2016年10月26日水曜日

Special Code (2016-10-10)

これを書いている時点で、この一週間半で飛行機に14時間。電車に6時間。車に2時間。長旅の疲れに、時差。月曜に日本を離れてから、ほぼ毎日、寝落ち。今は日曜日の21時。朝から夕方までロンドンを歩き回った。眠い。さっき部屋の電気を消した。でも途中まででいいから書いておきたい。電気を付け直して、ベッドの上。iPhoneで秘密結社MMRのアルバムを流して、ポメラを開く。結局、疲れでほとんど進まなかった。月曜の夜、ロンドンのホテルでMC松島の“Major Cleanup 2013”を聴きながら続きを書くけど続かない。疲れていると長時間、文を書けない。今は帰りの飛行機でポメラを叩いている。火曜日。日本に着いたら水曜日になる。

英国の前にはオランダにいた。その前にはドイツにいた。その前には成田にいた。普段は埼玉に住んでいる。10月10日には、埼玉の川口にいた。その二日前には滋賀にいた。何で滋賀にいたのか? Juice=Juiceのコンサートを2回観るためだ。何で川口にいたのか? 滋賀で観たコンサートをもう2回観るためだ。最近はまっている池袋の立喰い焼き肉「美そ乃」で特選ハラミ・サガリランチ、焼酎をオン・ザ・ロックでいただく。私は何をやっているのか? なぜ同じコンサートを3日の間に4回観るのか? 正直、少しだるいなと思いながら川口に向かった。ここに来るのはたぶん二度目だ。前は℃-uteだった。

「前の方にヤンキーがいるでしょ。ああいう奴が…」
「あれヤンキーかな? ヤンキーというか…」
「イキがっているだけか」
「うん」
忘れる訳ねえ。あのJ=J Day。いま思い出してみてもヤバめ。上から下まで決めてるアディダス、かどうかは知らないけどそいつが着ていたのは赤いジャージ。金澤朋子さんの色付いた服を着たオラついた金髪のガキがうろついているのを見て、私はイラついた。上の会話は部分的にしか聞いていないが、ああいう奴は見かけからして迷惑オタクなんだと、男が連れの女に教えていたのが明らかだった。私もそのイキった金髪を見て嫌な予感がしていた。思うことは同じなんだな。可笑しくなって、気が紛れた。予想通り、そいつは最前列で飛びまくっていた。でもそんなに気にならなかった。

15時に始まった公演を、私は6列から鑑賞する幸運に恵まれた。1列目をカメラが通るために潰してあったので、実質的には5列目だった。席の近さとそのコンサートを自分がどれだけ楽しめるかは別問題だ。でも、近いからこそ味わえる喜びがあるのも確かだ。この公演に関しては近さの恩恵を存分に感じた。メガネのレンズを通して私の眼球に映った光景は永久に保存したかった。過去に観たコンサートをそっくりそのまま追体験できるVR装置が本当に欲しくてたまらない。人生に希望がなくなったら過去に経験してきた最高のコンサートの数々をVR装置で再び体験し、意識が薄らいでいき、眠りにつくように死んでいるというのが望ましい。

宮本佳林さんが数メートル先で繰り広げるダンスに見とれていると(目の前であんなものを見せられてしまうと、見とれる以外の選択肢は人類にない)、動きの合間にとびっきりのお茶目な笑顔でこちらを見てくださった。

『黄色い空でBOOM BOOM BOOM』の終わりにJuice=Juiceの皆さんが静止する数秒の間、宮崎由加さんがこちらを見てくださった。私の前が長身の紳士だった。ちょうど正面に来た宮崎さんを見るために人混みをかき分けるようにその紳士の横から顔を出したところ、こちらが戸惑うくらいに由加ちゃんがじーっと見てくださった。あのとき彼女は絶対に私のことを見ていたし、私の周囲にいた20人くらいもまったく同じことを思っていたはずだ。

“F-ZERO”というスーパーファミコンのレーシング・ゲーム(1990年)で、路肩に寄せると上から光が降り注いでダメージから回復できるゾーンがある。分からなければYouTubeかニコニコ動画でプレイ動画を観てほしい。この公演で分かったことの一つは、アイドルが客席に注ぐ視線とはF-ZEROの回復ゾーンと同じであるということだ。分かるか? 普通、我々の視線の有効範囲なんてのは限られているんだ。まあ普通は一対一。講演者や変質者には複数の人で一人を見ることもあるよね。それが普通の視線だ。アイドルはその逆なんだ。つまり一人の視線で同時に何十人もの人々に「私のことを見てくれた」と思わせることが出来るんだ。“F-ZERO”の回復ゾーンのようにある一帯に視線という光を降らせることが出来るんだ。

神は「光あれ」と言われた。すると、光があった。10月8日、びわ湖ホールで宮本佳林さんは「世界でいちばん熱い場所にしましょう!」と言われた。すると、びわ湖ホールが世界でいちばん熱い場所になった。10月10日、川口総合文化センターで宮本佳林さんは「世界でいちばん熱い場所にしましょう!」と言われた。すると川口総合文化センターが世界でいちばん熱い場所になった。びわ湖の昼公演よりも、夜公演の方が熱かった。びわ湖の夜公演よりも、川口の昼公演の方が熱かった。私の主観的な点数がびわ湖の昼が75点、びわ湖の夜が85点、川口の昼が95点だった。びわ湖ホールでの2公演が悪かった訳ではない。素晴らしいコンサートだったし、十分に盛り上がっていた。でも川口は客席のバイブスが段違いだった。客の思い切りがよかった。単に私が前の方にいたからそう感じただけなのか? その考えが頭をよぎったが、おそらくそうではない。いくら日本中を回っているとは言ってもJuice=Juiceそしてハロプロは東京近郊がホームで、地方に比べてファン層の厚さが違うのだと思った。あとは少数だろうが私のように二日前にびわ湖ホールにいた紳士たちが、このコンサートを初めて観る紳士たちを引っ張っている部分もあったかもしれない。(音響的にもびわ湖のときより迫力を感じた。これに関しては私の席がスピーカーに近かったのが影響しているかもしれない。)75点、85点、95点。数学的に考えて、18時半からの夜公演は105点になるはずだった。

結果は、105点だった。びわ湖ホールでの2公演を観させてもらったときに、昼公演がウォーミング・アップで、夜公演が本番だと感じた。この一連の4公演を全体として見ると、びわ湖ホールでの2公演がウォーミング・アップで、川口総合文化センターでの2公演が本番だと感じた。105点になるというのは自分で立てた予想ながら半信半疑だった。なぜなら夜公演の席は1F19列であり、昼公演の席に比べて13列も後ろだったからだ。1Fは30列まであるので、決して悪い席ではない。双眼鏡を使えば細かい表情も堪能できる。とはいえ、昼公演に味わった特別な臨場感は望めない。それでも、夜公演は105点だった。それだけJuice=Juiceの皆さんは出せる力のすべてを振り絞り、観客の我々も本Special Codeの集大成を見せた。観客の参加回数に個人差はあるにせよ、集合体としての我々にとっては4公演目だ。Juice=Juiceさんと我々の間のオートマティズムが最高潮に達した。何だかもう、現実なのか夢なのか分からない夢心地の2公演だった。一日に観させてもらったコンサートの合計点数が200点になることなんてことはほとんどない。世界でいちばん美しいものを観させてもらっていると心から実感し、恍惚状態だった。アルコールなしでこんな精神状態になるなんて滅多にないと思ったが、そういえば昼に焼き肉屋で焼酎を飲んでいた。でも少量だったからほとんど酔わなかった。アルコールの助けは実質ゼロだった。今日は3連休の最終日だ。コンサートのすばらしさもさることながら、これまでの2日間で気持ちがほぐれていたのも大きかったかもしれない。

夢か現実かの判別がつかない極地が、『生まれたてのBaby Love』で訪れた。右側(上手)の宮崎由加さんを双眼鏡で見ていたところ、彼女は両手の親指と人差し指で輪っかを作って両目に当ててから、その手を目から外し、笑顔で客席に手を振ったのである。より正確には、私に向けて手を振ったのである。もちろん、先に述べたF-ZERO理論の通り、この一連の動作の有効範囲は相当に広かったはずだ。多くの紳士が自らに対する個人的なメッセージとして受け取ったはずだ。いや、分からない。もしかすると、そもそもそんなジェスチャーはしていなかったのかもしれない。確かなこととして言えるのは、私の脳内では双眼鏡で宮崎さんを見ていた私に対して、彼女が個人的に反応してくれたのである。私の脳内でそうだったのであれば、それが現実であり、事実なのである。アイドルとファンの関係とはそういうものなのである。つまり宮崎由加さんが一番なのである。

何度見ても宮崎さんは手足が長くて、顔が小さい。スタイルとカリスマ性が、1996年のアトランタ五輪におけるサッカー・ナイジェリア代表のヌワンコ・カヌーのようだ。あの大会のナイジェリアはUNSTOPPABLE(何使ったって止めらんねえ)だった。彼らがアルゼンチンを破って優勝したとき、宮崎さんは2歳のお子ちゃまだったわけだが、私の近くの席にはオコチャのユニフォームを着てコンサートに臨んでいる紳士がいた(どういう意味だったのか?)。オーガスティン・オコチャもアトランタを制したメンバーの一人だった。

この4公演で、私にとっての一推しが宮崎由加さんで、二推しが宮本佳林さんで、そのお二方が自分の中の圧倒的二強であるというのを確信した。全体や複数人を同時に見ているときを除けば、私が見ていたのは宮崎さん6割、宮本さん3割、金澤さん1割であった。

埼玉県は金澤さんの出身地だ。出身地でのコンサートは凱旋といって、アンコールのときに通常のコールではなくそのメンバーの名前を呼ぶのが通例になっている。私が観に行かせてもらった5月14日の三郷市文化会館でのコンサートでは、昼公演でも夜公演でも開演前とアンコール時に「朋子! 朋子!」と我々は声を上げた。今日は昼公演の開演前は「ジュース! ジュース!」だったし、アンコールは「朋子」で行くのかと思ったら、いつもの「ジュース! もう一杯!」だった。夜公演のアンコールは「朋子!」になって、ホッとした。なぜホッとしたかというと、金澤さんは地元の埼玉でコンサートをやれることが嬉しそうだったからだ。“GIRLS BE AMBITIOUS”の自身のパートではステージに寝っ転がるという後藤真希さんの“SOME BOYS! TOUCH”を彷彿とさせるアドリブを見せていた。それを後のしゃべりセグメントで高木紗友希さんから突っ込まれ、「埼玉だから嬉しくて」と照れ笑いしていた。昼公演では川口という場所は自分にとって映画を観に来る場所だと言っていた。それだけ張り切っているのに我々が金澤さんの凱旋公演であることを無視してしまうと、きっと彼女は悲しむだろうと思っていた。「祝ってもらえると思っていなかった」と朋子コールを喜ぶ金澤さん(きっと思っていたか、少なくとも期待はしていただろう)。「こんな取り柄のない私でも応援してくれる人がいるんだなと…(客、エーイング)ごめんね(エーって)言わせて」

Wonderful World”で宮本さんが「あなたに出逢えたから」を「みんなに出逢えたから」と替えて歌ったことが、川口の夜公演そしてこのSpecial Codeの4公演を締めくくる大団円感に拍車をかけた。昼公演で高木さんは「Juice=Juiceの日ってただの語呂合わせだし、℃-uteの日のパクリじゃん。でもこうやって多くの人が集まってくれるのが嬉しい」的なことを言っていた。来年からハロプロの催しとしての℃-uteの日はなくなる。この記念日の元ネタが℃-uteの日であるということを我々が忘れてしまうくらい、何年も先まで続けて欲しい。

2016年10月15日土曜日

Special Code (2016-10-08)

伊丹空港前の東横インからアウト。朝食をホテルで済ませてから出ようと思ったが、混んでいるし、何よりまずそうだ。品数も少ない。貧しい気分になりそうだ。このホテルは朝食を「無料」と謳っているのだが、無料ではないだろ。二泊で17,496円の宿泊料金に含まれているだけの話だ。こういうごまかしは嫌いだ。私からすると望んでもいないサービスを勝手に付けられて料金に上乗せされたに等しい。朝食は要らないから一泊あたり500円でも安くしてほしかった。そんなことよりも大浴場がないのが残念だ。ただ空港からすぐ近くでそこそこ安いとなると、ここくらいしか選択肢がなかった。節約したかった。昨日の晩飯も吉野家で豚丼と豚汁と生卵の計550円だった。予定変更。空港内の喫茶店「英國屋」でモーニングのB(サンドウィッチ)450円。ホットコーヒー。7時半の開店直後に入ったら店員がレジの奥で何かを立ち食いしていて私に気付くと気まずそうだった。地元のおっちゃん数名は皆ホットコーヒーを頼むとき「ホット」と言っていた。

空港からバスで京都駅。1,310円。定時の50分間ぴったりで着いた。少し苦い記憶がよみがえった。3年前だ。無職の頃、職が決まらず意欲もわかずどうしたらいいか分からず途方にくれた私は、すがる思いで高速バスに乗ってここに来て、あるキャリア・コンサルタントに会った。面談の後にふらっと入った店のお好み焼きはおいしくなかった。どこかの有名な寺の日本庭園には息を呑んだ。日本的な美とはこういうものかと合点した。冬だったけどまだ紅葉が残っていた。バスでの移動は消耗した。コンサルタントとの面談は結果的に役に立たなかった。話し始めると長い。今日は京都は単なる通過点だ。感傷に浸る間もなく、JRびわ湖線に乗って11分の膳所で降りた。駅前のオタクっぽい女集団に付いていった。「ナマステ タージマハル」という日本でいうなら「こんにちは 富士山」のような店名のインド・ネパール料理店や3軒のマッサージ店、パルコ等を通り過ぎて、びわ湖ホールに着いた。9時45分くらい。11時からのグッズ販売を待つJuice=Juice familyの皆さんが15人くらいいた。先ほどの女集団はびわ湖ホールに別の目的で来たらしくどこかに消えていった。

10時5分に係員からこの辺にグッズ列を作るから座っているようにという指示が出た。私は地べたに座りたくないし立ち続けるのは苦ではないので立ったまま並んだ。26人目くらいだった。後ろの人の会話が聞こえてきた。自分、埼玉から来たんですよ。4時半に起きて、6時台の新幹線に乗って。終わったら終電で帰ります。あさっての川口はね、家からめっちゃ近いんですけど、夜勤で行けなくて。今日にすべてを賭けてるんです。今日は昼のチケットが1Bなんでもし1Aを潰したら最前です。いやあ、がっつけないと思いますね。もうポカーンだと思いますよ。ポカーンてなりますよ。「僕も埼玉なんですよ」と私も会話に混ざりたかったが、タイミングを逸した。カントリー・ガールズのnew single『どーだっていいの/涙のリクエスト』を配布している紳士がいた。まだ買っていなかったので1枚いただいた。別の紳士がアンジュルムのsingleを配っていたのでこちらも1枚いただいた。『次々続々/糸島Distance/恋ならとっくに始まってる』。既に持っているのであとで合流するTwitterのダチにあげる。グッズ列から生まれて初めてびわ湖を目にした。ガラス越しに。

「いや、思ったより…と言ったら失礼ですけど、色々あるなと思いました。パルコがあって、西武があって」
「でもパルコなくなるんですよ」
「そうなんですか。近いうちにですか?」
「いつだったかな、でもなくなるという噂があります」
今日は最後まで予約で埋まっているというにわかに信じがたい理由により1軒目は入れなかったが、「り・ふぁいん」では待ち時間なしでマッサージを受けられた。高品質でありながら14時までは早割で20%引きになるらしく、80分で6,225円だった。私の生活圏内にあったら通いたいし、びわ湖ホールに来る機会があればまた利用したい。

13時すぎに「り・ふぁいん」を出て、パルコ6階の「カプリチョーザ」で名古屋から来たTwitterのダチと合流した。先ほど買った日替わり写真の宮崎さん1枚、宮本さん1枚、金澤さん1枚、高木さん2枚、コレクション生写真8枚のうち、日替わりの高木さん1枚とコレクション生写真2枚はダチのだ。彼女が来る前にコレ生を開封した。宮崎さん2種、高木さん2種、宮本さん1種、植村さん2種で片方が2枚。ダチは高木さん推しなので高木さん2種を譲ることにした。本当はダブった植村さんのを折半するのが筋だが、私の温情だ。目先の利益に食い付かず、こうやって恩を売って、後でたっぷり返してもらうのが大人のやり方なんだよ。シーフードのピザを食って、ビールを飲んだら14時半の開演までギリギリになった。食後のコーヒーを急いですすった。

びわ湖ホールは前からTwitterでいい評判を目にしていた。実際、中に入ってみると収容人数(1,848人)のわりに小じんまりしていてステージが近く、会場そのものが醸し出すいい雰囲気があった。私は1FのR列、ダチは3Fのファミリー席だった。1Fと2Fが階違いというよりは段差と言った方が近く、2Fが実質的には1F後方、3Fが実質的には2Fだったし、その実質2Fにしても他のホールよりは近かった。

過去のSpecial Code(ホール公演)でも観客をあっと言わせる仕掛けがいくつもあったが、今回はそれを上回る多種多様な演出が用意されていた。情報量の多さに圧倒され、何が起きているのか十分に認識が出来なかった。コンサートが始まると巨大な風船が膨らんでいき、そこに各メンバーの影と名前が映し出され、最後に中からJuice=Juiceの5人が出てくるのだが、観た時点では分かっていなかった。何やらステージ中央に何か大きな丸い何かがあるな、と思って気が付いたらメンバーが出てきたという感じで、追いついていなかった。公演中にメンバーたちが説明するのを聞いて初めてそういうことだったのかと理解した。

風船から出てきて一曲目の『明日やろうはバカやろう』を歌い始めた赤い衣装のJuice=Juiceを双眼鏡越しに見てまず私が思ったのが、右端の宮崎由加さんが可愛いということだった。ステージでは色々なことが起きていて、初見では見落とした部分も多かったと思うが、宮崎由加さんが一番かわいいということだけは疑う余地なく分かったし、その点は見落としようがなかった。もっとも、右から二番目(右は空席だった)という私の位置からは、全体的に左(下手)側にいがちな宮崎さんは少し見づらかった。宮崎さんが見づらいときは主に宮本さんを見ていた。

今日の宮本佳林さんは髪型が至高だった。残念ながら私は女性の髪型を語るボキャブラリーを持ち合わせておらず、至高だったとしか言えない。チケットや日替わり写真の黒柳徹子さん的な髪型とは違った。その新しい髪型は汗で前髪が崩れやすいらしく、終盤には完全に崩れていた。メンバーが指摘すると、びわ湖に浸かってきたんだと宮本さんはおどけた。最後のしゃべりで彼女の崩れきった前髪が大写しになった。客席がざわめくと「そんなに顔キモい?」と問いかけてから思いっきりぶりっ子に振り切った表情を見せて我々から喝采を浴びた。もちろん髪だけじゃなくて元気ハツラツぶりは相変わらずだったし、色っぽさにも磨きがかかっていた。『背伸び』でのしなやかで腰の入ったダンスと曲の世界に入りきった表情。

『チクタク 私の旬』では映像とソファを使用していた。まず目覚まし時計がモニターに映し出されて、アラームが鳴るとソファで寝ていたメンバーたちが起きて曲が始まるという具合だった。寝そべる宮本さんを蹴る(実際には蹴っていない)植村さん。ソファに土足で立ち上がる高木紗友希さん。

『香水』から始まるブロックでは『Keep on! 上昇志向』の衣装をアレンジしたような衣装でJuice=Juiceが登場した。金澤朋子さんはギリギリでおへそが見えないくらいの位置でパンツ(下着のことではないです)を履いていたのだが『香水』の曲中におへそが見える位置まで下にずらす場面があった。そして数秒後には戻したのである。このお嬢さんはこうやって我々の心をもてあそぶのか。もし私が個別握手回に通うタイプのファンだったら彼女のブースでこの幻惑的な動きの意図を詳しく聞いてみたいし、金澤さんからどこまで細かいとこ見とんねん的に呆れられるとともに軽く変態扱いされたい。

このコンサートにはダンスのセグメントがあるのだが、高木さんは膝をつく動きの練習で脚にあざが出来たと言っていた。あざが会場のモニターに大写しになると我々は当然フーとひやかす。金澤さんが「汚い」と言って、高木さんが「汚いって言わないで」と言って、金澤さんは笑っていた。

変わり種では『黄色い空でBOOM BOOM BOOM』がセットリストに入っていた。この曲をJuice=Juiceは完璧に乗りこなしていたし、ステージから発するグルーヴ感が凄かった。特に金澤さん。会場がハッピーな空気で充満した。

本編中にも一度降臨があったが、ジュース! もう一杯!コールを受けての登場も客席の後ろからであった。このびわ湖の昼公演が初めてなので観客は誰も降臨のことを知らない。だから周囲の雰囲気で何となく察するということがなく、純粋に驚くことが出来る。そのあたりは初回を観させてもらうよさの一つだ。

宮崎さんが最後のあいさつでこのツアーが出来る喜びを語る際に「こーんなに可愛い衣装を着させてもらって」、と満面の笑みでくるっと回るのを3回くらい繰り返していて、その度に我々はフーと言って、これがアイドルと観客のあるべき関係であると感じた。

昼公演と夜公演の間にTwitterを始めた初期から(つまり6年くらい前から)フォローしている方と初めてお会いすることが出来た。その方は横浜にお住まいで、私は埼玉に住んでいる。6年越しの初対面が滋賀になった。

夜公演は私が取った席でTwitterのダチと連番だった。18時半開演だと思っていたのだが、18時開演だと気が付いたのが17時47分だった。わざわざ滋賀まで来て、他に用事がある訳でもないのに開演時間を間違えて遅れたとしたらアホすぎたが、開演5分前に席に着いて事なきを得た。1FのV列という昼に比べて4列後ろの席だった。後方ではあったが、双眼鏡のおかげでじっくり細部を楽しむことが出来た。双眼鏡を外して盛り上がるタイミングも昼で心得ていたので、バランスよく楽しめた。

夜公演の方がよいコンサートだったと感じた。Juice=Juiceも我々も、昼よりも乗っていた。一回目だといくらリハーサルを重ねているとはいえ演者も裏方も慣れていないし、観客も慣れていないので、コンサートにフィリップ・トルシエの言うところのオートマティズムがあまりない。もちろん披露される曲の大半はよく耳と身体に馴染んでいるので曲単位で見ればオートマティズムはあるだろうが、コンサートに真のオートマティズムが生まれるには客側がセットリストの展開を身体で把握している必要がある。そういう意味では昼公演は一種のリハーサルで夜公演が本番だったという言い方が出来る。誤解を招くかもしれないので補足しておくが、昼公演はもちろんそれ単体で十分なクオリティを備えた公演であった。客も盛り上がっていた。しかしながらコンサート・ツアーとは一つ一つが独立した公演であるのと同時に、回数を重ねていく毎に演者・裏方・観客の三者がそれぞれ学び、完成度を高めていくものなのだ。演者にとってみれば一回目よりも二回目の方が緊張がほどよくほぐれているだろうし、客もいつ何が起きるかを察しているから状況をわきまえた反応が出来る。もちろん夜公演だけを観る人もたくさんいたとは思うが、昼に続いて観ている人も一定の割合はいる訳で、そういう人たちが昼公演で学んだ結果を夜公演で生かしたのだ。私を含めて。

昼公演に比べて宮本さんの前髪が乱れるのが遅いように見えた。しかし終盤になると昼と同様に赤ん坊のようになっていた。『GIRLS BE AMBITIOUS』のフリー部分では頭を振り回して汗を飛ばしていたのだが、後のしゃべりでも同じことをして「犬みたいでしょ」と言っていた。ファンは大喜びで前方の誰かがちょうだいと言ったらしく「ちょうだいじゃないでしょ」と植村さんが諫めていた。その後メンバーから「気持ち悪い」「やめなさい」という言葉が発せられた。いずれも「ちょうだい」と言ったファンに向けられたと思っていたが、後からよくよく考えてみると(後でダチと議論した)、どうやら「気持ち悪い」と「やめなさい」は宮本さんへの言葉という解釈が正しかったようだ。確証は持てないけど、発言主は「気持ち悪い」が高木さん、「やめなさい」が金澤さんかな? 最後のあいさつでは宮本さんがしゃべっている最中、高木さん以外の三人がモニター後ろのモニターに釘付けだった。植村・宮崎・宮本・高木・金澤という並びだった。植村さんが宮崎さんに「りんかの前髪やばいよ」的なことを言ったようだ。しゃべり終えた宮本さんを呼び止めた宮崎さんが、宮本さんのおでこに汗で引っ付いた前髪を横に流してあげていた。

『GIRLS BE AMBIITOUS!』でメンバーが一端ステージから捌けて、着替えている間に映像でメンバーが再登場して観客を煽る場面があるのだが、そこで高木さんは男性に「にゃんにゃん」と言うのを要求している。再登場した高木さんが男性のにゃんにゃんが可愛い!と我々をほめた後に発した「普段から可愛い女の子を見ているだけありますね!」というコメントには笑った。高木さん曰く、今回の4公演(今日びわ湖で2公演+あさって川口で2公演)はDVD化されない。だから皆さんでこのコンサートのよさを広めて、来なかった奴、バカだな!ってなるようにしてほしい。しかし冷静に考えると、同じコンサートを2回観るために埼玉県から滋賀県に来て、あさっても同じコンサートを埼玉で2回観る私が一般的な尺度ではバカだった。

2016年10月9日日曜日

モード (2016-10-06)

上國料萌衣さんのくちびるの上と下が離れる音が聞こえました。上國料萌衣さんが口を開けて息を吸い込んで台詞を発する場面がありました(劇なので当然です)。人間が何かを言うには口を開ける必要があります。口を開くのはくちびるを上下に開放することでもあります。その音が私には聞こえたのです。どういう音だったのかを擬音でここに書くことはあえてしません。今ご自身のお口でお試しになってみてください。大体そんな感じですよ。ただし、あなたや私では上國料萌衣さんのお口元から出るのと同じ音は出すことが出来ません。一緒にしないでくださいね。汚らわしい。「大体そんな感じ」と書いたのは上國料萌衣さんと我々が同じ人間という種に属するから身体の構造が大枠では同じであるという事実のみに依拠しているのであって、それ以上の意味はありません。なぜ私にその音が聞こえたのでしょうか? それは第一に、上國料萌衣さんのくちびるが潤っていたからです。カサカサに乾いたくちびるではこうはいきません。第二に、私が1列目にいたからです。大枚(15,000円)をはたいて原宿の娯楽道でチケットを買いました。上國料萌衣さんがすぐ目の前にいたのです。私と上國料萌衣さんを隔てる人間は一人もいませんでした。会場にいた観客で、この音に気付いた人は相当に少ないはずです。なぜなら、あの音はスピーカーでは拾えていないはずだからです。つまり、生音として聞こえる距離でないと気付けないのです。私のように最前列にいてなおかつ上國料萌衣さんが目の前に来たときくらいではないと、聞き取るのは非常に難しかったと思います。地獄耳の持ち主であれば別かも知れませんが。第三に、今日の公演はミュージカルだったので芝居のときには台詞以外の音はステージからもスピーカーからも出ない公演でした。観客も笑うときを除けば黙って観ていました。コンサートのようにスピーカーから爆音が鳴り響き客席もワーワー声を出す公演でこのような細かい音には気付くのは不可能です。この事象はさまざまな条件が重なったことで起きた僥倖でした。私は2013年に『さくらの花束』という舞台を一番前で観させてもらったことがありました。中島早貴さんがすぐ近くで舞台の上を走ったときに起きた風を身体で感じました。中島早貴さんが動いたことで発生した風を感じたことで、私と中島早貴さんが同じ空気の中で生きていることを実感しました。今日はそのとき以来の衝撃を受けました。自分の中で新たな地平が開かれました。他にも、和田彩花さんがお召しになっているシャツのテカテカ感がよく分かったり、勝田里奈さんの手が他のメンバーさんに比べて血管が分かりやすく浮き出ていることに気付いたり、メンバーさん全員の歯が真っ白なのがよく見えたりと、3列目の端っこから二番目で観させてもらった4日前には見えなかったものが見えました。いや、もっと普通にね、話の内容とか、各メンバーの演技とか、印象に残った場面とか、推す等という軽い言葉よりは拝むとか尊敬するといった言葉が似合う和田さんの神々しさとか、色々書こうと思えば書けますよ。でも、上國料萌衣さんの瑞々しいくちびるが開く音が聞こえたという衝撃を前にすると、それ以外のことはほとんど書くに値しないんですよ。

2016年10月7日金曜日

モード (2016-10-02)

夏が終わっとるんか終わってへんのかよう分からん天気が続いてますな。日付だけ見るともう秋やん。長袖の服を着たくてうずうずしている訳ですよ。せっかくの休日やしね、お洒落もしたいわけですよ。でもね、四季いうても最近は夏が実質4ヶ月はありますやん。今日も30℃まで上がるとかで、もう上はGoodwearの半袖ポケットTシャツ(米国製)一枚にしましたわ。Engineered Garmentsの薄手ジャケット(米国製)くらいならいけるかと思うてんけどな、やっぱ暑かってん。下はNeedlesのトラックパンツ(日本製)。カバンはMIL-TECのヘルメット・バッグ(たぶん中国製)。靴はPF Flyersの白スニーカー(米国製)。スニーカーが洗うたばかりやったけん、日差しを受けて眩しいくらいにピッカピカでしたわ。TWIGYさんが「毎日磨くスニーカーとスキル」言うてはりましたけど、さすがに毎日は磨きすぎですな。そもそも毎日履かへんわ。毎日履いたらな、靴が傷むねん。一日履くと靴にごっつ負荷がかかるねんで。何足かを交互に履いて、休ませなあかん。

お洒落と言えばな、今日のミュージカルはファッションが関係してる話らしいねん。詳しく見てへんねんけどな、ファッション誌とかモデルがどうのとかいう話らしくてな。タイトルも『モード』やしな。興味ない訳じゃないねんで。俺な、映画観るときもそうやねんけど、あんま事前に情報を見いひんねん。あらすじくらいは見んねんけど、あんま先入観を持たないで楽しみたいねん。まあ、単にめんどくさいちゅうのもあるな。と言っても、和田彩花さんが編集者、上國料萌衣さんがモデルの役で、このお二人が主役ということくらいはさすがに分かっとったで。

ほんまはな、今日は行く予定じゃなかってん。行く予定だったのは、来週10月8日(土)の公演やねん。ファンクラブの先行申し込みで当選してゼニも支払い済みでな。でも同じ日にJuice=Juiceのコンサートが入ってもうてな。ファンクラブの先行受付があったのはアンジュルムさんがたしか一ヶ月先やってんけどな、ダブル・ブッキングに気付いたのがJuice=Juiceさんの方に申し込んで当選した後やってん。アンジュルムさんは場所が新宿、Juice=Juiceさんが滋賀県。アンジュルムさんのミュージカルが15時開演やったから、同じ東京やったらJuice=Juiceさんのコンサートの夜公演とハシゴが出来たかもしれんな(その場合Juice=Juiceさんの昼公演は諦めることになるな)。でも東京と滋賀となると物理的に不可能や。アンジュルムさんとJuice=Juiceさんのどっちかを選ばなあかん。前にも書いてんけど、俺の職務分掌上、Juice=Juiceと℃-uteが最優先でな、アンジュルムさんよりもJuice=Juiceさんの優先度が高いねん(正直℃-uteさんの方は少し揺らぎつつあるけどな)。だからアンジュルムさんにはごめんやけど観に行かへんつもりやってん。手元に届いていたチケットは先週ある友人に贈呈した。

でもな、やっぱどうしても一回は観たくなってな。昨日、原宿の娯楽道に駆け込んでチケットを買うてん。ちゅうのもな、今回のミュージカル、おもろいに決まってんねん。観いひんかったら損する匂いがプンプンすんねん。経験から分かんねん。みすみす見逃すのはミステイクだっちゅうのがもう明白やってん。12,000円やったか13,000円やったかは忘れたけど、ちょい奮発して3列目のチケットをゲトりましたわ。定価の5割増しやけど、彼女たちが見せてくれはるもんからすると、この席でこの値段だったら十分に安いと観る前から分かってましたわ。

新宿ちゅうのは難儀な駅でな、出口を間違えたらごっつう遠回りせなあかん。一旦出口を間違えたらもう迷路やで。全労災ホール・スペースゼロは南口や。ここは前にスマイレージのミュージカル『SMILE FANTASY』を観に来させてもらった会場や。南口を出てからの道は覚えてたわ。ちょっと早めに着いて、グッズを買うた。時間的に、俺が観させてもらう15時からの回の一つ前の公演中やった。前に女の人が一人いただけで、すぐに買えた。販売する台の後ろに座っていたエスタシオンさんの係員さんたちがけだるそうで海外っぽかったわ。日替わり写真の室田瑞希さん500円と、コレクション生写真500円を3枚。室田さんは男役やねんけど、日替わり写真は男装バージョンといつもの室田さんバージョンを交互に出してるっぽくてな。今日はいつもの女の子の室田さんでな、俺的には嬉しかった。コレクション生写真は勝田里奈さん、中西香奈さん、和田彩花さんが当たった。会場の前で店を出して交換しているおっちゃんがいてんけど、俺はアンジュルムさんに明確な推しがいる訳でもないし、交換はせんかった。かぶってへんから特に交換する理由もないしな。

14時半開場やってんけど、ロビーにはもっと前から入らせてくれはった。チケットを見せるだけで、コンサートと違って荷物検査がなかったのがちょっと新鮮やった。中には椅子が用意されとってな、座って待ってはる人もたくさんおったわ。係員の皆さんの感じがよくて、快適な待ち時間やったわ。14時26分になったら客席に入ってええという案内が出されて、扉が開放された。入って中を見渡した途端、ニヤケそうになってもうたわ。もう照明といい客席の配置といい中央に設けられた花道といい、素晴らしいミュージカルが繰り広げられる予感しかないねん。雰囲気が抜群なんよ。DOTAMAさんが晋平太さんとの試合で言うてはった「上がらずにはおられへんやろ!」というのはまさしくこれのことですわ。何か挙動不審で目に付くおっちゃんがおるな思うてたら右隣に来はった。左隣にはでかいカバンを持ったふくよかなおっちゃんが来はった。濃いメンツに囲まれてちょっと不安になってんけどお二人ともおとなしく観てはったし何の問題もなかったわ。

このミュージカルを観させてもうて思ったのがな、労働がキラキラしてんねん。これには正直、びっくりしたわ。『モード』の世界では会社で働くっちゅうこと、仕事に心身を捧げることが忌避すべきことではなく、祝福すべきことなんや。社会でいっちょまえの人間として認められるため、夢を叶えるため、自分らしく生きるためには働くことが不可欠どころかほぼイコールなんや。男性が独占してるその労働を通した自己実現という特権を、女性が自らの手でつかみ取ろうとする姿が描かれてんねん。労働が男性の特権というのは女性の被害妄想ではなく、男性もそう思ってるらしいねん。例えばな、和田さんが勤める雑誌の副編集長(ヒルタ街さんという女性による男役)がしょっちゅう和田さんに女だからということで嫌がらせをすんねんけど、「女のくせに男の仕事を取りやがって」みたいなことを言うねん。自分のことでごめんやけど、俺にとって労働は必要悪で、精神安定剤。服用しすぎると危険や。なくて済むならそれに越したことはないと思ってんねん。『モード』の世界は1970年代の設定らしいねんけど、もしかしてこの時代ってまだ労働にこんな無邪気な希望を持てた時代だったんやろか? 時代考証の精度は分からへんけど、おそらくある程度の現実性はある労働観なんやろうな。2016年現在の女性たちの一般的な感覚からすると、どうなんやろな。

劇で描かれるモデルという仕事が、アイドルと重なる部分があると思った。和田さん(の役)はファッションを女が自立するための武器と捉えてるねん。その象徴がモデルやねん。一方で、副編集長はモデルなんてのは男に媚びた可愛い服装やエロい服装でニコニコしていればええ的なスタンスやねん。上國料さんの許嫁の室田さんも、モデルという仕事には簡単な仕事だのジロジロ見られるだけだの、ちょっと偏見を持ってはるねん。そういう周囲の視線があるから、上國料さんは初めは女中の相川茉穂さんを除いて秘密で活動をするねん。世の中には色んな「アイドル」のあり方があるやんか。そんな中で、和田さんが推進するファッションやモデルのあり方が、そのままアンジュルムやハロプロが目指すところなんじゃないかって、自分の中で重ねて見てたんや。いや、それは別に劇の中で明示されている訳じゃなく、俺が俺の中で勝手に重ねてるだけやねんで。重ねざるを得なかった最大の理由は、和田さんがめっちゃ役にはまってるからやねん。和田さんの役は、格好良くて、強くて、美しくて、ビジョンがあって、リーダーシップがあって、厳しいけど優しい、本当に惚れ惚れする女性なんやけど、和田さんが完璧に熱演してはるんや。それが出来るのは、和田さん自身の中身が、役が求める人間性に付いてきてるからやと思う。昔は宇宙と交信できるとか言うてはる不思議ちゃんの印象が強かったのに、今ではこんなに凛とした芯のある女性に成長したんだと思うと、感慨深い。和田さんに限らず、各メンバーさんの個性を生かした絶妙の配役やった。

真面目なテーマやけど、笑いどころがたくさんあって、純粋にコメディとして肩の力を抜いて楽しめた。悪役もいるし、上國料さんがイヤなことを言われて泣いたりもすんねんけど、そういう場面もミュージカル全体の中ではあくまで楽しさを引き立てるスパイスとして機能してんねん。ハッピーな話や。観客も真摯に楽しもうとしていて、凄くええバイブスやった。カーテンコールでは笠原桃奈さんが挨拶をしはったんやけど、「モデルの歩き方が苦手でレッスンではうまく出来なかったが、今日は皆さんの温かい視線の中でうまく出来たと思う」的なことをおっしゃっていて(勝田さんが「真面目…」と笑っていた)、観客のバイブスが伝わっているんやなと思うた。

とてつもなくファンタスティックやった。ちょっとやそっとの引き込まれ方ではなくて、観ていくうちに自分の心身が作品の世界と一体化して、雑念が消え去り、疲れや体調不良が癒え、ステージで起きていることだけに集中できた2時間やった。極上のミュージカルやった。ほんまに。会場を出た直後の高揚感では、2016年に観させてもろた現場で一番なんちゃうかと思ったくらいやわ。最高の現場はたくさんあったから一番とは断言できひんけど、3本の指には入るんちゃうやろか。それくらいに最高やったわ。主役の和田さんと上國料さんがめっさ印象的やったから帰りに日替わりを買い足そうとしてんけど、上國料さんのだけ売り切れてた。みんな同じこと考えてはったんやろうな。ところでこの記事の口調やけど、何弁なのかよう分からんわ。何でこんなん書いてもうたんや。