2017年3月5日日曜日

JKニンジャガールズ (2017-03-04)

朝にイタリアン・トマトという喫茶店に入ると、高確率でアイス・コーヒーを飲みホットドッグを食べる私の姿を観測することができる。この店のことはまず名前からして私は馬鹿にしていたし最近までほとんど利用していなかったのだが、Softbankのwi-fiが利用できるのと、ホットドッグがおいしいことに気付いてからよく入るようになった。Wi-fiを利用して少し前までは『スーパーマリオラン』、今は『借金あるからギャンブルしてくる』というゲームを遊んでいる。ホットドッグは単品の値段が300円くらいだし、過度に期待されても困るが、少なくともKFCやFirst Kitchenのよりは百倍うまい。何が違うかというとパンがもっちりしている上にトーストしてから出してくれる点である。あとは何と言っても、店に置いてあるハバネロ・ソース。これは中毒性がある。これをたっぷりかけてからいただくと格段においしくなる。もはやイタリアン・トマトのホットドッグはハバネロ・ソースを味わうための媒体、そう断言したくなるほどにハバネロ・ソースが重要なのである。

ハロー!プロジェクトの演劇やミュージカルも、イタリアン・トマトのホットドッグのようなものである。つまり、演劇やミュージカルというフォーマットや、それに付随する脚本、演出、等々は、出演者たちの魅力というハバネロ・ソースを楽しむための媒体なのである。演劇やミュージカルであるという以前にハロー!プロジェクトの公演であるという前提を抜きにして語るのは片手落ち(「かた」で韻を踏んでいる)である。イタリアン・トマトのホットドッグにハバネロ・ソースをかけないで食べるようなものなのである。

前に観させてもらったのは先週末。6日後の今日は千秋楽(韻を踏んでいる)。私は最後ではなく、その一つ前の公演(15時開演)に足を運んだ。外れたのではなく、最初から申し込まなかった。最後の回は私のような一見さんではなく、こぶしファクトリーの熱心なファンが入ればいい。あと、最後の回は応募が殺到するだろうから、そこを避けた方がいい席が来やすいのではないかという下心もあった。実際、その通りになった。先週は5列目。段差が始まる列で、たいへん観やすかった。今日はなんと、最前列。ちょっと緊張する。ステージの皆さんにぶざまなナリ(ナニではない)を見せつけるわけには行かないのでNew BalanceのM990(MADE IN USA)を履いて、Levi's Vintage Clothingのジーンズを履いて、Engineered Garmentsのネルシャツとベッドフォード・ジャケットを着て、カバンはPaul Harndenにして、オタクっぽい服装をしないで普通の格好をして自分はオタクじゃないぞっていう感じで…。その上、ジャケットを脱がないで観劇するというドレス・コードを自らに課した。

12時43分にグッズ売場に行ったら高瀬くるみさんの日替わり写真にSOLD OUTの紙が貼ってあり、困惑した。誤算だった。ゲスト出演者の二人(上國料萌衣さんと和田彩花さん)の写真が売り切れているのは想定内だった。他になくなっていたのは高瀬さんだけで、他の人たちのはまだ残っていた。少し迷って、井上玲音さんと堀江葵月さんの日替わりを入手した。今日(3月4日)は藤井梨央さんの18歳の誕生日らしいので彼女のを買うというのも頭をよぎったが、もし私が買ったことで藤井さんのファンがその写真を手にする機会を奪ってしまったら悪いなと思い、手を出さなかった。会場のプレゼントBOXには藤井さん宛にファンからのプレゼントがいくつも入れてあった。

今日のゲスト二人、特に上國料さんの動きを見て、この枠に求められる役割はサッカーで言うところのスーパーサブなんだな、と思った。上國料さんと和田さんが会場の通路から現れたときの、場がパッと華やぐ感じ。日本代表の試合で中山雅史さんや岡野雅行さんが投入されるときの盛り上がり、あれに近いものがあった。スーパーサブは短時間で強い印象を与えないといけない。観客と選手から多大なプロップスがないと成り立たない。怖い選手が出てきたと思わせるカリスマ性。こいつならやってくれるだろうという期待。私が観させてもらった2公演では偶然にもゲストが共にアンジュルムから選出されていたが、今のつばきファクトリーで誰かが出てきたとしてもアンジュルムのメンバーが作り上げたほどの一体感は生まれなかっただろう。

上國料萌衣さんには驚いた。いくら役とはいえ、あそこまで振り切って弾けたぶりっこをする彼女を観られるとは思わなかった。ゲスト出演者に割り振られる役はカラオケ店員と教官。上國料さんはカラオケ店員。2月26日に、室田瑞希さんが同じ役を担当した。あそこまで過剰に活力があって面白いことをされたら同じグループの上國料さんとしてはやりづらいだろうなと思っていた。そもそも普段からひょうきんな室田さんに比べて、上國料さんはおとなしくて清楚な印象がある。しかし蓋を開けてみると私の知らない上國料萌衣さんがそこにはいた。何度かほっぺに両手の指を付けて「らぶりんです」と牧野真莉愛さんのネタまでやっていた。ポスト・パフォーマンス・トークでは「自分でも信じられない」ほどに役がぶりぶりだったと言っていた。つまり上國料萌衣は漢 a.k.a. GAMIなのである。

話を戻すと、今日は最前列に座るという特権を得た。そこで得たストリートの知識を一つ教えてやるが、こぶしファクトリーの皆さんはめっちゃいい匂いがした。彼女たちが制服を着て登校するときにステージを走って横切る場面があるのだが、そのときに一帯がふわっと芳香で包まれ、ちょっと興奮した。こうやって視覚だけでなく嗅覚にまで訴えかけられてしまうと、細かいことはどうでもよくなる。“Teenage Mutant Ninja Turtles”のオマージュと思いきや題名のパクリで終わっているとか、いいじゃないかそんなことは。一番前は特別だ。ここにいないと分からないことがある。花粉症で嗅覚は少しだけ鈍っているが、幸いにも今年は例年に比べて症状が軽い。なぜなら花粉が飛び始める前から耳鼻科に駆け込み、処方してもらったクスリ(アレグラ)を飲み続けているからだ。ドクターによると飛散が始まる1週間前からクスリを飲み始めるとよくて、服用開始が早ければ早いほどよく効くというわけではないそうだ。その通りにしたら、今年は比較的、楽なんだ。毎春、演劇女子部の時期と言えば花粉症に苦しんでいるのだが、今年は今のところ軽くて助かっている。

井上玲音さんが物体を消す忍術を唱える際に「消えろ消えろ消えろ、消えろ消えろ消えろ…」と手の動きを付けながら言うんだけど、握手会で不快なファンに遭遇したら休み時間に裏でこの呪文を使っているんじゃないかと想像し、微笑ましい気持ちになった。

先週、観させてもらったのは13公演中の4回目、今日は12回目ということで、だいぶ客席の雰囲気はよくなっていた。先週はまだ観客も手探りで拍手や手拍子のタイミングもぎこちなかったが、今日は劇が始まる時点で拍手が起きたし、曲が終わる度に我々は拍手を送っていた。こぶしファクトリーが『ラーメン大好き小泉さんの唄』を歌う場面では「麺上げて! 湯を切って! ラーメン大好き小泉さん!」の箇所で観客が声を出していた。先週では考えられなかったことだ。もちろん我々だけではなく演者の皆さんもこなれてきていて、JKニンジャガールズがパチモンニンジャガールズを大阪から来たのではないかと追い詰める場面などではコンサートのような一体感が生まれていた。最後の出演者たちによる挨拶では、高瀬くるみさんのお辞儀がいちばん深くて長かった。