2017年11月5日日曜日

We are MORNING MUSUME。 (2017-11-03)

あまり大きな声じゃ言えないが、グラム5.6円でハイになれるブツを売ってくれる店がある。横浜駅西口。モアーズ。8階。ハングリー・タイガー。取引開始の11時にはいつも20人近くのジャンキーが上物を求めて待っている。440グラムで2,470円。この値段で、付け合わせ、パンか米、飲み物まで付いてくる。静岡にも有名なディーラーがいる。私はそっちのお世話になったことはないが、こっちが一番だと自信を持って言える。通常のサイズは220グラム。440グラムというのはダブル・ハンバーグ・ステーキ。ちょいと多すぎるくらいだが、わざわざ前後の食事を軽くしてでもダブルに挑戦する価値がある。私を横浜に呼び寄せたのは15時からパシフィコ横浜で開催されるモーニング娘。のコンサート・チケットである。でもこの公演に申し込むにあたって、このドープなレストランの存在が動機の一つであったのは間違いない。モーニング娘。のコンサートを観に来るのを口実にハングリー・タイガーに来たと言っても過言じゃないくらい、好きなのである。老人になっても、ダブルは無理にしてもここのハンバーグをおいしくいただける身体でいたいものである。

SKE48の現場に通うイルなブラザー(東京都に住むギャンブル依存症の無職・中島)も、スター・ダストからHello! Projectに流れてきたイルな名古屋のブラザーも、Hello! Projectの現場をご一緒した際、異文化体験だったと異口同音に言っていた。私にとっても、モーニング娘。の現場は異文化体験だった。何せ、このグループの単独コンサートに私が参上するのは一年半ぶりなんだ。会場に着くと若えのがたくさんいるし、ぱっと見3割くらいはナオンである。同じ団体の興行なのを疑うほどにJuice=Juiceとは雰囲気が異なる。一般社会に溶け込んでいる、とまでは言えないが、会場前で開場を待つ人だかりはオタク特有の邪気をそれほど発していなかった。目の前に海が広がる爽やかな空間が認識に補正をかけている可能性はあるが、それを差し引いても客層が違う。以前、Juice=Juiceの宮本佳林さんがもっと女の子に応援してもらえるようになりたいとブログに書かれていたけど、それを叶えるにはモーニング娘。に入るのが手っ取り早いんじゃないかな、と思ってしまう。男性陣には安定感がある。「MM☆ Reina Tanaka fanclub tour in FUKU★KA 2011.11.11-13」と背中に印刷された、ボロボロに色褪せた(どんだけ着てるんだ。他に服を持っていないのか?)hoodieを着用する「ホンモノ」の紳士。皆さん服装がちょっとアレなのはいいとして、寝癖さえ直していないのは何なんだ。寝癖がつくほどの髪の毛がない人と合わせると過半数を占めるのではないか。彼らは身支度の一環として朝にシャワーを浴びないのか? どういう生活をしているんだ。

深夜からグッズ列に並んでいる人がいたという情報をTwitterで見ていた。だから半ば諦めていたが、売り場を覗いてみると意外に並んでいなかった。私がDVD MAGAZINE vol.101と牧野真莉愛さんの日替わり写真とコレクション生写真2枚をゲトるのに5分とかからなかった。販売の窓口が40くらいあった。さすが天下のモーニング娘。。13時過ぎの時点で日替わりは誰のも売り切れていなかったので、一部の人たちが深夜から並んでいたのは意味がなかったね。

何かしらCDをコジキろうと目論んでいたが、配っているオジキがいなかった。会場前のコンクリートに腰掛ける。海を眺める。思い出す。あれは2013年の6月。℃-uteのコンサートを友人二人と観に来た。そのときにもちょうどこの辺に座った。その様子は一瞬だけ『ハロー!SATOYAMAライフ』(今の“The Girls Live”の枠で放映していたテレビ番組)に映った。私の右に座っていた人物は2014年11月のJuice=Juice新潟公演を一緒に観て新幹線のプラットフォームで別れたのを最後に音信不通になった。もう二度と会わないのかもしれない。

過ごしやすいにも程がある清々しい日。しかも会場と海の間は公園になっていて。もう、野外飲酒、待ったなしですよ。いま飲まなくていつ飲むんだと。今でしょ、っていうね。と言いつつ、飲まなかったけど。この陽気と気温は6月11日を思い出すな。新潟。屋外。つばきファクトリー。

私のチケットに印字された席は20列だったが、意外と近かった。最前が10列くらいだったので、実際には10列目くらいだった。しかもど真ん中で、ゼロの位置だった。ここから目撃するモーニング娘。のショウは、壮観であった。14人いるからこその圧力、熱量。どちらが優れているという問題ではなく、7人のJuice=Juiceとはまた違う表現を見せてもらった。14人ともなると、ソロ・ラインがほぼゼロに近いメンバーもいるわけですよ。主要なソロ歌唱は小田さくらさん、譜久村聖さん、佐藤優樹さんあたりが受け持っている。彼女らの歌が骨組みのように曲を支えて、安定させている。他のメンバーたちは脇を固める存在だった。でもダンスではそういうことはなかった。歌で出番の限られるメンバーもダンスではアクロバティックな見せ場を与えられていたりして、総合的に見ると、主役と脇役という棲み分けは感じなかった。

私はモーニング娘。の中では牧野真莉愛さんがいちばん好きでね、その割に彼女がホストを務めるラジオ番組『牧野真莉愛のまりあんLOVEりんですっ』をちゃんと聴けていなかったんだ。だからこの一ヶ月で未聴だった50数回分をまとめて聴いた。この番組ではおバカな一面を見せている彼女だけど、ステージで歌って踊るとヴァイブスが違う。同じ人とは思えないくらい。まずスタイルがずば抜けている。大人数でステージに立ってもすぐに目立つ。そして、笑顔の力がひときわ強い。表情から心から楽しんでいるのが伝わってきて、こちらも笑顔になってしまう。モーニング娘。の全員にその技能が備わっているけど、牧野真莉愛さんの笑顔はひときわ強い。たとえばモーニング娘。をよく知らない人を初めてコンサートに連れてきたとして、誰が牧野さんかを理解させるのは難しくはない。一番スタイルがよくて、ニコニコ・キラキラしていた子と言えば分かるはずである。今日も開演の直後から、牧野さんすげーなって。圧倒された。主に彼女を観ざるを得なかった。

このツアーに限らないが、モーニング娘。の衣装はお腹をふんだんに見せてくれる。Juice=JuiceのBeyond the Beyondツアーくらいのを当たり前にやってくれる。これはHello! Project全体が倣うべきベスト・プラクティスである。Hello! Projectメンバーのお腹(もっと言えばおへそ。何度も書いているが、Hello! Projectはおへその国なのである。)は文化遺産であり、隠すのは文化的な損失なのである。「生み出す文化遺産 薬にたとえるなら太田胃散 心に残す壮大な資産」(ラッパ我リヤ、『七人の侍 feat.三善/善三、GINRHYME DA VIBERATER, ARK, SKIPP, PAULEY』のPAULEYバースより)。

資産といえば、モーニング娘。はセットリストの厚みが違う。2017年の新曲と、1997年に出した曲を同じコンサートで披露できるグループやアーティストはこの世にほとんど存在しないでしょう。大量のつんく曲を所持しているのがこのグループの最大の強みだ。『愛の種』(これはつんく作ではない)は20年前の同じ日(11月3日)に発売されたらしい。同曲のリメイク版がこの公演からセットリストに入った。モーニング娘。の歴史にそこまで思い入れのない私でも、畏敬の念を抱いてしまう。セットリストにクラシックを混ぜ込むことで、新曲が多少ワックであろうとも、コンサート全体では帳消しできるのだ。今日のセットリストに含まれていた『涙ッチ』『気まぐれプリンセス』は、私が初めて入ったモーニング娘。のコンサートでも聴いた曲だった。2010年春。当時のメンバーは一人も残っていない。でも曲はこうやって大切に歌い継がれている。それがモーニング娘。の偉大さである。『弩級のゴーサイン』はこの公演で披露された過去のクラシックと肩を並べるような曲ではない。年月の経過に耐えるだけのクオリティに欠ける。五年先、十年先まで歌い継がれるような曲ではない。(この曲の見所である某ムーヴ時に森戸知沙希さんのそこを見ようとしたが、ちょうど肝心な部分に最前のカメラが重なって見えなかった。)もちろん、つんくを美化しすぎる必要もない。彼も『がんばれ 日本 サッカー ファイト!』のような箸にも棒にもかからない曲を大量にドロップしている。しかし、彼が築き上げてきた膨大な曲の資産があるからこそモーニング娘。がHello! Projectの看板として持ちこたえているのもたしかである。

『私のなんにもわかっちゃない』を初めて生で聴けたのは嬉しかった。2015年(まだ鞘師里保さんがいた頃)にモーニング娘。のコンサートで初めて披露された曲だ。ハロ!ステでもコンサート映像が公開された。ファンから大評判でありながら本日に至るまで未だに円盤にもmp3にもなっていない。12月に(ようやく!!三年ぶりに!!)発売される15枚目のアルバムに収録されるらしい。聴くのが楽しみである。

尾形春水さんの丸さにビビった。鈴木香音さんの後継者を狙っているのだろうか。今ヤングタウン土曜日に出演したら明石家さんまさんから金玉呼ばわりされるのが目に見えている。その尾形さんと、飯窪春菜さん、羽賀朱音さんの三人によるトーク・セグメントはパンチが効いていて面白かった。EMOTION IN MOTIONのトーク・セグメントはつまらなかったが、今日は笑わせてもらった。今日のメンバーがよかったのかもしれないし、それだけじゃなくグループとしても上達したのかもしれない。片方の眉を上げることができるという飯窪さんが、こういう感じと実践する。「それ使うところがないですよ」と突っ込む尾形さん。「格好いい曲で使えるかなと」と構想を語る飯窪さんに、「格好いい曲では、ない」と否定する羽賀さん。「それ家で鏡の前でやってください」ととどめを刺す尾形さん。もう二度とやらない、と拗ねる飯窪さん。「私と尾形ちゃんとくどぅー(工藤遥さん)でトリプル・エーというユニットを組んでいる。諸事情により」という飯窪さん。今日からオープンしたというモーニング娘。のカフェ。各メンバーをモチーフにした飲み物がある。「トリプル・エー」は三人とも豆乳を使っているのだと話す。「あとマシュマロとか。マシュマロも効くらしいです」と尾形さん。その話に入ってこない羽賀さんを見て、「あ、何、羽賀ちゃん、わたし関係ないからみたいな顔して」と飯窪さんが言うと、「豆乳は効かない」「遺伝ですから」とバッサリ切り捨てる羽賀さん。「どうする? 何も言えない…」と話し合う飯窪さんと尾形さん。

アンコール明けのコメントで加賀楓さんが「今日は私にとってモーニング娘。として初めてのパシフィコ横浜で…」と言うと間髪入れずに「俺もー!」と元気な紳士がシャウトし、客席から失笑が漏れた場面は公演のハイライトの一つだった。メンバーが無反応というのもまたよかった。その紳士は1階の前方にいたのだが、3階からでも聞こえたらしい

泡沫サタデーナイト』の台詞部分を今日は森戸知沙希さんが担当した。「皆さん、私のこと見えてますか? 今日は横浜のあなたに言いたいことがあります。今度、私と中華街デートしよ?」だった。アンコール明けの森戸さんのコメント時に飯窪さんが「何て言ってたの? 聞こえなかった」と促し、その場でもう一度言わせた。個別握手会で森戸さんに付き合いたいと言ったら「無理」と一蹴されたという報告をTwitterで見たことがある。「中華街デートしよ」と申し出ても同じように「無理」と言われるのは確実である。このコンサートの翌日には握手会があった。おそらく何人かは無謀にも森戸さんを中華街デートに誘ったことだろう。