2017年6月17日土曜日

ファラオの墓 (2017-06-10)

ちょっと複雑な気持ちだった。『ファラオの墓』は一週間前にいちど観させてもらって非常にいい印象を持っていた。このミュージカルは回によって「砂漠の月編」と「太陽の神殿編」に分かれている。話の内容は一緒だが、一部の配役が異なる。工藤遥さん、小田さくらさん、石田亜佑美さんの三人がシャッフルする。このお三方のうち、前回入った「砂漠の月編」では工藤さんと小田さんが主演を務めていた。サリオキス役が小田さん、スネフェル役が工藤さん。今回観させてもらう「太陽の神殿編」ではサリオキス役が工藤さん、スネフェル役が石田さん。「砂漠の月編」では工藤さんと小田さんがそれぞれの個性を生かした好演を見せていた。演者が変わることでサリオキスとスネフェルがどう変わるのか、楽しみだった。前回は21列だったが、今回は17列と席が少し前になるのも私のモチベーションを高める要素だった。ただ誤算があってね。『Hello Project 研修生発表会 2017 6月~June Tripper!~』東京公演の日程が、丸かぶりだったんだよ。そっちの開演時間が14時半と17時半で、私が入る『ファラオの墓』は15時から。物理的に不可能だったんだ。掛け持ちが。『ファラオの墓』のFC先行申し込みの時点では研修生発表会の日程が出ていなかった。アップフロントはいつもこうやって日程を小出しにするんだ…。そっちの事情もあんねやろけど、出来れば一定期間の興業予定をまとめて教えてくれや。分かっていればこの日に『ファラオの墓』は観に来なかった。研修生発表会の方が優先度は高い。つばきファクトリーが出るからね。そりゃやろうと思えば『ファラオの墓』のチケットを誰かに譲渡して研修生に行くとか、そういう道も選べたわけだけど、お金の問題もあるし、そういうことはしなかった。

正直、つばきファクトリーに後ろ髪を引かれる思いがあった。ところが、いざ『ファラオの墓』を観るとそんなモヤモヤは見事に打ち消された。サンシャイン劇場に来ることを選んでよかったと、終演直後の私は思っていた。研修生発表会とつばきファクトリーを観られなかったことの悔しさはなかった。いくつか理由はある。まず基本的なこととして複数回入るに値する、いいミュージカルだった。会場中から客がすすり泣く音が聞こえてきた。「太陽の神殿編」のサリオキスとスネフェルには、「砂漠の月編」の同役とはまた違った魅力があった。工藤さんはサリオキスとスネフェルの両方を演じていたのだが、敵対し合ういわば正反対の役をよくこなしたなと思った。それも同じ日にサリオキスをやってスネフェルをやって…というのは頭が混乱しそうなものである。第二に、牧野真莉愛さんを近くで観ることが出来た。数名の出演者たちが通路に降りてくる場面があったんだけど、そのときに牧野真莉愛さんが近くにいらっしゃった。といっても間に4列を隔てていたが。わずか数十秒だったけど旗を振りながら歌う彼女を数メートルの距離で観ることが出来た。間近で見ると、改めて凄いな、と。何というか単純にきれいとか可愛いとかスタイルがいいとか、もちろんそれもあるんだけど、彼女が醸し出すアイドルのヴァイブスがもう半端じゃなかった。ドキッとしてしまった。4列を隔ててこれなんだから、接触なんか行っちゃったらどうなってしまうんだろう。私は行かないけどね。三つ目の理由は、終演後のトーク。回替わりで誰かがちょこっと話すんだけど、今日は牧野真莉愛さんと横山玲奈さんだった。これがとても天真爛漫で会場の雰囲気ががほっこりしたし、私を含めて観客は何度も笑っていた。「どうもーアリパビです」と言って(牧野さんの役名がアリ、横山さんの役名がパビ)漫才コンビ的なノリで始まった。観客が拍手するとお二人が動きでパンパンパンと三回揃えて締めるのを要求して、我々もそれに応じた。そのときの動きをとちったらしく牧野さんが「間違えちゃった」と笑っていた。牧野さんは男役をやってみたが結構イケてるんじゃないか的なことを言って工藤さんから「何を言っているんだ」的な突っ込みを受けていた。牧野さんはアリのことがとても好きで、毎日、寝言で台詞を言っていたそうだ。極めつけに、彼女はくるっと回って顔を傾けてほっぺに両手の人差し指を当てて「アリLOVEりんです」という技を炸裂させた。言うまでもないがいつもの「まりあんLOVEりんです」を文字っている。横山さんは、パビはこういう性格で…というようなことを説明した後に観客に向けて「帰れ!帰れ!」(劇中の横山さんの台詞からの引用)と言って、牧野さんと一緒に手拍子を付けながら脇に捌けようとしたが左端にいた方(汐月しゅうさんか扇けいさんのいずれか)に首根っこをつかまれて元の位置に戻された。一連の流れを受けて工藤さんが「ご覧の通り和気藹々とやっております」と言って締めた。おそらく二度と披露されることはないであろう「アリLOVEりんです」をこの目で観られたのは感無量であった。『ファラオの墓』のチケットを手放さずに観に来るという選択は正しかったんだと確信した。ただ、家に帰ってつばきファクトリーのブログを見ていたところ新沼希空さんが今日の衣装を着た写真を載せていた。それを見たら現場で目に焼き付けられなかったことの悔しさが抑えられなかった。(以前にモーニング娘。がツアーで使用した衣装である。“EVOLUTION”のときの衣装だな、エヴォリューションとエロ衣装で韻を踏めるなと思ったが、違った。その一つ前の“CHANCE”の衣装だった。)『ファラオの墓』には満足した。でも、つばきファクトリーも観たかった。この無念さは明日、新潟で晴らすんだ。