2016年5月5日木曜日

°CONCERTO (2016-05-01)

5月1日は昼公演(開演14時半)の席が6列目だというのが私にとって発奮材料でした。4月30日の席あたりのチケットが娯楽道で2,500円くらいで売っていたと言いましたが、6列となるとさすがにそうはいきません。この席で定価以下はあり得ません。実際に確認はしていませんが、1万5千円くらいしていたでしょうね。まだ6月20日の武道館のチケットは受け取っていませんが、私がこのツアーに入る7回の中で一番いい席であるのに疑いはありませんでした。夜公演(18時)は27列という冴えない位置なので、ステイジから至近距離で℃-uteさんのお姿を目に焼き付けられる最後の機会でした。

その機会を楽しみにしていましたが、開演前から雲行きが怪しくなりました。私の2列前に、髪を赤く染めて耳にピアスを開けた鈴木愛理さんファンの青年と、茶髪の岡井千聖さんファンの青年がお越しになりました。ある程度の現場経験を重ねてくると、見ただけで分かるんです。こいつは迷惑オタクだなというのが。自分が応援するメンバーさんが歌っている最中、常に飛びまくる。推しジャンと呼ばれるこの行為には賛否がありますが、後ろの人からすると視界を塞がれるのは事実です。もちろん、ジャンプすることが即迷惑ということではありません。曲や場面によってはジャンプした方がいい場面もあります。でも迷惑オタクというのは自分が推しているメンバーさんが歌っている最中はのべつ幕なしに飛びまくるんです。要はやり過ぎなんです。もう一つの特徴として、所持するケミカルライトの数が多くサイズが大きい点が挙げられます。片手に三つも四つも光る棒を持っている人をよく見ます。そういう人々や行為をストリートファイターIIのキャラクターの名前を取って「バルログ」と呼ぶことがあるようです。実際に経験してみるとよく分かりますが、バルログのすぐ後ろの席になると視界の塞がれ方が尋常ではないですよ。特に段差がなく人が密集したライブハウス(和製英語)で前がバルログだと地獄です。私はBuono!さんのコンサートをライブハウス(和製英語)で観させてもらったとき、汗っかきなバルログが目の前にいたことがありました。飛ぶ度に汗が飛んできた上に、着地のときに足を踏んできて謝罪もないし、異臭を放っていました。こういった迷惑オタクは自分自身が目立ちたい、自分のことをステイジのメンバーさんに見てもらいたいといった欲望を満たすことで頭がいっぱいで、それさえ出来れば他人のことなんてどうでもいい人たちです。おそらく日頃の生活からそうだから、生き様が顔に出るんでしょうね。迷惑オタクというのは、顔からして迷惑オタクなんです。何かそういう顔なんですよ。だから二列前の赤毛と茶髪の姿を後ろから見た途端、すぐにピンと来ました。

私の勘は当たりました。コンサートが始まった直後からお客様自身による過度のパフォーマンスが始まりました。赤毛のオタはどこで調達したんだという通常の1.5倍くらい長いケミカルライトを3-4本片手で持って、もう片手にはまた違うケミカルライトを3-4本持っていました。茶髪のオタも似たような感じでした。その状態で、赤毛は鈴木愛理さん、茶髪は岡井千聖さんが歌っているときに両手を高く挙げて延々と飛び跳ねるのです。鈴木さんも岡井さんも歌唱力が高く歌割りが多い方ですので、ほぼ常に赤毛と茶髪のどちらかが飛び跳ねていると言っていいくらいです。私とステイジの間に挟み込まれたその光景は、汚く、下品で、利己的でした。運営の職員が3回くらいやってきて注意していました。二人はその場では聞いて従う素振りを見せたものの、しばらくすると元通りの過剰なスタイルに戻していました。言うことを聞かない彼らを見て、もっと暴力的に制圧してほしいと思ってしまいました。アメリカが世界の警察官としてならず者国家(rogue states)に戦争を仕掛けるべきだというネオコンのような考えになりました。

2013年の8月にTwitterのダチからチケットを譲り受けて100%(ペクポセント)という韓流男性アイドル・グループのイベントに足を運んだことがあります。ファンの皆さんはケミカルライトを頭の横に添える程度で高く掲げていなかったですし、推しジャンという風習がないらしく誰も飛んでいませんでした。視界が良かったです。もちろん観客が女性ばかりで自分より背が低い人が多かったのもありますが、それを差し引いても飛びまくる認知厨やピンチケ的な人がいなくて、みんなで平和的にステイジを楽しむ配慮が根付いていると感じました。ハロプロもそうあるべきだと言っているわけではありません。何が正解なのかはその現場によって違うでしょう。同じ現場でも状況によって違うでしょう。あんまりお行儀がよくなりすぎても、アイドル現場としては熱が失われてしまいますしね。クラシックのコンサートではないわけですから。ただ私が一人のファンとして思うのは、場面や程度をわきまえない連続ジャンプ、コンサート前にannounceされる禁止事項の趣旨を無視したケミカルライトの使い方は、応援のスタイルとして醜いということです。私に出来ること、それはあの二人がなるべく早く無惨な死に方をしてくれと祈ること、そしてこうやって後からブログでディスること。その二点です。

ディスはこれくらいにして、℃-uteさんの話をしましょう。今回おもったのが、ダンスは腰が大事だということです。℃-uteさんのダンスを観させていただいて特に私の目を引いたのが鈴木さんと中島さんでした。他のメンバーさんとの違いは何なんだろうと考えたところ、それは腰だろうという結論に至りました。『情熱エクスタシー』の「始まりの音(ダダ)鳴り響いた(ダダ)」のダダの部分で℃-uteさんがこちらに背中を向けて腰をクイクイ動かす振りがあるのですが、上述のお二人はその動きにメリハリがあります。腰がしっかり入っているというか。ふにゃっとしていないんですね。中島さんは元からハロプロで一位、二位を争うダンスの巧みさで有名でした(最近はダンスと言えば鞘師里保さん、石田亜佑美さん、稲場愛香さんという感じになってきて、中島さんがもてはやされることが少なくなりましたけど)。鈴木さんは現役のハロプロ構成員さんの中でおそらく歌が一番お上手ですが、ダンスの技巧も上位に属することに今さらながら気が付きました。

『情熱エクスタシー』の中島さんが本当に格好よかったです。曲調に合わせてダンスも勇ましい感じなんです。会場が一体となる曲で、盛り上がる曲の新たな定番が生まれたと言っていいでしょう。拳を下から突き上げてオイオイと声を出したり、手を挙げたり、飛んだり、会場全体で「シー!ユー!ティー!イー!」と叫んだり。ノリとしては『ザ トレジャーボックス』に近いかもしれません。中島さんは以前に比べて肉が付いて(太ってはいません)、頼りない感じがなくなって、力強い曲が板に付くようになりました。

アンコール後に萩原さんが、曲に合わせて会場の皆さんも悲しそうな顔、いかつい顔、笑顔になっていくのが分かって、同じ空間にいるんだなと実感したというようなことをおっしゃっていました。5月1日の昼公演でメンバーさんたちが残した言葉で書き残せるのはこれだけです。他にどういう言葉があったのか、覚えていません。これ以外はiPhoneのNotesにも残っていません。妙に疲れていて終演後に書いて残しておく気力がありませんでした。その上、同じコンサートを二日で4回観ると、回ごとの記憶がごっちゃになってきて、分からなくなるんです。4月30日の分はiPhoneのNotesに詳しく残っていたので一つ前の投稿に記しました。5月1日の分は昼も夜も断片的にしか残っておらず、お手上げです。現場に行った人のTwitterを見れば事細かに把握できますが、それを元ネタにしてここに書くのは自分的に違うんですよね。自分の記録にも記憶にも残っていないことは、基本的にこのブログに書きません。私は客観的な取材をしているわけではなく、一人のファンとして現場で見えたもの、聞こえたこと、考えたことを書いているだけですから。例えばお腹が痛くてコンサートどころでなかった、だから内容はまったく覚えていないということが仮に起きたとすると、私はそう書きます。

18時からの公演は席が27列目でしたし、これまでの連戦で足腰が疲れていましたし、同じコンサートを立て続けに何回も観てやや飽きていました。適当にやり過ごそうという不遜な態度が、開演の間際まで続きました。ところが、気が抜けない事態が発生しました。私のいたブロックの左(機材の後ろの席)に、つばきファクトリーさんご一行が観に来られていたのです。つばきファクトリーさんは2列に分かれてお座りになっていて、後ろに浅倉樹々さんと岸本ゆめのさんのお二人、前にお二人以外の四名がいらっしゃいました。前の列の一番右に新沼希空さんがいらっしゃいました。新沼さんはマスクをされていました。私は特につばきファクトリーさんのファンというわけではありませんが、ハロプロの将来を背負って立つ彼女たちに最高のコンサートを見せなくてはなりません。自分たちもこういう会場でこういうコンサートが出来るようになりたいと思ってもらわないといけません。夢と希望を与えなくてはなりません。そう思い、老体に鞭打ってコンサートを盛り上げました。

印象に残っているのは、鈴木愛理さんが作ったという「中野サンプラザの歌」です。ひょうきんな動きで移動しながら「なっかの、のなっかの、なかのさんぷらっざ!」と繰り返していました(後に鈴木さんがブログで説明されたところによると中野の中にある中野サンプラザという意味らしいです)。鈴木さんが他のメンバーさんにも一緒に歌うように促すと、皆さんが初めはいやがる素振りを見せながらも結局は加わっていき、最後は全員がやっていくというバラエティ番組のお約束のような流れでした。その上に観客まで巻き込んでいて、会場は笑いに包まれました。終わってから岡井さんが「真面目な人は(こういうのに巻き込まれたら)本当に嫌だと思う」とおっしゃっていました。鈴木さんはアンコール後に「皆さん、生きていると嫌なこともあるでしょう。握手会でよくお悩み相談を受けます。コンサートがないときにコンサートのことを思い出して乗り切ってほしい」的なことをおっしゃっていました。私が観させていただいた6公演のMVPは文句なしで鈴木さんです。次点が中島さん。

一つ前の記事で、冒頭に上原ひろみさんの“ALIVE”を20-30回聴いて初めてよさが理解でき始めたと書きました。なぜ書いたかというと、同じことが℃-uteさんのコンサートツアー“℃ONCERTO”で起きたからです。6回目にしてなぜか急に見え方、感じ方が変わったのです。これまでの5回とは比べものにならないくらいに楽しむことが出来ました。1998年から2002年にかけてサッカー日本代表の監督を勤めたフィリップ・トルシエさんは、チームにおけるオートマティズムの重要性を説きました。簡単に言うとチームの置かれた状況とやるべきことを全員が理解し、連動して動くというくらいの意味だと私は認識しています。6回目にして私と℃-uteさんの間にこのコンサートにおけるオートマティズムが生まれました。私がセットリストの緩急を身体で覚え、その時々に取るべき正しい行動が分かるようになりました。迷いがまったくなくなりました。周りの観客を先導するくらいの気持ちを持つことが出来ました。6回目にして、それまでの5回とはまったく違う景色が見えた感覚でした。本当に不思議です。つばきファクトリーさんはアンコール後の最後の曲が終わるまで席に残られていました。観客が立っているときは椅子を下ろさない状態で座って、観客が座っているときは椅子を下ろして座っていました。アンコールの℃-uteコールに合わせて新沼さんは頭でリズムを取られていました。私がつばきファクトリーさんの立場だったら、℃-uteさんと今の自分たちとの圧倒的な差に愕然とし、同時に私たちもこんな素晴らしいコンサートを出来るようになるかもしれないんだという希望を持ち、泣いていたかもしれません。