2016年4月10日日曜日

気絶するほど愛してる! (2016-04-02)

池袋BIG TREE THEATERというと真っ先に℃-ute主演の舞台『さくらの花束』を思い出す。2013年の3月だった。でも去年のこの時期にこぶしファクトリー主演のミュージカル“Week End Survivor”を観に来たのもこの会場だった。去年の“Week End Survivor”よりも3年前の『さくらの花束』を先に思い出すのは、後者の方が自分にとって楽しかったし、観た回数も多かった(3種の公演を計5回。“Week End Survivor”は2回)ので深く記憶に残っているからだ。

『さくらの花束』は劇の後に出演者の方々によるトークショウがあって、私が観たある回(2013年3月17日)では花粉症が大変だという話をしていた。岡井さんが演技中に鼻をすすったけど失敗した、手で鼻をつまんだら鼻水が伸びた、鈴木さんも岡井さんも会場を移動する(三つの会場で同時並行で話が進んでいくという試みだった)度にティッシュペーパーをつかんで鼻をかんでいる、といった話をひとしきりした後にアイドルなのにこういう話して大丈夫?と鈴木さんが気にしていた。℃-uteの皆さんが花粉症に苦しんでいる話を聞いて、彼女たちも一応は自分と同じ人間なんだなと少し安心したのを覚えている。

私は2013年に『さくらの花束』を観たときも花粉症だったし、2015年に“Week End Survivor”を観たときも花粉症だったし、カントリー・ガールズとつばきファクトリー主演のミュージカル『気絶するほど愛してる!』を観に来た2016年の今日も変わらず花粉症である。今日は鼻水、くしゃみ、目のかゆみという典型的な症状にとどまらず、頭が痛い(池袋のベローチェでこれを書いている後日の今も頭が痛い)。しばらく放っておいたら治るのを期待したがその気配がないので、会場に入る前にバファリンを飲んだ。バファリンと言えば以前Public Enemyのアルバムを聴いていたらBufferinとsufferingで韻を踏んでいて、調べてみたところアメリカの薬であることを知った。

池袋BIG TREE THEATERというのは同じ建物の中にある三つの劇場の一つで、あと二つはBOX in BOX THEATERとBASE THEATERである。BIG TREE THEATERがいちばん大きい。とは言っても収容人数は備え付けの席で167人。今日はそれに加えて補助席が10人分ないくらい設けられていた。私の席はI列で、後ろから4列目。あまり期待していなかったが、十分に近くて見やすかった。双眼鏡を持ってきたがたまに使う程度だった。主に使ったのは舞台に出ているのが一人か二人のときだった。たくさんの人が出ている状態で双眼鏡を用いると舞台で起きていることの殆どを見逃してしまう。嗣永桃子さんを除くカントリー・ガールズとつばきファクトリーの全員(+数名)が出演していたのでハロコン的なきらびやかさがあった。

話の内容としては、稲場愛香さん(役名:ヒロコ)が、亡くなった妹が大ファンだったロック・バンドの演奏を観る(妹に「見せる」)ために田舎から東京に出てくる。親衛隊に入れてもらう。その中の一人(森戸知沙希さん)と仲良くなる。バンドの人気を支えるvocal岸本ゆめのさん(役名:ビリー星野)の傲慢さに嫌気が差した山木梨沙さんがバンドを脱退する。ひょんなことから稲場さんがその補充要員となる。岸本さんと恋愛関係になる。バンドのメンバーに近づいてはいけないという親衛隊の規則に反するため親衛隊の面々に隠しながらバンド活動を続けるが、ついに森戸さんにバレてしまい、友情に亀裂が入る。一方でバンドは流行から外れてファンは減り落ち目になる。という感じであった。役名はヒロコとビリー星野しか覚えていない。

バンドの音楽に合わせて親衛隊がワーキャー言って手を振って身体を動かす場面が何度も出てくるのだが、日頃は応援を受ける歌手であるハロプロメンバーさんたちが歌手を応援する役を演じているというのがとても面白かった。ハロプロ構成員の皆さんが客席に背中を向けて憧れのスターに熱狂している様は、いくら演技とは言ってもまず目にすることがない。

途中加入したヒロコを除いてバンドは全員が男なので、バンド役の方々は男装して男役を演じていた。前述したvocalの岸本ゆめのさん以外にはbass担当者を山木梨沙さん、guitar担当者を小野田暖優さん(演劇女子部)、drums担当者を小関舞さんが演じた。演技の経験すらほとんどない彼女たちが男役をどうこなすのかと思っていたが、しっかりと男になりきっていた。私が観に行った4月2日の15時公演は23公演中の15公演目である。これまでに回数を重ねて完成度を高めてきたのが伝わってきた。あと彼女たちは年齢的にまだ中性的な部分が残っているので男役がはまりやすいのかもしれない。

稲場さんも岸本さんも山木さんもよかったし、よくなかった人なんていないけど、MVPは森戸さんか須藤さん。特に今回は自分の中で森戸さんの新たな魅力を発見した。純粋でひたむきな性格の役柄が森戸さんの雰囲気と合っていた。須藤さんはバンドのA&Rのような役だった。しゃべり方や仕草が過剰な感じでユーモアに溢れていて何度も笑いを取っていた。岸本さんたちのバンドが出場を狙う音楽フェスがあって、今日はそのプロデューサーが観に来ているという場面があった。その「プロデューサー」は須藤さんが客席の通路を練り歩きながら客の一人から決めた。須藤さんがその「プロデューサー」に誰を応援しているのかを聞くくだりがあったのだが、当てられた客が「かななん」と答えたのがどっと受けて、拍手まで起きた。真剣な場面もあったし、そうやって笑いが起きる場面もあったし、緩急があったのがよかった。

公演中、私の頭痛は引かなかったし、途中からケツも痛くなった。ここは椅子が固い。クッション必須。次にここに来ることがあれば忘れずに持ってこなくてはならない。私の中で“Week End Survivor”がいまいちだったことによる演劇女子部への低評価は払拭された。終演後、買う予定のなかったsoundtrackを思わず購入した。このミュージカルを私が観たのはこの一回のみだが、もう一、二回は入りたかった。次の演劇女子部の公演も、ぜひ観に来たい。