2017年11月12日日曜日

僕たち可憐な少年合唱団 (2017-11-04)

ハロプロ研修生が主演の演劇女子部『僕たち可憐な少年合唱団』を観させてもらいました。以前に行われたミュージカルの再演らしいのですが、私は元を知りません。もちろんハロプロ研修生発表会には何度か入っているので出演者の皆さんを知らないわけではないですが、特別お目当ての出演者がいるわけでもない。ですので、なぜ自分がチケットを手にして会場に足を運んだのかがよく分かりませんでした。席に着いてからふと冷静になって、奇妙な気持ちになりました。しかも今日だけじゃなくて来週も観るんですね。計3公演。アンジュルムの『夢見るテレビジョン』は1回だけなのに、なぜこっちは3回入るのか。首を傾げざるを得ません。逆じゃないでしょうか。『夢見るテレビジョン』を3回、『僕たち可憐な少年合唱団』を1回にするべきだったのでは。せめて2回ずつですよ。まあ思い返すとファンクラブ先行受付の時点ではJuice=Juiceとつばきファクトリーのスケジュールが出ていなかったので申し込みには慎重にならざるを得なかったのと、私の中でのアンジュルムの優先順位が大幅に落ちていたのが大きな要因でした。

池袋「みなと」で刺身定食1,620円をいただいてから、シアターグリーン BOX in BOX THEATERに歩きました。このミュージカルは回替わりで♯(シャープ)公演と♭(フラット)公演の二種類があります。今日、私が入ったのは15時開演の♯公演でした。来週の土曜日にも二回、観させてもらうのですが、アップフロントが私に送付したチケットは三枚ともA列でした。最前と思っていましたが、違いました。A列の前にパイプ椅子が3列設置されていました。真の最前は普通のパイプ椅子とは違う、ミニチュアのような椅子でした。ふくよかな方は収まらないかもしれません。出演するハロプロ研修生は8人。堀江葵月さん、野口胡桃さん、西田汐里さん、島倉りかさんが♯組。前田こころさん、金津美月さん、小野琴己さん、山田苺さんが♭組。彼女たちにはまだ目立つほどおまいつが付いていないのでしょう、見覚えのある人は最前付近にいませんでした。(つばきファクトリー主演の『ネガポジポジ』ではいつも例のあの人が最前にいました。)本当にステージのすぐ前まで椅子が置いてあって、前方は下北沢の小劇場(何度か行ったことがあります)的な距離感でした。そう、そこはまるでシモキタ。席を埋めていたのはキモオタ。

話の内容が分かりやすく、暴力や過激な描写もなくて、安心して観られるミュージカルでした。堀江葵月さん、野口胡桃さん、西田汐里さん、島倉りかさんは、音楽学校の級友。同じ寄宿舎に寝泊まりしています。一週間後に迫ったコンクールに向けて練習をしているのですが、チームがまとまりません。そんなとき、西田さんの中身が少年に入れ替わってしまいます。他の三人が戸惑っていると、守護天使(高橋愛さん)が現れて事の顛末を説明します。西田さんに乗り移ったのはウィーン少年合唱団の少年で、友人をかばって車にひかれて亡くなりました。彼が成仏して西田さんの身体から抜けるには、夢を叶えてあげる必要がある。それはウィーン少年合唱団のコンサートで歌うこと。実現したと思わせるためには一週間後のコンクールで優勝しなければならない。一週間という制限時間の中で、西田さんの中にいた女の子を取り戻すためにチームが一体となってコンクール優勝を目指します。西田さんに合わせるために、残りの三人も一週間は少年になりきります。もう片方のチーム(前田こころさん、金津美月さん、小野琴己さん、山田苺さん)は要所でヒールとして登場します。自信をなくさせようとしたり、チームの分断をはかろうとしてきます。物語が終盤にさしかかるにつれ、西田さん(に乗り移った少年)にとって大事なことは大きな舞台で歌うことではなく、大好きな友達と歌うことだったということが判明します。

このミュージカルの内容には、彼女たちがHello! Project研修生として置かれている現実と重なる部分があると感じました。この演劇における音楽学校をHello! Projectに置き換えると、ウィーン少年合唱団はもっと大きな動員力を持つ事務所になるでしょう。劇の中のコンクールやコンサートは、たとえば日本武道館、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナといった大会場でコンサートをやることと置き換えることができます。大事なのは規模ではない、好きな仲間と好きな歌を歌うことだ、というのがこのミュージカル内で彼女たちたがたどり着くメッセージです。私としては、彼女たちには大きな会場でコンサートをやってみたいという野望を胸に抱いてほしいです。お友達と歌えればいいのであれば、そもそもデビューする必要すらないですからね。とはいえ、規模の拡大には限界がありますし、それだけを追い求めても自分を見失ってしまうかもしれない。その意味で、前述の教えは、彼女たちが今後アイドルとして活動をしていくにあたって立ち返るべき原則と言えるのかもしれません。どうやったらうまく歌が歌えるようになるのか、と聞く島倉さんに、西田さんが答える場面があります。彼女(彼)の答えは、上手く歌おうとしないこと、歌を楽しむこと、という二点でした。こういった台詞も、このミュージカルに関わった大人たちから出演したHello! Project研修生たちへのメッセージのように思えました。

私に最も強い印象を与えたのは、西田汐里さんです。開演するまでまったく注目していなかったのですが、紛れもなく本公演のMVPでした。声が魅力的で、声量にも安定感がありました。ずっと聴いていたい歌声でした。次点は、島倉りかさん。間近で見るとアイドルとしてのヴァイブスを強く感じました。演技では細かい表情の使い分けが見事でした。あまり注目していなかったこの二人に引きつけられました。この二人だけでなく、全員よかったですけどね。

研修生の他には高橋愛さんと扇けいさんが出演していました。扇けいさんは寄宿舎のシスター役でした。歌って踊る高橋愛さんを観られるというのは地味に凄いことです。何せタカハシステムという言葉を生むくらいに一時代を築いた方ですからね。容姿と技量において長い間、モーニング娘。の中心にいた人です。当時を知る身からすると、数メートル先にあの高橋愛さんがいるというのはちょっと緊張を伴う体験でした。私にとってはステージでご自身を表現する高橋さんを観るのは2011年9月29日(木)の日本武道館以来でした。