2021年5月21日金曜日

花鳥風月 (2021-05-16)

双眼鏡越しなのに小野瑞歩さんからレスをいただけたような感触が何回かあった。もちろん実際にはレスではなかったかもしれない。VAR (video assistant referee)が介入したら、3月17日(水)に徳島ヴォルティスさん戦で前田大然さんが決めたゴールのように取り消しになる可能性が高い。そんなに前の席ではなかったし、そもそも双眼鏡に送られるレスというものが存在するのだろうか? おそらく私が勝手にレスのように感じたに過ぎない。いわば疑似レスである。ところが人間の脳は都合よく出来ていて、疑似フェラを見て興奮するのと同じように、疑似レスでも実際のレスをいただいたような喜びを得てしまう。後から考えると単に双眼鏡で視界を拡大していたから小野さんがこちらの方向を見ただけで私を見てくださったと誤解しやすくなっていただけではないか。しかしそんな理性的思考とは関係なく、私の脳は勝手に幸せ物質を分泌させた。小野瑞歩さんのことがまた好きになってきた。

Hello! Projectへの依存度を下げ、フットボールとジャズを愛好するイケてるインテリ一般男性へのジョブ・チェンジを成功させつつあった私だが、仙台の地で小野瑞歩さんに引き留められた感がある。度々このブログでも書いているように私にとってHello! Projectは生きる目的というよりはいくつかある楽しみの一つになっていた。コロナ騒ぎがそれに追い討ちをかけた。制限下の興行に前のように興味を持てなくなったのもあるし、自分の収入が減って出費を絞らざるを得なくなったのもある。コロナ騒ぎ前に比べて私の心がHello! Projectから離れているのは間違いない。自己分析するに、私がこのブログでアイドルという存在についてメタ的に語ることが増えたのはそれが原因だ。料理があまりに熱いと味が分からないように、アイドルにどっぷり浸かっているよりは熱が少し冷めてきた頃合いの方が冷静に考えられる。その状態で出会ったミシェル・ウエルベックさんの小説。答えが書いてある、と私は思った。

こんにちは
あ、久しぶり! 超可愛いお洋服
あ、ありがとうございます。あの、ちょっと遅いんだけど
うん
お誕生日おめでとう。二十歳
ありがとう
何年もアイドルを続けてくれてありがとう。応援できることが幸せです
ずっと応援してね
はい
え、お洋服超可愛い!
2020年11月21日(土)ベルサール新宿グランド 個別お話し会 二部
(ちなみにこの日の私は上下Needlesだった)

コロナ騒ぎが始まってからのコンサートである『ザ・バラッド』、“STEP BY STEP”、『花鳥風月』に、数回ずつではあるが私は足を運んだ。小野瑞歩さんが出演する公演だけを選んで申し込んだ。実のところ、公演中は小野さんのことばかりを観ていたわけではなかった。彼女が団体から身を引く際には私もHello! Projectオタク活動からの引退を視野に入れている。何事もなかったかのように別のメンバーさんに鞍替えするということはあり得ない。ただそれは義理と意思の領域であって、小野さんへの熱をいつまで保てるかは別の話。一時期に比べれば弱火になっているのは否めない。でも、今日に関しては目が離せなかった。夢中でステージ上の小野さんの一挙一動を目に焼き付けるあの感覚が戻ってくるのを感じた。

照明に反射して光る、小野さんの顔の汗。衣装のラメのように彼女をキラキラさせる。意図された演出と感じられるくらい、コンサートの欠かせない要素だった。井上玲音さんが、今日はリハーサルから暑かった。そしてこの花ティームは残り数公演しかないので一同、気合いが入っていた。それが私たちの発汗につながった、的なことを言っていた。新沼希空さんが一番スゴかった。もう、汗だく。左肩を露出した衣装の譜久村聖さんはデコルテが水浸しになっていた。(公演後にご一緒した譜久村さん支持者の紳士は、譜久村さんの髪型がポニー・テイルだったので衣装と相まって首周りと肩をよく見せてくださっていた点にたいそう欲情なさっていた。)でも誰一人として汗を拭わないのがプロだった。

小野さんの表情が味わい深く、ずっと観ていても飽きない。単に笑顔がステキというだけでなく、その時々によって微妙に異なるさまざまな感情がブレンドされている感じがする。楽しいとか嬉しいだけでなく、たとえば照れ臭いとか。そのときのリリックとご自身のお気持ちに合わせて調合しているのだろう。表情のブレンドを変えることで言葉を使わずに我々と会話をしている感じ。

一曲目の『桜ナイトフィーバー』(春というだけで毎年この季節にセットリスト入りする駄曲)で、何度かメンバーさんが屈む場面がある(これってどうなんでしょう? の箇所)。譜久村さんが衣装の下で胸部に巻いているサラシのようなものが見えた。小野さんはどうも衣装の首元を真ん中で止めてあったらしく、衣装の中は見せてくれなかった。島倉りかさんがスカートの中にお召しになっているスパッツ。井上さんと新沼さんが足を高いキックで見せてくれる短パン。フットボールで球際の激しさ、インテンシティが重視されるのと同じように、Hello! Projectのコンサートでも足をしっかり上げる、腰を低く落とすといった動作の一つ一つを本気でやってくれるとメンバーさんの気持ちが伝わってくる。何となく流してやっていると観ている方も分かる。さんが最初にお召しになっていた白いロング・パンツはよく見ると中のが透けていた。それは私を性的に興奮させた。

女性の太ももを感知すること、その交わるところにある性器を頭の中で再構成すること、興奮の程度が直接持ち主の生足の長さに比例するこのプロセスは、ぼくの中では意識されることなく、あまりにも機械的に行われ、ある意味でDNAにすり込まれていた。(ミシェル・ウエルベック、『服従』)

トークネット・ホール仙台。アップフロントさんが私に与えた席は13列だった。中の上くらいの席だが、割と小じんまりした会場だったので、悪くはない位置だった。双眼鏡を使うと動くアンオフィとでも言うべき景色を得られ、満足出来た。盛り上がることが許されず、座って黙って鑑賞しなければならないという制限下では、ステージとの近さが公演への満足度を決める重要な要素である。どの席でも同じやり方でしか鑑賞させてもらえないので、席の悪さを自分の鑑賞方法で取り返すことが出来ないからだ。良席の相対的価値は前よりも更に高まっている。二階席からの観覧だった千葉公演に比べ私が格段に楽しめたのも、席が比較的良かったというのが大きな要因だったと思う。久しぶりにHello! Projectの現場が心から楽しかった。そう思えたのはたぶん去年8月のリリース・パーティ以来だ。

私は双眼鏡に専念するためにペンライトを持ってこなかった。ペンライト利用者への係員の当たりがきつかった。曲と曲の間にしょっちゅうスーツ姿の青年が飛んで来て注意してるの。誰かが『こんなハズジャナカッター』の最後に振りコピで一秒くらい頭上にペンライトを上げただけでも注意の対象になっていた。注意基準の妥当性は別として、禿げ散らかして、もしくは半分くらい白髪になって、ステージの少女に向けるペンライトの高さを執拗に注意される中高年は人生に悲哀があり過ぎる。

コンサートは日曜日だったんだけど、土曜日から仙台に入って精神的にリラックス出来ていたのもよかった。ちょっと危なかった。数週間前に労働でやらかしたエラーの火種が金曜日に燃え始め、不穏な空気が漂っていた。運良く丸く収まった。上司に説明と謝罪を済ませて土日に持ち越さずに済んだ。この旅で読むために部屋の積ん読から拾った『黄泉の犬』(藤原新也さん)が面白かった。独特の文章展開と構成。仙台でコンサートを観る以外にやったことと言えばサテンをハシゴしてひたすらこの本を読んだのと、メシを食ったくらい。土曜日と日曜日に入ったランチ処が両方とも大当たりで。商店街の中にある魚たつさんと、電力ビルの地下にある扶餘さん。おすすめ。公演後に譜久村聖さんを支持する紳士と入った焼き肉屋さんのひがしやまさんもよかった。焼き肉屋さんって簡単に一人五千円、六千円、あるいはもっと行くじゃない。ここは定食があってね。それと一杯ずつ飲んで一人2,300円で済んだ。もちろんもっとおいしい焼き肉屋さんはたくさんあるけど、値段を考えると高く評価できる。半額キャンペインで新幹線を利用できたので移動のストレスも少なかった。日曜の23時頃に帰宅。月曜日はフィジカル出社のつもりだったがちょっとしんどい。在宅勤務に切り替える。