2016年10月15日土曜日

Special Code (2016-10-08)

伊丹空港前の東横インからアウト。朝食をホテルで済ませてから出ようと思ったが、混んでいるし、何よりまずそうだ。品数も少ない。貧しい気分になりそうだ。このホテルは朝食を「無料」と謳っているのだが、無料ではないだろ。二泊で17,496円の宿泊料金に含まれているだけの話だ。こういうごまかしは嫌いだ。私からすると望んでもいないサービスを勝手に付けられて料金に上乗せされたに等しい。朝食は要らないから一泊あたり500円でも安くしてほしかった。そんなことよりも大浴場がないのが残念だ。ただ空港からすぐ近くでそこそこ安いとなると、ここくらいしか選択肢がなかった。節約したかった。昨日の晩飯も吉野家で豚丼と豚汁と生卵の計550円だった。予定変更。空港内の喫茶店「英國屋」でモーニングのB(サンドウィッチ)450円。ホットコーヒー。7時半の開店直後に入ったら店員がレジの奥で何かを立ち食いしていて私に気付くと気まずそうだった。地元のおっちゃん数名は皆ホットコーヒーを頼むとき「ホット」と言っていた。

空港からバスで京都駅。1,310円。定時の50分間ぴったりで着いた。少し苦い記憶がよみがえった。3年前だ。無職の頃、職が決まらず意欲もわかずどうしたらいいか分からず途方にくれた私は、すがる思いで高速バスに乗ってここに来て、あるキャリア・コンサルタントに会った。面談の後にふらっと入った店のお好み焼きはおいしくなかった。どこかの有名な寺の日本庭園には息を呑んだ。日本的な美とはこういうものかと合点した。冬だったけどまだ紅葉が残っていた。バスでの移動は消耗した。コンサルタントとの面談は結果的に役に立たなかった。話し始めると長い。今日は京都は単なる通過点だ。感傷に浸る間もなく、JRびわ湖線に乗って11分の膳所で降りた。駅前のオタクっぽい女集団に付いていった。「ナマステ タージマハル」という日本でいうなら「こんにちは 富士山」のような店名のインド・ネパール料理店や3軒のマッサージ店、パルコ等を通り過ぎて、びわ湖ホールに着いた。9時45分くらい。11時からのグッズ販売を待つJuice=Juice familyの皆さんが15人くらいいた。先ほどの女集団はびわ湖ホールに別の目的で来たらしくどこかに消えていった。

10時5分に係員からこの辺にグッズ列を作るから座っているようにという指示が出た。私は地べたに座りたくないし立ち続けるのは苦ではないので立ったまま並んだ。26人目くらいだった。後ろの人の会話が聞こえてきた。自分、埼玉から来たんですよ。4時半に起きて、6時台の新幹線に乗って。終わったら終電で帰ります。あさっての川口はね、家からめっちゃ近いんですけど、夜勤で行けなくて。今日にすべてを賭けてるんです。今日は昼のチケットが1Bなんでもし1Aを潰したら最前です。いやあ、がっつけないと思いますね。もうポカーンだと思いますよ。ポカーンてなりますよ。「僕も埼玉なんですよ」と私も会話に混ざりたかったが、タイミングを逸した。カントリー・ガールズのnew single『どーだっていいの/涙のリクエスト』を配布している紳士がいた。まだ買っていなかったので1枚いただいた。別の紳士がアンジュルムのsingleを配っていたのでこちらも1枚いただいた。『次々続々/糸島Distance/恋ならとっくに始まってる』。既に持っているのであとで合流するTwitterのダチにあげる。グッズ列から生まれて初めてびわ湖を目にした。ガラス越しに。

「いや、思ったより…と言ったら失礼ですけど、色々あるなと思いました。パルコがあって、西武があって」
「でもパルコなくなるんですよ」
「そうなんですか。近いうちにですか?」
「いつだったかな、でもなくなるという噂があります」
今日は最後まで予約で埋まっているというにわかに信じがたい理由により1軒目は入れなかったが、「り・ふぁいん」では待ち時間なしでマッサージを受けられた。高品質でありながら14時までは早割で20%引きになるらしく、80分で6,225円だった。私の生活圏内にあったら通いたいし、びわ湖ホールに来る機会があればまた利用したい。

13時すぎに「り・ふぁいん」を出て、パルコ6階の「カプリチョーザ」で名古屋から来たTwitterのダチと合流した。先ほど買った日替わり写真の宮崎さん1枚、宮本さん1枚、金澤さん1枚、高木さん2枚、コレクション生写真8枚のうち、日替わりの高木さん1枚とコレクション生写真2枚はダチのだ。彼女が来る前にコレ生を開封した。宮崎さん2種、高木さん2種、宮本さん1種、植村さん2種で片方が2枚。ダチは高木さん推しなので高木さん2種を譲ることにした。本当はダブった植村さんのを折半するのが筋だが、私の温情だ。目先の利益に食い付かず、こうやって恩を売って、後でたっぷり返してもらうのが大人のやり方なんだよ。シーフードのピザを食って、ビールを飲んだら14時半の開演までギリギリになった。食後のコーヒーを急いですすった。

びわ湖ホールは前からTwitterでいい評判を目にしていた。実際、中に入ってみると収容人数(1,848人)のわりに小じんまりしていてステージが近く、会場そのものが醸し出すいい雰囲気があった。私は1FのR列、ダチは3Fのファミリー席だった。1Fと2Fが階違いというよりは段差と言った方が近く、2Fが実質的には1F後方、3Fが実質的には2Fだったし、その実質2Fにしても他のホールよりは近かった。

過去のSpecial Code(ホール公演)でも観客をあっと言わせる仕掛けがいくつもあったが、今回はそれを上回る多種多様な演出が用意されていた。情報量の多さに圧倒され、何が起きているのか十分に認識が出来なかった。コンサートが始まると巨大な風船が膨らんでいき、そこに各メンバーの影と名前が映し出され、最後に中からJuice=Juiceの5人が出てくるのだが、観た時点では分かっていなかった。何やらステージ中央に何か大きな丸い何かがあるな、と思って気が付いたらメンバーが出てきたという感じで、追いついていなかった。公演中にメンバーたちが説明するのを聞いて初めてそういうことだったのかと理解した。

風船から出てきて一曲目の『明日やろうはバカやろう』を歌い始めた赤い衣装のJuice=Juiceを双眼鏡越しに見てまず私が思ったのが、右端の宮崎由加さんが可愛いということだった。ステージでは色々なことが起きていて、初見では見落とした部分も多かったと思うが、宮崎由加さんが一番かわいいということだけは疑う余地なく分かったし、その点は見落としようがなかった。もっとも、右から二番目(右は空席だった)という私の位置からは、全体的に左(下手)側にいがちな宮崎さんは少し見づらかった。宮崎さんが見づらいときは主に宮本さんを見ていた。

今日の宮本佳林さんは髪型が至高だった。残念ながら私は女性の髪型を語るボキャブラリーを持ち合わせておらず、至高だったとしか言えない。チケットや日替わり写真の黒柳徹子さん的な髪型とは違った。その新しい髪型は汗で前髪が崩れやすいらしく、終盤には完全に崩れていた。メンバーが指摘すると、びわ湖に浸かってきたんだと宮本さんはおどけた。最後のしゃべりで彼女の崩れきった前髪が大写しになった。客席がざわめくと「そんなに顔キモい?」と問いかけてから思いっきりぶりっ子に振り切った表情を見せて我々から喝采を浴びた。もちろん髪だけじゃなくて元気ハツラツぶりは相変わらずだったし、色っぽさにも磨きがかかっていた。『背伸び』でのしなやかで腰の入ったダンスと曲の世界に入りきった表情。

『チクタク 私の旬』では映像とソファを使用していた。まず目覚まし時計がモニターに映し出されて、アラームが鳴るとソファで寝ていたメンバーたちが起きて曲が始まるという具合だった。寝そべる宮本さんを蹴る(実際には蹴っていない)植村さん。ソファに土足で立ち上がる高木紗友希さん。

『香水』から始まるブロックでは『Keep on! 上昇志向』の衣装をアレンジしたような衣装でJuice=Juiceが登場した。金澤朋子さんはギリギリでおへそが見えないくらいの位置でパンツ(下着のことではないです)を履いていたのだが『香水』の曲中におへそが見える位置まで下にずらす場面があった。そして数秒後には戻したのである。このお嬢さんはこうやって我々の心をもてあそぶのか。もし私が個別握手回に通うタイプのファンだったら彼女のブースでこの幻惑的な動きの意図を詳しく聞いてみたいし、金澤さんからどこまで細かいとこ見とんねん的に呆れられるとともに軽く変態扱いされたい。

このコンサートにはダンスのセグメントがあるのだが、高木さんは膝をつく動きの練習で脚にあざが出来たと言っていた。あざが会場のモニターに大写しになると我々は当然フーとひやかす。金澤さんが「汚い」と言って、高木さんが「汚いって言わないで」と言って、金澤さんは笑っていた。

変わり種では『黄色い空でBOOM BOOM BOOM』がセットリストに入っていた。この曲をJuice=Juiceは完璧に乗りこなしていたし、ステージから発するグルーヴ感が凄かった。特に金澤さん。会場がハッピーな空気で充満した。

本編中にも一度降臨があったが、ジュース! もう一杯!コールを受けての登場も客席の後ろからであった。このびわ湖の昼公演が初めてなので観客は誰も降臨のことを知らない。だから周囲の雰囲気で何となく察するということがなく、純粋に驚くことが出来る。そのあたりは初回を観させてもらうよさの一つだ。

宮崎さんが最後のあいさつでこのツアーが出来る喜びを語る際に「こーんなに可愛い衣装を着させてもらって」、と満面の笑みでくるっと回るのを3回くらい繰り返していて、その度に我々はフーと言って、これがアイドルと観客のあるべき関係であると感じた。

昼公演と夜公演の間にTwitterを始めた初期から(つまり6年くらい前から)フォローしている方と初めてお会いすることが出来た。その方は横浜にお住まいで、私は埼玉に住んでいる。6年越しの初対面が滋賀になった。

夜公演は私が取った席でTwitterのダチと連番だった。18時半開演だと思っていたのだが、18時開演だと気が付いたのが17時47分だった。わざわざ滋賀まで来て、他に用事がある訳でもないのに開演時間を間違えて遅れたとしたらアホすぎたが、開演5分前に席に着いて事なきを得た。1FのV列という昼に比べて4列後ろの席だった。後方ではあったが、双眼鏡のおかげでじっくり細部を楽しむことが出来た。双眼鏡を外して盛り上がるタイミングも昼で心得ていたので、バランスよく楽しめた。

夜公演の方がよいコンサートだったと感じた。Juice=Juiceも我々も、昼よりも乗っていた。一回目だといくらリハーサルを重ねているとはいえ演者も裏方も慣れていないし、観客も慣れていないので、コンサートにフィリップ・トルシエの言うところのオートマティズムがあまりない。もちろん披露される曲の大半はよく耳と身体に馴染んでいるので曲単位で見ればオートマティズムはあるだろうが、コンサートに真のオートマティズムが生まれるには客側がセットリストの展開を身体で把握している必要がある。そういう意味では昼公演は一種のリハーサルで夜公演が本番だったという言い方が出来る。誤解を招くかもしれないので補足しておくが、昼公演はもちろんそれ単体で十分なクオリティを備えた公演であった。客も盛り上がっていた。しかしながらコンサート・ツアーとは一つ一つが独立した公演であるのと同時に、回数を重ねていく毎に演者・裏方・観客の三者がそれぞれ学び、完成度を高めていくものなのだ。演者にとってみれば一回目よりも二回目の方が緊張がほどよくほぐれているだろうし、客もいつ何が起きるかを察しているから状況をわきまえた反応が出来る。もちろん夜公演だけを観る人もたくさんいたとは思うが、昼に続いて観ている人も一定の割合はいる訳で、そういう人たちが昼公演で学んだ結果を夜公演で生かしたのだ。私を含めて。

昼公演に比べて宮本さんの前髪が乱れるのが遅いように見えた。しかし終盤になると昼と同様に赤ん坊のようになっていた。『GIRLS BE AMBITIOUS』のフリー部分では頭を振り回して汗を飛ばしていたのだが、後のしゃべりでも同じことをして「犬みたいでしょ」と言っていた。ファンは大喜びで前方の誰かがちょうだいと言ったらしく「ちょうだいじゃないでしょ」と植村さんが諫めていた。その後メンバーから「気持ち悪い」「やめなさい」という言葉が発せられた。いずれも「ちょうだい」と言ったファンに向けられたと思っていたが、後からよくよく考えてみると(後でダチと議論した)、どうやら「気持ち悪い」と「やめなさい」は宮本さんへの言葉という解釈が正しかったようだ。確証は持てないけど、発言主は「気持ち悪い」が高木さん、「やめなさい」が金澤さんかな? 最後のあいさつでは宮本さんがしゃべっている最中、高木さん以外の三人がモニター後ろのモニターに釘付けだった。植村・宮崎・宮本・高木・金澤という並びだった。植村さんが宮崎さんに「りんかの前髪やばいよ」的なことを言ったようだ。しゃべり終えた宮本さんを呼び止めた宮崎さんが、宮本さんのおでこに汗で引っ付いた前髪を横に流してあげていた。

『GIRLS BE AMBIITOUS!』でメンバーが一端ステージから捌けて、着替えている間に映像でメンバーが再登場して観客を煽る場面があるのだが、そこで高木さんは男性に「にゃんにゃん」と言うのを要求している。再登場した高木さんが男性のにゃんにゃんが可愛い!と我々をほめた後に発した「普段から可愛い女の子を見ているだけありますね!」というコメントには笑った。高木さん曰く、今回の4公演(今日びわ湖で2公演+あさって川口で2公演)はDVD化されない。だから皆さんでこのコンサートのよさを広めて、来なかった奴、バカだな!ってなるようにしてほしい。しかし冷静に考えると、同じコンサートを2回観るために埼玉県から滋賀県に来て、あさっても同じコンサートを埼玉で2回観る私が一般的な尺度ではバカだった。