2023年6月19日月曜日

KissBee24時間LIVE ~5人は地球を救う?~ (2023-06-10)

歌舞伎町にいると落ち着かない。あの独特の、居心地の悪さ。私は休日に新大久保のネパール料理店で昼食を摂ってから新宿の紀ノ国屋書店まで歩くときがある。その度にこの辺を通る。新大久保とも、新宿駅の逆側とも違う。三、四ヶ月前の話。通りがかったラーメン屋の中をふと見ると、目つきの悪いいがぐり頭の中年男性と目が合いかけた。同じような風体の紳士たちが一堂に会していた。十人以上はいただろうか。池袋でこんな光景を目にすることはまずない(最近サンシャインのクルーズ・クルーズで怒羅権の喧嘩があったが)。これも同時期。私の前を歩いていた紳士が駐車場に入るために右折する自動車にはねられるのを見た。風船で出来た人形のようにふわっと宙を舞う紳士。自動車を前にすると人間の身体はこんなにも無力なのか。運転手は駆け寄って声をかけた後、小走りで近くの交番に向かっていた。彼がそのまま逃げる。もしくは看病をする振りをして負傷者を車に乗せ、適当な場所に移動する。負傷者は後でどこかに捨てる。そういったことが起きていたとしてもこの区域では驚くに値しなかったのかもしれない。誰も騒ぐどころか殆ど関心を寄せていなかった。クラクションも叫び声も衝突音らしい衝突音もなかった。倒れ込んで顔を歪める男性。道を挟んで一部始終を見ていた数名の警備員も無反応。かくいう私もただ狼狽するだけだった。

たしかに言った。30分のリリース・パーティや対バンでは物足りない。まとまった時間のコンサートが観たいって。そうは言ってもさ。コレはさすがに極端だ。なんだよ24時間ライヴって。(ちなみに前にも書いたが公演のことをライヴと言うのは和製英語である。ライヴ・ハウスも和製英語である。)正気か? どういうことなんだよ。なんと昨日の23時半に開演し、今日の同じくらいの時間までぶっ続けでコンサートをやっているらしい。流石にメンバーさん5人全員が常に出ずっぱりというわけではない。ソロやユニットのセグメントがあるし、今朝6〜7時半にはKissBeeではなくゲストで呼ばれた三つの集団がステージに立っていたようだ。だから多少の休憩は出来たかもしれないが、まとまった睡眠は取れていないだろう。タイムテーブルでは昨日の23時半からいきなり90分ぶっ続けのコンサートだった。それだけでいいじゃん。観たくはあったが、私にとっては寝ている時間。最初の90分だけで帰るにしても終わったら1時。終電はなくなっているだろう。体内時計がずれて土日に引きずりそう。ということで回避。9時45分からのタイム・スロットに入ることにした。

私にとって歌舞伎町自体がまずアウェイ。会場の新宿WALLYも初めて入る。もちろん現場に知り合いどころかKissBeeに少しでも興味のある知り合いが一人もいない。まず階段を下りて入口がパッと分からず気後れする。左にあるでかいスライド式の扉が入口だった。ドリンク代いくらですか? 600円です。お目当てはどちらですか? はい? お目当ては? あ、KissBeeです。(KissBee以外が目当てで来ることがあるのか? ゲストの外部集団の出番はもう終わっているし。)右手の甲にスタンプ。薄い。ウェット・ティッシュで拭けば簡単に消えそう。500mlペット・ボトルの水を取る。受付の青年はマスクをしているが何も言われなかったし、貼ってある注意事項をざっと読んでもマスクのことは書いていなさそうなのでそのまま入る。観客はもちろんKissBeeの裏方も含め、過半数の人々がマスクはしていなかった。辛気くさいカンセンカクダイボーシのためのお願い(という名の事実上のさまざまな強制)がなく、本当にコヴィッド前のようなおおらかで自由な空間。

入場してすぐは段差のある位置を選んで立っている紳士たちで割と混んでいたが、前方にはまだまだ空間がある。すみませんと言って前に進ませてもらう。右寄りの十分近い位置を確保。前に何人かいるけど隙間があるので視界はよさそう。程なくして登壇するKissBeeの淑女たち。いつもうらきすで観ているあの人たちだ! という新鮮さがまだ自分の中では先立つ。部屋のBGM的にいつも流している。生で観てもカワイイな。特に藤井優衣チャン。数メートルの距離で観るとその眼福ぶりが際だつ。顔面国宝を自称なさるだけある。隙のない造形。好きになっちゃう。メンバーさんの衣装は寝間着っぽい感じ。上はそれぞが違う種類のKissBeeの白Tシャツ。なので肌の露出はそんなになかったが、Tシャツのサイズが大きいため、優依チャンは腕を横に上げる度に奥からワキがちら見えしていた。この時間の演目はTwitterで募ったリクエストに応える。ただのリクエスト・セグメントではなく、マシュマロ大食い対決をしながらの。KissBeeの5人対フロアから立候補+じゃんけんで選ばれた5人のオタク。ステージの左右にテーブルと椅子が用意されている。曲をやる度にフロアから見て左端にKissBeeの誰か、右端にオタクの誰かが椅子に座り、テーブルに置かれたバケツに入った大量の(たしか3キロだか4キロあると言っていた)マシュマロを食べる。味変用になぜか椎茸が入っている。KissBeeもオタクも一曲ごとに選手交代。マシュマロを食べているメンバーさんは曲には参加しない。つまり曲が変わる毎に誰かが抜けているわけだが、KissBeeの淑女たちは混乱する様子もなくさも当たり前のように歌って踊り、曲中に左右の早食いの進捗を確認して笑ったりコメントを挟んだりする余裕も見せていた。山崎瑛麻チャンはこの24時間LIVEが始まってからオムライスおにぎりを一つしか食べていないからイケると思う的なことを言っていた。空腹状態でマシュマロのドカ食い。身体に悪い要素しかないが、若くて強いから大丈夫なのだろう。オタク・チームにも19歳の青年がいた。大江れなチャンがマシュマロのことをマショマロと言い、ショの人ですか? 昭和の人、おじいちゃんおばあちゃんみたいと大受けする篠原ののかチャン。5番勝負の後にワン・コーラスだけオケを流し、KissBeeの5人全員対オタク二人による延長戦も行われた。オタク・チームの勝利。大江れなチャンが不正行為をしていたことを白状。マシュマロを手で下に押し込んでいた。それで一時はかなりKissBee側のマシュマロが減ったように見えたが、時間がたつと(潰れたマシュマロが膨らんで)戻ってきた。優衣チャンは口にマシュマロを詰め込みすぎて涙ぐんでいた。平和でシュールな時間。あっという間に終わった。すごくいい雰囲気。メンバーさん、裏方さん、支持者たちがこれまで作り上げてきた風土。一旦捌けて、ちゃんとした(?)衣装に着替えてステージに再登場したKissBeeから重大発表。新メンバーが決まった。加入するのは二名。ここに来ている。お二人が登壇。吉田琴音チャン、森元あやのチャン。そして10月16日(月)に新メンバーを加えた7名で単独コンサートが決定。渋谷デュオ。この後KissBeeの5人は対バンに移動するが、これから新メンバー二人の無料特典会を開催する。もちろん私は参加せず、そそくさと後ろの出口へと向かった。

歩いて新大久保。ラトバレ。ランチのAセット(ダル・バト)JPY550、スクティJPY780、焼酎グラスJPY350。夜の時間はエニタイム・セットというのが昼のAセットにあたる。JPY100だけ高くなる。エニタイム・セットだとカレーを選べる。マトンを選ぶのが定石だが、ラトバレに限って言えばチキンのほうがクオリティが高い。この店を『ルポ新大久保』(室橋裕和)で知ったのが2020年9月18日(金)。この本に出てきたネパール人はあまりお金がないからAセットも毎日は食べられないと言っていた。新横浜へ。タリーズでホット・コーヒー(S)。足が疲れた。立ったり歩いたりしているだけで足に違和感。少し痛みもある。前にもこうなったことがある。右足小指に痛みがある。それが原因でバランスが崩れているのかもしれない。日産スタジアム。横浜F・マリノス対柏レイソル。キック・オフ(16時)の1時間以上前にもも・クロの淑女(高城れに氏)が登場。盛り上がってますかー? と我々に問いかけるが、この時点で盛り上がっているわけがない。盛り上がってないでしょ、という冷静な指摘が近くから聞こえてきた。それにな、高城さんな、俺たちは盛り上がるのを目的に来てンじゃねえんだわ。フットボールを観に来てンの。この違いが分かる? と言いたいところだが、結果としては死ぬほど盛り上がった。これほどまでに劇的な試合を観た記憶がない。なにせ、後半45分の時点で2-3で負けていたのがアディショナル・タイムで2点返して4-3で勝ったんだよ。しかも決勝点を決めたのが、去年7月の右膝前十字靱帯断裂からリハビリを経て復帰したばかりの宮市亮さん。叫んだ。叫んだ。叫んだ。右の紳士とハイタッチをした。抱き合った。左の紳士、後ろの紳士、左後ろの紳士とハイ・タッチをした。泣いた。私を含め普段はチャントや歌に参加することは稀なバックスタンド民が、最後の方はみんなゴール裏と一緒に歌っていた。歴史が作られるのを目撃した、いや歴史の一部になったという実感があった。あれは紛れもなく本物の熱狂だった。試合後に喜田拓也さんや水沼宏太さんが、これまでに体験したことのない音だった、地鳴りのような音がした、と4点目が決まったときを振り返った。瀬戸うどん。とろ玉ぶっかけ(冷)+ちくわ天(半)+とり天+牛肉コロッケ。JPY810。

KissBeeは22時までコンサートをやっている。右手の甲にまだうっすら残るスタンプを見せれば追加料金なしで(ドリンクを買い直さずに)会場に入れる。でもこのまま帰るか、と私は考えた。あまりにも劇的な試合の余韻を噛みしめたかった。家に帰って、今日中にまたDAZNで試合を観直そうか。しかし、気が付くと私は新宿三丁目で降りていた。駅構内で柏レイソルのシャツを着た青年が私を追い越し、殺意を帯びた目で振り返ってきた(私はマリノスのシャツを着たまま移動していた)。私はニヤニヤが止まらなかった。Speir_sさんの試合後雑談スペースを聴きながら新宿WALLYへと向かう。20時58分にフロアに入る。朝の二倍くらい人がいるが、前のフロアに行くことが出来た。やや右寄り。この24時間LIVEも21時から22時のKissBee全員集合!ラストスパート!のセグメントがフィナーレ。おそらく今が一番人が多いのだろう。朝よりも格段にフロアのノリが加速していた。一人のオタクが真ん中に立ち、それを他のオタクたちが取り囲んでグルグル時計回りに動くという地下っぽい集団的な動きが私のすぐ近くで何度も繰り広げられた。最後の曲ではフロアのオタク同士みんなで肩を組んで左右に動くやつをやった。コレは私も入れてもらった。左の紳士と肩を組もうとしたら、やりますか? という感じで目配せをしてくれた。KissBeeの支持者は優しい人が多い印象。KissBeeのメンバーさんたちの衣装は朝と同じパジャマ風に戻っていた。『どっきんふわっふー』の倍速ヴァージョンという珍しいものを聴くことが出来た。KissBeeのコール文化はHello! Projectのそれとは少し違うし、複雑だ。だからあまりコールには参加出来なかったが、“Just Sing!”の、いつだって忘れないよ(ないよー!)、変わらないものがあるよ(あるよー!)は思いっきりやることが出来、嬉しかった。終演後には出口で待ち構えるKissBeeの5人とハイ・タッチをさせてもらえる。無料で参加できるのにこのサービス精神。至れり尽くせり。この半年くらいうらきすで観てきたあのメンバーさんたちをタダで触らせてもらえるなんて。終演したら休憩時間なくそのままハイ・タッチが始まった。メンバーさんたちにとってはかなりハードだったに違いない。しかし間近で対面しても、異常長時間労働の後であることを感じさせない輝きがあった。生半可な人たちではない。10月の単独コンサートは月曜だが午後半休を取って必ず行きたい。日産スタジアムで左にいた紳士、右にいた紳士、真後ろにいた紳士、左後ろにいた紳士、KissBee篠原ののかチャン、山崎瑛麻チャン、藤井優衣チャン、大江れなチャン、中山星香チャン。1日で計9人とハイ・タッチした。もはや陽キャである。家に帰ったらグッタリ倒れ込むように寝た。