2016年12月2日金曜日

℃OMPASS (2016-11-23)

ちょっとげんなりするくらいに現場が立て続いていた。11月に入ってから3日に『ネガポジポジ』、6日にも『ネガポジポジ』、7日にJuice=Juice武道館、12日にもまた『ネガポジポジ』2公演、16日に上原ひろみザ・トリオ・プロジェクト。そして今回は23日、℃-uteのパシフィコ横浜公演である。7日の武道館がとにかく特別だった。優に一週間は明確な余韻が残っていた。あのコンサートの感触が、洗っても洗っても頭と身体から取れなかった。(私が頭を洗うシャンプーはNature's Gate、身体を洗う石鹸はIVORYである。)ふと気を抜くと、脳内で再生される、幸せな時間。その心地よい感覚にしばらくは浸っていたいという気持ちがあった。それを引きずっていたから、正直なところ12日の『ネガポジポジ』は完璧な集中で臨めたとは言いがたい。11月13日にブログを更新したことで、自分の中での11月7日は一旦、終わった。ポメラを閉じ、喫茶店を出ると、数時間は放心状態が続いた。その三日後の16日に、上原ひろみトリオのコンサートが控えていた。早く退勤して六本木に向かった。すべて自分で決めたことだし、好きでやっているし、これはライフワークなのだが、現場の過密ぶりに呆れていた。でも実際にコンサートが始まるとそんな気持ちはまったくなくなって、夢中で上原ひろみちゃんさんの妙技とチャームを堪能した。

パシフィコ横浜に来るのは私にとって6回目だった。はじめは2013年6月29日、℃-ute『トレジャーボックス』ツアー。二回目は同年11月4日、℃-ute『Queen of J-POP〜たどり着いた女戦士〜』ツアー。三回目は同年11月24日、モーニング娘。『CHANCE』ツアー。四回目は2014年6月29日、℃-ute『℃-uteの本音』ツアー。五回目は2015年11月21日、℃-ute『℃an't STOP!』ツアー。パシフィコ横浜のコンサートは、ちょっと特別だ。中野サンプラザが約2,000人、日本武道館が約10,000人を収容するのに対して、この会場の収容人数は約5,000人である。日本武道館ほど大きくはないけど、中野サンプラザの倍以上に人が入る。普段よりも大きなコンサートをやっているという高揚感が、演者にも観客にも出やすい気がする。実際、思い返すと過去5回のうち4回はコンサートに心が完全に満たされたし素晴らしい思い出だ。残りの1回は主に開演直前にiPhoneをなくしたという完全に個人的な事情によるものだ。あとは席が悪すぎたというのもある。今回はiPhoneをなくさなかったし、席も悪くなかった。むしろこれまでの6回で一番よかったかもしれない。1階の23列。実際に席に着いてみると、数字以上に近かった。近くの紳士はこんなにいい席が来たのは久しぶりだと仲間に言っていた。私は、これから℃-uteのコンサートが始まるという状況を前にして、ワクワクしているような、していないような、変な気持ちだった。随分と久しぶりに来たような落ち着かなさがあった。久しぶりというほどでもない。9月にも、6月にも、5月にも、4月にも℃-uteのコンサートを観させてもらっているし、それに加えて℃-uteの姿は8月のハロコンでも見ている。パシフィコ横浜も過去に何度も来ている。でも、何かの間違いで来てしまったような、しっくり来ない感じが拭えなかった。それはコンサートが終わるまで、ずっとだった。

客席にはJuice=Juiceの現場にはほとんどいない20代前半くらいの男女がたくさんいた。列によっては半分くらいが女性というのもざらだった。以前(2016年5月4日)、Juice=Juiceでコンサート中に観客を二つに分けて声を出させるくだりがあって、宮崎由加さんが30歳以下と30歳以上で分けたところ30歳以上の声が圧倒的に大きかった。そのときのJuice=Juiceの観客は40歳くらいが中央値っぽかったのだが、下手すると今日の℃-uteを観に来た観客は10歳くらい若かったかもしれない。以前の℃-uteのコンサートに比べても、客層がだいぶ変わっている印象を受けた。ここ数ヶ月で、現場に若いファンが急増しているのかもしれない。私が今までに観させてもらってきた℃-ute現場に比べて、普通の人たちが観に来ていたんだろうね。ちょっとノリが違う。長年「エル・オー・ブイ・イー・ラブリー千聖!」のようなかけ声を叫び続けてきた人たちじゃないわけですよ。℃-uteのコンサートはここでこう声を出すというオートマティズムが出来上がっていない人たちが多かった。だからそういう意味では会場の一体感が薄かった。それが悪いと言っているんじゃない。そういう人たちがたくさんいたのは℃-uteが新しいファンをそれだけ獲得して会場まで足を運ばせた証拠だ。喜ばしい。これは凄いことだよ。11月7日に武道館に集まったJuice=Juiceファンのような人々が訓練されすぎで、異常なのである。ただ、アンコールのときにはもっと声を出して欲しかった。椅子に座ってずっと隣の同行者と談笑するのはダメでしょう。声を出すのが恥ずかしければせめて掛け声に合わせてサイリウムでも振りなさいよ。参加者としての意識が足りない。アンコールからのメンバー再登場は実質上コンサートに組み込まれたお決まりですが、あくまで私たちの声で登場させるんだからね。みんなが出さなかったらそこでコンサートは終わるんだよ。

客層が変わったから楽しめなかったということでは、ない。それよりもはるかに重要なこととして、私の中における℃-uteの地位が大きく揺らいでいるんだというのが明確に分かった。それはもうはっきりしすぎていて、自分で愕然とした。前回のツアー『℃ONCERTO』には7回も入った。そのときにはまだ自分の中で℃-uteとJuice=Juiceが(後者がリードしつつあったとはいえ)ある程度は拮抗していた。今日、℃-uteのコンサートを観させてもらって、差が埋めがたいほどにJuice=Juiceが好きなのだという確信に至った。℃-uteが二位なのかどうかも分からなくなった。5月のゴールデンウィークに、℃-uteのコンサートの2日後にJuice=Juiceのコンサートを観させてもらう機会があった。そのときには℃-uteに比べてJuice=Juiceの未熟さが目に付いた。やっぱり℃-uteの方が色んな面でまだまだ上だな、と思った。今日は異なる感想を抱いた。今の℃-uteよりも、今のJuice=Juiceの方が歌がいいと、はっきり思った。実際のところ歌唱の技術は℃-uteの方がおそらく上なんだろうと思う。でも、歌をどうしても届けたいという思いと、歌えること・コンサートが出来ることの喜びがどれだけマイクに乗っているかという点では、Juice=Juiceが℃-uteを大きく突き放していると感じた。11月23日の℃-uteからはそれを強くは感じなかった。かつて私を高揚させてきた曲たちが次々に流れてきても、前のように熱くなることは出来なかった。どこか醒めた目で見てしまった。

よかった点として、
1.5人の容姿・体型の仕上がりが相変わらず完璧だった。その点においては今の℃-uteに穴はない。誰がどう見ても全員、美しい。
2.メンバーたちがパーテーション越しに着替える演出が面白かった。
3.テレビ出演で鍛えられた岡井千聖が牽引するトーク。ハロプロや℃-uteをよく知らない人が聞いても笑えると思う。
・ベッドで飼い犬が用を足した話を披露する岡井千聖。「舞の犬も3匹中2匹は出来ない。犬にも性格がある。ちゃんとトイレが出来ない性格なんだよ」という萩原舞。「ブログのコメントには私の育て方が悪い、言うことを聞かないときに一緒に寝るのがよくないと書いてきた人がいた。じゃあベッドの下でずっと犬がキャンキャン泣き続けたらどうするんですか?」と怒る岡井に「なんでコメントと対決するの?」と笑う萩原。「コメントに言い返したい。じゃあさ…とか。コールアンドレスポンスがしたい。いいねだけ押す人は論外」と岡井。観客は爆笑。「(自分がファンの立場だとして)舞だったらブログにコメントはしない」
・岡井のさまざまなログイン情報を中島早貴が代わりに覚えている。一度、自分で持っていたら使っちゃうから銀行のカードを預かってくれないかと岡井が打診したら、それはさすがに…と中島が断った

『℃OMPASS』(コンパス)というツアー名で何を表したいのかがよく分からなかった。いや、もちろん彼女たちがこの先どこに進んでいくかの道しるべ的な意味合いなのは分かるんだけど、℃-ute解散後に各メンバーが何をするのかって相変わらずふわっとしているからね。終演後に「自分のコンパスは必ず見つかるさ!」という岡井千聖のメッセージがステージに映し出されたのだが、自分に言い聞かせているのかな、自身が持つ不安の裏返しなのかなというひねくれたことを言いたくなる。今後どうしたいのかがよく見えてこない(けど解散という事実と時期だけは決まっている)彼女たちが私たちに向かってそういうことを言っても、あまり説得力がない。もっと言うと、2013年の9月9日と10日に日本武道館での公演を達成してからの彼女たちに最も欠けていたのがコンパス(方向性、指針)だったのではないか。今日のセットリストは寄せ集め感、これまでの活動のダイジェスト感が強かった。そう、解散を発表してからの℃-uteはダイジェスト感、総括感が強すぎて、今の℃-uteにしか出来ない新しいことをやるというチャレンジが弱くなっている。よく言えば完成されたグループ。悪く言えば