2017年3月3日金曜日

JKニンジャガールズ (2017-02-26)

“Teenage Mutant Ninja Turtles”のオマージュだな、と題名を見て思いました。私は子供の頃ニュージーランドに住んでいた時期があって、もう二十数年前なので当時については記憶が薄れていることも多いのですが、“Teenage Mutant Ninja Turtles”をテレビで観ていたというのは覚えています。なぜ今でも忘れていないのかを考えてみると、第一にニュージーランドでは日本に比べて娯楽が本当に少なかった。テレビのチャンネルは二つか三つしかありませんでしたし、ゴルフ中継やロトの当選発表といった本当につまらない番組ばかりでした。“Teenage Mutant Ninja Turtles”のような、子供が興味を持てる娯楽番組は貴重だったのです。学校では特に男子で観ていない人はいないくらいの大人気番組でした。当時の私の英語能力で話をちゃんと理解できていたのかは怪しいです。おそらく雰囲気で楽しんでいたんだと思います。だからどういう物語だったかを詳しくは覚えていないですね、残念ながら。ただ、とにかく“Teenage Mutant Ninja Turtles”という字面と、キャラクターたちの絵面のインパクトですよ。それがこの番組を忘れられない第二の理由です。Teenage(十代)とMutant(突然変異体)とNinja(忍者)とTurtles(亀)を掛け合わせるという発想が凄いんですよ。そんなん出来ひんやん、普通。第三の理由は、ないです。何かにつけて理由を三つにしたがる奴いるけど、そんな必要ないから。

『JKニンジャガールズ』はね、せっかく題名をオマージュしたわりには本家のような掛け合わせの妙はなかったです。まず、本家の要素が四つなのに対して、一つ少ないですし、大体よく見たらJKとガールズは重複していますから実質二つですよね。要素が二つだけだとよっぽどかけ離れたもの同士を組み合わせないとケミストリーは生まれませんが、JKとニンジャとなると、まあ発想としては凡庸ですよね。女子高生が忍者になる。たしかに現実の生活では考えられませんが、フィクションの設定としては面白味はない。オマージュの試みが中途半端すぎて、単に題名をパクっただけになってしまいました。実際、劇を観てみてもそれ以上のひねりが一切なくて。題名からして“Teenage Mutant Ninja Turtles”を意識した工夫があるのかなと少し期待していたので、拍子抜けしました。いや、オマージュだというのは私の勝手な決めつけですけど、ティーンエイジとニンジャの部分を重ねながら無関係だというのはちょっと苦しいと思います。

物語も陳腐でチープ(韻を踏んでいる)で、あえてここで書き残したいとは思いません。インターネットの世界ではコンサートや演劇の千秋楽が終わるまでファンが内容について書かない(書く場合も遠慮がちに控えめに書く)という、いわゆるネタバレを忌避するマナーのようなものがあります。TwitterはTLを更新すると不可抗力で目に入ってしまうことがあるので、Twitterにネタバレを書かないべきというのは理解できます。一方、ブログに同じ配慮を求めるのは筋違いというものです。ブログが不可抗力で目に入るということは考えづらく、完全に選んで見に来るものなので。だから書いてもいいのですが、その気になりません。というか、このミュージカルに関しては、別にネタバレしても支障はないですよ。その程度の内容です。“Week End Survivor”のときにも思ったのですが、話の内容が安易すぎて、脚本に携わっている人々がまともに国内外の小説を読んだり映画を観たりしているようには思えません。“Week End Survivor”はシリアスな方向に安易で、『JKニンジャガールズ』はコメディックな方向に安易でした。

ここまでを読むとこいつは『JKニンジャガールズ』を気に食わなかったんだな、それをわざわざネチネチとブログに書いているんだなこの哀れなオタクジジイはと思われるかもしれませんが、それは大きな誤解です。楽しかったですよ! 題名から抱いた当初の期待値とのギャップを書き始めたらつい筆が乗ってしまっただけです。設定や脚本はもちろん冴えませんでした。でも、それ以前にアイドルを観に来ているわけですからね、こっちは。いくらポンコツな話でもステージ上の演者たちが輝いているのを間近で観られればハッピーですからね、こっちは。そういうもんなんですよ。そりゃリアルでハーコーな演劇愛好家だったら違うのを観に行ってますよ。ハロー!プロジェクトが好きだからスペース・ゼロに足を運んだわけです。全体に関して言うと、何より衣装がよかったですね。これは婉曲表現で、直接的には書きませんが。何でも三つにすりゃあいいってもんではありませんが、MIPを三人挙げますね。

井上玲音さん。私はこぶしファクトリーのアルバム『辛夷其ノ壱』を聴いて、彼女の頼もしくて惚れ惚れする歌声が印象に残っていました。ちょっとびっくりするくらい野太いんですよ。グループ内では広瀬彩海さんと双璧を為す歌姫です。彼女の強みは甘すぎないところなんだと思います。誰が見ても可愛いと思う強烈な美少女で、ボーイッシュというわけではないのに、キリッとした凛々しさがある。浜浦彩乃さんが超甘口の正統派ミルク・チョコレイトだとすると、井上さんはソニプラで売っているようなカカオ80%くらいのチョコレイトなんですよ。あんまりハロプロにそういうタイプはいないですよね。浜浦さんと井上さんがダブル主役のような形だったのですが、アイドルとしての華はこの二人が抜きん出ていて、これ以外には考えられないという人選でした。

高瀬くるみさん。役所はアンサンブルという黒子がメイン。JKニンジャたちの級友として制服を出て登場する場面もありましたが、基本的には脇役でした。11月12日の『ネガポジポジ』では小野瑞歩さんと小片リサさんを抑えて私のMVPに選ばれるほど目を引く存在でしたが、今日もやっぱりいいなと思いました。彼女がステージで躍動する姿をもっと観たいと思いました。高瀬さんにはぜひハロプロ研修生から抜け出してデビューしてほしい。もし彼女が新しいグループに加入したらそのグループでは私は彼女を推しますよ。おそらく。今日は、高瀬さんの日替わり写真を買いました。

室田瑞希さん。最も印象的だったメンバーは誰だったか観客に聞いたら、おそらく彼女が圧倒的な票数を集めるでしょう。声を出して笑わずにはいられない、過剰なまでにコミカルかつハツラツとした動きは、キムチを食べさせたマウスのようでした。アドリブで小川麗奈さんから私と同じことをしてくださいと頼まれ、「おいのび太、野球やろうぜ」というジャイアンの物まねを振られ、恥じらいなくやりきっていました。日替わりの助っ人に求められるのはスパイスとしてひっかき回して空気を変えることだと思いますが、これ以上ないくらいにその役割を全うしました。なおかつ、歌でも魅せました。基本的な声量や音程がしっかりしていて、自信に満ちていました。今日の劇中で初めて拍手が起きたのが室田さんの歌でした。観客は初めて観る人が多かったようで統制は取れていなかったのですが、室田さんの歌にはそんな観客をして迷わずに揃った拍手を送らせる力がありました。