2016年5月3日火曜日

°CONCERTO (2016-04-30)

世界的なジャズ・ピアニストの上原ひろみさんは、アンソニー・ジャクソンさん、サイモン・フィリップスさんと組んだトリオ・プロジェクトで今までに4枚のアルバムを出してきました(それ以外にもアルバムはたくさん出されています)。最新作の“SPARK”は今年の2月に出たばかりです。私はまだ聴き込むというところまでは行っていません。今はその過程で、まさにこれを書きながらも聴いているところです。それ以前の3枚とはそれなりにじっくり向き合ってきました。いちばん多く聴いてきたのは“ALIVE”です。私のiTunesの再生回数を見たところ曲によって少なくて79回、多くて97回でした。そんなものかと思うかもしれませんが、私は年に何十枚ものアルバムと接します。中には1-2回聴いてそれっきりというアルバムもあります(それらの作品が決して悪いわけではない)ので、“ALIVE”を再生した回数は飛び抜けて多いです。上原ひろみさんの一番好きなアルバムを選ぶとなると“VOICE”と“Place to Be”と“ALIVE”の3枚で迷いますが、断腸の思いで一枚に絞るとなると“ALIVE”です。聴いてきた数もさることながら、このアルバムの曲が多く披露された上原ひろみさんトリオのコンサート(2014年12月の東京国際フォーラム)を2回も観る機会に恵まれたことで、私にとって特別なアルバムとなりました。

最高のアルバムだと初めから思っていたわけではありません。それどころか20回か30回くらい聴くまではよく理解が出来なかったのです。といっても私には残念ながら音楽の専門知識はないので(ピアノは子供の頃に習っていましたが今では音符も読めません)、そもそも音楽に詳しい方々がするような形で理解することは出来ません。プロではないトーシローの音楽ファンなりに、どういうアルバムなのかが分かってきたというか、表現されているものの輪郭が見えてきたというか、描かれている景色が見えてきたというか、そういう風に実感できるようになり始めたのが、20回か30回ほど聴いた頃だったのです。上原ひろみさんのいわゆる超絶技巧と言われる常人離れした手さばきや、感情を表に出して激しく鍵盤を叩く姿には、彼女の音楽をよく知らない人の心でさえ打つ力があります。しかしながら上原さんの音楽は決して分かりやすくはありません。複雑で、難しい。何かをやりながら聞き流して理解できる音楽ではありません。

4月9日に千葉県文化会館で開催された2公演に入った私は、℃-uteさんのコンサートツアー“℃ONCERTO”に対してやや否定的な印象を持っていました。℃-uteさんの美しさにはより一層の磨きがかかっていましたが、どうも曲目にしても演出にしてもぐっと来るものがなく、何か好きになれなかったのです。ですので、4月30日と5月1日に2公演ずつ、計4公演を観に行く前の私は、純粋に楽しみなだけというよりは、正直きついなというのが入り交じった気持ちでした。その気持ちに拍車をかけたのが(現在の競馬では拍車は禁止されているそうです)Twitterで目にした、チケットが娯楽道で叩き売りされているという情報でした。4月30日の私の席は25列と19列でした。娯楽道のサイトを見たところ、その辺のチケットは安いもので2,500円で売っていたのです。私が購入したファンクラブ価格は6,800円+手数料ですので、約三分の一でした。事前に予測が出来なかったことですが、結果だけを見ると初めからファンクラブで申し込まず娯楽道で買えばよかったという考えが頭をよぎってしまいます。

14時25分頃に中野サンプラザに着いたところ、開演まであと30分と少ししかないのに会場の前は入場を待つ人々の列でぎっしり埋まっていました。普通だとこの時間には入場列は落ち着いてスイスイ入れるのです。聞こえてきた係員の説明によるとどうやら準備に時間がかかって遅れているようでした。少し焦ったのですが、開場してからの列の進みは思ったよりも早くて、14時40分すぎには席に着くことが出来ました。開演は15時15分からになるというannouncementが流れました。普段ハロプロのコンサートは時間に非常に正確に執り行われます。私が行ってきた中だとJuice=Juiceのライブハウス(和製英語)公演で入場に時間がかかって開演が5-10分くらい遅れたことはありましたが、正式にannouncementを流して開演時間を延期するというのには初めて出くわしたかもしれません。

ハロプロ研修生の方々によるopening actが終わると、千葉県文化会館にいた「いっちゃん!いっちゃん!いっちゃん!(以下、繰り返し)」と曲の後にとてつもない声量で叫び続ける紳士がまた同じように叫んでいました。周囲の観客はこの異常な光景に明らかに引いていましたが、紳士が叫び終わるとパラパラと拍手が起きました。これは千葉では起きなかったことです。叫びの一生懸命さと、長年に渡りハロプロ研修生であり続けてきてデビュー出来るかが疑わしい一岡さんを推し続ける彼への敬意に、拍手を贈らざるを得なかったというところでしょう。あの紳士は一岡さんがハロプロの構成員としてどういう結果になると考えているのか、気になります。デビュー出来ると心から信じているのでしょうか? それともデビューの可否は彼の中では大きなことではないのでしょうか? いずれにしても立派です(皮肉ではなく)。ちなみに今のハロプロ研修生の中では私は小野瑞歩さんがいいと思います。YouTubeに公開されている自己紹介の動画によると杏仁豆腐とねじりきな粉がお好きだそうです。

15時の回を観ても、私が千葉県文化会館で抱いた本ツアーへの印象は刷新されませんでした。℃-uteが魅力的な集団なのはよく分かるのですが、目の前のコンサートにあまり入り込めないというか…違和感があるまま、時間が過ぎていく感じでした。何が具体的に気に入らないのか、どういうコンサートであればもっと楽しめるのか、自分でもよく分からないのです。

萩原舞さんが岡井千聖さんと一緒の部屋に泊まるときの話をされました:ホテルで岡井さんと一緒に寝ることが多い。岡井さんは寝顔がひどい。隣で寝ていて、目が覚めて目の前に岡井さんの寝顔があるとびっくりする。しかも目覚めが悪い。いつも二人は集合時間の10分前に起きて、5分前に布団から出る。ある日、集合のギリギリになっても岡井さんが起きないので起きるように催促したら機嫌が悪かった。後で謝ってきたので(起こしたときに感じが悪かったのを)分かってるんだ、と思った。

その話を受けて鈴木愛理さんがご自身の寝顔の話をされました:寝ている間、開くところがぜんぶ開いてしまう。鼻と耳は最初から開いているが、目と口も開いてしまう。恐竜みたい。母からもあなたの寝顔はダメだと言われる。移動中の車でマネージャーに寝顔の写真を撮られたことがあるが、フラッシュを焚いたこともあって物凄い写真になっていた。
移動で乗る新幹線がファンと同じになることがある。ファンが通路を歩く際に寝顔を見られたくないので、可愛い寝顔を作るというまとめサイトを見て、そこに掲載されていたtrainingを行っている。顔の筋肉を鍛えて、締めるための運動。だが、それを新幹線の中でやってファンに見られるのもまずい。「すれ違っちゃう問題ね」と話を拾った中島早貴さん。寝顔を見てファンをやめようと思ったとしても自己責任だよ、と客席に戒める。そこも含めて愛して欲しい、と鈴木さん。

アンコール後の中島さんのコメントが素敵でした:ゴールデンウィークはイベントやコンサートが盛りだくさん。ぜんぶ行くよと握手会で言ってくれた人もいて、ありがたい。そこまで行かなくとも、一日を℃-ute dayにしてくれるのもありがたい。コンサート中に歌った『ルルルルル』という曲に「大きな宇宙の星の中で 私と君とがキスをする 不思議」という歌詞があるが、たくさんの人がいる中で皆さんがここにこうやって集まっているのは凄い。そういうことをしみじみと語られていました。(鈴木さんが「なっきぃ、ポエマー?」と茶々を入れていましたが、ポエマーという英単語はなく、正しくはpoetです。)

岡井さんも中島さんと同じように来場者たちへの感謝を述べられていました:ここにいる人たちは嫌で来ているわけではないはず。楽しみにしてくれている人がほとんどだと信じている。そう思うと凄い。私たち5人が作るものをこれだけ多くの人たちが楽しみにしてくれている。(「岡ポエム?」とメンバーさんに冷やかされて「岡ポエムって言うほどでもないんだけど…」と照れていました。)

萩原さんは、外はポカポカなのに「やない?」を選んでくれてありがとう、と言って「おくない(屋内)」だとメンバーさんから指摘を受けて、会場がざわついていました。萩原さんは二十歳です。

15時15分からの公演は17時10分頃に終わりました。楽しいか楽しくないかで言えば、楽しいんです。でも私がハロプロのコンサートでたまに感じる、この世の喜びと楽しさをすべて凝縮させたような感情になれないんですよね。℃-uteさんのコンサートでそういう気持ちになっていた頃は、最初に℃-uteさんが登場した瞬間に何とも言えない高揚感があったんです。今回のツアーではそれがないんですね。5人のメンバーさんたちが℃-uteの一文字ずつ(ハイフン含む)の位置でポーズを決めてアルバム“℃Maj9”のイントロのアカペラ曲を歌う静かな始まりから一気に照明が明るくなって『男と女とForever』という始まり方なんですけど、「うわ、始まった! やべえ!」というよりは「アルバムのイントロのあれね」という感じで冷静に見てしまいました。もしかすると、コンサート用の耳栓をするようになったことで聞こえる音量が小さくなったのが原因かもしれませんが、もしそうだとすると、これまではただ単に大音量に興奮していただけなんでしょうかね? いや、でもそれはないな。正月のハロコンは耳栓を付けましたが心から楽しみましたから。

18時半から始まる次の公演までに晩ご飯を済ませておこうと思って中野サンプラザの付近を歩いて、PIZZERIA BAR NAPOLIに入りました。入ってから知ったのですが、15時から18時はハッピーアワーでいくつかの飲み物が500円から300円に値下げされていて、何とすべてのピザ(普段は1,000-1,500円)が500円になっていました。素晴らしい。カプリチョーザというピザにアンチョビを追加して、カンパリビアを飲んで1,020円。コンサートの合間にさくっと食べて飲むのに向いています。ハッピーアワーの制度を続けてくれるかぎり、今後もちょくちょく使うことにします。

18時半の回が始まる前に「演出の都合上、場内の非常灯は消灯させていただきます」というannouncementを聞いて「韻が固い」と思いました。Opening actで登場されたハロプロ研修生の皆さんが、行ってみたい国とその理由を添えて自己紹介をされていました。堀江葵月(きづき)さんがベトナムに行きたい、なぜならフォーを食べたいからと言うと即座に客席の皆さんは「フォー!」という歓声を上げていました。ハロプロのファンたちの瞬発力がよく発揮された場面だなと思いました。ファンのアドリブによるフォー!のくだらなさに心なしか研修生さんたちの表情が緩んだように見え、客席も平和な空気になって、とてもいい雰囲気でした。曲の後には例のいっちゃん紳士がまたもシャウトを披露されていて、温かい拍手を受けていました。

握手会で愛理の血管が好きだと言ってくれる人がいるという話を鈴木さんがされていました。あごの下にある血管らしく、本人も見たことがないし、一緒に話していた矢島さんも「長い付き合いだけど分からない」と感心されていました。該当の部位がステイジの画面に映るように鈴木さんが上を向いたのですが、そのときに鼻の穴が露わになったのを本人が気にしないので矢島さんが画面を確認しながら鈴木さんの鼻を手で隠していたのが面白かったです。鈴木さんがご自身の腕の血管は認識しづらくて、注射をする度に3回くらいやり直されるとおっしゃいました。対照的に矢島さんは血管が分かりやすいという話になりました。矢島さんがカメラに腕を向けると、たしかに2本の血管がはっきり見えていました。「絶対ここかここじゃん」と鈴木さんが興奮気味に指さすと「あ、本当だ。早貴でも打てそう」と中島さんが割り込んできましたが、矢島さんは笑いながらそれはやめてと拒否していました。

岡井さんは、人の身体の角張ったところが好きで、鈴木さんの肩の骨が出っ張っているところが好きでよく噛みつくという話をされていました。骨を見て噛みつきたくなるのであれば犬と一緒だ、うちの犬がそうだと矢島さんがニコニコしながらおっしゃると、岡井さんは苦笑いをされていました。

アンコール明けの曲が新曲の『何故 人は争うんだろう?』なのですが、この曲の鈴木さんが圧巻でした。冒頭で鈴木さんが歌い始めたときのバイブスがやばいです。ビートを完全に乗りこなされていますし、フローがあります。曲を完全に手懐けています。聴き惚れてしまいます。ドープなフローで歌詞のワックさを打ち消しています。岡井さんもいい感じです。この曲は歌詞がどうのというよりは鈴木さんと岡井さんのフローを味わう曲なんだなと思いました。

最後のしゃべりで岡井さんは、女の子にキャーと言われる存在に自分たちがなるとは思わなかったと述べられていました。私からすると憧れの存在は長澤まさみさんや広瀬すずちゃんだけど、皆さんとってそういう存在になれているなら嬉しい、まあジャンルは違うけど…ということをおっしゃってから「(女性ファンがキャーと言うのは)ほとんどは愛理と舞美ちゃんだけど…あ、2人ごめんね」と中島さんと萩原さんをオチに使って笑いを取ったのはさすがでした。中島さんの「分かってたけどさあ」という返しも笑いを増長させました。

矢島さんは「まだ昼のような感覚で、あと一公演できる気分だ」というようなことをおっしゃっていました。2公演を観るだけでも決して楽ではないのに、やる側でそんなことを言えるなんてどんな体力なんだ…と唖然としました。1日に2回の公演を観るというのは今までに何回も経験してきたのですが、この日はなぜかいつもよりも疲れました。ただ、翌日も2公演が待っていたので、気は休まりませんでした。繰り返しますが、楽しかったんです。でも、このツアーに関してはもうお腹いっぱいな気がしてきました。ただ明日の1公演目はいい席が当たったし、この連戦を乗り切ろう(乗り切るというのも変な話ですが)という気持ちでした。