2016年4月24日日曜日

EMOTION IN MOTION (2016-04-23)

さいたま市民文化センター大ホールで、モーニング娘。さんのコンサート・ツアー“EMOTION IN MOTION”を観させてもらいました。ハロプロのメンバーさんたちは仕事について語るときに「やった」「歌った」ではなく「やらせてもらった」「歌わせてもらった」という言い方をします。おそらく事務所からそう教育されているのだろうと推測します。私はハロプロを見始めた6-7年前にそれに気付きました。冒頭でコンサートを「観ました」ではなく「観させてもらいました」という言い方をしたのは、彼女たちの言葉遣いに敬意を表しているのです。私たちファンにとってもハロプロのコンサートが開催されて観に行くことが出来るのは当たり前のことではなく、ありがたいことです。お金を払っているから当然ではありません。それを忘れないでいたいです。

ハロープロジェクト全体のコンサートで目にすることはありましたけど、モーニング娘。さん単独でのコンサートは私にとってしばらくぶりでした。私が最後に観させてもらったのは2014年の10月1日でした。日本武道館でした。翌月の横浜アリーナでの公演をもって道重さゆみさんがモーニング娘。さんを退団されましたが、私が実際に現場で観させてもらう公演としてはこの日が道重さんの最後でした。モーニング娘。さんのファンではあったものの音源や動画を楽しむのが主で、コンサートにはそこまでたくさん通っていたわけではありません。筋金入りのファンになるとツアーのコンプリートかそれに近いことをする人もいるんですよ。それでもツアーの度に何度かは入っていました。道重さゆみさんが退団されてからは一度も行っていませんでした。その気にはなれませんでした。私にとって道重さゆみさんのいないモーニング娘。さんは、上原ひろみさんのいない上原ひろみトリオ、ウイニングイレブンのないゲームセンター、納豆のない納豆ご飯のように無意味でした。モーニング娘。さんのコンサートに足を運ばなくなっただけではなく、コンサートを収めたBlu-rayすら買わなくなりました。

今回ひさしぶりにモーニング娘。さんのコンサートに来るにあたって、何か心境の変化があったわけではありません。会場のさいたま市民文化センターが、家から近いんです。あと、エース(ラッパーのACEさんではありません)の鞘師里保さんが退団されて初めての単独ツアーということで、どうなるのか興味がありました。ファンクラブの先行受付で一公演だけ申し込んでみたところ、当たりました。16時半開演の、いわゆる夜公演です。当たったとはいっても、外れでしたけどね。3階席でした。まあお前は大したファンでもないんだからこの席で文句ないよね? まずはここで観て、やる気があるなら這い上がってこい。そういうアップフロントさんからの叱咤が聞こえてくるようでした。いや、もちろんそれは冗談です。そんな悪意なんか介在する余地があるはずはなくて、単にモーニング娘。さんの人気が高くて申し込み数が多いからファンクラブの先行でもこういう席が来やすいんでしょうね。

情弱向けのサービスと馬鹿にされがちなグノシーを、私は未だに購読しています。記事へのリンクを貼っているだけなのにあたかも自分たちがそれを作ったかのような態度なのはたしかに滑稽です。ただ無料なので、一日に一本でも興味を持てる記事が流れてくれば購読する価値はあると思っています。グノシーが最近送ってきたある記事に、経営理念は絞れば絞るほどよいという主旨のものがありました。私も今日のような条件でコンサートを楽しむにはやり方を絞る必要があると理解していました。いわば鑑賞理念です。遠距離から漠然とステージを視界に収めるだけで満足できるわけがありません。開演前から決めていました。今日の私は、双眼鏡で牧野真莉愛さんを追いかける。他は見えなくてもよい。とにかく牧野真莉愛さんだけは見逃さない。

実のところ、私は現在のモーニング娘。のメンバーさんたちにそこまで興味がありません。ただハロコン(ハロープロジェクト全体のコンサートのことです)で牧野真莉愛さんは強く印象に残っていました。まず道重さゆみさんが寵愛していただけあって抜群の容姿に恵まれています。そして“One and Only”という曲の間奏で石田亜佑美さんと対面する場面に見られるように、振りまく笑顔が無邪気で、引き込まれるものがあります。その上「まりあんLOVEりん」「ごめんちゃいまりあ」のようなイル(イルとは直訳すると病んでいる、ですがヒップホップ用語ではほめ言葉です)なフレーズを発明されておりご自身の世界をお持ちです。入場前には牧野さんの日替わり写真を買いました。今のモーニング娘。さんは12人いますが全員を豆粒サイズで満遍なく眺めるのではなく、牧野さんだけを拡大して見たいという態度で臨みました。

それは正しい決断でした。もちろん、ときには双眼鏡を外してステージ全体を見ることもありました。たとえば、ステージを暗くしてメンバーさんたちが身に付けた帽子と手袋が光るという演出があったのですが、全体で一つの動きを見せる演出だったので一人だけを見ても意味はありませんでした。それでも全体の9割以上は牧野さんだけを見ていたと思います。他のメンバーさんのソロパートでも、客席への挨拶で他のメンバーさんがしゃべっているときでも主に牧野さんを見ていました。牧野さんはグループ内で群を抜いて可愛らしいにも関わらず後列や端っこにいることが多かったですが、見せ場は比較的多かったと思います。『Mr. Moonlight~愛のビッグバンド~』では工藤遥さん、生田衣梨奈さんとともに男役の一人に抜擢されていました。男役は歌割りが多いのはもちろんのこと、衣装が特別だったので目立っていました。『ファインエモーション!』(2004年のシングル『浪漫~MY DEAR BOY~』のカップリングです)を飯窪さんと誰か一人(覚えていません、何せ私の双眼鏡には牧野さん以外はまともに写っていませんでしたから!)と一緒に歌っていました。牧野さんは歌っているとき、踊っているとき、一つ一つの表情が本当に楽しそうで、自ずと私を笑顔にさせます。にやにやさせると言った方が正確かもしれません。表情といえば、ダンス中に目まぐるしくフォーメーションが変わる中で他のメンバーさんとすれ違ったり対面したりしたときに視線や笑顔を交わしているのがよく分かるのは、双眼鏡を使う醍醐味の一つです。

本編の最後の挨拶では、皆さんが盛り上がってくれてまりあの心にぐっと来ました的なことをおっしゃってから、皆さん飛んでくださいねという前振りを置いて「ホップ・ステップ・まりあジャンプ!」という技を披露されていました。まりあジャンプ!のところで客席の我々も飛ぶんです。ホップ・ステップ・まりあジャンプ!のことは今まで知りませんでした。意味は分からないけど最高だなと思いながら私も飛ばせていただきました。「まりあんLOVEりん」「ごめんちゃいまりあ」「ホップ・ステップ・まりあジャンプ!」。私の人生にはこういった要素が必要なのです。会場を出た私は牧野さんのアンオフィ写真を買って、帰途につきました。この日は工藤さんの凱旋ということでアンコールは「ハルカ! ハルカ!」でした。ダブルアンコールを受けて出てきた工藤さんが泣きながらファンへの感謝を述べていましたが、私にとってはホップ・ステップ・まりあジャンプ!の方が重要なのです。