研修生に加入した川村文乃さんがすべてのチームでアンサンブルとして出演していた。彼女は宮本佳林さんに似ていると評判で、Juice=Juiceのメンバーたちもラジオか何かで言及していたのだが、実際に見た印象としてはそんなに似ていなかった。ただいつでも心底たのしそうにしていて、観ているこちらも顔がほころんでしまう感じ、ハツラツとしたアイドルサイボーグ的な雰囲気を醸し出している点は共通していた。あらゆる動きが大きくて、マシンのようだった。清野桃々姫さんは身体は小さいけど舞台上の振る舞いは年齢が下な感じが全然しなかった。堀江葵月さんには人を引き付ける笑顔があって、彼女を観ているとこちらも楽しい気持ちになった。

千秋楽は来週の11月20日(日)だが、私はこれで最後だ。観させてもらった4公演を通して、ハロー!プロジェクトの新たな魅力を発見することが出来た。たしかに少し難しくはじめは呆気に取られたが、何度も入るに値するミュージカルだった。一回観ただけではよく分からない方が、分かりやすいけど一回で飽きるよりはずっといい。これからも演劇女子部にはファンが付いてこられて興業として成り立つ範囲内で、どんどん難しいこと・高度なこと・新しいことに挑戦していってほしい。今までに観たことがないミュージカル、舞台を見せて我々を魅了してほしい。ハロー!プロジェクトのメンバーや研修生たちが活躍できる場所、才能を発揮できる場所を広げていってほしい。

11時半の回に入る前に、私はオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)の日替わり写真と、コレクション生写真を3枚買っていた。当たったのは山岸理子さんが2枚(別種類)と横山玲奈さんという何役だったか記憶にないハロプロ研修生が1枚。それほど知らない出演陣のコレクション生写真を買って開封して「誰だこれ?」「うわ3枚しか買っていないのに2枚が同じ人、しかも特に推していない人だ」となるのは大人の遊びという感じがした。結果を受け入れるつもりだったが、18時半の回を出ると会場前でアルバムを広げている紳士がいたので、交換してもらった。
「何かお探しですか?」
「小野瑞歩さんが欲しくて、持っているのはこれです」
「じゃありこりこセットで」
「ありがとうございます」
山岸理子2枚と引き替えにオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)2枚を手に入れた。それにしても『ネガポジポジ』の写真類は日替わりがあんまり日替わっていないし、日替わりとコレクション生写真の違いが小さすぎる。まあこんなもんっちゃこんなもんか。

私のつばきファクトリーでの一推しをめぐるオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)と小片リサさんの戦いはまだ完全に決着がついていないのだが、12月のハロプロ研修生発表会は「小野(瑞)」と印字されたTシャツを着て臨むことになる。もう注文した。

2016年11月13日日曜日

LIVE MISSION FINAL (2016-11-07)

鼻毛を切りました。電動の鼻毛カッターというのが世の中にはあってですね、うちの洗面台に一つ置いてあるんです。パナソニックのER-GN50-W11。身だしなみの一環です。いくら清潔にしてファッショナブルな服を着ても、おけけが鼻からこんにちはしていたら台無しですからね。そりゃ手入れせなあかんですよ。廃墟の庭ちゃうねんから。手入れって言っても髪の毛にやるようにコンディショナーを付けるとかそういうんじゃなくて、出入り口付近の余分な毛を刈り取るんです。芝刈りと同じ要領です。しばらくやらないと露出しますからね。しばしばというよりは不定期にカットしています。そこまで伸びるもんじゃありませんので。実際、目に付くほど伸びていた訳じゃないんですけど、鼻毛も切っておこうという考えが勝手に頭に浮かんで、勝手に身体が動いたんです。朝にお風呂に入って、顔を洗って、身体を洗って、ヒゲを剃って、髪の毛を整えました。そこまでは普通でしたけど、最後に鼻毛も切らなきゃと思ったときに、今日は特別な日なんだなという実感がふつふつと沸いてきました。4日前には、髪を切りました。前髪がうるさくなって横も膨らんできていました。普段であればあと1週間くらい放置していたかもしれません。

宮崎由加さん、宮本佳林さん、金澤朋子さん、高木紗友希さん、植村あかりさん(順不同、ではなく私の推し順)の5人が老後に生涯を振り返るときに、2016年11月7日(月)という日がハイライトの一つになるのは間違いありませんでした。それはもう、自明(self-evident)でした。というか、なる、じゃないんだよ。そうなるのを受け身で待つのではなく、そうさせるのです。彼女たちが一生忘れられない思い出を作り出す一員になるのです。彼女たちが一生忘れられない景色の一部になるのです。彼女たちが一生忘れられない歓声の一部を出すのです。Juice=Juiceが目標であった日本武道館での公演を達成する姿を観客として見届ける、という生ぬるい気構えではありませんでした。我々も参加者なのです。今日という一日が宮崎さん、宮本さん、金澤さん、高木さん、植村さん(順不同、ではなく私の推し順)にとって人生最良の思い出の一つになるのか、苦い思い出になるのか。それは我々にもかかっているのです。その強い決心を胸に、家を出ました。それは私の個人的な思いというよりは、我々の集合意志だったはずです。

私は10月の中旬から下旬にかけて仕事でヨーロッパに行っていましたが、この日程には私の狙いがありました。11月7日の直前に海外出張を入れておくことで、11月7日に新たな海外出張が入るのを防ぎたかったのです。私の上司は人道的なので、私の体調に配慮してくれます。海外出張から戻ってきた直後にまた次の海外出張に行けと命じてくる可能性は非常に低いです。(海外出張をバカンスみたいに思ってる奴がたまにいるねんけど、長旅は疲れるし何より時差ボケがめっちゃきついねんで。)それを見越して、自分で日程を決めて出張を仕掛けたのです。もちろんその日程が同行者と先方にとって都合がよかったというのが前提ですよ。私は普段からハロー!プロジェクトの公演を観られるように仕事のスケジュールを調整しているのですが、11月7日に関しては特に入念にやる必要がありました。失敗は許されませんでした。絶対に、絶対に、絶対に失敗はあり得ませんでした。ダメ。ゼッタイ。世の中に絶対はないとしても11月7日の18時までに日本武道館のアリーナ席にいるのは絶対でした。その場にいたいのではなく、絶対にいるのです。それはもう、5月4日のコンサート中に武道館での公演が決定したという知らせを受けた瞬間から決めていましたし、譲れませんでした。

日本武道館での公演を成し遂げるのは、Juice=Juiceにとって大きな夢でした。記念日としての結成日やメジャーデビューの日は、グループが存続する限り、年に一度はやってきます。大きな夢が叶う日というのは、そもそも一度でさえ訪れる保証がありません。だから大切で、貴重だったのです。武道館での公演実現を目指して全国各地を回って1年強で220回の単独コンサートを行うという狂ったコンセプトのMISSION 220というツアー。2015年6月21日の横浜を皮切りに、2016年10月29日に沖縄にて目標を上回る225公演をやり遂げるという形で、彼女たちは走り終えました。2015年5月にMISSION 220の実行を宣言してからは、Juice=Juiceの活動すべてが日本武道館という目標に向かっていました。その目標に向かって、ファンも含めて一丸となっていました。225公演のうち、私が観させてもらったのは21公演でした。全部の1割にも満たないという、本当にささやかな参加数でした。


中には225公演のうち100回以上とか、200回以上も入った方々がいるそうで(Juice=Juiceのメンバーたちがブログ等で言及していました)、そのような正真正銘の猛者たちを前にすれば、私の参加の仕方なんて本当に可愛いものでした。それでも自分はMISSION 220に参加してきたんだからツアーの集大成としての日本武道館公演には必ず入りたいと思うには十分な回数でした。特に、遠征が印象深いですね。このツアーを観させてもらうために山口県、愛知県、滋賀県に行きました。Juice=Juiceの現場に行かせてもらうまでは遠征というもの自体、やってきませんでした。普通に考えて、東京近郊に住んでおきながら、わざわざ地方の現場に行くのはおかしいんですよ。現場は東京近郊で十分にあるはずなんです。それにチケット代以上に交通費と宿泊費がかかります。遠征にかかる費用を突っ込めば、転売市場で相当にいいチケットが手に入りますからね。でもMISSION 220で3回の遠征をしたことで、近場での公演を観に行くのとは違った楽しさがあることを知ってしまいました(2014年11月にもJuice=Juiceをコンサートのために新潟に行っていて、それが私にとって初めての遠征でした。MISSION 220の前でした)。MISSION 220がなければ、山口県、愛知県、滋賀県といった辺境の地には一生、足を運ばなかった可能性があります。そういった土地に足を踏み入れ、現地の空気を感じることが出来たのは喜びでした。

ハロー!プロジェクトのコンサート・グッズには、その当日に会場でしか買えない日替わり写真というものがあります。メンバー毎に一種類ずつ。MISSION 220に入る度に、必ず一枚は買ってきました。日替わり写真を買うという習慣も、MISSION 220で身に付きました。(それ以前にも買ったことはありましたが、コンサート参戦の恒例行事のようになったのはMISSION 220以降です。)A5サイズとはいえ1枚の写真が500円するのが理解できなかったですし、それを買うために列に並ぶのもだるすぎました。その正常な感覚はMISSION 220によって失ってしまいました。今日という特別な日の写真は是非とも手に入れたかったです。丸一日の休みを取っていたので、早朝からグッズ列に並ぶことも可能でした(販売開始は12時半でしたが、実際にはもっと早くから列は出来ます)。でも私はそうしませんでした。二つの理由がありました。第一に、万全の体調でコンサートに臨みたかった。ちゃんと寝て、ゆっくりお湯に浸かって、ちゃんとお昼ご飯を食べて、体力と気力を残した状態で夜を迎えたかった。第二に、前日に観させてもらった『ネガポジポジ』の感想をブログに吐き出しておきたかった。語っていない現場をなくして、頭がすっきりした状態でJuice=Juiceの武道館公演を迎えたかった。池袋で昼飯(「四季海岸」で回鍋肉定食)をいただいてから九段下に行って、13時過ぎにグッズ列を見に行ったのですが、想像以上の長さでした。3-4時間かかりそうに見えました。コレクション生写真は売場が別になっていて、ほとんど並ばずに買えました。ひとまずそれでよしとして、日替わり写真は諦めて、PRONTOに避難しました。コーヒー290円と小さなキットカット50円を買って、ブログを書き上げました

結局、日替わり写真は15時前には全員分売り切れていたようです。グッズの販売開始が12時半だったのですが、おそらくその2時間前には列に入っていないと買えなかったんじゃないですかね。スパッと諦めたのは結果的によかったです。11月3日の『ネガポジポジ』のブログが書けたのも大きかった。それが出来ていなければ、今(11月12日の16時42分)11月7日のブログは書けていなかったと思います。とはいっても正直すこし悔しかったのですが、ここで前日の夜(11月6日21時44分)に投稿された宮崎由加さんのブログを思い出しました。
映画館にいるかたも
BSスカパー!からご覧の方も
武道館にいると同じです。
映画館にいるのが武道館にいるのと同じ。ということは、映画館会場の日替わり写真は事実上、武道館の日替わり写真と同じ。数学的に考えてそうなることに気が付いた私は、名古屋の映画館からライブ・ビューイングでコンサートに参加するTwitterのダチに頼んで、映画館会場の日替わり写真を買っておいてもらいました。宮崎さん、宮本さん、金澤さんの分を買ってもらいました(後で気付きましたが映画館の日替わり写真はネット通販でも買えるようになっていました)。そのダチ曰く、映画館では写真を買っている人がほとんどいなくて、売り切れてもいないとのこと。九段下との温度差には笑ってしまうほどでした。それはさておき、完璧に準備が整った状態で開場時間の17時になりました。朝から入浴。髪を切ったばかり。鼻毛まで行き届いた身だしなみ。体調は最高。グッズ列に並んでいないから消耗していない。昼ご飯もしっかり食べて…あ、そういえば回鍋肉定食に加えて滋養強壮に効くというアルコール42度の参茸酒を一杯、煮卵を三つもいただきました。その上、ブログまで書いたので余計な宿題を抱えずに、ただ目の前のコンサートを楽しめばよい状態に持ってくることが出来ました。

入場列に並んでいると、MISSION 220でよく見た紳士がいて、つい顔がほころんでしまいました。その方と話したことはない(私は現場には基本的に一人で行って誰とも交流はしない)のですが、戦争を生き残った仲間のような気持ちになりました。あんたも生きてここまでたどり着いたのか、的な。入場口の手前には華々しい晴れ舞台に相応しく色んな人たちから贈られた花々が飾られていました。チケットのもぎりと荷物検査を抜けて建屋の中に入ると、周りの人たちが口々に凄い、凄いと言っていました。何かと思ったら、果物を使った精巧なアート作品のようなものが飾られていました。金澤朋子さんと毎週ラジオ番組で共演している元祖爆笑王さんからの贈り物でした。みんなが花を送るところをこうやって違うことをやるのは人を喜ばせるのが上手であると同時にさすが放送作家を自称しながら前に出てくるだけあって目立ちたがり屋だなと思いました。私の席はアリーナB3の99番でした。アリーナという最前線で戦えるのは嬉しかったものの、番号的にそんなに高い期待は持っていませんでした。ステージを正面に、A1、A2…とブロックが続いていくので、B3となるとだいぶステージからは遠いんだろうな、と。実際にはアリーナの中央に設けられたサブステージに近くて、メンバーたちがサブステージに来たときは近距離でその姿を拝める席でした。

開演直前のJuice=Juiceの皆さんの様子が、コンサートが始まる少し前からLINE LIVEというサービスで生中継されていました。ハロー!プロジェクトのライン・アカウントから16:35に来たメッセージによると17:30頃から配信が始まるとのことでしたが、17:25には17:45頃〜に変更になったというメッセージが来ました。中継をやることを急に発表して、直前に延期して、Juice=Juiceの皆さんも裏方の皆さんもバタバタしているのが伝わってきました。はじめは中継を観るつもりでiPhoneを片手に会場内をそわそわしていましたが、17:45〜となるとつばきファクトリーの前座と重なるだろうし、電池の残量も少なくなっていたので、観るのはやめました。一旦、席を離れて壁際で会場全体を眺めながら身体を伸ばしました。17時45分頃に席に戻りました。つばきファクトリーの前座は小野瑞歩さんと小片リサさんを中心に観ました。開演は少し遅れていました。会場内の時計で18時5分くらいまでは確認していますが、それからさらに数分はたっていました。つばきファクトリーの出番が終わると、会場のモニターにJuice=Juiceの皆さんが映し出されました。どうやら前述のLINE LIVEの中継のようです。間違えたらどうしよう間違えたらどうしようとパニックになる金澤さんを、大丈夫だよとなだめる植村さんと宮崎さん。開演前の音楽に合わせてオイ!オイ!と叫ぶ我々に合わせてリラックスした笑みを浮かべてリズムに乗り身体を揺らして拳を突き上げる宮本さん。メンバーの皆さんの緊張、ワクワクを共有することが出来て、とても臨場感がありました。DVDマガジンや『ハロステ!』のようにこちらが一方的に観るのではなく、向こうが問いかけてこちらがワーってなる掛け合いがあったのでなおさらでした。

Juice=Juiceの初めての武道館公演で、最初に歌声を響かせたのは、高木紗友希さんでした。一曲目を『選ばれし私達』にしたのは、グループの中でも特に歌唱が安定している彼女のパートからコンサートを始めることでグループ全体を落ち着かせたいという意図もあったのではないでしょうか。早々の第一声から音程を外したらその後のメンバーも引きずっちゃう恐れがありますからね(そうは言っても、今のJuice=Juiceに目立って歌唱力に不安のあるメンバーはいないのですが)。先述のLINE LIVEによる中継、我々のオイ!オイ!を誘う開演前の音楽、登場前に各メンバーのシルエットをなぞる電光。場内の興奮と高揚と期待と緊張が頂点に達しました。彼女たちが姿を現した時点で、私は少し涙ぐんでいました。そこで高木さんの歌声が鳴り響いたことで、いつものJuice=Juiceのコンサートが始まったという安心を得ました。それにしても、日本武道館の舞台に立って一曲目が『選ばれし私達』って格好よすぎます。選ばれし私達というフレーズと、彼女たちの状況が、完全にリンクしていました。これまでに彼女たちが辿ってきた道のりを知っている人であれば、まず泣きますよ。

特別なコンサートなのは開演前から明らかでしたが、コンサートが進んでいくにつれ、特別でありながらいつものJuice=Juiceのコンサートでもあることが分かりました。収容人数が300人のライブハウス(和製英語)や2,000人のコンサート・ホールで発揮されていたいつものJuice=Juiceの魅力が、1万人を収容する日本武道館でも、まったく損なわれることなく表現されていました。それを目の当たりにする度に、幾度となく私の目は水分で満たされました。Juice=Juiceは、会場の大きさと、夢の舞台であるという重圧に飲まれることなく、いつもの歌を届けてくれました。もちろんメンバーたちが感極まる場面はありましたが、歌がぶれることはありませんでした。会場が大きすぎるとは一度たりとも感じませんでした。これは紛れもなく、MISSION 220という過酷な試練における彼女たちの行動的禁欲の成果でした。過剰なほどに詰め込まれた現場経験で培ってきた、場慣れした離れ業でした。何かのお祝い、記念日、ご褒美という生やさしいものではありませんでした。日本武道館という箱に相応しいパフォーマンスでした。

MISSION 220とは切り離された何かではなく、あくまでMISSION 220の延長線上にあるコンサートでした。Juice=Juiceはハロプロ内の歴史ある他グループ(例えばモーニング娘。や℃-ute)に比べて持ち歌が少ないのですが、(カバー曲を取り入れて変化を持たせたとはいえ)その状態で225公演をやり遂げたことで、一つ一つの曲に対する習熟度がこれ以上に上がりようがない領域に達しています。これはメンバーたちはもちろんのこと、我々ファンもそうです。どこでどのメンバーが歌ってどういう動きをするのか、我々がどこでどういう声を出すのか。すべてが暗黙の了解です。しばらく聴いていない曲が出てきたときもバッチリでした。ドラマ『武道館』の主題歌となった“Next is You!”ではつんくさんの発案によってある時期からフックの合間に我々が“NEXT IS YOU!”と叫ぶようになりました。我々はそれをちゃんと覚えていました。どんな曲でも、進研ゼミで昨晩やったばかりの問題を解くノリで楽々とこなしていきました。Juice=Juiceと裏方と我々がこれまでに築き上げてきた確固たる信頼関係。オートマティズム。お祭りではなく、これまでに地道に続けてきたコンサートをそのまま拡大・強化して届けるという、現場叩き上げのJuice=Juiceらしい武道館公演でした。特に、高木紗友希さんの、吸い込まれそうなフェイク。宮本佳林さんの精緻に作り上げられたアイドル歌唱。それらは可愛いとか格好いいとかの域を超えて、冷酷でした。夢の舞台にただ立っているだけではない、夢の舞台に相応しいパフォーマンスを見せる彼女たちの姿に、何度も涙が溢れそうになりました。その彼女たちに、我々も十分に応えたと思います。聴き慣れた曲はもちろんのこと、ほとんどの人がまともに聴いたことがないはずの新曲『Goal〜明日はあっちだよ〜』でさえ旧知の曲のように声を出していました。『生まれたてのBaby Love』の間奏での(今までやったことのない)ウェーブもきれいに決まりました(私がスタンド席のウェーブを見る際、後ろを向いたところに関係者席がありました。最前列にいた矢島舞美さんがわーと口を開けて笑いながら手を挙げているのを目撃しました)。極めつけは、二度目のアンコールを受けて披露された“Wonderful World”です。最後に我々が歌う場面があるのですが、我々による歌唱の異常なまでの揃い方と声量。そして宮本さんの咄嗟の判断で我々の歌唱が延長された際の一連のアドリブと阿吽の呼吸は、今後ハロプロ・ファンの間で語り継がれるべき名場面です。

6日もたって未だに泣けるコンサートは、初めてです。これまでに観てきた中で、私にいちばん強い余韻を残したコンサートです。MISSION 220を観てきて本当によかった。Juice=Juiceを応援してきて本当によかった。

2016年11月7日月曜日

ネガポジポジ (2016-11-06)

開演前に繰り返し流れる、ネガネガを連呼するギャングスタ・ラップのような主題歌に気を取られて本が読めませんでした。隣の会場でハロプロとは関係ない別の舞台が開催されていました。そちらの入場列とおぼしき人たちの中に、小学生の体操着のような、ホットパンツと言って差し支えのない履き物をお召しになった白髪交じりの50がらみの紳士がいました。上はアウトドア・ブランド(たしかTHE NORTH FACE)のシェルでした。ちょっとやばいな、『ネガポジポジ』の列じゃなくてよかったと思いました。しかし安心も束の間、それは『ネガポジポジ』の列でした。前回(3日)に来たときと違う場合に列があったんです。そこに並んで、14時半の開場直後に池袋BIG TREE THEATERに入りました。客席に入るのは私が二人目でした。15時の開演まで時間に余裕があったので本を読もうとしたのですが、けっこう大きな音でネガネガ言うもんだからヒヤヒヤして、内容に集中できなかったんです。私はヒップホップを聴いているだけではなくアメリカの人種差別の歴史も多少かじっているので、どうしても気になってしまいます。以前、職場に中国語の堪能な同僚がいて(数年前にクビになって退職済みです)電話で「ネッガー…」とよく言っていたのですが中国語で「えっとー」みたいな意味らしいですね。飲食店でその「ネッガー」を言っていた中国人が、その言葉を自分に向けられた挑発と勘違いした黒人に殴りかかられる事件があったというのをインターネットで読んだことがあります。Juice=Juiceの新曲『明日やろうはバカやろう』に「これだけたくさんの人がいるぜニッポン きれいだけじゃなくてブラックでもあるけど」という歌詞があります。ブラック企業のブラックを指していると思うんですけど、歌詞の中にちょっと時代性と毒のある言葉を放り込むのが福田花音さんならではだなと感心しました。ブラック企業という言葉は、日本社会での使用に限定すれば人種差別を想起させるものではありませんから、見直す必要はないとは思います。ただ、ブラックという単語を悪いもの全般に使うような発想は考えものなんですよね(福田さんがそうだと言っている訳ではないです)。何かの映画で黒人が白人に対して「あなたたちはblackという言葉をいつも悪い意味で使う。Black history, black market…」と訴えかける場面があったのを覚えています。たしか『マルコムX』だったかな。“The Autobiography of Malcolm X”にもマルコムが辞書でblackを引いたところ否定的なことばかりが書いてあってショックを受けるくだりがあったような気がします。Nワードそのものはもちろんのこと、それを連想させる単語、ブラックという言葉も取り扱いには気を付けないといけません。

今日の公演はチームC。『ネガポジポジ』にはチームA、B、Cという3通りの出演者がいるのですが、チームCには唯一オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)がいないんです。
キャスト:浅倉樹々、小片リサ、一岡玲奈、小野琴己、西田汐里
アンサンブル:川村文乃、横山玲奈、山岸理子、加賀楓、堀江葵月、清野桃々姫、吉田真理恵
正直、三日前に初めてこのミュージカルを観させてもらったときは、劇そのものに対しては少し戸惑う中、オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)を目で追うことで乗り切った感がありました。だからオノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)不在のチームCの公演にどう臨めばよいのかが、少し不安でした。その一方で、楽しみでもありました。まず、同じ内容のミュージカルを違う出演者たちが演じるのを観るのが初めてだったので、どういうものかとワクワクしました。あと個人でいうと、このチームには、小片リサさんがいるのです。オノミズミズ(小野瑞歩さんのことです)が加入されるまでは、もしつばきファクトリーで私が誰かを推すのであれば小片リサさんだろうなと思っていました。ハロコン現場やつばきファクトリーのDVDマガジンでの印象が元です。ステージでのパフォーマンスからは何と言いますか、芯を感じます。あとこれは完全に私の偏見なんですけど、小片リサさんって女の意地悪さというか、性格の悪さがちょっとにじみ出ている感じがするんです。いや、いい意味で、ですよ。いい意味で。例えば、つばきファクトリーに新メンバー3人が加入することが告げられたときに悔しそうな顔で涙を流している場面とか、つばきファクトリーのDVDマガジンVOL. 2でチームに分かれて激辛カレーライスの早食い対決をしたとき、「(ルーを避けて)ご飯ばっかり食べてるの、本当に誰?」と仲間に怒ってちょっとチーム内の空気を険悪にした場面とか、そういうところから感じました。

意地悪さ、性格の悪さというのが正しい表現なのか、分かりません。でもつばきファクトリーの他メンバーに比べて、しっかり自分を持っている気がするんです。今日、『ネガポジポジ』の主演として舞台で躍動する小片リサさんをじっくり追わせてもらって、彼女が持つ内面、人間性が、演技に生きていると思いました。もちろん、私が小片さんのことを贔屓目に見ているというのはあったと思いますが、それを差し引いても、彼女の演技には観客の注目を引き込む力がありました。そして特筆すべきは、彼女には観客と無言の対話をする力がありました。どういうことかというと、台詞をほんのちょっとだけ変えてみるとか、台本上では2回言うところを3回言ってみるとか(回数はたとえばの話です)、ふとしたタイミングで台本にはない台詞を相手に投げてみるとか、そういう類の工夫を、その場の判断でこなしているように見えました。私はこのチームの公演は1回しか観ていませんし、元の台本を読んだ訳ではないので具体例は挙げられません。あくまでそういう感じに見えた、というぼんやりした話です。的外れの可能性もあります。ただ、どうもそういう感じに見えたのです。そういう一つ一つの判断が的確で間がよく、何度も笑いを取っていました。笑いが起きるということは、その瞬間の観客のツボを突いているということです。ミュージカルでめっちゃポテンシャルを発揮してはると思いました。で、小野瑞歩さんのことをオノミズミズと言ったから今度はオガリサリサと来るのかと思うかもしれませんが、そういう訳にはいきません。語呂がよくない。MC松島さんのラップを毎日のように聴くことで研ぎ澄まされた私の言語感覚では、オガリサリサは、なしです。

2回目の『ネガポジポジ』は、初回に比べて段違いに物語が理解できました。この情報量は一度では到底つかみきれない。ちゃんと楽しむには事前予習が必要だと痛感しました。かといって予習の資料は存在しないので、何度か会場に足を運んで鑑賞する他ありません。1回観ただけでは少し私の中に困惑が残っていましたが、2回観た後では、観れば観るほど面白いミュージカルだなと思いました。みんな違ってみんないいとはいえ、同じ役同士の演者はどうしても比較しながら観てしまいます。一つの公演にはキャストとアンサンブルという二本立てがあって、公演全体にはA、B、Cというチームの三本立てがある。そうやって何重にも楽しめる仕掛けがある。一回観ただけでは観たことにならないと思いますし、何度も観る価値があると思います。あと2回観るのが本当に楽しみになってきました。とんでもなく凄いミュージカルなのかもしれません、『ネガポジポジ』。

2016年11月5日土曜日

ネガポジポジ (2016-11-03)

題名にするくらいだから『ネガポジポジ』という言葉には深い意味があるのかと身構えていましたが、そんなことはなさそうでした。見ての通りネガティブとポジティブを掛け合わせた造語です。劇の中で言動がネガティブな役とポジティブな役がいるという、その程度でしょうね。実際には作り手の側にはもうちょっと意図があったのかもしれませんが、この劇を楽しむ上ではそんなに重要じゃないと思いますね。というか、観れば分かりますが、劇の主題や台詞や歌詞の意味をじっくり考える余裕はいっさい与えてくれません。何かに浸る暇はないです。浸ると必ず何かを見逃します。見逃すまいとひたすら注視してもすべてを把握することは出来ません。あまりにも多くのことが同時に起きるのです。あれだけの情報を処理するには速読トレーニングは必須です。私は「クリエイト速読スクール」というところに通っていたことがあります。だから速読に関しては完全なトーシローという訳じゃないんですけど、そんな私でも無理だと思いました。でもやらないよりはマシじゃないですかね。『ネガポジポジ』を観ようとする人は「クリエイト速読スクール」で訓練を積んで情報処理の能力を高めた方がいいです。『ネガポジポジ』会場のシアターグリーン BIG TREE THEATERから歩いて15分くらいのところにあるんですよ。ああ、でも千秋楽が11月20日(日)ですから、今から通い始めても間に合わないですね…。いずれにしても、ステージで起きているすべてを把握しようと臨んでも呆気に取られてよく分からないまま終わる可能性が高いです。2週間くらい前に私はロンドンに行ったんですけど、大英博物館がそんな感じでした。あまりにも広いし、展示物が多すぎる。今回はこれを見るというのを決めないと、何となくさまよっているうちに時間が過ぎてしまいます。しかもその日は急にお腹の調子が悪くなりましてね、トイレの空きを探すのに30分以上うろうろして、本当に苦しくて汗をかきました。それは関係ないですね。

大英博物館ではけっきょく何を見るかが絞れず、何となく歩き回って2時間を消費しました。大英よりも大便の問題が大変でした。『ネガポジポジ』は始まって数秒で何を見るかが明確に決まりました。開演の直前に前の列に座った紳士がタオルをはちまきのように頭に巻いて、その上からバンダナを巻いて、水を飲んでいました。何か動きに落ち着きがなくいちいちコミカルで、私の気が散りました。でも開演して間もなく、ステージにいた一人の人物に意識のすべてを持って行かれました。私の席はE列の真ん中のブロックの右端だったんですけど、ちょうど正面の位置に彼女はいました。その瞬間からこのミュージカルは『ネガポジポジ』ではなく、事実上の『オノミズミズ』になりました。そう、オノミズミズ。おのみずみず。え? いや分かるでしょう、自ずと。小野瑞歩さんね。オノミズホさん。覚えてくださいね。今後のハロー!プロジェクトを担う重要人物です。何かの映像でつばきファクトリーの同僚からおみずという愛称で呼ばれていましたけど、おみずでいいんですかね? おみずっていうとね、ほら水商売という単語が連想されるじゃないですか。いま水商売の定義をネットで検索したら彼女たちの仕事も当てはまっているっぽいので間違ってはいなさそうでしたけど。

公式ホームページには出演者情報がこう書いてありました(今日はチームA):
キャスト:山岸理子、加賀楓、堀江葵月、金津美月、清野桃々姫
アンサンブル:小野瑞歩、高瀬くるみ、前田こころ、川村文乃、横山玲奈、吉田真理恵、西田汐里
アンサンブルというのが何なのか予想できませんでしたが、端的に言うと、前に出てくる黒子でした。黒子といっても顔を出して、誰なのかを識別できる形で出演します。さっき情報量が多いと言いましたけど、それを生み出すのがアンサンブルの皆さんなのです。たまに声は出しますし、全体の歌にも参加するのですが、台詞と言えるような台詞はないです。しかし決して脇役ではないんです。とにかく常に何かしら目を引く動きや表情を見せています。キャストの皆さんが台詞を回している最中、道具を動かすという本当の黒子としての役割を果たしつつ、変な踊りをしたり、キャストが通る道に物を置いてこけさせたりします。この公演で初めての笑いが起きたのがキャストの誰かが「何だこいつらは」的にアンサンブルに言及したときでした。

アンサンブルの皆さんは、話の展開上、必要な役ではありませんでした。そうでありながら、このミュージカルにはなくてはならない存在でした。もしアンサンブルの皆さんがいなければ『ネガポジポジ』は本当に退屈な舞台になっていたと思います。劇の主題とか物語の内容にはほとんど見るべきところはありませんでした。その辺は気にしなくていいんだと思います。ステージ上でキャストとアンサンブルが繰り広げるドタバタと混沌。それを楽しむのが醍醐味であって、内容そのものはおまけ程度なんだと私は受け止めました。つい最近観させてもらったばかりのアンジュルム主演『モード』や他のハロプロの舞台やミュージカルとはまったく異なりました。公演が始まってからしばらくの間は、何だこれは、ステージで何が行われているんだという感じで、独特の世界に適応するのに時間がかかりました。特に今回は初演だったので、このミュージカルがどういうものかという情報も出回っておらず、我々も全員が初体験だったので、観ている側にも少し不安が入り交じっていたと感じました。前述した笑いが起きたことで徐々に空気がほぐれていきました。

話を戻すと、とにかくオノミズミズでした。小野さんは笑顔を作るとき、目を見開いて口を大きく開いてから思いっきりニコッとするんですけど、そのスマイルを浮かべたときの雰囲気、ヒップホップ的に言うとヴァイブス、に引き付けられます。私にとってアイドルの魅力を語る上で、どう笑うかというのは凄く大事なポイントです。表情もそうだし、ステージ上のちょっとした所作にしても、私の注意を釘付けにして離さない何かが小野瑞歩さんにはあります。今、私の脳内におけるハロー!プロジェクト現役メンバーの順位は一位が宮崎由加さん、二位が宮本佳林さん、三位が牧野真莉愛さんなんですけど、小野瑞歩さんがこの三人を脅かす可能性は十分にあります。配布されたアンケートは普段は提出しないんですけど、今日は出しました。たぶんアンケートって中の人や出演者の方々が目にすると思うので、そこで小野瑞歩さんを褒めておきたかったんです。願わくば私が書いた言葉が小野さんに届いて少しでも嬉しく思ってくれれば。少しでも自信の元にしてくれれば。

今日、観させてもらったのはAパターンでした。あとチケットを持っているのが11月6日(日)のCパターン(小野瑞歩さんの出演なし!!)と11月12日(土)のAパターンです。チーム編成を見ると、Bパターンで何と小野瑞歩さんがキャストの主役を張っているんです。一度は観に行かないといけない。これを書き終えたら昼飯を食って、原宿の娯楽道に行くつもりです。昨晩ホームページを見たところたしか来週末のBパターンのチケットがE列で8,000円くらいで売っていましたので、その辺のを一枚、ゲトるつもりです。このミュージカルはファンクラブ先行受付の段階ではチーム編成が決まっていませんでしたし、つばきファクトリー全員が出る予定でしたし、ハロプロ研修生の出演予定はたしかなかったはずですし、小野瑞歩さんに至ってはつばきファクトリーに加入すらしていませんでした。