2020年2月28日金曜日

椿 (2020-02-22)

50メートルで200円くらい。マツモト・キヨシさんでいちばん安かったデンタル・フロス。同社のプライヴェット・ブランド製品。2月17日(月)に使っていたら歯の詰め物が取れた。右上の奥歯。出張中だったので歯医者さんに行けなかった。本当は治療の予約を今日に入れたかったが、先生が学会に参加のため不在らしく、来週の土曜日まで持ち越すことになった。右側で噛むと食べ物が詰まって痛む。我慢を強いられている。なるべく左だけで噛むようにしている。食べ物を完全に味わいきれていない感覚。私がふだん使っているJ&J リーチ デンタルフロス / ワックス・ノンフレーバー / 55ヤード(50.3m)でも同じことは起きていた可能性はある。しかし私はマツモト・キヨシさんサイドにも落ち度があった気がしてならない。糸が微妙に太く、滑りが悪い。余計な力がかかったのではないか。いずれにせよ安物買いの銭失いだった。50メートルのうち49メートル以上を残したまま出張先のホテルで捨てた。二度と買わない。

歯が気になる上に労働もインテンシティが高く、くたびれる一週間だった。昨日は仕事の後、外国人三名に仙台駅付近を案内した。ずんだスムージーを飲ませ、焼き鳥を食わせた。そういえばそのうちの一人のアメリカ人とこんな会話をした:
―マスクはしないの?
―しないね。マスクでcoronavirusは予防できないから(Twitterで聞きかじった情報)。
―そうなんだよね。俺の兄弟がCenters for Disease Control(アメリカ疾病予防管理センター)に勤めているんだけどさ。マスクではcoronavirusを防げないというのを彼から聞いているから俺もしない。手洗いが有効だそうだ。
日本のストリートではマスクを着けている人が多い。もしcoronavirusの予防に少しでもなると思っているのであれば、おまじないの世界と言っていいだろう。ただし感染した本人が付ければヴァイラスの拡散防止にはなるらしいし(そもそもストリートに出てくるなという話だが)、ちょうど花粉症の時期でもあるので、マスクの着用がまったく無意味というわけではない。

今日は会場が新宿で、当選していたのも夜公演だけ。早くから移動する必要はない。少しゆっくりしたかったので、ちょうどよかった。DAZNの見逃し配信で湘南ベルマーレさん対浦和レッドダイヤモンズさんを観てから家を出る。水谷竹秀さんの『日本を捨てた男たち』を読む。

12時58分、池袋の楊3号店。回鍋肉とご飯。
―花粉症ですか?
―ちょっとね。花粉症ですか?
―そうです。
―クスリ飲んでますか?
―飲んでます。
―ビタミンD3をたくさん摂ると、軽くなります。
―クスリは飲んでいない?
―飲んでないです。ビタミンだけ。
―いいこと聞いた。
―花粉症 ビタミンで調べてみて。
調べてみます、と会計のときにお店の人は言った。もっとも、私自身がグズグズしていたので説得力はなかったかもしれない。

13時32分、池袋フラミンゴ。コーヒー・フロート。

新宿ReNYには何度か来ているから最初に比べれば迷わなくなったが、相変わらず私には新宿駅付近の土地勘を得られない。まだ仙台駅付近の方が分かる。15時14分、小野瑞歩さんの日替わり写真とコレクション生写真2枚を購入完了。あとDVD MAGAZINE Vol. 10。どれも売り切れていなかった。昼公演が行われている最中だけあって待ち時間なしで買えた。

Hello! Projectはコンサートやイベントの参加者にマスクの着用を呼びかけている。無自覚の感染者もいる可能性を考慮すると、一律でマスクを付けさせるのは理にかなってはいるのかもしれない。私自身がcoronavirusに感染していないとはいえ、この状況でマスクを持参しないのはメンバーさんに対して不誠実。ポーズとしてでもマスクは着けたほうがいい。私の家にはマスクが無駄に80枚以上ある。二、三枚カバンに入れてきた。が、マスクを入れたままそのカバンを新宿駅西口中央地下1階(白色/右側)コイン・ロッカーに預けてしまった。今日の会場である新宿ReNY近くのセブン・イレブンに入ったところ普通に売っていたので買った。お一人様一点のみという制限はあった。花粉症ではある。今年はまだ薬を飲まずビタミンD3+K2で乗り切っている(鼻にスプレーは一日に一回くらい噴射する)が、ビタミンの量が足りないのか症状を抑えきれていない。今日はだいぶくしゃみが出る。喉のかゆみもある。だからマスクはあるに越したことはなかった。

16時7分、新宿アンダーグラウンドのリエ・コーヒー。季節のハーバル・ティー。何だったかは分からん。暖房が過剰。暑苦しい。鼻水が治まらない。

今日は17時半開場、18時開演。

17時15分、150番までお持ちの方はこの付近まで来るようにとエスタシオン係員。
17時26分、50番まで階段どうぞ。

オタクさんがたくさん集まる場所に来るのは久し振りな気がする。入場を待つ人々をまじまじと見ると、やはりキモい。我々オタクさんとアイドルさんでは生物的な階層が違いすぎる。同じ学校なら言葉を交わすことすら許されなかった。本来であれば交わる要素など一切ないはずのオタクさんとアイドルさんが、こうやってコンサートやイベントを通じてお互いを必要としているのは貨幣経済の妙である。アイドルさんが仮に我々を個々の人間としては哀れな負け犬だと思っていたとしても、お金を払って興行に足を運ぶ人たちとしての我々がいなければ彼女たちの活動は成り立たない。

若いカップル。ファックしていればいいのに、何でHello! Projectのコンサートに二人で来るんだろう。その辺の一般ピーポーのナオンがどうあがいたってセックス・アピールでつばきファクトリーさんとは張り合えないわけやんか。(勘違いをする人が多いけど、セックス・アピールという言葉は性的魅力という意味だよ。)彼女の自己評価は知らんけど。男は極上のナオンたちを見てしまった後でどうやって目の前のナオンに対して気持ちを高めるんだ。無理じゃないか? それともアレか、FANZAで準備運動をしてからアイドルさんの写真集でシコる(俺グラビアでは抜けないんですよという40代男性に対するある関西出身者による助言)的な感じで、アイドルさんを観た後に普通のナオンとファックするといっぱい出るんだろうか? 順序は逆だが…。

17時30分、100番まで呼び出し。

今チケットが手元にないから正確な番号は分からないんだけど、アップフロントさんが私に与えた整理番号は480前後だった。新宿ReNYの収容人数からするともうほとんど最後なんじゃないか。だからってわけじゃないんだけど、去年一昨年の2月22日のような高揚感はない。あ、分かっていると思うけど、2月22日というのはつばきファクトリーのメジャー・デビュー日。番号が悪い以上に、会場の規模が拡大するどころか縮小したという特別感のなさね。当然来ると思っていた東海のホーミーはそれを理由にファンクラブ先行の申し込みを見送ったんだって。次に会うのは5月23日(土)、このツアーの岐阜公演かな。予定通り開催されればの話だが。

17時35分、230番までの方どうぞ。
17時38分、330番。
17時40分、当日券ご希望の方いらっしゃらないですか?
17時41分、待機場所に人がまばら。この様子だと私の後ろはほとんどいなさそう。
17時42分、420番。
17時44分、460番。

10番毎に呼び出され一列に並んでいるにも拘わらず、私の後ろにいたオレンジ色のフード付きダウン・ジャケットをお召しになった50代半ばくらいのふくよかなハゲが徐々に私の真横に来た。気色悪いなと思っていたら案の定、どさくさに紛れて私を追い越した。いくつだよアンタ。何かもう、死んじゃえよ。チケットをもぎられ、600円を支払い、ミネラル・ウォーターを手にし、フロアへ。うわ、マジかよ。思わず声が出た。もう人が溢れつつあった。味噌汁を飲み終わった後の残りカスのような場所しか残っていなかった。選ぶ余地はほとんどなかった。入ってすぐの段を上がったところに立つ。しまった。前の紳士が包茎チンポ(いわゆるドリチン)のような形状をしたニット帽をお召しになっている。だがもう動くのは難しい。ライブハウス(和製英語)で初手の失敗は覆せない。

だけど会場に救われた。見やすいね新宿ReNYは。包茎チンポ(いわゆるドリチン)のような形状をしたニット帽で視界は塞がれはしたものの、基本的にはよく見えた。メンバーさんのほぼ全身が見えた。一番後ろでここまで見える会場はそうないだろう。二つ目の衣装で小野瑞歩さんが左奥に下がって水を飲むときに屈んだ際のスカートの中も見えた。もちろん、見えていいものしか穿いていない。かといってそう簡単に見られるものでもなく、稀少性は高い。ご利益があるとされている。ありがたや~、ありがたや~。公演を通して包茎チンポ紳士が脱帽していればもっとよく見えたのは間違いない。だがもし彼が包茎チンポでなかったとしたら私がいた空間は先に誰かが埋めていたかもしれない。

ただ、場所が悪いだとかチンポジ(包茎チンポニット帽を被った紳士の位置取り)がどうのとかは開演すぐにどうでもよくなった。つばきファクトリーさんが私の雑念を吹き飛ばしてくれた。彼女たちがステージに現れた次の瞬間から眼を奪われた。最初の衣装がとてつもなく素晴らしい。ハレの日に相応しい。着物をアレンジしたようなデザイン。キレイなだけじゃなく肌も見せるところは見せている。絶妙にツボを押さえている。『エイヤサ!ブラザー』を思い出したけど、こっちの方が手が込んでいる。マブすぎるナオンたちが身に着けることによる相乗効果。眼が喜ぶ。瞬く間にコンサートの世界に連れて行かれる。衣装ってのはこうじゃないと。Hello! Projectもこれだけの仕事が出来るのかと驚いた。だって前にも書いたように最新シングルの衣装がクソだせえからさ。雲泥の差よ。つばきファクトリーさんも嬉しそうで通常に比べ40%増し(当社比)で生き生きとしていた。初めて人前で見せることの興奮、新鮮味も寄与していただろう。一つ目の衣装をもっと長く観ていたかったが、二つ目の衣装もいかにもアイドルさんっぽくそれはそれでよかった。衣装替えを終えてステージに現れた時点では小野瑞歩さんはお腹はほとんど露出されていないのだが(メンバーさんによって着替えた段階でのお腹の出方に差がある)、動くにつれ生地がずれて肌が露わになってくる。趣がある。いとおかし。どのメンバーさんもおへその国からこんにちはしてくださらないので、そこだけは残念。

私の場所的に山岸理子さんがよく目に付いたんだけど、彼女の表情やヴァイブスがとにかくセダクティヴで。もう、セックスでしょ。メンバーさん全員から溢れんばかりのフェロモン。分泌されまくっている女性ホルモン。新沼希空さんがお好き博多のお菓子は通りもん。もし彼女たちが性の悦びを覚えているのだとしてもこのような形(や写真集等)で還元してくれるのであれば私は歓迎する。性の悦びが関係しているのかどうかは私には知る由がないが(小野田紗栞さんは別として)、つばきファクトリーが魅力を増し続けているのは間違いない。浅倉樹々さんが復帰した9人のつばきファクトリー。旬の中の旬。何使ったって止めらんねえ。誰がやったって超えらんねえ。それぞれの個性。どこを見ても完璧。欠点がない。いくら観ても飽きない。ずっと観ていたい。この集団はまだ私を夢中にさせ続けている。私は一時期に比べるとHello! Projectにはやや醒めつつあるが、つばきファクトリーだけは例外である。

トークのセグメント。デビューしてからの3年間で恥ずかしかったこと的なお題。
・昔ブログでやらかしちゃって…と小野田紗栞さんが言い始めて、場内がしばらくざわざわしていたのが可笑しかった。もちろん我々の頭に浮かんだ好きってなった♪の件をぶっ込むわけがなく、ささくれが出来たときにその写真をブログに載せたという話だった。見た人? 手はそんなに挙がらず。掘らないでねと懇願する小野田さん。(いま検索してみたら2016年9月6日の記事だった。)
・リリース・パーティでメンバーさんが一斉に水を飲みに行ってステージ上に岸本ゆめのさんと二人だけになったときの話をする小片リサさん。場をつなぐために二人で話したが、岸本ゆめのさんがことわざを言ったのに対抗し、私の方が頭いいとマウントを取った。
・昔のブログでは小学生の頃のプリクラのように写真にフレームをつけていた。私なんて餃子を切り取ってフレームに使っていた、と岸本ゆめのさん。
・谷本安美さんはブログ冒頭でやっていた挨拶が今となっては恥ずかしい。消したい。浅倉樹々さんは最初に魔法使いのキキですと書いていたが、皆さんに告知をせずやめた。キャラじゃないなって。(ヘッズからエーイング。)飛べません。

就活センセーション』のイントロで、小野瑞歩さんが一対一で笑顔を交換してださった。この椿ツアーにおいて『就活センセーション』がみずほchanと私のテーマ・ソングになった瞬間である。みずほchanと言えばさ。コンサート中の小野さんへの掛け声はみずほ!なんだけど、今日は咄嗟に出て来ず、お…と言い掛けてしまった。私は最近(1月20日からなるべく毎日。と言いつつ毎日は出来ていない)小野瑞歩さんのブログにコメントを投稿するようにしているんだけど、そこで小野さんのことをおみずchanと書いているのね(最近はみずほchanに変えつつあるけど)。おみずchanとして認識することが続いていたから、お…になってしまった。コンサート中の掛け声は瞬発的な反応が求められる。筋力トレーニングと一緒で、少し日にちを置くだけで感覚は鈍ってしまう。

立て続けに曲をやった後のみずほchanの表情がHIIT (high intensity interval training)をやっている最中の私のようだった。出せる力をすべて出し切っている爽快感が伝わってきた。

2019年11月末にドロップされたBEYOOOOONDSさんの1stアルバム“BEYOOOOOND1St”の衝撃によって、私の中で同集団以外のHello! Projectの音楽は影が薄くなっていた。しかし今日のコンサートでつばきファクトリーも名曲揃いであることを再認識した。私の記憶がたしかなら(違っていたらごめん)セットリストはカヴァーなし。オリジナル曲だけで構成されていた。初めてだよね。たぶん。あ、いや、デビュー一周年のコンサートがオリジナル曲だけだったね。でもね。同じオリジナル曲だけのコンサートでも二年前とはクオリティが段違いだったよ。あのときに比べて曲の充実度といったら。新曲『意識高い乙女のジレンマ』『抱きしめられてみたい』は共に間違いのないドープ・チューン。セットリストには間違いが一つもなかった。『ハッピークラッカー』もなかった。

衣装、セットリスト、メンバーさんの魅力、すべてにおいて申し分なし。これまでのつばきファクトリーのよさをすべて凝縮した、集大成のようなコンサートだった。正直なところ整理番号がアレだったので多くは期待していなかった。大事な記念日のコンサートを観させてもらえるだけでありがたい、参加することに意義があるというオリンピックの精神を持っていた。しかし蓋を開けてみると一本満足バーを百本食べても得ることが出来ないほどの満足感を得た。

新宿ReNYは開場前からクロークを受け付けていた。にもかかわらず大多数の観客が足元に荷物を置いていた。私がフロアに入った時点でほとんど足の踏み場はなかった要因は客入りの多さだけではなかった。みんながコイン・ロッカーなり会場のクロークなりに荷物を預けていればだいぶ余裕を持って観られたはず。もうさあ、カバンを床に置くという風習はいい加減やめさせろや。ジャンプ禁止の前にまずそっちだろ。人が一人立てるくらいの床面積を荷物で占有している奴らも普通にいるしさ。でも彼らは何かに違反しているわけではないんだよね。むしろエスタシオン係員は荷物を下に置けって積極的に呼びかけていたからね。係員がそう言うのならこれでいいんだって思うよね。わざわざお金を払って預けようとはならないよね。オタクさんはランダムのL版写真1枚に500円を平気で払うのに普通の出費には異常にケチだから。あとちょっと不満だったのが女限に余裕があったこと。後ろの方はスカスカだったよ。狭めてほしかった。女がみんな女性限定エリアに行くわけでもないし。

アンコールはつばき! 三周年! だった。最後のコメントで秋山眞緒さんは今日で皆さんのことが大好きになりましたとおっしゃっていた。私のような汚れた大人はつい言葉尻をとらえて昨日まではどうだったんだと勘繰りたくなるが、彼女の言葉に他意はないであろう。

小野瑞歩さんは、この先も4周年、〇周年、〇〇〇、〇〇〇(おううえんという感じでぼやかすような言い方)…とずっと皆さんとこの日を祝っていきたいという旨のことをおっしゃった。素敵な言葉だと私は思った。しかしアイドルさんは永遠ではない。いつ終わっても不思議ではない。流れ星のように眩い光を放ち、いつの間にか彼女たちは儚く消えていく。その日が五年後なのか、一年後なのか、はたまた明日なのか、それはそのときにならないと分からない。明日ってのはさすがにないと思うが、何も保証されていない。

今日のセットリストで私が唯一ピンとこない曲が『ハナモヨウ』だが(どういうわけかずっと好きになれない)、どうやら曲が始まったときの我々のどよめきが凄かったらしく、皆さん『ハナモヨウ』お好き? と山岸理子さんはオーディエンスに聞いていた。(私の周りでは最後の『帰ろう! レッツゴー』が始まったときにはしゃいでいる人たちが多かった。)

終演後のお見送り会に参加せずにお帰りになる紳士はそれなりにいた。おそらく15-20人前後いたんじゃないかな。Coronavirus前に全員握手を回避する紳士はこんなにいなかったと思う。握手に比べて濃厚接触度が低い(というか語義通りの接触ですらない)のでそんなのを待つよりは早く帰るという判断をしているのだろう。エスタシオン係員から手にアルコール消毒液の噴射を受ける。2メートルくらい離れたところに一列に並んだつばきファクトリーさん。私は扉のすぐ近くにいたので二番目だった。バースデー・イベントのお見送りのときと同じスピード感(つまり一瞬)だが相手が9人なんで、言葉をかけるのも難しい。マスクを着用し手を振る美女たちの前を、マスクを着用してペコペコしながら通り過ぎるというシュールな時間。二人目の小野瑞歩さんから、指を差しながらのあ!!!をいただいた。マスクをしていてなおかつ普通の服装(黒いTシャツ)姿でも瞬時に認識してもらえたのが私は単純に嬉しかった。

コンサートの余韻に浸りながら新宿駅に向かって歩いていたら前に某有名オタクさんがいた。たぶんお連れの紳士だと思うんだけど、1メートル圏内に入ると臭いがツンと来た。あのはじめの肩出しの衣装! アレ見てまたコンサート行きたいと思いましたネ! と彼は異臭を放ちながら興奮気味にまくし立てた。コレが新宿スタイル。

Eldar Djangirovさんの新譜(“Rhapsodize”)を聴きながら帰途につく。つばきファクトリー ライブツアー2020春 椿、非常に楽しかった。最高だった。つばきファクトリーさんが横浜F・マリノスと並んで世界で最もイルな集団であると確信した。明日は個別握手会が中止になったので明治安田生命J1リーグの開幕戦、横浜F・マリノス対ガンバ大阪さんを観に日産スタジアムに行く。楽しみだ。三連休の初日がつばきファクトリーさん、二日目が横浜F・マリノス、三日目が予定なし。至福。

これを書いている時点では、私が次に入る予定だった3月7日(土)の柏公演の中止が決まっている。3月15日(日)の横浜公演以降は実施してほしい。仮にやむを得ず中止したとしても、必ず振り替え公演を設けてほしい。なぜならつばきファクトリーが最高だから。椿ツアーが最高だから。

2020年2月25日火曜日

ウエスト・サイド・ストーリー (2020-02-15)

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』にヒロイン役で出演するのがどれほど凄いことなのか、私は分かっていない。でも去年のバースデー・ライブ(コンサートのことをライブというのは和製英語)でご出演決定を我々に知らせる田村芽実さんの喜びようと、まさか受かるとは思っていなかったという口ぶりからして、ご本人にとって、そして客観的にも相当ビッグな仕事なのだろう。ファンクラブに入っている身として先行受付に申し込まない手はなかった。15,000円のミュージカルは高いから一公演だけ申し込み、6,500円のコンサート(つばきファクトリー)は24公演に申し込む(当選したのは18公演)という、俄かに理解しがたい経済観念。私は普段の消費活動でも同じことをしている。高い商品の購入には慎重で、単発で見るとそこまで高くはない買い物を繰り返す。結局、累計すると大きな金額になる。毎月のカード請求額が異常な金額になるカラクリ。

ここ一、二週間は目覚めが悪かった。朝になっても疲れが取り切れていない。中途覚醒はしていないし、Fitbitの睡眠スコアも安定して80点前後。日中にしんどくなるわけでも、眠くなるわけでもない。深刻さはない。でもどこかスッキリしない日が続いていた。こうなるのを見越していたわけではないが、今日は朝一で整体の予約を入れていた。先生の施術が的確だったのだろう、昼過ぎには元気がみなぎるのを実感した。パンダさんパワーMAXとはこのことである。

Weston A. Priceさんの“Nutrition and Physical Degeneration”という本がとても面白い。未開部族が白人文明の食事(小麦粉、甘いもの、缶詰等)を取り入れることで顔と歯列弓が狭まる。歯が収まらなくなる。虫歯が大幅に増える。口呼吸になる。身体が弱くなる。というのを筆者が実際に数々の部族や伝統的な食生活を続けている地域を訪れて実地調査で示していく。これらの変化はわずか一世代で起きる。古来からの食事を続ける親と、白人文明の食事が主の子供で顔の形と歯並びがまったく異なる。素晴らしい発育や歯の健康、丈夫な身体を支える伝統的な食事の例は、
・ライ麦パンとチーズ。肉を週に一度
・魚の肉、脂、卵。野菜を数種類。たまにクランベリー
・動物の血、肉
といった具合だ。(ちょっとうる覚え。気になる人は原典にあたってほしい。ネット上で無料で見ることも出来る。)白人の食事を導入して虫歯に悩まされるようになったある部族では、歯の痛みが自殺の唯一の原因になっているという(彼らの社会には歯医者が存在しない)。私はこの本をどこか遠く離れた地域に住む人たちの話としてではなく、自分の問題として読んでいる。私は子供の頃に歯の矯正をしたし、口で呼吸をすることが多かったからだ。そしてたしかに、糖質を制限し始めてから明らかに虫歯は減った。出版されたのは1939年。80年の経過を感じさせない。こういう本のことをクラシックと呼ぶのだろう。(『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』という題で2010年に日本語版がドロップされているようだ。)

健康や栄養に関する言説は混沌を極めている。考えられるほぼすべての説が入り乱れており、それぞれの論者が自分こそは正しいと主張している。しかし、小麦粉についていい話を聞いたことがない。この時期に多くの人々を苦しませる花粉症をもたらす原因の一つとも言われている(たとえば宮澤賢史、『医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」』)。花粉症に罹っている人たちが真っ先にするべきことは糖質の過剰摂取をやめること、特に小麦を避けることである。(小麦がここまで敵視されている最大の理由は20世紀後半の品種改良。その影響を受けていないスペルト小麦はよいとされている。)今日の昼食はそれを踏まえた上で、池袋の楊3号店で汁なし担担麺を注文した(いや、めっちゃ小麦粉ですやん)。おいしい。3号店でいつも腕をふるっている料理人さんは汁なし担担麺を作るのがあまり上手ではなかったが、ある時期から技量が向上し、2号店と遜色なくなった。

13時半過ぎに市場前駅。IHI STAGE AROUND TOKYOの場所を把握。開場が17時、開演が17時半なのにこの時間に来たのには二つの理由がある。一つは万が一の事態(電車が止まる等)に備えたかった。もう一つが、何時間か労働をする必要があった。MIFA Football Parkというフットサル場に併設されたサテン。アイス・コーヒー。会社のラップトップを開く。カウンターの席。椅子が低すぎる。フットサルをやっている子供たちの母親たちとおぼしき集団が後ろの長机でワイワイやっている。うざめ。そういう場所なのでしょうがない。Tame Impalaさんの“The Slow Rush”を聴く。非常にドープなアルバム。労働を完了させてサテンを出る。しばらく会場付近をウロウロする。空間がだだっ広い。建物が密集していない。余裕がある。この近くに住んでいればジムに入らなくても好きなだけジョギングが出来る(ジョギングは筋肉とテストステロンを低下させるので私は滅多にやらないが)。一口に東京といっても広いんだな。

開場予定時間は17時だったが、16時45分にロビーまで入れるようになった。中の掲示で公演の長さを知る。
上映時間
1幕:1時間30分
休憩:20分
2幕:55分
約2時間45分
ロビーでプロテイン・バー(Rise Bar, The Simplest Protein Bar, Almond Honey)を食べる。私はiHerbでプロテイン・バーを色々と比較したが、原材料に関してはコレが圧倒的に優れている。アーモンド、はちみつ、ホエイ・プロテイン・アイソレート。何と三つだけ。お腹も空いていないし、夕食はコレだけでいいかなと。ロビーの座席表。自分のチケットと照合。田村芽実ファンクラブ事務局さんがとてもよい席を恵んでくれたことを知る。4列目の中央付近(最後部が32列)。すぐ後ろが通路。実際に座ってみるとそれはもう明らかに良席だった。これはやばいなと。これ以上前だと近すぎて却ってステージが観づらそうという絶妙な塩梅。整体によってパンダさんパワーはMAXだし、席はステージに近いしで、開演が楽しみで仕方なくなった。このワクワクする感覚は横浜F・マリノスの試合前にもあるのだが、Hello! Projectで味わうことは減ってきている。これからどんなスペクタクルが展開されるんだろう、という純粋な期待。客席が回るってどういうこと? いや、言葉の意味としては分かるんだけど。実際どういう感じなのか、想像がつかない。

開演してすぐに私は圧倒された。体験したことのない没入感。我々が観ている場所も演出の一つに組み込まれている感覚。冒頭からガンガン回る客席。(一つ一つの席が回るんじゃなくて、全体が時計回りと反時計回りに動く。)自分で顔を動かさなくても、視点が勝手に物語の中心に移動するんだよね。こんな会場があるんだな。IHI STAGE AROUND TOKYO。一度、体験してみる価値があるよ。観る前はチケット代が高いと思っていたが、値段に納得するのに時間はかからなかった。まずこの会場と席の時点で数千円で済むはずがないし、ミュージカルそのものも相当な労力をかけて作り上げられているのが伝わってきた。私はミュージカルのことはよく分からないが、おそらくこういうのが一流のミュージカルなんだろうなと思った。こういう経験を出来るのは大きい。要所で繰り広げられるダイナミックなダンスは動きが揃っていて、鳥や魚の集団移動を見ているようだった。衣装も手が込んでいた。移民役の男性たちが着ているデニム上下がカッコよかった。自分も上下でデニムを着たいと思った。

田村芽実さんはヒロインだったので自ずと出番は多く、あえて注目する必要はなかった。物語に身を任せていれば田村さんのことを追うことが出来た。今回のミュージカルで私がちょっとびっくりしたのが、キスの頻繁さ。そんなにキスする必要があるのかというくらいにフィアンセ役の村上虹郎さんとキスをなさっていた。村上さんの欲望でどさくさに紛れて台本に書いてある以上にキスをしているんじゃないかと訝しがりたくなるほどだった。桐村里紗さんの『日本人はなぜ臭いと言われるのか』によると日本人が一般的に自分の口臭に無頓着なのは欧米人のように日常的にキスやハグをしないからと考えられている。舞台役者さんたちはそうはいかない。あれだけキスの機会が多いと口臭の予防には相当に念を入れざるを得ないだろう。個人のエチケットを超えてもはや職業的な義務の領域。なお、同書では口腔ケアに有効な栄養素として
・ビタミンC(炎症→歯周病の元になる活性酸素を抑える)
・マグネシウム(体内のカルシウムのバランスを調整し歯石の沈着や歯槽骨の脆弱化を防ぐ)
・フィトケミカル(抗酸化、抗菌、消臭)
・食物酵素(口臭元のタンパク質分解)
が挙げられている。

私は物語にはそれほど引き込まれなかった。開演前に横の若い女性が読んでいた冊子(おそらく公式パンフレット)に田村さんのインタビューがあった。横目でちょっと覗いたら(覗くな)マリアの悲しみを歌で表現したい的な言葉が載っていた。私がHubert Selby Jr.さんやDonald Goinesさんを愛読して麻痺しているのかもしれないけど、そんなに悲しい話には思えなかったんだよな。主役の二人は恋愛を楽しんでいるわけで、悲劇って言ってもさ。知れてるじゃん。それに、たしかに人は死ぬんだけど、話としてはキレイで、ドロドロしていなかった。麻薬が出てこないしさ。もちろんストリートの現実を描くのは主眼ではなく、民族の壁を超えた純愛が物語のテーマなんだろう。だからこそ広く民衆に支持される有名なミュージカルになったんだろう。

田村芽実さんがご出演されていなければ私はブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』を観ることはなかったし、IHI STAGE AROUND TOKYOに足を運ぶことも一生なかったかもしれない。田村さんが私をこのミュージカルに、この会場に導いてくれた。今日の観劇は私が今後ミュージカルを観る上での一つの尺度になるだろう。そんな貴重な経験をさせてくれた田村さん。私をココに連れてきてくれてありがとう。