2016年6月5日日曜日

MISSION 220 (2016-06-04)

1.この町には朝があり、昼と夜がない。一日中モーニングという文字列をそこらで目にすることが出来る町は、世界広しといえどもここだけだろう。

2.午後休を取ったのだが、上司は夜の電話会議に出るように言ってきた。開始時間の21時から1-2分すぎたあたりでホテルの6階にある部屋にたどり着いた。地下鉄の矢場町駅に着いてからホテルに着くまでのワクワクvacation気分は、入室即1時間の電話会議で一気に消え失せた。明日(金曜日)にも電話会議が出来ないかと先方が聞いてきたが、明日は休みだからと言って断った。本当はこの瞬間も休みなのだが。

3.ホテルの大浴場(という割にはそんなに大きくない。洗い場は4-5人でいっぱいになる)を出て自販機でミネラルウォーターを買った。エレベーター前に行くと宿泊客ではなさそうなミニスカート姿の女性が伏し目がちに佇んでいた。誰かを待っている雰囲気だった。私は察した。ちょうど上の階からその女性を呼んだとおぼしき紳士が迎えに来て、ほっこりした。

4.名古屋で初めてのモーニングは栄駅に直結した地下街にある「コンパル」。コーヒー400円+130円でハムエッグトーストのモーニング。インターネットではエビフライサンドが人気だったので気になっていたが、単品で930円もするので頼まなかった。コーヒーがやたらとおいしかった。複雑な味がした。サンドイッチもちゃんとしていて、有名というのが納得できた。タバコの臭いが漂ってくる。禁煙席と喫煙席が分かれていない。近くに喫煙者が来た。食事の余韻に浸ることもなく、店を出た。

5.貨幣資料館を訪れた。金のなる木ってそういう意味だったのかとか、硬貨の穴に縄を通して束ねてそのまま使ったとか、大判は決済には使わなかったとか、和銅開珎と呼ばれる硬貨が本当に日本最古か疑わしいとか、そうだったのか!と思えることがたくさん解説してあって、しかも現物を見ながら学ぶことが出来る、楽しい空間だった。興味津々に1時間半くらい滞在したが、入館料はタダなので来館者とのお金のやり取りはないし、受付の老紳士はいらっしゃいませとありがとうございましたと言うのとたまに老人の話し相手をしているだけっぽいし、こういう施設は無職に仕事をどんどん斡旋して世の中の無職を救ってほしいと思った。

6.栄「Matsuzaka Meat & Vegetables」で炭火焼きランチのダブル1,080円をいただいた。ダブルとは肉と野菜の両方が大盛りという意味で、二倍入っている訳ではない。だからdoubleではない。甘く味付けされた肉と、テーブルに置いてあるGABANの一味唐辛子との相性がよく、食が進んだ。

7.6月3日(金)はよく歩いた。iPhoneにはじめから入っているアプリによると17.7km、後から入れた万歩計アプリによると22.4km歩いたことになっている。差が大きすぎる。どちらを信じればよいのか。8時半から14時時まで、朝食と昼食の時間を除いてずっと歩いていた。今までの経験からも、4時間くらい立て続けに歩くときつくなってくる。昼食後には名古屋城に行ったのだが、だいぶやる気が減退していた。コメダ珈琲でクリームコーヒー(アイスコーヒーの上にソフトクリームが乗っている)をいただいて、戦極14章のブログを書いた。3時間くらい足を休めることが出来たので、すっかり楽になった。

8.「名前、なんて書きます?」―20時40分頃、金曜の夜だけあって「味仙」には入店待ちの列が出来ていた。といっても数人だが。上の質問を投げかけられたとき、咄嗟に意味が分からなかった。10分ほど前に待ち合わせて初めて会ったばかりのAさんは「マキノ」と記名欄に書いていた。「どのマキノさんですか?」と聞くと「めりあちゃんです」と、彼は言った。「ああ、まりあジャンプの」。さっきまでホテルの部屋でフットボール日本代表の親善試合、ブルガリア戦を観ていた私は(4点目が入るところまで観た)、マキノという文字列から浦和レッズの槙野が浮かんでいた。しかし愛知のマキノといえばモーニング娘。の牧野真莉愛なのである。「何かこう、同じ空気を吸ってごめんなさいって気持ちになりますよね。可愛すぎて」、最近モーニング娘。のコンサートに行ったAさんはそう言った。彼は『泡沫サタデーナイト』に命を救われたらしい。音楽の嗜好が私と重なる彼は、Jabberloopの『魂』、James Blake、Shackletonを薦めてくれた。台湾ラーメン、青菜炒め、蒸し鶏、ホルモン炒め、コブクロ、炒飯、瓶ビール、瓶ビール、瓶ビール。私は気持ちよく酔ったが、後でTwitterを見るとAさんは飲み足りないと書いていた。

9.コブクロといえば、Juice=Juiceの高木紗友希さんが敬愛する音楽家の一組である。さすがにコブクロは私とは文化圏が違いすぎてディグる気にはなれない。

10.6月4日(土)。名古屋に来て2度目のモーニングは、「べら珈琲栄店」。栄駅の近辺をぐるっと歩いたものの意外と喫茶店が見当たらなかった。腹が減ってきて、地元ならではの店を見つけるのは諦めて、コメダに入ろうとしたらすぐ側にこの店があった。ウインナーコーヒー500円を推していたので、頼んだ。黒糖パンのトースト。ゆで卵をうまくむけなくて殻と一緒に白身をだいぶ持って行かれた。ウインナーコーヒーは絶品だった。店が推奨している通りにかき混ぜないで飲む。たっぷりの生クリームの出迎えを受けて、ぜいたくな気持ちになった。店の外に「当店自慢の生クリーム 炭焼ドリップ仕込み 名物ウインナーコーヒー」とでかでかと書いてあった。こんなに自信満々のウインナーコーヒーは初めて見た。

11.台湾ラーメンは台湾になくて、ウインナーコーヒーもウィーンにないらしい。長崎のトルコライスもトルコにない。私は台湾とウィーンには行ったことがないが、トルコに行ったことはある。

12.栄のスカイルというビルヂングの9階にある「コモ」。旅行の下調べをする中で、ここのシガツというあんかけスパゲッティを食べると決めていた。コシなしでぶよぶよの太麺にカレー風味の粉がまぶしてある。底にデミグラスっぽい味のソースが敷いてあって、絡めて食べる。相当クセのある料理だと聞いていたので身構えていたが、味は意外と普通というか、焦点がぼやけていた。パンチが弱かった。量が多すぎた。成長期の青少年もしくは肉体労働者でなければ麺は少なめで頼んだ方がいい。半分でもいいくらいだ。あんかけスパゲッティは2回以上食べないとよさが分からないという言説があるそうだ。クセがあるから慣れるのに時間がかかるというのなら分かるが、実際に食べてみると味がくっきりしていなくてクセが弱かったので、どういうことなのか理解できなかった。

13.矢場町から地下鉄で5分の金山駅。日本特殊陶業市民文化会館フォレストホール(長い)。13時半に始まったグッズ販売。列の長さからして30分くらいかなと思ったが、40-50分かかった。日替わりA5写真の宮崎さん、宮本さん、金澤さんと、今日から追加されたソロ2L写真part 4とpart 5の宮崎さんを購入した。栄のスカイルにあるダイソーで買っていたA5のプラスティックケースに写真を入れようとしたら日替わり写真が収まらなかった。どうやらA5と称しながら実際にはA5よりも少し大きいらしい。近くのAEONの3階でA4のケースを買って、それに入れた。2階のカフェ・ド・クリエ(名古屋でよく見る)に入った。260円のコーヒーを頼んで席に着いた。

14.金山駅のすぐ前にあるボストン美術館に入った。先ほど一枚500円の写真を何とも思わずに買った私は、入場料の1,300円を高いと思いながら払ってチケットを受け取った。絵画を鑑賞していると頭の中にアンジュルムの『マリオネット37℃』が流れてきた。オノレ・ドーミエの風刺画とその題名が目に留まった。音楽アルバムのジャケットに使えそうな絵がたくさんあった。実際に絵画を参照したジャケットも数多く存在するのだろう。絵のある部屋で真ん中の四角いソファに座ってスポーツ新聞を読む紳士がドープだった。

15.開場時間の15時半すぎ、会場の前でBさんと会った。Twitterでは随分とやり取りをしてきたが、実際に会うのは初めてだ。Twitterを見ていたBさんはあんかけスパゲッティの話を振ってきた。あんかけスパゲッティを薦めてくれたのはBさんなのだ。「名古屋の人は濃い味が好きなんですよね。コモの味は名古屋の人の好みとは合わないのでは?」と聞いてみた。コモの味はあんかけスパゲッティの本流から外れていて、他の店はもっと味が濃いとのことだった。

16.しばらくBさんと話してから、席に着いた。今日は『ビルズ』の前にMichael Jacksonの“Black or White”が流れていた。ハロプロ研修生たちによるopening actが今日はなかった。開演前のジュース!コールが名古屋でも起きた。おそらく色々な会場を回ってジュース!コールを把握している人たちがここでもコールを始めたのだ。そういう人たちがこのツアーに慣れていない地元民を先導して盛り上げようとしているのが伝わってきた。私もその一人になった。

17.日本特殊陶業市民文化会館フォレストホール(長い)は満員ではなかった。4階まであるのだが、3階と4階には人が入っていないようだった。Bさんによると2階も前半分しか人がいなかったそうだ。1階も一番後ろの数列は人がいなかった。これで本当に盛り上がるのか、Juice=Juiceが気を悪くしてしまわないか、私は心配だった。しかし私はこの公演で今回のコンサート・ツアーの見納めなので、消化試合には出来ない。意地でも盛り上がる。盛り上げる。率先して声を出した。これまでに5回このコンサートを観させてもらった経験を生かして、周りを引っ張るつもりで臨んだ。

18.最初は観客の温度が少し低いように感じられた。その上、裏方がスピーカーからの音の出し方を誤ったらしく、1-2分してから急に音が大きくなった。おいおい、開演前に調整しておけよ、そこは。しかし、MISSION 220を157公演目まで積み重ねてきたJuice=Juiceの経験は伊達ではなかった。彼女たちは動じることなく、最初から最後まで本当に気持ちよさそうに、楽しそうに、嬉しそうに、元気いっぱいに歌って踊っていた。“Magic of Love”あたりでステイジ上の空気が客席に行き渡った感がある。「もっと盛り上がれや」と恫喝するのではなく、自分たちがポジティブなグルーブとバイブスを発し続けることで自ずと観客を引き込んでいた。

19.『鳴り始めた恋のBELL』(原曲は音楽ガッタスなのか。まだまだ知らない曲が多い)での、恒例の降臨。私は13列目の通路側だったのだが、Juice=Juiceがステイジから降りてくるときに私の真横を通っていった。締めくくりにこういう特別な体験が出来てよかった。後に宮崎さんは、この会場はストローク(通路)が長いから色んな人に手を振ることが出来て(「バイバイが出来て」と言っていた)よかったと言っていた。

20.最初に二人が出てきてしゃべって、その間に着替えを済ませた三人と入れ替わりになるセグメントでは、はじめに高木紗友希さんと金澤朋子さんがしゃべった。「何を話そうか」と何も用意していなそうだった金澤さんに、高木さんがチクリネタを投下した。昨日(6月3日)、金澤さんが大切なものを入れたビニール袋を仕事場に忘れていった。私のブログを見てくださった人は分かると思うんですけど…という高木さんに「え、ブログに書いたの? 恥ずかしい」という金澤さん。彼女は他のメンバーのブログを読んでいないことを前から公言している。「ブログ見てくれるー?」と言う高木さんに「見てない」とぶれない。さらに二つ目のネタとして、今日も新幹線の切符を席に忘れてきたと高木さんが告発した。「新幹線の切符って高価ですし、忘れたと言っても簡単に通らせてくれないんですよ」という金澤さんが「面倒くさい」(と言ってからいや面倒くさいじゃなくて…と慌てたようなそぶりで取り消していた)手続きをしている間、他のメンバーは15分くらい待たされた。「その間ずっと車の中でカラオケ大会ですよ」と高木さん。

21.入場前にカフェ・ド・クリエでカバンの中身を整理していた私は、キャメラがないことに気付いた。「コモ」に忘れたんだと思う。電話した。「すみません、今日そちらにカメラの忘れ物ありませんでしたか?」「あー、ありますよ。預かっています」「明日、取りに行きますので。はい、お店に取りに行きます。ありがとうございます」。一件落着。キャメラを忘れてもパクられず忘れ物として保管してもらえている名古屋。治安がいい。

22.宮崎由加さんは、この会場のケータリングがたいそうお気に入りだったそうだ。本番前に℃-uteの矢島さんも好きなグラタン、あときしめんをたくさん食べて、お腹いっぱいで苦しかった。食べた分をこのコンサートで全部出せたとのことである。普通の人間であれば食べ物を出すには排泄か嘔吐が必要だが、宮崎由加さんくらいのアイドルになるとトイレには行かないし、食べたものは動いたら自然になくなってしまうのだと私は解釈し、納得した。

23.“GIRlS BE AMBITIOUS”で宮本佳林さんは「何気に初めてのショートカット 全然後悔してない」の後に「エビ反り!」と叫んで飛んでいた。こうやってその地方ならではのちょっとしたアレンジメントを加えてくれるのは、現地民でなくても嬉しい。そういえば私は名古屋に来てからエビを食べていない。名古屋の人はエビフライのことをエビフリャーと本当に言うのだろうか?

24.高木さんはこのツアーの冒頭で毎回、「日頃のストレスを持ってきましたか?」「発散しましょう!」的なことを言っている。今日は最後のしゃべりでも、仕事で叱られたり、部長め…と思ったりとか、ストレスが大変でしょう。私たち(Juice=Juice)はこんなに楽しくていいんだろうかと思うくらいにストレスがない、というようなことを言っていた。宮本佳林さんも「皆さん普段ストレスが大変なんですよね、私みたいな子には分からないですけど」的なことを言っていた。来場者が普段の生活で苛烈な労働によって多大な精神的負荷を与えられ、苦しみ悩んでいることが前提で執り行われる、ハロプロのコンサート。私に関して言えば、今の環境ではありがたいことにかなり自由にやらせてもらっているので、言うほどストレスがあるわけではい。しかし日本の労働環境が異常なのはたしかだ。今の社会では、生きるためには働かないといけない。労働から逃げるのはほぼ不可能だ。そしてその労働がきついとなると、そこからの救済として彼女たちが自分たちの役割を認識しているのはとても立派だし、正しい。

25.「僕も勤怠上はあんまり残業していないですよ。三六協定がありますし。はい。申請できるのは40時間くらいですね。実際には100時間以上はやっています。4月と5月は休みがなかったです。部長クラスでも同じような働き方をしています。だから偉くなっても変わらないのか…とは思いますね。うちの会社は軍隊です、軍隊。身体は大丈夫です。そうですね、体力はあります」

26.Juice=Juiceは5人全員がキラキラに輝いていた。歌、ダンス、仕草、表情、すべてが至極である。まだ明日の石川県での2公演が残っているが、このツアーの集大成と言ってもいい出来だった。Juice=Juiceは歌を聴かせる集団なんだなと再認識した。高木紗友希さんのフェイクはリアルだ。高木さんと、宮本さんの歌声は特に聴いていて心地よい。酔いしれた。

27.Juice=Juiceの皆さんは口々に名古屋でホール・コンサートが出来るなんて思ってもみなかった、Juice=Juiceだけを観るためにこれだけの人たちが集まってくれたことが嬉しい、と言っていた。金澤さんが「こんな小娘たちのために…まあ小娘とは言えない年齢の、二十歳を超えた人間もいますけど」と言うと、宮崎さんがおどけた仕草を見せた。

28.私はコンサートの前に酒は飲まなかったが、前日から観光をしていたので頭はリラックス・モードに切り替えられていた。仕事のことが頭をよぎることはなく、存分に楽しむことが出来た。Bさんを誘ってよかった。彼女にはいいものが見せられたと思った。金山駅近くの「個室だよ!やきとり居酒屋しんちゃん」に入って、Bさんとの話に花を咲かせた。彼女は実際に見る前と後で、宮崎さんと宮本さんの印象が一気によくなったそうである。この店はきのう会ったAさん経由で教えてもらった店だ。食べ物は期待していた水準には達していなかったが、とことん安かった。2時間みっちり話したが話し足りないと思えるくらいに直前のコンサートが最高だった。明日の夜まで名古屋にいるのだが、もう名古屋には思い残すことはないくらいに満たされた気持ちになった。明日は観光はせず、喫茶店に入ってブログを書こうかと思った。

29.6/5(日)、名古屋での最終日。コンサートの興奮が醒めなくて、4時半にいちど目が覚めた。ホテルからチェックアウトすると雨が降っていたので、気持ちは完全に観光からブログ執筆に傾いた。書きたくてしょうがなかった。コンビニで傘と無印良品の再生紙メモパッド(NOTE PAD)を買った。「カフェ・ラシュール」でホット・コーヒー420円+150円でホットサンドのモーニング。再生紙メモパッド(NOTE PAD)にブログ記事の断片を書いていった。「コモ」で預かってもらっていたキャメラを受け取った。名古屋駅近くの地下街にある「鮪小屋本店」で鮪唐揚定食980円。その後にコメダ珈琲に入って、ホットコーヒー420円を頼んだ。隣のテイブルにいる幼女がゲラゲラ笑いながら、おしっこ漏れちゃったと言っていた。これが名古屋のストリートの現実だ。私はポメラDM100を開き、Burialの“Burial”と“Untrue”を聴きながらここまで書き上げた。