2017年3月12日日曜日

Marching! (2017-03-11)

1. Happy Money

今日はグッズ列が短く、並んでから10分ほどで購入を終えることが出来た。13時くらい。結構な値段になった。欲しかったものを手に入れてホッとしたはずだったが、もしかしたら私は間違った選択をしたのかもしれない。6,600円という絶対額ではない。その内訳である。2,600円はつばきファクトリーDVD MAGAZINE Vol.4、残りの4,000円は写真である。Elizabeth Dunn & Michael Nortonによる“Happy Money”という本を最近、読んだ。この本の主題は、幸福度を高めるお金の使い方である。そこに書いてあったいくつかの原則のうち、一つが頭に浮かんだ:物質ではなく体験にお金を払う。DVD MAGAZINEは帰ってから家で観るので体験と言える。だから2,600円はその原則を守っている。問題は残りの4,000円だ。もちろん後から眺めるという体験は得られるが、写真は基本的には物質である。この4,000円が完全に無駄とまでは言わなくても、もう少し削るべきだったのかもしれない。せっかく面白い本を読んだのに学んだ教訓を実生活で生かせていない。Elizabeth DunnとMichael Nortonの助言に忠実に従うならその4,000円で写真を買うのではなく夜公演のチケットを買い足すべきだったのである。とは言っても、日替わり写真の小野瑞歩・小片リサ・高瀬くるみ、ソロ2L判生写真4枚セットの小野瑞歩、コレクション生写真3枚から削れる余地などほとんどないのである。

“Happy Money”に書いてあった原則をもう一つ挙げる:一定の間隔を空ける。なぜなら、頻度が高すぎると慣れてしまい、その体験の価値が減っていく。ありがたみを感じられなくなる。待ちわびる期間があった方が、その体験から得られる幸福が高まるのだ。本日の『Hello! Project研修生発表会2017 3月〜Marching!〜』15時公演でアップフロントが私に割り当てた席は1階の28列。後ろから2列目という、何とも心躍らない席であった。日本郵便の配達員からチケットを受け取って列番号を見たときは、うわ、何だこの席は…娯楽道で2,000円以下で売りに出されそうな席だなと思った。昨日、娯楽道のサイトを見てみたら同じくらいの席がまさに2,000円くらいで売っていた。チケットのファンクラブ価格は3,500円+送料+手数料。一般向けの価格が4,500円。つまり私に与えられた席は、定価の半額程度の市場価値しか付かないような席なのである。しかし、これも悪くはないのかもしれない。いい席ばかりが来ても感動は薄れていくのだ。もちろん今日のような席ばかりが来ても困るしファンクラブに入っている意味がなくなる。だが、こういうあからさまに後方の席をたまに挟むことで、そうじゃない席のありがたみが理解できる。そう自分を納得させた。前の方の席が特別だということを忘れてはいけない。自分に特等席が与えられるのが当然と思ったらおしまいだ。

2. The Köln Concert

キース・ジャレットというピアニストの名前を知らなくても、ジャズに興味がなくても、音楽が好きであれば『ケルン・コンサート』は聴いてほしい。その人の音楽的嗜好に関わらず無条件で薦めたくなるくらい、このアルバムは素晴らしい。1975年1月24日にドイツで録音された即興演奏は、40年以上が経過した今でも色褪せない。これほどの長期に渡って聴かれ続け、今でも定期的にリイシューされるという事実。名盤と呼ぶことに議論の余地はない。ところが、当時の状況を見ると後々まで語り継がれる名コンサートになる条件など一つも揃っていないように見えた。まずジャレットはまともに寝ていなかった。コンサート・ツアー中だったジャレットは前日の夜にスイスのローザンヌにいた。当日は車でケルンに移動するため、早朝に出発する必要があった。仮眠を取るのが苦手なジャレットはケルンに付いてからも寝ることが出来なかった。その上、コンサート会場に設置されたピアノをジャレットが確認したところ、音が悪く、長きに渡って調律されていないような代物だった。町には状態のいいピアノが一台あった。それを使用する予定だった。手違いで別のピアノが運ばれてしまった。使うはずだったピアノと交換するようにジャレットは頼んだが、トラックの手配が間に合わなかった。低音域と中音域ではギリギリまともな音が出るが高音域は安っぽい音になるピアノ。ジャレットは苦肉の策で、マシな音が出る鍵盤の中心付近を主に叩いて、演奏を行った。それでクラシックを生んだ。この話はIan Carrの“Keith Jarrett: The Man and His Music”に書いてある。

28列から見るZepp Tokyoのステージ。横にはふくよかな紳士。椅子に収まっていない身体。追い打ちをかけるように、目の前の席には180センチ超の紳士。マンガのように分かりやすく整っていく悪条件に、私はうなだれた。隣がふくよかなことによる影響は意外と少なかった。その人が動かないタイプだったのと、通路席の人が横にずれてふくよかと反対側の空間が少し空いて少しずれることが出来たので身体がぶつからなかった。180センチ超の生命体が目の前に立ち塞がる影響は大きく、これはどうしようもなかった。仮に彼がいなかったら、もしくは彼の身長があと10センチ短かったら、だいぶ眺望は違っていた。誤解しないでほしいが私は誰もディスっていない。誰も悪くない。こういう日もあるということだ。常に遮られることなくまともに見えたのは、ステージの右三分の一だけだった。あとは見えたり見えなかったり。ステージを鍵盤に見立てると、高音域(右側、上手)はまともに音が出る(見える)が、中音域と低音域(左側、下手)の音の出方(見え方)はだいぶ限られていた。キース・ジャレットがケルンで出会ったピアノとは逆だが、場所によって制約があるのは同じだった。双眼鏡でステージの右側を中心に観ながら私は『ケルン・コンサート』を思い出した。

3. The Kenshusei Concert

つばきファクトリー全員(山岸理子さんは欠席)がとても仕上がっていて、自信と喜びに満ちていて、キラキラしていた。彼女たちはどんどんよくなっている。私が贔屓目に見ていたのもたしかだが、出演者たちの中で最も強く輝いていた。怒濤のリリース・イベントをこなしていた頃の疲弊が取れてとても伸び伸びしているような印象を受けた。それを象徴していたのが『テーブル席空いててもカウンター席』。この曲ではつばきファクトリーから4-5人が参加(その中の一人が小野瑞歩)。マイクは持たず歌詞に合わせた小芝居をしていた。歌っている研修生たちが主役のはずなのに、つばきファクトリーの存在感が研修生たちをバックダンサーならぬバックシンガーにしていた。今日の日替わり写真を見ても思ったが、小片リサさんが日に日に美人になっていく。良ツインテール。彼女がつばきファクトリーでは唯一おへそを出していた。

研修生ホームルームというトーク・セグメントでは新沼希空、谷本安美、浅倉樹々が登場。学校で今年度、最も印象に残ったこと的なお題。谷本さんは今年度ではなく数年前だとしながら、スキー合宿を挙げた。上級者クラスだった。先生が谷本さんたちを上手いと思ったようで、一人で先に降りた。山のてっぺんに取り残された。吹雪で先も見えない中、何とか下まで降りたが、危うく遭難しかけた。スキー合宿と聞いて他のメンバーは羨ましがるが、谷本さん曰く、そんなに楽しいものではない。本当に寒いし、吹雪が凄いし。浅倉さんは、知らない女の子とお昼ご飯を食べた。他校の生徒と一緒に受ける授業がある。教科書を忘れた。先生に前の子(他校の女の子)に見せてもらいなさいと言われた。それをきっかけに「このあと時間ありますか?」と誘われて一緒にご飯を食べた。話が弾まず、気まずかった。その子は非常口を見ると興奮すると言っていた。誰かが何かを言う度に新沼さんが「皆さん、今の話どうですか?」「まことさん、今の話いかがですか?」と雑な振りをしていくのがとても面白かった。

キャベツ白書』を山崎夢羽さんと二人で歌った高瀬くるみさん。彼女は写真で見るとちょっときつそうな感じがするんだけど、ステージでの表情は柔らかい。何かで見たが、高瀬さんは室田瑞希さんに似ていると言われるらしい。それも分かるが、私は彼女の声から稲場愛香さんを感じる。終盤、「何かが足りないと思ったら加賀ちゃんがいない」とまことさん。モーニング娘。で活躍する姿を見ると頼もしいと言ってから、一岡伶奈さんと井上ひかるさんに対して、研修生を引っ張ってほしい、そしてステップアップしてほしいというようなことを言っていた。会場は温かい拍手に包まれた。でもその二人だけではない。堀江葵月さんや高瀬くるみさんたちもいるのを忘れてはいけない。私は今日の公演を観させてもらって、高瀬くるみさんにデビューをしてほしいという思いを強くした。

それ以外だと、金津美月さんが印象に残った。何がって、衣装。℃-uteの“The Power”くらいお腹と脚を出していた。数年前、嗣永桃子さんがラジオ番組『嗣永桃子のぷりぷりプリンセス』でBuono!コンサートのある衣装に関する裏話として、お腹を出すかどうかが自分で選べて、自分(嗣永さん)はイヤなので出さないことを選んだけど、鈴木愛理さんと夏焼雅さんは自分からお腹を出すことを選んでいて凄いと思った、というような話をしていたのを私は覚えている。研修生発表会の衣装がどうやって決められているのか、どこまで本人の意思が介在しているのかは分からない。もし金津さんの衣装が本人の選択だとすると、アイドルとして活動する覚悟と自信を感じる。もしスタッフだけで決めているのだとすると、なぜ金津さんだけ目立って露出度を高くしたのか、知りたい。金津さんのことはよく知らなかったが、認識できた理由として、家を出る直前にYouTubeのUP-FRONT CHANNEL Recommendという番組を観ていて、その回にたまたま彼女が出演していた。

4. Kappadokia

「お前、日本人だろ? こっちに来い」
ラモス瑠偉さんのような風貌のガイドが血相を変えて駆け寄ってきた。言われるがままに付いていくと、モニターには意味不明な映像が流れていた。「これは日本だ」と言われても、何が起きているのか分からなかった。2011年3月11日、私はトルコのカッパドキアで観光ツアーに参加していた。大震災の知らせを受けたのはたしかレストランで昼食を食べていたときだったと思う。というか、大震災という言葉がまだ付いていなかった。とにかく母国で何かしらのやばすぎる大災害が起きた。海外旅行中で情報が限られていたのもあって、私は動揺し、混乱し、不安になった。TwitterのTLは荒れていった。その後も数日間はトルコに滞在した。町を歩くと何度も「日本人か?」と現地民から声をかけられた。そうだと言うと、家族は大丈夫か?と聞いてきた。トルコでも以前、大きな地震があったから大変さは分かる、気の毒に思う、とその辺の普通の人たちが言ってくるのに驚いた。

私は2016年に会社のドイツ法人に長期出張で行った際、IT部門の社員にインターネットの設定で助けてもらった。話をするとトルコの出身だという。トルコに旅行で行ったことがあるという話をした。「トルコは好きだ。安全だし、食べ物はおいしいし」と私が言うと、「もう安全じゃないけどね」と彼は笑った。あ、そうだよねという感じで私も苦笑い。自分自身や周りだけを見ても、この6年間で変わったものもあれば、変わらないものもある。変わったようで、変わっていないものもある。今から6年後、何がどうなっているか、誰にも分からない。私が生きている保証はない。これを読んでいるあなたも同じだ。一つ言えるのは、とりあえず2011年3月11日から6年たった今日、私は何とかハッピーに生きている。