2016年12月4日日曜日

宮本佳林バースデーイベント2016 (2016-12-01)

フェイクな奴らはお誕生日おめでとうございますとTwitterに書き込み、リアルな奴らはバースデーイベントに行く。いや、そんなことはない。たまたま私が幸運にも東京近郊に住んでいる上に仕事を早く上がりやすい環境にいるだけだ。遠くに住んでいる奴ら。まともに休みが取れない奴ら。お金がない奴ら。何かの事情でファンクラブに入れない奴ら。バスじゃもろ最後部な奴ら。その他にも色んな事情があるだろう。今日、山野ホールで宮本佳林の18歳を祝うことが出来た奴らは運が良いだけだ。来なかったからフェイクということはない。ただ文章のつかみとして思い付いたから書きたかっただけだ。開催されたのは17時15分からと19時45分からの二回。両方に申し込み、当選したのは17時15分の回だった。平日のバースデーイベントに申し込んだ結果は大体こうなる。東京で働いていれば、残業をしなければ19時45分には間に合う。17時15分からとなると定時まで会社にいたら間に合わない。普段ハロプロのファン層は職業不詳の人が多い印象だが、早い時間の回が当たって遅い時の回が外れる度に、ちょっと安心する。みんな働いているんだなと。私に関して言えば、今日は午後半休を取得した。健康診断があった。去年から体重が2.1キロ増えていた。まったく自覚がなかった。タニタの体組成計が正しければその内訳は脂肪が1.7キロ、筋肉が400グラム。ここで筋肉を0.4キロと書かずに400グラムと書いた乙女心を理解してほしい。リポビタンDに配合されているタウリンが1,000ミリグラムなのと同じだ。つまり、大正製薬は乙女なのである。「俺、去年から脂肪が1.7キロ増えたぞ」と近くの若手に言ったら「俺はそれどころじゃないっすよ…」と嘆いていた。すると近くにいた上司が「俺なんか…」とかぶせてきて、傷の舐め合いが始まった。昼になって会社を出ようとすると別の同僚から呼び止められ、結婚しますという報告を受けた。そうなんだ、おめでとうございますと言って、宮本佳林の18歳の誕生日を祝うために代々木に向かった。

電車の中で、今日はA5写真2枚セット1,000円だけを買おうと決めていた。コンサートでいう日替わりにあたる写真だ。会場に掲示してあった商品の見本を見たところ、A5の方には「2016.12.1(木)山野ホール 宮本佳林」と書いてあって、2Lの方には「Juice=Juice 宮本佳林 バースデーイベント2016」と書いてあった。2Lには会場と日付が書いていないし、A5にはイベント名が書いていない。両方を買わないと今日の開催情報が揃わない。そういう作戦で来たか。その手には乗らないぞ、と見せかけてA5だけでなく2L生写真4枚セット1,000円も買った。他にはL判生写真4枚セット600円、A4サイズ生写真1,500円、マイクロファイバータオル3,700円、バースデーDVD 2016 3,000円、バースデー記念セット(全部入り+おまけL判写真1枚)9,300円があったが、私はライト層なので手を出さなかった。16時45分頃に階段を降りて当選メールと会員証と免許証を見せて緩い荷物検査を受けた。今日はファンがステージ上で宮本さんと踊る企画がある。何人かが応募用紙に記入していた。当然、私は素通りした。今日の席は、13列の15番。縦にも横にもちょうど会場の真ん中ら辺だった。おそらく松田聖子とおぼしき音楽が流れていた。カバンから週刊文春を取り出し、横田増生によるユニクロ潜入記を読んだ。開演の直前までエマニュエル・トッドの『問題は英国ではない、EUなのだ:21世紀の新・国家論』を読んだ。

宮本佳林が姿を現す前に声だけでイベントを楽しむための三つの約束を読み上げた。最初に「本日は、Juice=Juice…」と言おうとしたところで噛んで、ティヒ的な笑いをこぼし、18歳のはじめから噛んじゃったーと、言って、それで会場は和んだ。正式な注意事項のアナウンスメントはその前にあった。三つの約束というのはガチで事務的な注意というよりは、宮本佳林に夢中になること、とかそういう感じだった。他の二つはちゃんと覚えていない。登場はステージからではなく、後方の通路からだった。後で登場したさわやか五郎がそのときのことを振り返って「モニターで見ていたけど(観客が)みんなニコニコしていた。みんな口角が上がってた」と言っていたが、私を含めて実際その通りだったんだろう。18歳になって嬉しいのは夜9時以降も働けることだという宮本さん。事務所に馬車馬のように働かされるよというさわやか五郎に「それを望んでるよ、佳林は」と涼しい顔。竹内朱莉からの動画メッセージ。「私のバースデーイベントに3回も連続で出てくれてありがとう。次は20歳なのでそのときは司会の横のアシスタントとして出てほしい。私のバースデーイベントのレギュラーを認定する」的な内容だった。画面には初め竹内だけが映っていたが、最後の方になって向かって左に笠原桃奈、右に上國料萌衣が座っていたことが分かって、映像の締めの挨拶は全員がやっていた。

宮本さんはイベントの序盤に、昨日の仕事で足を怪我したため、激しく踊ることが出来ないと明かした。そのため、ファンとステージ上で踊る企画では代役として高木紗友希が踊ることになった。左からケーキを乗せた台車を運びながら出てきた彼女の出演は、予告されていなかった。昨晩スタッフから宮本の代わりに踊ってくれないかと言われた彼女は「佳林が好きな人たちの前で私が踊っていいのか」と最後まで迷ったという。今日も来るかどうかで悩んでいたという。宮本さんはどういう怪我なのかには触れていなかったが、高木さんが代役で踊った後に「途中で何度かグキッてなった」と言って「二人して右足をくじかないように」とさわやか五郎が言っていたので、どうやら右足の捻挫っぽい。そういうわけで、今日の宮本さんの踊りはいつもに比べて動きが押さえ気味だった。ただ、普段の彼女を見ていなければ怪我をしているとは気が付かなかったかもしれない。高木さんとファン10人が『ここにいるぜぇ!』(モーニング娘。)を踊るのを、宮本さんは客席の18列15番あたり(通路を挟んで段差が始まるブロックの一番前)で審査員として見守っていた。高木が真ん中、左右に5人ずつのファンというフォーメーションだった。左右のトーシロー軍団との対比が、高木さんのダンスのキレ、動きの大きさ、オートマティズムを際だたせていた。さすがにモノが違いすぎた。審査員の宮本氏は、左の5人をほめる一方、右の5人に辛辣な批評を行い私たちの笑いを取っていた。MVPを一人選んでプレゼントをあげるということだったが、最優秀賞はまさかの「紗友希」とのことで、高木紗友希に向けてサインを書き始めた。客席からはブーイングに近い反応が出た。高木さんは困惑して「あなたは私にサインなんていつでも書けるでしょ。ファンの人にあげなさい」と親が子供に教え諭すような口調で宮本さんに言った。すると宮本さんは「最優秀は紗友希だけどね」と前置きして、ファンの中で一番よかったのは○○さんだということで「紗友希へ」と書いたサインを左側にいた女性の一人にあげた。

踊りの企画で、研修生Tシャツを着た宮本佳林と高木紗友希を見られたのがこのイベントのハイライトだった。それだけでこのイベントを観に来た価値があった。しかも、このために作り直したのではなく、ハロプロ研修生だった当時に実際に着ていたモノホンだからなおさら稀少であった。当時のサイズだから、「(Tシャツが)ちっちゃくなった」と宮本さんは笑っていたがピチピチにはならず、着られていた。このTシャツを物入れから引っ張り出すために、誕生日にも関わらず部屋がTシャツで散乱したそうである。

わずか1時間のイベントなのでフル・コーラスではなかったが、宮本佳林さんは10曲も歌ってくれた。

『シューティングスター』(スマイレージ)
『自転車チリリン』(スマイレージ)
『夕暮れ 恋の時間』(スマイレージ)
『制服』(松田聖子)
『学級委員長』(スマイレージ)
『大人の事情』(NEXT YOU)
冷たい風と片思い』(モーニング娘。)
わがまま気のまま愛のジョーク』(モーニング娘。)
『涙ッチ』(モーニング娘。)

「そんなつもりはなかったんですけど、全部つんくさんの曲になりました。やっぱつんくさんの曲っていいなって思いました」と宮本さんが振り返ったように、突如として差し込まれた松田聖子を除けば、すべてがつんくの曲だった。

宮本さんが捌けてからも三つの約束があった。家に帰るまでがバースデーイベントだとか、今後も宮本佳林に夢中でいること、とかそんな感じだった。最後のお見送りでは「おめでとう」と言ったら、目を合わせて「ありがとう」と言ってくださった。本当に一瞬しかなくて、辛うじてこのやり取りが出来るくらいだった。宮本佳林さんの誕生日の当日に、面と向かっておめでとう、ありがとうというやり取りが出来たことに心が満たされた。

最近、大久保駅の近くに気になる店が出来たので、夕食はそこで摂ることにした。駅から徒歩1分と書いてあるのに明らかに5分くらいかかった。店の入り口が隣の店とほぼ同じ場所にあって、違う方に間違えて入ってしまった。謝って、正しい入り口に入り直そうとすると「並んでますよ」と欲情したカバが睨んで威嚇してきた。カバ一頭と人間が一人、店の外で並んでいたようだ。私は頷いて、その場を去った。店を間違えたのが恥ずかしくてその場を離れたかったし、メシを食うために並ぶのは好きではないし、何よりもそのカバと、さっきまで双眼鏡で舐め回すように見ていた宮本佳林さんとの落差が激しすぎて耐えられなかった。脂肪だらけの身体。メシのことばかり考えて50年以上(推定)も無駄に生きてきた俗物としての年輪が刻まれた面構え。歩きながらも頭にそいつの余韻が残り、吐き気を催す何歩か手前までいった。これが私が生きなくてはならない現実なのか。今日は自分が2.1キロ太ったことを知り、同僚から結婚の報告を受け、ティーンエイジャーの誕生日を祝い、よく知らない町で恥をかき、得体の知れない脂肪の塊にガンを付けられた。色んなことが起きすぎた。しかも大久保という町は何かガラが悪くて落ち着かない。もうイヤだ。帰りたい。でもまだ帰らない。適当に歩いて「ネパール居酒屋ナングロ」に入った。おすすめと書かれていたサマエボウジという謎の料理1,200円とネパールアイス(ビール)550円を頼んだ。周りに野菜と肉が配置してあるターリー的なフォーマットには馴染みがあったが、真ん中に敷き詰めてある物体の得体が知れなかった。パラパラのフレーク状になった米だった。こんなの初めて見た。初めて食った。私はリアルなのでスプーンは使わず手で混ぜて口に運んだ。何だこれ。なまらうめえ。うますぎる。久しぶりに食に関して衝撃を受けた。この店にはこれからも来なくてはならない。最初に目を付けていた店に入れなくてよかった。どうせ大した店じゃねえし、あそこに行ったらカバになる。