2015年2月4日水曜日

国内盤ボーナストラックは滅びよ

ティグラン・ハマシャンという、ハロプロ研修生の浜浦彩乃の愛称のような苗字を持つアルメニア人ピアニストによる新譜"Mockroot"を発送したという連絡が、アマゾンから来た。アマゾンで商品を検索して現在の値段を調べたところ、私が購入した価格はそれより200円くらい安かった。値段を調べるためにアルバムを検索したのだが、ついでに日本国内盤が4月に出ることを知った。収録曲を見ると13曲。輸入盤はどうやら12曲。つまり日本国内盤には一曲ボーナス・トラックが付いているのだ。少し悔しかった。

海外アーティストのアルバムの日本国内盤にボーナス・トラックを付けるというこの慣習、やめてほしい。曲数が少ない輸入盤が不完全版に見えてしまうから。実際には輸入盤が完全版のはずである。なぜなら本国で発売されている輸入盤の曲目が本来の構成だからだ。国内盤のボーナス・トラックが輸入盤に収録されていないのにはそれなりの理由があるはずなのだ。制作した人々が、その曲を入れない方がアルバム全体のバランスがよいと判断したのかもしれない。もしくは曲単体の出来が他の収録曲に比べて落ちると判断したのかもしれない。いずれにしても、ボーナス・トラックをアルバムに入れると本来アーティストや制作陣が意図していたバランスは崩れるはずなのだ。

iPodに色んなアルバムを入れてシャッフルするという聴き方をするのであれば、アルバムのバランスは重要ではない。しかしアルバム単位で音楽を味わうのにこだわるのであれば、曲数や長さ、個々の曲のつながりはとても大切なのだ。短ければいいというものでもないし、長ければいいというものでもない。おまけが付いていれば必ず嬉しいというものでもない。食事に喩えるならば、デザートを平らげて満腹になって満足したところに追加で肉料理を一皿出されても、食べたところでデザートの余韻が消えてお腹が苦しくなるだけであって、ありがた迷惑なのだ。

だったらお前が勝手に輸入盤だけを買って国内盤は無視していればいいだろうと思うかもしれないが、そうはいかない。好きなアーティストの曲は一つでも多く聴きたいし所持したい。輸入盤を聴いていると、自分が買わなかった国内盤に入っているボーナス・トラックは一体どんな曲なんだろうかと気になって仕方がない。自分のiTunesにそのボーナス・トラックが入っていないのが落ち着かない。オタク的な収集精神と音楽好きとしての好奇心が、国内盤ボーナス・トラックへの無関心を拒むのである。

今までに見てきたボーナス・トラックで嫌だったのを一つ挙げると、上原ひろみの"Place to Be"というアルバムの国内盤に付いている矢野顕子とのデュオ曲だ。このアルバムは本編がすべてピアノソロ、つまり上原ひろみの超絶的なピアノ演奏以外の音がいっさい入っていないにも関わらず、ボーナス・トラックになっていきなり違うピアニストの演奏が混じってしまうのである。曲のよしあしに関係なく、ピアノソロのアルバムにピアノソロ以外の曲をおまけで付けるという発想そのものに頭を抱えてしまう。実を言うと、"Place to Be"は輸入盤を買って、国内盤は聴いていない。聴きもせずに何を愚痴っているんだと思うだろうが、あのアルバムはボーナス・トラックなしで完璧なピアノソロなのであって、ピアノソロではない曲であるという事実だけでボーナス・トラックが入った盤に拒否反応を示すくらいに嫌なのだ。

もうすぐで手元に届くティグラン・ハマシャンの新譜については、国内盤のボーナス・トラックが出来るだけクソ曲であることを望んで止まないのである。