2018年3月4日日曜日

First Blossom (2018-02-22)

「そこ座っていいでしょ」
「先にお越しになったお客様がいらっしゃいますので。その後にご案内します」
「いやだからそこ空いてるでしょさっきから」
「順番にご案内しますので。お待ちください」
「あーすげーイライラする」

Denny's ThinkPark店(大崎)。粘着する労働上がりのおっさん。スーツ。連れと二人。毅然とした対応の店員。たぶんおっさんより年上。たぶん店長。ねえねえおっさん。ココ東京。付近に他の店がねえ田舎とちげえんだよ。ここは何でもあんだろ。数分歩けばさ。わざわざ選んでここに来てんだろ? イヤだったら黙って他の店に行けや。それともDenny'sしか見えねえのか? てめえの眼には。労働が終わったらここにしか来られないようにプログラムされてんのか? 猫まっしぐらかよ。緊張が走るレジ前。間隙を縫って会計を完了させるM。

「他の店に行きゃいいのに。何であそこまでしてデニーズにこだわるんだよ」とC。
「きっと過酷な労働で心を蝕まれているんですよ」と、先ほど店の中で放ったtweet()とは裏腹に寛容さを見せるM。

夜行バスで名古屋に戻るMと別れるC。大崎駅までの間に、あるわあるわ。居酒屋。中華料理店。その他。そっちに入っときゃいいじゃん。無駄にカリカリしやがって。呆れる。



「小野さん、泣いてました?」
「いや?」
「ボクんとき、もうボッロボロに泣いてて…」
「普通でしたね」
「笑ってましたか」
「そうですね。ボクんときは最後の最後だったんで」
「じゃあ泣きやんだんですね」

「握手が早いから何も話さなくて済む」と嬉しそうな紳士、「オレつばきオタク辞めます」と興奮気味にお知り合いに告げる(何やら連番していた奴らと一悶着あったらしい)有名おまいつなどを横目に見ながら、後ろから2列目にいたMが握手から抜けてくるのを待つC。彼にとっては(たしか)三回目だった。初めは、2016年12月29日。池袋。サンシャイン噴水広場。次が、2017年1月29日。渋谷。Mt. Rainier Hall。そして、今日。ディファ有明。何がって、小野瑞歩さんが涙を流すのに居合わせた回数である。Cは個別握手会(2017年4月30日)で、泣き顔が好きだと小野さんに伝えたことがある。「ありがとうございます。でも笑顔でいたいです!」というのが彼女の答えだった。個別握手会というものに参加するのが初めてで、慣れていなかったC。ちょっと変なことを言って困らせてしまったかもしれない。後からやや申し訳なく思った。一般的には小野さんの持ち味は笑顔だ。彼女に限らずアイドルと呼ばれる人たちは普通そうだ。同じグループに所属する小野田紗栞さんはご自身の笑顔をハッピースマイルと称し、売りにしている。その小野田さんが、小野さんの笑顔が素敵すぎて私のハッピースマイルが目立たなくなるという苦情をバースデーイベントに寄せるほどのまばゆさが、小野さんの笑顔にはある。それを踏まえた上でも、Cにとって彼女が泣いたときの美しさは特別なのである。

コンサートの終盤にはつばきファクトリーのおそらく全員が感極まって涙ぐんでいた。小野さんも例外ではなかった。この一年で一番よかったことはメンバーとの距離が縮まったこと、そしてファンの皆さんとの距離が縮まったこと、とアンコール明けに涙ながらに語った。ここまでなら、また泣いてるな、で終わりだった。今日は異なった。すべての演目を終え、最後にステージから捌けたのが小野瑞歩さん。それまでは泣いていた彼女がくるっと回って、最後の瞬間にとびっきりの笑顔を見せたのである。双眼鏡を使っていたおかげでとらえることができたこの一瞬が、Cにとってはこの公演のハイライトだった。

18時半に始まったコンサートは20時4分に終わった。この後の握手会では「最後の笑顔がよかった」と小野さんに言おう。Cはそう決めていた。「泣いてたね」なんて言うのは野暮すぎるほどに小野さんも、それ以外のメンバーも、泣いていた。小野さん以外の8人には「ツアー行きます」。そうしよう。初めの6人には予定通り「ツアー行きます」と伝えた。7人目。小野瑞歩さん。用意していた言葉を発しようとするCの想像を超える泣き方をしている。絵に描いたような号泣。涙の滴がぽたぽたと瞳から頬に落ちている。Cは何も言えなかった。「ありがとうございます」と絞り出すように言う小野さんを通過したCは、残る二人にも言葉はかけられなかった。



「明日から仕事で海外に行って、19日に帰国して、その次の20日に川崎でイベントあるでしょ。それに行くつもりだから、楽しみにしてます」
「ディファは来ますか?」
「チケット取れなくて…」
「あ、そうなんですか…」
「うん、だから、行け…ない…かも」
「そうなんですね…お仕事頑張ってください!」

2018年2月12日(月・祝)バレンタインイブイブ企画!ハッピーバレンタインin飯田橋!! 個別握手会 小野瑞歩 2部



つばきファクトリーチケットのご注文

2018年02年22日(木)18:30 ディファ有明

18,521円(1枚)

- 内訳 -
チケット 15,000円(1枚)
安心プラス 1,620円
取引手数料 810円
送料 510円
決済手数料 581円

15,000円でも高い。いや、5列目とかなら分かる。でもさ、決していい位置ではない。「18~19列通路席のいずれか」。いちばん後ろが34列。通路席というのは価値が上がる要素ではあるが、真ん中付近の席に定価の3倍近くの値段。しかも何だこれは。送料と取引手数料は分かるにしても安心プラス? 決済手数料? 何で15,000円のチケットが18,521円になるんだ。2割以上も増えてますやん。何ですのんこれ。転売クソ野郎がアップフロントから6,000円以下でゲトったチケットに1万2千円以上を乗っけて払うのは気分がいいはずがない。元々はファンクラブ先行受付で外れた時点で、この日のコンサートに行くのは諦めるつもりだった。ファンクラブ先行と称しながらURLさえ分かれば誰でも申し込めた。それで大量の転売クソ野郎たちが申し込んだはずだ。オークションに出てもどうせ高騰する。そんなチケットは買いたくない。行けなかったとしても、つばきファクトリーの現場はこれだけじゃないんだし。Cはそう思っていたが、小野さんご本人からああやって残念がられると、何とかしてでも行かなくてはいけない。もし2月22日にディファ有明に行かなかったら、あのときの彼女の反応が脳裏に浮かび続け、何年も先まで後悔することになるだろう。



「21世紀サバイバル 背に腹は代えらんねえだろ シャレになんねえよ実際」
K DUB SHINE、『トワイライトゾーン』



上高田の転売クソ野郎が送ってきたチケットに印字してある席は、18列目の右端だった。これは「18~19列通路席のいずれか」という奴による記述から考えられる最悪の席だった。チケットを見たときのCは、あの男(顔も知らねえし女かもしれないけど)に一杯食わされたという感じだった。列は18よりも19の方がいい。なぜなら19列から段差が始まって視界がよくなるからだ。そして通路席と聞いてCの頭に端っこという可能性は浮かんでいなかった。左から三つブロックがある。通路席といったら左と真ん中の間、もしくは真ん中と右の間のこととばかり思っていた。そうか、端っこでも「通路席」というのか。言われてみたらたしかに通路だ。出品者は嘘をついていない。ある意味、感心した。開演前、横に来たMと一緒に双眼鏡でおまいつを観察し、報告し合う。前方に二大巨頭がいる、と興奮するM。

右端は、Cが思っていたよりはよかった。前にいた小野田紗栞さんを応援するTシャツを着たややふくよかな紳士が大きく右にずれたことで視界がよくなったからだ。その紳士は完全に自身の席を離れて横の通路で観ていた。係員がたまに通るものの一度も注意しなかったので、その快適な状態が最後まで続いた。もう一つの理由としては、ステージの右側に小野瑞歩さんが来ることが割と多かったからだ。双眼鏡を使って観るメンバーを絞れば、いい画は得られた。もし小野瑞歩さんがいなければCが今日ここにいなかったのは間違いない。この特定のコンサートに限らず、つばきファクトリーの現場に足を運んでいなかったかもしれない。Juice=Juiceばかりを観ていた可能性が高い。だから、今日のようにステージとの距離がある公演では双眼鏡で小野瑞歩さんを中心に観るのがCにとっての正解なのだ。そうすることで多少コンサートの全体像を把握できなくなったとしても仕方がない。それよりも小野瑞歩さんの細かい表情や動きを見逃さないことの方が重要なのである。Cにとっては。そうやって各自が好き勝手な見方をすればいいんだ。そういうもんだ。

つばきファクトリーの出で立ちは、前半が高島屋の包み紙のようなワンピース。後半が日本有線大賞の時の白い上下。このコンサートのために新しく作った衣装はなかった。アンコールでは後半の衣装から上をTシャツに着替えて出てきたけど、グッズのTシャツだし衣装っていうほどのものでもない。高島屋の包み紙にくるまれて出てきた小野瑞歩さんの眼は少し潤んでいるように見えた。新沼希空さんも。その他にも何人か、開演前に泣いたような形跡があった。



前半と後半の着替えタイム中のトーク。
・岸本ゆめのさんはここ一年で三回、忘れ物をした。一回目は大阪から名古屋に行くときの、一時間くらいの新幹線。網棚にカバンを置き忘れた。カバンは返ってきた。大阪で受け取った。二度目はタクシーに携帯を忘れた。親切な運転手さんが戻してくれた。三度目も一時間くらいの電車。マネージャーに「絶対、忘れませんから」と宣言して網棚にカバンを置いたが、また忘れた。今度は戻ってこなかった。(その話を聞いて、えー誰が持ってるの~?と引き気味の他メンバー。)
・小野瑞歩さんは仙台のハロコンの日、寝坊をした。電話で起きた。親かなと思って携帯を見たら「小野田紗栞」と表示されていた。時間を見たらもう集合時間になっていた。やばいと思って起きて、自力で会場まで行った。(小野さんは)いつも集合時間の前に来ているので驚いた、と山岸理子さん。(Cはこの話を聞いて、一日の睡眠時間は4-5時間で最近は午前2時か3時まで起きていると小野さんが言っていたのを思い出した。2月12日の個別握手会。)
・浅倉樹々さん曰く、前にも話したことがある(おそらく2016年12月の研修会発表会)が、リリース・イベントでショッピング・モールに行った際、みんなおかずとご飯を食べていたのに自分だけご飯がなかった。するとまおぴん(秋山眞緒さん)が天津飯をおかずにご飯を食べていた。最近まおぴんは背が伸びているが、そうやって他人のご飯をいっぱい食べているからに違いない。



ルーレットを回してプレゼントをもらえるというセグメント。回す権利を得たのは秋山眞緒さん、新沼希空さん、小野瑞歩さんの三人。
・秋山眞緒さん。当てたのは一周年記念のフルーツ盛り合わせ。フルーツが大好き。つばきファクトリーは8人いるので奪われないように気を付けるという秋山さんに、まおぴんのものはみぃのものというジャイアン的な理論とグループの食事リーダーという肩書きを持ち出しておこぼれをもらおうとする谷本安美さん。じゃあぶどうを一粒だけあげると譲歩する秋山さん。
・新沼希空さん。ファンからの声援を独り占めできる権利を獲得。いいなぁと他のメンバーたち。新沼さんの一言を受けていっせいに歓声を浴びせる我々。
・小野瑞歩さん。あの人からのビデオ・メッセージを獲得。画面に出てきたのは清水佐紀さん。つばきファクトリー初の単独公演を祝福し、これまでの努力を労った後に、4月15日の高崎を皮切りにライブハウスツアーが始まることを発表。悲鳴をあげ崩れて喜ぶメンバーたち。

メンバーの声でスタートとストップのタイミングは決まってはいたが、物理的にルーレットを回しているわけではなかった。画面上で結果が出るだけだった。『スーパージョッキー』の熱湯風呂ルーレット並に出来レース感が強かった。



コンサートの完成度としては、決して高くはなかった。
・前半はどこかふわっとしていた。後半から一体感が出てきた。だからもう少し尺が長ければコンサートとしてはもっとよくなっていただろうと思う。次が最後の曲ですからのエーイングというお約束の流れが今日もあったが、普段はみんなそこまで本気でエーとは言っていない。でもこのコンサートに関してはこれでもう終わりなのかという物足りなさを感じた。単純に時間が短いというよりは、つばきファクトリーも我々もまだ完全に力を出し切っていない感じがした。公演後の握手会を削って曲数を増やしてもよかったかもしれない。(ただ、Cとしては涙をぽろぽろ流す小野さんと対面するという貴重すぎる体験ができたので、握手があってよかったと思ったが。)
・今日のセットリストは、つばきファクトリーとしてリリース済みの曲+未発表の一曲(たしかKOUGAさんが作曲した、何か昔っぽい曲)という構成だった。Hello! Projectクラシックスから数曲をカヴァーしていればもっと盛り上がっていたのは間違いない。カヴァーの威力はリリース・パーティで証明済みである。
・前述したように衣装が二つ、それも既存のものだけというのは意外性がなさすぎた。何か一つ、見たことのない衣装で楽しませてほしかった。
・演出がよくなかった。開演直前の音楽や映像には我々を盛り立てる要素がほとんどなかった。アルビ兄さんが前説をやった方がよっぽどよかった(別にコンサートにまで出てきてほしいという意味ではなく、あくまで例えばの話。)そして、何だ曲中に画面に流れていたあのスクリーンセーバーのようなやっつけの映像は。曲のテーマともリンクしていない。十分なお金や人員を割けなかったのか、それともディファ有明ではこれが限界なのか?

ただ、初めての単独公演としては申し分なかった。Good startだった。曲数や尺を含めて、あえてカヴァーを入れないことでHello! Projectの資産でドーピングをしない、今のつばきファクトリーの実力を出し切ったコンサートだった。ここまで出来る、そして同時にまだここまでしか出来ない。その両方が分かった。もっと重要なこととして、つばきファクトリーがこれからもっともっとよくなる。もっと大きな会場でも観客とのオートマティズムを作り上げて、かつての℃-uteやBerryz工房と比肩するグループになれる。Cは希望というよりは確信を持った。スキルがどうこうというよりは、ステージに立つ全員の立ち振る舞いや発言の節々から、ハートのよさを感じた。これからもつばきファクトリーを応援していこうと思える、そんな夜だった。


併せて読みたい:つばきファクトリー ワンマンLIVE ~First Blossom~