2021年5月29日土曜日

つばきファクトリー 2ndアルバム発売記念 ミニライブイベント (2021-05-27)

食とは何か? 働くためです。
食の必要を突き進めれば、労働に結びつきます。
人間を働かせるために、食は発展したのです。
食が消えれば、強制労働は消えるのは必然な流れです。
(山田鷹夫[編著]、『不食実践ノート』)

労働と消費は同じコインの裏表。誰かの消費は誰かの労働。それでも我々は労働を憎み、消費を愛する。消費者は比較をして商品やサービスを選ぶ。競争が激しければ激しいほどその商品やサービスの提供元は二つの相反する要求に応え続けることを強いられる。もっと安く、もっと質を高く。それは回り回って誰かの労働をもっと安く、もっときつくさせる。自分の労働を厭々やっている人でも、消費者としてふてくされた接客や対応を受けようものなら当然のように怒る。自分のことは棚に上げ、他人にはプロであることを要求する。自分は大して給料がよくないからこの程度でいいんだと(口に出すかは別にして)開き直るのに、他人に要求するときには相手の待遇のことなぞ殆ど考慮に入れない。

最低限の衣食住にかかる費用は別として、我々は労働の痛みを癒すために消費をしている。労働は鬱病と強く結びついている。労働で鬱病になるのは言うまでもないとして、労働をしていなければしていないで自己肯定感や社会との結びつきを失い(デュルケームさんの言うところのアノミー)鬱病になる。場合によっては自殺する。現代日本では大人になって労働経済に参加していなければ社会の一員として認められない。だから我々は就労していようがしていまいが、消費を通じて得られる快楽なしで生きていくのが難しい。労働あるいはそれがない苦しみを、他人の労働で和らげてやり過ごしている。もちろん労働が楽しくて仕方がないとか、生き甲斐だという人(そういう人は労働という言葉は使わない)も一部にはいる。食えている芸術家や、心からやりたいことがあって起業して成功している人はそうなのだろう。ただの会社員がそう思っていたら一種の洗脳(やりがい搾取)を受けている。そうじゃなかったら相対的に楽で高給な職にありついている。運良くババを引かなくて済んだだけの話。雇用市場や社内での立ち回りが器用なだけ。くだらない。どこかの誰かがそのしわ寄せを受けている。

労働と消費のスパイラル。就労第一という価値観。適応出来ない者に渡される鬱病と自殺への切符。大学を出て企業に就職した瞬間から私は罠にかかっている。いや、その前から消費者として手懐けられ、この構造に組み込まれてきた。私はここから一生、抜け出せる気がしない。本当は労働を憎むのなら消費も憎まないといけない。Juliet B. Schorさんが“The Overspent American”で書いていたように、消費によって何らかのステイタスを得られるという幻想を捨て、不要な消費と過剰な労働というサイクルから抜け出すのが、労働を愛せない人の目指すべき道だ。消費をすればするほど労働への依存が高まる。もし仮に人生で支出をゼロに出来るなら労働はしなくていい。それを突き詰めたのが山田鷹夫さん。食べないで生活する(不食)という境地を切り開いた。無人島に移住して不食を実践すれば働かなくて住む(『無人島、不食130日』)。

私が何とか精神を病み過ぎずに(軽度に病むことはたまにある)労働経済に踏みとどまっていられているのは、横浜F・マリノス、田村芽実さん、Hello! Projectさんといった存在のおかげだ。私が生きる目的といっていい。しかし彼らとて慈善事業ではなく商売。お金がなければ活動を続けられない。お金を払わなければ試合や舞台、コンサートを観ることは出来ない。お金を得るためには労働を続けないといけない。

私は基本的に平穏で恵まれた環境にいるが、楽しい、ワクワクする、面白いといったポジティヴな感情を労働から得ることは皆無と言っていい。特に最近はそうだ。我慢するのが職務のようなものだ。何日か前にストレスで胃腸に異変をきたし、食欲が減退し、下痢になった。検索すると過敏性腸症候群というやつっぽい。私は元々ストレスにはさほど強くない。最近はそれを発散させるのも難しくなった。コロナ対策禍(コロナそのものよりむしろ行政によるコロナ対策が民衆を苦しめること。金井利之さんの『コロナ対策禍の国と自治体』参照)による興行への制限で、フットボールでもコンサートでも声を出すことが許されない。(ちなみに明治安田生命Jリーグではゴールが決まったときに観客が大声を出しているのは暗黙の了解である。これで1,000試合以上やっていわゆるクラスターの発生がゼロというのは皆さんにも知ってほしい。)マスクを着けて、座ったまま、黙って観ていなければならない。かつてのように感情を爆発させることが出来なくなった。人生そのものにおいて、である。

いいこと教えてあげよっか。黒い半袖Tシャツからムキムキの腕を覗かせる小麦色の男性が対面に座る女性に言っていた。話の断片によるとどうやらジムの店長らしい。ジャガイモは食物繊維だから、ベジ・ファースト。血糖値の上昇を防いでくれるよ。へえ、そうなんだあ、と女性は答える。食物繊維を最初に食べることで糖質の吸収が穏やかになり、血糖値の乱高下を防げる。よく知られた話。だけど、ジャガイモでそれが出来るのか? 食物繊維なんか入ってたっけ? 糖質制限系の本ではむしろ血糖値を急上昇させる悪役のような扱いを受けている。後で調べてみたらジャガイモに多くの食物繊維が入っているのは事実だった。驚いた。しかしベジ・ファーストのベジにジャガイモをカウントしてよいのか? 実際のところどうなんだろう。ある程度の食事が摂れるまでには胃腸が回復していたので、横浜のハングリー・タイガーさんで昼食を摂った。ダブルは無理。シングルでお腹いっぱい。

コンパクト・ディスク販売開始時刻の12時半ちょうどくらいにクラブ・チッタに到着。土砂降りの雨の中、信じ難い長さの列が出来ていた。全員が傘を差していた分、人と人との距離があった。それを差し引いても、つばきファクトリーさんが平時にリリース・パーティをやっていたときの二倍から三倍はいるのではないだろうか。周囲から漏れ聞こえてくる会話によると、10時頃からちらほら並んでいたらしい。もちろん早くから並ぶ人はいるにせよ、ここまでの規模になるとは予想していなかった。それに、事前に会場周辺に溜まらないでくれというアップフロントさんからのお願いに馬鹿正直に従いすぎた。マリーシアが不足していた。一度の会計で買えるのは一人一枚。つまり二回行われるリリース・パーティの両方に入るためには二度並ぶ必要がある。列の最後尾に着いた時点で分かったのは、二回分の入場券を手にするのは不可能だろう。一回分も手に出来ないという最悪の事態も想定しないといけない。その場合はお見送り会だけに参加しようか? それとも帰ろうか? “Your Money of Your Life” (Vicki Robin and Joe Dominguez)を読む。ページがびしょびしょに濡れていく。

この列は何なの? これみんな密になっちゃうんじゃねえの? なぞと笑いながらエスタシオン係員に聞く、通りすがりの小汚い老紳士。テレビで仕入れた密とかマスクとかワクチンとかのクソ情報で頭をいっぱいにしたまま死んでいくと思うと憐れだ。私がこのコロナ騒ぎで学んだことの一つが、人は老人になったら賢くなるわけではないということ。いや、それは何とか…とエスタシオンははぐらかすように答えていた。きちんと対策をしていますので密にはなりませんと自信を持って言えばいいのに…と思いながら、私は本に意識を戻した。

後ろに並んでいた若いナオン二人組の片方が、この瞬間もテレ・ワーク中ということになっていることを明かしていた。ちょっと横山玲奈さん的な喋り方。今日は朝8時に起きて、餃子を作って…それでここに来た、と労働に関する言葉が何も出てこなかった。バレないの? と聞くお友達。バレない。列は最後の方になると会場内に入る。フロアの後ろで、つばきファクトリーさんのリハーサルが聞こえてくる。『三回目のデート神話』。ちょっと得した気分。さっきのナオンが、これから会議が始まる。今当てられたら(リハーサルの音が入るので)困る。何かやたら当てられるんだよね。あんまり悪いことしてないのに。なぞと明るく話していた。私は感心した。労働というのは、労働者というのは、こうあるべきだ(有給休暇を取れなかったのかという疑問は残る)。売り場まであと20-30人というところで、参加券が残り少なくなっております、只今お並びのお客様でもご希望の参加券をお買い上げになれない可能性があります、と案内を繰り返す。緊張が走る。その少し後に、1回目の参加券が完売したという案内が来た(つまり販売開始時刻に少なくとも300人以上が並んでいたということ)。焦ったが、何とか2回目の参加券を確保することが出来た。1時間40分くらい並んだことになる。185番。うーん、決してよくはないが、パーティに参加する権利を有しただけでよしとしなければならない。箱に手を入れた感触ではまだ数十枚はありそうだった。箱はもう一つあった。用意されていた参加券は300枚ずつ(計600枚)らしい。何で1回目だけがこんなに先に枯渇する? 普通に考えたら19時開演の2回目の方が労働者は参加しやすいのでは? 首を傾げる。後から理由を考えたが、松永里愛さんと工藤由愛さんのFCイヴェントが夕方にあったので、それと回したい人が多かったのだろう。

星乃珈琲店で、オキニのノートブック(マルマンノート ニーモシネ A5 無地 N183A)にオキニのペン(パイロット アクロボール 0.5)で頭の中の考えを書き記す。数日前に比べるとよくなってきているが、まだ胸が苦しい。胸の内を言葉にして自分で向き合うことで少しでもこのつらさを鎮められるのではないか。そう思って書いた言葉の一部が、この記事の前半部分(最初の◆をつけるまで)の土台である。

商店街にある焼き肉店の夜定食に惹かれた。肉200gで、約2千円。この鬱状態から脱するために赤身肉を食ってタンパク質や鉄分をたっぷり補充した方がいい。迷ったが、もっと安く済ませたいという考えが勝った。観行雲さんで鶏肉とカシュー・ナッツ炒めの定食。700円。

10月18日(月)につばきファクトリーさんが日本武道館でコンサートを行うことが、5月26日(水)にYouTubeで発表された。いい知らせなのは間違いないが、私としては素直に喜びきれない部分があるのも否定できない。本来なら2020年の5月にいわゆるホール会場でのコンサート・ツアーをやるはずだった。コロナ騒ぎで頓挫したその計画から再開するべきなのではないか? 過程を踏まずにいきなり日本武道館というのは思い出づくりの印象が強く、白けてしまう部分がある。研修生ではなくつばきファクトリーさんとBEYOOOOONDSさんがホールでの単独公演をやるべきだった。もっとも一番大事なのはメンバーさんのモチベーション。武道館に立てるのを励みに彼女たちが前向きに活動を続けていけるのなら、それが正解なのだとは思う。

つばきファクトリーさんがドロップした新アルバム“2nd STEP”を、私は発売日前日の5月25日(火)に受け取った。まだ数回しか聴いていないので断定的な評価は下せない。新曲は一人一人の歌声をフィーチャーした曲が多くメンバーさんたちの成長を楽しめる。『断捨ISM』から始まるというハード・コアな構成で出鼻をくじかれるが、そこまで悪くはないのではないか。少なくとも音楽性の停滞したモーニング娘。さんの新アルバム“16th~That's J-POP~”よりは面白い。それが現時点の印象だ(モーニング娘。さんに関してはアップフロントさんが2012年の“One・Two・Three”以来のEDM路線をいつまでも最先端だと思っていそうなのが痛々しいし、この期に及んで例のフォーメイション・ダンスとやらの自己満を得意げに押し出しているのは見ているこっちが恥ずかしくなる)。

このように情報を受け取るだけで、曲を聴いただけで、ゴチャゴチャと意見を言うことは出来る。しかし、大事なのは御託をこねることでもケチをつけることでもない。現場で体感することなのだ。つばきファクトリーさんたちがひなフェス2021で初披露した脚をガッツリ露出したミント色の衣装でステージに現れ、照明を浴びながら『マサユメ』をパフォームするとすぐに余計な考えは頭から消え去った。メンバーさんの熱量、輝きに魅了され、夢中になった。「この現場以外に本場なんてのは存在しない 外野の野次は聞くに殆ど値しない」(ライムスター、『ウワサの真相 feat. F.O.H.』)という宇多丸さんのリリックが頭に浮かんだ。このパーティの前と後では『マサユメ』の鳴りが違うんだよ。明らかに。私の中で特別な曲になった。

私の席は真ん中よりも後ろだったけど、それでも十分に近くて。メンバーさんの表情からは、つばきファクトリーさんという単位でのショウが出来る喜びが伝わってきて。ラモス瑠偉さんみたいなことを言うけど、何をやるにも気持ちって大事だよ。技術があればいいってものではない。気持ちを伴わない表現、活動、労働はどこかで破綻するよ。本当に一人一人が可愛くて。太ももが眩しくて。全力でやってくれるキックではショート・パンツから覗く脚の付け根付近がちょっときわどくて。『恋のUFOキャッチャー』のヒップをふりふりするダンスがコケティッシュで(この箇所については事実上お尻を丸出しにしてくれているに等しいジャージ姿でのダンス動画が至高。同じ意味で『My Darling~Do you love me?~』のダンス動画も宝)。声は出せなくても会場の雰囲気はスゴくよかった。ハロ・コンより何倍も楽しかった。つばきファクトリーさんが出てきたら私はすぐに笑顔になった。音楽に身体を揺らし、エメラルド・グリーンのペンライトを小野さんに向けて振っていると、さっきまで重苦しかった気持ちが、スーッと楽になったんだ。そこでふと思った。もしかして配偶者や子供がいる人は、こんな回復効果を日頃から得ているのだろうか? そういえば前に読んだ本に、子供、孫、恋人、配偶者といった愛する人と過ごすことには大きな疲労回復効果があると書いてあった(渡辺恭良・水野敬、『疲労と回復の科学』)。我々はアイドルさんに依存してでも対抗しないと勝負にならないじゃないか!

不思議なんだけど、画像や映像だけでは、私は小野瑞歩さんが最も魅力的だと常に思うわけではない。でもこうやって現場に来ると、やっぱり彼女が好きだな、私は彼女を応援したいなってその度に思うの。『My Darling~Do you love me?~』のフックでメンバーさんが一列に並ぶとき、左端に来る小野さんがちょうど私の席から見て真正面でね。愛してるって私を見て言ってくれているような感覚を味わえて、好きになってきた。

本編中は一切の発声が禁止だったが、お見送りではなぜかメンバーさんとの会話が許された。メンバーさんの並びは右から左、年上順だった。人の流れをしばらく見たアルビ兄さんが、一回目もそうだったが流れ方が早い。心の中で握手をしているつもりで。次いつやれるかは分からない。とスピードを緩めるよう我々に促した。私は個別お話し会にも申し込んでいないし、たしかに小野さんとお話をする機会は滅多にない。私は殻を破ることにした。手元にある二枚のお見送り参加券。もしこれが小野さんと対面できる最後の機会だとしても悔いがないように、二つだけを伝えるとすると…。

お見送り1回目
小野さん:あ!(指さし)
小生:みずほchan一番かわいい!
小野さん:イェイ! 一番!(指で1を示す)ありがとう!

お見送り2回目
小野さん:みずほが一番!(指で1を示す)
小生:(意表を突かれ、言葉に詰まる)……。好きです
小野さん:あっはっはっは

つばきファクトリーさんに、小野瑞歩さんに、誇張抜きで、文字通り生きるための元気を貰えた。本当に楽しかった。くりぃむしちゅーさんのオールナイト・ニッポンを聴いても素直に笑えないくらい弱っていた精神が、帰りの電車では目の前に上司がいたら殴ってやると思うくらいまでに回復した。マジで殴りてえ。どんな薬でもこんなに効かないだろ。CBDオイルよりもつばきファクトリーさんが効く。ナイアシンよりもつばきファクトリーさんが効く。5-HTPよりもつばきファクトリーさんが効く。セント・ジョーンズ・ワートよりもつばきファクトリーさんが効く。つばきファクトリーさんは私を救った。つばきファクトリーさん、本当にありがとう。コロナ騒ぎで興行がやりづらい中、このパーティを実現にこぎつけたアルビ兄さんをはじめとする裏方の皆さん、本当にありがとう。