2018年12月13日木曜日

アタックNo.1 (2018-12-02)

開演前、私の後ろの席にいた女性二人組が、ひそひそと話していました。コンサートと客層が違うね…。関係者が来ているのかな? そうかもね…。お二人の口調からは戸惑いが感じ取れました。何の関係者のことを言っていたのかは聞きそびれましたが、仮にいたとしても客層をガラっと塗り替えるくらいにいるわけがありません。それでは興行として成り立たないでしょう。昔のMCバトルじゃないんだから。フロアで観てるのもほぼ出演者っていう。そういう時代があったらしいんですよ。何かで聞いた話ですけど。私にとっては落ち着くいつもの演劇女子部の現場でした。彼女たちにとってホームであるはずのアンジュルム現場をアウェーにする側の人間でした。対戦相手の本拠スタジアムに大挙して押し寄せ、事実上のホームにしてしまう浦和レッズ・サポーターのようなものです。(浦和レッズは嫌いです。私が応援するのは横浜F・マリノスです。)私はアンジュルムのコンサートにはそこまで行きたいとは思わないのですが、演劇女子部であれば必ず一回は観たいです。今回の『アタック No.1』に関しては二回観ます。今日と、来週。私と同じ考えのオジサンが一定数いるのでしょう。そして普段アンジュルムの現場を支えている若者たちにとってはコンサートの方が優先なのでしょう。理解できます。若者は元気がみなぎっていますから。騒ぎたいんです。盛り上がりたいんです。舞台というのは基本、座ってジーっと観るものであって、コンサートと同じノリで立ち上がってチャントでも入れようモンならすぐにつまみ出されるはずです(幸いにも私はそのような振る舞いを観劇中にする人に出くわしたことがありません)。舞台の性質上、ある程度トシがいってからの方がよさに気付きやすいのかもしれません。となると、Hello! Projectの他集団と比べて支持者に若者が多いアンジュルムがコンサートと舞台で客層が少し異なっていても不思議ではありません。私が主に観ているJuice=Juiceとつばきファクトリーだとどっちにしろほぼオジサンしかいませんからね。

『アタック No.1』。言わずもがな。と言いつつも私は漫画もアニメーションも観たことがありません。特定の場面がテレビで紹介されているのをちらっと観たくらいはあるかもしれませんが、ちゃんと観たことがないのです。女子バレーボールの話で、何となくスポ根ものなんだろうな、という程度の認識です。今、手元のiPhoneで検索したところ漫画もアニメも1970年前後の作品でした。私が生まれる前なので、よく知らないのも不思議ではないですね。演劇女子部といえば、Juice=Juiceの『タイムリピート~永遠に君を想う~』を10月に観たばかりでした。大変すばらしい演劇だったのですが、一つだけ不満がありました。それは出演者さんたちのお肌の露出が少なかったことです。例外として、段原瑠々さんがスカートを履いてくださり、岡村美波さんと山﨑夢羽さんが二の腕を出してくださっていました。それを除けば、皆さんの衣装はおしなべてお顔以外をほぼ布で覆っていました。10月6日に同演劇を観た後、初対面のSさん(日頃からHello! Projectメンバーさんに関する性的な妄想をTwitterに投稿し、地下アイドルさんとの接触では二十歳になったらエッチしようとお誘いになるにもかかわらず、宮本佳林さんを前にすると上がってまともにしゃべれなくなるギャップが可愛い紳士です)と少し感想を話し合ったのですが、涙を誘う素敵な劇だったというのと、肌の露出が少なくて残念だったという二点において意見が一致していました。ただSさんが言うには肌の露出が少ないことで邪念なしに話の内容に集中できたということで、たしかにそれも一理ありました。『アタック No.1』では『タイムリピート~永遠に君を想う~』に比べてお肌の露出が増えるのは間違いがありませんでした。原作はブルマですからね。さすがに2018年に舞台でブルマというわけにはいきませんでしたが(もしブルマだったら観劇が二回じゃ済みません。何らかの手段を使ってチケットを買い足していました)出演者のほぼ全員が短パンを履いて美脚を見せてくださりました。会場の全労災ホール スペース・ゼロは、ステージと客席が近くて観やすいので、単純に眼福でした。

ただ、内容としては率直に言って退屈でした。物語が予定調和的に進みすぎる。この尺(約2時間)でこの人数分のドラマを描くのが難しいんだろうなというのは想像できます。それならもうちょっと話の焦点(たとえば時期)を絞るとか、やりようがあったはずです。はっきりさせておきますが、これは演者さんたちの問題ではありません。脚本家なのか演出家なのか、どういう裏方がどういう役割分担で配置されていたのかは知りませんが、とにかく裏方の問題です。たとえば別々の中学から同じ高校に入った上國料萌衣さんと和田彩花さん。はじめは上國料さんが和田さんに心を開かず、ケンカに発展するのですが、最終的には和解し、チーム・メイトとして共闘するようになります。ケンカから仲良くなるまでが早すぎて、あっけない。これは序盤だったのですが、私はこの時点でややしらけてしまいました。また、年頃の女の子たちの話にもかかわらず人間関係に複雑さがほとんどなかったです。何か随分あっさりしてるなと。女が集まるともっとジメジメしてるんとちゃうの? 知らんけど(知らんなら黙れ)。鬼コーチの暴力的なしごきに耐え切れず、キャプテン(中西香菜さん)以外の全員が練習を投げ出す場面があります。物語の中では山場だと思うんですけど、みんなすぐに戻ってきて、また私たちを厳しく鍛えてくださいなんて頭を下げに来るんですよ。何なんそれ。さっきまで虐待されてたんやで、自分ら。もうちょっとそこに至るまでの葛藤があるんとちゃうの。何かこう全般的に、決められた結末に向かって機械的に話が進んでいく印象を受けました。何か挫折とか不仲とか不満とか怒りとかが出てくる度に、あーどうせこれはすぐ解決するんだろってのが見え見えで。ですから最終的に上國料さんと和田さんの高校がインター・ハイを制するハッピー・エンドになっても私に感動はなかったです。そうなるって分かってたから。色々と過程をはしょって、結論だけを端的に伝えるような、ビジネス的な味気なさがありました。ハッピー・エンドがカタルシスを伴うには、さまざまネガティヴな要素が話の中で絶妙なバランスを保ち続ける必要があると私は思います。そのバランスが悪いから、緩慢な舞台になっていました。全然、手に汗を握る感じがなかった。原作を知らずに観た私でも簡単に先が読めました。室田瑞希さんがおそらくアドリブでやっている面白い動きには思わず笑みがこぼれましたが、そういうおまけの部分を除けば凡庸だったと言わざるを得ません。正直、会場から出た直後、これは一回でよかったなと思いました。アンジュルムやCHICA#TETSUメンバーさん個々人はとても魅力的な演技を見せてくれたのですが、一つの演劇としては、よかったと手放しで言えるものではありませんでした。『モード』や『夢見るテレビジョン』がとてもよかっただけに、強く期待していたのですが。

敵の高校役の出番が少なく、残念でした。特に私は川村文乃さんと船木結さんをもっと観たかったです。単純に、私の中でアンジュルムで上位に属するメンバーさんたちなので。和田さん・上國料さんたちの高校から観た物語、竹内さん・川村さん・船木さんたちの高校から観た物語、というように公演のパターンを分けたら内容に深みが出て面白かったかもしれません。稽古時間との兼ね合いで、それは難しかったのかもしれませんが。

面白いと思ったのが、三年生でキャプテンの中西さんが新入生の和田さん・上國料さん・室田さんの才能に僻む発言をする場面です。私は三年間やってこれなんだから、あんたたちには勝てっこないのよ、的な。こういう台詞を彼女に言わせることには製作者の意図があるのかもしれません。終演後のトークでも和田さんが、この話はアンジュルムの物語としても観ることが出来る的なことをおっしゃっていました。やろうと思えば細かい台詞も色々と深読みが出来るんだろうな、とは思いました。この舞台では、和田さんが中西さんにこのチームのキャプテンになってくださいってお願いするんですよ。となると、中西さんがアンジュルムの次期リーダーになるのか?

和田さんが台詞でチームを…という箇所をチンポ…のような感じで噛んでいて、ヒヤヒヤしました。